【広告】Amazonから最大10%ポイントアップ新生活応援セー日開催中

桜ノ宮学園 学生掲示板

戻る

名前
メールアドレス
タイトル
本文
URL
削除キー 項目の保存


こちらの関連記事へ返信する場合は上のフォームに書いてください。

[4] 看護科用スレッド
管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時17分

看護科についての小説を投稿、雑談をする場合はこのスレッドにお願いします。

小説投稿用テンプレート↓

-----------------------------------------
- タイトル -
-----------------------------------------
ここに内容。
-- END or NEXT --------------------------

[39] 主観:雪奈 登場人物:光、マルコ
凪鳥 - 2007年05月26日 (土) 05時25分

-----------------------------------------
- 女帝 -
-----------------------------------------


 ペンを置く。

雪奈「…できた」

 一息ついて、雪奈は先程まで内容をまとめていた書類に、もう一度目を通す。
 明日の定例会議、この学園のトップ(学生)が集まる総括会議…そこで私が使用する資料。
 見たところ不備は無い様に思えるが…。

雪奈「…ん」

 念には念を入れ、もう一度初めからチェックをする。
 なにせ、今度こそ失敗は許されないのだから。
 前回の総括会議を思い出す。

 会議はいつも道理の時間、いつも通りの内容で進んだ。
 美術科総括会、遊意華や晴美がいつものように雪奈の意見に反論し、そしていつものようにルティアがそれを仲裁し始める。
 そのやり取りを一歩引いた位置で眺め、案をまとめていく生徒会…これもいつもの通り。
 思い通に、雪奈のペースで進んでいく会議。
 完璧な計画、完全な流れ…看護科の勝利は確実だった。
 しかし、完璧だったはずの雪奈の計画の歯車は、一瞬にして狂った。

 普通科総括会。

 いつもは看護科と美術科の討論を、あえて聞き手に回っていただろう普通科が、ここに来て前に出てきたのだ。
 もちろん、その対策はしていたし、要注意だということは十分承知していた。
 しかし、ほんの一瞬の隙を突かれ、議論の主導権を持っていかれてしまった。
 まるで、こうなる事を読んでいたかのように、私の組上げたものを全てそのまま奪い去ってしまった。

 その結果が、球技大会の主催権を奪われるという失態。

雪奈「…今度は、そう簡単にはいかせないわよ」

 思わず書類を持っていた手に力が入る。
 しかし、大事な書類をくしゃくしゃにしてしまう訳にはいかず、慌てて手の力を抜いた。

雪奈「ふぅ…少し、休憩ね」

 一息付き書類をファイルに入れると、雪奈は席を立つ。
 私の仕事場所――看護科・総括会室には私以外の人影はない。
 それもそのはず、もうすぐ寮の門限なのだ、会員は既に各々の仕事を終え、寮へ帰っている時間…副会長のつづらなど、そもそも総括会室にすら来ていない。
 彼女は能力は高いのだが…いかんせん、扱いに困る。
 私が卒業したら、次は彼女がこの看護科を背負って歩かなければならないのに…。
 どうしたものかと溜息をつく。
 
雪奈「あら…?」

 ふと、どこからか小さな物音が聞こえてくる。
 きょろきょろと音源を捜す。
 その音はどうやら部屋の外…正確にはこの部屋のドア、からしている様だった。

 カリカリカリッ…。

 と、何か爪でドアを引っ掻いているような…。
 そんな音が聞こえてくる。

雪奈「何、かしら?」

 カリカリと音がする方…ドアを開ける。

 すると、開けたとたんその隙間から何かが部屋の中に入ってくると、雪奈の足元をスルリと抜けていく。

 驚きながらもそれを眼で追う。
 それはどこかで見たことのあるシルエット。
 それはまるで最初からそこにいたかのように、会長用のデスクの上に座っていた。

雪奈「…猫?」

 一匹の猫。
 それがあの物音の正体。

 なぜこんなところに猫が?
 ふと疑問がよぎるが、すぐに思い出す。
 そういえば、普通科総括会では猫を一匹飼っているのではなかったか?
 確か名前は…。

雪奈「…マルコキアス」
マルコ「な〜」

 私の呟きに猫――マルコキアスは、まるで返事を返すかの様に一声鳴く。
 どうやら間違いないようだ。
 しかしなぜこんなところに…。
 しっかりと管理し、普通科棟の中で世話をするという条件で普通科はこの猫を飼っていたはずだ…それが看護科棟まで逃げて来ているとは。

マルコ「にゃ〜」
雪奈「え?」

 色々考えていると、猫は机を降り私の足元へと歩みよって来る。
 そしてその体を雪奈の足へとこすりつける。

雪奈「ちょっと、なんなのよこれは…」

 これは、どうやらじゃれている…? のだろうか。
 正直に言って雪奈はそれほど動物に詳しくはないので、よく分からない。

雪奈「何なのかしら、別に何か食べ物を持っている訳でもないのに…」 

 猫がこの学園にいるのは知っていたが、見るのは初めてだし、まして猫にじゃれ付かれる理由もない。
 どうすればいいのか判断に困り、しゃがむと、一向に自分そばから離れる気配のない猫に手を伸ばす。

雪奈(確か、顎を撫でてやればよかったのかしら?)

 うろ覚えの知識で猫をあやしてみる。

マルコ「なぁ〜」

 雪奈に顎を撫でられると、気持ち良さそうにマルコは喉を鳴らす。
 成すがまま、されるがままの猫に、それを何度も繰り返す。
 しばらく続け、そして抱き上げる。
 マルコキアスはいとも簡単に捕まると、嬉しそうに一声鳴く。

雪奈「…どうしようかしら」

 捕まえたのはいいが、正直どうするべきか迷う。
 放す、逃がす…とりあえず、普通科に帰してやるのが一番だろうか?
 そう考えていると、少しあいたドアの向こうから、見覚えのある人物の姿が見えた。

雪奈「光さん…?」

 普通科所属の彼女が看護科棟にいるのは珍しい。
 …いや、きっとこの猫を捜しに来たのだろう。
 その証拠に彼女は――

光『マルコキアス〜、どこに行ったのぉ〜』

 ――という風に、どうにも申し訳なさそうにきょろきょろと小さな声で猫の名前を呼んでいた。
 腕の中の猫を見る。
 どうにも、動く気配はまるでない。
 まるでそこが安息の地であるかのように、すっぽりと雪奈の腕の中に納まっている。

光『もぉ、マルコったら…怒られるのは私なんですから〜もぉ〜』

 そろそろ出てきてください〜…と情けない声を出しながら、必死に猫を捜す光。
 これはどうしたものだろうか?
 連れていってあげるべきか?
 しかし、彼女はあれでも自分にとっての『敵』の内の一人でもある。
 些細なことであっても、敵に塩を送りたくはないし、むしろこれはチャンスではないか?
 例え些細な事であっても、そこから攻め入ることもできる。

 その光の姿に、そんなことを思う。

雪奈(…いいえ、やめておきましょう)

 いくつか自分に有益な展開を模索するが、すぐにそれを打ち消す。
 いくら倒すべき相手であっても、さすがにそこまで姑息な手段を使おうとは思わない。

 ついこの間、つづらに言われた言葉をふと思い出す。

『ゆきちゃん、この頃なんだか余裕がないの』

 確かに、つづらの言うとおり、この間の『負け』の後からは、根を詰めすぎて自分の中に余裕がなかったのは事実。
 だからこそあんな姑息な策に手を出してしまいそうになったのか。

雪奈「…まったく、そういう所ばかり優秀なのだから…」

 ふぅと、一息付き猫の頭を一撫でる。
 確かに一度負けはしたが、まだ焦るような時期でもない。
 看護科は二年連続最多主催権獲得の王者だ、まだまだアドバンテージはこちらにある。

 気を取り直し立ち上がると、雪奈は猫を抱いたまま、ゆっくりとドアを開け、廊下に出る。
 こちらに気づかず、おろおろきょろきょろと猫を捜す光。

 声を、かける。

雪奈「光さん、探しものはこれかしら?」

 安堵と驚きが、雪奈を迎えた。

-- END --------------------------

[40] 女帝も病には勝てません。
ラスティ・ブランフォード - 2007年05月27日 (日) 21時42分

-----------------------------------------
- 涙が零れ落ちる時 -
-----------------------------------------

……一度ならず、二度までも。
このままでは、普通科に遅れどころか今年の最多主催権獲得をとられてしまうかも知れない。

雪奈「ゴホ、ゴホ。」

球技大会が終わった後、次の主催権は何としてでも取ろう。
そう思った矢先に体調を崩してしまった。

先ほど、副会長のつづらが見舞いを来た時に申し訳無さそうにこう言った。

つづら「ゆきちゃん、ごめんなさいなの。今度の主催権も普通科が獲得しちゃったの。
    ゆきちゃんが直るまで審議を待って欲しいって言ってみたけど、
    時間がないから遅らせられないって一蹴されたの……
    ご免ね、ゆきちゃん。
    つづらも頑張ったけど、鶯さんと光さんの前ではぐうの音も出なかったの…」

……彼女を責める気にはなれない。肝心な時に体調を崩してしまったのは、私のミスなのだから。

『ゆきちゃん、この頃なんだか余裕がないの』

以前から彼女に、警告はされていたのに無理をしてしまった。

雪奈「……。」

悔しい。自分の迂闊さが恨めしい。
これまで、全力で頑張ってきた事が否定されたような気持ちになった。
ならばいっそ、諦めてしまえばいいなどと言う思いが湧き上がってくる。

雪奈「それだけは、それだけは……」

私はなんという事を考えていたのだろう。
病を患って、気弱になっているだけだと思いたい。
自分の顔を叩いて、気合を入れる。

雪奈「私は、氷雨さんのような人になる。こんな事で悩んでいても仕方ありませんね。」

自分自身を奮い立たせる。
だが、球技大会のみならず、次の主催権も持っていかれたという話が私を沈ませる。
なんとか頭の中の話題を切り替えようとしても、堂々巡りしていたところに、誰かがやってきた。

コンコン

?「ええと……失礼します。」

この声は…

光「大丈夫ですか?咳が酷いと聞いていますが。」

普通科副会長の…如月 光だった。

-- NEXT --------------------------

ん〜。弱った女帝を書きたかったわけですが、
話の続きを半端にしか考えていないのでまた今度。

[48] 続きです。
ラスティ・ブランフォード - 2007年06月02日 (土) 18時06分

-----------------------------------------
- 涙が零れ落ちる時 続き-
-----------------------------------------

雪奈「久遠さんから話は聞いています。
……普通科が旅行の主催権を勝ち取ったそうですね。
おめでとうございます。」

正直、苦虫を噛み潰した表情を心の中に仕舞えるほど余裕はなかった。
彼女は私の顔を見て、一瞬だけきょとんとした表情を浮かべたが、すぐにいつもの優しい顔になる。

光「……だいぶ疲れているようですね。差し入れ、ここに置いておきます。」

そう言って、チョコレートや蜜柑・ケーキなどの甘いものが入ったビニール袋を、ベッドの傍の机の上に置く。
……確かに私は頭を閃かせる為に甘いものをよく食べてはいますが、病気になった時まで食べたいとは思いません…

雪奈「用事が済みましたら、早めに出て行ってくれます?風邪をうつしては大変ですから。」

いっその事、風邪がうつればいいなどと暗い考えが脳裏をよぎる。
ですが、それよりも少しの間一人になりたいと思う気持ちが勝った。

光「雪奈さん。」

なぜか、少し強く呼び止められる。

光「人に頼らず物事を成し遂げようと思う姿勢は、素晴らしいと思います。
ですが、それに固執するあまり、自分の周りに『壁』が出来ていると思いませんか?」

雪奈「……何が言いたいんですか?」

光「雪奈さんは前に進みすぎだと思います。
他の皆さんはあなたに追いつこうと必死なんですが、あなたはその距離をさらに開けてしまう。

……あなたの書いた書類、つづらさんが必死で読み上げていましたけど、具体的な内容は何一つ分かっていませんでした。
突っ込んだ質問をすると、しどろもどろになって『それは、ゆきちゃんに聞いてみて……』の一点張りです。
これでは、とても意見を採用する事は出来ません。
球技大会の主催権で揉めて遅れたせいで、今回の審議に時間はかけられませんでしたし。」

雪奈「私がワンマン経営で引っ張りすぎだから、
もう少し、足並みを揃えたほうがいいということですか?」

光「それもそうですけど…、他人を目標として、気負いすぎではないでしょうか。
氷雨さんが看護科で3年連続最多主催権をとったからって、それを模倣する必要は……」




グサッと刺さる、一言。




雪奈「出て行って。」

光「あ……」

光さんが、失言に対して言葉を失い、意気消沈する。

雪奈「出て行って!」

光「……すいません、言い過ぎました。」

言われたとおり、出て行く光。
私は、彼女が出て行った後に涙が落ちたことに気がついた。

悔しさか、切なさか。
泣いた理由を考える事を考えることも出来なかった。
ただ、一人きりの病室で窓から外を見たとき、沈んだ外の暗さがどうしようもなく寂しくて、悲しかった。

-- END --------------------------


むう。なんかバッドEndっぽく終わってしまったな。
普段強がってる人間の弱さみたいなものを書いてみたのですが…
いかがなものでしょうか?

[84] つづらってこんな感じなのかなあ。微妙に書きにくいキャラ。好きなんですけどね。
ジャッキー - 2007年06月28日 (木) 18時03分

-----------------------------------------
久遠つづらの平凡な一日
-----------------------------------------

キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン……

一日の終わりを告げる鐘が鳴った。日本全国どこにいっても、この音色は変わらない。そういえば、外国はどうなのだろう。ふと、そんなことをまどろみから現実に帰ってきながら、考えていた少女がいた。
鐘の音は、久遠つづらにとっては目覚まし時計と等しいものだった。

机の上でもぞもぞと動き、多少寝癖がついた髪から顔が出てくる。ショートカット、というには少々個性的な、一昔前のおかっぱ頭をアレンジしたような髪型。その下から出てきた顔も、およそ高校二年生、17歳とはとてもじゃないが思えない童顔だった。
久遠つづら。それが、この少女の名前である。
よく見れば背も小さい。標準用の机が彼女が座ると大きく見えるし、隣の席の女子と比べても、その差はあった。それも、彼女が幼く見える大きな原因の一つなのだろう。
先生が黒板の前で立ち、日直が号令をかける。ボンヤリした頭で、とりあえず頭を下げる。先生は教室から出て行った。
椅子の上で伸びをし、小さくうめき声を出す。やがて力を抜き、だんだんと頭が冴えて来た。
(今日は……掃除はなし)
そうと決まればと、彼女は帰り支度を始めた。……もっとも、支度といっても机の上にある教科書類をカバンにぶち込むだけだったが。筆箱等は最初からカバンの中にあった。

ノックをし、声をかけ、ノブを回す。
「…失礼しますなの」
ドアを開けた瞬間、中から何かすごい音が聞こえてきた。その音に久遠つづらは、当たり前だが驚く。
「!!?」
ドアを開けるとそこには、看護科総括会長、天野雪菜がいた。長い黒髪に整った顔立ち、その姿は、下級生の一部から絶大な支持を受ける姿である。いつもならば。
体中から傲岸不遜なオーラを出し、眼差しはきつく、まさに『女帝』の名に相応しい人である。通常ならば。
今まで看護科は、二年連続最多主債権獲得を成しており、それは彼女の類まれなるリーダーシップと冷静さなのである。正常ならば。
だが今は、その姿は見る影も無い。そして、部屋の中もすごい事になっている。
とりあえず見たままを言うと……。
まず、部屋の中は惨憺たる有様だ。部屋中に紙くずは散らかり、会長専用の机の上は正にゴミ山だった。
そして天野雪菜は、長い髪を振り乱して右手でペンを折れそうなほど強く握りながら、もの凄い勢いで何かを書いていた。ついでに何かわめいている。
「負けるか、負けるもんですかぁ!!何よあの済ました顔!思い出してもイライラする!私を心配してるフリをして、その実、嘲笑っているのでしょうが!!あの哀れむような目が……とてつもなくムカつくのよぉ!!!」
こんな感じである。
つづらは傍にあった紙を拾い上げ、そこに書かれている文章を読もうとした。が、
(なんて書いてあるの……?)
文章はあまりに速記過ぎて、もはや文としての役割、人に何かを伝えるという事を果たしていなかった。
文面から察するに『学』は、『了』のようになっているし、『い』は『り』、『5』は『3』といった感じだ。
つづらは、天野の傍に行く。
「ゆきちゃん、落ち着いてなの。そんなに怒ると血圧が上がって血管がボロボロになって、動脈硬化を早めてしまうの。それに血液もドロドロになるから、血栓も起きやすくなるの。そうしたら脳に瘤が出来たり、心筋梗塞や心不全になったりするの。それに第一、ゆきちゃん風邪って言ってたし、寝てなきゃダメなの。風邪は万病の元って言って、それから様々な合併症を引き起こしたりして、軽ければ気管支炎で済んでも、重ければ肺炎になったりしちゃうの」
なんか微妙に間違っているような説得をするが、そんなものに静かに耳を傾ける事も、また説得される天野でもなかった。
「うるっさーい!負けてばっかしで黙ってられるわけないでしょう!?それに風邪!?風邪なんてね、熱処理すれば治っちゃったわよ!!!」
(熱処理……?怒りの熱で治っちゃったの?そんな……それに、一体誰に怒っているの?)
恐らくこの前の主権を取られた事に関係はしてるとは思った。だが、言葉を聞くとある一個人を特に怒っているように、つづらには思えた。
「ゆきちゃん、あの、誰に怒っているの……?」
この三年間でこれほどまで乱れた事があっただろうか、いやない!、という反語表現を使っても有り余るほど怒っている天野に、つづらは恐る恐る聞く。振り返った天野を一言で表現するならば、夜叉だった。
「ああン!?決まってんでしょう!?あの普通科の副会長、如月よ!いっつも済ました顔してあの女ァ……実は私のことを見下していたんだわ。間違いない!」
天野の発言に呼応して、握っているペンの握力が上がる。そして、耐久力の限界を超えたペンは、乾いた響きを立てて折れた。
「っつ!」
「!大丈夫なの!?」
折れたところで切ったようだ。親指から血が出ている。だが、顔をしかめたのは一瞬で、しばらく親指から出ている血を見た後、口元を笑わせてそれをなめた。
「……ふふ」
「………!!」
天野の目は、いまや人の目をしてはいなかった。それは、修羅の目。黒瞳の底には、地獄の業火が燃え盛っている。
(ゆ……ゆきちゃんがヘマトフィリアになっちゃった……!)
だが、つづらは別のところでショックを受けていたようだ。コラ、ショックを受けるのはそこじゃないだろう。
「ゆ、ゆきちゃん!それで、次の行事は一体何にするの?」
「そうねぇ……校内でバトルロワイヤルなんてどう?銃器はさすがにダメで、それ以外はOK。カッターでも包丁でも刀でも青龍刀でもね。相手を殺しさえしなきゃ何してもいいのよアッハッハ!!!」
天野の提案にさすがに異常に気付いたのか、つづらは真剣に考え込む。やがて頷き、口を開いた。
「それはいいアイデアなの。看護科は治療の為に参加しないって事にすれば、高みの見物が出来るの」
違うだろオオオオオオオオオォォォォ!!!!!
だが、作者の叫びが聞こえないのか(当たり前)、二人は更に盛り上がる。
「そうよね、そうよね!?誰にでも殺したいくらいにくい奴が一人か二人はいるものね!!ようし、やる気が出てきたわ!!ありがとう!!」
天野は満面の笑みで言った。これがいつもの日常だったらどれだけいいか、と作者は思った。
そして、つづらは部屋を出て行った。

「ゆきちゃんが元気になってよかったの」
元気は元気でも、なっちゃいけない元気だと思う。そう言ってくれる人間は、彼女の傍にはいなかった。
久遠つづらの平凡な一日は、まだ続く
-- NEXT --------------------------



まず謝りましょう。ラスティ・ラブンズフォードさん、ごめんなさい。ほんっとーにごめんなさい。消す準備はいつでもできております。
なんでしょうね。僕はコメディにしなきゃいけない病か何かなんでしょうか。これが終わっても、次のプロットもその次のプロットもギャグなんですよね。というわけで皆さん、シリアスな話を書いてください(オイ

小説は第三者視点、というより作者視点でしょうか。後半は作者、半分登場してしまいましたしね。こういうのは駄目だなあ。まあ、一つの挑戦って感じで。
楽しんでくれたら、これ以上幸いな事はありません。コメもできたら。

[89]
凪鳥 - 2007年06月28日 (木) 19時08分

この頃の看護科スレッドは雪奈がかな〜りいい味出してますね。
なんというか、彼女は割と悲劇が似合うような。

ジャッキーさん、つづらはそんな感じでいいと思いますよ。
というよりも、雪奈がかな〜りヒステリックで、それがまた雪奈らしくていいですね。

[90] そう!!!そうです!!!!!
シュレ猫 - 2007年06月28日 (木) 23時27分

注:なんかテンションの高いタイトルですが、本人のテンションがもともと低いのでそんなハイテンションな台詞は出ません


>>ジャッキーさん
つづらはまさにそんな感じです
変にズレた感想と、とっさに出所不明の知識をポンと出す台詞
だいたい私の中のつづらはそんな人ですね

そして雪奈さんの壊れっぷりがすばらしい
というか、雪奈さんはそろそろ万年筆を買わないと、ペン代がものすごいことになりそうですね

[93]
ジャッキー - 2007年06月30日 (土) 00時11分

-----------------------------------------
久遠つづらの平凡な一日
-----------------------------------------
一人の少女が廊下を歩いていた。
少女、というより幼女。童顔、低身長、ロリ、その方面の人にはたまらなそうな容姿である。
だが制服を着ているし、ここが高校と言う事でこの少女も例に漏れず、高校生である。そうはちょっと・かなり・絶対(好きな語をお選びください)見えないが。
久遠つづら。今日起こる日常風景の主人公であり、傍観者である。

つづらが廊下を歩く。途中であった友達らしき人がつづらとか久遠とか、あるいはもっと可愛いらしいくーちゃんとかで呼ぶ。その度、つづらはこんにちはと言っていた。語尾になのをつけて。
そんな時、よく見知った人物と会った。
「あ、つづらちゃん?」
「あら、つづらさんですか」
つづらの視線の先には普通科総括会会長:庭瀬鶯と、普通科総括会副会長:如月光がいた。
さっきの部屋での出来事で、天野が如月に殺意に近いものを持っていたことを思い出したが、そんなことはおくびにも出さず、しれっとした顔のままだった。
「うぐちゃんにひかりさん。こんにちはなの」
先輩なのでぺこりとお辞儀をする。
「どーしたのさ、こんなところで」
庭瀬が顔を綻ばせて聞いてきた。
「ん〜っと………コレといって用事はないけれど、寮に変えるのも暇だから生徒会室に寄ろうかなと思っているの」
「そうですか。それでは、引き止めてしまって悪かったですか?」
「そんなことはないの!」
「どうせ暇だものね〜。というより、つづらちゃんって一年中暇してるんじゃない?」
「それはないの!仕事するときはちゃんとやってるの!」
つづらが少しムキになって言い、その反応が面白くて二人が笑う。ふくれっ面だったつづらも、次第に頬を緩ませていった。

