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桜ノ宮学園 学生掲示板

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[6] ノンジャンル用スレッド
管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時19分

投稿する場所が不明の小説を投稿、雑談をする場合はこのスレッドにお願いします。

小説投稿用テンプレート↓

-----------------------------------------
- タイトル -
-----------------------------------------
ここに内容。
-- END or NEXT --------------------------

[10] どこに書き込めばいいのか分からなかったのでここに。
麻樹to管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時25分

死神「七海さん」

神社の境内を掃除していた七海は、背後からかかった言葉に手を止めた。
振り向いてみると、そこにいたのは死神だった。

七海「あ、お姉ちゃん!」

ぱっと笑顔を咲かせた七海は死神に抱きついてほお擦りを始める。
まるで仔犬のようだ、と死神は思わず含み笑いを浮かべた。

七海「今日はどうしたの?お仕事?」
死神「いえ、今日はちょっと寄り道を」
七海「そうなんだ。じゃあ、あの……ちょっといいかな?」
死神「なんでしょう?」

そこで一旦七海は口ごもったが、死神に促されて、ぽつりと、

七海「なんでお姉ちゃん、まだ夜じゃないのに”見える”の?」

と、青空を指差して尋ねた。





七海「お父さん、お父さん!大発見だよ!」

ドタドタと足音を立てて走ってくる娘の姿に、狼輝は思わず苦笑した。

狼輝「七海、廊下は静かに歩きなさい」
七海「それどころじゃないんだよ!お父さん!」

地団駄どころかばたばたと騒ぎ出す七海をどうやってなだめようかと、狼輝は考えをめぐらせていたが、

死神「こんにちは」

死神がひょっこりと顔を出したのを見て思考が停止した。

七海「なんと、お姉ちゃんは人間さんだったんだよ!」
狼輝「…………え?」

狼輝らしからずあっけに取られていると、死神があわてて訂正した。

死神「いえ、ですから私は人ではないんですよ?」
七海「え?だってお姉ちゃん、さっき私は人間だ、って言わなかった?」
死神「いえ、それはですね、……えーと」

どうしたものか、と思案顔の死神をしばし眺めていて、ようやく狼輝の硬直が解けた。

狼輝「ああ、二人とも落ち着いて。一体どうしたんだい?」
七海「だから!お姉ちゃんは人間さんなんだよ!」

ビシッ!と死神を指差して、七海。

『……………………』

しばしの硬直の後。

死神「あの、私が説明します」
狼輝「うむ。頼むよ」
七海「二人して私を無視しないでよーー!」





狼輝「どうぞ。粗茶だけど」
死神「ありがとうございます」

七海を境内の掃除に戻して数分後、ようやく二人が落ち着いて会話できる状態になった。

狼輝「で、これは一体なんの騒ぎなんだい?」
死神「はい。それはですね、今私は人の体に憑依している状態なんですよ」
狼輝「…………ふむ?」

狼輝が眉をひそめる。

狼輝「それはまたどうして?」
死神「以前、お話したことを覚えていらっしゃいますか?」

いきなり飛んだ話に、しかし狼輝はピンときた。

狼輝「まさか……桜ノ宮学園に生徒として潜入して、紅夜くんと命くんをくっつけるのが目的かい?」
死神「はい。まさにそのとおりです」
狼輝「そんな……本気だったなんて」
死神「ええ、私も驚いてますよ」

二人揃ってため息をつく。

狼輝「まったく……君の上司は一体何を考えているんだい?」
死神「同感です。そのためにわざわざこの、人の体を作り出したんですから」
狼輝「死神というのは現世に不干渉が基本だったはずだろう?」
死神「ごもっともです。ですが、現世に生きる命を監視するのも私達死神の使命ですから」
狼輝「それを建前に、君の上司は無理矢理命令を通した……ということだね」

こくりとうなずく、死神。当人は納得いっていないというのがよく分かる仕草で。

狼輝「それで?私に何の用なのかな」
死神「何のよう、とは?」
狼輝「君が本当に、ただの世間話をするためにここに来たことがあったかな?」
死神「ありませんね」

ふふっ、と笑う死神。

死神「では率直にお願いします。私の戸籍を偽造してください」
狼輝「さらっと私に犯罪を犯せと言うのかい、君は」
死神「私ではありません、上司の一人が言ったのです」
狼輝「なら、私ならそういうことが出来る、というようなことをその上司に伝えたのは?」
死神「それは私です」

なら君が言ったも同然じゃないか、と流石の狼輝も愚痴る。
当然だ。この世ならざるものにいきなり犯罪に加担しろと言われたのだから。

狼輝「すまないが、それは出来ないよ。七海を犯罪者の娘にしたくはない」
死神「そうですね。ここであっさり引き受けられたら私が困るところでした」
狼輝「と、言うと?」
死神「私も七海さんが好きですから」

恋愛感情ではないですよ?と付け足す死神。

死神「学園に潜入できないなりに、あのお二人に接触する方法はありますから。なんとかなるでしょう」
狼輝「なんだか、聞いてる限り行き当たりばったりな感じなんだかね?」
死神「仕方がありませんよ。恋のキューピットなんてしたことがないんですから」

そう言って、空になった湯のみを置いて死神は立ち上がった。

死神「それでは、そろそろ帰ります」
狼輝「そうかい?ああ、ちょっといいかな」
死神「何でしょうか」
狼輝「一度くらい本当にただの世間話をしに来てみないかい?七海が喜ぶ」
死神「すみません、それはまたの機会に」
狼輝「そうかい、残念だ」







七海「で、そこでお姉ちゃんは帰っていった、っていう夢を見たの」
狼輝「ふうん、そうか」

朝、朝食が並ぶ食卓をはさんで七海は今朝みた夢を狼輝に伝えていた。

七海「あーあ、あそこでお父さんが引き受けてくれてたら、今頃お姉ちゃんと楽しい学園生活を過ごしてたのに」
狼輝「これこれ、私に犯罪を犯せと言うのか」

狼輝は苦笑しながら七海を諭した。

七海「うーん……」
狼輝「どうした、まだ夢のことを考えているのか?」
七海「うん。どうしていきなりあんな夢をみたのかなー……って」
狼輝「死神ちゃんと遊びたいからだろう?」
七海「それはもちろんだけど、なんだろうなー……なんかすっきりしないなー」

うんうんとうなり続ける七海。
それを見て狼輝は苦笑しつつ、

狼輝「七海、早く食べないと間に合わなくなるよ」
七海「あ、いっけない!今日は日直だったんだっけ!」

慌てて食べ始める、七海。
このままだとのどを詰まらせるな、と狼輝は飲み物を取りに台所へ向かったが、ふと立ち止まり、

狼輝「さて、どうしたものかな…………」

思案顔で、つぶやいた。
そのつぶやきは、目の前の朝食と格闘している七海の耳には届かなかった。


-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------


なんだかタメを作ってるっぽいですが、続きは考えてません。
というか、続けていいものかどうか…………。

なんとか死神子を学園に登場させられないかな、と考えた末にラスティ・ブランフォードさんのSSを拝見して思いついた案。
あまりにも現実味に欠けるので夢オチにしました。

何か問題等あればご一報ください。

[11] 最大の問題は、脇役たる霜月親子がそこまで出張っていいのかということ。
ラスティto管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時26分

麻樹さん、狼輝と七海を使ってくださってありがとうございます。
あの二人のほんわかした雰囲気が良く出ています。

ん〜。確かに死神子の出し方には困りますよね…
『ヒトならざるもの』と言う一点がネックで…

戸籍云々は『日本国籍を持つ誰かと結婚するor養子になる』と、
現実の世界ではちゃんとした日本の戸籍が貰えますとだけ言っておきます。
偽造とかそういうアヤシイモノじゃなくてちゃんとした戸籍ね。
法律的には『身元引受人』がいるというのが重要なのかな?

自分が学園に死神子ちゃん出そうと捻ってた頃には、
黒森神社とは先代からの知り合いと言う設定にして、
狼輝の義理の妹orもう一人の娘にしてしまえと考えた事もありましたw
ただ、それは勝手な設定過ぎると思って速攻ボツにしましたが。

最終的に、凪鳥さんがイメージする死神子ちゃんは、
この設定を○とできるか×とするか、と言うのがポイントだと思います。

まあ、霊能力者関係がいると死神子ちゃんが出しやすいと言うのは確実だと思いますが…

[12] なるほど。
麻樹to管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時28分

戸籍については、法律に詳しくないために「偽装でもなければ手に入らないだろう」と勝手に思って、あのような話にしてみました。
本物の戸籍が手に入るのであれば、作中で狼輝が断った理由が消えるのでいける……かな?

ただ、本物の戸籍が手に入るとしても、紅夜と命をくっつけた後どうするのかなー……と。
一度戸籍を作ったらずっと残りますよね?
そうなると、死神子の年金とかどうなるのかなー……とか考えてしまいまして。
もらう予定の無い死神子の年金を払い続けるのって、結構負担じゃないかなー、と。

なんでこんな事考えてるんだ、自分……(沈

[13]
ラスティto管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時28分

年金……
ああ、この話の設定では魂が抜けても肉体が残るんですから、
単純に死亡通知を出してもらえばいいと思います。
そもそも年金は社会人になってから積み立てていくので、
どう見てもお子様な死神子には関係のないだとは思いますが……

戸籍は養子になる事で作れますけど、
『学歴』が作れないので桜ノ宮学園への転入が無理です(汗
先生にもなれませんね。
学園の外にいるサブキャラで良ければ、この方向性がある意味無難な設定だとは思いますが……どうなんでしょ?

原作見る限りは死神子が恋の後押しするのは別に良さそうなんですが、
生身をもって後押しするとなると……
泉と戦争になりそうです(汗
性格的にも泡無さそうだし。
それはそれで話の種としては面白そうですねw

ともかく、この設定でいく場合は黒森神社をいかにして桜ノ宮学園に絡ませるかがキーポイントになりそうです。


狼輝「七海、どうしたんだい?」
七海「ねえ、死神のお姉ちゃんが本当のお姉ちゃんになってくれるって本当?」
狼輝「……七海、もしかしてお姉ちゃんから聞いたのかい。」
七海「うん!ねえ、お父さんからもお願いして!」
狼輝【まずいな。これは引くに引けない状況になったかもしれない……(汗】
七海「七海も恋のキューピットのお手伝いする!命ちゃんと紅夜君を親密にするんだよね!」
狼輝「いや、人の恋路…」
七海「邪魔なんかしないもん!お手伝いするんだもん!」
狼輝「そうじゃなくて、こういうことに人が首突っ込むものじゃないよ。」
七海「人を愛するって言う事は素晴らしいんだよ!紅夜君も命ちゃんを愛するようになればいいんだよ!」
狼輝「いやだから。」
七海「七海とお父さんみたいに、愛し合いたいんだよ!」
狼輝「ちょっと待て、人様に聞かれたら誤解されそうな事を言うものじゃないよ七海。」
七海「七海はお父さんの事愛してるんだもん!お父さんに恋してるんだもん!」
狼輝「何時からお前はそんなにおませさんになったんだ……」
七海「将来七海と結婚してね、お父さん。」
狼輝「……。(絶句)」

狼輝「娘は父親に恋して育つというが、あの年であんな事言うのを見ると、教育に悪いかもしれないな……」

数年後、一身上の都合で高校生になった七海と離れなくてはならなくなった時にも、
『愛してる』だの『恋してる』だの言われるとは想像もできない狼輝であった。

[14] 蛇足とは思いますが。
麻樹to管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時29分

ちょっと調べてみたんですが、中学校卒業程度認定試験というものに合格すれば中学校を卒業していなくとも、高等学校(桜ノ宮学園とか)に入学は出来る――正確には高等学校入学資格が得られる――、みたいなことはあるみたいなんですよ。


まあ、いろいろと規則がありますからちょっと面倒なことになりますが……いっそのこと、死神子は実は新入生としてすでに入学していた――自分が書いた話は実は去年の話だったということにして――とか駄目ですかね?
帰国子女ということにしておけば、とりあえず中学校卒業程度認定試験の受験資格はあるみたいですし。


……なんだか自分で考えておいて無茶苦茶な設定な気が(沈

[15]
ラスティto管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時30分

つづら「るーちゃん、復活おめでとうなの!」
泉「やはり、風紀委員長は天津会長でないと!」
ルティア「まあ、当然といえば当然でしょうか。」
蒼月「復活おめでとう。天津君が減ってライバルが少なくなったと思ったのに。」
ルティア「……再開早々、言う事はそれですか。貴女は、もう少し生徒会長としての自覚を持ってください。」
蒼月「紅君がいるから大丈夫だよ。」
ルティア「その彼に頼りきった態度が問題なのです!」

ギャアギャアギャア……

綾河「……相変わらず、あの二人は仲が悪いな。」
命「そうだね……」
蒼馬「まあ、蒼はああいう性格だから…生真面目な天津さんには悩みの種なんだろうね。」
楠葉「私はそれだけじゃないと思ってるんだけど。紅夜さ……」
花園「誰かあの二人の喧嘩を止めるのを手伝って!!」
綾河「ほっとけ。気が済んだら止めるだろ。」
楠葉(……ライバルは多いし、障害も多いけど頑張ります!)

光「残念だったね、宇美」
宇美「別にいいさ、メインキャラじゃなくても。」
庭瀬「でも、ちょっとは悔しいんじゃない?」
宇美「(カチン)……**よ、お前。」
光「う、宇美止めなさい。」
庭瀬「武道派として晴美さんと組み手したり、主人公である紅夜君を殴ったと言う過去の栄光にしがみ付いて、精々頑張りなさい。」
光「鶯さんも止めて!」
宇美「止めるな姉さん、そいつ殺せない!必・殺!滅・殺!瞬・殺!」
庭瀬「どっから取り出したその棘ハンマー!?」
宇美「細長い風船と鎌の方が良かった?」
光「パロネタにしても、イラストも無い貴女がやるべきネタじゃないわよー!?」

……いや、妙な電波を受信した結果がこれでした。
駄文失礼。

[16] 楽屋裏つづき?
雲理to管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時31分

「はっはっは!油断したね、宇美くん。サラバだ!とぅ!」
「ま、待ちやがれー!!」
「まて!と言われて、まつ者がいますか! 」



本宮「・・・・・ (´・ω・`)」

[18] 楽屋裏のつづき??
管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時32分

氷雨「…全寮制?」
紅夜「あぁ、そういう事になった」
氷雨「…ご飯」
紅夜「いい機会だ、自分で作れ」
氷雨「…………」
紅夜「…………」
氷雨「…学校、行く」
紅夜「…は?」
氷雨「…私も、全寮制」
紅夜「…意味が解らん」
氷雨「…母校だから、大丈夫」
紅夜「大丈夫じゃね−だろ」
氷雨「……ダンボール、足りない」
紅夜「荷物をまとめるな」
氷雨「……もしもし、理事長?」
紅夜「電話をかけるな」
氷雨「…紅夜と相部屋がいい」
紅夜「断る」
氷雨「……(涙」
紅夜「…諦めろ」


…本宮さんは、一般ユニットでなんとか〜…。

[19]
ラスティto管理人 - 2007年05月22日 (火) 23時33分

ルティア「あー…君たち?人に危害を加えたり、校内の備品を壊してはいけませんよ?」
泉「それ以外は、いくらやっちゃってもいいんでしょ?」
宇美「うっせーよ!お前ら。」

光「……なんで盟主と強化人間みたいなやり取りしてるの?」

宇美「ノリだ!」

鶯「そうそう。F○?Yのラス○スの真似もやったし。」

光「版権は…」

宇美「パロディなので問題なし!」

光「なら、アレは…」

泉「ダメだよ、アレは。」

光「……もしかして結構ノリノリなんですか泉さん。」

泉「本音を言えば**けどね。」

[24] 死神子ちゃんについて。
凪鳥 - 2007年05月23日 (水) 01時03分

死神子ちゃんが肉体を持って学園に通うようになる。
というのは、私としてはありだと思いますが…。

そうすると、理由付けが肝心になりますね。
まぁでも、桜ノ宮学園物語はあくまでも「常星とは別の作品」と考えますから、対処の仕方は色々あると思います。

それこそ仕事で学園に入り込む必要がある、という理由を設定した場合、麻樹さんやラスティさんが考えるように、養子という方法もありだと思います。
ですが「肉体を作りだす」なんて芸当を、既にやってのけてしまっているのですから、戸籍の問題や入学手続きなどの問題は上司が何かしら世界に干渉して、既に解決してしまっている、というふうに考える事もできるかと思います。

基本的に住む場所は基本的に学園は全寮制なので困りませんし、しかりとした設定が整っていれば、死神子ちゃんを登場させる事もできると思います。

なんにしても、もう少し話を煮詰める必要はありそうです。

[25] 大浴場第一話
瀬希 望 - 2007年05月23日 (水) 19時26分

寮の一室。
水の弾ける音と文章を綴る音が部屋に響く中、
「ふぅ・・・」
と、ルティアは溜息をついた。

(今、何時かしら)

時計を見ると21時。
いつもなら20時には明日の準備は全て終わっている。
しかし、明日は珍しく授業という授業が全て宿題付。
こんな時間までかかってしまうのも当然といえば当然である。
軽く肩を揉む。意外と凝っているようである。

(久々に大きなお風呂に浸かりたいですわね)

などと、そんなことを考えていると、
「ルティアさん、お先にシャワーいただきました。どうぞ」
と風呂場から声がかかった。
「ありがとう。でも今日は私、大浴場へ行こうと思いますわ」
「そうですか、わかりました」
と会話を打ち切る。
(そうと決めたら・・・)
ルティアは素早く机の上を片付け、代えの下着を持ち大浴場へと向かった。

--------------------------------------------------------------------------------------

(明日は何か他に予定があったかしら?)
思考をめぐらす。
(英語は・・・終わってますし、地理は・・・ん)
足が止まる。
前から歩いてくる人物の顔を見たからである。
(やっぱり自室のシャワーでいいわね)
考えを一変させ部屋へ戻ろうと向きを・・・

「おや、珍しい。天津君じゃないか」

前から来た人物、蒼月に呼び止められた。

「なんだい、天津君もお風呂かい?」
「いけないですか?」
「いや、ただ単に大浴場にあまり顔を出さないからね君は」
「そうですか」
(蒼月さんといては、お風呂に入った所で肩がこるだけですわね・・・)
ルティアはそう思ったが
「どうだい、たまには水入らず。一緒にお風呂に入らないかい?」
そんなことお構いなしに蒼月は続ける。
「ではこれで失礼し・・」
踵を返したが、首が後ろへぐっとのけぞる。
「つれないなぁ、天津君。一緒に入ろう」
思いっきり髪を引っ張りながらそんなことを蒼月は言う。
「―――痛いですわ」
「いきなり会話を終わらせて帰ろうとするからだよ」
「何も髪を引っ張ることないですわよねぇ?」
「まぁ、いいからいいから」
「よくありませんわよ!!このまま死んでしまったらどうするつもりだったのですか!!」
蒼月の手を払
「一緒に入ろうよ」
った手を取り、肘の関節を極めながら蒼月は続ける。
「いたたたた・・・わかりました。わかりましたから早く放して下さい」
「そうこなくちゃ」
力を緩めながら蒼月はそういった。
「・・・何を企んでいますの?」
「ひどいなあ、企むなんてそんなぁ」

かくして、ルティアと蒼月は大浴場の門をくぐった。


―――――続く。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
と、なにやら駄文を突発的に書いてしまいましたが如何でしょうか。
お口にあったなら幸いです。瀬希 望です。

一応続きますが、続きはいつになることやら(おい

[28] 覗き。
凪鳥 - 2007年05月25日 (金) 00時39分

風呂ネタですか〜いいですね〜。
というか、この二人の絡みは実は書きやすいような。

お風呂といえば覗きネタですが、でも紅夜と蒼馬ではそのネタはやりずらいですね…いや、別に男じゃなくても覗きはでき…る?

[29] 養子手続き完了?
ラスティ・ブランフォード - 2007年05月25日 (金) 01時06分

深夜、静かに寝静まった夜。丑三つ時に話し合う黒い影。


狼輝「……コレで本当に良いのかい?」
死神「ご協力感謝します。」
狼輝「本当に、肉体を持ってこっちに住み込む気とはね…」
死神「一応、上司から言われた正式な辞令ですので。」
狼輝「その、君の上司は何を考えているのやら。」
死神「それは、私も知りません。ですが、紅夜さんを放置しておくわけにも行かないということですので。」
狼輝「全てが無価値にしかならない『無意味』な能力。例の、神魔の如き力を持つ人間か。」
死神「神にも悪魔にもなれるというのなら、貴方もそれは同じでは?」
狼輝「それは違う。彼の力は世界を変質させる力だろう。」
死神「貴方の力は世界を破壊するだけの力でしたね。」
狼輝「破壊とは違うな。万物、万象を『消す』力。」
死神「けれど、彼とは違って自分で知覚して制御できる力。」
狼輝「制御、か。何処まで持つか分からんが…」
死神「そんな弱気でどうするんですか。七海ちゃんがなんて言うか」
狼輝「それもそうだな。」
狼輝「ふふふ、『お父さん』も大変ですね。これから家族に加わる私もよろしくお願いします。(ペコリ」
狼輝「そんなに改まる必要はないよ、『魅西』。」
死神「ところで、その『魅西』って何が由来なんです?」
狼輝「死神をひっくり返してみがにし。<が>を取って『みにし』って考えたんだけど……気に入らない?」





いや、暫定で『魅西』って名前にして見ましたが…
桜ノ宮学園に通うに当たって名前が必要ですよね、死神子。
皆で意見を出して決めませんか?
狼輝に名前のセンスがあるかないかは皆さんの返答次第w

[30] 大浴場第二話
瀬希 望 - 2007年05月25日 (金) 13時26分


―――――熱気と湯気が立ち込める密室空間、大浴場。
そこにカラカラカラカラと軽い音がして、脱衣所と密室であった空間をつなげる。

「いつもならもっといるのに、こんなに少ないのは珍しいね」
と蒼月が隣で呟く。

ルティアの目から見ても、この大浴場はそうそう小さくはない。
それが、見覚えのある二人―――遊意華と晴美だ―――以外この場所にいないのだから、よりいっそう

大きく、広く感じる。

「やぁ、こんばんわ。遊意華君、晴美君」
「御機嫌よう、花園さん、楠葉さん」

「あ、蒼月さんルティアさんこんばんわ」
「珍しいですね天津会長。ここで会うのも、蒼月さんと一緒にいるのも」
「だろう?」と蒼月。

「天津君が珍しく大浴場へ来たと思ったら人を見るなり帰ろうとしたのさ」
芝居がかった言い方をする蒼月。
「・・・・・・それはわかるような気がします。捕まったんですか?天津会長」
「ええ、不覚とはいえ髪を引っ張られ腕を極められては」
首筋を揉みながらルティアが答える。
「でもでも、この四人だけが大浴場にいるって事の方がもっと珍しいです」
遊意華の言い分にそうだねと蒼月が相槌を打つ。


―――この四人の会話が後に「血塗られた大浴場」と語られる事をまだ誰も知らない。

--------------------------------------------------------------------------------------------

―――しゃかしゃかしゃかしゃか
泡だらけの髪を丁寧に洗っていく。
「そういえば、天津君」
「?なんですの?」
―――しゃかしゃかしゃかしゃか


「本当の所、君は紅君のことをどう思っているんだい?」


ピタッとルティアの手が止まる。
ピクッと耳を大きくする晴美。
きらきらした目で「あ、私もしりたーい」
と同意する遊意華。
三者三様の反応。

「―――――なんですの、藪から棒に」
冷静に答えるルティア嬢。
―――しゃかしゃかしゃかしゃか

「いやなに、紅君といると僕のことを恋敵のようにみる誰かがいるからだよ」
蒼月は視線を
「ねぇ、晴美君」
と晴美に流す。
「な、そんなことないですよ。何言ってるんですか」

「『へらへらと、いつもいつも私の紅夜さんにくっついて・・・』だっけ?」

「な、なななななななななななななななな・・・・・」
何でそれをと赤面した顔が物語っている。
「いやぁ、状況提供者と証言者が多いからね。僕の周りには」
俯く晴美。
「・・・はぁ、楠葉さんが困ってるじゃないですか。なんでいつもいつもあなたはそうひとを困らせた

り悩ませたりするような事を」
ぶちぶちぶちとルティアが小言を垂れ流す。
「おや、すまないね。悩ませてしまったかな?天津君」
「!!そ、そんなことありませんわ!」
「まぁ、なんにせよ二人とも。僕の紅君をいやらしい目で見ないでくれよ?」
(コイツいつかシバク)(いつかみてなさい)
黒い思考と殺気を渦巻かせる晴美とルティア。
そこに、

「なにいってるんですか、一番いやらしい目で見てるのは蒼月さんじゃないですか」

と一番真っ当なことをいうお子様遊意華。

「やぁ、バレた?紅君の部屋に忍び込もうとすると何故かいつも紅君に見つかってさ」
「・・・いつもそんなことしてるんですか?蒼月さん」
ザ・風紀委員長ルティアの目が光る。
「やぶへびやぶへび」
とぼけたように蒼月が呟く。

「バリバリばれますよ〜。も〜気配びんびんですもん」
「花園さん?あなたもその現場を見てるなら止めて頂かないと」
「は〜い」

・・・続く


はい、第二話です。如何だったでしょうか?面白くなかったら笑ってやってください。瀬希 望です。
これだけの文章をおこすのに一時間半もかかってしまいます。

どうですかね、皆さんからみて違和感とかないっすかね?
まだまだ書きなれませんが、第三話に続きます。

・・・・・・あ、凪鳥さん。大浴場などの情報、あざっす。

[35]
凪鳥 - 2007年05月26日 (土) 02時37分

ラスティさん:
 ついに来ましたね…「名前問題」が…。
 あまり触れないようにしてきましたが、死神を人間として登場させるに当たって一番のネックは「名前」だったんですよねぇ〜。
 私も特にこれといって決めてませんし。
 魅西、私はなかなか良いと思いますが…そうですねぇ、せっかく専用チャットをつけたことですし、活用してみるのもいいかもですね。

瀬希 望さん:
 第二話お疲れ様です。
 ここからどう繋げるのかが、とても気になります。
 特に違和感とかは無いと思いますよ。
 後ですね、できれば質問は質疑応答スレッドでしてくれれば、他の人の参考にもなるので、今度からはそっちでお願いしま〜す。

[41] 旧掲示板にで出てきたサブキャラたちと設定。
ラスティ・ブランフォード - 2007年05月27日 (日) 22時47分

如月 宇美(きさらぎ うみ)

高校1年生で姉とは別室(寮は学年別である為)。

・所属:風紀委員。説教をするのが会長と副会長なら、逃げる輩を取り押さえて制裁を加えるのが彼女。
・趣味:剣道と言うか、体を動かす事。よく姉や晴美を誘って武術の組み手をする事。
・特技:格闘戦。姉が後衛系なら妹は前衛系。
・学力:国語(3)数学(3)社会(4)科学(3)生物(5)英語(3)保健体育(5)美術(2)音楽(2)技術家庭(3)<5段階評価 総合評価:中の上
・ロングスカートに竹刀持った、一昔前のスケバンスタイル。
・顔は例えるなら黒髪黒目のシャニ(ガンダムSEED)
・一応は理性的に考えてから行動するが、沸点が低いのでやや直情的過ぎるところがある。かなり好戦的で無鉄砲。
・基本的に虚勢を張ってるだけで、本当は恐がり。
・粗暴で孤独を好む割には面倒見が良く、正義感が強い。
・古い言葉ではあるが、実質桜ノ宮学園の裏番長を張ってる人物。
・変態や性格が軽い奴は大嫌い。
・基本的に一人称は『わたし』。嫌いな奴や相手を脅す時は『オレ』。
・わりと親しい人は
如月 光【性格は正反対だけど中が良い姉妹】
柊 青馬【庇護欲を誘うので。正直男として見られてない。】
天及雪奈【ああいう大人の女性っぽいところがいいらしい。】
楠葉晴美【拳で語り合う中……と言うよりは彼女の勉強面での後押し。】
風紀委員【まあ、規律を重んじてるので。】
霜月親子【ほのぼのした雰囲気が落ち着くらしい。】
・苦手な人物は
花園 遊意華【馬鹿っぽくて相手に出来ない】
久遠 つづら【独特のノリが苦手】
九条 命  【シスコンな妹に、何言われて何されるか分からない】
嫌いな人物は
綾河 紅夜 【完璧超人振りが気にいらない・好意を寄せている連中に対する態度が見ていて可哀想になるところ。】
庭瀬 鶯  【姉にべったりしてるから…と言うのもあるが、最近姉に対する迷惑が尋常じゃなくなってる為。】
柊  蒼月 【単純にだらしないのに加えて、紅夜に対する色ボケっぷりが癪に障る(ルティア会長が、何処と無く紅夜に好意を寄せている事にも気づいているので)】

[42] 旧掲示板のサブキャラたちその2
ラスティ・ブランフォード - 2007年05月27日 (日) 23時13分

霜月 狼輝(しもつき ろうき)
・桜ノ宮学園の近くにある黒森神社の神主さん。
・元々の家族構成は『義娘』七海のみ。先代の神主であった祖母は数年前に亡くなった。(両親は成人前に事故で、祖父はそれ以前に。)
・副業で降霊や御祓いをしている。その関係で死体を見ても全く動じない。
・死神子ちゃんとも知り合い。
・割と美形なので良く話に持ち上がるが、コブ付きなのが玉に瑕だと言われる。
・寄って来る女性を相手にせずに、娘を溺愛しているので実は光源氏計画を立てているのではないかと近所ではもっぱらの噂。(本人には、全くその気は無いが)
・性的不能者で実子は無理(はっきり言って、女性に興味が無い理由とするには設定として弱い気がするが。)
・大らかで(正しくは、神経が図太くて呑気)優しく、誰とでも接せる為に世間の評価は高い。
・マルコキアスの名付け親。ちなみに彼が飼ってる犬の名前はハティとスコール(北欧神話において、太陽と月を食らう狼の名前)。
・出来るだけ口調は柔らかくするよう心がけており、普段は一人称を使わないが、一旦切れる(七海関連でのトラブル)と口調が荒くなって『俺』と言う。

主に出入りする人物達への印象は……
死神子 【色々と裏がある模様。犯罪にならない事ならあれこれ手伝っている。】
如月 光【常連さん。ちょっと苦労人かな、かんばって。仕事手伝ってくれてありがとう。】
如月宇美【たまに物を壊すこともあるけど、根はいい人。】
庭瀬 鶯【言動の怪しい人。なんか良く分からない。】
九条 命【七海のささやかな恋の後押しがほほえましい。】
九条 泉【あんまり騒動起こさないでよ……】

霜月 七海(しもつき ななみ) 
・小学2年生。
・狼輝の娘。実の子ではなく、彼女は養子である。遠縁の子らしい。
・無垢で小さい子供であるが故に、お化けや幽霊などの類が普通に見えてしまう。
・その能力によって実の両親がこの世の人物ではない事も理解しており、同年代の子に比べて非常に聡明。
・とは言え、まだまだ子供であるためにペットの2匹の犬と一緒に遊ぶのが大好きなお年頃なのです。
・お父さんを口説くのに自分をダシに使おうとする人が多いので、最近人見知りが激しくなってお父さんの後ろに隠れがち。
・最近、おませさんになってきている。パパと結婚するーと言ったり、死神子と一緒に命の恋の後押しをするなど。
死神子 【お姉ちゃんとして大好き】
如月 光【将来ああいう人になりたいな。】
如月宇美【色々とカッコいいかも。だけど物壊さないで。】
庭瀬 鶯【マルコちゃんと一緒にいる人。】
九条 命【恋のお手伝い、頑張る!(お願いだから止めて……)】
九条 泉【命ちゃんの邪魔をする人。】


黒森神社(くろもりじんじゃ)
・狼の神様を祭る神社。…別に猫はだめという事は無い。
・場所は桜の宮学園の裏手の山の上。
・仏教伝来のときに壮絶な反対運動があり、政府軍に叩かれて壊滅しかけた狼を神とする部族がここで落ち延びたと言う伝説がある。
・昔はこの神社の周辺にはニホンオオカミが結構いたらしい。以前、神社で飼ってる犬を見間違えて騒ぎになった事が。
・狼輝が取り仕切るようになる前は相当寂れた神社であったが、色々とお金をかけて持ち直した。(何処からか来たお金かは他で決めて。)
・マルコキアスが学園にいない、いられない時はここにいる事が多い。
・近くにある桜ノ宮学園と多少繋がりというか、縁があってよく学生が(特にマルコキアス関連で普通科が)やってくる。
・時々、桜ノ宮学園の生徒がバイトしている姿が見受けられる。(如月姉妹に限らず)
・あくまでも自分の勝手な設定ですので、こんな神社は存在しないと言っておきます。神社と言うものを詳しく調べてないのでかなり適当(汗


拾ってくる過程で多少修正して見た。

[46]
凪鳥 - 2007年05月28日 (月) 20時18分

ラスティさん、サブキャラまとめ、ありがとうございます。

サブキャラもいずれはまとめないとな〜と思っていました。
修正もあったようなので、これからしっかりまとめて行きたいと思います。
たぶんテキストベースになるとは思いますが。

[51] こんなものでスイマセン。……パロディネタは、ダメですか?
ジャッキー - 2007年06月09日 (土) 21時46分

-----------------------------------------
- 実際問題こういうことが起こる確率は日本が沈没するより低いといっても過言ではないのだ! -
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全く、どうしてこいつはこうなんだ。どうしてこんな奴が生徒会長なんだ。
人気がある。それは認めよう。口がうまい。それもまあ、認めよう。だがしかし、こうも責任感がない奴が会長になったらどうなるかくらい分かってもらいたかった。おかげで俺の苦労が倍じゃねえか。
そういった俺の心情を知るはずも無く、そいつは椅子に座りテーブルに頭を乗せ、顔はこちらに向けて手はだらんと下げるという、とても人間的に駄目な姿勢を取っていた。
「紅く〜ん、いい加減、帰らないか?」
「ふざけるな。そこの書類を自力で終わらすまで絶対に帰さん」
そう言うと蒼月は、馬鹿を見て『しょうがない奴だ』とでも言うように頭を振った。
「こうゆう言葉は聞かないかい?人生諦めが肝心って。無駄なことをしても仕方がないんだよ」
「俺は推理小説とかよく読んでてな。完全犯罪の一つや二つくらいなら知ってるが?そして今はそれが出来る状況なんだが?」
「ふっ………三流以下の脅しだね。糖分が足りないかな?その場合、僕が襲われた時携帯電話でもかけるなり、君の皮膚を爪にでも残しておけばすぐアシがつく。完全犯罪ってのは準備が必要だ。それくらいの事が分からない紅君ではあるまい。……惚れたかい?」
「口が動くなら手も動かせ」
こいつと会話する意味を俺は即座に諦め、手に持っていた参考書に目を向ける。

少し経ち横目で伺うが、相変わらずだった。
「全く……、密室に二人っきりって言ったらもうちょっとロマンチックな事を思っていたんだが……残念だ」
ふむ。硝化綿とマグネシウムを燃焼させると白煙と共に強い光を出す、か。硝化綿(ニトロセルロース)の化学式は……
「それがなんだい?自分のエゴのために僕を使おうなんて……。君はそんな奴だったのかい?」
トリニトロトルエン、色は淡黄色結晶で分子式は(O2N)3C6H2CH3。いわゆる爆薬。比重1.654、融点80.7℃、爆速約6900m/sec、熱量/質量比3790kJ/kg、爆発熱 925cal/g、生成ガス容積730リットル/kg。爆圧による人体の損傷は……
「聞いてるのか?」
「……ああ、くそ」
俺は立ち上がる。どうやらこいつのサボり癖は、根競べ程度じゃ音を上げないようだ。出来ればこんなことはしたくなかったが……仕方ない。ほっとくと、朝までこうだ。誇張でもなんでもなく、本気と書いてマジでだ。


同時刻、廊下
一年三組……OK。一年四組……問題なし。
必要な仕事とはいえ、なかなか退屈な仕事ですわね、これは。こんなのを毎日やっている用務員の方々は、本当に立派ですわ。
それにしても夜の学校というのは………。ありふれた表現ですけど、昼間の喧騒さが嘘のように静まり返って、不気味ですね。いえ……昼間の喧騒さが記憶にあるから、余計にこの不気味さが増しているのでしょうか。……どっちでもいいですわね。
さて、二階の点検は終わりましたか。残っているのは……この棟の三階と四階だけですわね。はぁ、早く終わらして部屋に戻ってくつろぎたい……。

私が階段を登ると、ある部屋から煌々と明かりが漏れているのに気付いた。
(こんな時間に……?)
携帯電話の画面で時刻を確認。既に九時を過ぎている。これはいただけない。私は一言言ってやろうと、その部屋へと近づいた。
その部屋は生徒会会議室だった。生徒会の用事なんて今日はあったかしら?と思いながら扉に手をかけるが、開かない。鍵がかかっているようだ。
仕方がなく、ノックしようとした手は、ピタリと止まった。
「……は、どうして…………」
「怒らな………。ちょ、待…………」
(この声は、紅夜さんと蒼月さん?こんな時間に……しかも、声から察するに二人っきり!?)
私の脳裏に嫌な想像が浮かんだ。元々蒼馬さんは紅夜さんが好きだったし、色々と状況から考えても……。
(私は……とんでもない現場に遭遇してしまいましたの!?)
いえ、落ち着きましょう。落ち着くのです、ルティア・天津・ライゼルロード。落ち着いて落ち着けば落ち着こう落ち着けない落ち着け。さあ、深呼吸。三秒吸って〜、ゆっくり吐いて〜。はい、私は正常。私は正気。私は冷静。
(と、とにかく……そう決まったわけではありません。そうです、これはラブコメによくある何かの間違い。私がここで取り乱したらそれこそ笑いものではありませんの!)
とにかく、私は今の状況を正確に把握・その上で吟味するため、壁に耳あり障子に目ありを実践する事にした。……風紀委員長たる私がこんな事をしていいのかとかなり良心が咎めたが、その言葉も純粋な好奇心、あるいは………、と、とにかく、その良心も軽く砕け散った。
しかし、窓には鍵がかかっており、更にはこの窓は曇りガラスのため、音でしか中の様子は分からなかった。
「ちょっ、紅君、やめないか……」
「うるさい、お前のせいだ。ほら、早くしろ」
「嫌だね」
突如、中からけたたましい音が鳴り響いた。思わず、壁から身を離す。そしてすぐさま、何があったのかを知るため、またも耳を壁につける。
「な、なにを!?」
「お前が悪いんだ。お前が……」
「ちょっ、待て!そ、そこは……!いやっ、本気!?紅君!!」
「ああ、悪いな」
そしてまた大きな物音。地面にのた打ち回るような音と意味のない悲鳴、言葉。
「ひっ、ひぐ!?許し……!」
「駄目だ。お前がちゃんと動くまで続ける」
「わ、分かった!分かったから……やめてくれ!」
のた打ち回るような音がやんだ。そして聞こえてくるのは、荒い息遣い。
「分かったか?本当に分かったか?」
「分かった。ちゃんとやるから……だから、もう……」
「ならいい」
そこまで聞いた時点で私は耳を離した。
(はわわわわわわわわわわわ!!!??どうしましょうどうしましょうどうしましょう!!!!!)
他人がこの場にいたら私は顔から六千度の白光の炎を上げて死んでいただろう。そのくらいおかしな動きをしていた。
(えーとまずは落ち着くのですすーはーすーはー^^;違うあれよ羊が一匹二匹違ううーんラジオ体操第二ですわこうゆう時は!)
私は何を思ったか、廊下でラジオ体操を始めた。だがそれもぎこちない。体を反らしながら深呼吸したり、首を回しながらジャンプしたりというものだった。
(違う違うそうですわこうゆう時は円周率3,141592どうでもいい!ああもうそういえば明日の教科は何でしたっけああ宿題がまだ残っておりましたわ急いでやらなくちゃそしてどうして宇宙は広がっているのでしょうなぜ人は戦争を起こすのでしょうどうし(略

二分後
イエスキリストの馬小屋での誕生からなんとか思考を回復した私は(どうやって回復したのかはあまり聞かないでくれると嬉しいですわ)とりあえず、さっきの言葉を吟味する事にした。
………………
…………
……
結論、不純異性行為。
(……どうしましょう?)
とにかく、万が一に不純異性行為があった場合、それを見過ごすのは風紀委員として出来ない。ならば、まず先生に連絡するのが筋だ。
だが、私は何故か携帯電話を取り出していた。そして、アドレス帳から誰に電話するかを探していた。
先生に言うのはなぜか気が引けた。告げ口という行為が嫌だったのか。まだ確認が取れていないからだろうか。それとも、知っている人だからだろうか。別に蒼月さんがいじめられようが○○されようが知ったこっちゃないはずなのですが……。とにかく、理由は分からなかったが、先生に言う気はなかった。
九条兄弟は……駄目ですわね。
天野さん……余計に話をこじらせそうですわ。
如月さんも、こういうのにはちょっと向いてなさそうですわね。
そして、私の指はある人物の名前で止まっていた。
庭瀬 鶯。
庭瀬さんなら、何かいい知恵を出してくれるかもしれない。
気がつけば、コールはもう始まっていた。
数秒後、割とすぐに出てくれた。
「Hello〜?」
のっけから、なんとなく気が削がれる言葉だった。
「どうして英語なんですか?」
「え〜?だってルティアさん、ハーフじゃん」
「私の父はロシア人で、英語とは何の関係もないんですが」
全く、ハーフといったら英語と決め付けないでもらいたい。ハーフの半数は英語じゃない人もいるんですから。
「ん〜、細かい事は気にしない気にしない♪それで?なんか用件があったんじゃないの?」
「ええ、私今、生徒会会議室の前にいるんですが――」

「――私が思うに、その……何か、ヤバいんじゃないかと……」
大体の事を伝え終えると、庭瀬さんはう〜んと唸り始めた。
「そうだねえ、紅夜君が会長さんを襲うとはちょ〜っと考えづらいなあ。逆ならともかく」
「ですよねぇ……」
前々から好意を大っぴらに見せていた蒼月さんが紅夜さんを襲うという方がまだ自然に思える。素直に襲われるかどうかは別として。
「あの……今、来れますか?」
「ん〜?今ぁ〜?丁度テレビで『新春!血みどろのカルタ大会!最後に栄冠を勝ち取りパンダとツーショットを手に入れるのは誰だ!?』を見ているところだけど………ま、可愛い後輩の頼みだ!先輩として、断るわけにはいかないっぺ!」
「あ、ありがとうございます。……ところでその番組、一体なんですか?今もう六月ですよね?」
「気にしない気にしない♪じゃ、縮地で行くから待っててね〜!」
「いや、そのネタは危ないかと」
「え?剃でもいいけど。または瞬歩」
「そっちの方が危ないです!」

そして庭瀬さんは、僅か三十秒ほどで来た。この世には、何か人知を超えた力があると思った瞬間だった。
-- NEXT --------------------------

終わらせるつもりだったのに。一回で終わらせるつもりだったのに。
あ、初めまして。高一のジャッキーです。
現在趣味でパソコンで小説を書いておりまして、常世の星空からここを発見した次第です。
まだまだド素人の初心者の問題外の潰れ肉まんのミキサージュース(後半は気にしないでくれると助かります)なので、ダメだし大歓迎です。
それでは、失礼しました。

[53]
凪鳥 - 2007年06月11日 (月) 17時34分

ジャッキーさん、投稿有難うございます。

実は今まで有るようで無いような展開、新鮮なものを感じます。
こういう話は登場キャラ的に書き図らいかもですが、続きが大いに気になります。
パロネタは、程度が抑えられていれば全然OKだと思います。

[56] ごめんなさい
ジャッキー - 2007年06月12日 (火) 14時38分

-----------------------------------------

-----------------------------------------
「特に何も聞こえないねぇ……」
庭瀬さんが合流し、とりあえず実際に聞かなきゃなんとも言えないということで(目を光り輝かせていたのは、気のせいという事で)、さっきの私と同じ事をしているが、音は嘘のようにすっかり止んでしまっている。
「で、でも、さっきは本当に……!」
「あ〜、分かってるって。ルティアさんは羊飼いの子供じゃないってことぐらい」
手をひらひらさせながら陽気にそう言う。その言葉に、私は安堵する。
「ありがとうございます。でも、どうしましょう?」
「ん〜、明日紅夜君か会長さんに聞くって言うのも手だけど、それじゃあ納得しないよねえ?」
なぜか庭瀬さんは私に向かって、さも当然の雰囲気で聞いてきた。その様子になぜかいらだった私は、つい険のある声で返してしまった。
「…なんでですか?どうして私に聞くんですか、そんなこと」
「あれ?違うの?てっきりそうかと思ったけど……」
芝居がかったカマトト振りに、膨れ上がる言いようのない黒い感情を感じた。その感情の流れに任せ、私の口は言葉を紡ぐ。
「だから、何がでむうぐっ!?」
突然、庭瀬さんが私の口を手で塞いだ。口に人差し指を立てている姿から、何が原因かと庭瀬さんの言いたい事を理解する。
「……すみません」
「いや、私こそ悪かったよ。ちょっとふざけが過ぎたね」
いつもの飄々とした口から、少し真剣な気持ちを含んだ言葉が出た。その事に少々驚く。
それっきり言葉が出しづらい雰囲気になり、沈黙が世界を支配した。私はその間、さっきの感情の事について考えていた。
どうして私はあんなに声を荒げたのだろう?庭瀬さんの言いたかった事は大方予想がつく。多分、私が紅夜さんを好きだとかそんなとこだろう。
じゃあ、私が怒ったのは、図星だったからって事?そんな馬鹿な。あんな全ての人間を見下したような人に、私が恋心を抱くわけがない。現に、こちらが挨拶しても「ああ」の一言くらいしか返さない彼に、いつもいらついていたじゃないか。
そこでふと、別の考えが浮かんだ。クラスも性別も委員会も違う彼に、どうして私はいつも挨拶しているんだろうと。
さっきの考えがその問いに入り込んで、形作る。彼が好きだから挨拶して、その返事がそっけないから、いらいらして?先生に伝えなかったのは、問題が発覚して、ただでさえ男子としてこの学園にいづらい彼がいなくなってしまうかも知れないから、だから伝えなかった?さっき声を荒げたのは、図星だったから?
疑念が更なる疑念を呼び、作り、廻る。否定と肯定とが混ざり合い、灰色の感情が心を埋め尽くす。
頭を振り、なんとかこの考えを頭から叩き出す。逃げというのは十分すぎるほど分かっていたが、答えを出すのは今じゃなくていい。そして、今はそんな事を考えている場合じゃない。………本音は、これ以上考えるともう戻れない気がしたから、かもしれない。
「やっぱり、百聞は一見にしかず、かな」
「え?」
間抜けな声を出した事を少し恥じた。沈黙の世界を破った言葉は、私には意味を分かりかねる言葉だった。いや正確には、意味は分かるがそれが今現在の状況にどう当てはまるのかが分からなかった。
「これこれ」
スカートのポケットから取り出したそれは、暗い廊下では『細長い何か』くらいしか分からなかった。
「え〜と、なんですか?それ」
「ピッキング」
………
「え〜と、色々つっこみたいんですが、いいですか?」
なんとなく脱力感が襲いつつも、なんとかそれを聞くことに成功した。
「うんうん、どうぞどうぞ♪」
庭瀬さんは、聞いてくれるのがとてもとても嬉しそうな顔で私の言葉を待つ。
私は息を吸い、そして言う。
「なんでそんな物を持っているんですか?それ持ってるって事は出来るんですよね?なんで出来るんですか?誰に習ったんですか?というか、風紀委員長としてそれは没収したいんですがいいですか?」
「気にしない気にしない♪」
やっぱり、と思った。予想はしていましたが……。備えていようと、脱力するのは避けようのない事らしかった。
「もういいです。なんかもう、この世界が理不尽で不条理な世界に思えてきました」
「世界が個人の思い通りにいったら、それは世界とは言わないよ。個人の思い通りにならない、なにもかも予定通りにいかないから人生って楽しいもんだと思わない?」
「正論を言っているのは分かりますが、ピッキングやりながら言われてもどう反応したらいいんですか?」

