[21] |
- プラテュー - 2007年05月28日 (月) 18時17分
それは唐突だった・・・ 僕の周りの人間が死んでいく・・・ 父が、母が、兄が、弟が、そして叔父伯母が・・・それはまさに連鎖のごとく・・・・ しかも皆が皆、事故死や急病などの不慮の死だ・・・ おかしい、おかしすぎる・・・・
僕は何一つ不自由なく暮らしていた。 いや、正確にはそれは正しいものとは言えない。しかし、ほぼそうだと言ってよかった。 家は裕福で成績は優秀、異性にもそれなりにもてた。 僕は東京の某有名大学に進学、そこでも好成績を残していた。 それが大学4年の今、突然・・・
何かの予兆はあったのか。 いや、それがあったら「唐突」や「突然」という表現は使わないだろう。 誰かが仕組んだのか。 しかし、それだったら病死はありえない・・・ まさか、名前を書いたら死ぬノートが実在するとか・・・ しかし、それは漫画の中の話でありありえたら大変なことになる。 ならば神による運命なのか。それだったらあまりにも非情すぎる・・・
何かもが混乱している。それを忙しさと一連のことの衝撃でさらに混乱が増す・・・ 僕には彼女がいた。片桐涼子という女性だ。 2年以上付き合っていることにより互いをよく知っていた。 もちろん、このことも・・・
「最近、元気ないね・・・」 彼女が重い口取りで言う。そりゃそうだ、あんなことがあって元気があるように見えたら空元気にしか見えない。 「あんなことがあったから・・・」 確かに周りが6人も突然死んだ。とはいえ、そのことは割り切った筈だ。だが、何かまだもやもやが晴らせないのだろうか・・・ 「けど、私といる時は元気出してよ。そうじゃないと、私まで・・・」 「そうだな」と僕は言う。 言われてみればそうである。わざわざ彼女まで元気を無くさせることはしたくないし、僕自身の問題である・・・
その後はしばらく彼女と楽しく話をした。 こんなことは久しぶりだった。 こうやって話をすることで心に繫がれた何重の鎖が少しずつ外れていくよう気がした。 少し光が見えたような気にもなってきた。そして、彼女のためにも早く立ち直らないと・・・・
「あっ、もう帰らなきゃ」彼女がそういう 「待って」と呼び止める 「こういう今の状況だから僕に何かあるかもしれない。もし、何かあったら・・・その時は僕を忘れて欲しい」と僕は言う 「そんなこと考えなくてもあなたは大丈夫よ」と彼女は微笑む。 また少し気が楽になった。
そして二人は別れた。それぞれの家に帰るために。 しかし、その時妙な悪寒を覚えた。 帰るに帰れずその場で立ち止まる 妙な悪寒・・・僕自身の問題・・・ ふと思いついたそれら考え記憶を思い出してみる。
そこには、頼ってばかりの僕がいた
僕の家庭は裕福で父が小遣いをたくさんくれた。少なからずとも金銭面では父を頼っていた。
母は家事をほとんどこなしていた。僕はほとんど手伝いをしなかった。家事面でも頼っていた。
兄は成績が勉強で分からないところをよく教えてくれたが、これも他人に頼んでいるのと同じことだった。
僕は弟を結構こき使っていた。当たり前だが頼っているのと同じことだ。
父、母、兄と死んだ時、母方の叔父と伯母を頼った。これは言うまでも無い。
僕は頼ってばかり、いや守られてばかりだ。 先刻「神による運命」とも考えた。非情と捉えたがこれは頼ることしか出来ない今の自分に対する試練なのだと思った。 今、僕は誰かを守るべきだと思った。 そして僕は精神の支えとして彼女を頼っていた。 間違いない、全てあの妙な感覚と繫がる。 そして、今守らねば・・・・
僕は、走った。これまでにないというほどの全力で。 走ったところには彼女が歩いていた。なんとか追いついた。 そこに車が突っ込んできた。急なことだったのか車のブレーキは到底間に合うものではない。 僕は最後の力を振り絞り突っ込んだ。生死の心配とかそういう邪念は、無かった。
世界がゆっくりに見える。 とっさに彼女をかばう。 そして・・・意識は・・・・途絶えた。
|
|