「そういえば、雪菜さんはどうしていますか?」
如月がふと、そうつづらに聞いた。つづらの顔はちょっと難しくなる。
「う〜ん……もう風邪は治っちゃったの。それで今は、次の主催権のために色々頑張っているの。だから、出来れば邪魔してあげないで欲しいの」
天野が如月の事を「殺してやるゥ!!!」と半狂乱になっていた事は、さすがに言えなかった。邪魔してあげないでというところに、つづらのささやかな配慮が見える。本当にささやかだが。
「?一体どうして?」
庭瀬が如月に向かってそう言った。如月は少々嫌な、話すのをためらうような顔をしたが、やがて話し始めた。
「あの……この前の主催権も私たちが取っちゃった時に、ちょっとまずいかなとは思ったんですけど、お見舞いにいったんです。でも行ったらやっぱり怒鳴られて……。プライド高いから逆効果なとは思いましたが、やっぱり気になってしまって………」
「…気持ちは分からなくもないけどね、やっぱりそれはちょっとダメだよ。人の同情を受けるのが恥ずかしいとか、そういう風にしか思えない人だから、あの人は。この前だって、つづらちゃんとしっかり話し合っていればもう少しいい線いけたかもしれない。少なくとも、私たちがあんなにすんなりと主催権を取る事はなかったろうね」
庭瀬が少しきつい口調で言う。つづらは彼女がこんな風に人の事を言うのは初めて聞いたので、少々驚いた。
だが驚くと同時に、怒りもこみ上げてきた。庭瀬に対する、自分じゃない人のことを侮辱された怒り。
「それは違うの。ゆきちゃんは確かにそうゆうところもあるけど、そうじゃないところもちゃんとあるの。証拠にさっき、私がゆきちゃんの部屋に行ったらゆきちゃん、私に次の主催権のことを相談してくれたの」
「っ!?つづらさん、それ、本当ですか!?」
如月が驚いてつづらに詰め寄った。驚きながらも、しっかりと頷く。
もっとも、相談されたその内容というのは、校内無差別バトルロワイヤルの相談だったが。だが、そんな事を知りもしない彼女は大いに驚いた。
「……?もしかして……」
「はい。この前お見舞いに行ったとき、私も鶯さんと同じような内容のことを言ったんです。今思うと、そっちの方が原因だったのかもしれません」
如月の言葉に、庭瀬はしばらく黙って考えていた。眉間に皺を寄せ、目を閉じ、瞑想するように。
やがて目を開き、そして口も開く。
「光、やってくれたね」
「!?」
思わぬ庭瀬の言葉に如月が、つづらまでもが固まる。庭瀬の目は、さっきまでの陽気な目から、総括会の時に極たまにしか見せない、『やる時』の目に変わっていた。
「窮鼠猫を噛む、って言うよね。今の雪菜さんは正にそんな感じだよ。でも、私は別にそれほど危惧はしていなかった。窮鼠は窮鼠でも、追い詰められてパニクってるだけの鼠だからね。捕まえるのに、別段苦労はしないよ。でもね、それは余裕が完全にない時の話。もしも雪菜さんがなりふり構わず、って言ったらちょっとおかしいけど、まあそんな感じで落ち着いて攻撃を仕掛けてきたら、正直どうなるかは分からないよ。捕まえられたとしても指を噛まれて逃げ出すかもしれないし、もしかしたら鼠が虎に化けるかもしれない。……分かった?光の一言で、雪菜さんは今までの数倍強くなるよ」
「そ、そんな……」
如月は今にも泣きそうな目で庭瀬を見る。つづらはどうしていいのか分からず、(というか看護科副会長の前でこんな話をしていいのだろうか?)その場で無表情に立っているだけであった。
「そう、だから……」
庭瀬が怒気を少しはらんだ顔を崩し、不適に笑う。
「面白くなってきたね」
「……え?」
「いいよ、これは。なんだかゾクゾクする。初めてだよ、こんな感情。とても楽しくて、嬉しくて、興奮して。…そうだね、恋人と仇が同時に現れた気分かな。もしくは、本当のドラキュラになった感じ?」
庭瀬は恍惚とした表情でそう語った。まるで、極上の血を飲んだ後の吸血鬼のように。
つづらは思った。ゆきちゃんとうぐちゃんは同じ人種の人なんじゃないかと。性格は対極に位置するといってもいいくらい違っても、心の奥底、根幹、芯。そうゆうとても深いところで、二人は同じなんじゃないかと。
言ってみれば、戦い方が違うだけだ。天野が騎士道精神を愛する騎士(ナイト)ならば、庭瀬は一見不合理な世界で生き、明日の分からない毎日を楽しむ怪盗(シーフ)や冒険者(レンジャー)に近い。もしくは、夜の帝王、吸血鬼(ヴァンパイア)といったところか。
天野は堂々と真向勝負できて、一旦それが失敗すると立ち直るのに時間を要するが、立ち直ったときには不屈の精神を宿している。
庭瀬はその逆で、勝つためならば手段を選ばない、というのは少々言いすぎだ。色々な事をする、と言い換えればいいだろうか。そして、強敵を求める。弱いものを相手に叩きのめす事はせず、自分の力量が試せる相手を探す。
庭瀬が今まで行動を起こしていなかったのは天野が強いからではなく、自分の相手として相応しいかを見極めていたのではないか。
そう考えれば、さっきの庭瀬らしからぬ言動も納得がいく。自分が少し本気を出しただけで倒される相手なら、相手にする価値がない。せっかく好敵手と会えたと思ったのに、裏切られた。だから、期待はずれな天野の事を怒りという感情でしか言えなかったのではないか。
そんな思いが唐突に、つづらの中を駆け巡った。
「光、ありがとうね」
「え、ええ?あ、はい……?」
話の展開についていけない常識人は突然礼を言われ、戸惑う。
「つづらちゃんも、教えてくれてありがとうね。それと、雪野さんに『それとなく』よろしく」
じゃあね〜、と庭瀬。それでは、と丁寧にお辞儀をしてまで如月。
意味が明瞭に分からない言葉を告げ残して、庭瀬と如月は行ってしまった。
その後、つづらは一人で考えていたが……。
「……。うん」
何かの答えにたどり着いたのか、一人で頷く。
「じゃあね、うぐちゃん、ひかりさん」
聞く相手がさっきまでいた空間に向かい、そう告げて、つづらも去っていった。
久遠つづらの平凡な一日は、まだ続く
-- NEXT --------------------------

う〜ん、こんな感じでいいのかな……。
ラスティ・ラブンズフォードさんの話の後日談的な話になるんでしょうか。前回何も考えずに打った文章がこんなところで役に立つとは(天野が相談した話)、正直思いませんでした。いや〜、うまくつながって良かった。←無計画。


鶯は小さい頃は友達がいなかった。理由は器用貧乏で、何にも考えずにそれを披露していたら嫉妬交じりのいじめを受けていたから。また、ヘマトフィリアもいじめの大きな要因。
だから友達を何よりも大事にする。そして、自分と同じくらいの能力を持つ人間が現れるのを待っていた。
それが、天野雪菜だった。
……ってのが自分の中の鶯像なんです。このポヤポヤした性格も、嫌われないために作り出した仮面。
……やっぱダメです。この設定は使えそうにありません。ですが、もしも利用価値があるようならば、どうぞお使いください。

[94] 返信しようと思って忘れていました。
ジャッキー - 2007年06月30日 (土) 09時04分

≫凪鳥さん
そうですねえ、やっぱり最高権力者というものには、悲劇がつきものなんでしょうか。
つづら、この調子でいかせてもらいます。

≫シュレ猫さん
あざっす!!!気に入ってもらえて感極まってます!!!
今回の話ではあまりつづららしさは出せていませんでしたが、次は頑張ります。

[96] 黒いつづらはいかがですか?
ジャッキー - 2007年07月05日 (木) 21時12分

-----------------------------------------
久遠つづらの平凡な一日3
-----------------------------------------
生徒会室。その扉の前に、一人の少女がいた。
外見年齢は若い。というか幼い。中学生並み、といったところか。背は低く顔が童顔で、おとなしそうな印象を受ける。しかし、彼女はこれでも高校生だ。来ている制服と場所がそれを証明している。
久遠つづら。この少女の名前である。
つづらは扉の前で入るか否かを悩んでいた。いつもならば悩む必要もなく、適当にノックをして返事も待たずに入るのだが、今日に限ってなぜか躊躇していた。
その理由は中から聞こえる『音』にあった。
『ちっ!避けるな!』
『無茶を言うな。殴りかかって来られて避けない馬鹿じゃねえよ、俺は。そんなことも分からないか』
『じゃあ私が頭を殴ってあんたを馬鹿にしてあげるわよ!!』
『泉!!いいからやめなさいって!部屋の中が滅茶苦茶じゃないの!!!』
『紅も!相手を挑発するような事は言わないでよ!!』
加えてドタンバタンという激しい音。普通の人間であれば敬遠するのも無理はない。誰もあの二人の騒動に巻き込まれたいとは思わないからだ。
彼女、九条泉がこの学園に入学してからまだ三ヶ月も経ってないが、その活躍(?)ぶりは全校生徒に知れ渡っていた。
姉の命が紅夜と一緒にいると聞けばカール・ルイスもびっくりの快速ぶりで駆けつけ、この中の状態だ。
噂では、部屋で紅夜の暗殺計画を毎晩練っているという。ルームメイトはこの話題に関して一切のコメントを拒否しているのが、その信憑性を更に上げているといえる。
こんな騒動に自分から巻き込まれたいと思う奴は熱心な自殺志願者か場の空気の読めない頭のネジが抜けた奴、または面倒事に首を突っ込みたがるはた迷惑な人間くらいだろう。
そしてつづらはそのどれかだったようだ。意を決したように、ドアノブに手をかける。
鈍重な扉がギギギ…と古めかしい音を立てて開く。

四角い部屋の中は、この世の地獄だった。
予想通り、紅夜と泉が部屋中を暴れまわっている。泉の徒手空拳を紅夜が軽いステップでかわし、逃げる。泉も運動神経が悪いわけではなくむしろいい方なのだが、それはやはり女性で喧嘩もした事ない素人。身体能力的に優位の男性に適うはずはない。まあそれでも、あの華麗なステップは反則だともいえるが。
蒼馬と命はそれぞれ自分が抑えるべき相手を必死でなだめようとしている。しかし、二人とも取り付く島もない。
激しく動き合う二人のせいで机は倒れ、パイプ椅子は他のものとぶつかり合い、金属特有の音を奏でる。それがまた耳障りだ。
舞い散った紙が二人の動きに合わせまたも浮き上がり、そして落ちる。雪にしては大きいものが部屋中を舞っている。
「くそっ!避けるなあ!」
「だから無茶言うなって」
「いいから!私は別に気にしてないから!!……ていうか、ちょっと嬉しかったし……。だ、だからやめてってば!!!」
「ああもう部屋の中がめちゃくちゃじゃん!!掃除するの誰だと思ってるのさ!?」
(人間のエゴイズムがよく見えるの。やっぱり極限状態だと人は自分の事しか考えられないの)
約一人を中心に観察したような感想をつづらは思い浮かべた。

「喰らえ!大導○流、○栓掌!!!」
「ねえ、パロネタはやめようよ?」
蒼馬の呟きを無視し、泉は攻撃を再開する。
大きく突き出した右手の手の平を、紅夜が難なく避ける。しかも避けたのは腕の外側。追撃がしにくい位置だ。
だが泉は踏み出した右足を軸にし、地を這うようなローキックを回し蹴りで放ってきた。たまらずバックステップで回避。
泉が左足を地に付けると、その遠心力の力で床を蹴り、野獣のように突進。一足で間合いに入る。
「オラオラオラオラオラオラァ!!!!!」
泉の拳の弾幕を、紅夜は全て避ける。手で軌道を変え、身をひねり、移動し、すり抜け、隙を見つけて逃げ出す。
「ちっ……流水の動きか。厄介な。ならば……これは!?」
腰を中腰に、右腕は腰の位置で止め、静かに息を吸って吐く。
「大○脈流最強奥義!臨・○・体・拳!!!」
「あの〜、だからパロネタは……」
蒼馬の言葉をきれいに無視し、泉の右手から放たれた目に見えない闘気の塊は、紅夜の『いた』空間を通り過ぎ、その後ろにあった棚にぶつかった。
けたたましい音が部屋の中にいた全員の耳に届いた。
が、泉がわけの分からない運動エネルギーで棚を壊しても、その場の全員はこれといって動じない。いつものことだからだ。
「ったく………ん?つづらか。どうした?」
意外と言うか予想通りというか、一番初めにつづらに気付いたのは紅夜だった。他の皆もこちらを向き、気付く。
「ん〜……特に用はないけれど、暇だから来たの。…で、この騒ぎの原因は一体なんなの?」
「いや、まあ、大した事じゃないのよ!」
「そんなわけないでしょう命姉!!アレが、アレが大した事ないことですか!?あの不遜な狼藉者がはたらいた余りにも卑しい出来事を!?」
命がしどろもどろに誤魔化すと、それを妹が台無しにする。あれで誤魔化される人もいないだろうが。というか、泉は何時代の言葉を話しているのだろう。
「べ、別にいいじゃない!その事はもう水に流そうよ!!」
「いいえダメです!!無礼を承知で言わせてもらいますが、命姉は自己防衛意識が欠けています!!あのあからさまに命姉の体狙いの者に簡単に接近を許してしまうようではいけません!!!」
確かに泉の言っている事も一理はある。もしも命が町に飛び出したら、まして渋谷とかに行ったとしたら、ちゃんと帰ってくるかどうかは怪しいものだ。
だが、その反面泉はガードが固すぎる。もう少し男性に心を開いてみてもいいと思うのだが……。これも名家の教育の一つなのだろうか?
命と泉を足して二で割れば丁度よくなるのにな、とつづらは思った。

とりあえず今も論争を続けている二人はほうっておいて、蒼馬と紅夜のほうへと近づく。
「一体何があったの?」
「え、あ、いや、まあ確かに大したことじゃあないんだけど………」
命以上に言葉に詰まりながら、蒼馬は紅夜に視線を送る。伺うように、話してもいいかというように。
「ああ、別に大したことじゃない。さっきここで四人で仕事をしているとき――九条泉も残念な事に来ていてな――命が飲んだお茶のコップを俺が間違って取っちまって、それに気付かず飲んじまったんだ。んで、この有様さ」
紅夜が軽く両手を広げ、自嘲気味に笑いながら辺りを見渡す。何度見てもひどい有様だ。つづらも今、足の下には紙が敷かれてある。
「ま、泉君が怒るには十分な理由だったってワケだろうね。ああ、でももうど〜しよ〜これ〜」
「………?」
目の前でこれからを想像し落胆している蒼馬はどうでもいいのか、話を聞いていたつづらが小首をかしげる。
「……どうした?」
「ううん、大した事じゃないの」
『なんでもない』とは言わず、つづらはその場を離れ、まだ揉めている九条兄弟の方へと歩いていった。
つづらが泉の肩をちょいちょいとつつく。
「!?つづら!?なんでここにいるんですか!?」
さっきこちらは見たはずなのだが、もう忘れてしまっている。それとも、元から目に入っていなかったのだろうか。
「ちょっと前からいたの。それよりも聞きたい事があるんだけど……いい?」
「?ええ……別に構いませんが?」

命に一言いい、教室の隅へと移動する。その間泉は「まあ、こんなに散らかって。駿河紅夜はどうしてこうなんです?」とか言っていた。
「えーと……聞きたい事って?」
「うん。別に大したことじゃないけど、どうしてこーやくんがお茶を飲む前に止めなかったのかなぁ、って思ったの」
つづらの質問に泉は、鳩が豆鉄砲食らったような顔をした。
「???………はあ。どうしてって……?」
「妹さんなら飲む前にテーブルをひっくり返してでも止めるんじゃないかなと思ったの」
「いや、別に、私もずっと気を張っているわけじゃなくって……。ただ、気付いたら飲まれてたってだけで……」
「考え事でもしていたの?」
「う、まあ……そんな所です」
答えながら、泉の心の中は?マークでいっぱいだった。一体どうしてこんな質問をするのか、全く意味が分からなかった。
「どんな考え事?」
「どんなって……そんなの、いちいち覚えてませんよ」
「それじゃあ……当ててみるの。え〜っと……テストの事なの?」
「違います」
「彼氏の事なの?」
「いません」
「お姉さんの事なの?」
「っ、違います!」
しまった、と泉は思った。唐突に来た核心に迫る質問に対し動揺し、思わず強く否定してしまった。これじゃあ、正解ですといっているのとなんら変わらないじゃない。
嘘発見器の尋問でも、こういうやり方はよく使われている。始めは全然違う質問をして、相手を油断させる。来るであろう質問に備えていると嘘発見器も反応しにくいからだ。
そして突然核心の質問をする。これにより、相手は突然の質問に対処できず、尻尾を出す。
つづらも同じ手を使ったわけだが、ここまで如実に現れる事はまずない。泉の性格も、成功の要因の一つだ。
つづらは狙い通りの反応が来ると、ニヤリと笑った。
「そうなの。じゃあ……お姉さんと『ピーーーー』なの?」
つづらは顔色一つ変えずにそう言う。それを聞いた泉は顔を真っ赤にした。
「なっ、そ、あ、ち違います!私そんなこと少しも考えてなんか!!」
「分かったの。じゃあ、妹さんがこんな事を考えていたって、私なりの考えをみことちゃんに言うの」
それを聞いた泉は、今度は顔が真っ青になった。
「ちょちょちょちょちょっと待って下さい!!それは、それだけはやめて……!!!」
「?変なの。私は別に何を言うかなんて言ってないの。でも、やめて欲しいなら今すぐ喧嘩はやめるの」
「う、そ、それはムリです!駿河紅夜には、今日こそ天誅を食らわせねば!!」
「じゃあ言うの」
「え、ええ、どうぞ?でも、私も付き添いますからね」
なんとか誤魔化せるんじゃないか?と泉は思った。私も付き添っていって、つづらが何を言ったとしてもすぐ冗談なんですよ〜、とか言えば済む話じゃないか?命姉がそれを信じなければ、これは脅しにならない。
つづらと私、命姉がどちらを信じるかで言ったら、間違いなく私だ。
だが、泉の考えはつづらの次の一言でもろくも崩される。
「みことちゃんの後にはこーやくんにも言うの」

泉はその後、素直に折れた。紅夜に謝るというのは最後まで認めなかったが、喧嘩はすぐやめた。
なぜかつづらと目があっては怯える泉にみんな不思議がったが、いくら聞いても双方が何も言わないので、みんなも聞くのを諦めた。
そして片づけが終わり、まだ怯えている泉につづらが何事かを言って、つづらは生徒会室を後にした。
後日談になるが、泉とつづらは何事もなかったかのように過ごしている。泉と紅夜の関係も相変わらずだ。

「うん、またいいことしたの」
つづらは満面の笑みでそう言う。
今日既にいいことってしたっけ?というツッコミはどこ吹く風、つづらはもう歩き出した。
久遠つづらの平凡な一日は、まだ続く
-- NEXT --------------------------


やっと三回目です。全キャラ出すのが目標ですがなかなか厳しそうです。
ていうかテスト期間中に何やってんでしょうorz。明日最終日ですけど。

[105] 全キャラ出すとかいう無謀な挑戦はやっぱり無謀でした。
ジャッキー - 2007年07月17日 (火) 21時29分

-----------------------------------------
久遠つづらの平凡な一日4
-----------------------------------------
桜ノ宮学園。県内でもトップクラスの進学校でお嬢様学校。それ故、一部のマニアの間ではこの学園の生徒の生写真や制服、その他もろもろにはウン十万の値が動くともいわれている。
その学園内、ある廊下にも生徒が多数いる。
その中でひときわ目立つ、他の生徒より頭一つ分小さい生徒がいた。
髪は一言で言えば変なおかっぱ。おかっぱではないがショートカットでもない、非常に形容しがたい髪型だ。顔立ちは幼い。が、どうも無愛想な顔をしているため可愛いと言えるかどうかは人によって判断が分かれる。
もう四回目となるのでわざわざ言う必要もないが、彼女の名前は久遠つづら。
この話の主人公である。

日も暮れ始めた。今は初夏だから結構遅い時間だ。窓から差し込む紅い光が幻想的な雰囲気をかもし出している。
つづらはある場所へと迷わず歩を進める。
やがて着いた先は図書室だった。
図書室に入ると涼しい空気を感じた。別にエアコンなどはかかってないのだが、どうしてか図書室は涼しい。そのため、本を読まず談笑するために来ているものも少なくない。
この図書室の蔵書は約十万書。もはや「室」というより別館にして「図書館」にした方がいいのでは、という数だ。
つづらは本棚へと歩み寄る。本棚の分類は、外国文学。の……原文。
英語ドイツ語フランス語スペイン語……凡人には手が出したくても出せない代物を平然と見て歩く。
やがてお目当ての本が見つかったのか、つづらは一冊の本を手に取った。題名は「Wuthering Heights」。日本語に訳すと「嵐が丘」だ。
テーブルにすわり、難なくページをめくっていく。
……………
パラパラと、紙と紙がこすれる音だけがつづらの耳に届く。談笑している声などは全く聞こえない。
……………
本を読むスピードは全く衰えず、ただ無表情に文字を見続ける。
……………

「やあ、何を読んでいるんだい?」
読み始めてから一時間ほど経ったあと、突然つづらの背後から声がした。
特に慌てた様子もなく振り返ると、そこには柊蒼月が立っていた。
「……これなの」
つづらが本の題名を見せると、露骨に蒼月は顔をしかめた。
「『Wuthering Heights』……?ん…どっかで見たような……」
「日本語に訳すと『嵐が丘』っていうの」
「ああ、嵐が丘……。って、原文で?」
「うん、そうなの」
蒼月が心底感心したような声を出す。そして蒼月はつづらの向かいの席へと座った。
「今日、色々なところからつづら君の話を聞いたよ」
蒼月も持っていた本を読みながら、そう言った。器用な人である。
つづらも「嵐が丘」を読み始める。
「なんでも、天乃さんに校内バトルロワイヤルの助言をしたり、紅君と泉君の喧嘩を止めたらしいじゃないか」
「……よく知っているの」
「まあね」
沈黙。

「いつもは大人しいのに、どうして今日に限って色々と騒動を起こすんだい?」
「別に今日は特別じゃないの」
相変わらず本から目を離さずに言う。
「いつもと同じ毎日なの」
「……ああ、そうだね」
何かに納得したような言葉を発し、また沈黙。

「………」
「………」
「……つまらなくは、ないかい?」
何が、とは言わなかった。
「……ちゃんと英語でも分かるの」
「違うさ」
きっぱりと言った。
「僕だってそりゃ楽しいさ。でもね、やっぱり物語ならば劇的な変化がなければダメだと思うんだ」
独り言のように、蒼月は語りだした。
「別にドキドキハラハラの大冒険はいらない。ただ……好きな人に構ってもらいたい。それだけなんだ。でも、それだけで僕の世界は絶対にまるっきり違うものになるんだ。隣に彼がいて、彼が僕の事を思っているだけで絶対に違うんだ」
蒼月の言葉には力が込められていた。普段言えずに、表に出せずにいた感情がだんだんと出てくる。心のダムに亀裂が入ってそこから水が出ている状態、みたいなものか。
もはや本など読んでいない。蒼月の目は、もっと違うところを見ている。
「好きだといっているのに少しも振り向いてくれない。それだけじゃあダメってのは分かっているさ。だけど、それ以外にどうしたらいい?他にどんな努力をすればいい?……分からないんだよ、本当に。どうしたら彼に好いてもらえるのか」
互いの目を見ない会話は普段言えない事も言えるのだろうか。喋り終わった蒼月の顔は晴れ晴れとしていた。
「……ヒースクリフは」
唐突につづらが喋りだした。
「キャサリンを愛しすぎるくらい愛していたの。その愛情は多分、並大抵の深さじゃないの。それこそ、裏切られたと思って殺したいほど憎んでしまうくらいに……。つきちゃんは、この二人とつきちゃん達の違いが分かる?」
「……愛情の深さ、相思相愛じゃないこと、ってところかな?」
「そうだけど、もっと違うところがあるの。二人は相手のために自分が犠牲になってもいいと思い、そして行動しているの。つきちゃんの言っている『好き』はもう半ば諦め交じりの言葉なの。それじゃあ、どんな人の心も動かせないの。そしてつきちゃんはそれ以外の努力をしようとしていないの」
蒼月は何も言い返さない。
「……私は恋愛の事はよく分からないから、これくらいしか言えないの」
申し訳なさそうにつづらは言った。
「いや……ありがとう」
そう言って蒼月は席を立った。つづらの横を通り過ぎるとき、つづらが言った。
「……つまらなくなんかないの。毎日は同じようで違うし、つまらないなら自分で変えればそれで済む事なの」
「そうか……。そうだね」
蒼月は図書室を出た。

やがて図書室の開放時間も終わった。外はもう暗く、虫の音色まで聞こえそうだ。
今図書室にいるのはつづらと図書委員が二名、それだけだった。
図書室を出、寮への道を歩き始める。
「今日も楽しかったの」
誰もいない廊下で、誰に言うわけでもなく、つづらは呟く。呟きは廊下を反響し、吸い込まれて消えていった。
「明日もこんな日が続きますように……なの」
夜の空は晴れ、月と星がよく見える。
つづらのささやかな願いは誰に届き、叶えられるのだろうか。
月か星か、あるいは神か。
いや、つづらは元からそんなものに頼るつもりはないだろう。
この世の物事は全て人為が関係する。神に祈ろうとも、願いを叶えるわけがない。
自分の願いは自分で叶える。これしかないのだ。

久遠つづらの平凡な一日は、こうして終わる
-- END --------------------------



や、やっと終わった〜……。
まあ、なんとか綺麗に終わった気がするので、よかった……かな?
実は作者は「嵐が丘」を読んだ事がありません。おおまかなストーリーだけしか知らないんです。読みたいんですが。

実際の小説って最後にこの話で伝えたい事みたいなものがあるので、未熟者ながら書いてみました。……なんとなく蛇足な気がしてなりません。
最初はコメディを目指したのにいつの間にシリアスになってしまったのか……。精進します。

[111] なんともはや。 暴走女帝の続き?
ラスティ・ブランフォード - 2007年07月24日 (火) 23時08分

---------------------------------------
- 桜ノ宮バトルロイヤル企画の末路 -
---------------------------------------

鶯「……。」
蒼月「面白そうだねw」

搦め手?ただの暴走?はたまたマジで暗殺でも狙ってるのか?