ほどなく、鍵は外れた。
ピッキング用の道具をしまい、にやっと笑った顔が非常に恐ろしく見えた。私は天野さんに残念でしたと、心の中で呟いた。

目の前の人間としてダメな存在は、何かぶつぶつ言いながらもペンを走らせる。
時計を見たら、既に九時半だった。思いの外時間を食っていた事に驚くと同時に、コイツのせいだという恨みが沸いてきた。帰ったらお疲れ様と言って、激辛のBhut Jolokia入りのクッキーでも差し入れてやるか。Bhut Jolokiaってのはタバスコの約200倍の辛さで、殺傷能力を持つとか持たないとか。あと、催涙スプレーにも使われている成分も入っている。これは本当。
と、楽しいお仕置きを考えていると不意に、扉の外で音がした。気になり、そちらを向く。
向いて間もなく、扉が勢いよく開け放たれた。今まで時計の時を刻む音がするくらい静かだった部屋が、いきなり騒がしくなった。
「御用だ御用だ御用だぁ!!」
「………」
右手に携帯を持って印籠のように掲げ、御用だを連発する見知った人物。その後ろに『私は仲間じゃありません』とでも言うように少し離れて立っている、これまた見知った人物。
とりあえず状況確認。
なんでかは知らないが、いきなり庭瀬先輩と天津が飛び込んできた。そして庭瀬先輩はわめき散らして、天津はその後ろで呆然としている。呆れているともいえるか。
とりあえず理由と文句を言ってやろうと口を開く前に、蒼月が顔を輝かせ、天の救いとばかりに声をかけた。
「やあ、二人とも。どうしたんだい?」
突然生き生きした声になった事にハラワタが煮えくり返るほどムカつきながら、とりあえず優先順位的に上位の問題を片付ける事に専念する。
「帰れ」
「それだけか!」
庭瀬先輩がどこからともなく出したハリセンをかわす。そしてそれは俺のそばに立っていた蒼月へとクリーンヒットした。
「うはぁっ!」
「か、会長さん!?くっ、このぉ……!よくも、よくも会長さんをこんなにしたわね!」
「あの〜、まず間違いなく庭瀬さんの責任だと思いますけど」
天津の百パーセント正論を華麗に聞き流し、先輩はハリセンを振り続ける。仕方がないので、俺はそれをよけつつ会話をする。
「んで?っ、一体これは、何の騒ぎです!」
「えっとね〜、そこのルティアさんから紅夜君と会長さんが不純異性行為をしているって連絡があってね。今頃他の先生たちや生徒たちも一斉に駆けつけてくる頃だよ。チェストォッ!!」
大上段の振り下ろしを半身にしてかわす。風が髪を撫でる。
「……どこまでホントだ」
天津はどこにいていいのかわからず、さっきいた場所から一歩も動いていなかった。
「…前半部分」
ということは、俺と蒼月が不純異性行為をしているという部分か。
「……とてつもない誤解です。っ、何で俺とコイツがっ!」
ハリセンが髪を掠める。当たったところで痛くはないが、別のところが痛いのでよけるのも結構必死だ。
「ルティアさんが聞いたらしいよっ!『蒼月、お前が悪いんだ。お前が俺を誘惑するから、だから俺は……!』って」
「……どこまでホントだ」
「…………一割くらい」
答えるまで三秒ほど、じっくり悩んで答えた。なぜか、目つきが険しい。
椅子を使って距離をとりながら、さっきの文章と俺の記憶の中の会話を検索・照合する。思い当たるのは『お前が悪い』の部分だけだった。
「……大体事情は分かりました」
ハリセンを手で受け止めて、少々荒い息を整える。庭瀬先輩も同じく、肩で息をしているので手を胸に当てている。
「じゃ、白状してもらうよ。一体どういうことなんだい?」
やがて呼吸を整え終え、先輩が聞いてきた。
「……俺はコイツの怠け癖を治そうとしていただけですよ。コイツの前に書類を山のように置いて、これを終わらすまで返さないって。で、コイツが予想をはるかに超える怠け者だったんで、この時間まで延びたわけです」
「うんうん、なるほど。そこまでは納得だね。でも、ルティアちゃんの聞いた言葉は何かな〜?」
庭瀬先輩は意地の悪い笑みを顔に貼り付けている。背が俺よりも低いから、下から覗き込むように顔を近づけてきた。
この後を続ける事に一瞬俺は迷った。だが、どう考えてもこの状況を言わずにやり過ごす方法が見つからない。仕方なく、俺は口を開く。
「んで、痺れを切らした俺は、コイツの背骨を触ったんです」
「「……背骨?」」
見事にはもって聞き返してきた。俺は、今蒼月が意識を持っていなくてよかったと思う。
「ええ。コイツは昔から背骨を挟むように触られるのにひどく弱いんです。なんでも、触られると体中の力が抜けるとか……」
それを聞いた二人は、ニヤリと笑った。見る者の恐怖心を激しくあおる、凄絶な笑顔。
「へ〜え、それはいい事を聞いたなあ。そうかそうかぁ……」
「ふふふふ……蒼月さんにそんな弱点があったなんて、ワタクシ、全く知りませんでした」
これでも自分は神経は図太いほうだと思う。ホラー映画を見ても気持ち悪いと思うだけでそれほど怖いとは思わなかったし、お化け屋敷なんか鼻で笑っていた。だが、なんだろう。この二人の笑顔から感じる言い知れない不安は。
なんとなくこの空気が嫌なので、俺は無理やり話題を変える。
「…で?天津はどうしてこんな時間にこんな所にいたんだ?」
突然声をかけられて驚いたのか、ビクッと体を震わせてこちらを向いた。
「あ、わ、私は、今日用務員さんがお、お休みだという事で、かわりに風紀委員長である私が、戸締りをひ、引き受けたのです」
必要以上にどもる天津を不思議に思いながら、俺は生返事を返す。返事は、冷たい視線だった。
「……とりあえず、俺はもう帰ります。先輩と天津も、早く出て行ってください」
「ほいほ〜い、じゃあね、紅夜君」
「それじゃあ、失礼します」
二人が去って、また部屋には静寂が戻る。
やれやれ、この書類も、やっぱり俺が片付ける事になりそうだ。

「じゃ、庭瀬さん。こんな遅い時間にどうもありがとうございました」
「いやいや、私も結構楽しかったよ?」
三年生の寮の前で別れの挨拶をする。そして、私が二年の寮へ戻ろうとすると
「あ、そだ」
突然、庭瀬さんから呼び止められた。
「ねえ、さっきまであんなに不機嫌だったのに、どうして今はそんなに笑顔なの?」
言われて気付いた。ここに鏡はないけれど、私が笑っていることに。
私は少し考えて、言った。
「さあ、どうしてでしょうね?」
-- END or NEXT --------------------------

[57]
ジャッキー - 2007年06月12日 (火) 14時43分

↑で書けなかった事です。


ごめんなさい、勝手に設定作ってしまってごめんなさい。しかも2つも。
あと紅夜をギャグキャラっぽくしてしまい、ファンの皆様のイメージを壊してしまったらごめんなさい。

やっぱり修行と準備不足だなあ、というのを痛感した小説でした。

[58]
シュレ猫 - 2007年06月12日 (火) 20時56分

>>ジャッキーさん
執筆お疲れ様です

私的には鶯にピッキングスキルは有りだと思います
というか普通にもってそう

[59] 大浴場第三話
瀬希 望 - 2007年06月13日 (水) 11時17分


かぽーん

「ふー・・・。いいお湯ですわ」
「んー。そうだね」

白い湯気が立ち込める中、ルティアと蒼月は湯船に浸かっていた。

そう、


    ほんの、数分前までは・・・・・・


--------------------------------------------------------------------------------------------
湯船に浸かりながらもがみがみがみとルティアの説教は続いていた。
「まったく、綾河さんの部屋に忍び込もうと二度としないでくださいね」
「惚れたかい?」
「惚れませんわ!!・・・本当にあなたといると疲れますわ蒼月さん」
「いやーそこまで褒められると」
「褒めてませんっ!」
まるで夫婦漫才。その光景を

「きゃはははははははは!!!」
と遊意華は大爆笑している。
「花園さんも、これからはきちんと蒼月さんを止めてくださいね?」
「ひーっ!ひーっ!」
「いつまでも笑ってないで返事をお願いします」
「わ・・・わかり・・・ぷっ!あ、ははははははっっっっっ」
「ほんっっとにもう・・・」
疲れ果てた声でルティアが諦めの言葉を呟く。

「あ、そういえば」
蒼月が何かを思い出したように声を上げる
「なんですの?まだ何か厄介ごとを・・・」
「違う違う。忍び込むで思い出したんだよ、紅君とお風呂に入ってた頃のことを」
「な・・・!」
「にーーー!!!!!」
その一言で今まで赤面していた晴美が復活。
「な、何てうらやm・・・いや、羨ましい事してんですか蒼月さん!!」
そのまま暴走。そして・・・・・・
「言いよどんだ意味がありませんわよ、楠葉さん・・・でも」
「ん?何だい??」


「その話、詳しくお願いいたしますわ☆蒼月さん」


ルティアも暴走した。

「どうでもいいけど、☆はないんじゃないかな天津さん・・・」
遊意華がツッ込んだが誰も聞いていなかった。

--------------------------------------------------------------------------------------------

「あれはまだ僕が子供の頃、紅君がショタッ子だった頃のことだ」
妙なナレーションで話し始める蒼月。
「ショタッ子て・・・」
遊意華はツッ込んではみたが
「「はいそこ、口を挟まない!」でください!」
暴走機関車ズの前に敢え無く跳ねられる。
そして、昔話は続く・・・

「家も隣だったし、よく紅君の家に兄さんと遊びに行ったよ」
「ふんふん」
「それでそれで」
ノリが完璧に女子高生になってる三人。
(いや、女子高生だからいいんだけどね・・・)
心中でツッ込む遊意華。
(しかし、意外や意外。ハルはともかくルティアさんまで暴走するとは・・・。)
そんなことを考えている遊意華をお構いもせずに加速する暴走機関車ズ。

「たまに泥だらけになって帰ってくると紅君の家のお風呂に入るのがお決まりだったのさ」
「「・・・・・・・・・・・・」」
「で、紅君は必ず入ろうとする僕に「蒼月、はいってくるな」って言って抑えてたねぇ」
「ふーん、で?どこを」
「僕の頭をだよ。・・・天津君?どうかした?」
「い、いえ、なんでもありませんわ」
「・・・ま、いいや。で、三人で裸になってお風呂場に行くと決まって必ず・・・」
ぷシューーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「・・・・・・」
ごくっ・・・



「紅君のお姉さん。つまり氷雨さんがお風呂場の戸の隙間から紅君のことをはぁ・・・はぁ・・・って

見ていたんだよ」




「「ぶっ・・・!」」

いきなり笑い話になって吹き出す遊意華とルティア。

「危ッ!お姉さん危ッ!!」
おなかを抱えて笑う遊意華。
「そ、そんな・・・人な・・・のですか?」
笑いをこらえながら聞き返すルティア。

「そう、そんな人なんだよ・・・今も」
肯定する蒼月。
「紅君も毎回毎回「姉さん。くんな!!」って怒鳴ってたな」
終始賑やかに笑い声が
「・・・おや?」
突然、怪訝な蒼月の声を合図に静まる。
「?どうかしたの?蒼月さん」
遊意華が聞き返す。
「いや、何でもないよ。ただ、晴美ちゃんの姿が見えないからね」
「あ、ホントだ」

「それに・・・」
「それに、なんですの?」
ルティアも聞き返す。


「なんか、湯船が薔薇の様に紅い色だからさ」

「「えっ、あ!!!!!」」

そこには紅く染まった白湯と

盛大に鼻から紅いものを滴らせ・・・いや、吹き出させ浮かぶ晴美がいた。



血塗られた大浴場・・・完。
--------------------------------------------------------------------------------------------

「とりあえず、応急処置はしましたわ。あと、救急車も呼んでおきました」
「流石だね。天津君」
「あなたに流石などといわれたくありませんわ!」

・・・・・・続かない


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
えーと、いろいろすみません。瀬希 望です。

皆様のイメージを壊していないか。それだけが、私の望みです。
わかりやすい落ちだったと思います。
はい、こんな落ちですいませんでした。

[60]
凪鳥 - 2007年06月13日 (水) 20時19分

ジャッキーさん、瀬希 望さん執筆お疲れ様です。

ジャッキーさん
ピッキングは私もありだと思います。
いいですね、何気に鶯がここまで活躍するのは久しぶりな気がしますよ。

瀬希 望さん
というかむしろ風呂場で鼻血はいろんな意味でやばいです。
途中のぷシューは何かと思ってたら、そういう事だったんですねぇ。

[62]
ジャッキー - 2007年06月13日 (水) 21時08分

そ、それで………私的に一番気になっている蒼月の方はいかがでしょうか……?
まずかったら消してなかったことにしてしまってもかまいませんので。

[67]
凪鳥 - 2007年06月15日 (金) 08時45分

ジャッキーさん、蒼月全然ありですよ。
むしろこういう芸当は蒼月だからこそできる芸当。

[68] 駿河紅夜の受難
ジャッキー - 2007年06月15日 (金) 21時47分

-----------------------------------------
辺りは暗く、光源は周囲の街灯と家々から漏れる光だけ。
どこからか流れるテレビと音と、こんな都会の真ん中でもいる虫の声。
そんな中、桜ノ宮学園の表札がかかった校門の前に、人影がひとつあった。
人影は二メートルほどもある高い校門をいともたやすく登り、降りる。
幸い辺りに人影は無く、侵入には誰も気付かなかった。
そして人影は黙々と、ある場所を目指して歩いていった。

今日も一日が終わった。そして、明日からまた一日が始まる。
はぁ。
本当に、この学園に来てから俺は一日十回は必ずため息をついてるな。いや、それじゃ少なすぎる。三十はいくかもしれない。
「お疲れだね、紅」
蒼馬が気を利かせてコーヒーを淹れてくれた。その心遣いは、素直に嬉しい。
「ああ、わりぃな」
「いいや、そうでもないよ」
そう言って蒼馬は笑う。
とにかく、明日以降のことを考えても仕方ない。今から気を重くしてもどうしようもないだろう。疲れているなら、さっさと寝るに限る。そう考えた俺は、寝床に入る事にする。その時
コン
物音が聞こえた。それには気付いたが、無視して布団にもぐりこむ。
「あ、もう寝るの?」
コン
「ああ、どうせ明日も疲れるだろうからな」
「そうだね、オヤスミ。僕はもうちょっと起きてるけど」
そう言って蒼馬はノートパソコンに向かう。
コン
コンコン
コンコンコンコンコン
「……ねぇ、紅?」
「……ああ」
俺は布団から出る。そして、窓に向かう。
そこで気付いた。人影がいる事と、その正体に。
「………」
「………」
俺はカーテンをサッと閉め、また布団に戻る。
「紅……?」
蒼馬が心配そうに声をかけてくるが、今の俺は先刻の画像を脳内から消去するので精一杯だった。
が、
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
「ち、ちょっと……!」
「……ああっ、くそ!」
自分でも珍しいと思う、声を荒げるのは。
ドカドカと足音を立て窓へ向かい、カーテンを開け、窓も開ける。
「なんでここにいるっ!」
そこにいたのは駿河氷雨。
俺の姉だ。

「へぇ〜、じゃあ貴女が伝説の……」
「うん、そう」
蒼馬の淹れたコーヒーを飲みながら、俺たちはテーブルを囲んでいた。話しているのは二人だけで、俺は憮然とした表情でそっぽを向いていたが。
ちなみに姉さんは、この学校の制服を着ていた。十年前でもデザインは変わってないみたいだ。どうして着てきたのかと聞けば、『誰かに見つかっても怪しまれない為』とか抜かしやがった。本人は『まだまだ、現役』と、ワケの分からない事を言ってピースサインをしていた。見れば一目で大人だと分かると思うんだが。
「紅の姉さんだとは聞いていましたけれど……こんなに綺麗な人だとは思わなかったなあ」
「………」
わずかばかり頬を染める、我が愚姉。
「用件は何だ」
いらついた声を隠そうともせず、聞く。
「……ご飯」
「は?」
「紅夜のご飯、食べに来た」
「……それだけでか?」
「できれば、家に帰って洗濯とか掃除とかして欲しい」
「週末にちゃんと帰ってやってるだろうが」
「先週、来なかった」
頭が痛くなってきた。
姉さんの事だから本気でそう思っているので、余計に始末が悪い。いや、冗談でここまでやる奴もいないだろうが。
俺は毎週家に帰って溜まった洗濯物を洗ったり、掃除をしたりしている。姉さんへの栄養補給もそうだ。先週は確か、生徒会の仕事で忙しかったんだ。急に入ってきた仕事で、休みを潰すしかなかったんだっけかと思い出した。しかし、一週間くらい自力で生き延びてもらいたい。
「ねえ、紅…」
蒼馬が、姉さんに聞こえないように小さい声で聞いてきた。
「紅の姉さんって、どんな人?」
「一言で言えば、ダメ人間。自分じゃ家事炊事の一つも満足に出来ないくらいのな」
「そうは見えないけどなあ……」
その認識は大間違いだ。むしろ俺には、そうとしか見えない。
「ご飯」
姉さんがしつこく、またも催促をしてきた。
「残念だな、ここには台所が無い。ついでに言えば、食材も無い。さあ、帰れ」
「大丈夫。持ってきた」
「…は?」
「食材、持ってきた」
そう言って姉さんは窓に近づき、手招きする。俺が行くと、開いている窓から外に手を出して、地面のある場所を指し示した。
そこにははちきれそうなほどパンパンに膨れたビニール袋が計三個、あった。
「………」
「ね?」
絶句している俺の横で、姉さんが誇らしげに胸を反らす。大きな胸が、小さい制服のせいで更に自己主張している。
「台所は」
無駄だろうなと思いつつ、聞く。今の姉さんは、目的の為ならなんでもするという感じだ。
「理事長に話したら、寮の学食の台所使っていいって」
突然、理事長への殺意が沸いてきた。共学化にしたり、それを突然やめたり。あの理事長は俺に何か個人的な恨みでもあるのか?いかん、この頃の俺は殺意を抱きすぎる。このままだといつか本当に殺っちまいそうだ。クールになれ、駿河紅夜。
姉さんを見る。目を輝かせてこっちを見ている。
ため息をつく。今度、一日につくため息の数でも調べてみようか。

「召し上がれ」
嫌味たっぷりに言ったつもりだったが、姉さんはそんな事意に介さず、目の前のハンバーグステーキに釘付けだ。
そしてまあ、よく食う。そういえば休みに帰ったときも、いつも大食いだった。……もしかして、一週間それで生きているのか?いやまさか。……と、言い切れないところが怖い。

「じゃあ、帰る」
「ああ」
「……紅夜、冷たい」
「知るか」
帰りは玄関かららしい。余った食材は家に持ち帰るそうだ。……ほとんど腐らせそうな気がするが。
「あ、そうだ」
「?」
俺は姉さんを呼びとめ、ある物を手渡す。
「これは……?」
「さっき作ったハンバーグの残りだ。帰ったらおやつにでも食え」
「………紅夜、ありがと。大好き」
「やめろ」
抱きついてこようとする姉を両手で押さえる。辺りに人がいなくて本当によかった。
「いいから、さっさと帰りやがれ」
「うん、じゃあね」
そうして、俺の姉は帰っていった。

「ふう……」
部屋に戻る。蒼馬がもう寝ているようだ。部屋は暗く、寝息が聞こえる。
戻った途端、ひどい眠気が俺を襲った。そのままベッドに倒れこむ。柔らかな感触が更に眠気を増幅させる。
明日からも大変な日常が始まるんだなあ、と思いながら、俺は睡眠欲に身を任せた。
-- END --------------------------


このスレッドの18をヒントに、今回は駿河姉弟にスポットを当ててみました。
いやあ、やっぱ姉は一人じゃ生活できないだろうなあと思い、弟が通い妻ならぬ通い夫をしているんじゃないかなと思ったので、こんな感じに。

本当はもうちょっとあったんです。一つ屋根の下で暮らしている(それだと寮生全員なんですが)蒼馬に嫉妬心を燃やした氷雨が一悶着起こすとか、紅夜が姉に送ったハンバーグは実は激辛で、姉はそれを涙を流しながらも食べるとか。
でもそれだとちょっと長くなるので、はしょってみました。
とりあえず、起伏のない話ですがたまにはこんなのもいいんじゃないかと思いまして。
お楽しみいただけたら、幸いです。

[72] 視点:柊 蒼馬 女子寮での一コマ。
麻樹 - 2007年06月17日 (日) 23時00分

蒼馬「ふう」

なんとか形になったビデオデッキから顔を上げ、僕は一息ついた。

女子生徒「終わりました?」
蒼馬「ん?うん、多分ね」

心配げな女子の声に笑顔で返すと、女子はどこかほっとした表情になった。

蒼馬「流石に専門家じゃないから詳しくは分からないけど、たぶんこれで動くようになると思うよ」
女子生徒「そうですか、ありがとうございます」

そういってぺこりと女子は頭を下げた。





――ビデオデッキが壊れたので直して欲しい。

そう頼まれたのは、生徒会での仕事を終えて寮に戻って、食堂で一息ついていたときだった。
ただし、仕事が終わったのは僕だけだ。
蒼はいつもどおりさぼっているし、紅もそれに付き合わされて残業だし。命さんは……うん、頑張っているのは認めてるんだけどね。
見かねて、手伝おうか?と言っても、

紅夜「お前はきちんと仕事をしたのだから、余計なことはしなくていい」

と、きっぱりと断られてしまう。
そんなわけで、一人で帰ってくる羽目になる僕は、寮で軽い修理屋となっている。
一人で部屋にこもっていてもつまらないだけだし、元々機械いじりは好きだしね。

女子生徒「良かった、壊れちゃったままだったら今日のドラマが撮れなくて。どうしようかと悩んでたんですよ」
蒼馬「ドラマというと、『青の草原』?」
女子生徒「はい。私、あのドラマが好きなんです」
蒼馬「そうなんだ。お役に立てて良かったよ」

そう言って、何気なくビデオデッキを女子に差し出すと、女子は一瞬戸惑った様子を見せた。

蒼馬「あ……」

それをみて、自分の行動が失態であることを思い出した。

蒼馬「ごめんごめん。ビデオデッキ、ここにおいておくね」

机の端に――もちろん女子が取りやすい場所に――なるべく僕から遠ざけるようにビデオデッキを置く。

女子生徒「すみません、ありがとうございました」

ぺこりと頭を下げて、女子は”手を伸ばして”ビデオデッキを持っていった。
タッタッと小気味よく走っていく女子を見送って、僕はため息をついた。

蒼馬「まずったなー……」

僕や紅が入学してからすでに1年が経過しているけど、いまだに僕や紅に馴染めない女子は多い。
いや、むしろ馴染んでいる女子のほうが圧倒的に少ない。
そういった女子は基本的に僕や紅に接するときにプライベートゾーンを広くとる――つまり、あまり近づかないように接してくる。
しかし、今僕はあの女子のプライベートゾーンに入ってしまったようだ。

「やっほー、蒼馬君」

後ろから掛けられた声に振り向いてみると、鶯さんと光さんがいた。

蒼馬「あ、こんばんは。鶯さん、光さん」
鶯「うん、こんばんは」
光「こんばんは、蒼馬さん」
蒼馬「今日は早いですね」
鶯「あっははは〜、君のとこの会長さんじゃないんだから」

さらっと笑顔で、鶯さん。光さんが慌てたように、

光「う、鶯さん!……蒼馬さん、ごめんなさい」
蒼馬「いえ、蒼が仕事をしないのはいつものことですから」

あはは、と笑っておく。

鶯「で、どうしたのかな?」
蒼馬「え?」
鶯「蒼馬君、何か悩んで……ううん、なにかすっきりしないことがあるんじゃないの?」

ドキッ、とした。見事に的を射ていたからだ。

蒼馬「そんなに、変な顔をしてますか?」
鶯「ん〜……なんとなく、かな」

――顔にはあまりでていないけど、なんとなくそんな雰囲気がした……ということか。

蒼馬「なんとなく、ですか」
鶯「そ、なんとなく。で、どうなの?」

つくづく侮れない人だな、と思わず苦笑してしまう。

蒼馬「いえ、皆仲がいいな、と思っただけですよ」

食堂を見回して、多くの女子が楽しそうに会話しているのを見て、本当にそう思う。

光「そうですね。基本的に学園の子は」
鶯「『信頼』って言葉の意味、知ってる?」

光さんの言葉を遮って、鶯さんは僕に尋ねた。

蒼馬「信頼、ですか?」
鶯「信頼っていうのはね、片方だけが信用していれば成り立つものじゃないの。お互いがお互いを信じあって、初めて信頼関係が生まれるのよ」
蒼馬「…………」
鶯「蒼馬君。君はどうなの?」

思わずツボにはまってしまい、下を向いて笑いをこらえるのに必死になってしまった僕を、光さんが訳が分からないままになだめてくれた。

――女子は皆仲がいいのに、そんな中に僕なんかがいていいのだろうか?

そう思っているのは間違いだと、鶯さんは言っている。
女子達と溶け込めないのは、他でもない、僕自身が女子達と信頼関係を築こうとしていないからだと。

蒼馬「そうですね。ちょっと……頑張ってみます」
鶯「そう、頑張ってね。……行こう、光」

結局、最後まで訳が分からないままに、去っていく鶯さんを追いかけて光さんも去っていった。

蒼馬「ふう……」

ため息。でも、これは幸せが飛んでいってしまうようなため息じゃない。
むしろ、なにかすっきりしたような、そんな気分だ。

蒼馬「自分から動かなきゃ、何も変わらない……かな」

多分、鶯さんが言っていたのはそういうことだろう。
なら、動こう。
どうすればいいかはよく分からないけど。
でも、たぶん。

――どんなに小さなことでも、その積み重ねはいつか、大きな変化になって現れると思う。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

えーと……鶯や光、蒼馬はこういう動かし方でいいのでしょうか(汗
イメージが壊れていないかと非常にドキドキものだったりします。

蒼馬は女子に人気があるようなのでイメージとしてはおかしいかと思いますが、「学園の中には男子に慣れない女子もいるのでは?」と思って書いていたらこのようなものになりました。
……やはり駄目ですかね(沈

何か問題等あればご一報ください。

[73]
凪鳥 - 2007年06月18日 (月) 00時31分

ジャッキーさん、麻樹さん、投稿お疲れ様です。

ジャッキーさん
ついに乗り込んで来ましたね、姉が。
というよりも、そんなホイホイ来れる距離にあるのかな学園は…。
そこら辺、設定の穴が見つかりましたね。
そうそう、蒼馬は一応氷雨ねーさんとは昔から交流がありますよ。

麻樹さん
蒼馬の立ち位置はそれでばっちりだと思います。
逆に紅夜は主人公なのに女子との仲だとかはさっぱり気にせず、どしどし結果で引っ張っていくタイプなので、蒼馬はうまい具合にそこら辺をカバーしていければいいな〜というキャラのなので。

[74] 本日のDJ:つづら 本日のアシスタント:遊意華
シュレ猫 - 2007年06月18日 (月) 20時15分

-----------------------------------------
- 桜ノ宮inラジオ〜さくら放送局〜 -
-----------------------------------------
つづら「皆々様おはらっき〜なの」
遊意華「……堂々とパクリで始めないでよつづらん」
つづら「初回放送なんでこの放送の説明をするの」
遊意華「華麗にスルーありがとう」

つづら「この放送は、放送部長のみーちゃんに脅は……『頼み込ん』で……」
遊意華「意味深に言い直さない!ちゃんと普通に頼んでやってるから!ですよね、瑞樹さん」
瑞樹「え?あ、はい 脅されてませんよー」
つづら「……頼み込んで放送部室を借りてやってるの 予定では毎放送でDJとアシがいろいろな人に交代して放送なの ちなみに、企画演出主催はうぐちゃんなの 題名はデ○ノに出てきた○くらTVみたいなの」
遊意華「またまたそんな危ないネタを…… というわけで、今日から不定期で放送します で、DJやらアシスタント希望の人は、普通科総括会会長の鶯さんに申告してくださーい というわけで、今日のお相手は、アシスタントの花園遊意華と」
つづら「DJの久遠つづらなの」

OP曲 〜ヒマジン〜
歌 久遠つづら

遊意華「……なんですか?このあまりにもやる気のない歌は」
つづら「ビートルズのイマジンの替歌なの 暇人おーるざぴーぷるなの」
遊意華「この徹底された感情の感じられない歌い方は…… えーっと、気を取り直して 最初のコーナー」
つづら「『オネガイ☆DJさん』なの」

遊意華「いわゆるお悩み相談みたいなやつです それでは、最初のお便り」
つづら「看護科三年の『雪』さんなの うちの副会長がサボるんですが、なんとかならないでしょうか」
遊意華「…………」
つづら「……えー、最初のお便りなの 看護科一年の」
遊意華「え!? 今のは!?」
つづら「『命様LOVE』さんなの 普通科二年生の九条命様が愛おしすぎて夜も眠れません、どうしたらいいでしょうか」
遊意華「…………」
つづら「……この手の悩みは専門外なの ゆきちゃんとかがDJやった時にでも出直してきてほしいの」
遊意華「専門外て というか、なんでここで雪奈さんが?」
つづら「まぁ、旧掲示板過去ログ参照というかなんというか……なの 気を取り直して、次のお便り 美術科一年『ハル』さんなの 最近貧血気味なんですが、なにかよく効く食べ物とか運動とかありますか?」
遊意華「あ! ようやくまともなお便りが来ましたね で、つづらん このお悩みへの回答は?」
つづら「当然の話だけど鉄分をたくさん採るの 鉄分は肉とか魚に入ってるの レバーとホウレン草が特にいいの レバーには鉄分のほかにも赤血球の精製を促進する……」
遊意華「えーっと ちょっといいですか?」
つづら「なんなの?」
遊意華「この話ってどれくらい続きますか?」
つづら「たいしたことないの ほんの一時間ほどなの」
遊意華「この放送は大体三十分くらいなんですが……」
つづら「む、短いの しかたないの 血液精製のメカニズムとレバーの関連性を小一時間語り明かすつもりだったの でも時間がないからやめるの」
遊意華「えーっと、ひとまずレバーがいいってことで 次のコーナー」
つづら「の前にCMなの」
遊意華「え? CMなんてあったんだ」
つづら「うちの学校の購買部とかがやってるの この番組は、手羽先とチョコの夢のコラボレーション『てばチョン』の提供でお送りするの」


えーん手羽先食べたいよー チョコも食べたいよー
そんな食いしん坊な君にはコレ
え?なにコレ? 手羽先チョコ? 手羽チョン? わー、コレは、夢のコラボだー

てばチョンてばチョンてばチョンチョン 購買部のてーばチョン



-- NEXT ---------------------------------

いろいろすいません ツッコミどころの多い突発ネタです
いつだったかラジオネタをやってたんでチョロッと私もやってみました
ちなみに、お便りの主たちは全員誰だかわかりましたか?

おまけ
放送部部長さんのプロフィール
有栖川瑞樹(アリスガワミズキ)
普通科二年
ほかの放送部員からの推薦で部長に
推薦の理由は、声が非常にいいから
新聞部とも交流があり、たまに新聞部のニュースも放送する
ちなみにこの放送は学園内のみのローカル放送で、学園内であればどこでアンテナを立てても聞ける(寮含む)

[78] 本日のDJ:つづら 本日のアシスタント:遊意華
シュレ猫 - 2007年06月19日 (火) 23時30分

-----------------------------------------
- 桜ノ宮inラジオ〜さくら放送局〜 後半戦 -
-----------------------------------------
遊意華「なんですか? てばチョンって」
つづら「購買部の人に聞くといいの えーと、次のコーナーの前に、みーちゃんのニュースなの」

瑞樹「桜ノ宮ニュース お相手は、放送部長の有栖川瑞樹です まず最初のニュース 先日の、血の大浴場騒動の際の大量の血液の除去が、本日朝十時頃に終了しました 今夜から大浴場使用再開となります」
瑞樹「次のニュースです 数週間前から騒がれていた盗撮事件の犯行グループが風紀委員一行の懸命の捜査により、昨日夕方七時頃、犯行グループと一部風紀委員との乱闘の末に確保できたもよう 現在、取調べ中とのことです」
瑞樹「以上で、今夜のニュースを終了します」

遊意華「あー 血の大浴場なんて名前ついてたんだー」
つづら「隠しカメラはわたしの部屋にもあったの でも、つけた当日に見つけて殲滅しておいたの」
遊意華「殲滅て というか、なんでそんなあっさりわかったの?」
つづら「女の勘なの というか、わたしにそんな小細工は効かないの」
遊意華「…………」

つづら「次のコーナーは、『オシエテ☆DJさん』なの」
遊意華「えーっと DJとアシスタントに質問するコーナーですね DJもアシスタントも毎回変わるのに、何か意味があるんでしょうか、このコーナーは」
つづら「ツッこんだら負けなの、ゆいちゃん」
遊意華「そうかな」
つづら「そうなの じゃ、最初のお便りなの 中等部二年の『匿名希望』さんなの お二人の趣味と特技はなんですか 結構ありきたりな質問なの」
遊意華「えーっと、私の趣味は絵を描くことで、特技もそうかな  水彩画が特に得意だよ」
つづら「こんどなにか描いてほしいの」
遊意華「うんいいよー それで、つづらんは?」
つづら「趣味は……読書なの 図鑑から小説、漫画、参考書、果てはゲームの攻略本までなんでも読むの あと、お散歩も好きなの 特技は……形態模写だと思うの」
遊意華「え? なにそれ?」
つづら「ほかの人の動きの記憶と模倣なの 一回みたら大体できるの でも達成感はゼロなの あくまで模倣だから本物より精度に欠けるの 地味な特技なの」
遊意華「ほへー かわった特技だなー」
つづら「次の質問なの 普通科二年『天』さんなの どうしたら部下をまとめあげることができますか どっちかというと、このコーナーじゃなくてさっきのコーナーに出してほしいの」
遊意華「えっと……結構難しい質問だと思うんだけど」
つづら「今度ゆきちゃんに聞いてみるの またはきららちゃんに」
遊意華「またまた他人任せな司会だなー」


つづら「ここらで、今日の放送は終了なの」
遊意華「次の司会希望は、どしどし応募ください」
つづら「お便りもなの」
遊意華「それでは、おやすみなさーい」

--END--------------------------


後半は結構やっつけになってしまいました。
えーっと、次回放送は誰かやってくだるとうれしいです と、作者まで他人任せにしてみる

ついでに、つづらの特技が空欄だったので、ちょっと書いてみました こんなんでどうでしょう
ちなみに、武術うんぬんのスキルは、父親の模倣ということで

[79]
ジャッキー - 2007年06月21日 (木) 21時18分

ぐはぁっ(吐血)

ご指摘、ありがとうございました。
ちょっと次からはよく人物設定を読んで、しっかり構成を考えた上で書きたいと思います。

[97] 主観:変わります
3A - 2007年07月08日 (日) 05時45分

-----------------------------------------
- 迷子・苦悩・悩み相談室 -
-----------------------------------------
 ♪〜♪〜
 携帯が鳴った。見ると自宅からだった。正直出たくなかった。内容は分かっているからだ。

晴美「・・・なに?」
??「わかってるだろ?内容は。」
晴美「・・・。」
??「だからグレイシーにしろって言ったのに。」
晴美「・・・。」
??「・・・だんまり?」
晴美「・・・。」
??「・・・。」
晴美「う〜。」
??「唸るな。勝負は勝負だろ。負けたんだから仕方がない。」
晴美「それが姉に言うセリフか。」
士仙「こっちもめんどくさい事になったんだよ。あんたと親父のせいで。」
晴美「めんどくさい事?」
士仙「俺が金を徴収せにゃならんことになった。」
晴美「ということは?」
士仙「今度そちらまで『賭けとは無関係な楠葉士仙という男子高校生』が、行かにゃならん事になったというわけ。」
晴美「あ、こっち来んの?」
士仙「そうです。」
晴美「ならいつもの公園でセッションとダンスしよ。」
士仙「言うと思った。」
晴美「あとさ、ギターの弦持ってきて。」
士仙「これが嫌なんだよ。こういうついでがあるから・・・。」
晴美「あ、ちょっと待って。」

 士仙はなおも言葉を続けているが、私は側にいたユイが何かを言いたそうにしているのに気付き、それをきこうとした。

晴美「なに?」
遊意華「シーくん?」
晴美「そう。」
遊意華「じゃあさ、久しぶりにクッキー焼いてって頼んで。」
晴美「OK。」

 私は再び携帯を耳にあて、電話の向こうに喋りはじめた。

晴美「士仙?」
士仙「クッキー焼けって?」
晴美「さすが。」
士仙「味は?」
晴美「うーん、あんたがうちのお姫様に見合うと思うものをもって来い。」
士仙「はぁ〜。男はつらいよとはよく言ったもんだ。」
(紅夜&蒼馬「はっくしょん!!」)
晴美「女もつらいんだよ。」
士仙「でしたね。」
晴美「女と言えば、できたの?」
士仙「なにが?」
晴美「分かってるくせに。」

 ちょっと前までは全く逆の立場だったっていうことを思うと何故か面白い。

士仙「いないよ。」
晴美「告白くらいはされたでしょ?」
士仙「ああ、ハルとは違って告白してきたよ。」

 私は頬を赤らめた。

晴美「皮肉?嫌味?」
士仙「ハルの考え方に任せる。」
晴美「ぐっ。」
士仙「『ぐっ』てそれは愛しの紅夜さんへの感情だろ?」

 顔全体が赤くなった。

晴美「う、うるさい!」
士仙「十分ハルの方がうるさいよ?」
晴美「っ!!!!!!!!!」

 言葉にできない怒りが湧き上がる。
 よし、逆襲だ。

晴美「そういうあんたは『ぐっ』とくる女の子でもいないの?」
士仙「ん〜〜・・・いないね。」
晴美「はぁ〜寂しい人生だね。」
士仙「そんなこといわれてもなぁ〜。大体、そっちの学校に行けてたら1人くらいはいたかもしれなかったのに。」
晴美「でも来てたら男はあんた1人だよ?」
士仙「『上は男2人でもう共学はなくなる』って言われたら行かないだろ?」
晴美「運がないな。」
士仙「ハルにだけはいわれたかないねぇ〜。」
晴美「うるさいなぁ〜。」
士仙「あいあい。いいかげん切るよ?」
晴美「あ〜待って、今パソコンつけてる?」
士仙「もちろん。」
晴美「じゃあ画像送る。」
士仙「なんの?」
晴美「うちの生徒の。」
士仙「品定めでもしろって?」
晴美「あんたのタイプだけでも探し当てようかなと。」
士仙「お好きにどうぞ。じゃあ切るよ?」
晴美「じゃ、また今度。」
士仙「また。」

 プツッ ツーツーツー

 ろくな逆襲もできないまま会話は終わった。いつもこうだ。口で勝てる気がしない。
 画像を送るとは言ったものの、そんなにたくさん持ってるわけでもない。
 持ってるのは美術科の1年がほとんどだ。あとは、紅夜さんとか紅夜さんとかこうy・・・。まあそれだけでもタイプぐらいはわかるだろう。
 そんなことを考えながら私は画像を送った。その数16枚。
 結構いい男なのになぁ〜。彼女ができないとはね。
 姉である私が言うのもなんだが、士仙は
 ・顔・・・整った顔立ちで、たまにしか来ないうちの学校でもファンがいるくらい。
 ・性格・・・ここだから言えるが、ほんとにいい奴。優しくて、頼れるし、頼まれた事はやり遂げる。
      さらに面倒見がよい。さっきもなんだかんだ言ってるが、結果的には来てくれる。
 ・頭・・・悔しいがすこぶる良い。地元の有名な公立進学校にいる。

 昔の話になるけど、小さいころは士仙が女の子と喋ってるところを見ると、嫉妬に近いものを覚えてしまったこともある。
 ほんとの初恋は士仙だったのかもしれない。
 ・・・何言ってんだ私。そんなわけないじゃないか。私は紅夜さん一筋。それは前世からの運命(さだめ)。
 きっと小さい頃は娘が父親を好きになるってのが、たまたま弟だったのかもしれない。その筈だ。
 っと、この話はこの辺で終わりにしとかないとね。
 え?何故?だって、誰もこんな恋愛話望んでないでしょ?
 それよりは「さっさと話進めろ」って思ってる人多いでしょ?

3A「俺は恋愛話が聞きたいぞー!」
晴美「こら!現実キャラが入ってくるな!」
3A「あ、すいません。」

 ・・・えー話進めます。

――――――翌週の金曜日――――――
士仙「よし、行くか。」

 今日はテストで午前中だけ。さらに、部活が軽い練習ということもあって、一旦に家に帰り、昼飯を食って支度をして昼の2:00に家を出た。
 土日は部活で埋まっているので今日を逃すと当分行けないことになる。
 桜ノ宮に行くのは高校になってからは初めてだ。中学の時も何度か行ったことはあった。
 その都度クッキーはお土産としてユイに持って行っていた。そして姉達の持ち物の補充も俺の仕事であった。
 つくづく思うよ、優しすぎるなぁと。
 ただ、高校に入ってからはこっちの部活が忙しくなったのもあって、中々行けなかった。
 中々行けなかったので、駅からの道のりを忘れてしまったようだ。
 駅に着いた時には5:00だった。迷ったので駅まで戻ったら、5:30だった。
 人に聞く事にしようと決めた時、綺麗な金髪を持ち、疲れた後ろ姿の桜ノ宮の制服を着た女性がいた。
 やっぱり聞くなら目的地に住んでいる者に聞いた方が確実だろう。
 俺は迷わず彼女に道を聞くことにした。

士仙「あの、すいません。」

――――――15分前の桜ノ宮学園――――――
ルティア「はぁ〜。」

 最近溜め息が多くなってる気がします。いえ、確実に多くなってるでしょう。
 最近は風紀委員会長として情けなさすぎる気がしてしまうのです。
 それというのも、宇美さんや泉さんの暴走などをとめる事ができないのです。
 自分の委員会の者さえも統轄できないとは・・・という思いが溜め息の原因なんでしょう。
 そんなことを言っても委員としての仕事はしっかりとしなければならないし、もちろん学業も怠ってはいけません。
 ただでさえ楽ではないのに、これにあの2人のストッパーもしなければならないとなると、体力も気力も持ちません。
 こんな状態で委員の仕事が務まるわけがありません。
 ふと思ったんですが、最近全く外に行ってません。
 基本的にこの学園からはでないのですが、以前は1ヶ月に1回くらいは出ていたはず。
 なのに、私は今ここで何をしているんだろうかと。
 
ルティア「・・・たまにはいいかな。」

 ボソッと誰にも聞こえない様な声でつぶやいて、そして決めました。今日は散歩にでも行ってみようかなと。
 あても目的も無い。ただ外へ行きたくて、私は学園をあとにしました。
 学園を出て15分。私は何も考えずに歩いていました。
 すると、後ろから誰かに肩を叩かれた。と、同時に、

士仙「あの、すいません。」

 と声をかけられました。
 その人は大体180cmくらいはあるがっしりとした体躯の男性で、その顔は誰かに似てると思いましたが、全く思い出せませんでした。
 そんなことを考えていて返事ができずに5秒。なんだでろう、彼は全く不思議がらなかった。
 そして今初めてここが駅だと気付いた。これで更に3秒追加された。

ルティア「あ、えーと何か?」
士仙「少し道をお尋ねしたくて。」

――――――8秒前――――――
 返事はすぐには来ないだろう。
 差し詰め気分を変えたくて散歩でもしてきたのだろう。しかも深い考えはなくて。ただ歩いてきただけってかんじだろう。
 けど、5秒以上かかりそうな人には見えない。彼女は頭が良さそうだし、切り替えも早いはずだ。
 予感的中。返事は来なかった。ただ、もう5秒たったはずだ。これはちょっとミスったな。

ルティア「あ、えーと何か?」

 8秒くらいか・・・。

士仙「少し道をお尋ねしたくて。」
ルティア「どちらまで行かれるのですか?」
士仙「あなたの学校まで行きたいんですが。」
ルティア「え?うちの学園ですか?」
士仙「別に怪しい用じゃないですよ。少し姉におつかいを頼まれたんで。」
ルティア「あ、そうですか。」
士仙「で、どう行けば?」
ルティア「あ、え、ええ。そうでしたね。えーと・・・。」

――――――ルティア――――――
 いけない。頭が混乱してて説明できない。しかも、久々にここまできたので(しかも無意識に)通常の状態でも説明は難しいかもしれない。
 だとしても、仮にも自分の家への道のりさえも分からないとなれば、とてもじゃないほど恥ずかしい。
 だからといって、出鱈目に教えたら迷惑だし、まず気がひけてしまう。
 ・・・これしかないかもしれませんね。

ルティア「私も今帰るところなんで、ご迷惑でなければご一緒してもいいですか?」

――――――士仙――――――
 全く予想していなかった。まさか一緒に行こうと言われるなんて。
 こういう人は大抵もう少し歩くと思っていた。
 しかも、あの桜ノ宮の生徒が見ず知らずの男と一緒に歩くなんて。
 でもまぁ道を教えてくれる事にかわりはないし、更にご丁寧にも連れていってくれる。今日は運がいい。

士仙「迷惑なんかじゃありませんよ。あなたこそご迷惑じゃないんですか?」
ルティア「いえいえ、とんでもありません。ちょっとした散歩でしたから。ちょうどいいタイミングだったんで。しかも、1人で帰るよりはお話をしながらの方が楽しいでしょう?」
士仙「そうですね。『旅は道連れ』と言いますしすね。」
ルティア「そうですね。」

 初めて彼女が笑った。けど、どうみてもぎこちなく、さらに愛想笑いと分かるような笑顔を見せた。

士仙「立ってても始まりませんし、行きませんか?」
ルティア「ええ。では行きましょう。」

――――――ルティア――――――
 えーと、最初の曲がり角は・・・。そこの銀行だったかしら?確か銀行を左に曲がって、ちょっと真っ直ぐ進むのよね。
 それで・・・。
 こういって・・・。
 次を・・・。
 ・・・
 ・・
 ・

――――――10分後のある公園のベンチ――――――
ルティア「す、すいません。迷いました。」
士仙「やっぱりですか。はは・・・。」
ルティア「やっぱり?」
士仙「いえ、以前来た時はここは通らなかったなぁって思って。」
ルティア「じゃ、じゃあ道覚えてるんじゃないんですか?」
士仙「うろ覚えって言うんですかね。ほらクイズとかで知ってるはずの答えが出てこない時ってありますよね?」
ルティア「ええ。」
士仙「あの時全く出てこないのにちょっとヒントとか文字を見るとパッと思い出しません?」
ルティア「ま、まあ。」
士仙「あと、選択肢とかがあると『これは違う』とか分かるんですよね。あれと同じで、『ここは見た事がない』って思ったんで。」
ルティア「なるほど・・・。でも、道案内引き受けたのに本当にすいません。駅の方に戻って誰かにきいてきますわ。」
士仙「今、お急ぎですか?」
ルティア「?いえ、別に急いで帰る必要はないですけど、、、それが何か?」

 私がそう言うと、彼はニコッと笑いました。そして、

士仙「じゃあここでちょっと待ってて下さい。」
ルティア「え?」

 彼は私にそう言うと、荷物をベンチへ置いて公園の入り口の方へ走って行きました。
 2分後、彼は戻ってきました。手にペットボトルを2つ持って。

士仙「どうぞ。」

 と言って、スポーツドリンクとカフェオレの2つのうち、スポーツドリンクを私に差し出しました。
 私の好みとしては、この2択ならカフェオレだったのに、今はスポーツドリンクを飲んだ方がいいとでも言ってるのか。
 だが、喉がカラカラの私の体はスポーツドリンクで喜んでいるようだった。

ルティア「ありがとうございます。いくらですか?」
士仙「150円ですけどいりませんよ。」
ルティア「いえ、そうはいきません。払わないと気がすみません。」
士仙「じゃあ、それ道案内料としてとっといてください。」
ルティア「で、でも今こうして迷っちゃってるじゃないですか。」
士仙「でも、目的地は同じなんだし結局は道案内してくれる事になるんじゃないですか?」
ルティア「それはそうですけど。」
士仙「ならとっといてください。」

 私は上手い事丸め込まれたようでした。・・・でも、彼は幾つなのだろう。
 確か、お姉さんが学園にいるといっていたので・・・ってそれじゃ少なくとも私以下じゃありません!?
 ちょっと年上かと思っていたんですが。

士仙「これ食べますか?」
ルティア「なんですか?」
士仙「クッキーです。」
ルティア「あなたが焼かれたんですか?」
士仙「似合わないですか?」
ルティア「いえ、素敵です。」
士仙「食べてから褒めてください。」
ルティア「じゃあいただきます。」

 ・・・。

ルティア「お、美味しいです。」
士仙「光栄です。もっと食べていただいてもいいですよ。」

 お世辞じゃなく、本当に美味しくてびっくりしました。
 うちのシェフよりもお上手かもしれないと思いました。
 さらに、歩き回ったせいかお腹も空いていたので、とてもリラックスできました。

士仙「急ぐ必要がないんですよね?ならもうちょっと休んでいきましょう。」
ルティア「ええ、そうしましょう。」

 私は迷わずに言いました。

――――――PM7:00――――――

 彼のお話はとても面白く、しかも上手に話してくださったので、より一層面白く思えました。
 彼の話を聞いているうちに、さっきまでの悩んでいた自分がバカらしく思えてきました。
 何を悩んでいるのか。
 何を悩んでいたのか。
 それさえも忘れさせてくれるほど、心の底から面白いと思って笑えました。
 そして時間も忘れるほどに。
 気付けば日が沈んでいた。
 だけど、私はこのままここで話を聞いていたく思いました。
 そうしていたら悩みも嫌な事も全てを忘れさせてくれると思ったからです。
 しかし、

士仙「おっ。」
ルティア「どうしたんですか!?」
士仙「道、思い出しました。そろそろ帰りましょう。」
ルティア「で、ですが・・・。」
士仙「そろそろ行かないと僕の帰る時間が・・・ね。」

 私は渋々ベンチを立ちました。
 そして彼の案内のもと、学園へと歩いて行きました。
 するといきなり、

士仙「言い切れませんけど、何か悩み事でもあったんじゃないですか?」

 私は驚きました。いきなり心を読まれた気がして。
 私は驚きもあって、言葉が出ませんでした。

士仙「いい気分転換になりましたか?」

 彼があんなに長い時間喋っていたのは、私が悩んでいるということを察していたからだったのだろうと。
 私が気分転換をしたいと思っていた事も察していたからだったのだろうと。
 今、彼の言葉で初めて気付きました。
 そして、身内の男性以外で私にこんなに優しくしてくれたのも、彼が初めてでした。
 『あの人』は決して優しくはしてくれないから。
 冷たい中に優しさがあるのは知っているんですが。
 ところで、

ルティア「なんでわかったんですか?」
士仙「雰囲気とさっきまで使っていた作り笑い、そして来た道を帰れない。って状況からちょっとヤマはってみたんですが、正解のようですね。」
ルティア「なんで・・・。なんで初対面の私の行動から推理できたんですか?」
士仙「姉が居るってさっきいいましたよね?実は2人居るんです。で、その妹の方が悩んでいる時、あなたと同じような仕草をするんです。」
ルティア「それで?お姉さんは悩んでいる時はどうするんですか?」
士仙「だいたい僕に相談してきますね。」
ルティア「それで解決してるんですか?」
士仙「してるみたいですね。全部が全部ってわけでもないですけどね。」
ルティア「なら、私の悩みも相談に乗って頂けます?」
士仙「いいえ。」

 返ってきた言葉は意外なものでした。『いいえ』つまり『乗らない』ということ。

士仙「もう必要はないでしょう。」
ルティア「え?」
士仙「気分転換してリフレッシュした今のあなたなら解決できると思いますよ。」
ルティア「どんな問題かも知らないのに分かるんですか?」
士仙「多分ですけど、今までならそれくらいの問題はとけてきたんじゃないですか?」

 確かにそうでした。
 今までの私ならわけない問題でしたでしょう。
 では何故さっきまではとけなかったんでしょうか?

士仙「何故さっきはとけなかったか。それはストレスが大きな原因でしょうね。」

 また心を読まれたみたい。

ルティア「ストレス?」
士仙「あれだけ笑ったら無くなったんじゃないですか?」
ルティア「そうですけど。あ、もう学園ですね。」

 やっと校舎が見えてきました。

士仙「やっと着きましたね。あ、それでもとけない時は連絡してください。これメアドです。」
ルティア「あ、ありがとうございます。・・・そういえば、」
士仙「そういえば?」
ルティア「私ルティア・天津・ライゼルロードといいます。」
士仙「ルティアさんって呼べばいいですか?それとも天津さん?はたまたライゼルロードさん?」
ルティア「前の2つで呼ばれるのがほとんどですわ。」
士仙「そうですか。僕は士仙っていいます。楠葉士仙。」
ルティア「楠葉・・・。失礼ですけど、お姉さんのお名前は『晴美』さんですか?」
士仙「ええ、そうです。知り合いですか?」

 彼がそう言った瞬間ある声が聞こえてきました。

??「会長!離れるんだー!!」

――――――士仙――――――
 何故だ。
 何故なんだ。
 何故にいきなり日本刀で切りかかられた?

??「会長から離れるんだこの誘拐犯め!会長!俺がきたからにはもう大丈夫だ。」
ルティア「宇美さん、誘拐犯ってなんのことですの?それと・・・楠葉・・・くん?」

 1撃目の時、死角からやってきたので咄嗟にルティアさんを庇ったので、思いっきり抱きしめていた。
 もちろん、すぐ離した。
 ・・・ちょっと惜しい気持ちとちょっと安堵の気持ちが交錯した。

士仙「楠葉だったら姉と被るんで、士仙でいいですよ。」
宇美「この、破廉恥野郎ー!!」

 2撃目、こういうやつは初対面のやつの言う事なんか絶対に聞かない。
 そんなバトルのなか、ルティアさんは学園内へと入って行った。
 こんな子でも一応は女性だ。
 殴りたくはない。
 どうやって止めるべきか。
 俺は攻撃を全てかわしながら考えていた。

――――――ルティア――――――
 誰か。
 誰でもいい。
 宇美さんを止められる人。
 私は学園内を走っていた。
 すると、私は2人該当する人が思いつきました。
 2人とは、襲われてる方の姉と襲っている方の姉の2人。
 前者は今部活中だろう。
 後者は普通科総括会室・・・でしょう。
 確実なのは楠葉さん。
 運がいいことに、その人は割と近いところで練習をしていた。

ルティア「楠葉さん。」
晴美「天津会長!?さっき宇美とか風紀の人達が行方不明って言ってましたけど?」
ルティア「それよりも、早く来てください。」
晴美「?わかりました。」

 私は戻る途中に楠葉さんに状況説明をした。
 すると彼女は焦る様子はなく、それどころかほくそ笑みながら私にこう言いました。

晴美「あいつは大丈夫ですよ。」

 私達が戻ってきたころには、宇美さんの怒声のせいか周りには生徒の人だかりができていた。
 さらに寮の窓から見ている生徒までいた。
 その中には如月さんの姿もあり、先ほどから宇美さんに攻撃を止めるようにさけんではいるが、宇美さんは全く聞き耳をもってない。
 そこを私達は人をかき分けて最前列へ出た。
 すると楠葉さんは、

晴美「士仙!」
士仙「ん?おお、ハル。」
晴美「元気か?」
士仙「ぼちぼち。」

 よそ見してていいんですか!?

宇美「よそ見する暇はねえぞ!!」

 バシッ!
 刀を指と指で挟んだ。

宇美「!!!!!」
士仙「なぁ、どうしたらいい?」
晴美「20〜40くらいなら大丈夫。再開させろよ。面白そうだし。」
士仙「信用するよ?」
晴美「私ゃ信頼されてるとおもってた。」
士仙「任せなって。」
宇美「離せよ!」

 パッ
 いきなり離されたため、宇美さんは勢い余ってこけかけた。

宇美「うわっ。いきなり離すな!!」
士仙「I'm sorry.」
宇美「なめてんのか?」
士仙「決して。」
宇美「この野郎・・・。もう手加減無しだ。」
士仙「こっちは20〜40%で十分だってか。ハルの分析・・・信頼するよ。」
宇美「死ね。」

――――――士仙――――――
 20〜40%。
 それでいいなら気絶まではいかない。
 良かった。

――――――晴美――――――
 気絶はさせないだろう。
 あいつ優しいし。
 ただ、完膚なきまでに宇美は負けるけど。

宇美「・・・ぐ、は、離せ。」
士仙「今離したらまた襲ってくるだろう?」
宇美「つべこべ言わずに離せ。」

 多分ここにいる野次馬のなかで今の士仙の動きが見えたのは光さんだけだろう。

 解説:宇美が斬りかかると同時に、士仙は防御と攻撃のためスライディング。
    スライディングすると刀は避けられる。
    さらに、そのまま足払い。
    宇美が後ろへ倒れかかった時に右ってで刀を取り上げ、そのまま後ろへ回りこみ左腕で首を絞めながら持ち上げた。
    呼吸は軽くできるくらいに。
    これがこいつの優しいところだ。

ルティア「宇美さん、もうやめなさい。」
宇美「な、なんで誘拐された会長が庇うんですか?」
ルティア「誘拐?なんのことですの?」
宇美「へ?いやだっていきなり会長がどっかに消えて、でいきなり帰ってきたかと思えばこんな変な男と2人っきりだし…。」
ルティア「・・・そこからどうやって誘拐という結論にに行きついたんですか?」
宇美「・・・勘。」
ルティア「はぁ〜。私はただ散歩に行っただけですよ。」
宇美「え?あ?ほ、ほほほ本当ですか?」
ルティア「ここで嘘をついてどうするんですの?」
宇美「いや、まぁなんていうか・・・ハハハ。」
ルティア「この人は私の恩人です。」

 そういうと、天津会長は今までのいきさつを話した。
 あまり詳しい事は言わなかったが。

宇美「そ、そうだったんですか・・・ていうかそろそろ下ろせよ!」
士仙「あいよ。」

 そういうと士仙はその場に宇美を下ろした。
 そして刀も返した。

宇美「・・・ふん。」
ルティア「すいません。うちの委員会の者が――。」
士仙「これだけ逞しけりゃ不逞の輩は退治できそうでいいじゃないですか。逆に彼女自身が問題となっていそうですけど。」

 士仙は天津会長と話しているため、宇美には背を向けていた。

――――――士仙――――――
士仙「殺らないのか?」
宇美「っ!」
士仙「完全に隙だらけで、背中まで向けてるんですけど?」
宇美「だ、誰がそんな卑怯な真似するってんだ!!」

 根は真っ直ぐだがどこか歪んでる。
 この性格はルティアさんでは扱えきれないだろうなぁ。
 尤も、現時点ではの話だけど。

士仙「えっと、宇美・・・さん?」
宇美「っ!いきなり下の名前で呼ぶやつがいるか!!それにてめえなんかにさんづけで呼ばれる筋合いはねえ。」
士仙「年も名字も知らんのに。」
宇美「ちっ・・・高一だよ。あと上は如月だ。」
士仙「へぇタメか。で、なんと呼べば?」
宇美「如月でも宇美でも適当に呼べ!!いちいち癇に障る野郎だ。」
士仙「了解。で、今まで変なやつを捕まえた経験は?」
宇美「あるさ。」
士仙「・・・ならそれで斬った事は?。」
宇美「無いに決まってんだろ!」
士仙「自分自身は?」
宇美「はぁ?何言ってんだ?有る訳ねえだろうが。」
士仙「それはちょっと問題だな。」
宇美「なに?」

 これはちょっと教えとかないと問題になる。

士仙「貸しな。」
宇美「うぉ、返せ。」
士仙「見とけ。」
宇美「な、何を・・・。!!!!!!!」

 ブシュッ

――――――ルティア――――――
一同「キャー!!」
ルティア「士仙君!?」

 彼は宇美さんから奪った刀で自分の掌を斬った。

宇美「バカかお前!」
士仙「よく見ろ。これが血だ。」

 彼はそう言うと宇美さんに自らの手から滴る血を見せていた。
 ポタッポタッと地面に彼の血が落ちる。
 そして傷口を宇美さんの目の前に近づけた。

士仙「お前にここが触れるか?」
宇美「き、気色悪ぃこと言うんじゃねえよ。」
士仙「質問に答えろ。」

 今までの彼とは思えない強い口調で言った。

宇美「触りたくもねえな。」
士仙「これでも力は全然入れてないんだ。それでもこうなる。」
宇美「・・・何が言いてぇんだよ。」
士仙「無闇にそんな物を振り回すな。もし振り回すのなら、自分の手を斬ってみろ。そして痛みを知れ。失敗は成功の元。どんな事でも人間痛みから知るんだ。」
宇美「・・・くっ。あー!!頭が痛え!そんな話すんな!!いい加減返しやがれ!!!!」

 そういうと宇美さんは士仙君から刀を奪い返した。

士仙「分かりましたか?」
宇美「もう黙れ!俺に説教すんな。さっさと帰りな。次来た時は容赦しねえからな。」

 そう言って宇美さんは寮へ戻って行きました。
 そして私は我に帰り時計を見ました。
 するともう針は7:30をさしていました。
 こんな遅くまで生徒を外に出しておくのを、風紀委員として黙ってはいられません。

ルティア「さあ、皆さん。早く寮に戻って下さい。」

 私は野次馬などの生徒を一通り寮に戻し、私も一緒に一旦戻ることにしました。

ルティア「士仙君。少し待ってて下さい。今、救急箱とってきますから。」
晴美「その必要は無さそうですよ、天津会長。」

 楠葉さんはそういうと、門の方を指差しました。
 そこには宇美さんが居ました。

宇美「ほらよ。」

 宇美さんはこっちに救急箱を放り投げました。
 楠葉さんがそれをキャッチし、

晴美「サンキュ。」
宇美「ふん。」
士仙「あんがと。」
宇美「うるせー。さっさと治療しな。んで帰れ。」

 そういって宇美さんはまた寮へ戻った。
 私は救急箱から傷薬とガーゼ、それと包帯を取り出して治療した。

ルティア「これで良しと。」
士仙「ありがとうございました。」
晴美「ご迷惑をおかけました。」
ルティア「迷惑かけたのはこちらですから。」
士仙「楽しかったですよ。」
ルティア「こちらもです。」
士仙「もうお帰りになられた方がいいんじゃないですか?今日は疲れたでしょうから。あと、寝る事はいいストレス解消法ですよ。」
ルティア「ではお言葉に甘えて。楠葉さん。」
晴美「はい?」
ルティア「素晴らしい弟さんですね。素敵でしたよ、彼。」
晴美「こんなやついつでも貸しますよ。」
士仙「こんなやつって。」
ルティア「フフ・・・。ではお先におやすみなさい。」
晴美&士仙「おやすみなさい。」

 私は部屋に戻り、今日の出来事を振り返り、彼の話を幾度か思い出してバスルームで、ベットの中で思い出し笑いを何度もしました。
 やはりあれだけ笑ったからでしょう、ベットで3回瞬きをしたところで私は意識がなくなりました。

――――――士仙――――――
晴美「無茶するねえ。」
士仙「無茶は今に始まった事じゃないっしょ?」
晴美「まあバカじゃないから余程のことはしないと思ってたけどな。」
士仙「ハハハ。」
晴美「ところで。」
士仙「はいなんでしょう?」
晴美「頼んだ物持って来た?」
士仙「もちろん。あ〜クッキーはない。」
晴美「忘れ物?珍しい。」
士仙「そんなとこ。」
晴美「ところで。」
士仙「お次は何でしょうか?」
晴美「天津会長と仲が宜しいようで。」
士仙「宜しいかどうかは知らんけど、悪くないとは思う。」
晴美「どう?彼女は。」
士仙「ん?ああ、そりゃ綺麗だし聡明でまさに『才色兼備』だとは思うよ。だけど、」
晴美「だけど?」
士仙「多分あの人、気になってる人とかいると思うよ。」
晴美「鋭いなぁ。で、『ぐっ』と来た人いた?」
士仙「ああ、あれ?ん〜・・・『17人目』が1番美人でタイプに近いとは思うけどねぇ。」
晴美「17人目?私は16・・・ああ、そういうこと。」
士仙「俺、年上が好みかもね。」
晴美「宇美とかは?」
士仙「個性的で宜しいんじゃないでしょうか。」
晴美「案外、ああいうのとくっついたりしてね。」
士仙「ああいう人は俺みたいなの好きじゃないと思うよ。」
晴美「嫌いから好きへ変わるのが人間なんじゃない?」
士仙「ああいうのは母性本能が働くような人を好きになると思う。例えば虚弱体質で、弱くて、『俺が、私が守らなきゃ』って思う人とかね。」
蒼馬(ハックション!)
晴美「ほうほう。」
士仙「ていうかもう帰るよ?」
晴美「もう?」
士仙「帰るのにどれくらいかかると思ってんだ!」
晴美「あはは・・・。でもさ、クッキーないって知ったらユイが悲しむよ?」
士仙「じゃあまたいつか持って来るって言っといて。」
晴美「わかった。」
士仙「姉さんは?」
晴美「テニス。」
士仙「また連絡入れるって言っといて。」
晴美「おう。じゃ、またな。」
士仙「んじゃな〜。あ、そうだ。練習軽めにしときなよ。膝痛むんだろ?またな〜。」
晴美「・・・全てお見通しか。」

 何時に帰れるんだろう?
 と思いながら帰りは真っ直ぐ駅へと歩けた。

 今日は疲れたな〜。
 と思いながら帰りの電車で座れた。

 晩飯何にしよっかな〜。
 と思いながら駅から家へ歩いた。

 眠いな〜。
 と思いながらベットにはいってルティアさんを抱きしめたときの感触を思い出している。

 瞼を閉じながら俺は思った。

 もっと色んな人と会ってみたい。
 今日みたいな面白い、良い出会いがあるかも知れないから。

 最後にサブキャラ1位の宇美には負けたくない。
 と思いながら俺は夢へと落ちていった。
-- END? or NEXT? I don't know... --------------------------

必要以上に長くなってしまった・・・。
サブキャラが主人公的なのにいいのだろうか。
1、2週間かかりました。テストなのに。

それはそうと、主観をコロコロ変えるという無駄に労力を使う戦法を取ってしまった。
故に、こんなに長くなってしまいました。
作り始めた時はノリノリだったんですけど、日に日に作るペースが落ちてきて、なんかダラダラと長びいてしまった。
製作日数もさらにはSS自体も。
ということで、あとがきも無駄に長いですね。
今からおやすみなさい。
今日は英検の面接なのに・・・。

[98] 主観:なし 登場人物:etc
凪鳥 - 2007年07月09日 (月) 02時25分

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- 次から次へと問題は… -
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紅夜「――以上が生徒会の判断だ」

 淡々とした紅夜の声が、室内に響く。
 時間は放課後、場所は第三会議室。
 生徒会と美術科総括会との定例会議が行われていた。

紅夜「…何か質問は?」

 生徒会の見解を説明し終えると、紅夜は正面に座る二人の女子生徒を見る。

遊意華「えぇ〜っと特にはありませんけど…ハル何かある?」
晴美「えっ私? わ、私も特にありません、はい」

 渡された冊子をあたふたと見ながら、何とか話に付いていく遊意華と晴美。
 紅夜が説明している最中も、何か唸り声をあげていた二人。
 紅夜の話に付いていくのがやっとの二人にとっては、質問もへったくれもない。

紅夜「なら次に移る…p25を開いてくれ」

 その二人に構うことなく、冊子のページをめくり紅夜は会議を再開する。
 説明はいつものように迅速・正確・簡潔に。
 基本として理解して欲しいところは冊子にまとめてあるので、その補足説明を淡々と述べる。
 基本的に定例会議は生徒会主導で行われるので、進行は生徒会側が行う。
 とはいうものの、ここまで淡々と話が進むのは美術科だけで、普通科や看護科などは所々に物言いが入る。

紅夜「これが先週の会議のまとめだ、目を通しておいてくれ」
遊意華「はい、解りました〜」
紅夜「…それと、この前の申請の話だが」
晴美「あ、やっぱり無理ですよね…申請内容、全然まとまってませんでしたし」
紅夜「いや、教員側には通しておいた」
晴美「そうですよね…って、え? 通しておいたっ!?」
紅夜「あぁ」
遊意華「通しておいたって…紅夜さん、あんなの一体どうやって通したんですか? 私絶対通らないと思ってました」
紅夜「…こちらで何とかしておいた…仮申請だからな、必要かどうかはそちらで決めてくれ」

 そういって紅夜は鞄の中から五枚一組の書類を取り出す。
 学生会申請書と書かれたその書類には、確かに遊意華や晴美が申請した内容と、学園側了解の判子が押されていた。
 遊意華がその書類を受け取ると、美術科二人はまじまじとそれを見る。

遊意華(わぁ…本当に申請が落ちてる)
晴美(私、出しておいてなんだけど、あんな申請絶対許可されないと思ってたよ)
遊意華(というか、私こんな詳しい申請文書いた覚えないよ〜…)
晴美(そもそも私達が出した申請書は二枚だったはずだよね…)

紅夜「内容に問題はないか?」
遊意華「はっはい! 全く全然、問題ありません!」
晴美「これ、私達が提出したのと大分内容が違いますけど、紅夜さんが直してくれたんですか?」
紅夜「あぁ、あのままじゃ通らなかったんでな…悪いが適当に手は加えさせてもらった」
晴美「ありがとうございます、唯でさえ忙しいのにこんなことまで…」
紅夜「…仕事の内だ」

 そういって紅夜は、会議の初めに美術科側が提出した報告書に目を通し始めた。
 すらすらと、まるで速読の様に読み上げていく。
 そして軽く赤ペンで添削すると、その書類を遊意華に差し出す。

紅夜「…もう一度内容を考え直してくれ」
遊意華「え? 何か問題がありましたか?」
紅夜「いや、これでも構わないが…この内容だと看護科か食ってかかる…会議が荒れるのは面倒だ」
遊意華「解りました、確かに雪奈さんに隙を見せる訳には行きませんし!」
紅夜「頼んだ」

 遊意華の返答を聞くと、休むことなく次の書類に手をつけていく。
 かれこれ会議が始まってから一時間がたつが、紅夜の処理速度は衰えることはない。
 逆に聞き役に回っていたはずの遊意華や晴美の方が、疲れ始めていた。
 そろそろ美術科の二人は休憩が欲しいところだ…。

紅夜「…次に、寮の話だが――」
蒼馬「紅、そろそろ休憩にしないかい?」

 いままでずっと紅夜のとなりでノートパソコンと格闘していた蒼馬が、パタンとそれを閉じる。

紅夜「…? まだ半分も終わってないが…」
蒼馬「半分もやれば十分だよ、ね? 僕も疲れちゃったし」

 蒼馬が紅夜の手を止めつつ、遊意華と晴美に合図を送る。
 その蒼馬に、コクコクと美術科二人は頷く。

紅夜「…解った、休憩にしよう」
遊意華&晴美(助かった〜)

 内心で蒼馬に感謝の二人。

遊意華「あっそうだ、今日調理実習で作ったケーキあるんですよ、ねハル?」
晴美「え? う、うん…そうだね」
蒼馬「へぇ、調理実習か〜。そういえば僕達ってやったことないよね?」
紅夜「…まぁ、男子と女子で一応カリキュラムは違うからな…」
遊意華「せっかくだしハル、紅夜さんと蒼馬さんに試食してもらおうよ!」
晴美「えぇ!? ちょっとユイ、それは――」
遊意華「いいからいいから! じゃ、私達準備してきますね〜」
晴美「ちょ、ちょっとユイ! 私はいいから――」

 どうにも気乗りしない晴美を、遊意華はぐいぐいと引っ張り、会議室を出ていく。
 普段なら逆なのだが、こういう時の遊意華の行動力は凄まじい。



蒼馬「――うん、美味しい!」

 数分後、会議室の机に並べられたケーキと紅茶。
 ケーキは調理実習での定番、ショートケーキ。
 紅茶はティーパックだが、この四人の中に紅茶等はいないので問題はない。
 これがルティアならば、どこからともなく自前のティーセットを取り出して淹れなおす所だ。

遊意華「ホントですか! よかった〜、ちょっと失敗したかな〜って思ってたんですよ」
蒼馬「そんなことないよ、凄く美味しいよ」

 ちなみに、蒼馬が食べたのは遊意華が作ったもので、紅夜の前に置かれているものは晴美が作ったものだ。

晴美「あ、あの〜…紅夜さんは、どうです…か?」
紅夜「……」

 しばらくケーキを眺めていた紅夜は、晴美に促されるとケーキにフォークを入れる。
 そして一口。

紅夜「…スポンジが少し硬いな」
晴美「へ?」
紅夜「あと、クリームの塗りにムラが多い」
晴美「む…ムラ、ですかぁ」
紅夜「味も大事だが、見た目にも気を使え、デザートは特にな」
晴美「は、はい…がんばりますぅ」
紅夜「…ま、次点といった所か」

 紅夜の辛口評価に、がっくりと肩を落とす晴美。
 相変わらずと言えば相変わらずだが…何度もめげずに挑戦している命の気分が解った気がした。

蒼馬「紅ってば、なにもそこまで…」
紅夜「…?」

 バキューンバューン!
 と、いきなり鳴り響く発砲音。
 この学校では比較的有名な…悪趣味な着信音。

紅夜「…もしもし?」

 ポケットから携帯を取り出し、携帯を耳に当てる紅夜。

紅夜「…かけ直します」

 眉間に皺をよせ、携帯の通話を切る。

蒼馬「紅?」
紅夜「…菫ノ宮生徒会からだ、少し外す」
蒼馬「あ、うん。解ったよ」

 蒼馬にそう言って、紅夜は会議室から出る。

遊意華「あの、菫ノ宮って桜ノ宮の姉妹校のことですよね…どうしたんでしょ?」
蒼馬「多分、この前の2校合同会議の事じゃないかな?」
晴美「そうなんですか…紅夜さん、本当に忙しいですね」
蒼馬「そうだね、僕ももう少し力になれればいいんだけど…」

 ふぅと、蒼馬は小さくため息をつく。

蒼馬「この前と言えば、その日晴美ちゃんの弟さんが来たんだってね?」
晴美「え? あ、先週の金曜日ですよね、そうですけど…誰から?」
蒼馬「天津さんから聞いたよ。色々大変だったみたいだね」
晴美「えぇ、でも主に大変だったのは風委員会の方だったみたいですけど」
蒼馬「そうなんだ、僕もその日菫ノ宮に行ってたから…会ってみたかったなぁ」

 蒼馬はケーキを全て平らげると遊意華に一言御馳走様。
 開いた皿を脇に寄せ、紅茶を一口飲む。

晴美「あ、じゃあ今度会ってみます? あいつなら呼べば来ると思いますよ? …都合が合えば」
蒼馬「そう? じゃあお願いしようかな、紅も天津さんの話を聞いてて会ってみたいって言ってたし」
晴美「紅夜さんが?」
蒼馬「うん『内の生徒の暴走を止めてくれたのは感謝するが、流血はやりすぎだ』って一言言いたいんだってさ」
晴美「はは…言っておきます」

 軽く苦笑いの晴美。

紅夜「……」

 ガラッと、会議室のドアを開けて先ほど出ていた紅夜が戻ってくる。

蒼馬「あ、やっと戻ってきたね」
紅夜「…蒼馬、面倒な事になった」
蒼馬「え…面倒なこと?」
紅夜「あぁ…今から菫ノ宮に行かなきゃならなくなった」
遊意華「って、今からですか?」

 紅夜と蒼馬のやり取りを聞いていた遊意華が思わず声を上げる。

紅夜「あぁ、少し急ぎだ…すまないが今日はここまでだな」
蒼馬「僕も行くのかい?」
紅夜「あぁ…あの予定を組んだのはお前だからな」
蒼馬「そっか、確かにそうだね…解ったよ」

 納得したように、紅夜に頷くと、蒼馬は自分の周りを片づけ始める。
 その蒼馬に続くように、紅夜も片づけを始めた。

遊意華「あの、紅夜さん?」
紅夜「すまない花園、続きは日を改めてやるから、その冊子に目を通して置いてくれ」
遊意華「あ、はい解りました」
紅夜「…蒼馬、行くぞ」
蒼馬「解った、それじゃ晴美ちゃん弟さんによろしくね」
晴美「解りました、お疲れ様です」

 そうして二人は慌ただしく会議室を出て行った。
 残ったのは、二つのカップと二つの皿。
 片方はカップも皿も開いているが、もう片方はカップにも半分以上の紅茶が残り、皿の上にも食べかけのショートケーキ。

遊意華「結局、全部食べてくれなかったね、紅夜さん」
晴美「うん…でも仕方ないよ、忙しい人だし」

 ふぅと、晴美は小さくため息を付く。
 一応覚悟していた事ではあるが…いざとなると落ち込んでしまう。
 相変わらず厳しいというか、デリカシーがないというか。

遊意華「う〜ん、でもどうなんだろうね?」
晴美「どうって、何がどうなのユイ?」
遊意華「んとね、紅夜さんとシーくんって、性格的に合うのかなぁ〜って思って」
晴美「…どういうこと?」
遊意華「二人とも『何でも出来る』ていうのは同じだけど、どっちかというと紅夜さんて理論派じゃない? 対して、シーくんって行動派だよね?」
晴美「そうだね」
遊意華「それに、性格的にも紅夜さんとシーくんって、全然逆でしょ…大丈夫なのか〜って」
晴美「あ〜言われてみればそうかも…」
遊意華「紅夜さんは嫌われても気にしそうにないけど、シーくんはどうかなぁ」
晴美「う〜ん」

 遊意華の言葉に晴美は考える。
 あの二人を…たとえば物語の登場人物で例えると、士仙が「主役」「ヒーロー」とするなら、紅夜は「黒幕」「ラスボス」そんな感じだ。
 誰にでも優しく、社交的な士仙。
 誰にでも厳しく、一匹狼な紅夜。
 確かに、この二人は合わないのかも知れない。
 ポイントは、士仙にとって紅夜さんが尊敬できる人物かどうなのかってところかな。

遊意華「でも、シーくんに愛しの紅夜さんを品定めしてもらうのもいいのかもね?」
晴美「なっ!? なに言ってるのよユイっ!?」
遊意華「ふっふ〜ん、ちょっと楽しみになってきたなぁ〜」
晴美「ユ、ユ〜イ〜!」

 机の上を片づけていた晴美、カチャカチャと皿やカップが鳴る。

遊意華「まぁまぁ落ち着いて、早く片づけて帰ろうよ」
晴美「…そうだね、冊子も読んでおかなきゃならないし、電話もしなきゃならないし」
遊意華「だねっ」

 晴美の言葉に、遊意華はニッコリと笑顔を返す。
 そして晴美が片づけていた紅夜の食べかけのケーキを、フォークも使わずパクつく。

遊意華「うん、美味しっ!」
晴美「あっこらユイ、フォークも使わないで!」
遊意華「全然美味しいのに、紅夜さんったらもったいないなぁ〜」
晴美「ユイ…」

 パクパクと晴美の制止も聞かずケーキをパクつく遊意華。
 口の周りがクリームまみれになっているが、あまり気にしない。

晴美(まったくもぉ〜ほんと、かわいいなぁ〜ユイってば)

 どこかに飛んで行きそうな意識を自制し、晴美はポケットからハンカチを取り出すと、遊意華の口の周りを拭く。

遊意華「んにゅ」
晴美「これはあれだね、ちょっと命さんの気持ちが解ったよ」
遊意華「次こそ紅夜さんに『美味い』って言わせてやる?」
晴美「そうだね、機会があれば…かな」
遊意華「でも、紅夜さん、割と簡単に『美味い』っていうよ? ルティアさんの紅茶飲んだ時とか、光さんのクッキー食べた時とか」
晴美「いや、あれは本当に美味しいし」

 ルティアの淹れる紅茶は、多分学園内では一番美味しいし、光の料理もキャリアが違う。
 それに紅夜も、不味いという方が多いが、美味い物なら普通に美味いという。

晴美「…さて、片付けも終わったし帰ろうか?」
遊意華「うんっ!」

 元気の良い遊意華の返事。
 それを合図に二人は立ち上がる。
 戸締りを確認、異常はない。
 そうして、夕日に赤く染まった会議室を後にしたのだった。


○ 同時間・生徒会室。

蒼月「おや? 紅君と兄さんが見当たらないね?」
命「え? あの二人なら緊急だって、菫ノ宮に向かったけど…」
蒼月「へぇふぅ〜ん? それはそれは…」

 そう言って、蒼月は副会長席…紅夜の机の上の書類の山を確認する。

命「…蒼月? あの、何してるの?」
蒼月「ふふ、命君…鬼の居ぬ間にっていうじゃないか」

 ガタガタと、部屋の隅から大型シュレッダーを持ち出す蒼月。
 そして、書類の山から丁度『シュレッダーに入る分だけ』取り出す。

 そして…。

蒼月「塵は塵に…だよ」

 バリバリバリバリッ!!!!

命「っキャ―――!? ななななな何をやってるのよ蒼月っ!?」
蒼月「これのせいで僕の読書の時間が減ってしまうんだ! こんなものはこうしてしまうのが世界のためさ!!」
命「ちょっと落ち着いて蒼月っ! こんな事しても何にも解決しないわよ!?」
泉「どうしたんですか姉様っ!?」

 ドバターンッ!!
 と、命の悲鳴を聞いて駆け付けた泉が、勢いよく生徒会室のドアを吹き飛ばす。

命「い、泉ぃ〜!」
蒼月「ハハハハハハハッ!!」
泉「――っ! 会長ご乱心っ!?」

 と、その後生徒会室が阿鼻叫喚の嵐に包まれたのは――また別のお話。

-- END --------------------------

3Aさん、確かに最初はノリノリだったのに、書いてる内にやる気がなくなってくるのはよくありますね。
士仙のことですが、全然OKだと思いますよ。
むしろ紅夜より主人公っぽくていい感じです。

[99] 主観:晴美
3A - 2007年07月13日 (金) 00時22分

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- お願い -
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 あの日以来、私の教室には私を訪ねて来る人が増えた。
 その中には、今まで一度も喋った事の無い人までいた。
 結構な数の人がやってきたが、目的は全て同じだった。
 目的とは、
 『士仙』
 私の弟だ。
 細かく目的を分けると少しずつ違うが、要は
 『士仙のことが知りたい』『士仙に会いたい』
 これだ。
 あの日の事件で『男らしい』と感じてしまった人達が大勢いたわけだ。
 血まで流したのに?
 という疑問はあるが、如何せん顔はいいからそこは補ったわけだろう。
 もしくは自分の身も省みない姿、にも惹かれたのだろう。
 あ、でも1人だけ『知りたい』が異質なやつもいた。

宇美「どうやったらあいつに勝てる?」

 ・・・多分無理ですので、返答に困った私は適当に流しました。
 いや、そんなことはどうでもいい。
 最近は知りたいだけじゃなく、
 『電話番号は?』、『メアドは?』、『お住まいはどちら?』
 といった踏み込んだ質問も多かった。
 流石にその辺は教えられない。
 個人情報だし、この数ならあいつも困るだろう。
 なら1人に教えたら?
 1人に教えたらそこから広がるに違い無いし、例えその人が秘密主義でも、1人だけに教えたら不公平だろう。
 そしてそんな日々が流れていく中、私はとんでもないことを聞いてしまった。

蒼馬「そうなんだ、僕もその日菫ノ宮に行ってたから…会ってみたかったなぁ。」

 ここだけなら「さいでっか」と関西弁丸出しで流せた(失礼にもほどがあるだろうよ)。
 と、まあ冗談ですが。

晴美「あ、じゃあ今度会ってみます? あいつなら呼べば来ると思いますよ? …都合が合えば」

 こう言うのが後輩としての務め。
 冗談交じりで言った『今度会ってみます?』これがすごい展開を引き起こそうとは思いもよらなかった。

蒼馬「そう? じゃあお願いしようかな、紅も天津さんの話を聞いてて会ってみたいって言ってたし」

 ・・・はい?
 今何と?
 念のため聞きなおす。

晴美「紅夜さんが?」
蒼馬「うん」

 うん!?!?!?!?!?!?
 紅夜さんが会いたい!?!?!?!?!??!?!?
 ここまでなら私も呼びますよ。
 私の威厳にもかけて。
 んがしかーし!!

蒼馬「『内の生徒の暴走を止めてくれたのは感謝するが、流血はやりすぎだ』って一言言いたいんだってさ」

 もしかして『説教するから呼べ』と言っておられるんですか?
 そんな事言っても私の回答は1つしかありません。

晴美「はは…言っておきます」

 自分でも苦笑いだと知りながら・・・。
 でも、1度呼ぶと言った以上、ここで呼ばないわけにはいかない。
 それにここで話していた事は蒼馬さんから紅夜さんの耳に入る事は必至。
 ここは上手く誤魔化してあいつを呼ぶしかない。
 私は部屋に帰ってすぐに電話をした。
 だが、時間が早すぎたのか留守番電話になった。
 恐らく部活だろう。
 仕方がないのでメッセージを残しておいた。

晴美「あー、私だけどさ、これ聞いたらすぐに・・・って訳じゃないけど、連絡してくれ。待ってまーす。」

―――――PM8:00―――――
 電話がかかってきた。
 携帯の液晶はあいつからだと示していた。

晴美「もしもし。」
士仙「用件は?」
晴美「そんなに急がなくても。」
士仙「まだ部室だからちゃっちゃと終わらせたい。」
晴美「じゃあ―――」
士仙「あ、そういえばまたそっち行くから。」

 私の発言を遮るかのように、かつ私の思考回路の伝達を遮るかのように。

晴美「な、ななななななんでぇーーー!?!?」
士仙「そんな驚かなくても。」
晴美「なんで?」
士仙「いや、だってこの前さ金徴収するの忘れてたし。」
晴美「ああそっか、そのために来たんだったよなぁ。」
士仙「あと、この前も言ったけどクッキーの件がね。」
晴美「ユイ悲しみながら怒ってたよ。」
士仙「謝っといて。」
晴美「別にお前が謝る必要は無いんじゃない?」
士仙「なんで?」
晴美「天津会長から聞いたよ。『全部食べてしまいましたの』って。」
士仙「・・・気にしなくていいって言ったのに。・・・それで?」
晴美「それで?」
士仙「いや、ハルの用件は?」
晴美「えーとね、あんたに会いたいって人がいるからさ、会ってくれない?」
士仙「・・・却下。」
晴美「何故に!?」
士仙「会いたいって言ってる者から訪ねて来るのが道理・礼儀・常識ってもんじゃないか?」
晴美「いや、でもさ。」
士仙「家に来るのは別に拒まないから教えてやったらいい。」
晴美「じゃなくて、」
士仙「クッキーと金の件のついでっていうのも嫌だね。それとこれとは話が別だ。だいたい―――」

 プチッ
 私の堪忍袋の緒が切れた。

晴美「話聞けっつってんだろうが!!!!!!!」
士仙「耳がぁ・・・はいはい、なんでしょう?」
晴美「そんなケチケチすんなよ。それにその人は、今までみたいなお付き合いしたいとかじゃないんだよ?」
士仙「・・・。」
晴美「だからさ少しくらいいいだろ?」
士仙「・・・なんでそんなに必死なのかねぇ。」
晴美「なんでって・・・。」
士仙「差し詰め、紅夜さんかい?」
晴美「っ!!!」
士仙「当たりか・・・。」
晴美「そうそう、紅夜さんだよ。だからさ来てくんない?」
士仙「・・・。」
晴美「なぁ頼むよ・・・。」
士仙「・・・。」
晴美「お願い!!ホントに!!」
士仙「よしっ。いいだろう。」
晴美「マジ!?」
士仙「おう。」
晴美「良かった。で、いつ来れる?」
士仙「さあ、わかん・・・ちょっと待って。」

 そういうとあいつはその場にいる人(恐らく部活の先輩と思われる人)に話しかけた。

士仙「河原さん。今度の試合って何処でしたっけ?」
河原?「―――――――――――。」

 河原?さんの声は遠くにいたせいか聞こえなかった。

士仙「お待たせ。」
晴美「で、いつ?」
士仙「明後日の日曜。」
晴美「早っ!」
士仙「ちょうどそっち方面の学校で試合あるからさ、試合終わってから行くよ。」
晴美「何時ぐらい?」
士仙「突っ込んで聞くなぁ。」
晴美「準備とかあるしさぁ、優しいお姉様が道案内でもしてあげようかなと。」
士仙「詳しい時間はわからんさ。だけど、朝から試合だからだいたい昼過ぎかなと。あーあと案内はいいから。」
晴美「え!?また迷うよ?」
士仙「2度も迷わないし、1人でのんびりが好きなんだ。」
晴美「そこまで言うのなら。」
士仙「もう出なきゃいけないからまた。」
晴美「ああー!ちょっと待って!!」
士仙「何?」
晴美「あ、あの・・・今度はショートケーキも作ってきてくれる?」
士仙「え!?クッキーとショートケーキの2つ?」
晴美「無理・・・ならいいんだけど。」
士仙「・・・いいよ。作ってきてあげるよ。」
晴美「マジで!?ありがとう。じゃまた今度。」

 よし、なんとか来てくれるようになった。
 来たら修羅場かもしれないが・・・。
 もしかしたら『完全』という共通点が、磁石のS極とS極、N極とN極のように反発しあうのか?
 それとも全く逆の性格がSとNのように互いに引き合うのか?
 私には全く想像がつかなかった。

士仙「どうせ紅夜さんにショートケーキを批判されたんだろうな。まあどの部分が悪かったかはだいたい想像はつくけどね。」

 士仙がそんな独り言をいっていたなんて私は知る由もなく、日曜日を迎えることになる。

-- NEXT --------------------------

凪鳥さん、返事が遅くなりまして、申し訳ありません。
SSを以て返事をしようと書き始めたはいいんですが、またまたダラダラと作ってしまい、結局4日もかかってしまいました。
で、前回の過ちから学び、短くしようとがんばってみました。
ですが、結局ダラダラ作るのは変わらなかったわけです。

いいわけはどうでもいいとして、士仙の件ですが、
ありがとうございます。
これからもバンバン(じゃなくてちょくちょく)使わせていただきます。

[100] ぱーつー?
ラスティ・ブランフォード - 2007年07月14日 (土) 02時35分

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- 〜さくら放送局〜駆け抜ける嵐  -
-----------------------------------------


鶯「えー。今日も桜ノ宮ラジオをお伝えいたしマース。」
つづら「今日は企画主催の鶯さんと桜ノ宮の狂犬こと宇美さんに来ていただいてるの。」
宇美「顔を合わせるなり桜ノ宮の狂犬ってなんだよ、桜ノ宮の狂犬って?誰が呼んでるんだその二つ名。」
つづら「私のリサーチによれば、こーやくんとるーちゃんが手のつけられないうーの事をそう例えた事から自然と広まったらしいの。」
宇美「……うみゅんよりはマシだが、うーちゃんは止めろ。正確に宇美と言え。って言うか、るーちゃんとかこーやくんとかその独特のイントネーションは何とかならないのか?放送が聞き取りにくいと思うんだが。」
つづら「それは私の口癖だからしかたないの。」
宇美「まあ、いいけど。」
鶯「うみゅんは可愛らしい呼び方なのに。宇美は少しは可愛くしたらどうなの?」
宇美「ほっとけ。可愛いと言われるくらいなら、バイト先の客に『井戸の中で皿を数えてたら失神しそう』と評されたほうがマシだ。」
鶯「お岩さんですかwそう言われないようにするには、その昆布を頭から被ってるみたいなヘアースタイルを何とかするといいよ。」
宇美「可愛いって言われるくらいならそっちのほうがマシって言っただろー!?」
つづら「さて、前振りはこの辺にしてそろそろミュージック逝ってみるのー。」

お〜れはジャイア(ry

宇美「てめぇ、何を入れてやが(ry」

【スイッチが切られたのか、しばらく無音のまま。】











つづら「えー。ヴァンパイア・ロードと魔剣士の壮絶な死闘は光の女神によって痛みわけで終わったの。」
ルティア「……コホン。鶯さんと宇美さんに変わりまして、わたくしが代わりのゲストを務めさせていただきます。」
つづら「それにしてもすごい戦いだったの。るーちゃんはあの戦いをどう評しますの?」
ルティア「いえ、わたくしの口からはなんとも……有栖川さんにお願いしては?」
つづら「では、予定を変更して臨時ニュースをお伝えするの。みーちゃん、お願いしますの。」


有栖川「緊急ジュースです……
    <(急にタイピングさせられたから校正してないわね、コレ。冷静に乗り切らないと。)
    失礼しました、緊急ニュースです。つい先ほど放送部で乱闘が発生。
    庭瀬 鶯さんが如月 宇美さん
    <(何で如月 『光』になってるのかしら?危うくそのまま言ってしまう所でした。)」
    を挑発したことによって宇美さんが激昂。
    一発殴られた後、鶯さんが自分の血を見て暴走を始めました。
    とっさに駆けつけた如月 光さん
    <(こっちが如月 『宇美』になってる……もしかして、担当はあの姉妹の事よく知らないのかしら?)
    によって仲裁されたものの、二人は負傷。つい先ほど、光さんに付き添われて二人とも保健室に向かいました。
    以上、緊急ニュースでした。


つづら「……事務的でつまんないの。もっと躍動感あふれる表現に期待したかったの。」
ルティア「つまらないも、つまらなくないも、そういう問題では……」
つづら「さっきの戦いは下手なプロレスの試合より面白いと思ったのに……」
ルティア「……ラジオ企画の本題から離れた事を放送しても仕方ないのでは……」
つづら「本来、この後に予定していた質問コーナーは葉書がこぼれたジュースで汚れて読めなくなってしまってるの。」
ルティア「あまり汚れてない奴を取って読めば……」
つづら「……(一つ拾ってみる)駄目だったの。予想通り、泉さんの投稿でした。しかも、前回答えた質問と同じものなの。」
ルティア「ええ?」
つづら「送ったが最後、校内中に広まるからあんまり投稿してくれる人が少ないの。」
ルティア「その言い方は…」
つづら「とりあえず、今日のところはここで区切るの。では、また明日なの〜」



光「……鶯と宇美がご迷惑をおかけしました。すいません、有栖川さん。OTL」
有栖川「いえいえ、備品が壊れなかったので気にしないでいいですよ。」

つづら「うぐちゃんが面白がるのもいけないけど、うーちゃんももう少し抑えてほしいの…」
ルティア「たまたま通りがかったというだけで急遽ゲストの代役に立てられた割には、あまり意味が無かったのはわたくしの気のせいではありませんわよね?」
つづら「突っ込み役がいないと、DJは勤まらないの。DJはボケ役というのが相場なの。」
ルティア「……そんな理由で。 ああ、お腹が痛い……」

--END--------------------------


あ、あはははははっは(汗
なんだろう、どうだろう?