光「ちょっと、これは……」
紅夜「何を考えている。こんな企画を受理できるわけ無いだろう。」

企画を見て唖然とする、生徒会会議室に集まったメンバーたち。

ルティア「風紀以前の問題ですわね。」
遊意華「こんなことする学校、普通に考えてどこにも無いよ。」
晴美「お前、実はまだ熱あるんだろ?悪い事言わないから休んでろ。」

冗談とかそう言う次元を超越した『殺せ!桜ノ宮学園バトルロイヤル』の企画書を、
しれっとした面で出してきた雪奈さんに対する反応は様々だ。

紅夜「お前は、もう少しまともな奴かと思っていたが……」
鶯「…………君には失望したよ、天野雪奈! こんな企画……。」
光「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!」
鶯「謝ることはないよ、光。」

突然謝りだした光。だが、それ以上に普段ぽやぽやとしている鶯がマジ切れに近い表情で天野さんを睨みつけた事に驚く一同。

鶯「こんな企画、血の気の多い宇美だって突っぱねるよ。いや、企画者の貴女を真っ先に殴るのが先かな?どこの漫画に影響されてこんな企画を考えたんだい?」
天野「それが、何か?」
鶯「さっきの晴美さんじゃないですけど、『悪いことは言わないからやすんでろ。』もう少し頭を冷やしてから出直してください。追い詰められて、参ってるのは分かりますけど。」

珍しく本気で怒ってる鶯。この企画が彼女の逆鱗に触れたのは間違いないようだ。あまりのプレッシャーに天野さんと鶯以外の面子は沈黙した。

鶯「この企画……ピンポイントで光を狙ってるんでしょう?逆恨みな上になりふり構わないなんて反吐が出そう。」
天野「何が……」
鶯「そんなんだから、前回の主催権も普通科が取ったんだって何で分からないの!他人の事をまるで考えてないわ!人は、貴女の駒じゃないのよ!」

息荒くまくし立てる鶯。恐らく、天野さん以上に感情的になっている事は、彼女自身自覚していまい。

鶯「この間、光がお見舞いに行ったとき、貴女の地雷踏んじゃったような事は聞いた。でも、だからってこんな人死にが出そうな企画に巻き込んでしまえってのは、もう何もかもが最低としか言いようが無いわよ!そこまで怒る理由は私には分からない。光は貴女の気持ちを知らずに踏みにじったのかもしれない!でも、貴女の為を思って言ってくれた一言をこんなやり方で返すのは独裁者のやり口よ!自分以外の何者も認めず、自分以外の他人を見下すような貴女のやり口はもうたくっさんだわ!」

ぜえ、ぜえ、ぜえ。勢い良くまくし立てて、鶯は息が切れる。

鶯「アンタ、何様のつもりよ?私の友達……ヘマトフィリアや独特な雰囲気で色々と白い目で見られてた私に、やっと出来た友達を殺そうっての?もしそうだとしたら、私は許せない。」

そういって、鶯は椅子から立ち上がる。

ガラッ ガシッ

喋っているうちに感情が高ぶってきたのか、天野に殴りかかろうとした鶯を光が羽交い絞めにする。

光「鶯さん、落ち着いて!」
鶯「落ち着けるわけ無いでしょう!?もしこの場に宇美がいても、おんなじ反応してると思うわよ!?そこまで憎まれる理由も、光には無いでしょう!?」
光「そんな事はどうでもいいの!何をどう言っても、雪奈さんが傷ついた事は本当なんだから。でも、だからってここで殴って何の解決にもならないでしょう!」
鶯「こいつは、誰でもいいから、一発、殴って、『痛い』って事が分からないと、この企画、止めない!」

すっかりヒステリックになってしまった鶯。

光「暴れるの、止めないと、私も、手加減、出来な…」

せっかく自分をかばってくれている友達に大技をかけるのは気が引けるが、
このままでは多分誰かが怪我をして血を流し、ヘマトフィリアの発作でさらに暴走を始めるかもしれない。

天野「あくまで、いい子ぶるのね。」
鶯「ほら、やっぱりこいつは一発……」

だが、雪奈の様子がおかしかった。

天野「もう、私は戻ります。お話があるな…ら……」

声が、少し崩れる。
雪奈は、泣いていた。泣いて声が少し枯れていたが、言葉を続ける。

天野「つづ%さんに、おねが#ます。」

気丈に、だが、どこか寂しく。

天野「では…」

ガラッ バタン……

光「……。」
鶯「……。」
つづら「……。」
紅夜「……。」
ルティア「……。」

みなが、口を開こうとして言葉を喉に詰まらせた中……

蒼月「ん〜……。今日のところは、ここまでにしておこうか。」

生徒会長が呟いたその一言を持って、自然解散となった。

-- END or NEXT? --------------------------

……暴走は暴走を呼ぶ。果ての無い連鎖はまだ始まったばかり。
いや、なんともはや。これでは天野さんと鶯と光の死闘フラグ(別の意味でのバトルロイヤルフラグ)が立ったような。

続きは……考えてないっす。どうにもこの後のオチが遠いので。

ジャッキーさんの鶯のイメージ、自分としてはいろんな意味で使えそうな気がします。
ただ、そうだとすると光が気のせいかますます超人化する気もするんですよね……
武術じゃ桜ノ宮学園最強はなんだか不動っぽいし、勉強も割りと死角が無く、
問題だらけ(だけど有能)な宇美と鶯を制御できる唯一の人物。
彼氏持ちで青春を満喫している無敵な常識人。
……なんて言うか、この人がマジ切れしたら怖いって言うのは、誰も止められる人がいないからって言う理由しかない気がした。

「さあ、血を流せ。その血を糧に私はさらに貴様を滅ぼしてやる!」【庭瀬 鶯】
「私の覇道を妨げる者は、如何なる者も許さない!根絶やしにしてあげましょう!」【天野 雪奈】
「魔剣よ…我が力。規律と正義を導き、家族と隣人を守る盾として、闇に落ちし者を共に滅ぼそう!」【如月 宇美】
「争いに果ては無いのです。ですが、一つの争いに区切りをつける事は出来ます。……もう、終わらせませんか?」【如月 光】

……ゲームのプロモーションムービー風に今後の展開をあおってみるw

続きは……考えてないっす。この後の落ちがどうにも遠いので。



それと、ラスティ・ブランフォードねwラブンズじゃなくて。
フルネームだと長いのでラスティでも光原型でもお好きにどうぞ。
なんならあえて間違えた名前、ラブンズで通してもですよ?

[112]
ジャッキー - 2007年07月26日 (木) 00時19分

-----------------------------------------
嵐の後、被害状況
-----------------------------------------

「まったくさぁ……ガッカリだよ。なにさあの企画」
そう言いながら鶯は手に持っている輸血用の血液を口に含む。少しだけ入れて口の中でその味を十分堪能してから飲み込む。
「あんな企画が通らないことなんて小学一年生でも分かるよ。いや、幼稚園児でもだね。ほんっとうに……ふざけないでよ。期待した私がバカだったよ」
「でも……びっくりしましたよ?鶯さんがあんなに怒るなんて」
ベッドに腰掛けながら光が言う。
「ああ、まあそりゃあね。あんなバカな企画を出されて呆れたり怒ったり失望したりしたのも大きな原因だけど、一番の原因はあの企画、モロ光を狙っていたからね、怒らない方がおかしいでしょ」
「だからっていきなり殴りかかろうとなんてしないで下さいね。親友に暴力振るうなんて、私は嫌なんですから」
「うっ……分かったよ、ごめんね」
「分かればいいです。それと、私のために怒ってくれてありがとう」
柔和な微笑を浮かべて光が言う。

「でも……最後、雪菜さん泣いてましたよね」
「ん、そうだね」
鶯はなんでもなさそうにそっけなく言った。
「どうしたんでしょう?」
「別に、どうでもいいな」
「…そんな言い方は無いんじゃないんですか?」
少し険のある声で光が言う。が、鶯はしれっとした表情のまま言葉を返す。
「本当にどうでもいいよ。雪菜さんも主催権も。なんかもうやる気なくしちゃったなぁ……」
鶯の表情は、例えて言うなら疲れきったサラリーマンのようだった。これといった楽しみが無い人特有の表情、そんな顔だ。
「会長辞めないで下さいよ、真面目に。……それはともかく、本当にどうしたんでしょう?」
「ま、遅すぎだけどやっと気付いたってことじゃない?あれでスーパーサイヤ人みたいに復活してくれるなら面白いんだけどねぇ」
「大丈夫でしょうか……」
やけに天野の事を心配する光を怪訝に思った鶯が口を開く。
「?さっきからやけに雪菜さんの事を心配するね、どうしたの?」
軽い気持ちで聞いたが、その言葉は思った以上に光を驚かせた。
「どうしたって……あの人ですよ?こんなことを言っては悪いですが、『女帝』が涙を人前で見せるなんて、そんなこと滅多に、というか絶対ありえません。それが今日起きたんです。心配するのは当然でしょう?」





「ゆきちゃん、元気出してなの」
「……」
総括会室に戻った天野とつづらだが、こちらもさっきから会話をしていない。つづらが必死になって声をかけるのだが、天野は聞いているのか聞いていないのかもあいまいだ。
会長席に座って長い髪を無造作に流しながらうな垂れている今の天野に、『女帝』の名は絶対に似合わないだろう。
「今回は私も悪かったの。せっかくゆきちゃんが相談してくれたのに深く考えもせずに適当な事を言って、本当にごめんなさいなの!」
「そう……じゃあ、『今までは』私が悪かったのね……」
「!ち、違うの!そうゆう意味じゃないの!ただ――」
「ごめんね……」
その言葉を聞いた瞬間、つづらは動きを止め目を見開き、息をするのも次言おうとしていた事も全て忘れた。
「本当に……ごめんね。私がわがままで人の言う事になんか耳を貸さないで、自分のしたいことばっかして更には人を巻き込んで……久遠さんにも恥をかかせて、みんなに迷惑かけて……」
「………ぁ…、そんな、事はないの……」
強くは言えない。天野の言っている事は確かに的を射ていたから。
そんなつづらの力無い言葉は、天野にとっての最後の一押しのようだった。
「いいわよ、本当の事だもん。私ははた迷惑なバカだったんだよね。私なんか……」
「ゆきちゃんしっかりしてなの!ゆきちゃんらしくないの!」
「大丈夫よ」
「大丈夫じゃないの!」
つづらが肩を揺さぶるが、天野はうな垂れた顔を決して上げようとはしない。まるで覇気の無いその姿は、別人と言われても頷ける。
「久遠さん、看護科総括会副会長、辞めてもいいわよ」
「え……?」
「もう明日からここには来なくていいわ」
「何を言って……るの?」
「さあ、今日はもう帰っていいわ」
「ゆきちゃん!」
「いいから帰りなさい!」
嫌がるつづらを無理矢理外に押し出す。そして扉を閉め、鍵をかけた。

「もう私のことなんか………放って置いてよ……」
ドンドンと扉を叩く音を聞かないように両手で耳を塞ぎながら、天野は部屋の隅でうずくまっていた。

-- END --------------------------


はい、どうしましょう?この後。
天野のような天才型は一度躓くとなかなか立ち直れないと思うのですが………これはやりすぎかなぁ。完璧に鬱状態ですね。屋上から飛び降りそう。


いや、光を止められる人物がただ一人!紅夜ならもしかしたら!……ムリか。


鶯たちのセリフを見て何かに似ているな〜と思ったら、
Almagest -Overture-
っていうゲームのキャラのセリフに似ていました。参照↓
ttp://wiki.fdiary.net/Almagest/?%C0%EB%C0%EF%C9%DB%B9%F0(勝手にリンク貼るのは駄目なようなので。でもこれもいいのか……?)


あ………。
すいませんでした。本当に。あの時の僕はどうかしていたんです。

[115]
ラスティ・ブランフォード - 2007年08月07日 (火) 12時55分

・・・勘が鋭いとだけいっときます。
確かにAlmagestには嵌った口ですので。
元ネタとは似てないと思ったんですけどね、あの似非煽り。
別に改変した台詞でもないのにかぎつけられるとはこれ以下に?

[116]
ジャッキー - 2007年08月08日 (水) 09時19分

まあ、今現在もAlmagestにはハマっている(現在進行形)なので。
特に分かったのは如月のセリフですかね。
これを見た時になぜかアンジェリカ・ハーモニカの顔が浮かんできてしまったのです。そういうキャラではないと自分でも思うんですが…。




と、関係ない話ばっかりしてしまいました。
続きはボチボチ書いてます。どうも書きづらいですが、がんばっています。

[117] 長い。メモ帳で12、9KBは長い
ジャッキー - 2007年08月10日 (金) 15時37分

-----------------------------------------
お片づけ
-----------------------------------------
〜〜〜♪、〜〜〜♪
携帯の着メロを「世にも奇妙な物語」のオープニングにしているのは相当な変わり者だと思うが、ご多分に漏れず、持ち主を知っている大概の人はそういう認識を持っている。
未だ音楽が鳴り響くその携帯を、一人の女子生徒が手に取った。
髪は長く背は普通、顔つきはとても優しい印象で、菩薩のようといわれても頷ける。
彼女は携帯の画面を見て相手を確認すると出るかどうか少しの間迷い、そして結局出る事にした。
「はい、光です……いえ、鶯さんは今席を外していまして、ええ…すいません。あ、でもすぐ帰って来ますよ。でも、もしよろしければ伝言などお伝えしますが………はい、分かりましたそれじゃあ……
……………え?す、すいません、もう一度お願いします。
……………え、え〜と…?」
その時、鶯がタイミングよく帰ってきた。
「ん?どったの〜?」
「あ、今帰ってきました。代わります」
光は携帯を鶯に渡す。渡されながら鶯は、誰からの電話かを聞いた。
「つづらさんからです」
「つづらちゃんから?…何がらみの用件かは想像つくけどねぇ。なんか聞いた?」
「あ、まあ、聞いたことは聞いたんですけど……ね。ちょっと私には……。とりあえず、聞いてみて下さい」
光にしては珍しくハッキリしない物言いを不思議に思いながら、鶯は携帯を耳に当てる。
「もしもし?電話代わりました」
「あっ、つづらちゃんなの!?」
焦燥感に富んだ声。つづらのこういう声とは本当に珍しい。恐らく、さっき鶯がマジ切れしたくらいには。
いつものんびりマイペースであまり感情を表に出さないつづらがこんな風に声を張り上げるとは、よほどの事があったのだろうと鶯は思った。
「一体どうしたのさ?そんなに慌てて」
「うん、あのね――」つづらはここで一度、大きく息を吸った。
「――ピッキングがゆきちゃんの看護科総括室をうぐちゃんになるから鍵が半狂乱して立てこもっちゃったの!!!」
常人ならば分かるはずがない。もはやこれは文ではなく単語の羅列に等しい。たとえアインシュタインだろうが金八先生だろうがカウンセラーだろうが、更には神でもこの言葉の意味を汲み取るのは容易ではないだろう。が
「よし、分かった」
「分かったんですか!?」

鶯が光(正常な人間)に分かるように説明する。
つづらが言うには、あの企画の後に天野に付き添って看護科総括室に帰ってきたのだが、そこでいきなり天野が泣き出して何故かつづらを追い出して鍵を閉め、立てこもってしまったという。
そこで、鶯のピッキングスキルで開けてもらおう、と思い電話したという事だった。
「ちょっと待って下さい。鶯さん、ピッキングなんて出来たんですか?」
「ん?ああ、昔ちょっとね」
(一体どんなちょっと……?それに、どうしてつづらさんはその事を知っていたのでしょう?)
疑問は尽きる事はなかったが、これまでの長い経験から聞くことはなかった。聞いたところで満足のいく答えが出る事はないからだ。
「で、行くんですか?」
「ん〜……問題はそこなんだよね。正直あんまり行きたくはないんだけど、わざわざ電話してもらって無視するのもねぇ」
基本的に鶯はこういう事であまり責任は感じない方だ。自分に完全に非があるなら話は別だが、原因がそちらにあって自分がきっかけを与えてしまったとしても、多少責任は感じてもそれは自己責任の一言で片付ける。
例えば、床に無造作に落ちていたプリントをゴミと思って捨てる、それが大事なプリントだったといわれても、それならちゃんとしとけと臆すことなく言える。そういう人間だ。
人によっては冷たいと思うかもしれない。だが、本来人間社会とはそういうものだろう。小学校の低学年は中学年程度ならまだしも、彼女らは既に高校生。小さな人間社会だ。そこで自己管理が出来ない人間はそちらに非があると彼女は思う。
だからこそ、彼女は悩む。
だからこそ、彼女のそばには光がいる。
「とりあえず、行くだけ行ってみたらどうでしょう?」
「…気が進まないなあ」
「そんな事を言わずに、ね?」
光は優しい。それはもう、道端で泣いている子供がいたりしたら絶対に話しかけるような、グリム童話の『星の銀貨』の女の子並みの優しさだ。つまり、こんな風に頼まれたら絶対に無視は出来ない。それが他人でも、だ。
「……はぁ、こりゃ雪菜さんに恨み言の100や200言わなきゃ割に合わないや」
光には敵わない、改めて鶯はそう思った。

「うぐちゃん!」
二人が看護科総括室が見える廊下に来ると、そこの前で座っていたつづらが駆け寄ってきた。
座っていたときのつづらはどこからどう見ても元気がない様子だったが、二人の姿を見ると瞳に光が戻った。
「ひかりちゃんも…本当にありがとうなの!」
「言っとくけど、雪菜さんのためじゃないからね?つづらちゃんたっての頼みだからだよ?」
扉の前に立ち、かがんでポケットから細長い針金――先が少し複雑な形をして、それがただの針金とは違うということを感じさせる――を取り出して、取っ手の穴に差し込む。
しばらくカチャカチャという音がしていたが、やがてガチャリ、と大きな音がした。
「開いた」
短い言葉を残して鶯は扉の前から退く。代わりにつづらが取っ手に手をかけ、一度深呼吸した後に扉を開けた。

はじめ天野がどこにいるか、三人には分からなかった。
何秒かじっくりと部屋を見渡し、やっと見つけた。
部屋の中は散らかり放題だった。ゴミ箱には紙が入りきらずにあふれ、周りが白い海と化している。どうゆう経緯でこうなったのか、たいした想像力がない人でも、というかほぼ全ての人類が分かるだろう。
机の上も同様だ。クシャクシャに丸めた紙が机の上に溜まっている。辛うじて何かを書くスペースが残っている程度で、それ以外は目も当てられないほどに荒れている。
そんな部屋の隅、部屋を上から見て入り口を下にして左上の部分に、体育ずわりをもっと小さくした形で座っている天野がいた。自慢だった長髪は地面に力なく垂れ、それが黒いカーテンとなり、ここから表情を見えなくしている。
つづらが天野のそばに駆け寄る。
「ゆきちゃん、しっかりしてなの!お願いだから元気を出してなの!」
天野は何も言わない。それどころか、言葉を聞いているのかどうかさえ定かではない。空虚な瞳を地面に落としたまま、微動だにしない。
「また次があるの!こんなところで転んじゃうなんてゆきちゃんらしくないの!ゆきちゃんは最多主催権獲得を目指して、もうすぐ三年連続できるのに、今ここでやめちゃうの!?」
「…………ィャ……」
微かに天野の長い髪が揺れた。同時に、ヒステリックな悲鳴じみた声が口からこぼれる。
「もうイヤぁ!!主催権も会長も、もう全部イヤぁ!!!お願いだから放って置いてよ!お願いだから、頼むから私になんか構わないでよ!!触れないで、近づかないで、話しかけないで!!!」
迸る絶叫の迫力に、三人は少しも動けない。
「私が悪いんでしょう!?そうなんでしょう!?だったら私が消えれば全部解決じゃない!なのにどうして構うのよ!どうして励まそうとなんかするのよ!」
天野が両手を振り上げ、それをつづらに当てる。力無いそれは小さいつづらの体を倒すまでにも至らず、崩れ落ちて床に手をつくだけだった。
「ゆきちゃん……」
天野の変わり様につづらもかける言葉が見つからない。いや、見つかってはいるのだがそれを言い出せない。言ったところでどうなるものでもないと思ってしまうからだ。
たかだか十何年しか生きていない彼女らに、こうまでなってしまった人を復活させる言葉など、都合よく見つからない。
床に手をついて泣いている天野を前に何も言えないつづらを退けて、鶯が天野の前に来た。
「雪菜さんさぁ、こんな経験ある?」
鶯はなんでもないように、まるで世間話でもするかのように話しかける。
「私じゃない他の人の話なんだけどね。…みんなは隣の人と机を合わせているのに自分だけつけてもらえない、給食の時みんなは班にして楽しそうに食べるのに、自分だけつけてもらえず一人で食べる、みんなの牛乳パックを運ぶのはいつも自分、掃除の後片付けも全部自分、休み時間に遊びに入れてもらえなくて教室の隅で一人で本を読む、『吸血鬼狩り』って名目でみんなから石を投げられる、罰ゲームであいつに告白して来いのターゲットにされる、ふでばことかノートとか上履きとかがゴミ箱に捨てられる、人が落としたものを拾って返したら『汚い』って言われて目の前でゴミ箱に捨てられる、ドッヂボールのチーム分けで最後まで残って、じゃんけんで負けた方がしぶしぶ自分を入れる、吸血鬼は外に出たら死ぬとか言って体育倉庫に閉じ込められる、先生にこのことを言ったら『チクリ』って言われてもっとひどいことをされた」
顔を伏せていた天野もいつの間にか顔を上げていた。眼前にはいつもと変わらずポヤポヤした笑みを浮かべる鶯。その口から出る言葉と顔のアンバランスさが異様だ。
「悪いね、これだけは言わせて」
光が何かを言おうとするが、鶯はそれを制止する。
「男子にスカートをめくられたことある?殴られたり蹴られたりした事ある?その痣を両親に見つかって必死に誤魔化した事ある?机に落書きされた事ある?それを見つけて咎めてくれた同級生に、その人がなんて言ったか分かる?」
天野の瞳には畏怖の念。その表情のまま固まっている。
「『近寄らないで』……って言ったんだよ」
天野の瞳が大きく見開かれ、表情筋が驚きの形に定まる。つづらも同様だ。
「その人はとっても疑心暗鬼だったらしくてね、助けてくれたその友達も絶対に自分を貶めるつもりなんだって理由も無く思ったんだ。バカだよねぇ、ホント。結局、その同級生が根気強く何度も話しかけたりしたおかげでその人も今じゃ普通になったらしいけど」
鶯の語る口調は始めから今このときまで全く変わらない。それこそ、そこのアイスクリーム屋の味の批評でもするくらいに自然だ。
「……とまあ、私の言いたいことは分かったよね。あんたの今の悩みなんてこの人に比べればクソみたいってこと。正直、後ろであんたの独白聞いているときに私、吹き出しそうになったよ。こんなことで悲劇の主人公を迫真の演技でしているあなたがとっても滑稽でね。いやホント、怒る気も失せた。……ホラホラ、いつまでそうしてるの?さっさと立ってよ。それともこの会話法じゃダメなのかな?自分よりひどい境遇の話を聞かせると元気が出るっていう、古典的でも効果的な方法をとったんだけど」
「……黙りなさい」
天野の声だ。さっきの悲痛な叫びの声とは対照的な、威圧感のある抑揚。瞳には知性の光がともり、静かに鶯を見つめる。
「あなたはいちいち、本当に頭にくるわ。敵である私に塩を送るところなんて特にね。あなたはそれで優越感と自己満足、私に借りを作れて大満足でしょうけど」
「いやぁ、私は適当に善人で適当に悪人だけどね?それにこれ、雪菜さんのためにやった事じゃないし〜?つづらちゃんが泣いて頼むから仕方な〜くやっただけだし〜?だから感謝しなくていいよ、ホントに、うん」
「人の心を逆なでするパフォーマンスに関してはあなた、ハリウッドにいけるわよ」
「それはどうも。雪菜さんだってさっきのうつ状態はシンジ君といい勝負よ。ヘタレっぷりが愛しいなぁ♪」
両者は笑いながら次の行動を模索する。いかにして相手の体制を崩し、強烈な一撃を与え、ラッシュを叩き込むか。それぞれの頭をフル回転させる。
「あなただって昔はそうだったんじゃないの?部屋で一人泣いている姿が眼に浮かぶわ〜」
「残念、私はもう克服しましたので。あ、今神様の天啓が下ったわ。今日出した雪菜さんの企画、あれは生徒会の歴史に残るね!いや、その逆であまりにも(バカらしくて)危険なので抹消されちゃうかな?」
「鶯さんには一生出せない企画でしょう?」
「出したくなんかないなぁ、あんなジェイソンとジャック・ザ・リッパーが合同制作したような企画書」
「………ふう、あなたはどうやら、あの企画の真の意味に気がついてないみたいね」
呆れたようなため息をつく天野に、初めて鶯の表情が変わる。余裕の笑みから不審のまなざし、そして警戒のオーラの順で落ち着いた。
負け惜しみ?という鶯の言葉を完璧に無視し、天野が口を開く。
「――あの企画の真の意図、対象は、人間の負の感情の部分ではなくて正の感情の部分にあるの。今この学園内でもモラルの低下が問題になっているでしょう?この企画は、そうしたものを全て解決できる可能性を秘めているのよ。
例えば私が如月さんを襲ったとしましょう、そうしたら鶯さんは彼女を守る、それがこの企画の狙いなのよ。人間の結束力が一番強くなるのは、自分たちにとって脅威になる共通の敵が現れたときよ。敵が二人なった私は誰かに協力を求めるわ。そうね……久遠さんに応援を頼んだとしましょうか、そして私たちの結束も強くなる。これを繰り返していくといつか学園内は勢力が二分される、こうなると本当にもう戦争ね。そしてその状態でいつか私たちは気付く。

争いとは不毛な事だと

もちろん争い全てがそうだとは言わないわ。競争は人間の能力を向上させる一番の活力剤だし、争いなくして今の現代社会が成立する事は無い。でも意味のない暴力のぶつかり合いの争いは無駄だと気付くわ。誰かがそれを声に出して言えば、争いは途端に終結、戦争状態だった両者は手を取り合いました。これでこの学園全体の結束力は跳ね上がるわ。もう風紀委員が言っていた侵入者の入る隙もなくなるでしょうね。
それだけじゃない。この事で傷ついた学校の備品を自分たちで直すというのもこの企画にはあるの。これには、物を大切にするようにとの意図があるのよ。誰も自分で作ったものを壊されたり汚されたりしていい気分はしないでしょう?これによって、学園内の備品への故障や落書きなどの被害はぐんと減ると予測できるわ。
分かった?人間とは一度痛い目にあわないと学習できない生き物なの。だから私はこの企画を出したのよ。戦後から62年……記憶が風化する時代に、こういうものも必要なのではないかしら?」
今考えついたのなら大したものだ。果たしてあの頭に血が上って噴火しそうだった頭でここまで考えられていたのかは身を焦がすほど激しく疑問だが。
鶯他三人はしばらくぼ〜ぜんとしていたが、やがて鶯が突然、腹を抱えて笑い出した。
「なっ……なんです!?突然笑うなんて!」
「う、鶯さん……どうしました?」
「うぐちゃん……?」
三者三様の反応を見せる中、やっと鶯の笑いが収まってきた。
「はぁ……はぁ……いやあ〜、ゴメンゴメン。私としたことが……あの企画にそんな意味があるなんてことまでは気づかなかったなぁ……。
うん……もう大丈夫そうだね」
鶯はそう言うと、光に「帰るよ」と言ってさっさと帰ってしまった。つづらがありがとうと言ったが、その返事も適当だった。
つづらは天野に向き直る
「ゆきちゃん……」
「もう大丈夫よ……ありがとうね。それと、ゴメン。さっきひどいこと言っちゃって……」
「ううん、ゆきちゃんが元気になればそれでいいの」
「そう……」
天野は一度目を閉じ、何かを思案するような表情をして目を開く。
辺りを見回して一言言った。
「まずは片付けからね。手伝ってくれる?」
-- END --------------------------





お、終わった……。あれ、前にもこんな事を言ったような気がしなくも無い事も無い。
どうもムリヤリ復活させた感とか、とってもいらない会話とかが合ったような気がして当初の構想より二倍の長さになってしまいましたが、満足の逝く結果にはなりました。まだまだ天に召しはしません。

ちなみに鶯の誰かの話、10%くらい実話が入ってたりします。ま、今となってはいい思い出です。もう自分も相手も気にしてませんし。
あれくらいいじめでもなんでもないですしね。

次はギャグを書きたいなぁ……(またか

[121]
ラスティ・ブランフォード - 2007年08月11日 (土) 22時37分

まあ、納得の行く形に執筆できないことはプロでもあるんだから、
自分らのような素人が特に気にする必要もないと思いますよ。
書きたい形で書いて、反感買われる様な物でなければ。
今回のやつは、結構いい落ちのつけ方だと思いました。
正直、光に落ち込ませてしまったもんだからどうやって復活させるか思いつかなくてお手上げでしたし(汗
正直ほっとした感があります。

Almagest。ちょこちょこ起動して全キャラフルステを地味に目指してます。
……元首の能力上げがめんどい。
確かに多少は意識して煽りっぽい台詞を書きましたが……。まさか嗅ぎ付けられるとは思いもしませんでしたよ。
……お気に入りの国家はなぜかクリアウォーター行政区だったり。
って言うか、保守は全般が好きっす。

ネタです。
どっかで見たような能力も要るでしょうが、特に当てはめてないのもいます。
戦略持ちが3人も元首なのは仕様です。

生徒会:連邦or籠の中の鳥。……最強元帥やバグ元帥じゃなくて師匠元帥?
     名前    | 階級 | 艦攻 | 艦防 | 知力 | 政治 | 遭|侵|防| 特殊
ソウゲツ ヒイラギ | 元首 | 72 | 10 | 64 | 84 | A|D|B| 戦略
コウヤ  アヤカワ  | 元帥 | 40 | 80 | 96 | 90 | A|A|A| 統率
ソウマ  ヒイラギ | 准将 | 52 | 30 | 60 | 43 | C|C|C| −−
ミコト  クジョウ | 准将 |  5 | 10 | 53 | 72 | E|E|E| 象徴

風紀委員会:なんて言うか、イザナミ。宇美が暴慢らしい。
     名前    | 階級 | 艦攻 | 艦防 | 知力 | 政治 | 遭|侵|防| 特殊
ルティア アマツ  | 元首 | 53 | 65 | 75 | 73 | B|B|C| 統率
イズミ  クジョウ | 准将 | 77 | 43 | 62 | 66 | B|C|E| 救急
ウミ   キサラギ | 大佐 | 100| 30 | 55 | 21 | A|C|S| 制圧
ミクト  シモツキ | 少佐 | 85 | 63 | 65 |  5 | B|A|S| 軍事

普通科:アプサラス。万能超人が鍵を握る気が。
     名前    | 階級 | 艦攻 | 艦防 | 知力 | 政治 | 遭|侵|防| 特殊
ウグイス ニワセ  | 元首 | 72 | 50 | 89 | 84 | A|B|A| 戦略
ヒカル  キサラギ | 大将 | 84 | 96 | 90 | 80 | S|B|B| 内政

看護科:青薔薇。鉄城にしたのはあえて開き直った。
     名前    | 階級 | 艦攻 | 艦防 | 知力 | 政治 | 遭|侵|防| 特殊
ユキナ  アマノ  | 元首 | 60 | 43 | 85 | 95 | A|B|C| 戦略
ツヅラ  クオン  | 中将 | 60 | 100| 65 | 44 | B|B|B| −−

美術科:禿行政区っぽいけど、生徒会との中の良さ(正しくは紅夜の支援)で維持してる感じがする。
     名前    | 階級 | 艦攻 | 艦防 | 知力 | 政治 | 遭|侵|防| 特殊
ユイカ  ハナゾノ | 元首 | 21 |  8 | 54 | 75 | C|C|D| 象徴
ハルミ  クスハ   | 少将 | 88 | 70 | 35 | 29 | A|E|C| 軍事



在野

     名前    | 階級 | 艦攻 | 艦防 | 知力 | 政治 | 遭|侵|防| 特殊
ロウキ  シモツキ | −− | 80 | 80 | 80 | 80 | A|A|A| −−
ナナミ  シモツキ | −− |  5 |  5 | 50 | 25 | E|E|E| 奉仕
ミズキ  アリスガワ | −− | 34 | 33 | 70 | 66 | E|E|E| −−
シセン  クスハ   | −− | 96 | 70 | 80 | 32 | A|C|C| −−
シズカ  ホンミヤ  | −− | 70 | 77 | 79 | 74 | B|B|B| 参謀

……って、他の方の作品宣伝してるようなもんじゃないか。
まあ、悪乗りはここまでにしときましょう。

シズカ ホンミヤ。
本宮 静香

……常星ASで本来は書記を勤めていた人物です。
九条さんに喰われて消えましたが。
ものすごくキビキビしてて有能らしく、柊兄妹もたじたじなメガネっ子らしい。

[122] 悪ノリしたくはなかったけど、これを見せられて黙っていられる人はAlmagestプレイヤーじゃない!
ジャッキー - 2007年08月12日 (日) 00時01分

と、タイトルに威勢のいいことは書いて、実際今コメントしたい気満々なのですが、書くと止まらなくなってスレッドが別のものに変わりそうなので自粛。

しかしすごいですね、よく考えて書いたものです。(結局コメはするのかい)
見てるだけでどいつとどいつを編成したら特殊効果が発生する、なんてのを想像させられます。

……あれ?シズカ ホンミヤってだれ?

[126] Almagest は知ってるけどプレイしたことはないなぁ〜。
凪鳥 - 2007年08月20日 (月) 23時34分

ゲームそのものは知ってますけど、私はプレイしたことはありません。
実は相棒がこういう戦術ものが好きなんで作りたいなぁ〜と、言っていましたが…流石にむりかなぁ〜と。
作れるなら、私も作ってみたいですけど、なかなか、一筋縄ではなさそうです。

でもこういうのにあてはめてキャラクターを考えてみるのも面白そうですね。

[150] 夏祭りフラグ成功(ゲームか)
ジャッキー - 2007年09月07日 (金) 09時14分

-----------------------------------------
反撃
-----------------------------------------
「さて……どうしようか」
企画書案、と題された紙を前に私は、ペンを握りながら考えていた。
夏休み中に何かをするのは決まっているので、休み直前の今、その何をどうするか決めなくてはならない。
更に言えば、ここは絶対に私たちがとらなくてはならない。
既に普通科は2、我ら看護科は0、美術科も0
戦況は全く芳しくない。
間違っても、普通科にとられるわけにはいかない。とられたその時点で、ほぼ向こうの勝ちは決まったようなものだ。
「オーソドックスにいけば、夏祭り、水泳大会……ってところなの」
傍らに座っている久遠さんが提案する。
「そうね、奇策はやらずに、正攻法が一番いいかもしれない」
基本は強い。全くだ。
「で、どっちにするの?」
「まあ、夏祭り、でしょうね。ただ、向こうも同じことを言ってくるだろうから、いかに私たちの夏祭りを他と一線を画すか、それが勝敗を決めることになりそう」
自分でも伸ばしすぎ?と思う長い髪をかきあげながらそういう。気に入ってるからしばらく切るつもりはないけど。
鶯さんだったらどんな風に切り返してくるだろう。そんなことをシミュレーションしてみる。美術科は……いいだろう。
自分でも驚くくらいリアルにその場面が想像できた。……勝敗は分からなかったけど。
「あと何日だっけ?」
「確か、一週間……なの」
一週間。それだけあればなんとか練れるだろう。
負けるわけにはいかないのだ。
-- END --------------------------



迷ってます。
すっごく迷ってます。
主催権会議を書こうかどうか、すさまじく迷ってます。
でも、まあ、無理っぽいです。「私が書く!」という意気のある方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。

この時にもう士仙来校、ってことでいいでしょうか?

[151] ここで普通科が取ったら、もう崩れ落ちるしかないと思う。
ラスティ・ブランフォード - 2007年09月10日 (月) 17時45分

主催権会議……ですか。
話の流れとは言え、普通科に自分が書いた作品で2つも与えてしまったので、
今回は自重したいと思います。

自分が考えている展開は、今回普通科は主催権とは関係なく、夏祭りで出店を出すつもりです。
……その辺の流れは普通科の方に投下。

[163] 会議なんて書けるかぁ!
ジャッキー - 2007年09月20日 (木) 23時55分

-----------------------------------------
- 戦果報告 -
-----------------------------------------
長々とため息をつく。
こんなにも緊張した会議はいつ振りだろうか。多分、一年の最初の頃くらい以来じゃないだろうか。正直、気が気じゃなかった。
「やったの」
「ええ」
それ以外特に言葉は要らなかった。
手元に目線を落とす。
そこには確かに了承の印が押された私の企画書があった。

鶯さんの反撃は私の予想していたものと大差はなかった。
チャランポランの動きなのに繰り出される攻撃は超重量の重さがあるのだ。並の人間なら最初の一言でもう勝負は決まっている。
というかこういう弁論戦でもなんでも、最初というものは特に肝心なものだ。
要は最初にビビッた方が負け、というワケ。
まあその超重量級の蹴りも当たらなければどうという事はない。来る方向がわかっていればそこに体を置かなければいいだけだ。あるいは避けるとか、ね。
それよりも驚いたのは美術科だった。
今までは――といっても1回しか対してないし、2回目も口頭でしか聞いてないけど――美術科は出てきて意見を言ったはいいものの、少し反論すればすぐ何も言えなくなる、悪く言えばザコ、良く言えば……なんて言えばいいのかしら? まあ、そんな感じ。
一応予想のレベルよりも2段階は上の対策はしておいたから大事には至らなかったが、正直驚いた、脱帽した、虚を突かれた、足元をすくわれた、揚げ足を取られた、は違うか。
一体どうしたのだろうか。文教堂で交渉術の本でも買ったのか? 変わり身の術で他の誰かだったのか? 誰か家庭教師でもついたのか? などといった推理もしたくなる。
そしてまあ、このことを傍にいる我が看護科総括会の小さき副会長に話してみたら、簡単に答えが返ってきた。

「たぶん原因はしーくんなの」
「しーくん?」
クレヨンしんちゃんのことだろうか。
「しーくんっていうのははるちゃんの妹で本名楠葉士仙、現在高一、身長183センチ体重83キロ、体脂肪率は6・2%のすごくがっしりした体格なの。お菓子作りが得意でその実力はあのこーくんにもうまいと言わしめたほど」
……晴美さん→高一
士仙さん→高一
………。
二卵性双生児? それとも4月生まれと3月生まれみたいな感じ?
って、
「いやあの、そういう個人情報はいいんだけど?」
「勉強も非常に良く出来るという噂だけど――」
聞いてないし。
「――コレは多分間違いないの。というか、頭が切れすぎるの。私とうぐちゃんとの共同盗聴大作戦、通称「壁に耳あり障子に目あり」作戦がことごとく敗れてしかも仕返しまでされたの」
今、何か不吉な単語を聞いた気がするわ。
「現在分かっているだけで校内のファンは30人を超していて隠れや中等部を含めれば70人は下らないの。ファンクラブでは自作のTシャツやグッズがあり今はフィギュアまで製作中だという噂なの」
「いや、もういいのよ?」
「本当に、もっとボンヤリしたプロレスオタクだったら半月になっちゃうの」
…それは多分もう1年先だと思うけどね。
「って、そんなのはどうでもいいの。それがどうして美術科の進化と関係あるの?」
「うん、噂ではしーくんが美術科に会議で勝てるようにアドバイスしたとかしないとか」
「は〜……そういうことか、ハイハイ、そういえばそんなこともあったわね」
女子たちがキャーキャーと騒がしかったのは覚えている。ついでにその時は意気消沈していた時期と重なったりもしたりしなかったりすることがあるのかもしれない。
「で、どうなの? ゆいちゃんたちは」
「……今は脅威ではないわ。ただ、次…の次くらいには分からなくなるわね」
まあいい、向かってくるなら叩き潰すまでだ。
いいでじゃない、苦難上等、私の往く道は茨の道、舗装道路などこっちから外れてやろう。
崖がそびえるて回り道をしろというなら登ってやろう。
谷があって引き返せというなら渡ってやろう。
雪が積もって一緒にいようというなら掻き分けて進んでやろう。
目指すは1つ。
天下。
-- END --------------------------


明日は文化祭だったりします。
出発は7時だったりします。
11時に寝なきゃ辛かったりします。
もう寝ます。
失礼しました。

[164] さて、これはなんのフラグだろう?
ラスティ・ブランフォード - 2007年09月22日 (土) 18時08分

-----------------------------------------
- 夜の出会い -
-----------------------------------------

深く、闇に落ちる時。今は、日本時間で9:30。

つづら「……すっかり遅くなってしまったの。」

今日は休日。寮を出て買い物(色々と怪しげな物)を買いに行っていたのだが、困った事に学園の正門は閉まっていた。

つづら「……さて、どうするかなの。」

警備の人を呼んで門を開けてもらおうかと思わないでもないが、
なんとなくそれは彼女のプライドが許さなかった。

つづら「確か、この間マルコキアスが出入りしてるところがあったはずなの。」

マルコキアスは、桜ノ宮学園内においては微妙な立場である。
名目上は普通科が管理しているという話ではあるが、飼う為の設備やペット小屋があるわけでもなく、
実際には野良と対して変わらない生活をしている。
よく桜ノ宮学園から抜け出して、裏手にある黒森神社などにいる事があるほか、
紅夜に代表されるようによく引っかいたり噛み付く等の問題行動には、
何時も普通科副会長の光が頭を悩ませているわけなのだが……

その話はさておき。
マルコキアスが学園から抜け出すときに使う、フェンスの穴の前でつづらは悩んでいた。

つづら「……。」

さすがに、猫一匹と違って人が通れるほどの大穴は開いていなかった。
手を、頭をフェンスの穴に向けて入れてみる……
が、どう考えても無理があった。
フェンスを壊すと言う考えが頭をよぎったが、その前に自分の背後に強烈な気配を感じた。

つづら「!?」

格闘技を学んでいるお陰で察知できたほどの、圧倒的な強烈な気配だ。
そのプレッシャーの正体は……

??「……こんなところで何をしているんだい?」

黒っぽい服を身に包んだ男。
一件ひょろっとした優男的な雰囲気は受けるが、
さっき放っていたプレッシャーは、
本職の極道でもここまで放てるかと言う様な純粋な怒りだった。

つづら「……正門が閉まってしまっているから、こっそり寮に帰ろうと思って。」

相手が学園の女の子だと理解した途端に、
さっきまで残っていた重苦しいプレッシャーを忘れてしまうほど表情が柔らかくなった。

??「ん〜。仕方ないけど、素直に正面から帰りなさい。」
つづら「それより、貴方はだれなの?」
??「学園の裏手にある黒森神社の神主だよ。この前、学園で盗撮事件があっただろう?
話によると、アレは氷山の一角で実際にはまだ事件は解決して無いそうじゃないか。
桜ノ宮学園には娘が通っているし、保護者として心配だから夜の見回りをしている訳なんだが……。」

つづら「そ、そうなの。」

盗撮、と言う単語に背筋が寒くなるつづら。
今回の買い物の中には、盗聴器や隠しカメラの材料などもある。
まさかこんなところでバレてまって、派手に吊るし上げられるような事になりたくないとつづらは思っていた。

??「……もう夜も遅いし、正門まで送ってくから帰りなさい。怒られるのは仕方ないだろうけど。」
つづら「分かったの。」

そう言って、二人は歩き出す。
つづらは態度にこそ出さなかったが、さっきのプレッシャーと今抱えている荷物の為に背筋が寒い。

……冷や汗は、自分の部屋に帰るまで止まらなかった。
怒られながらも、荷物を覗かれるのではないと気が気でなかった模様。

つづら「……こんなスリルはもういらないの。」

今後は門限に遅れることの無い様、無理はしないようにしようとつづらは思った。
そして、ふと気づいたことがある。
自称神主さんの名前を聞くのを忘れていた。
だが、そんな事は様々に溜まった疲れを直ぐにでも休めろと叫ぶ体の前には些細な事だった。

つづら「……明日、行って見るの……」

その一言を最後に、心地よい眠りにつづらは誘われていった……

-- END ----------------------------------

さて、はて、あれ、これ。

……何でこういう話になったんだろう?

元々は狼輝の親馬鹿をメインに置いた話にするつもりだったのに、
何時の間にやら書きあがった内容はこんな物に。


……元々は七海が魔法少女のコスプレして、妙に悪役っぽい(というか、悪の魔女そのもの)言動をしながら幽霊退治をする話で、
狼輝が影ながら支援する(基本ギャグ)内容にするつもりだったのに。
参考にする魔女っ子は『カードキャプターさくら』の予定だった。

やはり、突飛過ぎるネタが自粛させてしまったのか。
いや、普通に扱うには荷が勝っただけの事っすな。

>ジャッキーさん
会議はメインキャラ全員を扱う必要がありますからね。
アレコレソレドレと発言するキャラがころころ変わりますから、普通にやっては手を焼きますよ……。

[168] ルームメイト出してみた
シュレ猫 - 2007年10月03日 (水) 23時09分

-----------------------------------------
- DIANOIA T -
-----------------------------------------

どうもこんにちは。
私は看護科一年の薬袋香織。
看護科二年の久遠つづら先輩、通称つづらちゃんのルームメイトです。
今日は、休日な上にやることも無いので、つづらちゃんの観察でもしてみることにします。

学生寮二階の一番奥の部屋、それが私たちの生活している部屋です。
ここはなぜか他の部屋より少し広かったりするんだけれど、つづらちゃんにそのことをそれとなく聞いてみたら『そういうこともあるの』と、はぐらかされてしまった。というか、ア○ズ・○ザフォードみたいな返事をされた。
ひょっとしたら何か秘密でもあるのだろうか。
ただし、広くなったスペースにつづらちゃんの私物のでかいコンピュータが置いてあるので、実際使えるスペースは実は他の部屋と変わらなかったり。
このコンピュータは、つづらちゃんいわく『小型のスパコンみたいなやつ』らしい。
機能は私のノートパソコンとは大違いだ。勝ってるのはせいぜいコンパクトさぐらいだろうか。

閑話休題。つづらちゃんを起こさないと。
つづらちゃんはいつも起きるのが遅い。というか授業中も寝ているらしいので寝すぎというかもしれない。
寝る子は育つというがはたして、つづらちゃんはあんまり育っt……ゲフンゲフン、さぁ、起こすか。


香織「つづらちゃーん。朝だよー、そろそろ起きようねー。」

つづら「んみゅー……。ねむいのー……。」


つづらちゃんがもそもそと布団から出てくる。
まだ眠い眼をこすりこすり、


つづら「休日くらい……ゆっくりしたいの。」


と、言ってくる。でも、そういうわけにはいかない。
ナゼなら朝食は毎朝つづらちゃんが作ってくれている。
だから起きてくれないと朝食にありつけない、私が。
なのでおなかがへってしまう、私が。
と、いうわけで、どうしても起きてもらう。

-----------------------------------------

朝食(つづらちゃん作)を食べ終わり、つづらちゃんは、彼女の私物入れの小さめのタンス(ナゼか桐箪笥)からケータイを取り出す。
メールチェックは日課なのだ。
実はまあまあ来ているのである。
送り主はまず、大阪にいる妹のきららちゃんなる人。大阪といえば面白い人だろうか、という偏見をもってしまう。もっとも、つづらちゃんいわく実際面白い人らしいが。
そして、去年までこの学校に通っていて、今は近くの大学に通っている姉のささらちゃん。この学校ではそこそこ以上に名前が通っている。でも私は中学まで他の学校だったのであまり知らない。
で、稀にしかこないが、長野にいる弟の弖虎(テトラ)くんなる人。結構兄弟姉妹が多いみたい。
さらに、例の展覧会関係の人。主にはこの人たちからのメール。
中学生時代からの戦友だったらしい我らが有栖川部長殿。
他にいろいろな人。一日最低でも二・三通以上は来る。

ナゼ私が彼女のメール事情を知っているかというと、ケータイを見るなり彼女が『あぁ、○○なの。』と、つぶやくからだ。
なんというプライバシーフリー。なんてこってぇ。
さぁーて、今日も今日とて差出人をつぶやくつづらちゃん。


つづら「あぁ、みーやなの。」


みーや……あぁ、言い忘れてた。
みーやってのは学外の知り合いらしく、みやびっていう名前と、同い年の男の子というくらいしか知らない。まぁ、知らないのが普通かもしれないが。
ひょっとして彼氏か何かだったりするのだろうか。だとしたらちょっとうらやましいような。


つづら「……よし、なの。さてと……。」


とかなんとか私が考えてる間につづらちゃんは寝転びながらパソコンの電源を入れる。
ニートかなんかかこの人は。将来が非常に危うい光景だ。



-- NEXT ---------------------------------

さて今回は、他の誰かから見たつづらの日常がテーマです。
さらに、ルームメイトは全部の部屋(貢永除く)共通ってわけで、つづらのルームメイト薬袋香織登場。
読みはミナイカオリと、苗字が読みにくいです。
ちなみにつづらからの愛称は『カオリン』。数少ないちゃん付けしない呼び方のうちひとつ。
と、いうわけでプロフィール