桜ラジオのネタをお借りしてみた割には……
パート2の予定は立ってますが、何時投稿できることやら。

[102] …どっちかと言うと投稿するのは普通科の方がいい気がしないでもない。
ラスティ・ブランフォード - 2007年07月15日 (日) 17時29分

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- 〜さくら放送局〜 お茶一杯  -
-----------------------------------------
つづら「さあ、今日もやってきましたラジヲの時間。本日のゲストは、普通科副会長の如月光さんなの。」
光「えっと…よろしくお願いします。」(ガチガチ
つづら「そんなに緊張しなくていいの。自然に振舞えばいいの。」
光「そ、そうですね。でもなんだか恥ずかしいし怖いし……」
つづら「慣れればなんて事はないの。ではさっそくさくら放送はじめるの。ミュージックスタートなの。」

いま〜わたしの〜ねがーいごとが〜かなーうな〜らば〜つばさが〜ほし〜い……

つづら「今日のミュージックは、小学校の時に皆が一度は歌ったことがあると思われる、『翼をください』なの。」
光「小学校といえば、他にも『手のひらを太陽に』とかも良く歌いますよね。」
つづら「ちなみに今日の曲は、うーちゃんお勧めらしいの。」
光「宇美に勧められたって?」
つづら「うーちゃん、最近色々と疲れてるみたいだから、いっその事鳥になってどこかに飛んで行きたいのかもしれないの。」
光「あ、あははは。飛んで行かない、飛んで行かない。」
つづら「さて、そろそろ質問コーナー:おねがい☆DJなの。本日の質問は収穫が一杯なの。」
光「質問箱から溢れているほどですね。」
つづら「質問はひかりさんにとってもらうの。どれでも好きなのとってバンバン答えるの。」
光「じゃあ、まずはこれ……『好きな人がいます。だけど、なかなか告白する勇気も出ませんし、何より学園内に2人しかいない男子の一人ですのでライバルも多そうです。どうすれば好きな人に振り向いてもらえますか?』……。」
つづら「これじゃ答えようが無いの。こーやくんなのか、うまくんなのかでアドバイスが違ってくるの。」
光「……どっちにしても、紅夜さんも蒼馬さんもこの放送聴いてるわけだし、ここでアドバイスしたとおりに近づいたらちょっと退かれちゃうと思うけど……。」
つづら「これは意外な盲点だったの。アドバイスをしたらあの二人に余計に近づけなくなちゃうの。」

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

蒼月「残念。ここでのアドバイスを実践してみようと思ったのに。」
紅夜「……止めてくれ。」
蒼馬「やめなよ、蒼……なんか、黒い怨念っぽいものをどこと無く感じるよ。」
蒼月「さっきの質問が僕の紅君に対するものかもしれないのを思えば、嫉妬やジェラシーの一つも感じるさ。」
紅夜「……俺はお前のものじゃない。って言うか、引っ付いてくるな、邪魔だ。」
蒼月「ふふふ。」

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

光「でも、あえてアドバイスをするなら、その好きな人に普通に話かけられる?
コミュニケーションによって相手に自分を知ってもらう第一歩よ。
妙に意識したりせず、出来るだけ自然体で話せるように努力すること。
相手の言ってる事に聞きかじりで口を挟んだり、好きな人の言ってる事に全面的に同意したりしないように。
変に背伸びして自分を高く見せても長続きしないし、やっぱり最終的には素の魅力で引き寄せるのが恋愛と言うものです。」
つづら「実際に彼氏持ちが言うと説得力が感じられる気がするの。」
光「心と心で触れ合って、それを互いに受け入れられないと結ばれるのは難しいんですけどね。」
つづら「そういえば光さんの仲はどこまで行ってるの?」
光「えっ!?」
つづら「色々と噂になってるけど、光さんは全てを終わらせて後は結婚するのみとか聞いてるの。」
光「いえ、そんなのは、噂にしてもちょっと!?」
つづら「そうやってごまかそうとしてるけど、真実はどうなの?」
光「……いえ、そんな誤魔化すだなんて。人の恋愛事にはあまり首を突っ込むものではありませんよ。」
つづら「アッチのほうは突っ込まれたの?」
光「…………!?ちょ、ちょっと公共の電波に乗せるにはそう言う話は少し下世話すぎはしませんか!?」
つづら「それもそうなの。この話はもう終わりなの。」

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

教室にいた宇美にクラス中の視線が集まる。

宇美「皆して俺を見るな!?確かに姉さんには彼氏がいるが、あの姉さんは婚前に操を捧げるような真似はしないし、相手も生真面目な奴だから変な意味では間違いはない筈だぞ?
私の義理の兄さんになる人なんだから!?」
遊意華「義理の兄さんって、もうそこまで関係が進んじゃってるの!?」
晴美「操なんて単語が出る辺り、本当に行くとこまで行ってる感じだな……。私もいずれはそんな仲に(ry」(半分妄想モード突入
宇美「いや、そうじゃなくて……うわわーっ!?」

クラス中が問い詰めたい雰囲気をかもし出してきたので、
だんだんパニックを起こし始めた宇美は逃げ出した。

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

つづら「えーと、この後はコマーシャルタイムなの。」
光「……ふう。」




から揚げ・トンカツ・ステーキ。
三種類のお肉を厳選して作った購買部のお弁当は、
皆さんにより満足して欲しいと想い、このたび大増量しちゃいます。
これまでの1・5倍にお肉もご飯も増えて、値段は変わらず500円。
これからも購買部のお弁当を皆食べにきてね〜




つづら「以前のお弁当食べたけど、量が少なくて不満だったの。今回増えたことはいい事なの。」
光「そうね。今は若いんだし、出来るだけ食べたほうがいいと思うしね。」
つづら「ひかりさんは自分でお弁当作ったりしてるけど、一度は購買部のお弁当も食べてみるといいの。」
光「ん〜。明日にでも購入して食べてみます。」
つづら「購買部のお弁当は量はともかく、味は一品なの。
……そろそろ放送の終わりの時間が近づいてきたの。」
光「あ、本当ね。もうこんな時間。」
つづら「最初ガチガチだった割には、ひかりさん意外とすぐ順応したの。ラジオ放送は楽しかったの?」
光「そう、ですね。」
つづら「ところで、やっぱりさっきの話の本当の事が効きたいの。」
光「あんまり冷やかしにくるようだと、私も堪忍袋の緒が切れてしまいますよ?」
つづら「こ、怖いの…」
光「えーっと、あ、ごめんなさい。」
つづら「とりあえず、ラジオ終了なの。ゲストのひかりさん、お別れの挨拶よろしくなの。」
光「それでは、本日はありがとうございました〜。」
つづら「では、また来週なの〜」


-- END or NEXT --------------------------

光の彼氏、と言う単語がポツポツ出てますけど実家のほうにいて、遠距離恋愛中と言うこと以外はあんまり深く考えておりませんw
ただ話のネタにはなるのでポソっとね。

[104]
凪鳥 - 2007年07月16日 (月) 03時54分

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- お灸の話 -
-----------------------------------------

○生徒会室

蒼月「めそめそめそめ……」
蒼馬「まったく、今回は本当に蒼が悪いよ?」

 ガラリと、ドアを開け命が生徒会室に入ってくる。
 入るなり命は、両目からボロボロと涙を流す蒼月に驚く。

命「ど、どうしちゃったの蒼月!? 何で泣いてるの?」
蒼馬「あ、命さん…これはその、書類のことでね…」
命「書類のこと?」

 言って、命は記憶を探る。
 それは昨日…蒼月が乱心して…紅夜の机…シュレッダーに…大変な事が…。

命「あっ…もしかして、昨日のこと?」
蒼馬「うん…それでね、さっき紅が…」

………。
……。
…。

紅夜『蒼月…俺は今日ほどお前を馬鹿だと思った事はない…』
蒼月『いやこれはね…その、なんというか…』
紅夜『……はぁ』

 深く深くため息をつくと、紅夜は腕章――生徒会の役員である証、を外した。
 そしてそれを大量に書類のつまさった副会長用デスクの上に置く。

蒼月『…あれ? 紅…君?』
紅夜『……新しい副会長を探すよう、理事長に話してくる』
蒼月『へ? 何を言ってるんだい、副会長は紅君がいれば十分だろう?』
紅夜『…俺は辞める、もうお前のお守は沢山だ』
蒼月『――え?』
蒼馬『って、何言ってるんだよ紅!』
紅夜『……』

 言葉を返さず、紅夜は踵を返すと、ドアを開けて生徒会室へ出る。
 その紅夜を蒼月と蒼馬は慌てて追った。
 が、追ってきた二人…主に蒼月を視線で黙らせると、廊下の闇へと――消えた。

………。
……。
…。

蒼馬「とまぁ、そんな感じでね」
命「そんな…紅夜、本当に辞めちゃったの?」
蒼馬「う〜ん、どうかなぁ…多分それはないとは思うんだけど…」
命「って、紅夜がいないと今日の仕事が…」
蒼馬「そうなんだよ…困ったね、一応紅からは『後で説明する』ってメールは来てるけど…」
命「あ、本当だ…後蒼月には知らせないようにって書いてあるわね…」

蒼月「めそめそめそめそ……」

○風紀委員室

ルティア「そうですか、そんな事が…まぁ、蒼月さんの自業自得と言えばそれまでですが…」
紅夜「…あぁ、少し灸を据えてやらないとな」
ルティア「そういう事でしたら、協力いたしますわ」
紅夜「あぁ、頼む」
ルティア「では、今日からしばらく綾河さんは風紀委員の一員、という事で」

 そう言って、ルティアは集まっていた風紀委員に向かって言う。

ルティア「皆さん、これも学園の為! しばらくそういう事でよろしくお願いいたしますわ」
紅夜「…よろしく頼む」

風紀委員一同「はーい!」
泉&宇美「ッ!?」

――まずは、それだけの話。

-- END --------------------------

シュレッダー事件の結末。
ついでに、荒れ狂う風紀委員会の査察に出る副会長の話。
続きは考えて、ない。

3Aさん、バンバン出しちゃってください。
何気にラジオがいい感じに盛り上がってますね。
次のゲストが楽しみなところです。


[110] たまには…ねw 実はネガティブだった宇美の設定の一端と共に。
ラスティ・ブランフォード - 2007年07月24日 (火) 22時51分

-------------------------------
- 嘆きの会長の末路 -
-------------------------------

紅夜の風紀委員会の査察が終わり、生徒会に戻った後日の事……。

蒼月「ねえ、紅君。もう僕疲れたよ。」

疲れを訴える生徒会長。副会長の紅夜が仕事の進み具合を見てこう言う。

紅夜「…だめだ、残り4分の1なんだから頑張れ。」
蒼月「どうしても駄目?」
紅夜「当たり前だ。今日中に終わらせないと、明日の先生方の朝一の会議に間に合わないからな。」
蒼月「ぶーw」

ふてた顔をする蒼月。だが、それに対して紅夜は一段を顔を渋くし。

紅夜「そんなことを言ってると…」
蒼馬「宇美ちゃんに言いつけるぞ♪ってね。」

横から蒼馬が口を出して、紅夜が言おうとした一言を奪う。
とある人物の名前を出された蒼月は…

蒼月「ひぃ、それだけは勘弁!」

途端に態度を変えて真面目に作業を続け始めた。

紅夜「……やれやれ。」
蒼馬「よっぽど宇美ちゃんが怖いんだね。」


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


話は少し遡る。


蒼月「しくしくしくし…」
蒼馬「何時まで泣いてるのさ、蒼…」
命「紅夜もいないし、これじゃ生徒会が運営できないよ……」

ガラッ!

突然、扉が開く。やってきたのは、普段はこの生徒会室に近寄ろうともしない人だった。

蒼馬「あ、いらっしゃい。」
宇美「……。」

如月 宇美。風紀委員の過激派代表・桜ノ宮の狂犬・弱小剣道部のエースなどと色々な異名を持つ一年生だ。
入ってくるなり、じっくり蒼月を睨みつける。

宇美「……泣くなとは言わないが、何時まで無いてる気だよお前。」

出会いがしらに辛らつな物言い。怒りの青筋がピクピクと宇美の額で動いていた。

命「そうは言っても……」
宇美「そうは言っても?なんだ?」
命「ひっ!?」

何とか擁護しようと思って口を開いたものの、プレッシャーだけで命は言葉の続きを失った。

宇美「風紀委員会に綾河の野郎がしばらく参加するってよ。居心地が悪いったらありゃしない。」
蒼月「しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしくし…………」

……心なしか、蒼月が一段と泣き始めたように感じる。
その態度を見た宇美がプチンと切れる。

宇美「テメーは泣くことしか出来ねーのか、この無能!ちったぁ生徒会長らしくしやがれ、この馬鹿が!そんなんだから逃げられるんだろうが!」

そこまで言って、一発蒼月の頭をぶん殴る宇美。

蒼月「何するんだよ、勝手なことばっかり言ってさ!」
宇美「お前自体が好き勝手やりすぎだろが、ルティア会長が必死で作った書類をシュレッダーでバラバラにしちまうとか!もう一発殴られたいか!?」
蒼馬「やめて!」
命「宇美さん、暴力はいけないよ!」

宇美「んな事はわかってる!だけど、こいつの女の腐った気質が俺にはたまらなく簡便ならないんだよ!大体な、惚れた男に逃げられたとか惚れてる男がこっち向いてくれないなんていうのは自分がそれだけの魅力がねーってのがわかんねーのか!?」

蒼月・蒼馬・命「!?」

男嫌いの宇美から意外な言葉が出て、驚く生徒会の3人。

宇美「ん?なんだよ、男嫌いな俺から、こう言う言葉が出て意外か?……まあ、姉さんとその彼氏を見てて分かったんだよ。昔は引き裂く気満々だったけどな。」

そういって、語りを続ける。

宇美「昔は、姉さんに自分だけを見ていて欲しかったんだ。だけどな、ある時気がついたんだ。姉さんの表情が私を見てるときとまったく違う笑顔を見せる相手がいる事に。それに気づいた俺は荒れた。でも……その結果を知って、最後は泣いたよ。どんなにやっても、あの二人は引き裂けない。いや、俺が荒れたからこそ、逆に何とかしようと姉さんが彼氏を頼るようになっていったんだ。

……そこで初めて分かったよ。誰かに自分だけを見ていて欲しいってのは傲慢だって。
誰かに見て欲しいなら、自分から近づいていく。
誰かに近づかれたいなら、その人が持っていない物を自分が身につける。

……好きな人が持ってきてくれる・好きな人ならこれくらいはしてくれて当たり前って考えは傲慢さ。」

蒼月・蒼馬・命「……。」

意外と、現実を知っている宇美に、生徒会の3人は三者三様の感想を思う。

宇美「分かったな、柊会長。自分に足りてなかったものが。」

蒼月「……そうだね。」

気がつけば、涙は止んでいた。

宇美「よし、私が副会長代理やってやるからしっかり仕事しろよ?」

蒼月「えっ!?」
命「ちょっと?」
蒼馬「それ、紅夜の指示?」

意外な発言に戸惑う生徒会3人組。

宇美「俺の独断に決まってるだろ?ほらほら、たっぷりしごいてやるから仕事しやがれぇ!でないと、何時までも風紀委員に綾川の奴が居座りやがるか分かったもんじゃねぇ!ほらほら、さっさとやるぞぉ!」

蒼月「何で君がっ?」
宇美「問答無用!」

バチーン! 

竹刀で一発たたかれた。







紅夜「すっかり遅くなっちまったな…」

風紀の方での案件もまとまり、一応明日以降の副会長の代行は光に任せるという事で話はつけてきたが、あのまま生徒会室から出てこない3人が何をしているのか気になって戻ってきた頃には日が暮れていた。

:これ以上はシャレ抜きで骨が折れるって!
:骨折られる前にさっさと終わらせろ!

バチーン!

:ぎゃあー!!

紅夜「……?」

何の音だ?それにさっきのは蒼月の悲鳴……
慌てて部屋に入って、全てを理解した。

蒼月「あ、紅君助けてぇ!」
宇美「助けてーじゃないだろが!さっさと今日の分くらい終わらせろ!」

バチーン

蒼月「ひぎゃー!?」

まったくもって、こういう事か。

紅夜「様子を見に来て見たが…」

……奴には、これくらいきついお灸が必要なのかもしれないな。
宇美に竹刀でたたかれながら、蒼月は必死に今日の残りの仕事(シュレッダーで切られた書類をセロテープで止めたもの)と格闘していた。

紅夜「ここは、奴に任せておいたほうが十分だろう。如月、後は任せたぞ。」

その言葉を聴いて、絶望に落ちる蒼月と表情をきつくする宇美。

宇美「さあ、副会長さんの許可もでたところで続けるぞ。徹夜してでもな。」
蒼月「うわーん!」
命「……助けてあげられないかな?」
蒼馬「僕らも、どうすることも出来ないよ。仕事サボってたのは蒼だし。」
蒼月「薄情ものー」
宇美「さらに一発浴びたくないなら、無駄口叩くな!」

バチーン

蒼月「ほんぎゃー!!!」




ちゃんちゃんw

-- END or NEXT? --------------------------

宇美が色んな人に負け気味なのでたまには誰かに勝つストーリーでも、と思いまして。
でも、概念的に考えると

宇美>蒼月>紅夜>宇美

の三竦みになってる気がするんですよねぇ。蒼月の代わりに晴美でも有りなのか?

[114] 主観:なし
3A - 2007年08月03日 (金) 19時29分

-----------------------------------------
- 人中之竜・壱 -
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――――――駅――――――

士仙「・・・流石に試合後ってのは間違えたかな?」

 駅に降り立ってそうつぶやいた。
 彼の右側には大きなボストンバッグ。
 彼の左側にはこれまた大きめのクーラーボックス。
 そして、そのクーラーボックスを見て一言。

士仙「崩れてねえかな。」

 そう言うと彼は歩き出した。


――――――桜ノ宮学園・美術科総括会室――――――

晴美「ああああああああどどどどどうしよう〜。ユイ〜。」
遊意華「も〜〜朝からずーっとその調子だけど何かあるの?」
晴美「ああああああああああ〜〜〜。」
遊意華「答えてよ〜。なんかその様子面白いけどさぁ。」

 コンコン。

 誰かがノックをした。

遊意華「ど〜ぞ〜。」

 ガラガラ。

 入ってきたのは蒼馬だった。

蒼馬「おじゃましま〜す。」
遊意華「あ、蒼馬さん。ほらハル、蒼馬さんが来たよ。」
晴美「ここここんにちわ。」
蒼馬「!?こ、こんにちわ。」

 晴美の様子がおかしいことに疑問を抱いた蒼馬は、遊意華に理由を聞いた。

蒼馬(ねぇ遊意華ちゃん。)
遊意華(はい?)
蒼馬(晴美ちゃんどうしたの?)
遊意華(それがわからないんですよ。朝からこの調子で、確か―――)


――――――朝・遊意華と晴美の部屋――――――

晴美「うわああああああああああああ。」
遊意華「な、なに!?」

 ぐっすり眠っていた遊意華が文字通り飛び起きた。
 そして、遊意華はカレンダーを見て固まっている晴美に質問をされる。

晴美「きょ、今日って日曜?」
遊意華「う〜ん・・・そうそう日曜日。授業が休みの日曜日〜♪」
晴美「ううううううう嘘だ嘘だ嘘だ・・・ブツブツ。」


――――――桜ノ宮学園・美術科総括会室――――――

遊意華(ってゆう感じだったんです。)
蒼馬(へぇ〜。)
遊意華(折角の日曜日なのに早起きしちゃってなんか損した気分ですよ。)
蒼馬(気持ち分かるなぁ〜。)
遊意華(だからってわけじゃないですけど、この前紅夜さんに直された冊子の内容を確認使用かな〜って思ったんです。)
蒼馬(『早起きは三文の得』ってとこだね。)
遊意華(それよりもそれよりも、今日何かありましたっけ?)
蒼馬(今日?晴美ちゃんの弟さんが来るんじゃないの?僕その事でここに来たんだけど。)
遊意華「ああー!!それか!!!!!」
蒼馬「それがどうしたの?」
遊意華「多分ハルは、紅夜さんとシーくんの事が気になってるんだと思います。半分妄想交じりで・・・。」
蒼馬「も、妄想?」

 蒼馬の声が裏返った。

遊意華「そう妄想・・・ってのは冗談ですよ。」
蒼馬「そ、そうだよね。そうだよね。」
遊意華「あは、あは、あはははは。」
蒼馬「それはそうと、どこの部屋を使う?」
遊意華「あっそうですよね〜。ねぇハルどこがいいかな?」
晴美「ブツブツ・・・・・・・・・・・・。」
遊意華&蒼馬「・・・。」
遊意華「あっ紅夜さんじゃないですか。」

 ガタガタッ!!

晴美「えっえっ?どーもおはこんばんちわ。」
遊意華&蒼馬(単純すぎるだろ。しかも、おはこんばんちわ・・・って。)
晴美「・・・・・・・・・・・・あれ?」
遊意華&蒼馬「戻った。」
晴美「蒼馬さんじゃないですか、こんにちわ。」
遊意華&蒼馬(何を今更・・・。)
晴美「はー・・・。」

 大きな溜め息一つ。

遊意華「今日のシーくんと紅夜さんとの会合はどこの部屋でする?」
晴美「ここは・・・ちょっと散らかってるか。」
蒼馬「うちは今日は紅が蒼に仕事させるから無理だってさ。」
遊意華「あ、じゃあ私達の部屋なんてどうですか?」
蒼馬「どんな理由でも男子が女子の部屋に入るのは駄目だと思うよ。逆も同じだよ。」
遊意華「そっかぁ。」
晴美「うーん。」
蒼馬「弱ったなぁ。」

 ガラガラッ。

 勢いよく扉が開いた。
 それと同時に。

ルティア「失礼しますわ。」
蒼馬「天津さん。」
遊意華「こんにちわ。」
晴美「何か御用ですか?」
ルティア「今日士仙君がいらっしゃるそうじゃないですか。」
晴美「そうですがそれが?」
ルティア「場所は決まったんですか?綾河さんとの会合場所は?」
蒼馬「それを今話し合っていたんだけど、どこも空いてなくて。」
ルティア「でしたら風紀委員会室をお使いください。」

 3人とも予想だにしなかった言葉にびっくりしたようだった。

晴美「それは助かります。ありがとうございます。」
ルティア「私もしっかりと彼にお礼が言いたいので私も参加させていただけます?」
蒼馬「いいと思うよ。」
遊意華「賛成賛成。」

 その時晴美は気付いた。
 何も2人きりにする必要はないんだと。
 士仙を混ぜてお喋りをすればいいだけなんだと。

晴美「あ、じゃあ会場のセッティングしましょうか?」
遊意華「賛成賛成。」
ルティア「机を並べたりするだけですけど、お願いしますわ。」
蒼馬「じゃあ飲み物とお菓子なんかも用意しなきゃね。」
ルティア「飲み物はお任せください。腕によりをかけて紅茶を淹れさせて頂きます。」

 晴美は紅茶という言葉を聞いて反応した。

晴美「あのー・・・。」

 しかし、ルティアはそれを遮るかのように、

ルティア「それとコーヒーも1つ淹れますわ。」
晴美「へ?」
ルティア「士仙君、紅茶苦手なんですよね。」
晴美「なんで知ってるんですか?」
ルティア「この前彼から聞きましたわ。」
晴美「あ、そうですか。」
遊意華「シーくんって、確か紅茶とマヨネーズが嫌いなんだよね?」
晴美「そうそう私とは正反対。私の嫌いなナスと姉さんが嫌いな納豆が大好物だしなぁ。」
遊意華「3つ子なのにねぇ。」
晴美「共通してるのは味噌汁、トマト、牛乳が皆好きってとこかな。」
蒼馬「へぇ〜。」
遊意華「あ、牛乳なんかすごいですよ。小学校の時にハルの家に泊まった時、
    3人で朝だけで牛乳1本、2本は空けますよ。」
ルティア「朝だけでですか?」
晴美「そうです。調子いい時は朝だけで1人1本空けてましたよ。」
遊意華「今なんか通常で1本空けるよねぇ。」
晴美「あ、あれでも遠慮はしてるぞ。」
蒼馬&ルティア「・・・。」

 蒼馬とルティアは『考えられない』といった目で見ていた。
 ルティアは我にかえった。

ルティア「それよりも準備をしましょう。」
蒼馬「そうだね。僕は紅に伝えてくるよ。」
晴美「じゃあ私は・・・。」
遊意華「私達はルティアさんのお手伝いしようよ。」
晴美「そうだね。」
ルティア「じゃあついてきてください。」
晴美「はい。」
遊意華「はぁ〜い。」

 廊下の隅である人がこの話を聞いていたが、誰も気付かなかった。

鶯「晴美さんの弟君かぁ〜。あの噂のねぇ。・・・いいこと思いついた。」

 廊下の隅でニヤッと笑った者がいたが誰も気付かなかった。


――――――公園――――――

 ベンチに腰掛けて休んでいる大柄な男がいた。

士仙(さすがに重いししんどいなぁ。こりゃミスったな。)
  「は〜。」

 溜め息を一つ。
 そんな彼の前に、

士仙「ん?」
猫「にゃ〜。」
士仙「猫か・・・。」

 その猫の名前はエスカリオーネ。
 この辺一帯のボス猫である。
 紅夜には決して自ら近寄る事の無いエスカが、士仙には自ら歩み寄ってくる。
 士仙は結構動物に好かれるタイプではある。
 そして、彼自身も動物が好きである。
 猫がどこをどうすれば気持ちよくなるのかぐらいは経験から知っている。
 士仙は自分の膝にエスカを乗せ、顎の部分を撫でる。

エスカ「にゃぁ〜。」

 とても気持ちよさそうだ。
 士仙も心が和むのか自然と微笑んでいた。
 そして癒されたようだ。
 士仙は気持ちよさそうなエスカを地面に下ろし、自分も荷物を持ってまた歩を進める。
 エスカもそれの後ろについていく。
 士仙は公園の出口で振り返り、そこから3mほど離れたエスカに向かって、

士仙「ここまででいいよ、サンキュ。」
エスカ「にゃあ。」

 そこからエスカはついてこなかった。


――――――桜ノ宮学園・放送部室――――――

鶯「・・・ということで、確認ね。」
つづら「私がカメラなの。」
瑞樹「私がここで振りを。」
鶯「それで私がレポート。わかったわね?じゃ行動開始。」
つづら「ラジャーなの。」
瑞樹「わかりました。」
つづら「そこはラジャーなの。」
瑞樹「は?」
つづら「『は?』じゃないの。ラジャーなの。」
瑞樹「ラ、ラジャー。」

 バタンッ。

 怪しい3人組が怪しい行動をとる。


――――――桜ノ宮学園・総括生徒会室――――――

 ガラガラッ。

蒼馬「ねぇ紅。」

 蒼馬は副会長席で冊子に目をやる紅夜に話しかけた。

紅夜「何だ?」

 紅夜は目を冊子に向けたまま言葉を返した。

蒼馬「今日の晴美ちゃんの弟さんとのやつね、風紀委員会室でやるから。」
紅夜「わかった。」
蒼月「風紀委員ってことは天津君の力添えだね?」
紅夜「お前は喋らずに仕事をしろ。」
蒼馬「そ、それでね晴美ちゃん、遊意華ちゃん、天津さんも参加するってさ。」
紅夜「わかった。」
蒼月「僕も参加するよ?」
紅夜「そういうセリフはその書類を全て片付けてから言え。」

 会長席の机に山積みにされている書類を指差して言った。

蒼月「酷いよ紅君。僕だって晴美君の弟君に会ってみたいのに。」
紅夜「却下。」
蒼馬「蒼、それを片付けたら来れるって事だよ?」
蒼月「紅君も兄さんも手伝ってくれないのかい?僕がいないと寂しくならないかい?」
紅夜「ならん。それにそれらは会長の仕事『のみ』だ。副会長と会計が関与するところは全て終えてある。」
蒼馬「残念だけどこればかりはどうも・・・。」
蒼月「ううう・・・。」
蒼馬「じゃあ弟さんが来たらまた伝えに来る―――。」

 蒼馬が言い終わる前にある音が流れた。

 ピンポンパンポン〜♪

 放送だった。

瑞樹「みなさん、臨時ニュースです。」
蒼馬「なんだろう?」
瑞樹「えー先々週の金曜日、ここ桜ノ宮に現れた美術科1年楠葉晴美さんの弟である楠葉士仙さんが、
   間もなく来校するとの情報を我々放送部がキャッチしました。」
蒼馬「た、大変だ!これを聞いたらうちの生徒が集まってくる。」
紅夜「蒼馬。」
蒼馬「何?」
紅夜「急いで玄関まで迎えに行ってくれ。俺は先に行ってる。」
蒼馬「わ、わかった。」
蒼月「僕も行こう。」
紅夜「お前はここで仕事してろ。」
蒼月「うう・・・。」
紅夜「それと、監視役はつけるからな。」
蒼月「監視役?」

 ガラガラッ。

宇美「・・・。」
紅夜「頼んだ。」
宇美「天津会長に頼まれたから来ただけだ。勘違いするんじゃねえぞ。」
紅夜「・・・。」

 紅夜は入れ違いで出ていった。
 蒼月は宇美を見て口をパクパクさせている。

宇美「骨折られたくなかったらさっさとやりな。」
蒼月「あ、あんまりだよ、紅君。」
宇美「返事は!?」

 バチーン!

 竹刀で思い切り床を叩く。

蒼月「ひ、ひぃ!はい。」


――――――桜ノ宮学園・玄関――――――

士仙(・・・なんだこの騒ぎっぷりは?)
生徒一同「キャーキャー。」

 と不思議がっているところに、

鶯「こちら現場の庭瀬です。この歓声を聞いて頂けるとわかるように楠葉士仙さんが見えます。」
瑞樹「インタビューできますか?」
鶯「突撃インタビューですね?これを待ってました。」
つづら「でもみんなの壁が・・・。」
鶯「そんなことで挫けちゃ1人前にはなれないぞ。」
つづら「すごい意気込みなの。」
鶯「今だ!突撃ぃ!!」

 鶯は突撃により、生徒の壁を打ち破って呆然としている士仙の前に立った。

鶯「こんちは!」
士仙「あ、どうも。」
鶯「3年の庭瀬鶯です。鶯って呼んでね。」
士仙「楠葉士仙です。」
鶯「いやぁ〜大きいんですね。」
士仙「ありがとうございます。」
鶯「身長と体重、それと体脂肪率はどれくらいですか?」
士仙「183cm 83kg 体脂肪率6.2%です。」

 つづらがやっと追いつき、鶯がインタビューしているところをカメラで写す。
 カメラといっても写メだが・・・。

鶯「私ぐらいならお姫様だっこできるんじゃないですか?」
士仙「たぶんそうですね。」
鶯「やってくださいますか?」
士仙「荷物置けばね。」

 そう言って士仙はその場に荷物を置いた。

鶯「ではお願いします。」
士仙「よっ。」

 士仙は軽々と鶯を持ち上げた。
 その瞬間、「うらやましい」「ずるい」「いいなぁ〜」が聞こえた。

鶯「あ、もういいですよ。」
士仙「よっ。」

 鶯は再び地に足をつけた。

蒼馬「ちょっとごめーん。」

 壁の間をつっかえながらもすり抜けてくる男子生徒の姿を士仙は目にした。

蒼馬「はぁはぁ、やっとついた。」
士仙「柊・・・蒼馬さん?」
蒼馬「あれ?何で知ってるんですか?」
士仙「2人しかいない男子生徒で、姉から綾河紅夜さんは長身だと伺ってましたので。」
蒼馬「そ、そうなんだ。」
鶯「おお〜っと、有栖川さん?」
瑞樹「どうしましたか?」
鶯「ここで生徒会の会計・柊蒼馬さんも登場しましたよ。」
つづら「みんな興奮しまくりなの。」

 つづらは蒼馬と士仙のツーショットも携帯で撮った。
 まわりにいる生徒達もこのツーショットを写した。

士仙「ところで。」
蒼馬「ああそうだね、ここ抜けなきゃね。」
士仙「何か案は?」
蒼馬「・・・ない。」
士仙「どちらに行けばいいですか?」
蒼馬「えっと、そこの廊下を左だけど?」
士仙「強行突破しますよ。」
蒼馬「え?強行突破って・・・う、うわあ。」

 士仙はボストンバッグを左に。
 そしてクーラーボックスを持たせた蒼馬を右肩に担いで言った。

士仙「それ、できるだけ揺らさないで下さいね。あとナビゲートもお願いしますよ?」
蒼馬「え、あ、うん。わかった・・・うわああああ!」

 士仙は壁のちょっとした隙間に体をねじ込んでいった。
 するとその迫力のせいか徐々に自然と道ができていった。

士仙(あとは一気に駆け抜ける。)

 廊下を左に曲がった。

士仙「蒼馬さん、次は?」
蒼馬「んと、その階段上って・・・。」

 少なくとも50kgはある蒼馬と、
 見た感じ『ずっしり』という単語が似合いそうなバッグを持っているにもかかわらず、
 何故彼は階段を3つもとばして走れるのだろうか。

士仙「次は?」
蒼馬「そっちに曲がって・・・。」
士仙「次は?」
蒼馬「そこを真っ直ぐ行って、奥から2番目の部屋・・・あ、そこそこ。」

 士仙は風紀委員会室を目の前にして息を整えた。
 その間に蒼馬は思った。

蒼馬(僕が普通の状態でここまで走るよりも早いんじゃないかな?・・・ていうか、)
  「そろそろ下ろしてくれない?」
士仙「あ、すいません。走るのに夢中で。先にクーラーボックスを。」

 そういうと左手に持っていたボストンバッグを床に下ろし、
 空いた左手でクーラーボックスを受け取り、そのまま床に下ろした。
 最後に蒼馬も床に下ろした。
 そして、遠くの方でドタドタと足音が聞こえていた。
 恐らくさっき玄関にいた人たちだろうということで解釈しておいた。
 ということは、ここまでやってくる可能性が高い。
 そう思った2人は直ぐに中に入る準備をした。
 そして、蒼馬が扉を開けた。

 ガラガラッ。

-- NEXT --------------------------

一気に投稿するのは時間がかかって無理と判断しまして、
いくつかに分けてみようと思って『壱』としました。
これが弐で終わるのか参まで伸びるのかは今のところ不明です。
士仙にやらせたい事はあるんですが、「これは流石に・・・」
と思うシナリオが1つあるので、それを省けば弐。
長くても参までですね。
これを入れると四までいくかも知れないですね。
夏休み中にできるかどうかも不明ですね。

凪鳥さん、またまた返事がかなり遅くなってすいません。
お言葉に甘えて使おうとは思うんですが、こいつばっかり使うのもさすがにあれなんで、
ちょくちょく出演させていただきます。

そういえば来週から合宿なんで夏休み中の完結できる可能性が
            1
            %
            未
            満
になってしまったというのはもの凄い信じといてください。

次回予告
  人中之竜がここに相対する。
  紅夜を目の前にした士仙の印象は、
  士仙を目の前にした紅夜の反応は、
  晴美の心配は的中するのか、
  はたまた杞憂で終わるのか、
  そして鶯率いるラジオ軍団は会合をとれるのか、
  そしてそして蒼月は生きて生徒会室を出られるのか、、、
  ではなくて、仕事を終えて会合に参加できるのか、
  次回、人中之竜・弐


        いつできるかもわからないので、
                全くご期待しないで下さい。

[119] ミクトの一日
ラスティ・ブランフォード - 2007年08月11日 (土) 22時26分


---------------------------------------
- 貢永の月曜日 -
---------------------------------------

*月*日 月曜日

6:00
起床。服を着替えていて気づく。
……体操着を洗濯に出したままだった事に。
慌てて携帯で電話をかける。

6:45
校門で待ち合わせ。
狼輝「持ってきたよ。」
貢永「洗ってある?」
狼輝「……貢永。頼むから下着まで洗濯任せないでくれ。年頃の娘の下着洗うのは結構勇気がいるぞ。……世間体ってものを考えてくれ。」
……ちょっぴり怒られたが、変わらずに洗濯は任せると思う。

12:30
授業は指名されることも無く、レポート提出の類も無く平凡と過ぎた。
……昼休みは命さんと談笑していたが、泉との睨み合いに突入して残りの時間は潰れた。
今日の昼食はチーズバーガーだった。

15:50
やはり平凡に授業が過ぎる。
生徒会室で泉さんがこないか監視しつつ、生徒会の雑用をしながら紅夜さんたちと談笑。
なぜか蒼月さんはこっちをちょくちょく気にしていた。宇美を何時呼ばれるかと気が気でないらしい。

18:00
いつもの就寝の時間。皆はいくらなんでも早すぎるというが、これ以上遅いと仕事に差支えが出るので。


00:00
魂だけであちこちの見回り。特にお義父さんを呼ぶ必要もなかった。
そして、朝が開けた頃に体に戻る。
明日も頑張ろう。

-- END -------------------------------------

なんだかな。
さっぱりしすぎ…かな?
でも、貢永が書くとこんぐらいあっさりした日記になりそう。

[127]
3A - 2007年08月22日 (水) 00時59分

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- 人中之竜・弐 -
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 ガラガラッ。

 風紀委員会室の扉が開いた。
 その瞬間全員の目が入り口に向けられる。
 そこに立っていたのは小さい男とでかい男だった。
 もちろん視線を浴びたのはでかい方の男、楠葉士仙その人だった。
 そしてその姿を見て叫んだ者がいた。

遊意華「シーくん!」

 遊意華はそう叫ぶと席から立って、士仙の方へと駆けていった。
 士仙は教室に入り、扉を閉めた。
 遊意華は士仙に抱きつく形で止まった。
 遊意華はちょうど士仙の逞しい胸板の辺りに頬をつけている。
 身長差28cm。
 体重なんて遊意華からすれば2倍に近いんじゃないだろうか。
 士仙は荷物を置くと赤ちゃんを『高い高い』とするのに似た感じで持ち上げた。
 遊意華は笑っていた。

遊意華「またおっきくなったんじゃない?」
士仙「ユイが縮んだんじゃないのか?」
遊意華「あー私をバカにした。」
士仙「ジョークジョーク。」

 遊意華はふくれていた。
 士仙は遊意華を下ろし、おもむろにクーラーボックスから1つ包みを取り出した。

士仙「はいどーぞ。」
遊意華「あ、クッキー!」

 遊意華の表情が一気に明るくなった。

遊意華「ありがとう!」
士仙「いっぱい食って大きくなれよ。」
遊意華「またバカにした。」

 遊意華はまだブツブツと文句を言っていた。
 しかし士仙はそこから視線を席につき冊子をトントンと整えている男に目を向けた。
 そして、その隣の晴美にも目をやった。
 晴美はショート寸前だった。
 視線を男の方に戻した。

士仙(・・・?)