薬袋香織(ミナイカオリ)
看護科一年
背丈はつづらと違い、平均的。
読みづらい苗字をたまにネタにする。
所属している部活は放送部。
入った理由はつづらが部長の瑞樹から人手不足で困っていると聞き、誘われたため。
目が悪く、眼鏡をかけている。ちなみに『のび太眼鏡』。
報道部及び展覧会のことはある程度知っていて、人手が足りないときなどにたまに手伝ったりする。
必殺技は指弾。

おまけ
我らが有栖川部長殿の補足
つづらの中学時代からの戦友。悪友とも言う。
もともともう一人の悪友との三人組だった。もう一人は他の学校へ入学した。今でも交流はあるが。
関係的にはズッ○ケ三人組(古っ!)のような感じ。
他の学校へ行ったもう一人がハチ○エ。
つづらがハ○セ
瑞樹が(体型的ではなく性格的に)○ーちゃん。
みたいな関係だったらしい。

で、みーやについてはおいおい。


というか、長いよ。と、自分に言ってみる。

[173] 上の続き
シュレ猫 - 2007年10月17日 (水) 22時50分

-----------------------------------------
- DIANOIA U -
-----------------------------------------

パソコンをつけてメールを見ている。
簡単な用や急ぎの用はケータイで済ませているらしいが、文章が長かったり添付ファイルがあったりするとパソコンのメールを使うらしい。


つづら「むぅ……。」

香織「……?」


なにか唸っている。
どうしたというのだろうか。


つづら「……今度の夏祭りに……。なるほど、私がゆきちゃんの浴衣姿を写すわけなの。」


なるほど、また撮影依頼か。


つづら「祭りならかざぐるま型カメラ『回写(カイシャ)』なの。使いどころがあってよかったの。」


またまたそんな変り種を。
彼女のインスピレーションはどうなっているんだろう。
ネーミングセンスも含む。
いや、それ以前に、


香織「どうやったらかざぐるまにカメラをつけれるの?」

つづら「もちろん企業秘密なの。」

香織「ふーん。」

つづら「禁則事項って言ったほうがよかったの?」

香織「聞くだけムダだって事は判ったわ。」

つづら「至極妥当な判断なの。」


今日もわりといつも通りの会話。

-----------------------------------------

次に彼女が手をつけたのは、机上の書類各種。

つづらちゃんの机は恐ろしく散らかっている。
本人曰く『整理はしてるの。でも、整頓はしてないの。』だそうだ。


つづら「さて、さっさと書類を片付けてさんぽにいくの。」


そう言った彼女の机には、
『文化祭企画案 1.03ver』
『文化祭出し物案(仮)』
『文化祭有志団体出し物案(仮)』
『体育祭会議の反省点と対処案(わたし用)』
『同上(ゆきちゃん用)』
『<カレーの作り方レポート>の正しい使用法』
『久遠つづら流 大富豪論(応用篇)』
『久遠つづら式 ゲーム理論X<盤上から消えるキング>』
など、さまざまなレポートがゴチャっと置かれている。
下の三つは趣味で書いているもので、購買部で配布している。

そんな中から、『文化祭企画案 1.05ver』を取り出して書き込み始める。


つづら「そろそろ完成なの。今度こそ勝ってみせるの。」


今回はいつにも増してやけに頑張っている。なにかあったんだろうか。

-- NEXT ---------------------------------

突然ですが、勝手に購買部設定。

私書箱 購買部に対する要望もろもろを入れることが出来る。
有志配布誌 学生が書いたコラム等を一冊50円で配布する。新聞部の新聞も含む。
とか


さて、そろそろオチがつけ難くなってきました。
終われるんだろうか。

ちなみに有志配布誌というネタは、私が前からやりたかったネタで、半ば(どころか完全に)勝手に入れてしまいました。

[201] さらに続きなのさ
シュレ猫 - 2007年11月07日 (水) 23時42分

-----------------------------------------
- DIANOIA V -
-----------------------------------------

頑張って書類に(ありえない速度で)書き込むつづらちゃん。
そうしていると不意に、

『ジャンジャラジャンジャラジャンジャラジャンジャラジャンジャラジャンジャラジャンジャラジャンジャラゴッド○ーン!』

と、着信音。
ケータイ電話だ。
曲はなんと『行け!○ッドマン』だ。しかも着うた。
授業中に鳴ったら(いや、それ以外だとしてもだが)ものすごく恥ずかしいであろうナンバーだ。
ほんとに相変わらずどういう趣味をしているんだろう。何から何まで。


つづら「こんなときに誰なの?」


『おーい!ゴッ○マーン!聞こえるかーい』と、曲が流れるケータイに、ごく当然のように手を伸ばし、画面を見る。


つづら「? ゆきちゃんなの。はいなの。つづらなの。」


なんと相手は天乃会長。
かの『女帝』天乃雪奈閣下も、つづらちゃんにかかればゆきちゃん呼ばわりだ。
おおらかというか怖いもの知らずというか。
先生にまであだ名ため口で普通に通ってるあたり、実はけっこう大物なんじゃないだろうか。


つづら「ちがうのゆきちゃん。『打倒!普通科のススメ』なの。名前は重要なの。もう一度いうの。名前はかなり重要なの。」


なんともはや、会長はたぶんそれどころではないだろうに、つづらちゃんは書類の題名をちゃんと言わせるつもりだ。
会長、御苦労様です。

……というか、今の会長が抜けた後ってやっぱりつづらちゃんが会長になるんだろうか。
これはこれで色々ヤヴァイ。辛過ぎる。次の副会長にはあまりにも酷だ。


つづら「はいなの。とりあえずそこは修正しておくの。 ……題名に変更はなしなの。」


はっはー。譲る気ゼロですか。強情ですねー。
もう本当に天乃会長に同情しますよ。


つづら「…………。」


ちらっ
つづらちゃんが無言でこっちを見ている。
イヤな予感が……。


つづら「わかったの。無問題(モーマンタイ)なの。」


ケータイを切るつづらちゃん。
なっ、何がどうモーマンタイだというのか。
イヤな予感が五割増し。
そろそろ逃げたほうがよさそうな。


つづら「と、いうわけなの。」


どういうわけだ。


つづら「カオリンには書類整理と手直しを手伝ってもらうの。」

-----------------------------------------

雪奈「……よくそんなに集められたわね。」

つづら「みんな任意同行なの。」


ウソをつけ!
みんな半ば以上に無理矢理連れてこられた人ばかりだ。

ココは看護科総括会室。
犠牲者総勢、私も含めて十名。
不運にもココまでの道で捕まった看護科の人たちだ。
そこで驚くべきは、この副会長はなんと、沢山居る生徒達の中、正確に看護科生徒のみを捕捉し、捕獲していたのだ。
ひょっとして、この学校の生徒全部とはいかないまでも、少なくとも看護科生徒全員の顔と名前を把握していたりするのだろうか。
なんとも凄い。いやもう怖いの域だ。


つづら「えーっと、もうすぐ次の会議があるにもかかわらず、土壇場で資料のミスが見つかったの。」

雪奈「だから、急いでミスの修復とかをしたいんですが。とりあえず、この部屋の片付けからしましょう。」


会長が言う。
この部屋は、思えば来るたび散らかっていたような気がする。
会長、副会長、そろって整頓が出来ていないのだろうか。
置かれた机の上には、資料資料資料資料資料資料漫画資料資料、とごちゃごちゃだ。

……ん?漫画?漫画が資料に混じって見えている?
誰がこんな所に漫画を持ち込んでいるというのか。


雪奈「あと久遠さん。」

つづら「どうしたの?ゆきちゃん。」

雪奈「いい加減そろそろ漫画類を持ち帰りなさい!」


つづらちゃんでした。


つづら「些細なことなの。大目にみてほしいの。」

雪奈「全く些細じゃありません!いいから持ち帰ってください!!」


そんな会話で、もう何度目となるかの看護科総括会室大掃除が始まった。


-- NEXT ---------------------------------

ヤバイ。
本当にオチが思いつかない。
その上、あらぬ方向へ飛んでいっている。
これは本当にヤバイ。

それはさておき、続きを書くために前の話を読んでたら、カオリンがいつの間にか『なんてこってぇ』とか口走っていた。
そんなの書いたっけか。

それもさておき、この話が進むにつれて、どんどんつづらの傍若無人っぷりが増していってるような感じがします。
このままいくと、雪奈が気苦労でブッ倒れてしまいそうだ。ただでさえ主催権会議に頭を痛めているのに。
ゴメンよ雪奈。後で頭痛薬送っとくヨ。とかなんとか。

[210] フラグ完成?
3A - 2007年11月19日 (月) 03時06分

-----------------------------------------
- プロローグ -
-----------------------------------------
 ・・・何かしら・・・・・・・・夢?
 でも何も見えない。
 否、黒しか見えない。
 そう黒以外が見えない。
 夢なのに意識があってこうやって思考を凝らす事ができるのは珍しいわね。
 けど、夢ってのは目が覚めたら忘れるものなのよね。
 あ〜あ、こんな独り言だけの夢って襲われる夢よりも嫌かもしれないわね。
 何も無い。
 勉強もしなくていい、仕事もしなくていい。
 ・・・・・何かの歌詞よねこれ。
 こんな夢見るくらいなら、夢見ないでノンレム睡眠になった方が脳を使わなくて済むし、カロリーも消費しないのに。
 起きたらまたいつもの日常なんだから・・・・・。
 最近自分の中のどこかでこう思い始めるなんてね。
 『何か今までと違う事が起きたら良いのに。』
 『何か新しい目標ができたなら。』
 『何か面白い事でも起きないかな。』
 いつもと同じ日常が楽であって、それでいてなお充実してると感じてるのは私自身のはずなのに。
 普通科に勝つという目標があるにもかかわらず、こんなことを思うのは馬鹿げてるし、おかしい。
 それとも、物語とかで言う運命の歯車でも動き始めたのかしら?
 例えそんなものが動き始めたとしても、私はまず目の前の目標にだけ向かうだろう。
 今の私にはそのような寄り道をしている暇など無いのだから・・・。
 これだけは夢から覚めて目が覚めた後に同じ事を聞かれても、私はそう答える自信がある。
 原点は同じなのだから。
 そろそろ起きないといけないわね。
 起きたらやることが多い。
 でもそれがあるから充実しているという事は否めないし、それが真実でもある。
 ・・・少し期待し始めてる。
 起きたらどこか知らない人の家だとか、白馬の王子様が迎えに来るような事に対して。
 何かいつもと違う刺激、出来事は起こらないものかと。


 目を開けたらいつもの天井。
 やっぱりいつもの景色だ。
 自分の服装を見てもやっぱりいつものパジャマ姿だ。
 それにしても、こんなに夢をはっきりと覚えているなんて珍しい。
 早く着替えてやる事済まさなきゃ。
 ・・・って今日は日曜じゃない。
 何考えてんだろ。
 私らしくも無い。
 ふぅ、二度寝をする気は無いけど、少しゆっくりとしたいのは事実。
 でも二度寝する人達ってこうやって二度寝に引き込まれるらしいわね。
 ・・・・少しくらいなら・・・・・・・いいかな?
 ・・・・・・・・少し騒がしいような気がしないでもない。
 『起きろ』とでも言われてるみたいね。
 わかったわ、起きるわよ。

雪奈「ふわぁ〜〜。」

 なんて情け無いあくびの声。
 ・・・・ちょっと待った。
 今何時?
 時計、時計は・・・と。
 えーと・・・・・・・。

 2時23分

 あ〜あ完全に熟睡したな私。

雪奈「はぁ〜。」

 溜め息まで出ちゃうとは・・・・・。
 よし、今からでも遅くはない、総括会室に行って書類をまとめておこう。
 6時までにはノルマは達成できるでしょう。
 ・・・・あの人がもう仕事に手をつけていたなら。
 気付くと私は携帯でその人の番号へかけている。
 ・・・・・・・・・・・・・出ない。
 結果は分かってはいたのだけれど、やはり腹が立つと言うかなんと言うか・・・・・。
 ただでさえストレスが溜まってると言う時にこれだ。
 大事な時期なのに・・・・・。
 とりあえず・・・とりあえずだが、着替えよう。


 着替えも済まし、遅めのブランチも済まし、総括会室に来てみた。
 やっぱり誰もいない。
 まぁ1人でも構わないが・・・・・やるか。
 ・・・にしてもキャーキャーと騒がしい。
 今のところは夏祭りと水泳大会。
 この2つが主催権のかかった戦場。
 川中島とでもいうべきか。
 普通科に取られる訳にはいかない。
 美術科には負ける気がしない。
 この夏の2大行事をどう取るか。
 もちろん2つとも取れたらいうことはない。
 だが、1つもとれないというのは論外ね。
 1回の会議で2つのことを決めることはしない。
 しかし、1つが保留になって時間が余っている場合、次の議題が持ち上げられる場合もある。
 大抵そういう場合は、どこの科も準備ができていないという理由で結局これも保留・持ち越しとなる場合が多い。
 先に争われるのは夏祭り。
 次に争われるのは水泳大会。
 この場合先に争われる夏祭りに照準を合わせるのがセオリーだろう。
 しかし、普通科に2つもとられている今、夏祭りをとったとしても、普通科に水泳大会をとられれば結局2という差は変わらない。
 だから普通科は水泳大会を取りに来る。
 何故なら普通科はこのままの差で逃げ切る事も可能だからだ
 だから夏祭りをとるのは容易にできるだろう。
 ・・・・というのはあくまで今の普通科以外なら成功する方法だ。
 しかし今の彼女達は強い。
 私の考えが読まれているとすればこうなるだろう。
 私の戦略はこうだと考える。
 まず、夏祭りの件は保留の方向にできるだけ早く持っていく。
 そうすると水泳大会が議題に上げられる。
 美術科は全くと言っていいほど準備はしていないだろう。
 普通科には余裕がある。
 その余裕が命取りになる。
 だから両方とれる・・・と。
 私の考えを読んでいる普通科は、私が「ここが仕掛け時」と考えていると思っている。
 ここで2つともこちらが落とすと、勝負をタイにまで持っていける。
 そうすることによって一気に挽回できるからだ。
 だが、あえてここはセオリー通りいかせてもらおう。
 そうすると裏の裏をかかれた普通科は浮き足立つだろう。
 何故ならあっちは夏祭りは保留に持っていくだけの手段しか持っていないからだ。
 例え水泳大会の方を用意していたとしても、1つの事しか決めない今は、それが今回の会議では無駄になる。
 そうただの紙にね。
 次の会議までの間に水泳大会の分は作れるだろう。
 例え普通科がバックアップ対策として夏祭りで議論したとしても、あっちはせいぜいB級の書類がせいぜいだ。
 こちらがA級のものを用意すれば負けない。
 これには自信がある。
 ここで敢えてセオリー・基本でいく事が逆に奇襲であり、今まで最多主催権を獲得した私の力だと私の基本に対する警戒心を高めさせて、いずれ本当の奇襲で倒す。
 まだ勝負は始まったばかりなのよ?
 とでも言うように・・・。
 ・・・・・そういえばいつの間にか静かになってるわね。
 ま、私には関係ないことね。
 作戦は決まった。
 あとはこの書類をまとめ上げる事。
 それの出来が看護科の明日を決める事になると思って、一切の妥協を許さない、推敲に推敲を重ねて作る。
 負けない。
 絶対勝つ。

 翌日

雪奈「そうね、奇策はやらずに、正攻法が一番いいかもしれない。」

 基本は強い。
 全くだ。
 ここでは基本こそが奇襲となるのだから。

つづら「で、どっちにするの?」
雪奈「まあ、夏祭り、でしょうね。ただ、向こうも同じことを言ってくるだろうから、いかに私たちの夏祭りを他と一線を画すか、それが勝敗を決めることになりそう。」

 私のシミュレーションでは勝てるとは思っていても、少しの油断もならない敵であることに違いは無い。

雪奈「あと何日だっけ?」
つづら「確か、一週間……なの。」

 一週間。
 それだけあればなんとか練れるだろう。
 次の水泳大会の分も一緒に。
 負けるわけにはいかないのだ。
 絶対に勝つ。

 そして一週間後

 シミュレーション通りと言えばそうなのだが、やはり鶯さんの弁論術はすごい。
 今、内容自体を考えるとそうでもない内容なのだが、言葉に力がある。
 だけど、しっかりと内容を聞き分けられる人がいて良かったわ。
 生徒会の副会長さんだけど。
 それにしても美術科のレベルUPが気になるところだ。
 この短期間になにかあったのか?
 うちの副会長に聞いてみる。

つづら「たぶん原因はしーくんなの。」
雪奈「しーくん?」

 クレヨンしんちゃんのことだろうか。

つづら「しーくんっていうのははるちゃんの弟で本名楠葉士仙、
     現在高一、身長183センチ体重83キロ、体脂肪率は6・2%のすごくがっしりした体格なの。
     お菓子作りが得意でその実力はあのこーくんにもうまいと言わしめたほど。」

 晴美さん→高一
 士仙さん→高一
 二卵性双生児?
 いや、確かお姉さんがこの学校にいると聞いた事があるから・・・・3つ子?
 それとも4月生まれと3月生まれみたいな感じ?
 って、

雪奈「いやあの、そういう個人情報はいいんだけど?」
つづら「勉強も非常に良く出来るという噂だけど――」

 勉強・・・・・ね。

つづら「――コレは多分間違いないの。というか、頭が切れすぎるの。私とうぐちゃんとの共同盗聴大作戦、
     通称「壁に耳あり障子に目あり」作戦がことごとく敗れてしかも仕返しまでされたの。」

 今、何か不吉な単語を聞いた気がするわ。
 でも、この子とあの鶯さんの作戦を破ると言うのは・・・。

つづら「現在分かっているだけで校内のファンは30人を超していて隠れや中等部を含めれば70人は下らないの。
     ファンクラブでは自作のTシャツやグッズがあり今はフィギュアまで製作中だという噂なの。」
雪奈「いや、もういいのよ?」
つづら「本当に、もっとボンヤリしたプロレスオタクだったら半月になっちゃうの。」

 ・・・それはどーでもいいから、

雪奈「って、そんなのはどうでもいいの。それがどうして美術科の進化と関係あるの?」
つづら「うん、噂ではしーくんが美術科に会議で勝てるようにアドバイスしたとかしないとか。」
雪奈「は〜・・・・・・そういうことか、ハイハイ、そういえばそんなこともあったわね。」

 女子たちがキャーキャーと騒がしかったのは覚えている。
 ついでにその時はがっつり寝坊したあの日だ。

つづら「で、どうなの? ゆいちゃんたちは。」
雪奈「・・・・・・今は脅威ではないわ。ただ、次・・・の次くらいには分からなくなるわね。」

 ダークホース。
 あの2人は確かに伸び代は大きい。
 ただ、あの2人をたった1回教えただけであそこまで成長させるとは・・・・。

雪奈「1度会ってみたいくらいね。」

 おっと、口に出してしまった。

つづら「誰に会ってみたい・・・なの?」
雪奈「気にしないで、独り言よ。」
つづら「・・・・・・。」
雪奈「さ、主催権も1つとれたし、今日は休んで良いわよ。」
つづら「・・・わかったなの。」

 私も少し水泳大会の分を済ましてから休もう。
 ふぅ、やっと重い重い肩の荷が降りたようだ。

 その日の真夜中、旧校舎の一室にて

??「・・・ってゆきちゃんが言ってたの。」
??「へぇ〜、面白そうだね。1回会わしてみても。会談でもさせてみようかな。」
??「この話、いいネタなの?」
??「充分充分、私ももう1回話してみたかったしね。見るだけでも良いけど。」
??「・・・恋・・・・・なの?」
??「いやいや、あの顔は何度拝んでもいいもんだなぁって。」


-- NEXT --------------------------

さてさて長い長い旅の幕開けですね。
割とまとまってからと思っていたんですが、
まぁプロローグぐらい直ぐ出しちまえ!
と適当さ満載でホントすいません。
あと後半部分は、とあるSSから引用させていただきました。
無断使用申し訳ありませんです、はい。
無理やりフラグ完成っぽいんですが、いいんでしょうかね?
ホント即興即興でその日暮らしで作っていく予定です。

         計画的という言葉が全く当てはまらない3Aより

[214] 無断使用? 全然構わないですよ〜
ジャッキー - 2007年11月23日 (金) 20時47分

そのかわり、最高に面白いものを書いて下さいね?(鬼畜)

[224] まだまだ続く
シュレ猫 - 2007年11月27日 (火) 22時39分

-----------------------------------------
- DIANOIA W -
-----------------------------------------

雪奈「……『また』ですか。」

香織「そのようですね……。」


『また』とはなにか?
それは、今年の看護科メンバーの中ではもうお約束となっている『アレ』のことだ。


雪奈「久遠さん……いったい何時の間に……。」


久遠つづら(17)の失踪である。


生徒A「確か……ついさっき、持ち込んだ漫画とか小説とか図鑑とかを横の方に運んでましたよね?」

雪奈「えぇ。そこは私も見ました。なのに、気付いたらもう、本と共に忽然と居なくなってました。」


ドアは閉まっている。出て行くのには全く気付かなかった。
なんという隠密性能。


雪奈「仕方ありません。まことに遺憾ではありますが、時間も少ないので片付けは続行しますよ。」

-----------------------------------------

雪奈「総括会員以外の人はとりあえずお疲れ様、助かったわ。で、総括会員の皆さん、ココからが本番ですよ。」

生徒B「具体的には何をするんですか?」

つづら「誤字脱字の修正と、内容の表現ミスの修正なの。わかりにくかったら、わたしかゆきちゃんに相談するの。」

雪奈「あ!今まで何処にいってたんですか!?久遠さん!!」


というか、何時からココに?


つづら「本を部屋に運んできてたの。ついでに、今日は帰る頃に雨が降るだろうからみんなの傘をもってきたの。」


手元にはココの人数分の傘が。


雪奈「天気予報では降らないって言ってなかったかしら?そもそも、今もそれほど雲ってないわ。」

つづら「でも降るの。」


だそうだ。
つづらちゃんの『予報』は、どういうわけか文字どうり百発百中当たるので、降るんだろう。


雪奈「まぁ、いいわ。時間も無いし、始めましょう。夏祭りの企画書。」

-- NEXT ---------------------------------

ようやっと続き。
そろそろ雪奈×士仙の話に触れたいですが、見てのとおり夏祭りの会議の直前(Uに夏祭りがなんたらっていうくだりを書いてしまった)なわけで、時系列的に無理そうです。

たぶん、上の3AさんのSSの『雪奈「そうね、奇策はやらずに、正攻法が一番いいかもしれない。」』から下数行のところの話の五・六日あとくらいだと思います。
本当に会議の直前で、切羽詰りまくりですね。ヤバイヤバイ。
ということは、フラグが立つのは二日ほど後でしょうね。

[225] 第2弾
3A - 2007年11月30日 (金) 02時30分

-----------------------------------------
- START -
-----------------------------------------

 看護科には実地での研修がある。
 老人ホームや小さな診療所から大きな大学病院に至るまで、その研修場所は幅広い。
 特に大学病院なんて看護科がある学校でも割と珍しいみたいだ。
 それというのも『桜ノ宮学園』という名のためである。
 事実、他府県からこの看護科を狙う者もいるほどに、その名は知られている。
 さらに、研修場所の全てに必ず桜ノ宮・看護科のOGがいるのだ。
 だからこそ研修場所として許可が下されるのだ。
 研修の流れとしては次のようになる。

@1年生の1、2学期はクラス別で大病院と診療所へ行く(3日間)

A1年生の3学期はクラス内の班別で老人ホームにて介護の勉強(2日間)

B2年生は自由に研修場所を選ぶ(同じ所へは2回までで、研修場所によって日数はまちまちではあるが、およそ2〜4日間)

C3年生は2学期までで、1学期に2回、夏休みに1回、2学期に2回or3回
 (2年生時と同様同じ所へは2回までで、2年生時に2回行ったところへは1回のみ。2学期は希望者は3回までできる。)

 とまぁ簡単に説明するとこんなところだ。
 補足すると、人数はその場所にもよりけりだが決められている。
 そのため、定員オーバーすると抽選や届け出順になったりする。
 私は2年生時に2度綾河さんの所へ行ってしまい、さらに1学期に1度行ってしまっているのでもう選べない。
 
 雪奈の今までの研修場所
  2年生 1学期…氷雨の所
      2学期…大学病院
      3学期…氷雨の所
  3年生 1回目…氷雨の所
      
 そして今回の2回目は、『椿ノ原多目的グラウンド』である。
 何故ここを選んだか、ここがなんなのかというと、ここでラグビーの大会が行われるそうだ。
 ラグビーといえば・・・そうあれである、あのボール持ってタックルして・・・ってやつだ。
 そこの医務を手伝うという内容らしい。
 しかし、怪我人が出なければなにもする事は無いらしい。
 ・・・あのスポーツのイメージからしてそんな事は無いのだろうけど。
 それにしても気になるのは、何故か今回はこの研修が人気だった。
 何故だろう?
 その理由は分からない。
 私が選んだ理由は、緊急の、まさに現場での怪我などの治療などを体験したかったからである。
 しかし・・・定員2人に対し希望者30人・・・・・・倍率15倍をよく潜り抜けられたものだ。
 まあ、運は私に向いているようではあるので悪い気はしなかった。

??「ふふふ・・・上手くいったね。」
??「うまくいったなの。」
??「わざわざ職員室に忍びこんだかいがあったよ。」
??「でも流石にセキュリティが厳しかったなの。」
??「私に任せればあれくらいどーってことないね。」
??「さすがなの。」
??「でも、さすがにコンピューターをいじくって、シャッフルでも予めあの人にあたるようにするのはしんどかったね。」
??「でもそのかいあって面白くなりそうなの。」
??「まあね、ふふふ・・・面白くなりそうだ。」

 旧学生寮の一室で怪しい笑い声が響いた。


――――――その頃――――――

??「なぁ士仙。」
士仙「ん?」

 窓際に座る士仙が答える。

??「次の試合楽しみだな。」
士仙「・・・その様子をみる限りでは、試合以外に何か楽しみがあると見える。」
??「さっすが。楽しみは試合だけじゃねえよ。」
士仙「で、なにさ?」
??「なに?知らねえの?」
士仙「何が?」
??「はぁ〜、お前それでも男か?いやそれよりも桜ノ宮にいる姉さん達が泣くぞ?」
士仙「なんだよ早く言えよ。まわりくどいぞ、『徹斗』。」

 今、士仙と会話している男は『鷹花 徹斗』。
 小中高と士仙と同じ学校に通う友人である。
 なお、彼は小学校の時に晴美に告白して撃沈している。
 理由:私は私より小さいやつに興味は無い
 中学校に入って、身長も伸びたためまたも告白したがあっさり墜落。
 理由:私より頭悪くて運動できないやつなんか興味無い
 そのため、彼は猛勉強をした。
 そして『強く・運動ができるやつ』になるため(士仙の紹介もあったが)中学校からラグビー部に入部。
 目標は士仙以上の男になる事。
 しかし、勉強・運動共に士仙には遠く及ばない。
 士仙も徹斗も学業では学年トップクラスであるが、徹斗は上の下であり、士仙は上の上である。
 ラグビーでも徹斗は県内の1年生として見れば敵無しではあるが、士仙は1年からでも国体に選ばれそうな選手であるが故に、県内に敵無しというべきである。
 総合して言うと、徹斗が悪いんじゃない。
 むしろ彼でもすごい方だ。
 一応ここは公立トップの高校。
 『頭が悪い』と好きな女にいわれたからという理由でここまで勉強するなんて・・・。
 しかしそれ以上に楠葉士仙という男がおかしいくらいにできるだけである。

徹斗「わかったわかった。あのな、実は毎年この大会には桜ノ宮の看護科が研修のためにやってくるんだよ。」
士仙「研修?」
徹斗「あの桜ノ宮だぞ?お前なら何も珍しくは無いかもしれないけどな、俺等からすればもう雲の上の存在とでも言うかなんと言うか。」
士仙「・・・お前ハルの事諦めたの?」
徹斗「そんなわきゃない。」
士仙「じゃあそれ浮気じゃないの?」
徹斗「違う。ハルには惚れていて、桜ノ宮の人には憧れているんだ。」
士仙「あ、そ。」

 士仙も呆れ気味である。
 だが簡単に『惚れている』という言葉をこう言えることはすごい事だと心底思う気持ちもあるようだ。

士仙「それで?」
徹斗「いや、お前それでって・・・。」
士仙「看護されたいの?」
徹斗「そりゃ当たり前よ!」
士仙「・・・はぁ。」
徹斗「何さその溜め息は?」
士仙「いや・・・・・・別に。」
徹斗「どうせ看護されるような気持ちで試合に臨むなってところだろ?」
士仙「ん・・・まあそんなとこ。」
徹斗「でもさ、逆に看護されるぐらいの勢いで行くってのも必要だろ?」
士仙「極端な話、『命あっての物種』って言葉も頭の中に入れときな。」
徹斗「大会は次で終わりなんだから、少々の怪我なら大丈夫だって。」
士仙「じゃあ、お前は怪我して泣きそうな顔で看護されに行き、看護されてる最中の鼻の下が伸びきってるお前の顔をハルに見せよう。」
徹斗「許してください。」
士仙「分かればいい。」

 キーンコーン

徹斗「次って何だっけ?」
士仙「古典。」
徹斗「うわぁ〜・・・俺、寝るわ。」
士仙「ノートは明日までに返せよ?」
徹斗「俺はいい友を持ったよ、うん。」
士仙「・・・はぁ。」

 士仙の溜め息とほぼ同時に、古典の先生が教室に入ってきた。
 そして生徒からは全く人気の無い古典の授業が始まった。
 ・・・
 ・・
 ・
 授業も終盤にさしかかったとき、士仙の左のポケットの中で何かが震えた。
 士仙はポケットから携帯を取り出し、机で隠しながらチラッと見た。
 決して先生になんかばれない。
 そして内容を確認し終わると、机で隠しながら返信をうっていた。
 もちろん携帯を見るのではない。
 黒板を直視しながら器用に左手でボタンを押していた。
 そして先生が黒板の方を見るのを確認した後、士仙は一度だけ確認して送信した。

差出人:晴美
 内容:今度の日曜決勝?

差出人:士仙
 内容:椿ノ原で3時〜
    徹斗は見に来て欲しいみたい

差出人:晴美
 内容:サンキュ〜☆
    テツって試合出れんの???

差出人:士仙
 内容:本職のポジションじゃないけどな

差出人:晴美
 内容:わかった(^_-)-☆

差出人:士仙
 内容:忙しく無いのか?

差出人:晴美
 内容:忙しいけど、一段落ついてるからたまにはいいかなと

差出人:士仙
 内容:気をつけていらっしゃいませ

差出人:晴美
 内容:あ〜いあい(^^)/~~~

 士仙はポケットに携帯をしまった。
 と同時に終了のチャイムが鳴った。
 徹斗は目を覚まし、ノートを士仙に借りに来た。

徹斗「サンキュー。」
士仙「ハルが試合見に来るって。」
徹斗「ホントに!?」
士仙「ホントホント。」
徹斗「よっしよっしよっしよぉーっし!!」
士仙「・・・ホント単純な子でいいね。」

 そして試合当日の日を迎えることとなる。




 歯車が動き始めた。
 誰にも止められない歯車が。

-- NEXT --------------------------

第2弾です。
もうね、まとめて出すのはやめようかなと思った次第です。
出来たら出し、出来たら出しという方向性で生きようかなと。

えっと、これ7月ぐらいですかね?
1学期で、尚且つ夏祭りの会議どーのこーのですから。
で、そう考えたら、やっぱり2月3月辺りで話終わらした方がいいですよね?
雪奈が桜ノ宮学園在籍中に。

[229] ようやくの完結
シュレ猫 - 2007年12月27日 (木) 23時30分

-----------------------------------------
- DIANOIA X -
-----------------------------------------

夏のためとっても暑い総括会室で、我々看護科総括会メンバはパラパラと地道な書類チェック中。
恐ろしく地味な作業で涙が出てくるような思いです、はい。


生徒B「ここはこうでいいんですか?」

つづら「そうなの。そこを直したらそれは終わりなの。」


バサバサという紙音以外は、音に紛れてくる小声ぐらいしか聞こえない。
小声の内容は、会長及び副会長への質問か、または生徒たちの軽い雑談。


生徒A「ところで、会議っていつ?」

生徒C「明後日っすよ。」


たった六人で黙々と書類チェック。
恐ろしく地味な作業で涙が出てくるような思いです、はい(二回目)。

そもそも、こんなギリギリにやるハメになったのはどういうことなのだろうか。
明後日が会議、つまり会議の二日前にこんなことをしているなんて。遅すぎやしないか?

まぁ、そんなこと考えててもしょうがないんだけれども。


つづら「――――、――――なの。」

雪奈「………。」


そんな中、つづらちゃんと会長が何か話していた。
しかも、あまり喋らないつづらちゃんが主に話しているようだ。

珍しいこともあるもんだ。

-----------------------------------------

その日の帰り、つづらちゃんの言ったとおり、雨が降っていた。
その上どしゃぶり。


つづら「ほら、降ったの。」


みたことか、という顔でこっちを見るつづらちゃん。


香織「……そのようで。」

生徒C「……紛う事なき見事な土砂降りっすね。」


そんなことを言っていると、横から会長が、


雪奈「……どうしてわかったのかしら?」


と、聞いてくる。


つづら「もちろん企業秘密なの。」

雪奈「…………。」

つづら「禁則事項って言ったほうがよかったの?」

雪奈「…………?」


あ、会長が対応に困ってる。

-----------------------------------------

そしてその日の夜、ベッドの中で話をする。


香織「雨が降るってわかると、結構便利だね。」

つづら「そんなことはないの。あらかじめ、結果が判ってしまっても……ただつまらないだけなの。」

香織「……?」

つづら「……なんでもないの。おやすみなの。」


なにかを語尾を濁し気味に言って眠ってしまった。
そして、おやすみと言ってすぐにもう寝息が聴こえてくる。
これで、今日という日も、何事もなく終わった。

-- END ----------------------------------

ふえー。
ようやくおわった。しんどかったです。
そして、お久しぶりです。

あれですね、前書いてから一ヶ月たってます。気がついたらもう年の瀬ですし。
ついでに、この話のおまけを下に投稿させていただきます。

[230] おまけ
シュレ猫 - 2007年12月27日 (木) 23時30分

-----------------------------------------
- DIANOIA Alternative -
-----------------------------------------

私の隣で、私より一回りほど小さな少女がパラパラと書類をチェックしている。
彼女の名前は久遠つづら。私達看護科総括会の副会長、つまり、実質ここのナンバー2である。
彼女は普段、突然雲隠れしてあまり手伝ってくれない。けれど今日は、彼女にしては比較的珍しい真面目な顔で仕事を取り組んでいる。
いつもこのくらい真面目だったらどれだけ嬉しい事か……。

彼女の実力は……よく知っているつもりだ。
真面目に取り組めば、私や鶯さん、ともすれば、かの半年革命を起こした綾河さんにも追随しかねない切れと行動力を持っている。
でも……その対象は恐ろしく偏っていて、興味が無ければ全く持って機能しない。
興味の対象以外でもほんの少しでいいから発揮してくれたら……きっと私と彼女の前に敵は無いだろうし、私が卒業してから彼女が会長の地位を継いだ後も勢力を維持し続けるだろう。
まぁ……あくまでやる気を出せばの話だけど…………。


雪奈「……ねぇ、久遠さん。」

つづら「……どうしたの?」

雪奈「どうして……貴女はいつもいつも、何事も本気で行わないのかしら?」


久遠さんは『何で突然?』という顔をして、首を傾げる。
その反応は、それはそれで色々間違っているような気もするけれど、日和ったことを言えば、確かにこれはもっと前に聞いておくべき質問かもしれない。
たしかにそうだが。


雪奈「その気になれば……もっと大きな事が出来るでしょうに……。」

つづら「…………。」

雪奈「野心は…………無いの?」


暫しの沈黙。
彼女は、左上に目線を上げて、少し考えるような仕草をする。
そして、私の方を見る。


つづら「……二つ目のは、ゆきちゃんらしくない質問なの。」


私らしく……ない?


つづら「ゆきちゃんは、わたしたちの感情に関係なく問答無用で引っ張っていく人なの。他人の野心なんて、勘定に入れたりするわけないの。」

雪奈「なっ!」

つづら「それに、ゆきちゃん最近また元気がないの。ひょっとして、また……無理してるの?」

雪奈「っ――――!」


無理をしているつもりは無い……無いはずだ!
それに……仮にそうだとしても仕方がないことだ。
何としてでも主催権をとる。
そのためにはなんでもする。
幾らでも無理だってするし、幾らでも人を蹴落としていく。
私たちは、何が何でもこんな所で足踏みする訳にはいかない。
だから…………


つづら「みんな女帝女帝って呼んで、強くて凛々しい会長って思ってるの。でも……ゆきちゃんは、ほんとは繊細で、それでもいつも壊れそうになるまで頑張ってるの。」

雪奈「…………。」

つづら「こないだなんて、熱があるのに頑張りすぎて本当に壊れてしまってたの。みんなみんな……すごく心配してたの。」


感情の読み辛い真っ黒な瞳が、真っ直ぐ私の眼を見る。
その瞳は、どことなく私を咎めるようで、私を心配するようで、それでいて私を哀れむようにも見えた。


つづら「だから、たまには休むといいの。ただ休むんじゃなくて、心の拠り所となる『何か』の所ならなおいいの。それが、一番の方法だとおもうの。」


『何か』…………?


つづら「ゆきちゃんのことを理解して、なおかつ受け入れてくれる『誰か』…………なの。……荷がおもすぎてつぶれちゃいそうな仕事なの。」

雪奈「誰か……。」

つづら「それでいて、誰にも言えないような悩みも素直に打ち明けられる……そんな誰かなの。」


そんな人は……私には居なかった。
今まではそれでもやって行けたし、必要は無かったからだ。
私は……これからも必要は無いと思っていた。


つづら「それでも……無理に見つけることはないの。そういう人にめぐり逢うまで、気長に待ったらいいの。それは明日か、果ては今際(いまわ)か、なの。」

雪奈「…………。」

つづら「今日はいっぱい喋ったの。わたしも、わたしらしくないの。」

雪奈「あ……。」

つづら「さてさてゆきちゃん、手が止まってるの。会議は目前、時間はないの。続きなの。」

雪奈「……え?」


そうだ!
会議はもう明後日に迫っている。ぼーっとしている暇なんてなかった!
こんな所で足踏みしている場合じゃない!
急いでチェックを済ませないと!


つづら「わたしとしては、そんな問答無用で引っ張る姿勢にみんな憧れてるんだとおもうの。」


大急ぎで書類を捲る最中、隣で久遠さんが何かつぶやいていたような気がした。

-----------------------------------------

校舎から出て、寮に帰ろうと校舎玄関へ向かうと、久遠さんが言ったとおり外は雨だった。
しかも土砂降り。


つづら「ほら、降ったの。」

香織「……そのようで。」

生徒C「……紛う事なき見事な土砂降りっすね。」

雪奈「……どうしてわかったのかしら?」

つづら「もちろん企業秘密なの。」

雪奈「…………。」

つづら「禁則事項って言ったほうがよかったの?」

雪奈「…………?」


きんそ…………なに?
相も変わらず、彼女は意味不明な言葉を残して傘を差し、寮へ走っていく。

-- END ----------------------------------

と、いうわけで上のやつのおまけです。

ちなみに、Alternativeというのは、『もうひとつの』という意味合いです。どうでもいいですね。

連投失礼しました。それでは、よいお年を。

[233] 第3弾ですが、だらだらと長いです・・・。
3A - 2008年01月20日 (日) 17時02分

-----------------------------------------
- ?恋?物?語? -
-----------------------------------------

雪奈「そういうことか・・・・・。」

 私はぽつりとそう言った。
 『何故この研修が人気だったのか』という謎についてである。
 このグラウンドに来ている人を見ても、女性が割と多く見える。
 中には桜ノ宮の生徒までいる。
 全員のお目当ては、そう市立松ノ畷(マツノナワテ)高校『楠葉士仙』だ。
 聞いたところによると、ここに来ている男性の中にも彼目当てが多いそうだ。
 と言っても怪しい意味じゃない。
 大学のスカウトやら他チームの選手、監督達も今年のスーパールーキーに注目しているそうだ。
 私の隣にいる子も彼目当てみたいですけど・・・。

雪奈「ほら、まだ彼の試合は先でしょう?もうすぐで第一試合が始まるから早く準備して。」
生徒A「あ、はい。」
??「天乃さん、あとそこの消毒液取って。」
雪奈「これですか?」
??「そうそう、ありがと。」

 この人はここの責任者で黒津さん、もちろん桜ノ宮のOGである。
 彼女はこのグラウンドの近くに診療所を開いていて、ここでなにかスポーツの試合などがあるとよく呼ばれるそうだ。
 ちなみにお歳は27歳。
 そう、あの綾河氷雨さんと同級生だったらしい。

 ピー!

 キックオフの笛が鳴ったみたい。
 ちなみに今回は何の大会かと言うと、この地区の公立高校の大会らしい。
 6チームでのリーグ戦で、今日は3試合が行われて松ノ畷は第3試合で、皆これが目的らしい。
 全勝の松ノ畷の相手は、1敗の東工業高校。
 なんでもタックルには定評があるチームだとか
 試合の結果なんて私には関係ない事ですけどね。
 と、そんなことを考えてたら黒津さんが、

黒津「ねぇ、今の見てどう思う?」
生徒A「え?」
雪奈「すいません、みてませんでした。」
黒津「ここではどういう状況で怪我をしたか見ている事によって、わざわざ状況を聞かなくてもよくなるっていうメリットがあるの。
   だから例えそのスポーツが分からなくても見ておくっていうのはとても大切なの。」

 なるほど、だからこの人はわざわざここまで来ているのか。

黒津「多分今の子は左足首捻挫ね。じゃ、行ってくるから準備しといて。」

 そう言うと彼女はグラウンドの真ん中で倒れている選手の元へ駆けて行った。
 丁度ここでボールがラインの外に蹴り出された。
 そしてピッと短い笛がなってから審判が手をTの字にした。
 私達はアイシングとテーピングの用意をした。
 やはりその選手はこちらへ運ばれてきた。
 流石に私達では担架などできませんよ?
 同じチームの控えの選手が肩を貸して連れてきました。

黒津「はい、あなたたち診てあげて。」
生徒A「はい!」
雪奈「じゃあまずスパイクとソックスを脱いでください。」
選手A「あ、はい。」

 彼は痛そうに顔を歪めながらスパイクとソックスを脱いでいく。
 私はそれを少し手伝い、そして彼の足を診た。
 黒津さんの言った通り捻挫の可能性が高かった。
 私は左足首を触りながら、彼に右足も出すように指示をした。
 彼は先程よりもスムーズにスパイクとソックスを脱いだ。
 右足と比べても明らかに腫れていて、かつ熱を持っていた。
 明らかに捻挫である。
 私は私がもっている捻挫への対処の知識をフルに活用し、彼の治療にあたった。
 その後も続々と怪我をした選手達がやってくる。
 そして気付けば注目の試合が始まる15分前だった。


――――――士仙――――――

徹斗「なあなあ士仙。」
士仙「なに?」
徹斗「ハルは?」
士仙「あいつが時間に余裕を持って来るわけないだろ。」
徹斗「そうは言ってもだ、あと15分でキックオフだぜ?」

 そう言って辺りを見渡す徹斗。
 それに気付かずに俺はパスしてしまった。

士仙「あ、パスいったぞ。」

 ボカッ

 見事顔面命中。

徹斗「俺の商売道具に何してくれる!!」
士仙「・・・あ、そろそろジャージに着替えろってさ。」
徹斗「あ、あのね士仙君。人のボケはスルーしちゃいけないよ・・・って、人の話は最後まで聞けー!!」

 ・・・あーうるさい。
 ところで試合の方は、と。
 うわー、今の頭から落ちたぞ。
 絶対脳震盪だわ。

徹斗「あれひっどいな。」
士仙「あ〜あ〜足フラフラだよ。」
徹斗「・・・そういえば、お前桜ノ宮の研修生見た?」
士仙「いんや。」
徹斗「う〜〜〜〜見に行きたい。」
士仙「それなら試合終わった後でも―――。」
徹斗「今がいい。」
士仙「・・・駄々こねる幼稚園児かお前は。」
徹斗「何も用無しに行くのは怪しまれるし・・・ブツブツ・・・・・。」

 ・・・ほっとこう。
 んーと、テーピングテーピングは、と。
 ・・・・・・・あれ?
 無い。
 忘れた?
 うわー最悪。
 ・・・・丁度いいか。

士仙「なぁ徹斗。」
徹斗「何だよ?」
士仙「一緒に医務テント行くか?」
徹斗「うぉ!?やっとお前も女に興味持ち始めたか〜・・・。」

 俺の顔を見て固まる徹斗。

徹斗「冗談です。」
士仙「よし、急いで行くぞ。」

 そう行って軽めに走りながらテントへ向かった

徹斗「で、なんで行くの?」
士仙「テーピング忘れた。」
徹斗「へ?いや、それなら救急箱にあるじゃん。」
士仙「あそこには固定用しか無いから。」
徹斗「ああ〜・・・よくわからんけど。」
士仙「なら何故1回納得した?」
徹斗「知らん!」
士仙「そーでっか。」

 そうこうしているうちに目的地へ着いた。
 見た感じ忙しそうではあった。
 しかし、怪我の具合を見ていたりすると軽いものもいた。
 恐らくどっかの誰かさんと同じような理由で来ているんだろう。
 本当につくづく思う、『男とはバカな生き物だ』と。
 そうは言っても、実は自分も少しばかりその人達を見たい、という思いがあるのだから笑える。
 本当にバカだよ、俺もお前等も。

徹斗「お、あれか。うーんでも思ってたより良くは・・・いやかわいいけど・・・・・・。」
士仙「そういうのは心の中で言え。」
??「何か御用ですか?」

 俺は声のする方へ顔を向けた。


――――――雪奈――――――

 はじめの捻挫の人以外はこれといった怪我ではなかった。
 しかしこれも仕事だ、経験だ。
 そう自分に言い聞かせながらも、少し不満だった。
 『なんでこんな怪我ばかりなの?』と。
 人の不幸を喜ぶ様な訳じゃないけど、さっきの脳震盪の人みたいな人はいないのか。
 何か違う目的の人はいないものかと。
 そう思っていたら何やらテントの外で話し合っている2人組がいた。
 ユニホームが綺麗なので恐らく試合による怪我では無いだろう。
 まあいい、とにかくこれも仕事である。
 たまにはこちらからも話しかけてみようと思った。
 特にこれといって理由は無いけど。

雪奈「何か御用ですか?」

 すると2人共私の方へ顔を向けた。
 1人は私より少し高いくらいの身長で、体も細身なのでここでジャージを着ていなかったらラグビーをやっているとは思えない。
 もう1人は身長もかなり高く、体も大きい。
 このグラウンドに来ている選手の中でも上位に入るくらいだろう。

??「テーピング貸していただけますか?伸縮性の方を。」

 大きい方が言った。
 テーピング・・・。
 これは新しいタイプの患者だ。
 ここは私が貼ろう。

雪奈「ならこちらへどうぞ。」
??「徹斗、先生と皆に言っといてくれ。」
徹斗「はいはい。」

 徹斗と呼ばれた小さい方の選手は、自分達のチームの元へブツブツと何かを言いながら帰っていった。
 私は彼を奥の椅子へと案内して座らせ、近くの箱からテーピングを探しはじめた。
 すると彼は私に話しかけてきた。

??「忙しそうですね。」
雪奈「ええ、競技が競技ですから。」

 私も嘘がうまくなったなと少し思う。
 ここに来たほとんどの選手がそう声をかけてきた。
 この人もやはり同じだなと思った。
 だが、

??「でも暇じゃないですか?」
雪奈「・・・。」

 彼は違った。
 見事に大正解だった。
 私はテーピングを見つけると、ハサミも持って彼の前に立った。

雪奈「どこに巻きますか?」
??「…右肩が悪いのでそっちに。」
雪奈「分かりました。」

 彼は私が指示する前に自分からジャージを脱いだ。
 彼は自分で巻くつもりだったのだろう。
 その証拠に彼は初め「テーピング『貸して』いただけますか?」と言った。
 そして私が暇だという事と、私が巻きたいという事を察知して私が巻く事を承諾したのだろう。
 ところでだが、すごく綺麗な体してるなぁ・・・筋肉のつきかたも・・・・・・。
 って私は何考えてんだか、早く巻かないと。
 えーと肩ね、肩、肩・・・と。
 私は私の知識に従い手を動かした。