 士仙は眉を少し動かした。
 何かを不審に思ったようだった。
 しかし誰も気がつかなかった。

士仙「ユイ、あれが・・・。」
遊意華「お兄ちゃん!こっち来て。」
士仙「・・・は?」

 部屋全体の空気が変わった。
 ショート寸前だった晴美の意識が戻る。
 紅夜の眉間に皺がよる。
 遊意華は慌てて訂正した。

遊意華「じゃなくてじゃなくて、紅夜さん、早く来てくださいよ。」
士仙「いいよ、折角招待してもらったんだし、年下から挨拶に赴くのが道理・・・かな?」

 そういうと士仙は並べられた机を迂回して紅夜の方へ歩を進める。
 紅夜もようやく席から立った。
 同時に晴美も慌てて立つ。
 士仙が紅夜の前に立つ。
 紅夜が軽く見上げるようなかたちだ。
 この学校では見られない光景だ。
 沈黙を破って、晴美が口を開いた。

晴美「こいつが弟の士仙です。士仙、こちらが紅夜さん。」

 2人とも黙ったままだった。
 紅夜は士仙の視線を不審に思ったのだろうか、士仙の目を見たままだ。
 一方、士仙は紅夜を見るというよりは、紅夜のまわりの空気も含めて、紅夜全体を見ている感じだ。
 少しだけ時間が経った。
 ほんの数秒だったはず。
 しかし、この場に居た者には何倍かに感じ取れたかも知れない。
 晴美の心臓は破けそうだっただろう。
 この沈黙は士仙が破った。

士仙「初めまして、楠葉士仙です。いつも姉がお世話になっています。」
紅夜「綾河紅夜だ。こちらも随分迷惑をかけているから、気にしないでくれ。それよりも―――。」
士仙「あと、そちらの生徒さんに手荒な真似してスイマセンでした。しかも流血までして。」
紅夜「・・・わかってるならいい。」

 士仙は紅夜があの件について口を開く前に、いや、正確に言えば開いてはいたが、言及する前に謝った。
 深々と頭を下げて。
 晴美の心配は杞憂に終わった。
 士仙はクーラーボックスをあけて、少し大きい箱を取り出した。

士仙「お土産です。」

 そういって箱を開けた。
 中にはショートケーキが入っていた。

紅夜「わざわざすまない。」
士仙「いえいえ趣味の一環なんで。ここ、置いてもいいですか?」
紅夜「ああ、今包丁を用意する。」
晴美「わ、私やります。」

 その時、士仙は感じた。
 誰かがここの教室に来た。
 2人だ、団体じゃないからさっきの連中とは違うと考えた。

 ガラガラ。

 扉が開いた。
 そこに立っていたのは命だった。

命「あ、紅夜ここにいたんだ。」
紅夜「何か用か?」
命「え?い、いや別に用があるって訳じゃないけど、ただ紅夜がどこにいるかな〜って思ってたら。」
貢永「私がここに来る途中だったんで連れてきました。」

 士仙がまた眉を動かした。
 一瞬だったが、貢永を鋭い視線で刺すかのように見た。

士仙(・・・)
貢永(・・・)

 貢永も士仙から何かを感じ取った。
 そして、この場に長居するのは得策じゃないと考えたのか、部屋を後にしようとした。

貢永「じゃ、私はこれで―――。」

 その瞬間、士仙と晴美はまた感じた。
 今度は団体だ。

晴美「ユイ!鍵をかけろ!」
遊意華「え?」
士仙「ハルは後ろの扉だ!」
晴美「OK。」
士仙「ユイは窓だ!」
遊意華「う、うん。」
士仙「ほらのいて。」

 部屋を出ようとした貢永を部屋の中に引き入れて、扉を閉めた。
 全ての窓、扉に鍵をかけた。
 その時やっと他に人達に聞こえてきた。

 ドタドタドタ。

 足音だ。
 しかもかなり多人数の。
 さっき、玄関にいた生徒達だった。
 ルティアが咄嗟にカーテンを閉めた。

晴美「ふう。危なかった。」
遊意華「何あれ?」
ルティア「恐らく士仙君のおっかけじゃないかしら。」
紅夜「すまない。これではゆっくりともできないだろう。」
士仙「気にしないで下さい。会話ができないほどの五月蝿さじゃないですから。」
晴美「包丁ですけど。」
士仙「俺がやる。ハルは皿。」
晴美「OK。」

 士仙がすぐに適当な大きさに切り分けた。
 ある程度余して。

貢永「わ、私まで・・・。」
士仙「部屋を出たいですか?この状況で。」

 士仙は軽くカーテンを開けて外を見させる。
 扉に群がる生徒達。
 地獄といわれても頷けそうだ。

貢永「遠慮します。」
士仙「ならパーティーを楽しみましょう。な、ユイ。」
遊意華「そうだよ〜。ほら一緒に楽しもうよね?ね?」

 さすがの貢永も遊意華の可愛さに負けたのか、素直になった。

蒼馬「それにしても綺麗なデコレーションだね。」
士仙「ありがとうございます。」
晴美「へぇ〜私のとは大違い。」
士仙「デザートは普通の料理よりも魅せなきゃな。」
晴美「うっ・・・。」
命「それにしても上手。」
ルティア「うちのシェフよりもお上手かもしれいですわ。」
士仙「お褒めのお言葉光栄ですが、お口に合えばさらに光栄です。」
遊意華「いっただきまーす!」
蒼馬「いただきます。」
晴美「いただきます。」
命「い、いただきます。」
ルティア「いただきますわ。」
貢永「いただきます。」
紅夜「・・・。」

 パクッ。

蒼馬「お。」
命「美味しい。」
晴美「う、美味すぎる。」
ルティア「ほんとにシェフよりもお上手かも。」
遊意華「おいしいー!!」
貢永「・・・おいしい。」
士仙「どうも。」

 全員が美味しいといったリアクションをとった。
 紅夜を残して。
 全員が紅夜の発言に注目した。

紅夜「美味い。」
蒼馬「言った。」
命「あの紅夜が。」
ルティア「士仙君のケーキを食べて。」
遊意華「言った。」
晴美「はは、こいつ紅夜さんに言わせやがった。」
士仙「光栄です。」
命「ど、どの辺が私のと違うの?」
晴美「あ、私のも教えてもらっていいですか?」
紅夜「そんなこともわからないのか?」
命「わ、わからないから聞いてるんじゃない!?」
晴美「なんというか・・・はは。」

 紅夜はやれやれといった顔で、溜め息を1つついてから淡々と話し始めた。

紅夜「全て。」
命&晴美「・・・え?」
紅夜「これはスポンジからクリームまでほぼ完璧だろう。」
一同「完璧!?」
士仙「・・・。」

 紅夜と士仙を除いたその場に居た者達全員が、驚きの表情を隠せなかった。

紅夜「これを10としたら、100歩譲っても命は5、楠葉は4ってとこだ。」
晴美「4・・・。」
命「そ、そんなに私の不味い?不味いの?」

 命は目に涙を溜めている。
 それを見て、紅夜は「またか」といった感じで話を続けた。

紅夜「いや、そういうわけじゃない。」
命「じゃ、じゃあどうしてなのよ?」
紅夜「これが美味すぎる。」
一同「・・・。」
士仙「ありがとうございます。」

 紅夜と士仙を除いて『開いた口が塞がらない』という状態に陥っていた。

紅夜「クリームの塗り具合も均等だ。」
晴美「うっ・・・。」
紅夜「スポンジもちょうどいい硬さだ。」
晴美「うぅ・・・。」

 晴美は、自分が指摘されたところが褒められてるということに悔しさと悲しみを覚えた。

遊意華「元気だしなって。」
士仙「姉の悪かった部分は・・・多いとは思いますけど、ピックアップすると今挙げられた2つじゃないですか?」
紅夜「ああ、そんなとこだ。」
士仙「残念だったなハル〜。」
晴美「うるじゃい。」

 晴美も先ほどの命と同様に半泣き状態だった。

士仙「俺に弟子入りしたら?」
晴美「うう・・・。」
士仙「デザートだけじゃなく、料理も教えるよ?」
晴美「我流で極めてみせるさ!!」
士仙「言ったな?」
晴美「言った!」
士仙「そうだな・・・じゃあ2ヶ月以内にさっきの紅夜さんの評定で7、7以上になったら豪華賞品プレゼントな。」
晴美「了解。」
遊意華「もし7までいかなかったら?」
士仙「うーん、何か1つ俺の言う事聞け。」
晴美「わかった。」
遊意華「いいの?」
晴美「ただ、7以上いったら豪華賞品じゃなく、焼肉奢れよ。」
士仙「OK。ということなんで紅夜さん、お願いします。」
紅夜「わかった。」

 蒼馬が紅夜の耳もとで尋ねた。

蒼馬「今日は素直だね。いつもなら『何で俺が』ってなるのに。」
紅夜「わざわざ来てもらったんだ。それぐらいはな。」
蒼馬「へぇ〜。紅夜が義理を。」
紅夜「例え承諾しなくてもあっちから言ってきただろう。」

 全員に聞こえるように言った。

士仙「その通りですよ。ただ恩着せがましくはしないですけど。」

 まるで聞いていたかのような士仙お得意の読心術。
 士仙はここである事に気付いた。

士仙「ところで、そちらのお2人とは御挨拶がまだでしたね。」
命「そういえば。」
貢永「そうですね。」
士仙「楠葉士仙と言います。いつも姉の晴美がお世話になってます。」
命「九条命です。」
貢永「霜月貢永です。」
士仙「お2人とも・・・2年生ですか?」
命「うん。」
貢永「そうです。」

 士仙と2人はよろしくと頭を下げた。

士仙「あ、そういえば。」
遊意華「どしたの?」
士仙「俺が部屋に入ったときさ、何か本見たいなの見てなかった?」


――――――士仙が玄関にいる時――――――

紅夜「花園、楠葉。」
遊意華「なんですか?」
晴美「は、はい。」
紅夜「この前の報告書なんだが。」
遊意華「え?」
晴美「今は持ってませんよ?」
紅夜「そうか、ならこっちの方からやるか。」
晴美「え?」
遊意華「げ!」

 紅夜が左手に持っていた冊子。
 それは以前2人が紅夜から説明を受けた報告書とは別の報告書だった。

紅夜「安心しろ、こっちの方は5分くらいで済む。」
晴美「え?今からやるんですか?」
紅夜「ああ。」
晴美「でもそれ1つだけしかないですよ?」
遊意華「私達が紅夜さんの隣に座ればいいんだよ。ね、いいですよね?」
紅夜「ああ、かまわない。」

 遊意華が晴美に耳打ちする。

遊意華「チャンスじゃない。さり気なくアピールアピール。」
晴美「アピールったって、どうしろと?」
遊意華「まあまあ私に任せて、早く席に着きましょう。」

 遊意華は晴美の背中を押して席へと向かう。
 そして、晴美が席に座ろうとした瞬間、遊意華は晴美を強く押した。

遊意華「えいっ。」
晴美「うわっ!」

 油断していた晴美は、前に倒れこんだ。
 咄嗟に『何かに』摑まった。
 『何かに』というよりは『誰かに』・・・ね。
 そして摑まったというよりは『抱きついた』って感じかな。

晴美「痛てて。ユイ!」

 後ろの遊意華を見て軽く怒った。
 しかし、晴美はよく考えてみた。

晴美(・・・ん?)

 顔を前に向けた。
 制服が見えた、それも男子の。
 そして恐る恐る顔を上げた。
 そこには・・・紅夜の顔があった。

晴美「紅・・・夜・・・さん?」
紅夜「早く始めたいんだが。」
晴美「あ、あああああーそそそそそそうですね、そうですよね。」

 晴美は直ぐに体勢を立て直した。
 そして平然を装った。
 しかし、顔は真っ赤だった。
 遊意華はにやにやしながら反対側に座った。

紅夜「まずはここだ。」

 前以上のスピードで行われる説明。
 紅夜としては、少しでも時間が惜しいのだろう。
 5分もやっていないが前の倍近くは疲れただろう。

紅夜「それと、あとはここを―――。」

 ガラガラッ。

 遊意華は、扉の方を見て士仙がそこに立っているのを確認すると、嬉しくてたまらなかった。
 やっと終われるのだと。
 晴美は隣に座れている事が嬉しすぎて、説明を今までにないくらいに聞いていた。
 だから士仙が来た時、少し腹が立った。


――――――時は戻って――――――

遊意華「あれは会議で使う報告書だよ。」
士仙「ふ〜ん。ちょっと見てみたいな。」
遊意華「え?見たい?」
士仙「なにか?」
晴美「なにかって他校の生徒に簡単に見せるはずないだろ。」
遊意華「だめですよね?紅夜さん。」
紅夜「俺はかまわないが。」
晴美「ですよね〜・・・っていいんですか!?」
紅夜「特に秘密事項はないからな。」

 士仙はパラパラと冊子に目をやる。

士仙「・・・これだと、えーと看護科だったっけ?そこから隙を突かれるって?」
遊意華「うん。雪奈さんから思いっきりね。」
士仙「ふ〜ん。」
晴美「どう?この報告書の出来は?」
士仙「うーん悪くはないけど、天下の桜ノ宮の生徒相手だと無理なんじゃない?」
晴美「そうか。」
士仙「その雪奈さんがどんな人かは知らんが、この書類なら俺が見せられたら上げ足取れまくりだよ?。」
遊意華「うぬぬ。」
晴美「看護科もだけど、やっぱり普通科に負けたくない。」
士仙「普通科?」
晴美「そこの庭瀬会長が中々やるんだよ。」
士仙「庭瀬?もしかして下は鶯?」
晴美「何で知ってるの!?」
士仙「さっき下でインタビューされた。」
晴美「ああそういえば放送で流れてたな。」
士仙「あの人リアルにすごいと思うよ。」
遊意華「??なんで??」
士仙「だって、」

 そういうと自分の襟の裏に手を伸ばし、何かをつまんで見せた。

士仙「ほら。」
遊意華「何これ?」
ルティア「何ですの?」
命「なになに?」
貢永「これって・・・。」
蒼馬「小型の盗聴器?」
士仙「ご名答。」
命「でも、そんなのいつの間に?」
士仙「蒼馬さんしか見てないですけど、玄関で彼女をお姫様だっこしたんですよ。その時に首の後ろに手を回す、その瞬間ですよ。」
ルティア「でもそんなことできるんですの?」
士仙「普通はできないですよ、あんなにさりげなくなんてね。だからすごいと思うんです。」

 部屋を沈黙が包んだ。
 が、それを命が破った。

命「でも、それだけだと納得しないんじゃないの?」
遊意華「え?」
ルティア「彼女達は士仙君の姿の方に興味があるとおもいますわ。」

 晴美がカーテンを開けて言った。

晴美「加えていつの間にか外が静かになってる。」
蒼馬「言われてみれば。」
遊意華「うーん・・・おいてけぼりだ。」
晴美「音だけ聴けても面白くないっしょ?例えば、ラジオとテレビで同じ番組をやってたら、テレビの方が需要は高いだろ?わかった?」
遊意華「なんとなく。」
晴美「なんとなくかよ。」
ルティア「ということは、カメラもどこかに?」
士仙「僕が見つけたのは2つです。恐らくその2つだけだと思います。」
命「え?どこどこ?」
紅夜「これか。」

 紅夜はそう言って部屋の隅にある掃除道具入れから、小型のカメラらしきものを持ってきた。

士仙「さすがです。」
蒼馬「じゃあ、もう1つは?」
士仙「そこですよ。」

 そういって士仙は蒼馬を指差した。
 正確に言うと蒼馬の右肩だ。

遊意華「え?」
命「ええ?」
ルティア「まさか・・・。」
蒼馬「え?どういうこと?」
士仙「玄関で『ここで生徒会の会計・柊蒼馬さんも登場しましたよ。』って言った時ですよ。」
蒼馬「・・・あっ。」

 蒼馬は思い出した。
 確かに鶯が『ここで生徒会の会計・柊蒼馬さんも登場しましたよ。』と言った時、肩をポンッと叩かれていた。
 蒼馬は恐怖を覚えた。
 いや、蒼馬だけじゃない。
 ここにいるほとんどの者が恐怖を感じただろう。
 唖然としたまま、誰も何も言わなかった。
 士仙が笑みは絶やさぬまま口を開いた。

士仙「こんなに抜け目のない人相手に、さっきみたいな報告書じゃ負けるよ?実感が湧くだろ?」
晴美「じゃあどうしろと?どうやったら勝てるんだ?」
士仙「・・・正直、お前らが10年かかっても勝てるとは思わない。」
晴美「なっ。」
遊意華「ええーそんなぁ。」
士仙「但し、このままの道を歩き続けたらの話だけどな。」
晴美「え?」
遊意華「どゆこと?」
士仙「もしかしたら、お前らにも勝てる見込みが出てくるとは思う。」
晴美「勝てる?」
遊意華「私達が?」
士仙「雪奈さんだっけ?その人が鶯さん以上じゃなきゃね。その辺はどうなんですか?」
ルティア「え?今のところは天乃さんは庭瀬さんに負けてますが・・・。」
士仙「あなたたちの意見も聞きたいんですが。」
命「え?え?私?私なんか何も参考にならないとは思うけど、同じくらいだと思う。」
蒼馬「僕も同じくらいだと思うな。」
紅夜「同じ考えだ。」
士仙「なら、少し君らにヒントとして、文章の書き方と、話し合いとか討論、口喧嘩のコツを教えよう。」
遊意華「え?」
晴美「く・・・。」
命「口喧嘩?」
士仙「ま、それを言う前に。」

 そう言うと士仙は机に置いていた盗聴器とカメラを潰した。


――――――放送室――――――

鶯「うわあああああああああああああああああああ!!!!」
つづら「うぐちゃん、大丈夫なの?」
瑞樹「大丈夫ですか?」

 士仙が盗聴器を潰したせいで、ヘッドホンをして聞いていた鶯の耳には大音量のノイズが襲いかかった。

鶯「三半規管がぁ・・・平衡感覚がぁ・・・・。」
つづら「うぐちゃん、うずまき官は大丈夫なの?」
瑞樹「そんなマイナーなとこよりも、鼓膜の心配の方が先では?」

 しばらく耳を抑えていた鶯だったが、

鶯「うぅ・・・やるな、若いの・・・・・・侮っとったわ・・・・・・。」

 そう言って倒れた。

つづら「うぐちゃん!」
瑞樹「しっかりして下さい!」
鶯「・・・・・・・・・・・そこで君ら涙くらい流そうよ。」

 そう言って起きた。

つづら「!?」
瑞樹「演技だったんですか!?」
鶯「ふっ、甘いね。まだくらくらするけど、倒れるほどではないさ。」

 つづらはホッとしていた。
 瑞樹は呆れていた。

鶯「でも、やられたらやり返さなきゃね。」

 悪い笑みを浮かべた。


――――――総括生徒会室――――――

蒼月「これで終わり・・・。」
宇美「やりゃ・・・できるじゃねえか。」

 あまりの仕事の早さに驚く宇美。

蒼月「さて、これで僕は解放されたんだね。」
宇美「まあ・・・そうなるな。」
蒼月「ふふふ・・・では僕も噂のイケメン君の顔を拝みに行くとするか。」
宇美「イケメン・・・ね。どこがいいんだか・・・。」
蒼月「君は行かないのかい?」
宇美「何でいかなきゃいけねえんだ?」
蒼月「いや、もしかすると恋・・・でも芽生えたのかなと思ってね。」
宇美「・・・今、なんつった?」
蒼月「ひぃ!!!!ごめんなさい!!!!!!!!!」

 ガラガラッ。

 蒼月はありえない速度で出て行った。

宇美「・・・まったく、アホかあいつは。」


-- NEXT --------------------------

暑くてもうやる気がでなくなりますね。
宿題とか全くやってないし。
オープンキャンパスとかも行かなきゃいけないのにな。
学業=進路≪SS
って状態なのかな、自分の今の頭の中。

まあそれはいいとして、今回の感想(?)
・紅夜が難しい。
 元々あんまり喋らなさそうなキャラとして認識している僕の脳みそでは、彼の言葉は作り出せないということかな。


[128] ぉおう!
シュレ猫 - 2007年08月22日 (水) 13時23分

なんだか非公式(?)報道部みたいなやつが完成してる。
そして、やっぱり恐るべし庭瀬鶯。相変わらずの抜け目なさですね。
この調子だとまだ何か隠してそう。

[133]
凪鳥 - 2007年08月26日 (日) 00時56分

おぉ、ついに出会いましたね…。
この展開に蒼月が絡むとなると、とても楽しみですねぇ。

報道部は、まとめると結構使えそうなネタですね。
よしよし…。

[134] 主観:なし 登場人物:鶯、つづら
凪鳥 - 2007年08月27日 (月) 14時37分

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- 展覧会 -
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 キョロキョロと辺りを確認しながら古い廊下を横断する人影が一つ。
 そこは、学園敷地内の森の中に鎮座する大きな建物。

『旧学生寮』

 それは十年前、学園の中央に新しく学生寮が建てられた事によって廃棄された、古の産物。
 今現在ではその存在は殆ど知られていない。
 ある一部の生徒を除いて…ではあるが。
 その人影は、古い旧学生寮の廊下をギシギシと軋ませ、目的地へとたどり着く。

『306号室』

 そうネームプレートの貼られた部屋のその扉の前。
 人影はコンコンと、軽くその扉をノックする。

?『…合言葉は?』
人影「光ちゃん、万歳」

 部屋の中から女性の声でそう問われると、人影は言い慣れた口調で合言葉を唱える。

?『…OKだよ、会員No025』

 自分の会員Noを言われるのと同時に、ガチャリと扉の鍵が開く音が聞こえた。
 その音を聞き終えると、人影はドアノブに手をかける。
 そしてドアを開け、そろそろとその室内へと入る。

?「さて、今日の戦果はどうだったかな?」

 部屋に入るなり声をかけられる。
 それは先ほど合言葉を聞いてきた声と同じ人物。

人影「…ばっちり、なの」

 人影はその声に、手に持ったファイルを掲げて見せると、不敵な笑みを浮かべて答える。
 その独特なしゃべり方、そして高校生とは思えないほど小柄な人影。
 桜ノ宮学園看護科総括会副会長・久遠 つづら、その人である。

?「そう、それは何よりだよ」

 そういって謎の人物…桜ノ宮学園普通科総括会会長・庭瀬 鶯はにっこりと笑う。

 今彼女達が集まっているこの『旧学生寮・306号室』は、知る人ぞ知るこの桜ノ宮学園の秘密の花園。
 週に一度、一部の生徒達が今か今かと待ち続ける『展覧会』が開催される場所。

 元々二人部屋だった306号室は綺麗に片づけられ、真ん中に一つ丸テーブルが置かれていた。

つづら「はい、多分これで規定分は集まったはずなの」

 つづらは手に持っていたファイルを鶯に渡す。
 鶯はそのファイルを受け取る。

 写真。

 そのファイルの中には、どこかで見たことのある人々が写っている写真が30枚以上は入っていた。

鶯「ふむふむ、そだね〜これ位あれば十分かな?」

 中を確認して、鶯はうんうんと頷く。

つづら「今回は、これとかこれとか…なかなかレアなの」

 いって、ファイルの中から数枚の写真を指さすつづら。

鶯「お―! これは確かに…レアだねぇ〜、なかなか高値が付きそうだよ」
つづら「なかなかに、がんばったの」
鶯「それじゃあ早速仕分けしようか?」
つづら「解ったの、事は迅速に行うべき…なの」

 そう言うと、二人はそれぞれ丸テーブルの椅子に座りファイルの中の写真を仕分けし始める。
 激レア・レア・準レア・ノーマルのランクでそれぞれ分けられていく写真。
 そしてさらにカテゴリー別に分けられていく写真。

つづら「今回は運動部系が結構集まったの」
鶯「う〜ん、でもやっぱり総括会カテゴリーはもう少し欲しかったかなぁ〜」

 鶯は写真を仕分けしながらつぶやく。
 総括会カテゴリー…すなわち、総括生徒会、総括風紀委員会、普通科総括会、看護科総括会、美術科総括会の五つ。

鶯「総括会カテゴリーはダントツで人気が高いから、準備して多過ぎるってことはまずないし〜」

 部活動などよりも委員会活動に力の入れられているこの学園では、圧倒的な存在感を放つ総括会の人気が大きいのは確かだ。

つづら「特につきちゃんやゆきちゃん、はるくんの3強はノーマルでも高値が付くの」
鶯「だね、この頃は〜蒼馬君のも値段の伸びがいいし、やっぱり総括会カテゴリーはもっと充実させたいかなぁ」
つづら「でももう展覧会まで余り時間はないの…とりあえず今回の展覧会はこれで行くしかないと思うの」
鶯「むむむぅ…仕方ないかなぁ」

 鶯は珍しく眉間に皺をよせ、一枚の写真をもてあそぶ。
 その写真には、激レア判定の看護科総括会会長・天乃 雪奈のあられもない姿が写っていた。
 そのほかにも仕分けられた写真には、学生の中では一定以上の人気を誇る人達のが映し出されている。
 学園の花形である総括会の面々はもちろんのこと、乗馬部の部長であるとか、長刀部のエースであるとか色々と。

 つづらの持ってきたこの写真の山は、つまるところ『アイドルの生写真』。

 展覧会とは即ち、この生写真のオークションのこと。
 しかも、そのオークションは会員制。
 その売り上げはの学生寮維持費に秘密裏に還元されている。
 総括生徒会副会長の綾河紅夜が、いくら綿密な予算運営をしようとも、寮の維持費だけが正確な数字をはじき出さないのはその為。
 娯楽室に生徒会が発注した覚えの無いものが増えているのは、この展覧会で稼ぎだされた資金で買っているからである。

 そしてこの花園の第15代目管理者であり、展覧会の主催者が何を隠そう庭瀬 鶯その人。

 そしてもう一人、つづらは自らも総括会関係者であり、学園人気3強のうちの一人『女帝』天乃 雪奈のシャッターチャンスに一番近い存在であるということから、鶯に協力を求められていた。

つづら「うぐちゃん、今回はレートに変動はないの?」
鶯「うん、とりあえず今のところは大きな変動はないですね、何か大会があった訳でもないし」

 レート。
 即ちオークションに掛けられる写真の…その写っている人物の『価値』である。
 基本的にレートはその人物の人気で決まり、写真の最低落札価格はそのレートで決まっていく。

 部活動カテゴリーはこの変動率が高い、それは大会やコンクールなどの結果次第で人気が上がったり下がったりするからだ。
 逆に委員会カテゴリーはそういった大きなイベントが少ないため変動率が低い。

鶯「それにしても、相変わらず会長さんの人気は凄いねぇ〜3強は他に比べて飛び抜けてるけど、その三人の中でもさらに飛び抜けてるし」
つづら「生徒会長は伊達じゃないの、人気だけならなんば〜わんなの」
鶯「だからこその生徒会長! なんだろうけどねぇ〜」
つづら「ちなみに、総括会カテゴリーの人気順位を改めてまとめると…こんな感じなの」

 そういってつづらはどこからとも無く紙とペンをとりだすと、簡単な表を書き始める。

--------------------------------------------------------------
(役職に付いている事が前提)
順位 名前       評価
1.  蒼月 全校生徒、上同下級問わず圧倒的な人気
2.  雪奈 看護科内で不動の支持を誇る
3.  晴美 数少ない男役、豪快な性格が人気の元
4.  遊意華     マスコット的存在、美術科からの支持多し
5.  ルティア  才色兼備、学園No1お嬢様
6.  蒼馬・光・鶯 それぞれが違った意味での癒し系
7.  命 神秘的な外見、ピアノ魅せられた人が多し
8.  泉  暴走が無ければ、学年トップの才女
9.  つづら   妹的な人気、不思議な雰囲気が新しい
-.  紅夜 というかそもそも基本怖がられるため人気が無い
--------------------------------------------------------------

鶯「ふむふむ、確かにそんな感じかなぁ〜」

 つづらの書いた表を見て鶯はうんうんと頷く。

つづら「こーやくんは相変わらず人気が無いの、ガタガタなの、もっと愛想を振りまくべきなの」
鶯「彼は実際に会ってみないと良さが解らないタイプですからね」

 鶯の言葉に、今度はつづらが頷く。

鶯「何気に命ちゃんとか泉ちゃんの九条姉妹も、この頃人気が出てきたから要チェックねぇ」

 つぶやきながら、鶯は胸ポケットから取り出した手帳にカリカリと何かを書き残す。
 そうこうしている内に、つづらの持ってきた数々の生写真の分別が終わる。

つづら「…大体こんな所でOKなの」
鶯「そうだね、展覧会開催を待つばかりかな」
つづら「なの」

 秘密の花園に、二つの不敵な笑みが浮かぶ。
 準備は万端。
 生徒会にはばれない様に、しっかりと根回しはすんでいる。
 さて、今回は売上で一体何を買おう?
 そういえば皆が口々にアレが欲しいといっていた。
 ならばそれにしようか?
 いやいや、しかしアレも捨てがたい。
 折角鬼の生徒会を欺いてまでも稼ぎ出す資金だ、有効に使う方法をじっくり吟味しなければ。

 秘密の花園で行われる、秘密の展覧会。
 現在の会員数は128名。
 入会方法は謎が多く、しかし確実に存在するその秘密クラブ。

 古い扉のその奥で、ひっそりとしたたかに。

 生徒会副会長の残業と引き換えの――はた迷惑な、展覧会。

 貴女も一度、どうですか?

-- END --------------------------

鶯とつづらのコンビがなかなかいい味出してるので、私も一つ。
学園内での登場人物の人気は大体こんな感じでしょう。
生徒会長は言わずもがな、むしろ人気が無いとなれません。
この頃やられ役と化してきている雪奈嬢も、実は人気は高かったりします。

紅夜は結構しゃべらすのは難しいかもしれませんね。
とりあえず、愛想が悪くて口数が少ないのは確かです。

[135]
3A - 2007年08月28日 (火) 01時26分

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- 人中之竜・参 -
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士仙「・・・とまぁこういう風に文を作っていったら、さっきと全然イメージが違うだろ?」
遊意華「なんか全然変わったね。」
晴美「これなんて言うんだっけ?えーっと・・・。」
貢永「『倒置法』・・・ですか?」
晴美「あーそれです。」
士仙「これをすると、伝えたいことが強調されるから有効に使えるはず。あと、紅夜さんの仕事も減るから。」
晴美「そ、それは多用しなければ!!」
遊意華「でもなんで減るの?」
士仙「1つ言うなら、伝えたい事がわかりやすくなるから、今までは『何が言いたいんだろう』ってなってたのが、『あーこれが重要なんだ』ってなるから悩むという動作が減るわけよ。」
命「ふぅん。」
ルティア「でもこれだけじゃ勝てない。」
蒼馬「討論の部分だね。」
士仙「ええ、そこが難しいんですよ。」
命「って言うと?」
士仙「性格の問題ですよ。」
ルティア&蒼馬「性格?」
士仙「お前らさ悪口言われて、ああ悪口ってかなり酷いのイメージな。それで我慢できる?」
遊意華「・・・えへへへ。」
晴美「・・・・・・・・無理。」
士仙「そこをね、右から左へじゃないですけれど受け流せたら簡単に勝てるんでしょうけど。」
遊意華「えー無理なの?勝てないの?」
士仙「で、少し考えた。そこがこっちの弱点なら、そこを逆手に取ったらどうかなって。それで出てきた案が名づけて『口撃は最大の防御』作戦。」
一同「・・・。」
貢永「・・・い、以外と普通ですね。」
士仙「他に何も思いつかなかったんで。」
晴美「それで?その作戦は?」
士仙「それは・・・。」


――――――放送室――――――

鶯「ん?聞こえない、なんで?」
つづら「音声が切れてるの。」
瑞樹「でも、ガサガサって音は聞こえてきますね。」
つづら「ということは故障じゃないの。」
鶯「・・・まさか・・・・・・あの子、私が考えている以上の存在だわ。」
つづら「どういうことなの?」
瑞樹「???」
鶯「『あの時』は私の方が上手だったと思ってたけど、もしかしたら雪奈さんや会長さん、紅夜くんも、ましてや私でさえ彼には劣るかもね。」


――――――放送室での『あの時』――――――

鶯「でも、やられたらやり返さなきゃね。」
つづら「ついに奥の手の登場なの。」
瑞樹「奥の手?」
鶯「ふっふっふ。あの破壊されたやつは、わざとわかりやすくつけといたのだ。」
瑞樹「てことは・・・?」
つづら「私が写真を撮ったときに、」
鶯「私が真の盗聴器をつけておいたのだ。さっきのはあくまでもカモフラージュさ。ま、あれだけで事が済むのなら良かったんだけど。」
瑞樹「ということは盗聴は?」
つづら「続行なの。」
瑞樹「・・・あなたもう就職で悩む事はないですよ。その道に行けば。」
鶯「まだまだ甘いね、シ・セ・ン・君(はぁと)」


――――――放送室 時は戻って――――――

つづら「・・・で、どうするの?このままだと私達このSSから外されてしまうの。」
鶯「うーん3Aは『キャラが多くて疲れる』って言ってるみたいだしね。」
瑞樹「なら最初からこんなに出さなければ良かったのでは?」
つづら「そこまで頭良くないの。そこまで頭がいいなら音声が聞こえないなんて理由で、作戦を説明できないことを誤魔化そうなんてするはずないの。」
鶯「説明できない以前にそんな作戦、最初っから頭にないのに言っちゃったんじゃない?」
瑞樹「・・・なんて言うか『ボロカス』に言われてますね。」
鶯「でも3Aにできなくとも、弟君ならしっかり晴美さん達に伝えてるだろうから、心配はないんじゃない?」
つづら「そうしたら敵が増えちゃうの。」
鶯「結構結構。勝負はどちらが勝つかわからないから面白いんだよ。」
瑞樹「・・・ところでSSを外される話はどうなりましたか?」
つづら「すっかり忘れていたなの。」
鶯「こうなったら直接的方法で以て盗聴器をセットに行こう。」
つづら「最終手段なの。」
瑞樹「最終手段・・・。」
鶯「私のピッキング技術と彼の五感との勝負ね。」


――――――風紀委員会室――――――

士仙「・・・とまあこういう風にすると、相手は突っ込めないわけだ。」
晴美「・・・あんたいつも私に口喧嘩負けてるくせに、なんでこんなに討論だと強いの?」
士仙「それとこれとはルールが違うんだよ。」
晴美「ふぅん。」
士仙「要するに、隙さえ与えなければ勝てない事もあるだろうが、まず負けないわけ。ただし、完璧にできたらの話だから、あとは自分達で昇華させたらいいさ。」
遊意華「消化?」
晴美「昇華、うーんだから・・・自分達でレベルアップさせろって事だ。」
遊意華「ああーなるほど。」
蒼馬「ねぇ紅。」
紅夜「なんだ?」
蒼馬「これで美術科も主催権争いに加わってくるかな?」
紅夜「まだ厳しいだろうな。」
蒼馬「えぇ?」
紅夜「ただ、」
蒼馬「ただ?」
紅夜「次の次辺りからなら勝負はわからないだろうな。」
蒼馬「次の次?」
ルティア「次で成長してその次で真価を発揮すると?」
紅夜「まぁそんなとこだ。」

 ガラガラッ。

 扉が開いた。
 そこには胸はないが、胸をはって仁王立ちしている生徒がいた。
 その者こそが桜ノ宮学園生徒会長・柊蒼月である。

蒼月「やぁ!待たせたね!」
一同「・・・。」
蒼馬「そ、蒼。」
蒼月「どうしたんだい皆?さぁ主役が来たんだ、パーティーを続けよう。」

 ツカツカツカ。

 紅夜は蒼月の前に立った。
 そして、

紅夜「誰が主役だ、誰が。客人に失礼だ。」

 そう言うと得意のアイアンクローが決まった。

蒼月「b目hjtp:hjthjみょ所p」jyrpjmr!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
士仙「・・・結構やるもんだねぇ。」
晴美「しょっちゅうあれだよ。」
遊意華「今日も痛そう・・・。」
ルティア「はぁ〜、悩みの種ですわ。」
蒼馬「も〜!2人ともやめなって!!」



-- NEXT --------------------------

やった!30分で作れた!
・・・とは言え、いつもよりかなり短いですよね。
短い方が読みやすいのかな?
長い方が一気に読めてすっきりするのかな?
う〜んどうなんだろう。

今回の感想(?)
・会話文が割合的に多い

・・・僕のSS全てに言えることかな?


オークションか・・・すっごく面白そう。
というか、これ最高です。
正直、続きを見たい気満々です。

[136] これはフィクションです。いえ、フィクションのフィクションです。
ジャッキー - 2007年08月28日 (火) 23時44分

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こっくりさんの歌
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学校というところは本当に面白い。
どこがって聞かれれば返答に詰まるけど、強いて言うなら『全て』だろう。
人間の喜怒哀楽、希望友情努力協力、憎悪嫉妬悪戯暴力、その全てがこの学園――500は軽く超えていたっけ――の生徒一人一人違う。
そして、その人たちが織り成す歴史は、儚くて輝かしくて脆くて尊い。
だからこそ、面白い。


とかなんとか長ったらしい事を愚痴りましたが、纏めれば『ああ〜、人間ってかあいい〜♪』ですよ、ハイ。うん、作った雰囲気をカンッペキにぶち壊しましたね。ついでに私の人格も。
というワケの分からない思考遊びをしながら私は、今廊下を歩いている。
すでに時刻は真っ赤な光が差し込み、なんとなく暖かい、気分的に。
と、突然ですが問題です。
ここで私の耳に入ってきたもの――物ではなく音――は一体なんでしょう?

A・どんぐりころころの歌
B・七つの子
C・こっくりどろどろの歌

さあ、どれ?


正解は、C・こっくりどろどろの歌でした〜。
はい、いい加減話を進めろと? つまらないなぞなぞはやめろと? そうですね。

『こっくりどろどろこっくりこ〜
 十円動いてさあ大変
 幽霊出てきてこんにちは〜
 あんたら霊界連れてくよ〜♪』

はい? なんですか、この教育テレビでは絶対に放送できないような歌は。
え〜と、確かこの教室から聞こえてきましたね。
……すいません、なんかこの部屋の中からおどろおどろしい妖気とか霊気とかがものすっごい出てるんですが。
人間に分かるように言うなら、30度の部屋で3日間放置しておいた生ゴミの匂いくらいですね。
私は普段、霊視などの能力は封じています。だってそうしないと首のない女とか胴体が骨ばかりの男とか見えてしまいますからね。
そうしている状態でも分かるほどとは……。
入りたくないけど……入るしかないんでしょうね。
私の管轄内でこんなのが起きてそれを放置したなんて事になったら、それこそ責任問題ですよ。恋のキューピット役もお役ゴメンですよ、返上ですよ、リストラですよ、クビですよ。
どーせ、昔はやったこっくりさんを中でやって周りの浮遊霊とか悪霊とか集めに集めたんでしょうね。ゴキブリホイホイみたいに。
そんな奴の後始末をするのはすっごく気が進まないけど、まあ、仕事ですから。……ハァ。

ガラッ、と扉を開ける。

ああ、予想通り。
紙を乗せた1つの机をを3人の女子が囲んでいる。上履きの色と教室が3年の教室、ということでこいつらは3年ということで間違いなし。
全く、いい年してこっくりさんとは……。
そして……ああ、このバカ先輩3人の周りや頭上に…。
かわいい赤ちゃんですね、脳みそが零れ落ちてなければ。
貴女は何を探しているの? ああ、自分の頭部。残念だけど、そこには消しゴムしか落ちてませんよ。
電車に轢かれたの? 内臓が垂れ流してですよ。
う〜ん……こういうのを見ても全く顔に出さない私って、やっぱり普通じゃないのかな。
十円玉を操っているのは、セーラー服を着た女子高生だった。飛び降り自殺でもしたのだろうか、顔の半分はグチャミソに潰れ、四肢も変な方向に曲がっている。
しかし、その右手で器用によく十円玉を動かせるなあ。
「ん? 誰?」
3人の1人が声をかけてきた。
さあ、猫を被ろう。
「あ、いえ……あの、何をやっているんですか?」
この学園は基本的に上下の関係とかが薄い。というわけで、普通に考えれば「はあ?」みたいな事を言われそうなぶしつけな質問に対しても寛大だ。
「あ〜うん、こっくりさん。やる?」
やりません。
「いえ、ご遠慮します……あのところで、今日って風紀委員会ありましたっけ?」
適当な質問でもして理由付けでもしとく。
「いや……分からないね、ごめんね」
「いえ、それならいいんです。失礼しました」
部屋を出る。
そして私は急いで寮の部屋へと戻る。



黒い羽織、胸には紅いリボン、手には紅い彩の大鎌。
そう、これ。これが本当の私。
この大鎌でそこら辺にいる幽霊どもをズバズバ狩るたびに、私の乾いた心は紅い楽しみで満ちてくる……冗談ですけど。
寝て幽体離脱した私は早速さっきの教室へと戻った。
3人はまだいる。だが、問題ない。霊が見えないのなら私の姿は見えない。というか、たとえ幽霊が見えたとしても死神の姿は見えない。BLEACHって漫画がありますけど、あれ嘘ですから。
そんなに見えたら霊能力者が何か言っていますよ、『ほら、私に向かって死神が鎌を振るおうとしています! あと2秒後に私が死んだらそれは死神が命をうばガクッ』的な感じで。
鎌を振るう。刃が壁に当たるが、そこは死神、物理的な破壊は及ぼさずにすり抜ける。
よし
さあ、狩りの時間だ。

突然現れた私に幽霊たちは驚き、いっせいにこちらに顔(らしきもの)を向ける。
挨拶代わりに、1番近くにいた3匹を薙ぎ払う。幽霊は斬られたところから徐々に消滅していき、1秒もしない内にその存在は無に帰した。
幽霊たちが身の危険を察知、私の周りを取り囲む。
腹に大穴が開いた巨漢と右肩から爆弾でも爆発したかのように抉れている男が、前後からやってきた。
私は後方宙返り、後ろの抉れた男を一刀両断にし、続いて巨漢も同じように断つ。
着地して膝を折る。体に棒が突き刺さった男がその棒で突いてきたからだ。滑り込むように足の下に入り、膝から断つ。同じように消滅していく。
この鎌で斬りつけられた幽霊は、強制的に輪廻の輪へと戻される。かすり傷程度では効かないこともあるが、人間でいう致命傷ほどならば数秒で逝く。
取り囲んできたのは好都合だ。この大鎌は元々、1対多数を想定されて作られた。
死神の人数は少ない。ここら辺はマンガと同じですね。
そして人の数はどんどん増える。比例して、死霊の数も増える。
これが死神の大鎌の由来。
鎌を回し、その遠心力に逆らわず体重を乗せていく。それだけで、射程距離内にいた何匹かの幽霊は消えていった。
十分速さがのったところで移動。塊へと突撃していく。
斬りつけられ、徐々に消え、断末魔を私の耳に残す。
虫がわいている赤子を抱いた母親も、手足が筋だけでつながりブラブラの少年も、包丁を持った老婆も、全裸で体中に生々しい暴行の跡がある女性も、全て消えていく。
『アイツガ……ニクイイイイィィィィィィィィィ!?』
『ドウシテ? ドウシテワタシガシナナキャナラナイノ? ァァァァアアアアアアアアア!!』
『オレノ……アシハアアアアアアアァァァァ!!?』
回転を止める。うじゃうじゃといた幽霊たちは既に10何匹ほどになっていた。それらも、すでに戦意は喪失している。
机の影で震えている少女の霊へと、私は近づく。
『オネエチャン……ナニ? コワイヨ……オウチニカエリタイヨ……』
歳は小学校に入るか否か、というところか。まだ自分が死んだという事にも気付いてない。
私は鎌を振り上げ、袈裟懸けに斬りつける。
少女の瞳が驚きに見開かれ、口が何かを紡ぐ。
『ァ……』
それは言葉にはならず、ただのうめき声を私に残しただけだった。

疲れた。あの3バカのお陰でいつもの倍は疲れた。
さっさと寝よう。
明日がいい日でありますように……。
-- NEXT --------------------------



名前が一回も出ていない小説、ここに誕生。
即興で書きましたけど、まあ、いいかな。

初の戦闘シーン、ですか。
本当の死神はこんなアクロバットなことしてないだろうなあ。

なんかもう本当にミクトの設定をぶち壊しましたね。
次はもっとぶち壊します(オイ)

[137] やっぱり読みにくいです。
ジャッキー - 2007年08月29日 (水) 21時15分

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こっくりさんの歌2
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『こっくりどろどろこっくりこ〜
 10円動いてさあ大変
 幽霊出てきてこんにちは
 あんたら霊界連れてくよ〜♪』

「悠子ぉ、その歌なに?」
「こっくりさんの歌」
「うわ〜、タイトルになんの捻りもない」
うるさい、あたしにネーミングセンスを期待するのは間違っているんだ。
「でも話に聞いていたほど怖くないね〜。確かにこれ動くけど」
怖くない? まあ、見えなきゃそう思えるよね。
言わないけど、既にあたし達の周りには無数の霊が漂っているんだよ? なかには始末の悪い奴も。
あたしがいなきゃまず間違いなく、あなた達なら操られてそっから飛び降りてるね。
しっかし、このセーラー服も四肢完璧に折れてるのによくもまあ、器用に動かすな。てかそれ、そんなに笑うほど楽しい?
……まあ、バカみたいに無邪気に笑う私達を見ていれば、そんな気分になるのも当然かも、ね。実際、こんなことする時点でバカだし。
彼女も生前、こっくりさんとかやっていたのかな。そして今度は自分が操る側に。そりゃ、頬も緩むか。

体中が血まみれの男の霊が、向かって右の子に手を伸ばしてくる。が、その手は触れる寸前で何かに弾かれたかのように引っ込む。
こっくりさんやめないので仕方なく張ったものだけど……結構持つね。
でもいつまでもこうしているわけにもいかないしなあ。あんまり力は使いたくないんだけど……どうしようかな?

ガラッ

私は教室の後ろの扉の方を見る。するとそこには小柄で、割と童顔の生徒――上履きの色から見るに2年――が立っていた。
何しにきたんだろう。どうも様子がおかしい。用があるならさっさと言えばいいのに彼女はじっとこっちを見たまま、何も話してこない。
………!!?
今のは……? 確かに一瞬、彼女から凄まじい霊気を感じた。霊たちもそれに気付いたらしく、霊気のせいで元々数メートルは離れていたのに更に下がらせられた。
まさかこの子……見えている?
確かに、どちらかと言えば私達の方を見ているというよりその周囲を見ている、といった方が正しい。
でも、普通霊視は切り替えが出来るものではない。同様に霊力も。
じゃあ一体……?