??「擦り傷だけじゃやっぱり面白くないですか?」
雪奈「いえ、これも仕事、研修の一環ですから。」
??「この研修楽しいですか?」
雪奈「・・・ええ、まあ。」

 さっきもそうだが、彼は私が返答に困る質問をしてくる。
 楽しくないわけではない。
 だが、楽しいかと言われるとそうでもない気がする。

??「ラグビー、見てて楽しいですか?」
雪奈「ええ、もちろん。」

 できた。
 これで完璧のはず。

雪奈「できました。」
??「嘘をつくなら、その下手な愛想笑いは逆効果だと思いますよ?」
雪奈「はい?」
??「ありがとうございました。次の試合、観てて楽しくさせますよ。」

 そう言って彼はジャージを着てテントから出ていった。

生徒A「雪奈さん、今の・・・。」
雪奈「ん?」
生徒A「誰だか知って・・・・る?」
雪奈「・・・・・・もしかして。」
黒津「士仙君、なんの用だったの?」
雪奈「黒津さん。」
黒津「テントの外にいたのは知ってたんだけど、こっちはこっちでやることあったからね。」
生徒A「士仙君のこと知ってるんですか?」
黒津「あの子よくうちの診療所に来るから。」
生徒A「へぇ〜。」
雪奈「肩のテーピングをしにきました。」
黒津「・・・やっぱり。」
雪奈「・・・。」

 黒津さんの顔が少し曇ったのがわかったが、何もきかなかった。
 とその時、試合終了のホイッスルが鳴った。

黒津「次の試合、観ててもいいわよ。」
雪奈「でも患者の方が。」
黒津「今からは、この試合での患者しか来ないわよ。」

 そういえば、いつの間にかテントからは軽い怪我の選手達はいなくなっていた。
 今、終わった試合の選手達もきていない。

黒津「みんな注目してるのよ、ゴールデンルーキーに。」
雪奈「楠葉・・・・・士仙。」

 両チームがグラウンドに整列した。
 そして礼が終わり、いよいよキックオフとなった。

 松ノ畷 対 東工業

 私達は試合に見入っていた。
 わからない事などは全て黒津さんが答えてくれた。
 自分自身この仕事をするようになって、担当するスポーツの事は一通りルールなどは覚えるそうだ。
 何故かときくと、

黒津「こうやって観る時、より面白くなるからね。」

 だそうだ。
 ところで試合はと言うと、一方的だった。
 全体的な体の大きさなどは東工業のほうが大きい。
 だが、スピードやパスなどは松ノ畷の方が圧倒的だった。
 特に松ノ畷15番フルバック(FB)の楠葉士仙は別格だった。
 黒津さんが言うにはFBというのは『最後の砦』だそうだ。

 ・FB
  最後尾に位置し、バックスを統率する要のポジション。
  身体能力の高い者が務めることが多く、役割は多岐に渡る。
  バックス陣が攻撃を担当するラグビーにおいて、
  フルバックは攻撃よりはむしろ守備の担当として攻撃時でも最後尾で味方の選手に指示を出しつつ自陣のゾーンをカバーする。
  相手バックス陣に負けないスピードと相手FW陣に負けない当りの強さを求められる。
  また、最後の切り札としてオフェンスに参加することもある。

 ・バックス(BK)
  バックスは、フォワードが獲得したボールを前に進め、最終的に得点につなげるのが役割。
  体格的にはフォワードに劣るが、足が速く、パスやキックなどのテクニックに優れた選手が多い。
  守備ではタックルで相手の攻撃を防ぐ。

 ・フォワード(FW)
  試合ではボールを獲得することが一番の役割で、敵チームと激しくボールを奪い合うために、
  相手選手に競り負けたり当たり負けしたりしない、身長や体重など体格的に優れ、
  屈強な肉体の、パワーのある選手がこのポジションを占めている。

 以上ウィキペディアより引用
 その他のラグビーのポジション説明は↓参照
 ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%93%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

 全てが違った。
 パス、スピード、パワー・・・。
 味方への精確なパスコントロール。
 一度抜ければ相手が追いつけない程の走力。
 自分よりも大きい相手に真正面からぶつかっても、その相手を吹っ飛ばせるパワー。
 観ていて飽きなかった。
 否、面白かった、楽しかった。
 結局その試合結果は
 松ノ畷 43−0 東工業

  相手陣地のゴール領域(これをインゴールという)でボールを地面に置くことをトライ(TRY)と呼び、
  ゴールラインの上空、線上に建てられた2本の柱の間にボールを蹴り入れることをゴールと呼ぶ。
  プレー中にドロップキックしてのゴールをドロップゴール、相手の反則の際に与えられるペナルティーキックでのゴールをペナルティーゴールと呼び、
  また、トライに成功したチームにはゴールの機会が与えられ、これをコンバージョンと呼ぶ。
  それぞれの得点は、トライが5点、ペナルティーゴール及びドロップゴールが3点、コンバージョンによるゴールが2点である。

 以上ウィキペディアより引用

 この試合での楠葉士仙は3トライ5ゴール1ペナルティーゴール、1人で28点を出した。
 気付けばテントでは黒津さんが手当てをしていた。
 私達は黒津さんを手伝い始めた。


――――――士仙――――――

 ふぅ・・・。
 俺はバカか。
 張り切りすぎたろ。
 ・・・肩はまだ使えそうだけれど。
 これからは自重しよ。
 ・・・・・・ていうか、

士仙「先輩、僕を使い過ぎです。」
先輩「まぁまぁ、勝ったんだから。あと、これでお前は2年後大学の事で苦労せずに済むぞ。」
士仙「・・・・感謝します。」

 はぁ疲れた。
 そう思った瞬間、俺はさらに疲れるであろうと覚悟した。
 徹斗が前方よりこちらへ走ってくる。

徹斗「なぁなぁハルは?ハルは?」
士仙「知らんがな。」
徹斗「くそ〜あいつどうせ腹出して寝て今頃便所に――――ぐふっ!!!!!」

 ボディに重い一発。

晴美「変なこと言わんでいい!!!!!」
士仙「あ、ハル。」
遊意華「元気〜?」

ひょこっとハルの後ろからユイ登場。

士仙「―――とおチビちゃん。」
遊意華「もぉ〜!こいつは〜!!」
徹斗「い、いつから・・・・・・?」
晴美「試合開始からいたけど?」
徹斗「声ぐらいかけろよ、ハーフタイムとかさ。」
晴美「いやーもう圧勝ムードだったからいいかなと。」

 ・・・ほっとこう。

遊意華「シーくん今日は良かったよ。」

 俺の目の前でぴょこぴょこと跳ねる『女の子』が言った。

士仙「・・・何んだよその上から目線のコメント。実際の目線は下からだけど。」
遊意華「む〜、また馬鹿にして。小さい方が可愛くていいじゃん。」

 可愛い・・・ね。

士仙「それは俺のタイプじゃないんでなんとも。」
遊意華「じゃあシーくんのタイプってどんななの?」

 タイプなんて特に無い。

士仙「うーんそう言われると困るけど―――。」

 ふと俺はテントで会った女性を思い出した。

士仙「あそこに来てるおたくの研修生とかかなりの美人だと思うけど?」

 そう、ただの思いつきだった。
 軽くユイを茶化すつもりだった。
 本気じゃなかった。

遊意華「あ、そっか。ここ看護科の研修場所か〜。む〜。」
士仙「・・・何考えてんの?」
遊意華「・・・・・・見に行く。」
士仙「はぁ?」
遊意華「シーくんが美人って言うほどの人がどんななのか確認しに行く。」
士仙「・・・・・ああそう。」
遊意華「ハルー!あそこまで行こ!!」
晴美「オッケー!じゃなテツ。」
徹斗「え、あ?ああイエス。」

 どんな返事してんだ徹斗よ。

士仙「てかいい加減着替えるぞ。」
徹斗「あ、そっかやべっ!!ってお前いつの間にそこまで着替えたんだ!?」
士仙「ユイと喋ってる時。」
徹斗「あ、あーそっか上は着替えられるもんな。」
先輩「テツー!!さっさと着替えろ!!」
徹斗「あ、すんません。」


――――――雪奈――――――

雪奈「ふぅ、これでいいですか?」
黒津「うん、いいわよ。」
生徒A「テントはどうしますか?」
黒津「これはあの子たちがやってくれるから気にしないで。」
雪奈「さてと、あとは―――。」
??「あれ?雪奈・・・さん?」

 聞き覚えのある声は私の名を呼んだ。
 振り返ってみると、そこには美術科総括会の2人がいた。
 なんでここに・・・あぁそうか。
 普通に考えておかしくはない。
 花園さんからしてみれば幼馴染、楠葉さんからすれば弟の試合を見に来てるのだから。
 でもあちら側からすれば私がいる可能性は低いのだから驚くのも無理はない。

遊意華「へぇ〜、シーくんって雪奈さんみたいなのがいいのかぁ。」
雪奈「???何の事???」
晴美「こ、こっちの話です。気になさらずに。」

 私みたいなのがいい?
 確かにそう聞こえた。
 だが、一体何の事だろうか?

晴美「やっぱり忙しかったんですか?」
雪奈「いえ、思っていたよりは随分と楽でした。」
晴美「あ、そうだったんですか。」
雪奈「あと、弟さんに面白かったと伝えておいてください。」
晴美「あ、はい。わかりました。」
遊意華「む〜。雪奈さんだったとは・・・。」
晴美「ほらユイ行くよ。」
遊意華「ブツブツ・・・。」

 楠葉さんは最後にペコッと礼をして、花園さんの襟首を引っ張って松ノ畷の集団の方へ向かっていった。
 その花園さんは手を組みながらずーっと何かを呟いていた。


――――――遊意華――――――

 まさか雪奈さんだったなんて。
 そりゃ雪奈さんなら納得だよ?
 すごく美人だよ?
 桜ノ宮でも3本の指には入るって噂があるくらいだもん。
 そりゃシーくんだって美人って言うよ。
 でもなんか・・・・・・なぁ。
 何ってわけじゃないけど、なんかなぁ。
 ありきたりって言うかさ、「あ、やっぱりシーくんもそう思ってるんだ。」
 ってなっちゃうとがっかりというか何と言うか。
 シーくんには何かこう独特の感性があって欲しかったというか何というか。
 こう、「シーくんはそう思うんだ。へー。」
 みたいなね、そんな感じを求めてたというか何というか。
 あとね、なんか私を否定されて、比べられた人が雪奈さんってのがなんだかなぁ。
 頭良くて、スタイル良くて、美人。
 私と正反対な人だもん。
 何一つ勝てる気がしない。
 要するに私はね、「えーこれのどこが?」
 みたいにシーくんを否定したかったんだよね。
 そうだ、そうに違いない。
 うん、これだ。
 これが私の追い求めていた正解だ。

士仙「目ぇ覚ませ。」

 ん?
 何て?

 バシッ!!

遊意華「痛っ!!!!!!」

 デ、デコピン?
 ・・・ってここ電車?


――――――士仙――――――

徹斗「お、目覚めたか。」
士仙「長年の付き合いだからな。起こし方は分かってる。」
晴美「私の方が長い時間過ごしてきたはずなのに。」
士仙「まぁ俺の方がお守り役としてのキャリアはあるからな。」
晴美「お守りねぇ。」
遊意華「今何処?」
士仙「電車の中。」
遊意華「それくらいは分かるよ。」

 軽くふくれるユイ。

士仙「俺等はあと2駅で降りるから。」
遊意華「あ、もうそんなところか〜。」
晴美「でも私達はまだまだだけどね。」
徹斗「あと2駅か・・・。」
士仙「愛しの晴美様と離れるのが寂しいのかい?」
徹斗「うるせー。」
晴美「なーに照れてんだよ。」

 バシッ

 徹斗の後頭部を手加減無しで叩くハル。
 リアルに痛がる徹斗。
 ギャーギャーわめく2人。
 対してまだボーっとしているユイ。
 俺もボーっとしとこっかな。
 そう決めかけたのに、ユイが話しかけてきた。

遊意華「雪奈さんの事どう思うの?」

 ボソッと俺にしか聞こえない声でたずねてきた。

士仙「雪奈さん?・・・ああ、あの人か。どう思うっていうのは?」
遊意華「だからさ、好き・・・なの?」
士仙「は?いきなり何を言い出すかと思えば。少ししか喋ってないぞ?」
遊意華「でもさ一目惚れとかってのもあるじゃん。」
士仙「俺は外見だけで人を判断するのが嫌いなの。お前なら知ってるだろ?」
遊意華「ん・・・まあ確かにそうだけど・・・。」
士仙「・・・。」
遊意華「・・・。」
士仙「何?もしかしてお前、俺がとられるんじゃないかなとか思ってんの?」
遊意華「と、ととととられるって・・・別にシーくんは彼氏じゃないじゃん。」
士仙「なら何故聞いた?」
遊意華「そ、そりゃあ私の可愛い弟分の恋の始まりかなとか思っただけだよ。」
士仙「誰が弟分だ誰が。」
遊意華「シーくん。」
士仙「少なくともお前を姉には思えない。」
遊意華「思え!」
士仙「そんなとこ強要すんな。」
遊意華「うるさい!シーくんは私の弟なの。」
士仙「・・・着いたら起こして。」

 俺は目を閉じた。

遊意華「ああ!寝るな!!起きろ起きろ起きろ!!」
士仙「・・・。」
遊意華「・・・。」
士仙「・・・。」
遊意華「・・・あ、雪奈さんだ。」
士仙「・・・。」
遊意華「・・・もー私も寝る。」

 ユイはそう言うと俺の肩を枕にしだした。
 ・・・あー鬱陶しい。

士仙「・・・・・・ユイ、邪魔。」
遊意華「・・・。」
士仙「ユイ?ユ・・・お前はの○太か。」

 マジで寝るなよ。
 俺もう降りるぞ?
 ・・・目覚まし時計(と書いてデコピンと読む)発動。

 バシッ!!

遊意華「痛っ!!!!!!」

 と言いつつも、まだ眠気は去っていないユイ。

士仙「もう降りるからハルの肩でも借りとけ。」
遊意華「うにゅ〜。」

 なんて気の抜けた声だ。
 ま、色々考えてたみたいだから脳みそ使って疲れたんだろうな。

士仙「ハル。」
晴美「何?」
士仙「ユイをちゃんと起こしてから降りろよ。」
晴美「デコピンしてかないのか?」
士仙「マジで寝てるこいつにあれは効かない。」
アナウンス「え〜次は〜――――。」

 さて降りるか。

晴美「え?いや、でもさっきは・・・。」
士仙「降りるわ。行くぞ徹斗。」
徹斗「おう。じゃなハル。」
晴美「あ、うん、お疲れ。」

 プシュー

 なんか疲れたな今日。
 体中が痛い。
 なんだか頭も痛い。

徹斗「来週もハル見にきてくれるかな?」

 ・・・原因はコイツか。

士仙「見にきて欲しいんならそう言っとけよ。」
徹斗「俺等の話聞いてたの?」
士仙「聞いてたんじゃなくて、聞こえたんだよ。」
徹斗「嫉妬でもしてるんじゃ・・・。」
士仙「・・・・・・もう知らん。」
徹斗「ごめんごめん。」

 こんなどーでもいー話をしながら俺は家路についた。
 少しだけあの人の事を気にして。


――――――雪奈――――――

 「へぇ〜、シーくんって雪奈さんみたいなのがいいのかぁ。」
 私には花園さんが言ったこの言葉の意味が分からなかった。
 どういうことなのだろう。
 見当がつかない。

黒津「ねぇ。」
雪奈「はい?」
黒津「来週、空いてる?」

 いきなり何?

雪奈「ええ。」
黒津「じゃあ、来週も来ない?」

 思いもよらない問い掛けだった。
 私は少し動揺している。

黒津「ま、即答は無理だろうから、来るんだったら連絡入れてくれたら特等席で見せてあげるから。はい、これ私の番号とアドレス。」
雪奈「は、はぁ。」
黒津「来週が最終戦で地区一位が決まるから。来週は見逃せないわよ?」

 そうは言われたけど・・・。
 ・・・
 ・・・
 ・・・
 ・・・さて、どうしたものか。


――――――?――――――

??「ま、ファーストインプレッションは悪くないね。」

 にしても流石はゴールデンルーキー。
 観てて面白かったよ。
 ただ、スポーツだけじゃなく『こっちの方』ももっと面白くさせてね。
 じゃないと・・・つまらないからさ。
 期待してるよ君達の『恋物語』に。

-- NEXT --------------------------

遅くなりましたけど、あけおめです。
遅くなりましたけど、第3弾です。
遅くなりましたけど、遅くなってごめんなさい。
遅くなりましたけど、3Aでした。

[238] おほほーw
ラスティ・ブランフォード - 2008年01月30日 (水) 20時54分

>3Aさん
いつか、形になりますようにw
まあ、気長に、じっくりと待ちますよ。
士仙君の恋も、話の続きも。
ライバル登場、揺れる心とかギクシャクする二人とか、
色々想像しながらw
期待してたより、じっくり、だけど繊細に進む物語を……

誰かが、読んでくれてるって事って素晴らしいよね。

[244] 第4弾
3A - 2008年02月23日 (土) 21時22分

-----------------------------------------
- 士仙君の日常 -
-----------------------------------------

 キーンコーンカーンコーン

 やっと終わったか。
 古典は苦手なんだよな。

 ガラガラ

担任「えー・・・特に何もないんで・・・・・・じゃ、終わります。」

 終礼適当すぎねぇ?
 さてと、部活行くかな。
 ・・・と、誰かが俺の席の前に立った。
 そしていきなり俺の目の前にノートを広げておいた。
 赤田か・・・。
 赤田智世
  背は150cm前半で細身。
  今ではこのクラスのマスコットキャラになっている。
  髪は入学した時はショートだったが、今は少し伸びたので少しだけ結んでいる。
  クラスの女子達の髪へのこだわりを見ると、特にこだわりがないように思える。
  目はパッチリと丸い。
  真面目で勉強熱心で努力家、非の打ちどころ無し。
  もちろん成績(まだ中間だけだけど)は学年トップ。
  今回の期末もおそらくトップだろう。
  パッと見ただけではとてもじゃないが、そうとは思えないだろう。
  ただ、運動はあまり得意ではない。
  同級生にも敬語を使う。
  いつからかは忘れたが、勉強でわからないことがあったら次の休み時間に俺のところへ来るようになった。
  たとえそれが俺の苦手教科だと知ってても。

士仙「何か?」
智世「ここの現代語訳合ってます?」
士仙「どれ・・・・ってここまだやってないとこじゃない?」
智世「だからあなたに聞いてるんです。」
士仙「・・・俺古典は苦手だし、第一赤田さんより悪いよ?」
智世「確かに点数だけを見ればそうですけど、私の場合、訳が不自然になるので。」
士仙「んー・・・ま、いいんじゃない?」
智世「ちゃんと見てください。」
士仙「・・・はいはい。」

 適当な返事をすると怒る。
 熱心な事で。
 どれどれ?
 ・・・
 ・・
 ・

士仙「ま、いいんじゃない?」
智世「ホントですか?」
士仙「ただ詳しい単語の意味とかは知らないけどね。」
智世「楠葉君がそう言ってくれると安心です。」
士仙「今度は何点くらい取れそう?」
智世「目標は100点です。」

 そう言ってニコッと笑った。

士仙「じゃ、そろそろ俺部活行くから。」
智世「最近忙しそうですね。」
士仙「大会だからね。」
智世「だからあんなに適当なんですね。」
士仙「・・・反論はしないよ。」
智世「じゃ、今の大会が終わったらじっくり勉強のこときいてもいいですか?」
士仙「あー、うん、どーしよっかなー。」

 こいつのじっくりは底がなさそうだ。
 でも、確かに最近は適当すぎたし……。
 ・・・・・・・・いっか。

士仙「今までの罪滅ぼしの意も込めて、いいよ。」
智世「じゃあそれまでに色々ピックアップしときます。」
士仙「・・・・・・・・・・ほどほどにね。てか遅れるから!!」
智世「頑張ってください。」
士仙「また明日。」

 俺は急いで練習へと向かった。


 その日の練習は前の試合で出たミスの確認などの軽めのもので、1時間くらいのものだった。
 さっさと帰り支度を終えた俺は、自分のチャリをとりに行った。
 チャリに乗って正門を出ようとしたとき、正門に一際小さな後ろ姿の女子がいた。
 どう見ても赤田だった。
 ん?
 こいつ部活には入ってないはず、ならなんで今の時間まだここに?

士仙「オッス。」
智世「はへ?」

 相当今ビクついたな。

士仙「なんでまだここにいるんだ?」
智世「教室で40分くらい古典・英語・生物のチェックをしてから図書室に行って本を借りてきたんです。」
士仙「・・・チェック?」
智世「あの、さっき話したピックアップのことです。」
士仙「で?見つかったのわからないとこ。」
智世「はい、割とたくさん。」

 た、たくさん・・・ね。
 絶対俺答えられないとこあんぞ。

士仙「俺こっちだから。」
智世「はい、さようなら。」
士仙「またな。」

 さようなら・・・・同級生、まして同じクラスのやつに普通言うか?
 いや、あいつにとっちゃ普通なんだろうけどな。
 つくづく思うけどすっげぇ丁寧だな。
 同じくらいの大きさでこうも違うもんかね・・・・。
 ねぇ、遊意華さん?


――――――桜ノ宮――――――

遊意華「ハックシュ!!!!」
晴美「・・・ユイ、今こっち狙ってくしゃみしただろ!?」
遊意華「あー誰か私の美貌について噂してるな?」
晴美「無視すんな!!」


――――――士仙・帰り道――――――

八百屋のおっちゃん「おう、士仙。今日はトマトがいいぞ。買ってくか?サービスすんぞ?」
魚屋のおっちゃん「お〜い、男前。今日は何か買ってけ。」
士仙「今日は余り物で適当に片付けちゃうんでいいです。」

 ここは商店街。
 いつものここを通って登下校して、買い物もする。
 小学生になる前から慣れ親しんだ場所だ。
 そこを通り抜けると、静かな住宅街に入る。
 そしてその住宅街の端の我が家へと向かっている。
 !!
 なんということか、俺は見てはならない人の後ろ姿を見てしまった。
 やつには会いたくない、関わりたくない。
 ・・・しかし家へはここを真っ直ぐ。
 敵は前方20m、5m先より右折できる。
 よし、そこから迂回だ。
 仕方がない。
 よし、曲がれた。
 そして無事到着。
 俺はチャリを置いて家に入ろうとした。

士仙「ふー良かった。」
??「何が?」
士仙「何がってそりゃお前と関わらなかったことが・・・。」

 嘘だ。
 何故ばれてる。

梓「この梓様を欺こうなんて百年早いわ。」
士仙「で、何の用?」
梓「いやー今日は姉ちゃん帰ってこないからさ、夕飯作ってもらおうかと。」
士仙「・・・家には1人分しかないけど?」
梓「よし、じゃ買い物に行け。」
士仙「ほざくな!!!」
梓「あ、もう、この子ったら一緒に行ってほしいわけ?それならそーと―――。」

 ガチャッ
 バタン

士仙「付き合ってられるか。」
梓「何?私を外に置いてきたつもり?」
士仙「・・・ターミネーターか。(あの2の水銀みたいなやつっぽくね)」
梓「お邪魔してまーす★」
士仙「帰る気ないだろ。」
梓「わかってんじゃん☆なんならお背中流してあげましょうか☆?★」
士仙「・・・・・絶対飯作らん!!」
梓「もー何怒ってんのよ☆照れ屋なんだから★☆★」
士仙「とりあえず『☆★』マークは出すな。」
梓「はい、ご主人たま。」
士仙「メイドの役すんなら飯作れよ。」
梓「細かいこと言ってたら器も『アソコ』も大きくならないよ?」
士仙「ほっとけ。」
梓「あんたに私を満足させられるのかな?」
士仙「させる気なんてねーよ。」
梓「照れちゃって〜。」
士仙「誰が?」
梓「素直になんなさいよ、『梓お姉様、ぼかぁ、ぼかぁもう』とか言ってさ。」
士仙「さーて風呂入ってくるか。」
梓「じゃあ一緒に。」
士仙「『おもいっきり乱闘おりゃおりゃブラザース』やってていいから。」
梓「さぁ、もっさり乱闘してくるぞ。」
士仙「・・・ああ、疲れる。」

 〜30分後〜

士仙「ふぅ、さて何作るかな。」

 俺の目の前には、寝転がりながら家には無かったはずのポテチ(おそらく持ち込み)を食いながらゲームをする制服姿の高2女子。
 何故こんな生活してんのに太らないんだ?