「ん? 誰?」
友達の一人がそう聞いた。
「あ、いえ……あの、何をやっているんですか?」
まあ、そりゃそうだろう。今時こっくりさんなんていうのをやるのがおかしいし、知っているかどうかも怪しい。
「あ〜うん、こっくりさん。やる?」
やめろ、巻き込むんじゃない。
「いえ、ご遠慮します……あのところで、今日って風紀委員会ありましたっけ?」
お、賢明な判断だ。長生きするぞ。
ていうかこの子、風紀委員会なのか。
「いや……分からないね、ごめんね」
「いえ、それならいいんです。失礼しました」
そう言ってその子は出て行った。
ああ、あたしもこの場から逃げ出したい。

異変に気付いたのは、そろそろこっくりさんをやめようかという話になった頃だった。
「こっくりさんこっくりさん、お帰り下さい」
あ〜、10円玉動かないよ? だってセーラー服の子、もういないもん。
あ、動いた。オイコラ、どっちだ? 動かしているのは。
それにしても……一体どうしたんだろ。突然あんな風に円になって。
え?
ちょっと……なに? 霊が……消えていく?
ど、どういう事? 成仏……とはお世辞にもいえない。大体、集まった霊は地縛霊とかの成仏できない霊、そいつらがこんな風に成仏は……しない。間違いなく、絶対に、寸文の狂いもなく、首をかけても。人殺しまでしたヤクザが急に川辺のゴミ拾いをするかっての。
じゃあ、強制浄霊? んなバカな、私以外に霊能力者はこの辺りにいないし、私も何もしていない。
なんだか……怖い。
「悠子? どしたの、そんな怖い顔して」
「いや、なんでもないよ」
内心の怯えを必死に隠し、努めて平静に返す。
「もういこうよ、遅いし」
先に帰ってて。
「え〜? なんで〜?」
いいから、もう。
「ん…分かった、じゃあまた明日ね〜!」
やっと逝ってくれたか、いや、行ってくれたか。
まあ霊も、大分逝っちゃったけど。もう10数人、かな。始めは56人もいたのにな。あ、動物霊とか入れてだから人はだめ?
机の陰に隠れていた少女の霊が、まるで眼前に化け物でもいるかのように怯えきった表情をしていた。
きっと、まだ自分が死んだ事に気付いてないんだろう。霊の声は聞こえないけど、何を言っているのか、あたしには分かる気がする。
な!?
この子も……、消えた。胸の辺りから真っ二つにされ、そこから、まるで砂で作られた像が風に吹かれて無くなるように、音もなく。
ちょっと……待ってよ。
差別だけど、彼女みたいな霊の話も聞いてやらずに、――なんだろうあれは、強制浄霊?――をするのはどうかと思う。
霊は元は人間なんだよ? この世に留まっているのは、思い残しがあるからに他ならない。
それを消すなんて
「おかしいよ……!」

そこにいた霊は全て消された。誰かに。
その誰かは分からないけど、多分、あたしはそいつと出会ったら一発殴る。
むしゃくしゃした気持ちでなかなか眠れなかった。
明日はいい1日でありますように。
-- END --------------------------



試み:どれだけ説明的文章を与えずに場面を描写できるか。
結果:なんだか微妙。

書いた理由:学園に1人くらい霊感が強い奴がいてもいいだろう。ついでに1人称があたし、のやつが1人くらいいてもいいだろう。という理由からです。

ギャグにあまり出来なかった……orz

[147] ミラージュコロイド発動!
ラスティ・ブランフォード - 2007年09月05日 (水) 22時56分

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- 知らない事は良いことでは無い。 -
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剣道部の一室。

宇美「……何見てるんですか、鷹取部長?」
鷹取「!?いえ、なんでも!」

その手に握られているのは、一枚の写真。

宇美「それ、見せてもらえますか?」
鷹取「ひ、光さんの写真じゃないから…(汗」

びくびくと怯えながらも、持っていた写真を宇美に見せる。
宇美は、ため息と共にこう呟いた。

宇美「はあ。まったく、ろくでもない小遣いの稼ぎ方をしてる奴がいるもんだな……
校内に潜んでる盗撮魔は未だに健在って事かよ……」

宇美には、裏で盗撮者たちの糸を引いているのは姉の友人とは知る由も無かった。

せっかく買った写真を破り捨てるのもかわいそうだと思い、写真を返したものの、少しだけ指圧で凹んでいた。


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


鶯「……これは駄目。ボツ。」

そう言って、鶯は写真をライターで焼き捨てる。

つづら「うぐちゃん、前から思ってたけど、なんでそんなにひかりさんの写真だけ判定がシビアなの?」
鶯「……言うまでもないと思うけど。」
つづら「うーちゃんが怒るのが怖いの?」
鶯「うん、もちろんそれも怖い。だけど、もっと怖いのは光が怒っちゃう事。多分、この世の中で私にとって一番怖いもの。」
つづら「藪をつついて蛇を出したくないって事なの?」
鶯「そう言うこと。写真についてのアレコレを旧校舎でやってるのも、意外と信心深くて怖がりな宇美は旧校舎に近寄らないのを見越してるからだし。」

ニャー……

つづら「猫?」
鶯「マルコキアス?珍しい、こんなところにくるなんて。」

猫を見たつづらの表情が変わる。しゃがみ込んで手招きを始めてみた。

つづら「ん、おいでおいで。」

ニャー……

マルコキアスは、何か嫌なものでも感じたのか逃げ出していった。

つづら「……逃げちゃった。」
鶯「まあ、マルコキアスは気難しいから。気にしなくてもいいと思うよ。それより、そろそろ帰らないと。宇美や泉さんみたいな風紀委員に嗅ぎつけられたらマズイしね。」
つづら「そうだね。もう日が沈んできてるの。」

そういって、彼女たちは旧校舎を後にした。



@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


ニャー……

貢永「そう。あの二人が良く出入りしてるの?」

マルコキアスとの密談。
旧校舎にはそれなりの歴史があり、その中にはあまり表ざたに出来ない過去もある。
まあ、それはさておき。
それらの忌まわしき過去の中には、禍々しくどろどろとした怨霊が起こした事件もまったく無いわけでは無い。
昔から根付いている悪霊が新たな犠牲者を求めているのだ。

貢永「……風紀委員として注意しておくのが一番早そうね。宇美さんの名前を出しておけば、一発で近寄らなくなるでしょうし。」

あまり困った事にならない内に遠ざけておきたいとは思いつつも、彼女の思惑を他所に鶯たちはその後も旧校舎をアジトとするのであった。

-- END or NEXT --------------------------

はい、ネタと言うよりは小話と言うか……
……なんだろう?SSが短いと話のネタにまで詰まりました(汗

[154]
シュレ猫 - 2007年09月17日 (月) 14時56分

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- 久遠つづらの憂鬱 -
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今日は全国的に日曜日である。
その上天気は快晴、絶好の散歩日和。

しかしそんな日に、旧学生寮の一室を勝手に占拠して作業をする少女が一人。
部屋の真ん中でゴソゴソする小柄な人影。
そう、桜ノ宮学園看護科総括会副会長の久遠つづらである。

彼女が数少ない娯楽である散歩をする時間を惜しんでまでこんなところに居るのにはワケがある。


「……出来たの。」


それは、これまたここ旧学生寮で非公式に行われる『展覧会』に出品する『品』を仕入れるための道具を作っているのだ。


「ボールペン型カメラ、名付けて『筆写・玉(ヒッシャ・ギョク)』なの。」


と、キ○レツよろしくのあのBGMとともに掲げるボールペン型のなにか。
カメラである。しかも改造カメラ。


「解像度を上げるのは苦労したの。小さいとやっぱりむずかしいの。」


ちなみにこの『展覧会』の撮影メンバーの一部は、つづらの作った改造カメラを使っている。

歴代の作品には、

メガネ型カメラ『姿線(シセン)』
ケータイのカメラ撮影時に音が鳴らない『音無(オトナシ)』
音無のレンズを改造して解像度を大幅アップした『音無・麗(オトナシ・レイ)』
辞書型カメラ『読写(ドクシャ)』
などがある。
ちなみに、ネーミングは彼女の趣味だ。

その他に盗聴器なども作っている。

今回は、前々から要望があったペンサイズのカメラの製作でここに篭っていたらしい。


「さて、コレは誰に渡そうか……なの。」


これは全部一品物である。
その理由は、誰がどれを持っているか判りやすくしてかってに悪用されないようにするため。
彼女らの使い方が悪用ではないのか?というのは、ツッこんではいけない。
もうひとつの理由は、単純に作るのがめんどくさいからだ。


「こないだの盗撮グループの手に渡ったのは誤算だったの。今度はもうちょっと慎重に持ち主を決めるの。」


彼女ら撮影班のモットーは『モラルある覗き』である。
これまたツッこみ不可。諦めてください。
そしてこのモットーは規則でもあり、破った者はU.Nさん(仮名)にこわーい折檻をうける。


「今回はお金がかかったの。製作資金は多めにもらっておくの。」


製作資金は売り上げの一部とつづらの自腹から。
割合は8:2くらい。


「やっぱり……蝶ネクタイ型変声器は大失敗だったの。やっぱり漫画のマネはするもんじゃないの。」


たまに何かに触発されて作るときもあるらしい。
大概は失敗するが。
ちなみに、お金がかかった理由のほとんどは失敗によるものだったりする。


「終わったし、片付けて帰るの。」


ここでひそかにカメラが製造されている事実は、一部の人物を除いて未だ誰も知らない。


-- END?----------------------------------

いろいろアレでしょうが、ツッこまないでください。
とりあえず、写真を撮るにはいろいろ工夫がいるわけで、その工夫をつづらにさせてみました。
ほんとは別のキャラにやらせようと思ってましたが、やりそな人がいないのと、新しく考えるのもどうかと思ったので。

でも、つづらが宇美に見つかったらどうなるのでしょうか。本当に。
まあ、U.Nさん(仮名)本人は見つかるなんてヘマはしないでしょうが。

で、つづらしか出てないじゃんってのもツッこみ不可。
ツッこむのは諦めてください。

[156]
3A - 2007年09月17日 (月) 19時46分

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- 人中之竜・四 -
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――――――廊下――――――

鶯「お?」
つづら「音声回復なの」
瑞樹「じゃあわざわざセットしに行かなくても・・・」
鶯「甘いね」
瑞樹「え?」
鶯「さっきのね音声無し状態はね、偶然じゃなくてあれは弟君の意図したことだったの」
つづら「だとすると、常に確実に音声を録ることができなくなってしまうの」
鶯「さっきみたいにね」
瑞樹「では何故潰さなかったんですか?」
つづら「・・・なんで?・・・なの」
鶯「それはね、潰したら困るからだよ」
瑞樹「いや、まぁそりゃそうでしょうけど」
つづら「詳しく聞かせて・・・なの」
鶯「いいかい、まず理由その@・潰した場合、再び追っかけが来る可能性を懸念した」
つづら「なるほど・・・なの」
瑞樹「といいますと?」
つづら「彼は追っかけが消えていた事を知っていたの」

 鶯がつづらの続きを奪う

鶯「一体何故消えたか?彼は恐らく盗聴器があるから消えたものだと考えた。実際のところそうだしね」
瑞樹「では何故他のやつは潰しちゃったんですか?」
つづら「それは多分残りの1つに気付いてない振りをするからだと思うの」
鶯「まぁ私達もそれに騙されていた事だしね」

 少し悔しそうに鶯は言った

鶯「1つでも残っていれば再び追っかけが来て騒がしくなる事はない。そう考えたってわけさ」
瑞樹「では何故音声を消したんでしょう?」
つづら「それは多分単純に聞かれたくないからだと思うの」
鶯「作戦がばれちゃ作戦じゃないからね。ま、私の場合ばれても通る作戦とかもあるけどね」

 鶯が士仙に対抗意識を燃やしているということは一目瞭然だった

つづら「でも、あっちもまさか直接来るとは思ってないと思うの」
瑞樹「ピッキングなんてそう簡単には思いつきませんものね」
鶯「一応それが理由のAなんだけど・・・そこがなぁ・・・・・・」
つづら&瑞樹「???」
鶯「もしかしたらそれすらも彼の想定の範囲内だったら?今の私にそれを越える策は無い。それまでもが彼の想定内の出来事であったら?そうなったら私達の完敗だからね」
つづら&瑞樹「・・・・・・・・・・」
鶯「さて、ここからは静かに・・・・・ね」

 2人はコクコクと頷いた

鶯「おっ!」
つづら「ど、どうしたの?」
鶯「いいこと思いついた」
瑞樹「よからぬ事じゃ・・・」
鶯「全然そんなじゃないから」

 と言って鶯は携帯を取り出して誰かに電話をした


――――――風紀委員会室――――――

蒼月「ふむふむ・・・・・確かに噂どおりのハンサムだね」
士仙「柊 蒼月さんですね?はじめまして、楠葉士仙です。いつも姉がお世話になってます」
蒼月「ふむふむ・・・・・礼儀正しいし、腰も低くて好印象だね」

 ドスッ

 蒼月にいきなりのボディーブロー
 犯人はもちろん

紅夜「挨拶ぐらいしろ」
蒼月「ス、ストマック・・・・・・・・は・・・・・・・・・・・・・・・だめだって」
紅夜「では次からはリバーを狙うまでだ」
蒼月「ううう・・・・・・」
士仙「こりゃまた重いパンチですこと」
晴美「格闘のセンスを感じてるんだけど」
遊意華「ストマック?リバー??」
ルティア「胃と肝臓のことですわ」
命「なんでこんな時までこうなっちゃうの?」
蒼馬「しかたがないよ・・・・そういう2人なんだから」
貢永「・・・仲、良いですね」
蒼馬「付き合いが長いからね」
貢永「命さん」
命「え?何?」
貢永「取られちゃいますよ?」
命「・・・・・・ええええええええぇえええええぇぇえぇええええ!?!?!?!?!?!?!」
貢永「ぅ・・・・・・い、いきなり大声を出すのは控えた方が・・・」
命「わ、わ、わわわわ私が紅夜を?いや、そんなこと・・・・・・取られるって・・・・・・ぃゃぃゃ・・・・・・」

 命の顔は真っ赤だった
 頭の上にやかんでも置いたらお湯でも沸かせそうなくらいだった
 その後も1人でブツブツと自分に言い聞かせている命は、現実世界にはいなかった

貢永「ふぅ、これじゃ厳しいですね」
士仙「『紅夜さんとくっつけるには』・・・ですか?」
貢永「わっ!」
士仙「驚かすつもりはなかったんですよ?」
貢永「な、なんていうか気配を全く感じなかったので・・・・・・」

 つい本音を漏らしてしまった貢永

士仙「気配・・・ですか。では気配繋がりで1つお話したいんですが」
貢永「なんでしょうか」
士仙「・・・・幽霊とかって見ます?」

 貢永の眉が動いた

貢永「それと気配とはどういう関係が?」
士仙「霊感ってやつですか?別名第六感?あれって気配みたいなものじゃないんですか?」
貢永「見える人からすると、『見える』ので視覚にあたるんじゃ・・・」

 士仙は貢永の発言を遮るようにして言う

士仙「否定はしないんですね?」
貢永「・・・」
士仙「これはあくまで僕の勘ですが、あの2人の気配、オーラとでもいいますか、それが似た系統なんですよね。赤の他人のはずなのに」

 あの2人と言って示したのは、晴美たちと喋る紅夜と、1人真っ赤な顔でブツブツ呟く命だった

貢永「それがどうかしましたか?」
士仙「偶然なんですが、その2人のそれとどこか同じ感じがする人がもう1人いるはずなんですが、わかりますか?」
貢永「さぁ?私、鈍感なもので」

 貢永はニコッと笑って言った

士仙「・・・」
貢永「・・・」
士仙「・・・」
貢永「・・・」

 沈黙が包む
 貢永は微笑んだまま
 士仙は少し探るような目で貢永の目を見ていた

士仙「ふー・・・」
貢永「?」
士仙「これだけ探っても何も言わない人は、同年代の人の中で初めてですよ」
貢永「・・・」
士仙「でも、さっきの問いの答えは出てるんですけどね」
貢永「なら何故?」
士仙「どうせなら本人から何故なのか聞きたかったんですよ」
貢永「同じ・・・理由ですか?」
士仙「ええ、ですが、あなたからは聞ける気がしないんで、諦めましょう」
貢永「諦める・・・んですか?」

 貢永は少々驚いた表情で聞く

士仙「あの二人から聞いてもなにも面白くは無さそうなんで」
貢永「面白くない?」
士仙「如何なことでもレベルアップするためには、自分よりも上の者から勝たねばレベルアップはしないんですよ」
貢永「・・・」
士仙「尤も、紅夜さんが自分より下だとは思ってません。命さんには失礼だけど、自分より上には思えません」
貢永「なら紅夜さんで」
士仙「そんな性格のやつが、紅夜さんよりも上の人物がいたら紅夜さんとその人どっちを選ぶと思いますか?」
貢永「・・・」
士仙「では、そろそろ輪に戻ります。あ、もう外には誰もいませんから。誰か来るかもしれませんけど」
貢永「なぜ、なぜこのタイミングで今のような話を?」
士仙「あなたがこの場所に来たからですよ」
貢永「え?」
士仙「ここだけの話、もう一つ盗聴器だけを残してるんですよ」
貢永「と、盗聴器」
士仙「僕の体に付いてたんですが、邪魔だったんで隅の方に置いたんですよ。だから、ここでの話は恐らく聞こえませんよ」
貢永「・・・」

 士仙は輪に戻っていった
 貢永も少し考えてから後を追うように加わった


-- NEXT --------------------------

そろそろネタ切れになってきてしまった
今回の話は、自分の中での一つの目標でもあった『士仙の霊感』を書きたかったわけです
もう一つチャレンジしたいことがあるんですよね〜

ていうか『四まで』って発言したのに『NEXT』ってなってるあたり、全く約束守れないおっさんですね僕
2度も約束破るのは嫌なんで、ここでキッパリと言いましょう
「いつまで続くか全くわからん!!」
・・・気分次第、ヤル気次第ってことですね
ではこの辺でさようなら

[169] 最近小説書いてない……
ジャッキー - 2007年10月09日 (火) 22時44分

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- 作戦会議 -
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昼下がり 黒森神社 境内にて


海水浴に来た紅夜と命(とその他大勢。泉はなんとかして抜かす)。
そして海の不成仏霊に手伝ってもらって命を溺れさせる。
それを目撃した紅夜が命に人工呼吸。


「……ていうのはどうでしょう?」
「弱い」
狼輝さん――いえ、今は父さんですか――に一蹴される。
「お姉ちゃん、それじゃあなんかキセイジジツだけ急いでる感じだよ。ちゃんとレンアイカンジョウが伴わなきゃ」
ちょっと待った。分かりやすくカタカナにしたけどなに? この小2の子供が言うに相応しくない単語は。
「……父さん、ひとつ聞いても?」
「ん? ……なんだ?」
「娘さんに一体どんな教育をしているんですか?」
「い、いや? 私は何も知らんなあ」
ははは、と乾いた笑いが8畳の部屋に吸い込まれる。
今この部屋には父さんと私、貢永と娘の七海ちゃんがいる。位置関係は机――黒塗りの、いかにも高級そうな感じがプンプンする――を挟んで私が1人、親子が揃って2人並んでいるという感じだ。
もちろん椅子などという気のきいたものは無くて、座布団に正座だからしょっちゅう体勢を変えなければならない。
「ふふふ、そうですか」
「ははは、そうなんだよ」
ふふふ、はははという笑いが止まらない。そんな2人をちょこんという擬態語が相応しい様で座っている七海ちゃんが交互に不思議そうに見つめている。
「と、ところで七海。お前にも何か考えがあったんだって?」
「うん! これならどんな男もイチコロだよ!」
一体どういう場面で言葉を覚えてくるんだろう。
……近所のおばさんが話していた『愛娘調教計画』が真実味を帯びてきた。

――余談 おばさん達にはもう1つ、最近急に見えた貢永に対する『拉致誘拐監禁女子高生調教事件』の噂もある。
が、当の本人は知らない。

私が疑惑の念を付加した視線をさしていると、父さんは速攻で顔をそらした。
「じゃあ、こういうのはどう?」
七海ちゃんが話し始めたので、残念ながらこの追求はまた今度にしよう。



時は2月14日、バレンタインデー
命はこの日のために一ヶ月も前から準備をしていた。
本屋にはおいしいチョコレートの作り方からデザインの仕方から香りつけ、包装の紙や箱、はては渡し方の細部に至るまでの計画をそれはもう病的なほどまでに練っていた。
そして当日。
台所には失敗作や試作品、材料のチョコレートなど全部で命の体重を超えるんじゃないかと思うくらいの茶色いもので埋め尽くされていた。
そしてその中で一際目立つものがあった。
小奇麗な箱と可愛らしいリボンで飾り付けされたそれは、まるでそれ自体が光っているかのように存在感を見せ付ける。
が、まだ終わったわけではない。他の人に先を越される前になんとしても一番に憧れの人にこの至高の一品を渡さなくてはならない。
命は走る。妹や彼女のことをよく知る知人や同級生が止めようとするが、恋する乙女は止まらない。
そして見つけた憧れの人。
息を整え、本で見たことを思い出す。
まずは……
「紅夜! 私、チョコレートを作ってみたの。よかったら食べてみて!」

秘訣その1 オドオドせず、食べて感想を聞くまでその場にいるべし

「ん? そうか、今日はバレンタインデー、か。……貰おう」

秘訣その2 相手に取ってもらうのではなく、こちらから相手に渡すべし

「……。ふむ……」
「………」

秘訣その3 相手をじっと見つめ、プレッシャーを与えるべし。

「……うまいぞ」



「ていうのはどう!?」
「いいぞ! すごくいいぞ!」
「でも問題は、紅夜さんがおいしいっていえるくらいのチョコレートを果たして命さんに作れるか、ですよね」
う、という声が聞こえる。
彼においしいと言わしめるのなら、本物のパティシエクラスの腕前が無ければ難しい。
加えて命さんはお世辞にも料理がうまいとは言えない。
つまり、実現は難しい。
「う〜……そっかぁ」
「安心しろ! 父さんがビッグでビューティフォーでレトロなナイスアイデアで仇を討ってやる!」
どんなアイデアですか? それに仇を討つ相手は誰ですか?



まずな、みんなで闇鍋をするんだ。
「ありがとうございました。それじゃあ私、そろそろ帰ります」
ま、待て! 話を最後まで聞け!
「……下らない事いったら承知しませんよ?」
は、はい……。
でな、その中にあるものを入れるんだ。
そのあるものってのが、いわゆるびや……
「七海ちゃん、ちょっと喉が渇いたから、飲み物を取ってきてもらっていい?」
「へ? あ、うん……いいけど」
七海ちゃんが出て行くのを確認すると、顔面蒼白の我が父親に向き直る。
「すまん、私が悪かった。許してくれ」



「いっぺん、死んでみる?」



黒森神社に絶叫が響き渡った。
-- END --------------------------


コメント……そんな大層なものはありません。
強いて言えば、最後のセリフはあるアニメのパロディですが、分かりますかね?
このアニメのメイド喫茶紛いのものがあると知ったときは驚きました。
コメディに……なったかなぁ?

[172] ああ、もう秋じゃあないか
ジャッキー - 2007年10月14日 (日) 19時10分

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- 夏祭り -
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8月某日 黒森神社境内

夜空を横切る赤提灯。そこかしこから聞こえる陽気な音楽。
周りを見渡せば我が学園の生徒が営む屋台が、軽く数えて20以上はあるかな。
種類も豊富で射的、金魚すくい、フランクフルトにカキ氷、はては「おたまじゃくしすくい」とか(『(゜゜)〜』という絵が描いてあるところが、芸が細かい)「恋人貸します、彼氏彼女レンタル屋」なんてのもある。テーブルと椅子まで用意してメイド喫茶をするのはどうかと思うが。
まあ、風紀委員じゃない私には関知するところではない。
「今年もすごい熱気なの。ここだけ気温が超熱帯夜なの」
カサリ
「気のせい、といいたいところだけど、同意するわ……ん?」
「どうしたの?」
屋台と屋台の間、その僅かな黒い隙間を見つめる。
「いえ……気のせいね。さっきあそこに人がいた気がしたんだけど……」
「…きっと気のせいなの。いいからお祭り楽しむの」
「そうね」
そう、今日はお祭り。嫌なことは全て忘れよう。
鶯さんと会っても、今日は笑っていられそう。



先刻 天乃雪菜が見ていた場所。
そこでひとつの影が荒い息をしていた。

あ、あぶなかったぁ……! 危うく見つかるところだった。しっかし勘が鋭いなぁ。
ん〜……やっぱり天乃さんはつづらちゃんに任せるかなあ。遠目からより至近距離からの方が絶対いいだろうし。
こっちは会長さんとか晴美ちゃんとか遊意華ちゃんとか……あ、でも会長さんも厳しいな。いつの間にか後ろにいて「何してるんだい?」とか聞いてきそう。
だからレアで高く売れるんだけど。
やっぱり美術科会長&副会長コンビにするかなあ。
あ、そだ。
士仙君撮って熱狂的なファンに高く売りつけるってのもいいな。
しっかし、あれかぁ……厳しい。
ま、いいや。とりあえず見つけたら即チャレンジ♪

一体考えて何が変わったのか分からないが、一人納得すると影は神社を取り囲む林の中へと消えていった。
-- NEXT --------------------------


すっかり忘れていたこの企画。
目標:今年中に終わらせる。(オイ)

[176] さて、ネタはいくつかあるのだが自主没多すぎる。ので日が開いたのにもかかわらず一品。
ラスティ・ブランフォード - 2007年10月21日 (日) 23時20分

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- 狼とハイエナ -
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世の中は綺麗事だけではすまない。光があれば闇もあるし、死があればこそ生がある。
事の始まりは、とある一本の電話。


ジリリリリーン!
今時古い、ダイヤル式の黒電話が響き渡る。
七海が電話に出たものの、相手の声を聞いて連絡網でも友達からのお誘いでもないと分かる。

七海「パパー。電話だよー!」
狼輝「はいはい、誰からだい?」

娘からの返事を聞く前に、受話器を受け取る。

狼輝「もしもし?」
??「よお、俺だよ、俺。」

相手の声を聞いて、途端に狼輝の顔が引き締まる。こいつは侮れない相手。
仕事上の最大のお客様であり、時折に犯罪スレスレの仕事すら回してくる事もある、危険な人物。
七海を遠ざける為に表に出るように言うと、この男を対応する為に意識を切り替えた。

狼輝「……なんのようですか?」
??「まさかわかんねぇのか、俺が?俺だってば。」
狼輝「……三下にやらせてるような事を、貴様も始めてみたのか?」
??「冗談きついぜ、俺がそんな事やるわけねぇだろうが。」
狼輝「……悪ふざけもいい加減にしろ、仁鬼(じんき)。あまり暇でもないんだ。」

腹の底から底冷えするような、ドスの聞いた声を電話の向こうに響かせる。
その言葉を持って、向こうもオレオレ詐欺のような言動を打ち切った。

仁鬼「相変わらずだな、狼輝。先代の婆さんなら、もう少し軽く流したと思うぜ。」
狼輝「……良くも悪くも、『俺』にとっての敵には冗談をかけてやる気にもならん。……さっさと本題を言え。」
仁鬼「ふーん。クールだねぇ。これだから純粋培養な七海ちゃんが出来上がったんだろうな。」
狼輝「……その七海にろくでもない言葉を吹き込んでいるのは、貴様だろうが!!」
仁鬼「だったら、何で俺の家に娘がくるかね?来ない様にしつけときゃいいじゃないか、光源氏さん。」
狼輝「人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!月の無い夜は歩けないようにしてやろうか!?」

こんな事を言っているが、普通に考えてこの手の脅しは相手側がするものだ。
こういうやり取りに離れているのか、仁鬼は手馴れたものだ。

仁鬼「いい度胸じゃねぇか。そんな事したら、テメェの娘が達磨になると思っとけ。」

相手は筋者。本物の極道で、仁鬼は帳簿などを纏めているインテリ系の幹部だ。
法律などの改正により、昔に比べて勢力の弱体化が進む暴力団ではあるが、それでもなお勢力は小さいとはいえない位の組織であり、
彼の一声で動く人間は決して少ないほうでは無い。

狼輝「そんな事してみろ、貴様も含めて組を丸ごと呪い殺してやる。末端まで残らずな。」

決して脅しではない程度には、それを実行できる力を持つ事も互いに知っている。
仁鬼は単純にからかう程度に言っているつもりではあるが、曲がりなりにも堅気である狼輝にはそれが通用しない。

仁鬼「くっくっく、怖いねぇ。まあ、冗談はこのくらいにして本題に入ろうか。今年の夏祭りについてな。」

……話は簡単だった。祭りの会場となる黒森神社との事前打ち合わせであり、出店の配置、予想される収益、去年の反省点とその対策。
これらの事で、『町内会の担当』として仁鬼は電話をかけてきたのだ。
桜ノ宮町内会は閉鎖的でこそないものの、おおよそ20〜30代ほども重ねてきた伝統のある組織であり、当然人に言えない過去の一つ二つある。
その中でも公然と言うほどではないが、比較的知られている事に『ヤクザ』が町内会を仕切っているという事があげられる。
町内会長は気さくな人物ではあるが、紛れも無い極道の組長であり、身の回りも杯を交わした者がほとんどの役についている上、
長年に渡って行事を仕切ってきた一族であり、伝統がある彼らを追い出すのも一筋縄ではなく、縁日などは完全に町内会が仕切っている。
極道と言うものは、大抵宴会の類が好きな為にこの手の祭りは好んで参加する上に、所謂シノギの確保も兼ねているのでタチが悪い。

……正直、組に入るつもりはない狼輝にとっては一番の悩みの種である。
杯を交わすのは色々とヤバイのでそれだけはきっぱり断ったが、七海が仁鬼の娘と友達になってしまうわ、
先代以前からの付き合いと言う事もあって切るわけには行かないわと、対応に困る相手だ。

そんな事を色々と考えながら話をまとめていく。

狼輝「……桜ノ宮学園から出す店舗、いくらなんでも配置が悪くないか?」
仁鬼「だな、霊のスポットにもろに置くのは不味いだろうな。まあ、うちの連中に取り囲ませるのも不味いだろうが。」

しばらく話し合ったが、結局纏まらずに桜ノ宮学園の出店の位置は保留となった。

狼輝「さて、どうするか……」

とりあえずは、貢永の意見を聞くと共に、桜ノ宮学園の企画にいくつか修正をいれるべきだという事は間違い無い。
今週の日曜日に普通科の面々を呼び寄せて会議をしようと考える。

狼輝「まあ、仕方ないのかもしれないな……」

余り儲かるような仕事であるわけでもないし、基本的には地域の人に支えられて成り立つのが神社やお寺だ。
黒森神社は、積極的に地鎮祭などに声をかけてもらえることで持ち直せたのだ。先代以前からの付き合いのある人間を極道だからと無碍に扱うわけにも行かないだろう。
そんなことや日曜日に話す事等をアレコレ考えていたが、七海が戻ってきた事で渋くなっていた顔は途端に緩んでいった。

-- END or NEXT --------------------------


むう。夏祭りネタをまだ引っ張っていたわけですが、普通科が夏祭りで店を開く(統括会で決まったものではなく、普通科の会議で決めたと言う独自の企画。主催権とは関係ない。)
と言う構想だけが先走りして、何を開くとか具体的にどういう結末になるのか思いつかない内に、裏話っぽいものが先に書けてしまったという。
……今までは、親馬鹿故に神経図太く暢気に構えてたけど、なんかこっちの方向に動かすと途端にクールで怖い人になったなぁ……昔考えてた設定が、一部勢いでこぼれた感じだ。

[179] 悩みに悩む
3A - 2007年10月22日 (月) 02時09分

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- 人中之竜・五 -
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士仙「ところでハル、姉さんは?」

 姉さんとは3つ子の一番上の優子の事だ

晴美「たしか遠征」
士仙「俺が来た時に限って居ないな」
遊意華「そういえば前も居なかったね」
晴美「きっとあれだ・・・相性」
士仙「相性ってこういうときに使うもん?」
晴美「・・・どうだろう?」
ルティア「どうだろうって・・・」
士仙「・・・まあいいや」
遊意華「まあいいやって言っても、やっぱり残念なんでしょ?」
晴美「昔から姉さんのこと大好きだったからな〜」
士仙「っ―――」

 士仙の頬が少し赤くなった

ルティア「そうなんですの?」
晴美「ええ、今でこそこんなしかっりしてますけど、昔はよく姉の後ろに引っ付いてましたね」
蒼馬「昔の蒼みたいな感じかな」
紅夜「こいつは昔のままの方がマシだった」
蒼月「紅くん、照れなくてもいいんだよ?」
紅夜「・・・」

 紅夜が拳を握る
 それを見た蒼月は

蒼月「じょ、冗談も通じなくなってしまったのかい?」
紅夜「・・・」

 拳を引っ込める

蒼月(ほっ・・・)
遊意華「ハルとは競ったりしてたけど、ゆーさんには素直だったよね」
士仙「あん時は姉さんの言ってる事は全て正しいと思ってたからな」
晴美「私の言うことは?」
士仙「全てはずれ」
晴美「私は悲しいよ我が弟よ」
士仙「正直、姉さんのおかげだろ?ハルも俺もユイもここまで成長したのは」
晴美「そりゃあ・・・そうだね」
遊意華「私も?」
士仙「何回姉さんが罪(お泊まりした時のおねしょ、皿・コップ等のガラス・陶器類の破損等)を被ったと思ってる?」
遊意華「あ・・・あはは・・・・・あはははははははは」
士仙「まあばれてたとは思うけど」

 ピクッと士仙が何かに反応した
 少し考えてから言った

士仙「お客さんか」
命「へ?」
蒼馬「お客」
遊意華「さん?」
士仙「飛び入り参加になりますかね」

 そう言って入り口の方へ士仙は歩を進めた


――――――廊下――――――

 ここには小声で会話する3人組の姿があった

つづら「どうなの?」
鶯「開ける事自体は簡単なんだけど、問題は彼の聴覚というセキュリティね」
瑞樹「じゃあここでこうやって喋ってるのも危険なんじゃ・・・」
鶯「あ、それは大丈夫だよ」
つづら「3A曰く、『ありえない程小さな声』『NASAの機械でも不可能かも』って設定なの」
瑞樹「・・・それはそれで逆に私達がすごい超人ですね」
鶯「この超人ぶりはウォーズマンばり?」
つづら「テリーマンの新幹線のところにも匹敵しそうなの」
鶯「あ〜あれか」
瑞樹「子犬助けるやつでしたっけ?」
つづら「わかった君にはいい子いい子してあげるの」
瑞樹「う、嬉しい・・・のかな?」
鶯「HIT」
つづら「!!」
瑞樹「え?」
鶯「う〜む・・・」
つづら「・・・」
瑞樹「・・・」
鶯「・・・」

 カチリッ

 開いた
 鶯達はガッツポーズをとった
 その瞬間

 ガラガラッ


――――――風紀委員会室――――――

 ガラガラッ

 ・・・
 沈黙に包まれる
 その中で士仙だけが笑顔だった

一同「・・・」
士仙「スペシャルゲストです」
鶯「や、やっほーぉ・・・」

 鶯達への視線は痛かった
 なにせ盗撮、盗聴の容疑がかかっているからだ
 さらにこのピッキングにも犯罪性が確認できている
 しかし、それを問い詰める前にまたしても『お客様』が来訪したようだ

??「あのう・・・」
ルティア「如月さん?」
蒼馬「何故ここに?」

 風紀委員会室の入り口でびっくりしている鶯達の後ろにいたのは、普通科副会長・如月 光だった

??「何で私までブツブツ・・・」

 と、その後ろでブツブツ言ってる妹の如月 宇美も同行しているようだ
 その宇美と士仙の目が合った

士仙「久しぶり」
宇美「フンッ」

 宇美は鼻で返事をし、目をそらした

光「あのう・・・士仙さん」
士仙「はい?」
光「はじめまして、私、この子の姉の如月光と言います」

 ぺこっと頭を下げた

士仙「あ、こちらこそ。楠葉士仙です。いつも姉がお世話になってます」
光「そんなことありませんよ。以前は妹が申し訳ありませんでした」
士仙「ああ、あれですか。対したものではないんで気にしないで下さい」

 2人とも実に腰が低い
 さっきから頭を下げてばかりだ
 しかし、話は弾んでいるようで、笑顔が宇美達からも見て取れる

晴美「で、その手に持ってるもん何?」
宇美「ああ、これ?姉さんのクッキーだ、そこで尻餅ついてるやつがここまで作って持って来いって姉さんに電話してきたんだ」
晴美「へぇ〜」
鶯「そういうこと」

 いきなり鶯が輪に入る

鶯「私はサプライズゲストの登場のために鍵を開けたの」
つづら「うぐちゃんはそろそろお菓子がきれるだろうからってひかりさんに電話したの」
瑞樹「そういうことなんです」
遊意華「へぇ〜そうなんだ」

 鶯はもしピッキングがばれた時のために、『サプライズゲスト(光)の登場を盛り上げるためだ』という理由でいいわけをしようとしていたわけだ
 ・・・どうなんだろうか
 これで五分五分になっているのだろうか?
 それはおいておこう

 確かにお菓子はもう全て切れている
 しかし、

紅夜「もうそろそろ終わる予定ですが」
鶯「へ?」
蒼馬「そろそろ士仙君が帰らないとって言ってるんですよ」
ルティア「結構遠いそうなんですの家が」

 この場合、策を弄した鶯よりも光の方が報われない
 と、思っていると

士仙「え?クッキーですか?」
光「ええ、鶯さんに頼まれまして。宇美」
宇美「ん?」
光「クッキー持って来て」

 宇美が士仙と光のところへやってきた

光「ほら士仙さんに」
宇美「ほらよ」
士仙「ありがとうございます。でも今から帰るんですよ」
光「あ、ではどうしましょうか」
士仙「入れ物だけ入れ替えて持って帰りますよ。僕が来る時にクッキー入れてた容器にでも入れて帰りますよ」
光「あ、そうですか。じゃ、宇美言いなさい」

 光がきりっとした顔で宇美に言った
 そもそも鶯が呼んだのは光だけだった
 しかし、なぜ士仙がいると知っている宇美もやってきたのだろうか


――――――鶯が電話した時の如月姉妹――――――

光「・・・わかりました。急いで作ります」

 ピッ

 光は電話を切った
 と、そこへ

宇美「ん?姉さん、慌ててどうしたんだ?」
光「今からね鶯さん達にクッキー焼かないといけくなっちゃって」
宇美「あいつまた姉さんに迷惑かけて」
光「私も作るの久々だから嬉しいんだけどね」
宇美「で、どこに持っていくんだ?」
光「風紀委員会室」
宇美「風紀・・・そこって」
光「どうしたの?」
宇美「今晴美の弟のあいつが来てるんだよ」
光「・・・宇美」
宇美「どうした?」
光「一緒に届けにいこ」
宇美「な、なんで俺がわざわざ!」
光「いいわね?」
宇美「う・・・うん」

 宇美は光のプレッシャーに負けた

宇美「で、でもさ・・・なんで一緒に?」
光「あの事きちんと謝らないと」
宇美「謝ったよ」
光「きちんと私と一緒に謝るの、いい?」
宇美「わ、わかったよ」


――――――話は戻って――――――

宇美「あの時は・・・俺が悪かった、すまない」
光「宇美!しっかりとほら『ごめんなさい』って言いなさい」

 光は子を叱る親のように言った
 宇美もこんなに人がいる中で頭を下げる事が恥ずかしくてしかたないのだろう
 また、プライドが許さないとでも言うのか
 『しかもよりによってこいつに!』ということもあるだろう

士仙「お姉さん、もう僕は気にしてませんから」

 士仙は光をなだめるように言った

宇美「士仙・・・本当に・・・ごめんなさい」

 最後の方の声はかすかに震え気味に聞こえたのは士仙だけだったのだろうか
 いや、士仙も聞き間違えたのか
 宇美は顔を上げた
 一度士仙の顔を見て、それからこの場に居るのが耐えられなくなったのか、走って出ていった

士仙「あ・・・」

 士仙をはじめとした全員が宇美の出ていった入り口を見ていた

-- NEXT --------------------------

悩みに悩みました
何にって・・・
士仙にさせるある事に対してです。
これはここで話すよりも、雑談スレで話した方がいいかなとおもうのでそちらの方に書きます。

まあそれもあるので、こんなに四から間があいたわけです。
ここまでのストーリーだけで言うなら9月中に投稿できたわけですが、
ある事をさせるに至るストーリーを何種類か考えていたんですけど、
いいのが思いつかずに出来上がってるここまでで投稿した次第です。

ここからまたかなり間があきそうなんで、別の話でも作ってみます。

[186]
ジャッキー - 2007年10月23日 (火) 18時40分

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- 〜風紀がいた夏は騒がしい雑踏の中 -
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夏祭りで賑わう黒森神社の一角――といっても屋台通りの中心だったりするのだが――に、二十数名の浴衣姿の女子生徒の姿が確認できた。
その女子生徒たちの前には右手に綿菓子を持ちながら「話を聞きなさい!」と言う声を飛ばしている金髪の女子生徒、ルティア・天津・ライゼルロードがいた。
が、夏祭りで舞い上がっている二十余名の女子には、辺りの騒がしさも手伝って全く聞く耳を持たないようだ。
ルティアがひとつため息をつくと、隣の一年生に後を託した。
その一年生、宇美は、手に持ったそれをおもむろに集団の中に突き入れた。
「静かにしろって言ってます」
突き入れたものは木刀だったが、それは場を静めるには充分過ぎるものだった。
具体的には言えないが、宇美が持つ木刀は素人が刃物を持ったものよりも圧倒的な威圧感を放つのだ。そう、ただの木刀はただの木刀だが、宇美が持つ事によってまるで人に傷害を与える資格と力を得たかのような……全く別のものに変貌するのだ。
とにかく、鶴の一声というか宇美の一突きによって、場は静まった。
ルティアはひとつ咳払いをすると、説明を始めた。
「それではこれから夏祭りにおける風紀委員の仕事の説明をいたします。
その前に、この場に集まって下さった風紀委員と有志の方々に改めてお礼を申し上げます」
そう言ってルティアは頭を下げた。
「さて、今回の夏祭りでは去年にも報告があったカメラによる盗撮が起こると予想されます。私たちの仕事はそれを阻止する、この一言に尽きます。
怪しい人物ですが、カメラでも入りそうなバッグを小脇に抱えてしきりに周囲を見回しているような人がいたらまず間違いなく盗撮犯だと思ってよろしいと思われます。このような人物を発見した場合、尋問、脅迫、不意打ち等手段は問いません。即刻排除して構いません」
サラッと怖い事を言うルティア。
お嬢様育ちの彼女に盗撮という行為はとても許しがたい行為なのだ。それに、宇美や泉の影響も入っているらしい。
「それでは全員、散会!」


10秒後


「捕まえてきたぜー」
「早いですわね」
宇美が捕まえてきたというその首根っこを持って戻って、そして掴んだまま地面に放り出した。
「ぐえっ! コ、コラ、女の子がこんな事していいと思っているのか!?」
放り出された男は赤いTシャツにジーパンを無理やりハーフパンツに変えたという、非常にラフな格好をしていた。
「どうしますか、この変態。カメラは回収しときました」
「HAHAHA! 甘いな、私にはまだ文明の利器、デジタルカメラというものがある!」
男が右手に高く上げたデジカメを、ルティアがひょいと持っていった。
「あ……」
「そうですね……とりあえず、半殺してゴミ捨て場に捨てておきましょう」
「ちょうっと待たんかい! 犯罪者にも人権はあるはずだぞ!?」
這い蹲っていた男が勢い良く立ち上がった。
その男にルティアが冷静に言い放つ。
「今、自分が犯罪者であると認めましたわね」
「は、しまった!? って、違う! 今のは言葉のあやだあや! というか、会った事あるじゃないか君は!」
「は? 世迷いごとも程ほどにしないと精神病院へ電話しますがいいでしょうか?」
「いやいや私は正常だから! ホラ、私だ! 黒森神社の神主、霜月だ!」
そう男、霜月は必死に弁解をする。が、ルティアの表情には毛一筋ほども変化は無い。
「残念ですが覚えがありませんわね。宇美さん、好きにして下さい」
「おっけ」
狼輝は考えた。どうやったらこの危機的状況から抜け出せるか。
「ちょっと待った本気マジ? 待て話し合おう、人間は言葉というすばらしい対話の道具を持っているじゃないか。ホラ、動物は言葉を持っていないから話し合いも出来ない、だから妻をめとるにもいちいち喧嘩をするのさ。だが人間は違う。話し合えばどんな問題でも解決できない問題などこの世に存在するはずは無いのさ。さあ話し合おう」
「その割には人間、争い絶えませんわね」
「アウチ!」
狼輝の頭に昔の思い出が甦った。はじめて見た妖怪、はじめて見た幽霊、霊が成仏した時の紫色の光と感動、妻とであった時、娘をはじめて抱いたとき。
その思い出を大事にしまいこむように狼輝は、ゆっくりと目を閉じた。


「もういいですわ、宇美さん」
「ん? そうか」
走馬灯をかみしめていた狼輝の耳にそんな言葉が届いた。
恐る恐る目を開けると、目の前には邪気の無い笑顔を向けるルティアと、笑いを堪えている宇美の姿があった。
「?????」
「ごめんなさい、霜月さん。ちょっと驚かしただけなんですの。まさかここまで怖がるとは思わなくって」
「わりぃな、お礼代わりの軽い気持ちだったんだが、必要以上に怖がらせちまったらしい」
「あ、ああ……そうなのか」
お礼なら屋台の値引きの方が百倍嬉しいと思ったが、さすがに口には出さなかった。
「、じゃあカメラを返してくれるかな」
「あ、残念ながらそれは出来ませんわ」
「へ?」
「これらは一応学校に持って帰って調査をした後、ちゃんとご自宅にお返ししに行きますので」
「じゃ、じゃあ娘の着物姿は!?」
「残念ながら、諦めていただくしか……」
「そ、そんな……。何か方法は!?」
崩れ落ち、orzの格好のまま聞く狼輝。
「誰か一緒に回ってくれる女子がいればそれでもいいのですが……」
「俺はゴメンだ」
希望が見えたと思ったら0.1秒で断ち切られ、今度は額を地面に突きつけるほど深く落ち込んだ。
と、その時
「あら、狼輝さんじゃないですか。こんな所でどうしました?」
誰かの声が聞こえた。
-- NEXT --------------------------



ひどい話の引っ張り方。
結構反省。


>ラスティ・ブランフォードさん
小ネタ、大歓迎です。
今のままだと厚みのない薄っぺらいものになってしまいそうなので、前日談や後日談大いに喜びます、僕が。

[189] キャラが崩れていくのは話が進めば当然の事。シリアスを貫くだけです。
ラスティ・ブランフォード - 2007年10月25日 (木) 14時57分

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- 恋は悪夢 -
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近場と言う事もあって、休日は何時も家に帰っている。
そんな中、机の上で書類を書いている義父は真剣な表情をしている。

狼輝「……。」

家計簿の類かと思えば、それは神社の間取りであり、夏祭りの店舗の配置に悩んでいるようだった。
私にとっては、こういう真剣な表情な表情のほうが好ましい。何時もの、べたべたした親馬鹿全開な雰囲気よりは落ち着く。
思えば、初めて出合った時もこんな感じで冷たい表情を浮かべていた。正直、心が惹かれるくらいに。

狼輝「……あ、おかえり〜。」

……だと言うのに、なんだろう。七海さんだけに向けていた表情が自分に向けられると、この上なく不快なのは。
クールで鋭い、一匹狼のような雰囲気が腹を見せて服従する犬のように変わるのは、やはり見ていてどこか苛立たしく。
私が帰ってきた事に気づいた義父が崩した表情は、何となく許せない気がした。

貢永「……ただいま。」
狼輝「あれ、普通科のみなさんは?」
貢永「私に全部任せる、って。普通科代表として。」

まあ、光さんに話を通そうと思ったら、鶯さんがやる気がないのかどうかは知らないけど私に全部任せる、と。

狼輝「いい加減だなぁ。こっちに全部任せられても困るんだけど……」
貢永「町内会との兼ね合いで神社側にも都合があると思ったからでしょう。一応、具体案の写しなどは持ってきました。」

透明なファイルを取り出し、それを義父に見せる。割と分厚い書類の束を。

狼輝「……まいったな。」


wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


がちゃん

普通科の出し物の配置がひとまず決まり、光さんと鶯さん、そして町内会の許可を得て何とか話は纏まった。

狼輝「ふう。」
貢永「……疲れましたか?」
狼輝「ああ、少し冷や汗をかいたくらい。」

やはり親馬鹿な表情をされるより、真剣に悩んでちょっと冷たい雰囲気を漂わさせているくらいのほうが、私にとっては落ち着く。
しかし、そこにいたってふと思った事がある。どうしてこんなに親馬鹿になったのかと言う事を。

貢永「狼輝さん。」
狼輝「ん、なんだい?」

『お義父さん』ではなく、『狼輝さん』と呼んだ事で真剣な表情になる。
……今度から、2人だけしかいない時はこう呼ぶことを心に誓った。

貢永「前から思っていましたけど、どうしてそんなに親馬鹿なんです?一時的に身を寄せているだけの私に対しても。」
狼輝「……最近親馬鹿だとかロリコンだとかキッパリ言うようになったよね、君。……まあ、理由は簡単なんだけどね。」

そう言って、語りだす。

狼輝「過去に、家族皆を失った。死んでしまったのは、両親の責任だし、それを責める事はできない。
割と冷めていた家族仲だったけれど、それでも繋がりはあったし、少なくとも大切なものだと自分にとっては言い切れるものだった。」
貢永「だから、親馬鹿になったと?」
狼輝「……そう言うことさ。」

確かに、筋は通っている用に見える。

貢永「……ロリコンだの光源氏だの言われてる理由は?」
狼輝「……単純に君らを引き取ったからだろうな。もっとも、私にはその気はまったく無いと思っているが。」
貢永「七海さんの発言。これは無視できないと思いますが。」
狼輝「……正直、何であんな風に育ったのかはさっぱり分からない。まあ、いつかは親離れしてくれると思っているが。」

しかし、このときの狼輝は知らない。本気で七海に思われている事を。
血の繋がらない親子と言う事を知っている七海が、10年後にはストーカーになるほどに。

貢永「……奥さんは取らないんですか?ちゃんとした相手がいれば、こんな事も言われずに済むとは思いますが。」
狼輝「……プラトニックに付き合えて、霊能力の類を扱える人となると難しいんだよ。」
貢永「プラトニック、ですか。むしろ、その手の巫女は多いと思いますが……そういえば、狼輝さんはアレが」
狼輝「ストップ、女の子がそう言うことは言うものではありません。」

じろりと睨まれ、釘を刺される。だがそう言った矢先にため息と共に呟く。

狼輝「……まあ、何を言ったって屁理屈なのかもしれないな。妻を娶らないのは世間が言うように無自覚にロリコンだからなのかもしれないし。」
貢永「大きくなった七海さんでも本当に娶ってみます?」
狼輝「冗談でも止めてくれ、血が繋がらなくても小さい頃から面倒を見てきた子供をそう言う対象として見れるわけがないだろう。」
貢永「そうですか。まさかとは思いますが、私を狙っているなどと言う事もありませんよね?」
狼輝「……随分とまた、過激だね。もしかして紅夜さんの件で何かしら参考にでもしようと思ってるのかい?」
貢永「半分は考えてますが、もう半分は身内のことを知っておきたいと思ったからです。教えてくれますか?」
狼輝「……あえて言うなら、恋愛そのものに興味がないな。そもそも、人とアメーバが恋愛できると思うかい?」

……たとえ話に持ち出された存在に思わず冷たい汗をかく。ギャグ調の汗を。

貢永「……アメーバじゃ無理でしょう。」
狼輝「不思議な力を持つ人間の多くは、自分は人ではないと一度は悩み考える事がある。その結果は様々だが、『俺』の場合の結論は【心こそ人、しかし器は魔物】だった。」
貢永「つまり、人を思う事はできても、体は人が受け入れられないと言う事ですか?」
狼輝「紅夜君の場合も、本人に自覚が有る無しは別として、やはりどこかでそれに気づいている節が有るんじゃないかと思う。だからこそ、必要以上に人と関わろうとはしないんだと思うよ。」
貢永「……お義父さんは、どうすればいいと思います?」
狼輝「こればかりはどうしようもない。彼は彼なりの結論を出すしかないし、力にも無自覚だ。」
貢永「そのきっかけに、命さんが力を貸せれば良い方向に行きそうですね。」
狼輝「そうだね。だけど、こればかりはやっぱり本人達の問題だ。君が手を貸せばうまく行く類の事でも無い。」
貢永「お義父さんが、奥さんを取らないように?」
狼輝「……随分とその事を気にするね。」
貢永「世間中にそんな噂が流れていれば、娘もやっぱり心配になります。」
狼輝「あはははははは。」
貢永「笑ってどうするんですか。」
狼輝「いや、こんな風に言うくらい君も馴染んだなぁ、と思って。」
貢永「まったく。何時までもここにいるわけでもありませんよ。」
狼輝「そうだね。でも、こうやって笑える時が一番幸せなんだ。いつかは別れもあるし、出会えなくなるときも来る。そのときの寂しさはいなくなってからじゃないと分からない。大人になると、そう言う過去を振り返るほどの余裕も出てくるから笑えるんだよ……」


-- END or NEXT --------------------------

さて、ねぇ。なんかクールで大人な狼輝ネタばっかり(と言うか、狼輝がオチ担当に走るジャッキーさんの作品見てたら反動で)
書きたくなってしまうのはやっぱり原案を出した人間の身びいきなのかねぇ……お陰で七海の出番が用意できない(汗

今更言ってもしょうがないことでしょうけど、
設定にははっきりと書いてませんが、狼輝は未婚です(汗
ついでに出頭するときには結構毅然としているイメージがあります。言い訳も余りせず、一応大人な対応すると思っていました。
……ギャグネタで貢永に酷評されるオチ担当にしたのが不味かったか。
すっかり冷静な頭脳派と言うイメージが崩れてしまった気もしますけど、それは認識の違いですし、別に謝らなくて結構です(汗

[190] うーむ、認識の相違というのは中々難しい
ジャッキー - 2007年10月25日 (木) 20時54分

言い訳
『きっと狼輝は普通の学園の女の子たちの前ではあーゆー仮面を被っている(七海でも)
なぜならいつもやくざ屋さんとかの奴らと付き合い、顔が険しいのを自覚しているから』


はい、まあなんというか、謝らないでといってもすいません。

[191] 一応確認 間違ってたらごめんなさい
ジャッキー - 2007年10月25日 (木) 23時14分

貢永「……奥さんは取らないんですか?ちゃんとした相手がいれば、こんな事も言われずに済むとは思いますが。」
狼輝「……プラトニックに付き合えて、霊能力の類を扱える人となると難しいんだよ。」
貢永「プラトニック、ですか。むしろ、その手の巫女は多いと思いますが……そういえば、狼輝さんはアレが」
狼輝「ストップ、女の子がそう言うことは言うものではありません。」




このアレはあれですか、186の最後のセリフからとったのですか?
ぶっちゃけ、アレというのは狼輝の奥さん候補の事ですか?

[192] まあ、割と何でもありな人だとは思う。
ラスティ・ブランフォード - 2007年10月26日 (金) 17時40分

>アレ
・性的不能者で実子は無理(はっきり言って、女性に興味が無い理由とするには設定として弱い気がするが。)

……いまさらながら、設定がどうかなーと思って仕方ない。

と言うか、多少の設定のブレに突っ込むのは野暮でした(汗
無駄にある裏設定は、自分の中で留めて置くべきです。
キャラクターの発展のためにも、自分が原案だと出しゃばるのはろくでもないOTL

[194] 疑問解消
ジャッキー - 2007年10月26日 (金) 18時19分

ああ、なるほど。そういうことでしたか。
ありがとうございました、これで後の展開の変更とかなさそうです。

[199]
ジャッキー - 2007年11月06日 (火) 21時43分

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- 夏祭り2 -
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そのころ 黒森神社内某所


「紅く〜ん♪ あれ買ってこれ買って〜♪」
「自分で買え」
「え〜、冷た〜い」
「冷たくて結構。そしてその猫なで声を止めろ。ついでに勝手に俺の腕を取るな」
「惚れちゃうから?」
「その言葉も聞き飽きた」
紅夜は嘆息し、何か変わったものはないかと辺りを見渡す。
黒森神社、屋台通り。
ここを紅夜と蒼月、少し後から命と蒼馬が歩いていた。
命は手にチョコバナナを、蒼馬は綿あめを持っている。
「……はぁ。全く、いつまで諦めないつもりなんだろう」
蒼馬が我が愚妹の所業を嘆く。
「なんていうか……すごいわよね。あの執念。ちょっとだけ見習っちゃう」
「いや、あれは見習っちゃいけないと思うよ。今はいいけど大人になったらただのストーカーだよ?」
「うん、まあ、それはそうなんだけど」
命は改めて2人を観察する。多少嫉妬が混じった視線で。
前を歩く2人はどこからどう見ても恋人ではない。断言しよう。
100人に聞けば、99人は女のわがままに付き合う男性としか答えないだろう。
時々、男のほうが照れ隠ししているんだ、という人がいるかもしれないが、その人の目は間違いなく節穴である。
なにしろ、紅夜は会長命令に従っているだけなのだから。
「でも、好きな人に堂々と好きって言えて、それであんな風に堂々と甘えられるなんて、羨ましいなと思うなぁ」
「……ただの迷惑な人、だよ」
でも、だ。
好きな人に好きと言えない人が蒼月を見たら、誰でも羨ましいと思うだろう。その勇気をもらいたいと思うだろう。たとえそれが傲岸不遜な魂だとしても。
「私も、あんな風になれたらいいのにな。そうしたら好きな人に思いっきり甘えられるのに」
「本当に頼むからお願いだから見習わないで。命さんにまでそうなられたら紅、本気で死んじゃうから」
「……え、な、べ、別に紅夜になんか! 紅夜なんか全然好きじゃないわよ!? あんな無愛想で人を見下してなんでも自分ひとりでやっちゃう自己中人間なんか!」
ああ、全部当たってるなあ、と蒼馬は思った。
「あ、ああ、いやゴメン、ついてっきり……」
「て、てっきりって何よ! 違うから、ほんとに違うからね!?」
真っ赤になってそう言っても説得力は皆無に近いと思うが、それでは話は絶対に終わらないので蒼馬は必死に頷く。
そんな後ろの騒動を知らず、前方の2人は歩いていた。
今の紅夜の心中は、誰かこいつを止めろ、だ。
こんな時に都合よく宇美とかそこら辺が通りすがればいいのだが、さすがにそこまで漫画的な展開を本気で期待するほど紅夜は子供ではなかった。かといって、この状況を脱するのも不可能に近い。
かつてこんな状況になった時に紅夜は、173通りの方法を試した。
トイレに行きたいから夕飯の支度、学校への忘れ物から友達との約束。
そのどれもが撃沈し、海へと沈んだ。
数々の失敗から学んだ事は、諦めだった。
「おい、いい加減にしろ」
「そんな冷たい事を言わないでくれよ。この日のためにつまらない会長職務を真面目に勤め上げたんだから」
「……この為だけにか?」
「オフコースもちろんthat is right」
「……もういい」
軽くこの世界を呪いながら蒼月に手をとられる紅夜であった。
-- END or NEXT --------------------------



当初の構想より半分近く減ってしまいました。
最初は宇美とバッタリ遭遇、険悪な雰囲気に、をめざしていたのですが、それだとあまりにも蒼月が悪役的になってしまったので挫折。
まあ、彼らの性格は現せた気がするのでいいとします。
命がツンデレになってしまったのは仕様です(何



追伸
蒼馬の馬が変換するとき、なぜか魔になることが度々ありました。
実は蒼馬って腹黒いのでしょうか?←きっと違う

[203] やっと!やっと!
3A - 2007年11月15日 (木) 02時09分

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- 人中之竜・終 -
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光「宇美!待ちなさい!」

 光は宇美を追いかけて出て行った
 出る時に室内に向かって一礼をして・・・

蒼月「君は追いかけなくていいのかい?」

 蒼月が沈黙を破って士仙に話しかけた

士仙「特に追いかける理由が思い当たりませんね」

 即答する士仙
 まるでその質問が来る事を知っていたかのように

蒼月「理由なんてなくていいんだよ、それが青春であり、恋愛なのだよ」
士仙「彼女に恋愛感情なんて抱いてませんよ?」

 またもや即答
 実にスムーズな会話ではあるが、ここまで早く答えられると少し怖い気がする
 読心術でも心得ているのではないかと

士仙「でも」
蒼月「でも?」
士仙「一度くらい恋愛ってしてみたいですね」
鶯「むぅっ?『一度くらい』てことは・・・」
ルティア「お付き合いとかなされた事ないんですの?」
士仙「はい」
蒼馬「えぇ?」
つづら「それは驚きなの」
命「うん驚いた」

 一同の視線が士仙に集まる

士仙「・・・何をそんなに驚いてるんですか?」

 こればっかりはわからないみたいだ
 モテるべき要素がこれほどまでに揃った男はいないだろう
 しかし、その男は自分のどこがモテるのかは知らないみたいだ
 そう彼と言う存在だけでモテるということを
 ちなみに彼の所属するラグビー部は、昨年まではマネージャーが1人だったのに、今年は4人にもなった
 (もっと希望者はいたが、顧問が「多すぎる」という事で新入マネージャーは抽選で3名となり、その倍率は10倍にもなったと言う噂)

晴美「こいつ『とりあえず付き合おう』とか嫌いなんですよ」
遊意華「だから入学式の日に告白しに来た人達全員振ったんだよね?」
士仙「確かにそうだけども」
貢永「全員と言うと?」
士仙「上級生入れて・・・30〜40人てとこですかね」
命「そんなにいたなら1人くらい付き合っても」
士仙「僕としては知らない人といきなり付き合う事なんかできませんよ」
ルティア「何故ですの?」
士仙「僕の偏見が入りますけど、やっぱり彼氏彼女という関係になると言う事は、双方が双方共のことを好きで会って初めて成り立つ関係じゃないかなと思うんです」
一同「ほぅほぅ」
命「じゃあさ、紅夜は・・・どうなの?」

 今度は紅夜に視線が集まる

紅夜「さあな、考えた事がない」
蒼月「てれなくてもいいんだ・・・bmthpていhpjちhj:えいh!!!!!!!!!!!」

 アイアンクロー炸裂

士仙「って、そろそろ帰らないと・・・今日は本当に楽しかったです」
ルティア「こちらこそですわ」
命「うん、とっても楽しかった」
晴美「あ、私送ってくよ」
遊意華「私も!」
鶯「あのぉ〜、罪滅ぼしと言っちゃおかしいけど、私が送っていっていいかな?」
士仙「・・・構いませんよ」
鶯「晴美さんに遊意華ちゃん、私1人で行っていいかな?」

 笑いながら言ってはいたが、先程とは少し違う鶯の雰囲気に気付いた者は紅夜、つづら、そして士仙だけだったろう

遊意華「えぇ〜、私も行きた―――」
士仙「ユイ、それとハル、お前らはここの片付けをしとけ」
遊意華「ぶぅ〜」
晴美「私はいいけど、帰り危なくないですか?」
鶯「その辺は気にしなくていいよ」
士仙「だとさ」

 士仙は荷物を持った

士仙「・・・っとハル」
晴美「?」
士仙「金」
晴美「!!・・・え、えーとなんのことかしらん?」
士仙「・・・・・・Do you have money?」
晴美「ノーアイハブント」
士仙「・・・立て替えとくよ、そろそろ親父切れるし」
晴美「わ、悪いね」
士仙「気にすんな」

 士仙は笑顔で言った
 そしてボソッと一言

士仙「ここに来る口実にもなるし」
晴美「何か言った?」
士仙「いんや何も」
鶯「そろそろ行きましょう」

 割と低姿勢と言うかおとなしい鶯が言った

士仙「ではまたの機会にでもお会いしましょう」

 ガラガラッピシャッ


――――――帰り道――――――

士仙「何か話ですか?」
鶯「あはは、まぁね」
士仙「あっちの公園にでも行きますか?」
鶯「・・・そうしよっか」

 2人は程なくして公園に着き、ベンチに座った

鶯「なんでわかったの?」
士仙「何のことですか?」
鶯「盗撮・盗聴のこと」
士仙「うーん、逆になんでだと思います?」
鶯「そうね・・・ズバリ抜群の聴力!」
士仙「確かに聞こえてはいましたけど、『気にしないと聞こえない』くらいですよ」
鶯「ということは、やっぱり先読みしてたんだね?」

 鶯の表情は真剣そのものだった
 それにひきかえ士仙はというと、軽く微笑んでいた

士仙「ご名答」
鶯「先読みも含めてだけど、なんでわかったの?」
士仙「あなたが1つ目の盗聴器を僕につけた時に「なにかつけたな」って思ったんです」

 鶯はじっと士仙の横顔を見ながら話を聴いている
 そんなに悔しいのか、いやそれは愚問だろう
 何故なら同年代の者達に負けるなんて味わってなかったのだから
 それが今日完全に負けた
 それも2つも年下の子に
 士仙はなおも淡々と話し続ける

士仙「それで警戒心を強めたんです」
鶯「すると2つ目を私がつけてきた」
士仙「それでほぼ確信に変わりましたね、でも1つだけ解せないんですよ」
鶯「解せない?君ほどの人間が何に対して言ってるのかな?」
士仙「何故盗聴器は僕だけにつけたんですか?蒼馬さんにつけても十分意味があるでしょう」

 士仙は「違いますか?」という顔で鶯の方へ顔を向けた
 普通の女の子達ならこれでK.O.なのだが・・・
 鶯も少しドキッとしたようだ
 結構な至近距離なのでそれもうなずける
 その鶯が1つ「フフッ」と笑いを挟んでから答えた

鶯「勝負は好敵手がいて初めて面白くなる、私はそう思ってる」

 鶯は少し寂しそうな顔をしていたように士仙は見た
 恐らく彼女のレベルについていける者が現段階ではいないのだろう

鶯「蒼馬君の力はもう既に知ってるから、今更確認しても意味がないからだよ」
士仙「では何故僕に?」
鶯「君の噂からちょっと試したくなってね」
士仙「では何故無意味と知って蒼馬さんにカメラを?」
鶯「それはあなたにカメラをつけたら無意味だからであって、蒼馬君にカメラをつけることには意味が十二分にあった」
士仙「何故僕につけたら無意味なんですか?」
鶯「例えば、演技力抜群、超人気俳優がドラマで演技もせずにカメラマンとして撮影に参加してたらおかしいでしょ?」
士仙「僕にはそんな価値はありませんよ」
鶯「謙遜しなくていいよ」
士仙「本音ですよ」

 2人は士仙が鶯の方を向いてからずっと互いに互いの目を見ながら話していた
 鶯の顔から笑みは消えていた
 そして鶯は疑問の目で士仙に問う

鶯「何で本気でそんな事を言えるの?」
士仙「そんな事?」
鶯「謙遜、あと自分に全く価値を見出せないといった風な事」
士仙「・・・」
鶯「誰でも少しは喜んだ目をしたり、照れたりするのに、あなただけは今まであった誰とも違う」
士仙「・・・」
鶯「私はその答がみつからないことが悔しくて、悔しくて、八つ当たりと言われても仕方がないほどあなたが憎い」
士仙「・・・」
鶯「それで・・・あなたの目が怖い・・・・・こんなことなんで思ったんだろって自分でも思うんだけど、全てが見透かされていそうで」
士仙「・・・」
鶯「・・・それだけ」
士仙「・・・怖いですか?」

 士仙はやっと口を開いた

鶯「うん」
士仙「なら何故目を逸らさないんです?」
鶯「そ、それは・・・」

 鶯はこれの答もわからなかった

士仙「単純なことだ、眼球を1cmいや1mmでも上下左右どの方向かにずらせばいいだけの事」
鶯「・・・」
士仙「・・・何故本気でああいうことが言えるのか」

 士仙は話を戻した
 解を与えずに

士仙「それは自分がそうでも思わないと天狗になりかねないですし、天狗になったら仲間外れの対象になりうる可能性があるし、それ以上のレベルUPは望めない」
鶯「仲間外れ?」
士仙「あなたと同じですよ」
鶯「私と同じ?」
士仙「寂しがり屋なんですよ僕、結構意外じゃないですか?」

 士仙は優しく笑った

鶯「私が寂しがり屋?」
士仙「違います?」

 鶯は戸惑った
 自分は寂しがり屋なのか
 心のどこかで「そんなことはない」と言っている自分がいて、「そうだ」と言っている自分がいて、本当の自分はどれなのか
 ふと我に返る
 なんだろう、何か特別な何かが自分の中にできたようだった
 その正体に気付くのはいつになるのかわからない
 5秒後かもしれないし、5年後かもしれないし、はたまた走馬灯の中でやっと気付くのかもしれない
 士仙が口を開いた

士仙「送りますよ?」
鶯「・・・流石に紳士だね」
士仙「姉に鍛えられましたから」
鶯「わかってたんでしょ、最初から」
士仙「送らせるつもりだったって事ですか?」
鶯「うん、ただ話したかっただけだし、2人きりでね」
士仙「じゃ、行きますか」
鶯「いや、いいよ」
士仙「え?」
鶯「1人で気分を紛らわしたいんだ〜」
士仙「・・・なら忘れ物です」

 そう言って士仙はポケットから小さな物を取り出した
 1つは『2つ目の盗聴器』、もう1つは盗撮用超小型カメラ

鶯「あ、ばれてたんだカメラ」
士仙「僕はカメラマンもできる俳優って事ですか?」
鶯「ははは、やっぱり君面白いよ」
士仙「では、またいつか」
鶯「近いうちに会いたいね」
士仙「できる事ならそれがいいですけどね」
鶯「・・・ホントいい目してるよ」
士仙「惚れちゃうほどにですか?」
鶯「そうだね〜・・・うん、恋が芽生えるほど」
士仙「ははは、まだ怖いですか?」
鶯「どうだろうね、わからない」
士仙「そうですか・・・じゃさよなら」
鶯「バイバイ」

 そう言って2人は互いに目を逸らし、そして別れた
 

-- END --------------------------

やっと終わりましたねこのシリーズ
でもこれはあくまでも次への布石な訳ですけどね
やっぱり一番のネックはここで雪奈を出せなかった事ですかね
泉は・・・普通に忘れてましたし(リアルです)
まぁこれで一応ほぼ全キャラを喋らす練習ができたので、これからは雪奈ですね
泉は・・・・・・ノーコメントで


[204] あ〜そういえば
ジャッキー - 2007年11月16日 (金) 00時04分

泉なんていたなあ、そういえば。
こっちもすっかり忘れてた。


どうもご苦労様でした!

[205] 主観:なし 登場人物:etc
凪鳥 - 2007年11月16日 (金) 02時29分

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- 『半年革命』 -
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 『半年革命』

「って、なんですか鶯さん?」

 開口一番、花園 遊意華は自分の正面に座る人物に問いかけた。

「ありゃ、遊意華ちゃん懐かしい事を聞きますね〜」

 その問いかけに答えたのは庭瀬 鶯。
 桜ノ宮学園の長い昼休み、珍しい事に遊意華は普通科総括会に遊びに来ていた。

「え〜と、一応軽くハルから聞いたんですけど、鶯さんや光さんとか・・・それに雪奈さんとかの方が良く知ってるって」
「晴美さん? あぁそっか、あの子ってあの時中等部総括会に入ってたんだっけ」
「一年前・・・というか、紅夜さんが副会長に就任した時の事だって聞いたんですけど」

 一年前・・・正確には遊意華や晴美が中等部の三年生の頃。
 それはどうやら総括会関係の事らしいので、当時何の役職にも付いていない一般生徒だった遊意華では詳しい事は知りようがない。
 晴美は一応、その当時中等部総括会の役員を務めていたので、高等部の総括会の動きも少しだけ情報が入って来ていたらしい。

「そうそう、う〜ん懐かしいですね」
「あら、いらっしゃい遊意華さん、二人で何の話を?」
「あ、光〜いいとこに来たよ」

 うんうんと、鶯が感慨深く思い出に浸っていると、部屋の奥からポットを持って如月 光が現れる。

「いいところ・・・ですか?」
「そそ、丁度『半年革命』の話をしてたところ、いや、あれは凄かったねぇ」

 言われ、光は半年革命? と一言反芻すると、懐かしむ様な口調で鶯に答える。

「あぁ、アレですか・・・確かに色々と凄かったですね」
「わぁ光さんまで驚く事なんだ、ますます興味沸いてきたな〜」

 鶯もそうだが、この光までもが驚くというのは結構な出来事だ。

「いいでしょう、後世の為に詳しく教えてあげるよ!」

 そういうと、鶯はどこからかプロジェクターを持ってきてセットする。
 そしてまたどこからか取り出したハンディカムをプロジェクターに映し出すと、意気揚々と語り始めた――。


 ●


「――本気ですかっ・・・!?」

 学園の一室。
 そこは質素でシンプルだが、しかしどこか高級感漂う調度品が室内を固める比較的広い。

 『桜ノ宮学園理事長室』

 そこに、一人の男子生徒の声が響く。

「えぇ、私はいたって本気ですよ」

 ゆったりと椅子に座っている女性――この学園の理事長は、男子生徒の驚きを正面から受け止め、言い放つ。

「普通科高等部一年・綾河紅夜さん、今日付けで貴方を桜ノ宮総括生徒会・副会長に任命します」
「お断りします」

 間髪いれずその男子生徒――綾河紅夜は、拒絶の意思を伝える。

「理事長命令です、当然お断りさせません」

 にこりと、理事長は微笑む。
 そして任命書と書かれた書類と、生徒会副会長と書かれた腕章を紅夜にゆったりと差し出してくる。

「・・・なんで私が? 他に適任は大勢いると思うんですが」

 紅夜は差し出されたそれを受け取らず、微笑む理事長に疑問をぶつける。

「・・・新しい風を、吹かせるべきだと判断したからです」

 理事長は差し出した手を下ろすと、ゆっくりとそう答える。

「新しい・・・風?」
「えぇ、今の桜ノ宮が変わるには何かきっかけが必要ですから」
「・・・」

 きっかけ・・・例えばそう、今の今まで伝統ある女の園であったこの学園に『男性の生徒会長が台等する』――とか。

「いまの総括会――いえ、生徒会ね・・・は、人選を間違えたつもりはないのだけれど」
「・・・・・・」

 紅夜は理事長のその態度に、ある噂を思い出す。
 現在の生徒会は、『学園史上最悪の生徒会』だという噂。

「その顔だと、少しは知っているかしら?」
「えぇ、まぁ・・・噂は少し」
「そう、それじゃ簡単に説明しましょう――・・・」

 そういって理事長は、軽くこの桜ノ宮学園の現状を説明し始める。

 今、この学園のトップ・・・つまり総括生徒会や各科総括会の状況は、『最悪』らしい。
 現生徒会の統率力の小ささから、本来一つにまとまって学園を寄りよい道に導くべき総括会が、バラバラであるという。

 学園生徒のまとめ役である各科総括会、その総括会をまとめる義務と権利を持っているはずの生徒会。
 しかし、現在は『女帝・天乃雪奈』率いる看護科総括会に完全に掌握されている。
 そのせいで会議は全て看護科より、主催権も看護科が殆どを占めるという状況。
 その状況は、雪奈が看護科会長に就任した時から始まる。
 つまるところ現役生徒会役員の面々は、雪奈という一人のカリスマの前に圧倒されていた。
 決して生徒会の力が弱い訳ではないが、それでも雪奈と比べると見劣りしてしまう。

 結果として看護科の独走を許してしまい、それが他の二科とのバランスをも崩してしまっていた。

「優秀なのは良い事なのだけれど・・・天乃さんは少し私欲に走りがちというか、看護科を愛し過ぎというか・・・」

 本来総括会のあるべき姿は『学園全体の利益』を一番としなければならない。
 今の『科を一番とする』雪奈のやり方は、少々本来の総括会の姿を外れていた。

「つまり、私にその状況をどうにかしろと?」
「その通り、察しが良くて助かりますね」
「・・・それで解らないほうがどうかと思いますが」
「本当なら普通科に動いて欲しいのだけれど、静観を決め込んだみたいで・・・困ったものです」

 やれやれ、と軽く溜め息を付きながら理事長は机をトントンと指で叩く。
 理事長の話では、普通科総括会の会長を務める庭瀬鶯は、その気になれば雪奈とも方を並べる程の実力を持っているらしいが・・・。
 扱いが非常に難しいのだとぼやく。

 理事長は紅茶を一口飲むと、崩れていた表情を戻し、改めて紅夜の方を向く。

「――やり方は貴方に全て一任します」
「全て・・・ですか?」
「えぇ、貴方の好きなようにしてもらって結構です・・・大丈夫、責任は私が全て持ちますから」
「・・・・・・」
「存分に、新しい風を吹かせてください」

 いって、にこりと、どこか不適に笑う。

 ・・・・随分と思い切った事を言う理事長だ。
 つまるところ、それ位思い切った事をしないと現状を打破できない・・・という事。

「・・・・・・」

 はぁ・・・と紅夜の深い溜め息が、理事長室に木霊する。

「・・・解りました、できるだけやってみます・・・ですが期待はしないでください」

 流石にそこまで言われると断りきれない・・・そもそも理事長命令では断る事も叶わないが。

「いいえ存分に期待しますよ、貴方が優秀なのは・・・貴方の『お姉様』から耳にタコが出来るくらい聞かされてますからね」

 そういって理事長は改めて書類と腕章を差し出す。

「・・・お姉様?」
「えぇそう、綾河氷雨さん」

 聞いた事がある、この若くしてこの学園の理事長席に座るどこかおっとりとした女性は、確か姉の同級生だったか。
 あの天然ボケめ・・・余計な事を。

 そう毒づきながら、紅夜は差し出された書類と腕章を受け取った。


 ●


「鶯さん・・・こんな映像どこからもってきたんですか?」

 プロジェクターに写された映像をみると、呆れた表情で光は問う。

「ノンノン、光〜私の情報網は完璧なのですよ、理事長室を盗撮するくらい簡単・・・」
「・・・盗撮?」

 ピクリと光の片眉が動く。

「あぁいやいや、なんでもないよ光、うんうん盗撮なんてそんな!」
「・・・本当かしら?」
「まぁそんな経緯で、紅夜君は副会長に晴れて任命されたわけだよ」

 無理やり光との話を切り上げると、鶯は改めて説明を始める。

「ふぇ〜、そうだったんですか〜初耳です」

 遊意華のその言葉に、まぁ私しか知らないだろうなぁ〜心の中で呟く。

「つまり、紅夜君は看護科・・・雪奈さんの『カウンター』として理事長が送り込んできた訳だよ」

 うんうん、と鶯は頷く。

「う〜ん・・・でも理事長さん、本当は鶯さん達に動いて欲しかったんですよね?」
「いやその〜・・・流石に当時の看護科の勢いは止められなかったからねぇ、私達としても静観するしかなかったんですよ」
「そうですね、当時は流石に自分達の身を守るのに精一杯でしたからね」

 遊意華の的確な突っ込みに、思わず苦笑いを浮かべる鶯と光。
 今はその影を潜めてはいるが、雪奈が『女帝』と呼ばれるに相応しい能力を秘めているのは確か。
 その力が完全爆発していたその当時は、いくら鶯、光といえども簡単に手を出せるものではなかった。

「雪奈さん、さすが『女帝』ってことなんですね!」

 雪奈にある種の憧れを持っている遊意華は、やはり凄い人なのだと改めて痛感する。

「とまぁ、そんな訳で桜ノ宮初の男性役員が誕生した訳だけども」
「それが『半年革命』なんですか?」
「いやいや、これはまだ始まりに過ぎないのだよワトソン君!」

 どこから取り出したパイプを加え、ビシッと鶯は遊意華を指差す。

「一応初の男性役員という事で、革命は起こったんですけど・・・それからが正に革命というか何というか」
「そそ、じゃここからは私が特別に編集した映像で説明しちゃおう!」

 ハンディカムのメモリーカードを取り替えると、勢い良く鶯は再生ボタンを押す。

 暫くすると、プロジェクターに先程のように映像が流れ始めたーー。


 ●


 異例の生徒会副会長任命、しかもそれが男子生徒だという。
 このニュースは、瞬く間に学園内に広がる、こととなる。

 当然各科総括会にもその情報は直ぐに伝わるも、その時点ではどの総括会も特に脅威に感じず、目を向けようとも思わなかった。

 しかし、その目は直ぐに無理やり向けさせられる事になる。

 その渦中の新副会長は、看護科の操り人形と成り下がった生徒会の『自分以外』の役員強制総辞職を行ったのだ。
 理事長のバックアップがあってこそ可能な事だったが、それよりも周囲を驚かせたのは役員の再任を行わなかった事。

 副会長以外の役員、全てが空席。

 たった一人で生徒会を運営してみせるという意思表示。

 つまりそれは、学園生徒全員の相手を一人で行うという事。
 それどころか姉妹校の菫ノ宮学園の相手もするという。

 それは明らかな暴挙。
 無謀としか言いようのない行為。

『ふん、たった一人で何が出来るというのよ』

 と、看護科総括会長はその行為を一蹴する。

『思ったよりも面白い子ですねぇ〜』

 と、普通科総括会長は楽しそうに笑った。

『――っな、一体何を考えておりますの!?』

 と、風紀委員会副会長は信じられないという風に驚く。


 ――この日以降、理事長が言う所の新しい風は、幸か不幸か『暴風』となって桜ノ宮学園に吹き荒れる事となる。



 次回 『燃ゆる桜ノ宮!!』


 ●


 さっきよりは短い、何か映画の導入部分のような映像が流れ終えると、鶯は停止ボタンを押す。

「いやぁ、あの時は驚いたね〜行き成り総辞職だもん」
「・・・ですね、私も流石に暴挙だと思いましたもの」
「ふぇ〜・・・あの紅夜さんがそんな無謀な事を・・・」

 正直、今の質素堅実な紅夜のスタイルからはそのような、暴挙に出る姿など想像できなかった。

「まぁ結果としては現状が物語っている通りだよ」
「現状? つまり、それって・・・」

 桜ノ宮学園の現状、乱れていた総括会がしっかりと機能している現状。

「そう、三科総括会と風紀委員会、それに菫ノ宮生徒会を敵に回して、紅夜君はたった一人で行政改革を成功させちゃった訳ですよ」

 ま、そこら辺のいらないものは切り捨てる、全部一人でやってしまうなどの強引なスタイルが、彼が学園生徒の嫌われ者になった理由の一つですけども。
 唯でさえ男性という事で異端なうえに、さらに自分で追い討ちをかけるのも正直珍しかった。
 その厳しい性格や目つきが悪く、どちらかというと無口なのもあいまって、今や中等部では完全に恐怖の対象である。

「そうだったんですかぁ・・・あれ? でもそれが何で半年革命なんですか?」
「後期生徒会の任期が半年、その事から俗に『半年革命』と呼ばれるようになったんです」

 素朴な遊意華の疑問、それには光がそう答えた。

「それにしても凄いなぁ〜・・・紅夜さん、一体どんな裏技を使ったんだろ・・・」
「う〜ん・・・裏技もなにも、ただ真正面からの正攻法でしたよね光?」

 軽く悩んでから、鶯は答えると光に同意を求める。

「えぇ、特にこれと言って特殊な事は無かったと思いますが」
「むしろ小細工してたのは私達のほうだったし」
「正攻法って・・・本当ですかぁ?」

 疑惑の眼差し。
 確かに、いくらあの紅夜といえども、当時は圧倒的勢いを誇っていた雪奈や、当時も変わらない知略を持っていたであろう鶯相手に、正攻法だけで勝ち抜けるとは思えない。

「ほんとほんと、何か反論しようものならバッサリバッサリだったよ」
「毛程の隙を見せようものなら、こう、一刀両断にされましたしね」

 それはもう脳天唐竹割の如く、反撃する気も起きないほどに。
 人の手を借りない、というのは今も昔も変わらない弱点ではあるが、それでも雪奈や鶯を完封せしめたのは確か。

「むしろ今の紅夜さんは、あの頃に比べると随分大人しいですよ?」
「そうそう、今は会議だと『完全中立』だから敵にもならないしね」
「って、紅夜さんあれで大人しいほうなんですかっ!?」

 リーンゴーン。

 と、遊意華の驚きの声と同時に、昼休みの終わりを伝える予鈴の鐘が園内に鳴り響く。

「ありゃ、時間だね・・・残念、今日はここまでかな」

 鶯はもっと喋りたかったのか、本当に残念そうに肩を落す。
 その鶯の様子に光は、やれやれといった感じでテーブルの上を片付け始めた。

「それじゃ遊意華ちゃん、この続きは別の機会に、次は革命時の各科の動きを詳しく教えてあげます」
「はい先生っ! 今日はどうもありがとうございました〜」

 そう元気良く挨拶すると、遊意華は失礼しました! と声高らかに普通科総括会室を後にした。

 むやみやたらと元気がよい。
 羨ましい限りだ。

 その姿を見送った鶯は、『ちょっと盗撮について話があります』という光の無言の圧力に冷や汗を流しながら、ゆっくりとそちらの方向を振り返るのだった。


-- NEXT --------------------------


ちょいと過去に起こった事やらをまとめようと思いました。

紅夜が生徒会に入った経緯とか、異端の彼がどうやって総括会メンバーに認められたのかとか、嫌われ者になった経緯とか。

晴美が紅夜に惚れた理由がまだ確定してなかった・・・はずなので、この事件が元で惚れた事にしたらどうかなぁ〜と思ったり思わなかったり。

3Aさん、お疲れ様です。
相変わらず士仙の出来る男っぷりが主人公してていいですねぇ。

泉はぁ・・・まぁ、殆ど一発ネタキャラですからね。

[206] うおぉ!
シュレ猫 - 2007年11月17日 (土) 14時22分

なんという壮絶な過去。紅夜すげぇ。

というか、当時の美術科総括会が空気になってしまっている。

[207] ほうほう
3A - 2007年11月17日 (土) 19時04分

いやいや紅夜は素晴らしいですね。
是非とも永田町に・・・

冗談はおいといて、
晴美が惚れた理由としては、
特に考えてないんですが、ポイントとしては
【強引さ】【男らしさ】【できるやつ】
の3つがあれば良いと思いますんで、それが理由でも十分かなと

[213] 遅れまして申し訳ありません
ジャッキー - 2007年11月23日 (金) 20時39分

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- 夏祭り3 -
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狼輝は天使の声を聞いた。
語弊も誇大もなく正に天使の出現だった。
その人は右手にうちわを持ちながら優雅に狼輝のそばに寄った。
「こんなところで人生に絶望して、何かありましたか?」
開口一番、割ときつい事を言った。が、人生に絶望した男はそんな事気にしない。
「おお、悠子ちゃん。助かった……」
「?」
「えっと……お知り合いで?」
ルティアが遠慮気味にたずねる。
「あ、ええ。そうです。私、氷守悠子(ひかみ ゆうこ)といいます。そちらは……もしかして、風紀委員長のルティアさんですか?」
「え、ええ…。でもどうして…?」
「ロシア人のハーフで、しかも風紀委員長という役職についていれば嫌でも分かりますよ。有名なんですよ?」
「え、学園の生徒ですか?」
「? そうですけど。なにか?」
「い、いえ……」
ルティアだけではなく、その後ろで宇美も驚いていた。
なにせこの日守という女性、物腰がとても大人っぽいのだ。言われれば高校生に見えなくもないのだが、最初2人は狼輝の妻かと思ったほどだ。
浴衣が似合う和風美人、といったところか。
時々いる、何か1つの服装がよく似合う人。この人の場合、それが浴衣なのだろう。
ふふっ、と上品に笑う悠子。その仕草だけを見せればとても高校生には見えまい。
突然の第三者の出現に戸惑うルティアと宇美は、狼輝に説明の視線を向ける。
「悠子ちゃんは向こうの神明神社の神主の一人娘なんだ。近場、ということで付き合いもそこそこあってな。こうして時たま顔を合わせることがあるんだよ。さっきも言っていた通り学園の生徒だ。今は三年だったかな?」
「ええ、そうです」
「ああ、そうなんですか」
「なるほどな」
神主の娘か、大人っぽいのはその影響か。2人はそう思った。
……別に神事に関係するからといって性格が大人っぽくなるとは限らないのだが、よくある、とっさに勘違いするあれみたいなものかもしれない。
「それで悠子さん、1つお願いがあるんだが……いいか?」
「お願いによりますが、聞くだけなら」
狼輝は簡潔に、女性の同行者がいないとせっかくの写真がお釈迦になってしまうという今の状態を話した。
「――というわけで、出来れば一緒に来て欲しいのだが」
「いいですよ。丁度私も狼輝さんを探していたところでしたから」
その言葉を聞いた狼輝の喜びようといったらそれはもう、3日間飯を食わされていない犬がやっと飯にありつけたようなそんな感じである。かなり引くくらいの喜びっぷりだ。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
そして、そんな狼輝を引きもせずに普通に接している悠子も、なかなか只者ではあるまい。
「そんなに喜ばなくてもいいでしょうに。あ、それじゃあルティアさん、あとそれに……」
「如月です」
「如月……弓道部の如月さんの妹さんですか?」
「あ、ああ。そうです」
「そうだったんですか。話には聞いていましたよ。とってもいい子だって」
「あ、どうも……」
年上は苦手なのか、もともと人見知りする方なのか。どうも動揺しているのを隠せていない。
「それでは、また」
「じゃあな。迷惑をかけて悪かった。今度からは気をつけるさ」
「はい、それじゃあ」
「ああ」
そう言って4人は別れた。



「しかし、悠子ちゃんは本当に浴衣を着ると人が変わるな」
ルティア達と別れてから少し。少々雑踏を外れたところ、見方を変えれば人目を忍ぶようなところに来て狼輝はそう言った。
「それは狼輝さんも同じ事でしょうに。『仕事』をしているときの怖さはヤクザの比じゃありませんよ? なのにどうして学園の生徒の前ではあんなおどけているんですか? いつも仕事モードでいればいいと思うんですけど」
「……頼むから娘みたいな事を言わないでくれ」
娘、という単語を聞いた悠子が首をかしげる。
「七海ちゃんのことですか? あの子がそんな事をいう風になったなんて……世も末ですね」
「いや、勝手に世界を憂えても困るが。それに娘というのは七海じゃない、貢永の方だよ」
「貢永さん……。実際会った事ないですから、イマイチ実感がわかないんですよね」
いまだに悠子は貢永に会ってはいなかった。まだ人間の社会にまぎれて3、4ヶ月というのもあるが、なにより当の本人が悠子に会うことを極力避けていたからだ。
一般人ならまだしも、悠子は霊能者。万が一と言う事もある。忌避するのは当然と言える。
今は「話だけで知り合っている仲」となっている。
「でもまあ、いい機会だしそろそろ会ってみてもいいんじゃないかなあと思ってますけど」
狼輝は考える。
がしかし、霊能者の中でも死神が見えるものなど皆無に近い。狼輝はその中の異例中の異例だ。つまり、悠子が死神を見れる可能性はほぼ0。
よしんば見れたとしても、今日見る彼女はどう見ても人間だ。見たとしても実害は特にないだろう。
もしかしたら彼女の目的に協力してくれる可能性もあるかもしれない。
狼輝が口を開く。
「なんなら今日会ってみるか? 多分この会場のどっかにいるだろう」
「じゃあ、見つけたら教えてください」
狼輝としても、会わさないでいるのはここら辺が限界だと感じていた。
愛娘に心の中で謝る。剣呑な目で見られるくらいは覚悟しておこうと狼輝は思った。
「ああところで、この前学校で不思議な事があったんですよ」
悠子は突然そう言った。急に話題が変わるのは彼女の特性だ。
「ほう? どんな」
狼輝がそう聞き返すと悠子は、嬉しそうな表情を顔に浮かべて静かに語りだした。
「放課後に友達2人にこっくりさんやらないかって誘われたんです。なんとか説得して止めさせようとしたけど絶対にやるの一点張りで。多分、後ろにいたセーラー服の女生徒が何かしたんだと思うんですけどね。仕方がないから、私も一緒にやって霊たちが悪さをしないようにしようと思ったんですよ」
「今時こっくりさん……? 少々時代が違わないか?」
狼輝がうなる。確かに、今の時分でこっくりさんをやるのはよっぽどの物好きだろう。
「私もそう思いました。ブームは6,7年前じゃあなかったかなあと。それはともかく、私も途中から楽しくなってこっくりさんの歌を歌い始めたんです」
「……記憶にないんだが、なんだいそれは」
「作詞作曲・氷守悠子」
「………続けてくれ」
視線を悠子からそらし頭に手をあてて、顔を地面に向けながらそう呟いた。
「そして仕方なく結界張ってこっくりさんやったら想像以上にすごかったんです。真・三國無双やってるみたいにどこからともなくウジャウジャと。ここまで集まると何か人的被害が出るからどうしようかな〜とか思って強制浄霊も考えていたら、突然霊が消え始めてんですよ」
「……なに?」
それまで顔色を変えなかった狼輝が眉を動かした。
「文字通り、消えたんですよ。私は今まであんなの見た事ありませんでした。不思議でしょう? もちろん私は何もしてませんよ。そしてあの辺りに他に霊能力者もいませんでしたし。ただ……消え始める直前になにか不思議な霊気を感じた気が……」
「不思議な気?」
「ええ、今まで感じたことのない霊気でした。隠していたけど、結構強い気だって事は分かりましたね。本当に、あの時はもうワケが分かりませんでしたよ。もしあんな事をした張本人を見つけたら一発殴ってやるつもりですよ」
口調はおどけていたが、怒りは本物だった。
悠子の霊に対する思い入れを狼輝はよく知っている。彼女は霊も人も同列に扱うのだ。
「………」
「あ、そうだ。実はその前にもちょっと不思議な事があったんです」
「…なんだ?」
「えっと……確か、おかっぱの髪型の女の子こっくりさんをやっている最中に私たちの教室を訪ねてきたんですよ。人を探していたらしいんですけど。それで一瞬だけ、その子から膨大な霊気を感じたんです」
「膨大な霊気…」
悠子はそのときのことを思い出す。
あの一瞬の霊気の放出であの暴風のような霊気で立った体中の鳥肌、心臓の動悸、手足の震え。
そして彼女の容姿、瞳、髪の色、背、顔つき、格好。
日本人にありふれすぎた黒い瞳に黒髪、自己主張をしない大人しい顔つき。なぜかは分からないが頭に焼き付いてありありと思い出せる。
離れない、と言った方が適当かもしれない。
「ええ。まるで自分の意思で霊力を出せるような感じでしたよ、あれは」
狼輝は歩きながら腕組みをしている。その横顔は紛れもない仕事モードだ。
その横顔を見ながら悠子は、いつもこういう顔をしていればいいのになあ、とつくづく思う。
狼輝が口を開く。
「やめるか……」
「はい?」
「いや、なんでもないさ。さて、娘を探すんだったな。この神社は狭い、すぐ見つかるさ。会ったらきっと驚くだろうよ」
「はぁ……どういう意味ですか?」
「秘密だ」
狼輝は薄く笑った。そして思う。
知らぬは本人ばかりなり、か。

「ふうむ……どこにいるのかな」
「いませんね」
10分ほど境内を歩き回った2人だが、人の多さも手伝って目的の人物はなかなか見つからない。
「これだけ探したら見つかってもいいようなものなんだがな……」
「避けられてるんじゃないんですか? もしかして」
「な、そ、そんな訳あるか! ないとも、そんなことは断じてないとも……」
狼輝にとって娘の事は相当なアキレス腱らしい。
こうやってからかうことも、悠子の密やかな楽しみとなっていたりする。神社の娘にしてはなかなか陰湿な楽しみだ。
悠子が黒い感情を楽しんでいるところで、
「あ、お父さん?」
背後から声がかかった。

「おお、貢永。探したぞ」
「え、なんで? それに、そちらの方は……?」
「え……」
娘を探し当ててホッとする義父と、事情を飲み込めず何を話したらいいか分からない娘と、逆に分かりすぎて偶然に驚く浴衣美人。
三者三様の反応を見せた。
「ああ、それがお前を探していた理由だ」
ここで貢永は驚いた。
何がって、他人の前で仕事モードでいることだ。
あれだけ人前で仕事モードになる事を嫌がっていた父が一体どうして。なぜ急に心変わりをしたのか。
もしくは、この人はそう接しても構わない人なのか。と貢永は考える。
そしてそれは大体にしてあっていたりする。
「この人はこの近くにある神明神社というの神主の一人娘でな、名前を氷守悠子さんという。桜ノ宮学園の3年でちなみに結構な霊能者だ。その関係で私とも昔から付き合いが深い。今まで紹介しなくて悪かった。なんというか……機会がなかったんだ」
それは貢永に対してというより悠子に対してだった。
証拠に、貢永は狼輝を剣呑な目で睨みつけている。覚悟はしていたが、娘にこんな目で見られることに狼輝は心の中で滂沱の涙を流すと共に、背中に冷や汗が尽きる事はなかった。
「ろ、狼輝さん、この人が娘の貢永さん……?」
「ああ、そうだ。やっぱり見た事があったのか……」
「? 何の話ですか?」
「見覚えはないか?」
狼輝がそういい、貢永は悠子の顔を凝視する。
「……いえ、ちょっと分かりませんけど」
「まあ、覚えてないのも無理はないです。え〜と……こっくりさんをやっていたバカな3年生3人組を覚えてはいませんか?」
我ながら自嘲的だなあ、と悠子は思った。
「お、覚えてますけど……?」
「その中の1人が私なんです」
「…ああ、え、ええ!?」
((驚くだろうなあ……))
貢永を見ながら2人はそう思った。
「な、なんでこっくりさんなんか……?」
「ちょっと友達に誘われてね」
貢永が心外、という顔をしたのも無理はない。ちょっとそっち方面の知識があるならこっくりさんがいかにヤバいものかなど分かるはずだ。
たとえ本当に霊が降りなくても、精神的な不安で何らかの症状が出る事は多々あるのだ。
ちょっと深い話になるから読み飛ばしてもらっても構わないが(と言って読み飛ばす人がいるとも思わないが)、人間の筋肉というものは動かしていないつもりでも無意識に動いている。動かさないようにと意識をすれば、かえって動くものだ。
こっくりさんでコインを動かしている力の正体は科学的にはこれといわれている。
そして参加者の指の震えのせいでコインが動き、それがある文字に達し、そこから連想される言葉やあるいは始めからそれに行った後はこれに行くんじゃないかという期待や思考によって更に続く。
そして、自分で実は動かしているコインでも参加者にとっては、雰囲気も手伝って霊が動かしていると信じ込む。そうしたら後はもう雪崩式だ。不安に駆られてコインは更に動き、精神的不安によってお告げは不吉なものが増え、パニックになる。
パニック状態になれば後は何でも起こる。幻聴、幻覚、それによる過度の興奮や緊張で過呼吸症などが起こる可能性も無いわけではない。
長々と語ったが、つまりは本当に霊が降りなくても科学的にこういうことはあるということだ。
ただ、この状況の場合は本当に霊が降りてきてしまったのだが。
「私も止めさせようとは思ったんですが何故か頑なにやろうやろうと言うんですよ。このまま2人でやって何か起きたら寝覚めも悪い、ということで仕方なく付き合ったんです」
「……はあ、そうですか」
貢永は長いため息をついた。
「じゃあ今度はこっちから質問させてもらいますけれど、貢永さん、霊感ってある方ですか?」
「……え? …まあ、多少はあるほうだと思いますけれど」
答えながら貢永はなぜという理由を見つけるために思考をめぐらし、そういえばあの時一瞬だけ霊視をするために霊力を開放した事を思い出した。
「そう、ならよかった」
なんとなくその言い方に不吉なものを貢永は感じた。なぜかとてつもなく厄介ごとに巻き込まれそうなそんな感じ。
そして、それも大体にしてあっていた。
「貢永さん、私の同好……じゃない、部活に入りませんか? 入って頂戴、入りましょう、入りなさい、入らないつもり?」
すいません段々脅しになっていますよていうかそれ強制ですか?それにどうして私なんですかというか私達初対面ですよいきなりなんか部活?の勧誘とかいきなり過ぎだと思うんですけどそれになんですかこの有無を言わさない圧力みたいなものは逃れられないプレッシャーは。ああもうこれどうしよう逃げた方がいいのかなうん絶対逃げた方がいいよねでも逃げれられないような状況だから困ったどう考えても素直に逃がしてくれるわけないしこれは受けるしかないのかないや待て結論を出すにはまだ早すぎるもっと慎重に議論に議論に議論を重ねた上での検討を議会で承認してそれから国民投票を――
通常の10倍くらいの、リアルなのか適当なのか判別しづらい速さで頭が回っていた。内容は捨てておいて。
が、出た言葉は単純明快だった。
「はい?」
-- NEXT --------------------------



氷守悠子(ひかみ ゆうこ)
神明神社の一人娘。正真正銘の巫女さん。
幼い頃から霊能力に長け、そのお陰で狼輝との関係は強い。両親と狼輝との関係よりも親密。
幼い頃に狼輝のお嫁さんになるのが夢だと言っていたのは秘密。今はそんな気は毛頭ない。
貢永とは狼輝の話だけで知る間柄。貢永の印象は「聡明な娘さん」で、できれば友達になりたいと思っている。
鶯・光・雪菜とは面識あり。それぞれの印象は共通していて「礼儀正しい霊感少女」。雪菜は悠子にあまりかかわりたくないと思っている。他の人との面識は未設定。
勉強は中の上で運動は上の下。文系に強く理系が破滅。
霊は小さい頃から見続けてもはや彼女の中の位置づけは通行人と同義。
基本的に大人しい性格だが、時折我の強いところも見せる。
また、話の腰を折るのは常。
好きな小説のジャンルはホラー。オカルトの幅広い知識を持つ。なぜ神社の娘なのにオカルトの知識が豊富なのかは謎。
ルームメイトは未設定。
強い霊能力を持つ関係で、狼輝の『仕事』を手伝う事もある。が、危険な仕事には連れて行かせずいっても簡単な仕事しかくれない狼輝には不満を抱いている。
(当たり障りなく)普通科3年。

[217] なんと!
シュレ猫 - 2007年11月23日 (金) 22時45分

あの時のあの人が再登場とは。

いや、そんなことよりも狼輝の喜びっぷりがすごい。
『ひゃっほう』と小躍りする狼輝が真っ先に浮かんで吹いてしまいました。

ついでに、重箱の隅なようですが、巫女さんは仏教(お寺)ではなく神道(神社)です。と、訂正をしてみる。

[226] 小噺
ジャッキー - 2007年12月01日 (土) 16時46分

ラララ〜、私は名も無き図書委員〜。
ほんとは名前はあるけれど〜、設定その他作るのがめんどくさいから名無しなの〜。
今日のお仕事何かしら〜。なになに、図書カードの整理? うわ〜、地味な仕事でテンションDOWN↓
まあそれはいい。早く終わらそう。ついでにバカな言い方やめよう。誰もいない図書室では虚しくて悲しくなる。
えーと、あ、会長だ。何借りてるんだろ。
『必見! 憧れのあの人忙殺マニュアル!』
………………………。
三つくらいの意味で間違ってるね♪




蒼馬はメールを打っている。相手は中学の同級生。
『いや、そんなことないんだよ』
『はあ? ウソ付け、周りは女ばっかりでハーレム状態のくせして。どうせウハウハなんだろ?』
『ほんとにそんなのないって。周りがどういうのか聞かせようか?』
『面白い、聞かせてみろ』
『例えば、仕事をしない生徒会長とか全ての仕事をやっている副会長とか、血を飲む普通科総括会長とかこの前50メートル離れた五円玉の穴に矢を射した副会長とか、姉のために学校の器物を破壊し続ける下級生とか、生徒に盗聴器を仕掛ける同級生とか、刀を振り回す下級生とか』
『………それ、どこまでホントだ?』




ラララ〜、またも登場図書委員〜。
さて、お次は……あ、つづらちゃんだ。
『狼少年と吸血鬼(BL)』
………………………。
あるんだ。




「………ねえ、ホントに?」
「多分……みんなも、見てないって」
「ウソ……」
「信じられないわ……。晴美さんが『3分以上』潜水しているなんて……」




「じゃあ命、お米洗ってくれる?」
「あ、うん〜。任せといて〜」
「任せた。……ってちょっと待って。命、さっき手洗わなかった?」
「え? 洗ったけど」
「じゃあどうして洗剤を持っているの?」




「遊意華ってさあ〜」
「ん? な〜に?」
「バナナの皮で滑って転びそうなキャラだよね」
「……なんのキャラ」
「あはは、冗談冗談。……って遊意華、前!」
ズルッ、ビターン!