梓「いけ!うりゃ!!おれっちに勝てっかい。」

 そして何故かゲームが非常に上手い。

梓「飯作ってよ。」
士仙「材料は1人分しかないぞ?」
梓「そこにあるよ。」

 梓が指差したところには買い物袋があった。
 その中にはスパゲッティが入っていた。

梓「私さぁ、今日はスパゲッティ食べたいんだよね。」

 ゲームをしながら言う。
 こっちには全く振り向かない。

士仙「ま、簡単だしいいけど。」
梓「ナポリタンでいいよ。」
士仙「ミートソースでもいいの?」
梓「ナポリタンを作れ。」
士仙「はいはい。」

 結局その日、梓は帰らなかった(ついでに言うと親父も)。
 ちゃんと着替えも夜食も用意していて、晩飯を食った後でも普通にゲームをしながら『殿べえ』といううどんを食べていた。
 俺は12時にはその場で寝たが、梓はそれ以降も続けたようだった。
 結果・・・。

士仙「起きろ、朝だぞ。」
梓「あと5分。」
士仙「待ったら遅刻だな。」
梓「なぬ!?」

 がばっと起きた。

士仙「ちゃっちゃと顔洗って飯食って着替えろ〜。」
梓「うわぁ〜時間が〜。」

 本当はあと15分以上も余裕があるが、朝が弱いやつは未だに時計を気にする余裕がない。

士仙「早く飯食えよ・・・。お、おい!!!待て!!!いきなり脱ぐな!!!!」
梓「朝から興奮しちゃまずいもんねぇ。」

 そう言うと、後ろから俺の肩に手をかけて体を密着させてきた。

士仙「お、おいこら!」
梓「今は下着だけだよ?」
士仙「もう、置いてくからな。」
梓「あ、待って待って。って時間も無いし・・・ってあれ?まだ15分は大丈夫じゃねーか!!」
士仙「今頃気付くなよ。」
梓「くそーこっちも興奮しちゃったから完全に目ぇ醒めたしな。2度寝は無理か。」
士仙「ほら、飯食え。あと寝癖な。それと顔洗え。最優先事項はさっさと制服に着替えろ!!」


-- NEXT --------------------------

[245] あ、そうえいば
3A - 2008年02月24日 (日) 00時16分

とりあえず梓のプロフィールでも

黒津梓 高2
 身長:163cm
 血液型:AB
 髪はロング。
 寝癖はひどい。
 士仙と同じ松ノ畷生。
 家は隣同士で、5年ほど前に越してきた。
 現在は姉と2人暮らし。
 以前は母も一緒に暮らしていたが、2年ほど前に他界。
 それ以来よく楠葉家にご飯を食べにくるようになった。
 得意なものは格ゲー。
 苦手なものはパズル系。
 ありえない程の俊敏な動きができて、自分の部屋から士仙の部屋へとびうつることもしばしば。
 勿論潜入なんてお手の物。
 ついたあだ名が『忍者』。
 運動部から勧誘の声がかかるが本人は興味なし。
 いつもテストは真っ赤っ赤。
 本人曰く、「本気出したらまわりが泣いちゃうから」

っていう黒津梓さん。
ん?黒津?
はて、どこかで・・・。
あ、お姉さんとは約10歳違い。

[261] 第5弾
3A - 2008年05月18日 (日) 18時33分


-----------------------------------------
- 決戦前 -
-----------------------------------------


??「それじゃ、よろしくね」
??「了解なの」

 士仙の試合前日の看護科総括会室を見てみよう。


――――――看護科総括会室――――――

雪奈「ふぅ。」

 雪奈は迷っていた。
 明日の試合行くべきかどうかを。
 行かなければならない理由なんて全くない。
 行く場合の理由は誘われたから。
 ただ、こちらも手が離せない。
 主催権をとれたならそれなりのやらなければならない事がある。
 それは、その行事を良い物とせねばならないからだ。
 だから今は会議に提出し、主催権をとることができたこの企画書をさらに推敲せねばならない。

 そしてもう1つは、
 水泳大会の主催権の件だ。
 ここで水泳大会もとると、最多主催権レースで普通科に並ぶ。
 これも重要なモノだ。
 これは一応つづらにやらせてはいる。
 が、雪奈は殆ど全く期待はしていない。
 何故なら今もここ、総括会室に姿が見えないからだ。
 だから『こっちも私がやらなくちゃいけないのか』
 という心境に陥っているようです。

 とりあえず今は時間があっても足りないようなそんな状態である。


 ガラガラッ

 扉を開けて、入ってきたのはつづらだ。
 それを確認した雪奈は、

雪奈「久遠さん、こちらへ来てもらえます?」
つづら「私も用があるの。」
雪奈&一同「え?」
つづら「・・・・・。」

 つづらは雪奈の目の前に1冊の冊子をおいた。

雪奈「これは・・・。」

 手にとって確認する雪奈。
 それは見事にパソコンで作った水泳大会の企画書であった。

雪奈「・・・。」

 ペラペラ

雪奈「・・・・・・・・・・。」

 ペラペラペラペラ

雪奈「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 トンッ

 机にその企画書をおいて皆が注目する一言を放つ。

雪奈「これでいきましょう。」

 全員言葉を失った。
 大相撲なら座布団が乱れ飛ぶような出来事である。
 企画書が採用された事だけじゃない、むしろつづらが企画書を作ってきた事が8割を占める。
 そう、何も言われずに・・・。

つづら「ゆきちゃん最近疲れ気味なの。明日の日曜日くらい気分転換にでも行けばいいの。」
雪奈「え?」
つづら「私のささやかなプレゼントなの。」

 さてどうする雪奈。
 1つ肩の荷が降りた。
 1ヤマ越えた。
 明日はどうする?
 試合に行くのか?
 それとも企画書を推敲するのか?
 休養か、仕事か。
 雪奈の天秤が揺れ動く。
 左に傾いたり右に傾いたり。
 さぁ・・・どっち?

雪奈「ありがとう、でもまだこっちの企画書が完璧じゃないから―――。」
つづら「皆まで言わなくてもわかるの。私がやっておくの。」

 場の時が一瞬止まった。
 皆さんの、
 『え?この人誰?』
 『つづらちゃん?』
 『夢だー!!!』
 『\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?』
 という心の叫びがこちらのひしひしと伝わってきます。

 で
 す
 が

 事実なんです。
 現実なんです。
 この人はつづらちゃんなのです。
 ここは看護科総括会です。

 てことで雪奈の現在やらなければならない仕事は無い。
 よってこの場合天秤は休養に傾き、試合を見に行くという選択肢が輝いて見えているはずです。

つづら「ゆきちゃんはもう部屋に帰ってていいの。」

 つづらはそういいながら雪奈を立たせて、背中を押して廊下へ出させた。
 雪奈は抵抗らしい抵抗をしなかった。
 あまりの出来事に思考回路が遮断されてしまったからなのか?
 今はそれはわからない。
 しかし部屋を出てしまった以上、今日は仕事はできない。

雪奈「・・・はぁ。」

 とりあえず部屋に帰る雪奈。
 すると後ろから鶯が雪奈に言った。
 
鶯「コンディションを整える事も必要ですよ?」
雪奈「えっ?・・・・・・そんなに顔に出てますか?」
鶯「鏡を見ればわかるよ〜っと。」

 鶯はそのまま来た道を戻っていった。
 雪奈の方には振り向きもせずに、手をひらひらと耳の近くで振りながら答えた。
 つづら、鶯と立て続けに『疲れている』と言われた雪奈は、

雪奈(そこまで重症なのかしら?)

 そして雪奈の携帯が震えた。


――――――松ノ畷高校グラウンド――――――

 試合前日ということもあってか練習は軽めのものと、サインプレーの確認だった。
 しかし、士仙とキャプテンの河原だけはグラウンドにはいなかった。
 グラウンドの隅にある部室で色々と話しあっていた。

河原「このプレーだとこいつはこう動くだろ?」
士仙「9割方そうですね。」
河原「ならこいつを生かすためには・・・。」
士仙「僕がこいつのサポートにまわります。」
河原「だがそうすると次が孤立しちゃうんだよな。」
士仙「河原さんがサポートにつくのもありですが、そうすれば次の攻撃が組み立てられなくなります。」
河原「・・・。」
士仙「・・・。」
河原「・・・仕方ないか。」
士仙「?」
河原「とりあえず前半はこれで行こう。」
士仙「では後半は?」
河原「リードされている場合、均衡している場合はここをコイツに替えて―――。」
士仙「じゃあハーフがいなくなるじゃないですか。」
河原「いるいる。あいつならセンスあるし務まると思うけどな。」
士仙「・・・徹斗ですか?」
河原「さーっすが。」
士仙「・・・。」
河原「あいつならスピードもあるし、何より敵の虚をつける。」
士仙「・・・。」
河原「大丈夫、パスの精度はまだ花村(正ハーフ)に及ばないけど、距離は出せるし、俺があいつのパスを取る。」
士仙「相当疲れますよ?」
河原「任せろ。・・・それと、」

 河原の目が真剣になった。

河原「『竹那のモンスター』はお前がどうにかしろよ?」

 竹那(ちくな)とは明日の対戦相手。
 体育科があるため運動部全体の成績がいい。
 昔から松ノ畷とは『松竹対決』と云われてきた。
 云わば伝統の対決でもある。
 それだけに勝ちたい気持ちは他以上にある。
 だが、勝ちたい理由はそれだけではなかった。

士仙「それはもしFWが抜かれたらの話でしょう?」
河原「何度やってもうちのFWじゃ勝てなかった。」
士仙「・・・。」
河原「あいつらここまでその主役を抜いて勝ってきたんだ。俺達より点を取って。」
士仙「・・・。」
河原「聞いたところによると怪我したそうだがな。」
士仙「怪我?」
河原「ああ、だから『出さなかった』じゃなくて『出られなかった』そうだ。」
士仙「そのまま出られなかったらいいんですけどね。」
河原「たとえ10分でも出てきたら全然違うからな。」

 河原が席をたった。

河原「なんとしてでもまずこの大会で勝たなけりゃならねえんだ。」
士仙「・・・そうでしたね。」
河原「明日は・・・確か晴れだったよな。」
士仙「暑いらしいですよ。」
河原「お前も出ろ。さっきのフォーメーション合わせるぞ。」
士仙「はい。」

 日差しは強かった。


――――――桜ノ宮・雪奈の部屋――――――

 雪奈は携帯を見ていた。
 さっきのは黒津からのメールだった。

差出人:黒津先生
 内容:来るなら迎えに行くからね

 雪奈は携帯というものが憎く思えた。
 いつでも身に着けているから知らん振りはできない。
 必ず返事をしなければならない。
 雪奈はその返事に困っていた。
 さて、如何すべきかと。
 ・・・
 否。
 困っている風に装っているだけだ。
 何故?
 わからない。
 これといった理由があるわけでは無い。
 そんな考えが固まって、『行きます』の返事を打とうとした時、指が止まり脳が動き始めた。

雪奈(どうせなら・・・)

 そう呟き、出した答えは、

―――1人、電車でゆっくりと向かう。

 これが最もリフレッシュには良いだろうと雪奈がだした結論だった。
 その旨を黒津に伝えると、黒津はそれを了承した。

 窓から入る風はあくびをさそった。


――――――桜ノ宮・???――――――

 夜。
 ある2人がとある部屋で話し合っていた。

??「成功なの。」
??「お疲れ〜。」
??「でも・・・。」
??「ん?」
??「こんなことしてあなたにどんな利益があるの?」
??「ん〜・・・暇つぶし?」
??「・・・嘘・・・・・・なの。絶対嘘なの。」
??「そう言うからには証拠でもあるの?」
??「・・・・・・ないの。」
??「じゃ、ま、証拠でも見つけたらそのときは教えてあげる。」
??「・・・・・・・・・・。」
??「明日は私が行くから、あなた明日は会議でしょ?」
??「・・・・・わかったの。」


――――――楠葉家――――――

士仙「ただいま〜っと。」

 今日も父親は帰っていないようだ。

士仙(これじゃ1人暮らしじゃねぇか。)

 さっさと洗濯物を洗濯機へ入れ、自分も洗濯機・・・ではなく、風呂へと入った。

士仙(『竹那のモンスター』・・・か。)

 その日はとても寝つきが良かった。


――――――試合会場・椿ノ原グラウンド――――――

徹斗「いつもより遅かったな。」
士仙「たまには社長出勤もいいかなと。」
河原「それに比べてお前はえらく早かったな。」
徹斗「いい心がけでしょ?」
河原「興奮して早く目が覚めたとかかな?」
徹斗「え?あ?ち、違いますよ〜。」
士仙「ある程度緊張してる方がいいけど・・・皆緊張しすぎですね。」

 そう言って士仙は松ノ畷の選手全員の顔を見渡した。
 必死に深呼吸する者もいればスパイクの紐を何度も結んでいる者もいた。

河原「・・・やっぱり一発目で全員の目を覚ます必要があるな。」
士仙「はい。」
河原「わかってんなお前ら?」
士仙「勿論ですよ。」
徹斗「任してください!!」

 と、その時

「おい、竹那が来たぞ。」
「お、本当だ。モンスターもいるぞ。」

 見物人の声で全員がその方向を向いた。
 1人明らかに大柄な選手がいた。
 その選手と士仙は目があった。
 その瞬間、双方共に敵の中心人物だと悟った。

 決戦まであと1時間。

 遠くの空には雲があった。

 風も出てきた。

 その風が顔に当たった感覚は士仙に無かった。

 この試合は荒れそうだと河原が士仙の隣で感じた。



-- NEXT --------------------------


約3ヶ月ぶりの投稿
なんか色々あった3ヶ月でしたね
私の回りの状況と言うか私自身色々変わってしまった

ま、そんなことはさておき

まだまだ続きますよこのシリーズ
外野A(もーいーだろー)
外野B(やめろー)

 ガチャッ、パン!パン!

もういいじゃんとか言わないで下さい・・・
外野A・B(ぐはぁ・・・)

結末とか終盤のシナリオは元々8割強できてんですけど、
その間がね、まったくないんすよね
穴埋め問題ですね
ひょっとしたら大嫌いな英語のテストの穴埋め問題の方が簡単かも・・・

とりあえず、誰か1人でもこれを見守っていただけると嬉しい限りです

外野A(お、お前、このあとがきは何様のつもりだ!!)
外野B(今回は防弾チョッキつきだぞ!?)

ピュー・・・

外野A(ん?ピュー・・・?)
外野B(・・・陰?)

ドッカーン!!

まったね〜

外野A・B(なんだこのあとがきの落としかたは!!)

牙○!!

外野A(ぎゃっ!)

天翔○閃!!!!

外野B(だぐはっ!!)

See You Next Story.

[265] 第6弾・・・でしたっけ?
3A - 2008年07月25日 (金) 02時51分

-----------------------------------------
- パワー -
-----------------------------------------


 雪奈が黒津のテントに着いたのは前半終了間際だった。

雪奈「黒津先生。」
黒津「あ、雪奈ちゃん。遅かったわね。」
雪奈「電車が遅れちゃいまして。」
黒津「そこにかけていいわ。」
雪奈「どっちが勝ってるんですか?」

 黒津は得点板の方を指差した。

 松ノ畷 7−17 竹那

雪奈「松ノ畷が負けてるんですか?」
黒津「ええ。」
雪奈「そんなに強いんですか、竹那って?」
黒津「そんなに松ノ畷とは変わらないわよ。チーム全体で見れば。」
雪奈「じゃあなぜ―――。」
黒津「『竹那のモンスター』。」
雪奈「え?」
黒津「あ、士仙君がボール持ったみたいよ。」

 雪奈もグラウンドへ目を向けた。
 するとそこではドロドロになったユニフォームを来て、楕円球を持った選手が1人2人と相手を抜いていた。
 しかし、彼の前に彼よりも大きな選手が立ちはだかった。

黒津「彼が『竹那のモンスター』、本名・猿ヶ谷 翔馬(さるがや しょうま)君。」

 士仙はトップスピードで翔馬に突っ込んだ。

雪奈「なんでよけないの?」
黒津「スペースが無いからよ。」
雪奈「?」
黒津「さっき2人抜いたでしょ?2人を抜くためには『2人を抜くための道』を行くしかなかった。」
雪奈「!・・・でもその道の行き先が・・・・・。」
黒津「そう、猿ヶ谷君のところ。もしくはその道を予測して猿ヶ谷君が先回りしたか。」
雪奈「でも、楠葉君も当たり負けはしないのでしょう?」

 黒津は雪奈に自分が知っている限りの情報を伝えた。

   3年生、身長190cm、体重100kg、ベンチプレス140kg
   中学生の時には相撲大会に出場し、全国優勝。
   1年生時はその突破力だけでレギュラーとなったと言われる。
   2年生になる頃には持ち前の運動センスで器用なプレーもこなせるようになるが、
   秋の全国大会の予選決勝で自分の突破が梅光学院に止められたがために全国への切符を取り損ねる。
   それ以来、自分の原点である突破力・パワーに練習の全てを注ぎ込むようになる。
   

 そして、1年生の頃から松ノ畷は彼の突破により負けてきたこと。
 故に彼をどう止めるかが松ノ畷の課題であることも。

黒津「正直、ぶつかるパワーだけを見たら、彼に敵う高校生は全国にも数少ないわね。」

 士仙は潰された。

黒津「松ノ畷で1番突破力があるのが士仙君だから、松ノ畷ではパワーで猿ヶ谷君に敵わう人はいないわね。」
雪奈「じゃあこの試合は・・・。」
黒津「そうね、このままいけば点差は開くだけね。」
雪奈「他の能力で見たらどうなるんですか?」
黒津「うーん、大体同じくらいね。」
雪奈「・・・。」
黒津「ただ、」
雪奈「ただ?」
黒津「本領発揮してない人が松ノ畷には2人いるわ。」
雪奈「え?」
黒津「あの子達が殻を破れば形勢は・・・。」
雪奈「誰ですか?」
黒津「キャプテンの河原駿(しゅん)君と士仙君。」
雪奈「じゃあ何故今まで?」
黒津「河原君はまだ前半は見てるだけなのかもしれない。けど、士仙君は・・・。」

 慌てて自分の口を自分の手で塞いで言うのをやめた。
 雪奈は士仙のことを言おうとしたときの黒津の表情が気になった。
 何か悲しそうで、それでいて何かを可哀想だと思っているような、そんな表情だった。
 ここで前半終了のホイッスルが鳴った。


――――――士仙――――――

士仙(くそ、またか!)

 士仙はこの試合、幾度も翔馬に止められた。

翔馬「・・・中々いい当たりだ。」

 翔馬が士仙によってきて言った。

翔馬「スピードもある、だが力そのものの量が違う。筋肉、体重、パワーがな。」

 その見下げている目は何故か士仙には悲しそうにも見えた。

徹斗「なんだって?」
士仙「俺には敵わないだとさ。」

 2人はチームのベンチサイドへきた。
 他の1年生が水を持ってきた。
 2人は彼等に『サンキュー』と言って水を返した。

徹斗「それで?」
士仙「・・・後半は違う。変えてみせる。」
徹斗「・・・・・・・・ホントにいいのか?辛いんだろ?『あれ』。」
士仙「ここで負けることと比べれば雲泥の差だな。」
徹斗「ああ、キャプテンには言っとく。」
士仙「残り15分まで負けていれば・・・・・だけどな。」
徹斗「あいあい。」


――――――テント――――――

雪奈「ところで、前半の得点はどういう風に。」
黒津「ああ、あれね。」

 黒津が話しだした。


――――――前半の振り返り――――――

 キックオフは竹那だったわ。
 ラグビーでのキックオフはサッカーとは違い、相手陣にボールを蹴り入れるの。
 ほとんどの場合、キックオフはFWの方へ蹴るわ。
 そして竹那FWと松ノ畷FWがぶつかり合って、松ノ畷がボールをだしたの。
 普通、ラグビーは陣取りゲームだから自陣深くだと、自ボールであってもフィールドの外へ蹴りだすの。
 あ、勿論真横には蹴りださないわよ?
 それじゃ陣地回復にはならないから。
 今回のキックオフも割と深かったわ。
 でも、河原君はすぐにパスを要求したわ。
 河原君はSO(スタンドオフ。一般にはスタンドと呼ばれる。)なの。
 だから早い話が『司令塔』ってことね。
 その彼が普通は蹴りだすんだけど、すぐに士仙君にパスをしたの。
 士仙君とはポジション的に離れてたし、竹那もキックを警戒してたからすぐに竹那のDFラインの裏に抜けたわ。
 士仙君とWTB(ウィング)の徹斗君のコンビで結局ノーホイッスルトライをとったわ。
 もちろんトライ後のキックも成功、それで7点。
 ちなみにノーホイッスルトライっていうのは、キックオフから1度も反則やボールデッド(ラインの外に出るとか)がなくてトライすること。
 これはやられた方からしたら屈辱的なの。
 でも、その後は竹那が猿ヶ谷君の突破を中心に組み立てていき、最初のトライ以外はずーっと竹那ペースだったわ。


――――――今――――――

黒津「でも、あの3人があの奇襲をやらなかったら、もっと点差は開いてたわね。」
雪奈「何故ですか?」
黒津「松ノ畷の選手はあの3人以外ここからでもわかるような緊張っぷりだった。」
雪奈「! それをあの3人の奇襲で。」
黒津「そう、恐らくトライまでは行かなくとも、緊張がとれさえすればいい、と思ってたんでしょうね。」
雪奈「でも、何故そんなに緊張してたんでしょう?」
黒津「それはね、今日負けたら3年生は引退なのよ。」
雪奈「え?でも全国大会の予選は秋ですよ?」
黒津「松ノ畷はここらでは有名な進学校。学校側は秋まで続くクラブはそのシーズンの成績が悪いと、秋まで待たずに引退させられちゃうのよ。」
雪奈「・・・。」
黒津「ラグビーだけじゃない。サッカーなどもその標的なの。」
雪奈「・・・。」
黒津「だから、」
雪奈「?」

 黒津は雪奈の方を向いた。

黒津「だからあなたも今、あの子達のように色々、がむしゃらにやってみなさい。」
雪奈「え?」
黒津「あなた、さっき『将来のことを考えたらそのほうがいいんじゃないか』って思わなかった?」
雪奈「あ、」

 図星だった。

黒津「でもね、将来いい大学へ行って、いいところで働いて、いい家族が出来たとしても、『あの時・・・』って悔むかもしれない。」

 雪奈は聞き入った。

黒津「あなたは中途半端に物事を終えていい気分になる?」

 決してそうはならない。
 雪奈の答えは言わずとも黒津に届いていた。

黒津「でもね、全てが完璧に行く筈ないのよ、世の中。」
雪奈「そ・・・うですね。」
黒津「だからこそ、やり切るの。やり切った不完全と、投げ出した不完全では物事の結果が同じでも、自分の中に残るモノが違う。
   やり切ったなら『あの時はあれが精一杯やった結果だ』と言えるけど、投げ出したなら『あの時もっと自分は出来てたんじゃないか?』
   となるでしょう。あなたも会議で忙しいでしょう。けど、何も全てあなたが背負う必要はないし、全て完璧である必要なんてない。
   最多主催権がとれることにこしたことはないけれど、それでもし体を壊したならそれこそ『医者の不養生』よ?未来の御医者様?」

 黒津が言ったことは的確だった。
 黒津は雪奈の額に手をあてると、

黒津「やっぱり・・・、少し熱があるみたいね。知恵熱かしら?それとも疲れてるのかしら?」
雪奈「わからないです。」
黒津「とりあえず、今はこのゲームを楽しみなさい。帰りは送っていってあげるから。」
雪奈「・・・ありがとうございます。」

 雪奈の笑みに少し変化が現れたが、雪奈自身は元より、誰もまだ気が付かないほどのごく小さな変化だった。
 その変化は何を意味するのか、それはまだわからない。

 後半が始まるようだ。

-- NEXT --------------------------


さすがに受験生
時間がないですね
もうテンパってます
今までサボってきた自分を絞め殺す勢いでテンパってます
18年生きてきた中で今が一番文字を書いております
ここ1週間で

原稿用紙6〜10枚/日

手首、指、頭が痛いっす
というわけで

サボリがてら(×)
気分を変えるため(◎)

久々に続きを

約2ヶ月ぶり・・・でしたかね

危うく展開を忘れるところだっt


まったね〜

[277] 色々とフラグとスポコンが熱い事になってますが。
ラスティ・ブランフォード - 2008年09月16日 (火) 23時20分

完璧超人の士仙くんも、思い通りにならないことは多いようで。
……フラグを知らないうちに建てまくる紅夜とは大違いだ。

積極的に思いを伝えるのは、どっちが先か。
ある意味、そこが一番気になるところw

期待して待ってます。

[279] アツクナリスギテマス・・・
3A - 2008年09月17日 (水) 01時58分

自分でも思った以上に長くなっちゃいまして困ってるんですけれども、
一応必要なくだりではあると思ってますんで了承してちょ☆(←全然かわいくない)

長くなりすぎたんで、描写を急激に減らすようにしてます
が、受験生なもんで時間が・・・

ええ、↑は言い訳ですとも!



Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】Amazonから最大10%ポイントアップ新生活応援セー日開催中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板