話のネタにはなるけれど一話を作るにはちょっと足りないネタの大放出です。
まあ、ニヤリ程度していただけたらいいかなと。
時期などは適当です。


………誰か指摘して下さっても………。
……顔から火が出るほど恥ずかしいじゃないですか………。

[228] さくらとともかのセリフに四苦八苦………
ジャッキー - 2007年12月16日 (日) 21時56分

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- 夏祭り4 -
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神明神社 墓場前 特設ステージ
墓場の前に作られた、というか置かれた木箱の上に2人の女子が乗ってマイクを握っている。
墓場の前で甲高い声をマイクで増幅させて飛ばすのは祟られるんじゃあないかと心配になるが、当の本人たちは意に介した様子は無い。
実体の無い幽霊を怖がるより目の前の事象を楽しむことのほうがよっぽど大事なのだろう。
「さあ、祭りもいよいよクライマックス!」
「みんなはお祭り楽しめたかな!?」
「いよいよ今日のメインイベント!」
「これをやらずして夏は語れない!」
「そこの墓石には何がいる!?」
「あなたの肩に手があった!?」
「そんなスリルをプレゼント!」
「夏の思い出にひんやりデザート!」
「「これより、肝試し大会を始めまーす!!!」」

「以上、さくらと、」
「ともかでした〜」



その木箱の前に集まった約200人の中に、紅夜と蒼馬、蒼月と命の姿もあった。
「なあ蒼馬……」
「何?」
「女ってのはどうしてこう、肝試しとかオバケ屋敷とか……怖がるくせに好きなんだろうな?」
「……さあ? どう思う、命さん」
蒼馬は横にいる命に投げた。
「え、あ、私? わ、私はこういうの嫌いだからわからないわよ」
「ん〜……僕も嫌だけど、紅君と一緒ならいいかな♪」
「ふざけろ。俺は行かんぞ」
紅夜は腕に絡み付こうとした蒼月の腕を交わしながら言った。
「じゃあどうしてここにいるのさ」
「て・め・えが引っ張ってきたんだろうが!」
「痛い痛いいたいイタイイタイ!!?」
蒼月の頭を脇に抱え込んで天頂を拳でぐりぐりと押し付ける。これは痛い。
ということで、蒼月が何だか至福の表情をしているのは気のせいだろう。きっとそうだ。と、蒼馬は言い聞かせた。
ついでに言えば、それが紅夜からでは見えない位置で良かったと何故か思う。
が、その光景を命が羨ましそうに見ていたのはどうかと思う。




墓場前から多少離れた、神社本殿前。

「……いいんですか? あれ」
「はいへいしはあ……んぐ、ははらんほ(代名詞じゃあ分からんぞ)」
売店の横にある即席の休憩所でやきそばを口一杯にほうばりながら返事を返す義父を見て、そんなに飢えているのか、と貢永は思う。
狼なのは名前だけで十分だとも。
「墓場の前で大音量で騒ぐ事です」
「大丈夫じゃないですか? この辺って民家少ないですし。すぐそこ、学園ですしね」
悠子がのんびりした口調で答える。
「いえ、日守さん。そうじゃなくって……」
「罰が当たらないかどうか、ですか?」
貢永の言葉を先取りする。
「…そうです」
貢永はこれまでの会話で、悠子がどんな人か大体分かった。
いわく、彼女は冗談と真面目の区別がつきにくい。
これはまるで庭瀬さんと話しているみたいだと思う。
「それなら大丈夫ですよ。ここの幽霊ってお祭り好きなんです。憑いて来るって事はまあ、ないですよ。まあもし憑いて来ても私が払っちゃいますけどね」
お祭り好きな幽霊、というのもどうか。
確かにここの管理は狼輝に任せてあったからどんな幽霊か詳しくは知らない。が、いままで数多の幽霊を狩って来た貢永は、お祭り好きな幽霊など見たことが無い。
経験則から言って信じ難かった。
学校についてはトップクラスの情報網を持つ(トップクラスのスパイ、と言うべきだろうか?)貢永でも、そんな事は知らない。
ついでに言えば、その情報網を持ってしても今まで悠子のことを知らなかった。
さらに驚いたのは、悠子がまるで当たり前のように自分が霊能者だと言う事を話していることだ。
聞けば、学校の皆もそれは知っているらしい。
普通彼女のような得意な能力の持ち主はそれを隠そうとするものだと思っていた貢永は、驚くと同時にそんな『異常者』が今まで情報に引っかかる事も無く普通に学園生活を送っていた事だ。
つまり、彼女は『普通』に学園生活を満喫している。
それが貢永が彼女について背筋が寒く感じている要因の一つなのは、否めない。
「お祭り好きって……本当ですか、お父さん?」
貢永は焼きそばを食べ終えた血の繋がらない父親に聞く。
「ん〜……少なくとも憑いていくような性根の腐った野郎はいないだろうな。いたら叩き殺してやるが」
もう死んでいるのにどうやって?
「ま、ちょっとした悪さをする奴らくらいならいるが……」
「え?」
「ふふ………」
口に薄ら笑いを浮かべ、含みのある言い方をする狼輝。
その言い方に思うところでもあるのか、妖しげな笑みを口元に乗せる悠子。
その狭間では小柄な少女がワケも分からないでいた。
-- NEXT --------------------------




さくらとともか
司会をする為だけにジャッキーが作り出した存在。

[231] 一家団欒?
ラスティ・ブランフォード - 2008年01月09日 (水) 23時44分

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- 海に浮かぶ牙 -
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ブーンと飛んでいく、緑色のフリスビー。
それを狼輝が眺めている様はなんとも平和だ。

七海「えーい!」

フリスビーを投げると、ハティとスコールが取りに走って見事にキャッチする。
そして、七海の元に届けに戻り、また投げたフリスビーを2匹が取りに走る。
そうやって遊んでいたところに、どこからか、声が聞こえてきた。

宇美「おーい、マルコー。」

マルコキアスがまた逃げ出したようだ。
その声が聞いた七海は、一旦フリスビーで遊ぶのを中止する。

七海「パパー。マルコキアスどこにいるか知ってる?」
狼輝「いや、知らないな。」
七海「じゃあ、七海も探すの手伝ってくるね。」

そう言って、七海はフリスビーを義父に渡すと元気に走っていった。

狼輝「……お前達も、探すの手伝ってやるといいよ。」

娘が見えなくなったことを確認し、狼輝はハティとスコールにそう声をかけてやると、2匹はフリスビーを取る動作以上の速さで駆けて行った。

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


宇美「おーい、マルコー。」

いっつもどこかに逃げ出すんだよなぁ、マルコキアス。
普通科が管理してるという名目ながら、実際は野良猫並みにどこにでも行って、どこにでも居やがるんだよなぁ。
当然、その皺寄せは何考えてるのか分からない会長じゃなくて、人の良い姉さんに回ってくるわけで……
今は仕事が溜まってて手が離せないから代わりに私が探しに来たけど、なんか対策立てる必要有るだろ絶対。

ワンワンワンワンワン!

宇美「!?」

物思いにふけりながら探していたら、急に犬が吠えているのが聞こえてきた。
……もしかして。
そう思って駆けて行った先にやはりマルコキアスがいた。

宇美「……お前もお前で大変だな。」

高いところが好きなのは知っていたが、木の上で2匹の犬に吠えられていては降りるに下りられないだろう。
そんな事を考えていると、この神社の神主さんの娘……七海ちゃんがやってきた。
多分あの子も、2匹の飼い犬の声を聞きつけてきたんだろう。

七海「あ、こんにちは宇美お姉ちゃん。」
宇美「こんにちわ。」
七海「むー。またハティとスコールに先をこされたー。鼻がいいから、一発で見つけちゃうのかな?」
宇美「そうかもな。」

……あの2匹、マルコキアスを目の敵にしてるような気がするくらいによく吠えていると言う話をふと思い出す。
猫一匹に派手に吠えまわる番犬は頼りになるのかと思ったが、まあ気にする事でもないだろう。

七海「お姉ちゃんの名前って『うみ』って言うんだよね。七海も『うみ』って漢字を書くんだ。」

……? ああ。
急に話が変わったからちょっと混乱したが、『海』の話か。

宇美「ん、だけどお姉ちゃんと七海ちゃんじゃ、字が違うよ。」
七海「……そうなの?」
宇美「お姉ちゃんの場合は、宇宙の『宇』と美しいの『美』だから、七海ちゃんの『海』とは違うんだ。」
七海「じゃあ、お姉ちゃんは宇宙的に美しいんだね!」
宇美「いや、そう言うことはまったくないと思うけど。」

謙遜するわけじゃないが、そこまで美人だと自惚れるような人間じゃないです。子供相手とは言え、見得張る必要もないだろうし。
ルティア会長とかの方がよっぽど美人だから。

七海「むー。違うのか。そう言えば、七海は海に行った事ないんだよね。」
宇美「お父さんに頼めば?」
七海「何でか知らないけど、パパはあんまり遠くに出かけるのが好きじゃないんだって。」
宇美「でも、もう少ししたら七海ちゃんも夏休みだろ?」
七海「……そうだね。パパに頼んでみよう!」

パタパタパタパタ……

元気でかわいいなぁ、これじゃ神主さんが親馬鹿になるわけだと思いつつ、
吠えられっぱなしのマルコキアスを連れて帰ろうと私は木の枝に手を伸ばした……

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


パタパタパタパタ……
七海は狼輝目指して走っていき、そのまま胸に飛び込む。
ちょっとだけよろけたが、狼輝は何事もなかったかのように微笑み返した。

七海「パパー。」
狼輝「ん、なんだい七海?」
七海「海に連れて行って。」

……突然の一言に、藪から棒といった表情になる狼輝。
どう答えていいものかと悩み始める。

狼輝「ん〜。そう言えば、もうじき夏休みなんだよなぁ。」
七海「学校がお休みになったら、一緒に行けるよね?」
狼輝「それはそうなんだけど……」
七海「パパ、もしかして海嫌い?」

狼輝は、別に海は嫌いなわけでもなく、何かトラウマがあるわけでもない。
ただ、行くに当たっていささか頭を捻っていた。

狼輝「……色々とこの時期は、お父さん忙しいんだよね。夏祭りの事とか。」
七海「じゃあ、夏祭りの後に。」
狼輝「その、夏祭りの後にも控えてる事がいっぱいあるんだ。ちょっと手が離せないかもしれないな……」
七海「えー。じゃあ、七海は海に行けないの?」

困った表情を狼輝も七海も浮かべたが、一つ思いついた事を狼輝が口にした。

狼輝「そうだ。貢永お姉ちゃんに連れて行ってもらったらどうだい?」
七海「え〜。パパも来てよー。」
狼輝「お父さんは忙しいから、勘弁してよ〜。言う事聞いてくれないとおやつ抜いちゃうよー?」
七海「それも嫌だけどー。」

わいわい、わーわー。

wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


貢永「それで、私が七海ちゃんと一緒に海に?」
狼輝「頼むよ。」
貢永「……紅夜さんと命さんも誘えるなら。」
狼輝「それはどうかな……?最近プールに誘っていただいたばっかりだろう?」
貢永「冗談です。少しはお姉ちゃんらしい事してあげないとね。」

ふふふ、と貢永が笑う。

狼輝「すまないね。」
貢永「いえいえ。……あの二人の監視は任せてよろしいんですか?」
狼輝「一応、そこは心配しなくてもいいよ。むしろ、君が先走りすぎて2人が険悪になるほうが怖いしね。」
貢永「……流石に、本職ではありませんので難しいです。」
狼輝「君の仕事は分かってるけど、こればっかりは本人の問題だからね。」
貢永「……私のやり方は下手ですか?」

そう言って、少々潤んだ表情を貢永が見せたので狼輝は慌てる。

狼輝「いや、その、別にそんなことはないよ、ただ、紅夜くんの朴念仁っぷりが余りにも鉄壁過ぎるだけで……」
貢永「やっぱり、恋のキューピッドへの転職は難しそうですね。……何年勤めてるか知らないけど、骸骨にまでなってる上司達に怒られないように頑張ります。」
狼輝「む、無駄に気を張らないで少しは息抜きしなよ。」
貢永「海なんか行ったら、余計に気疲れしそうですけどね。上司にばれたらサボッているのかと言われそうで……」
狼輝「……。」

渋い顔をして固まってしまった狼輝を見て、貢永は急に笑顔になる。

貢永「冗談です。そんなに厳しくありません。それにしても、狼輝さんをからかうのは楽しいですね。」
狼輝「さっきから、からかっていたのか?」
貢永「ええ。」
狼輝「……まあ、気長にやっていこう。」
貢永「ところで話は変わりますが、何で七海ちゃんを自分で連れて行こうとしないのか聞きたいんですが。
お義父さんならカメラやビデオを持って、張り切って娘の水着姿をハァハァ言いながら収めると思ったんですが。」
狼輝「……そんな変態は紅夜君のお姉さんだけで十分だ。」
貢永「なら、なぜ?」
狼輝「さっき言ったように、この時期忙しいから。ああ、紅夜君を脅すネタとして、10年前の氷雨さんの珍事を教えてあげようか?」
貢永「結構です。」

……結局、七海の海計画はパパ抜きで行く事になりました。

-- END or NEXT --------------------------

狼輝はだいたい35を過ぎた位の年齢だと思ってます。
当時の氷雨の裏の顔……と言うか、珍事の内容は、少々まとめてから後日投下してみま……す。
……それより、海に行った貢永達の方がいいのか?えらく季節はずれだけど。

[232] 主観:紅夜 登場人物:紅夜、七海
凪鳥 - 2008年01月15日 (火) 23時53分

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- 神社とベンチと不思議な少女 -
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 じゃりじゃりじゃり、と足を動かすたびに地面の砂利が音を立てる。

 じゃりじゃりじゃり、とその小気味良い音をBGMにゆっくりと紅夜は歩く。

 そこは黒森神社と呼ばれる、桜ノ宮学園の裏手の山にある神社。
 その場所に繋がる、砂利が敷き詰められた長い長い山道。

 休日。

 今週は珍しく蒼月がきっちりと仕事をこなし、休日出勤をしなくてもすんだ。
 なので、たまにはゆっくり散歩でもしようと思い、普段は余り立ち寄らない場所を歩いていた。

 時刻は昼を少し過ぎたあたり。
 もしかしたら蒼月の行いのせいで雨でも降るのではないかと思っていたが、そんな事も無い。
 ポカポカと、気持ちの良い、暖かい日の光が歩く道を照らしていた。

紅夜「普段からこうだといいんだがな」

 ぽつりと呟く。

 蒼月とて、普段はああだが別に仕事が出来ないという訳ではない。
 十分に仕事をこなす力もあるし、紅夜も蒼月の仕事をしやすいよう書類をまとめているつもりだ。
 それでも仕事が進まないのは、ひとえにあの性格のせいであるのだが…。

紅夜「……はぁ」

 どうしたものかと、ため息が出る。

 じゃりじゃりじゃり。

紅夜「……?」

 神社へと繋がる砂利道を歩いていると、前から人の気配…そして人の声。
 ゆっくりと下げていた顔を上げて前を見る。

少女「キャハハハッ!」

 視線の先、紅夜の数メートル先で一人の少女が、二匹の犬と楽しそうに遊んでいた。
 その少女には見覚えがあった。
 確かこの先…今日の目的地である黒杜神社の一人娘で…霜月七海、という名前だったか。
 直接の面識は無い…はずだが、何かと学園では評判のある神社なので名前は知っていた。

七海「まって、まってよ〜、ハティ、スコールゥ〜」

 二匹の犬…どうやらハティとスコールという名前らしいが、紅夜の方に走ってきた。
 それを追って少女―七海もこちらに駆け寄ってくる。

七海「あ…」

 こちらの姿に気づいた七海は、ビクリと、驚いたように立ち止まる。
 その七海と連動するように、二匹の犬も走るのをやめると立ち止まった七海の元へと戻る。
 なかなか主人思いの良い犬だ。
 紅夜はその七海を気にとめることなく、ゆっくりと砂利道を歩いていく。
 意図せず少女との距離を詰める形になるが、一本道なのでしょうがない。

 ふと、少女と目が合う。

七海「――っ」

 もう少しで手も届こうかと距離まで少女に近づくと、少女は脱兎の如く走りだす。
 二匹の犬もその後ろ姿を追うように走り出す。
 途中、少女は走りながらこちらを振り向くも、止まることなく神社の方へと走り去ってしまった。

紅夜「……なんだ?」

 別に何をするでも、なくただ隣を通り過ぎようとした紅夜も、流石にこの反応には眉をひそめる。
 確かに自分は余り子供に好かれる方ではないのは確かだ。

 ふと思い出す。
 如月姉妹の話では、どうやら色々あってあの七海という少女は人見知りの気が強いらしい。

 だからといって目が合っただけで逃げられても困るが…。

紅夜「・・・まぁいいか」

 そういって、紅夜は右肩にかかったトートバッグのベルトをかけ直す。

 暫く歩くと、目的地である黒杜神社が見えてきた。
 少し古びた鳥居をくぐり、境内に入る。

 軽く見渡すと人影は――ない。

 先程の様子だと七海はここに帰ったのだろうと思ったが・・・。
 まぁ多分母屋のほうにいるのだろう。
 わざわざ境内にいる必要も無い。

紅夜「・・・ふぅ」

 誰もいないことをいい事に、境内の真ん中に立ち深く息を吐く。

 落ち着く。

 昔から、良く解らないが、こういった神社や寺といった場所は、何故か落ち着いた。
 他にも、夜空・・・星を眺めていると落ち着く。

 つまり、神社で綺麗な星空でも眺める事が出来れば、どんなに最高だろう。
 そう思い、軽く笑う。

 御賽銭に5円を投げ入れ、特に祈ることもなくお参りを済ませると、丁度良く境内に備え付けられたベンチを見つけ、腰掛ける。

紅夜「・・・良い場所だ」

 自然とそんな言葉が漏れる。

 なんというか、この場所で、この日の光に当たっているだけでどんどん疲れが癒えていく感じがした。
 自分でも気づかないうちに疲れが溜まっていたのだろうか?
 体調管理はしっかりとしているつもりだが・・・。

紅夜「・・・・・・?」

 ふと、目の端に人影が映る。
 それはとても小さな・・・見覚えの在る人影。

七海「・・・(じ〜)」

 そこはどうやら母屋に繋がるであろう小道。
 紅夜の座ったベンチからそう離れていない距離。
 少女が二匹の犬に隠れるように、じっとこちらを見ていた。

紅夜「・・・・・・」

 紅夜は何をするでもなく、しばらくその様子を眺めた。
 少女もこんどは逃げるでもなく、ただこちらに視線を返してくる。

紅夜「・・・ふぅ」

 良く解らないが、嫌われたらしい。
 どうやら俺がここにいたら邪魔なようだ。
 だかといって立ち去ってやる義理は無いが・・・まぁ、ここはあの子の場所だしな。
 そう思い、紅夜はベンチから立ち上がる。
 バッグを持ち上げ、肩にかけ直すと少女に背を向ける。

 ゆっくりと出口に向かって歩き出そうとすると、グイッと両足が何かに引っ張られる。

 何事かと振り返ると、なぜか先程まで少女と一緒にこちらを眺めていた二匹の犬が、紅夜のズボンの裾に噛み付いていた。
 ズボンが破れそうだとか、それほど強く引っ張っているわけではないが、それはまるで紅夜をここから逃がさないかの様。
 突然の事に驚いていると、こんどはトテトテと少女―七海がこちらに近づいてきて、しっかと紅夜のワイシャツの裾を掴む。

紅夜「・・・(汗)」

 ・・・なんだ、この状況は?

 良く解らない状況に、対応に困っていると、紅夜が何か言う前に七海はその小さな口を開いた。

七海「・・・あなたはどうして『独り』なの?」
紅夜「・・・は?」
七海「お兄ちゃんの周りには沢山の人がいるの」
紅夜「・・・・・・?」
七海「光お姉ちゃんも宇美お姉ちゃんも、貢永お姉ちゃんも命お姉ちゃんも・・・皆、み〜んな、あなたを見ているの」

 ・・・なんだ?
 この子は、一体何を言っている?
 少女を見る。
 小さな、小さな少女だ。
 しかし、なにか不思議な・・・よく言い表せないが、そう不思議な雰囲気。

七海「でも、どうしてあなたはいつも独りなの?」

 俺が独り?
 それはつまり、俺が今ここに独りで居るということか?
 それとも、他のなにか・・・?

七海「あなたが皆を大切に思っているように、皆もあなたを大切に思ってるよ?」

紅夜「・・・・・・」
七海「なのに、どうしてあなたは望んで独りになるの?」

 少女の言葉。
 その言葉の意味を考える。

紅夜「・・・君が何を言って、何を言いたいのか正直良く解らないが・・・」

 多分、表面的なことではなく、もっと深い何か・・・。
 俺が思っている通りなら、多分この答えで正解だろう。
 言葉を選び、紅夜は少女に答える。

紅夜「・・・それが必要な事だから、だ」
七海「必要な、こと?」
紅夜「そうだ」
七海「独りになることが、必要なこと?」
紅夜「そうだ、まだ・・・もう少し、な」
七海「でもそれは、あなた一人だけの役目じゃないと思うの」
紅夜「・・・そうだな、だからこそ俺の役目なんだよ」
七海「うにゅ、七海には良く解らないの」
紅夜「・・・ま、君が解る必要はねーさ」
七海「・・・・・・っぐす」

 七海は一言『かわいそう』と呟くと、何の前振りもなくしゃくりあげ始める。
 俯いた瞳に段々と涙が溜まり始める。

紅夜「・・・おいおい」
 
 ・・・行き成り泣き出されてもなぁ。
 紅夜のズボンの裾を噛んでいた二匹の犬も、心配そうにその少女を見上げる。

紅夜「・・・はぁ」

 珍しく困ったように溜め息を付く。
 紅夜は行き成りの七海の様子に、どうしたものかと首を捻る。

 まったく・・・なんで俺がこんな目に・・・。

 少しして、ふと名案が頭をよぎった。

紅夜「あぁ・・・なんだ、菓子をやるから機嫌を直せ」
七海「・・・ふぇ?」

 紅夜は肩にかけてあるバッグから一つの包みを取り出して、七海に差し出す。
 七海は顔を挙げ涙をぬぐうと、差し出された包みを受け取る。
 袋の中には白い一口大の、ホイップクリームが固まったような物が幾つかと、乾燥剤が入っていた。

七海「これ、な〜に?」
紅夜「メレンゲクッキーだ、面白そうだったんで作ってみたんだが・・・メレンゲって知ってるか?」
七海「ううん、知らない」

 ふるふると、首を横に振る七海。

紅夜「そうか、まぁ食べてみるといい」
七海「うんっ」

 嬉しそうに頷くと、七海は早速包みから一つ取り出し口に運ぶ。

七海「おいしい〜!」
紅夜「・・・そうか」

 七海の反応に、紅夜は軽く笑って答える。
 思惑通り、七海の機嫌を直す事は成功したようだ。

紅夜「・・・じゃ俺はいくんでな」
七海「あ・・・うん」

 メレンゲクッキーの入った包みを七海に握らせ、乾燥剤は食べるなよ、と釘を指すと俺は改めて出口へ向かって歩き出す。

七海「また着てね〜紅夜お兄ちゃん!」

 その声に、振り返らずひらひらと右手で返事を返すと、紅夜はゆっくりとした足取りで鳥居をくぐっていった。

紅夜「・・・ん?」

 そうしてふと思いつく。
 俺はあの子に自己紹介はしていないはずだ。
 知っていたのだろうか・・・?
 まぁ多分姉から聞いていたのだろう。
 どうも、不思議な姉妹だ。

紅夜「・・・まぁいいか」

 呟いて、じゃりじゃりと靴の裏が音を鳴らす。
 来たときと同じように、その音に耳を傾けながら、紅夜は学園に向かって歩いていくのだった。

-- END --------------------------

新年初の投稿〜と。
ブログも更新しないとなぁ〜ハハハハハハァ〜。

ちょ〜と雰囲気を変えて紅夜と七海ちゃんの絡みを一つ。
七海が不思議ちゃんになってしまった感がありますが。
しかし、紅夜相変わらずベンチに縁がある男です。

[234] ちなみに今回のは、霊的な幻術が正解……にしといて良いのかな?
ラスティ・ブランフォード - 2008年01月21日 (月) 13時49分

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- 輝きと夜 -
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……ふう。やっと開放された。

トイレに走った蒼月を見て、紅夜はそう思っていた。
流石に2日連続でお祭りに付き合って、人ごみと蒼月に揉みくちゃにされれば疲れもするだろう。
半ばお祭りが終わり、人足が少なくなってきて空いたベンチに紅夜は腰を掛けている。

??「おや、君はもしかして……噂の紅夜君ですか?」
紅夜「……ええ、そうですが。」

そう声をかけてきたのは、正装に身を包み、先ほどまで社にいた人物。
……噂の人物と呼ばれたが、どんな噂が紅夜に付き纏っているのか本人は知らない。

狼輝「いつも、娘がお世話になっているようで。貢永の義父の狼輝と言います。」
紅夜「……別に、そんな事はない。」

貢永の事は、あまり得体が知れない奴だとは紅夜は思っているが、それほど深い付き合いで有る訳ではない。
唯のクラスメイトとしては、良く話しかけてくる相手ではあるが。

狼輝「もう一人の娘……七海からも話を聞いたよ。君は独りでいるのが必要な事、と言ったそうだね。」
紅夜「独りでいるほうが気楽で良い、と言うだけで深い意味はない。」
狼輝「そうか。……単純に気楽で良いのが理由なら、それが必要な事とは言わないと思うけどな。」
紅夜「何が言いたいんだ?」
狼輝「……少し、時間をもらえるかい?話が長くなりそうだから。」

話が長くなる……?

紅夜「蒼月が、戻ってくるまでの間なら。」
狼輝「ふむ。その間で終わるかな……?まあいい、話を続けようか。」
紅夜「で?」
狼輝「まあ、急かす気持ちも分かるけどね……。七海が何でこんな事を聞いたか、というのには心当たりがあるんだよ。」

随分遠まわしにしてくる話に、紅夜は苛立ちを覚えるが、なぜか聞き入っている。

狼輝「七海に『人』と言う字を教えるときに、こう言ったんだ。
   『人と言う字は、ヒトとヒトが支えあっていることを表している。
   お父さん、少々派手に落ち込んでた時期があってね。
   近づく他人を見境無く撥ね付けて、独りぼっちだった事があるんだ。
   ……だけどね、ヒトとヒトが支えあわなければ『人』と言う字にならないように、
   お父さんも一人じゃなくて、七海やお婆ちゃんに支えられる事で『人』として生きられるようになるんだ。
   七海も、お義父さんや学校の皆に支えられて人として生きてるんだ。
   ヒトとヒトの繋がりは、とても大切な事なんだよ。』
   ……そう言って、聞かせたんだよ。」
紅夜「誰にも支えられずに『独り』で生きようとする俺が、『かわいそう』って言ったのはそう言う事か?」
狼輝「多分、そうだと思う。君は、『もう少し』と答えたそうだけど、何時までそうしているつもりだい?」
紅夜「それは……」

だが、紅夜の返答を待たずに狼輝が言葉を続けた。

狼輝「少し、話を変えようか。君は、不思議な力を信じるかい?」
紅夜「何を、急に?」
狼輝「……後ろを見てごらん。」

いたずらっぽく、いや冷たく微笑む狼輝。彼の言葉を不思議に思いながらも紅夜は後ろを向いた。

狼輝「やあ。」
紅夜「なっっっ!?」

直前まで、正面にいたはずの狼輝が一瞬でかなり後方に立っていた。
思わず我が目を疑い、さっきいたはずの地点を見るが、狼輝の姿は影も形もない。

紅夜「何の、冗談だ?」

さらに、振り返る。……今度は、前にも後ろにも狼輝の姿はない。
思わず立ち上がって辺りを調べようとしたとき……

紅夜「ッ!」

喉元に、何かある。……視線を動かすと、何かが確かに当たっている。だが、姿は影も形も見えない。

紅夜「悪ふざけも……」

言葉が、急に続かなくなる。そして、勝手に体が歩き出す。
……神社の、本殿に向けて。

ふざけるな……


パチン!


何かが、いきよい良く鳴った。

狼輝「……どうだった?」

後ろから声が聞こえ、体の自由が戻る。喉元に当たった何かの感触も消えていた。

紅夜「何をした?」
狼輝「……さっき君が感じたもの。それに対する答えが、聞きたい。アレに関しては、余計な先入観を入れては素直に聞けそうにも無いからね。」
紅夜「サッパリ分からんぞ。」

ふむ。そういって狼輝は考え込む。

狼輝「今すぐ答えを貰おうとは思っていないよ。ただ、君に何かを仕掛けたことは確かだ。」
紅夜「さっきの幻がか?」
狼輝「紅夜君が先ほど見たのは、何が原因だろうね?」

そう言うと、狼輝は袖の下から糸で結ばれた5円玉を取り出して、揺らす。

狼輝「催眠術の類による暗示からくる白昼夢?」

5円玉を袖の下に戻し、今度は袖の下から葉っぱを取り出す。

狼輝「幻覚作用のある成分を強烈に嗅がせた事による錯覚?」

そして、同じように葉っぱを袖の下に戻して、今度はサバイバルナイフを取り出す。

狼輝「実は、凄腕の暗殺者が気配も感じさせずに君の背後を取っただけとか。」

喉元に突きつけるようにナイフをチラつかせたあと、前の2つと同じようにナイフを袖にしまい……

狼輝「それとも……それら以外の、君が知らない手段かな?」

そして、微笑む。まるで悪役のように。

紅夜「……その袖の下、随分と不可解なもの入れてるな。普段から持ち歩いてるのか?」
狼輝「まさか。……紅夜君がどう受け取るかは自由だ。もしかしたら、まだ幻を見ているのかもしれないしね。」

笑ったままの、狼輝。そのまま紅夜は言葉に詰まっていると、じゃりじゃりじゃりと、人が近づいてくる音がする。

狼輝「今日のところは、帰るよ。これから後片付けが待っているしね。ただ、もし良かったらいつか君の感想を聞かせてくれるとありがたい。それではさようなら。」
紅夜「……それじゃあな。」





じゃりじゃりじゃり……

狼輝「自覚が無いながらも力は持っていて、危険性も肌で感じている。だが、力がある事を気にしたくないと思っている節がある。
……これは、相当の荒療治でもしないと無理だろうな。彼を急かす必要はないが、いずれにせよ、今のままでは貢永の仕事は終わりそうも無いな。
もっとも、そう簡単に貢永に帰られてしまっても困るから……今のままでちょうどいいのかもしれないな。」


--- End --------------------------

なんとなく。
……ところで、特殊能力関係の設定ってどこまでありなのか最近疑問に思うようになってきた。
紅夜の『無意味』自体が、この桜ノ宮学園では有りなのか無しなのか割と微妙ですからね……

>凪鳥さん
七海が不思議ちゃんと言うより、周りにいる不思議な人『貢永・狼輝』の影響を受けて育ったせいかと。
とは言え、天然無邪気な子供だからこそ核心を突いた事が言えるのだと思いますよ。身内やクラスメイトでは言えない事をね。

[235] そういやミクトの話かいてないなー
シュレ猫 - 2008年01月22日 (火) 23時48分

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- 死神綺譚 -
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今日はいつもの見回りのついでに、皆さんの相関図でも書き上げてみよう。
綾河紅夜についての目的の到達への糸口になるかもしれないし。

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『庭瀬鶯の場合』

普通科総括会室に行ってみたら、ちょうど庭瀬さんがいた。
鍵が掛かっていたが、そこは死神、壁抜けくらい朝飯前なため、難なく侵入。


鶯「さてさて、夏祭りの会議ももう目前ね。ふふん。あの女帝サマは、いったい何をしてくるやら。まぁ、おおむね予想はついてるんだけどねぇ。」


相変わらず、いつものごとく企み顔(そういえば、私は彼女にはそういうイメージしかない)で、なにやら紙に色々書き込む庭瀬さん。
そういえば、今までの印象では特定の誰かが、という話は聞かない。
もっとも、今のところ天乃さんを好敵手へと育てようという、光源氏計画(いや、どっちかというとHUN○ERXHUNTE○の、○ソカ計画?)を実行中って感じだけれど。


鶯「準備は上々。私の思惑も読んでるみたいだし……ん?マルコ?なにあらぬ方向凝視してんの?」


あ、マルコシアスがおもいっきしこっちを見ている。


鶯「んー。悪霊でも見えてんの?」


え!?悪霊私!?

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『久遠つづらの場合』

見回りの途中光さんを見つけたけれど、彼女には彼氏がいる(らしい)ので、この学校の総括会及び生徒会内の複雑怪奇な何角形(男子は二人だけなのが余計複雑な原因なのだか)には関係ないだろうとふんで、ここはあえてスルー。
すると、看護科総括会室へ入る久遠さんを発見。
そういえば、この人は命さんを応援していたはず。だからといって、大丈夫とは言えないのが世の中。応援しているうちに、だんだんと紅夜さんに心引かれて……なんてこともあり得るかもしれない。
このタイプの三角関係はマズイと相場が決まっていると、おばあちゃんがいってた(天の道を行き、総てを司る人的に)。

『ガサガサガサ』

部屋の中は書類まみれ。どうやら書類を纏めてるらしい。


つづら「じーーー。」


こっちの方向辺りを久遠さんが見ている……ような気がする。気のせいだろう。
と、思ったとたん、ポケットから御札と思しき物を三枚ほど出してこちらに投げてきた。
なぜか漫画みたいにまっすぐ飛ぶ御札。もっとも、当たったところで意味がないのだが、身の危険を感じとっさにかわす私。


雪奈「なにか投げましたか?」

つづら「ん、なんでもないの。」


落ちた御札をよく見たら、小さな弾と御札が、短い糸で繋がっている。
なるほど、考えましたね。
そして御札には毛筆で妙に達筆な字で『急急如律令』と……

って、また悪霊扱い!?

-- END or NEXT --------------------------

なんというか、いろいろすみませんでした。
正直、ミクトに「え!?悪霊!?」と、言わせたかっただけです。

猫が幽霊的な物を見て……のくだりは某漫画から。知ってる人がいたらうれしい。
飛ばせる御札は、じつはそう上手くいきません。ちょっと軌道がふらつきます。
急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)は、広辞苑に載ってるんで、それを参照。

それでは

[236] 最近東方の曲にハマってるZE☆
ジャッキー - 2008年01月29日 (火) 21時07分

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- 夏祭り5 -
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「ゆ、ゆゆ、ゆゆゆ……」
「幽霊?」
「ひぎゃあああああああああああああああ!!? どこどこ、ねえどこぉ!?」
それらしい服装をさせれば小学生でも通用しそうなほど小柄な体を存分に揺さぶり、晴美が辺りを神経質そうに――というか、怯えて――見回した。
「お、落ち着いて、落ち着いて……。どこにもいないから」
「ほ、ホント? 神様とお天道様とゴッドに誓って?」
「うん、ホントだよ。ついでに言うとそれ全部同じだし、今はお天道様はいないけどね」
ここは黒森神社の墓場の中。といっても、土の中ではない。
彼女達は今日の夏祭りの目玉企画、肝試しに参加しているまさに真っ只中、というワケだ。
この肝試しは墓場内に設置された机のスタンプを押して入り口まで戻り、全部あれば開放されるという、迷路とスタンプラリーと肝試しを1つにしたようなシステムだった。この墓場は結構広いのだ。
2人は第9組目になっている。
時刻は当然夜中であり、また、2人が持っている明かりといえば遊意華が持っているランプだけ(晴美は持つと先頭になるからといって断った)、その上祭りの明かりが丁度届かないような場所にいるので、もしランプが消えたりしたら途端に目の前の人の顔でさえ分からなくなるだろう。
夜空は雲ひとつない暗闇で、煌々と照らす半月と、瞬く星が見える。
ランプにぼんやりと照らされた墓石は不気味な色合いを出し、近づくのをためらわせる雰囲気を漂わせている。
あの墓石の裏に何かいるんじゃあないか。
あそこだけ影が暗く見える気がする。
今、何か白いものが見えた気がした。
そんな幻までもが見えてきそうな気がする。
晴美は、ゴクリとつばを飲み込んだ。
「い、いない…よね?」
「いないってば、幽霊なんて。ハル、そんなに怖いならやめてもいいよ。…そもそもさ、どうして肝試しなんてやったの。そんなに怖がりなのに」
遊意華の質問に晴美の動きが一瞬止まる。
「そ、それは……、い、いつまでも怖がりのまんまじゃダメだと思ったから」
「嘘つき」
遊意華の二の句を告げさせない物言いに、さしもの晴美も黙る。
「ん〜とね、これから言う事は私の推測だよ?」遊意華はそこで一度切って、息を吸うと少し大きな声で明後日の方向を向き、喋り始めた。「多分私達より前に肝試しに参加するお兄ちゃ、紅夜さんが見えたからハルも参加しようという気になったんじゃ……」
「ちょちょっと! ストップ!」真っ赤になった晴美が言う。「な、なに、そんな勝手な、そんな事聞かれたら……」
「図星なんだ?」
悪戯っ子の笑顔(邪悪)で遊意華が微笑む。
「〜〜〜〜〜!!! と、とにかく、そんな事はない! 絶対にないからね!」
そういうと晴美は1人で前へといってしまった。
遊意華はそこで立ち止まってみる。
すると、少しも経たない内に晴美が戻ってきた。
「……いこ」晴美は遊意華の後ろに立っていった。
「別に1人でいってもいいんだよ?」
「ユ、ユイが心配だったんだよ」
例えランプの明かりしかなくても、今の晴美の顔が真っ赤だというくらいは分かる。そして、その本当の理由も。
「ふ〜ん…」
遊意華は、これは遊べる、と思った。その笑顔は例えようもないほど無邪気で、故に純粋な残酷でもあった。
「あ、紅夜さん」遊意華は晴美の後ろを見て言う。
「え、あ、ど、どうも紅夜さん、奇遇ですね。ええ、本当に。あ、私? 私って結構大丈夫なんですよ、こういうの。ええ、はい。遊園地とか行ってもお化け屋敷なんてこんなの?って笑っちゃうくらいに。ああ、やっぱりそう思いますよね〜……? え?」
晴美は目の前をやっと認識した。
ゆっくりと振り返る。
晴美の視界に入ったのは、既に遠くにいた親友の姿だった。

――――――――――――――――

「う〜む、何と言うか……。つまり、ここにいる霊たちにはいわゆる悪霊って奴らはいない。もしも悪霊というものを、人に生活上の障害になるほどの害を与えるもの、と定義した場合の話になるが。いるのはそこら辺の浮遊霊とかそんなんばっかだよ。大体、ここは神社だ。清浄なこの場所にそんな悪い奴らがいられるワケがないんだ。ま、というわけで、ちょっと驚かそうと思うくらいの奴らはいても、人に憑いてって害を与えるようなんはいないんだよ」
そこまで一気に話し終えて男性――つまりは狼輝――は一息ついた。愛娘の表情を伺う。
彼女は難しい表情で睨んでいた。条件反射的に、背中のTシャツがへばりつく。狼輝は笑顔のまま固まった。
「そんな難しい顔をしないで下さいよ。狼輝さんはもしも何か心変わりがあって霊が憑いてきても大丈夫なよう、対策まで施されているんですから」
「対策?」
悠子がその話をし始めると、狼輝の顔が今度は完璧に凍りついた。
着物姿の美人が狼輝に目を合わせる。
にこりと微笑んだ。狼輝にはそれが、どうしても聖母の微笑みというよりは、悪魔や夢魔などの微笑みに似ている気がして仕方がなかった。
目線に、その話をやめろと言う思念をのせる。
拒否された。
何でもするから、と哀願してみる。
何もしないで、と返された。
「そうそう、狼輝さん、そろそろ行った方がいいんじゃないんですか? もう肝試し始まってますし、そろそろ1組目が終わるでしょう」
「そ、そうだなあ……。いや、まだ少しくらいなら大丈夫だろう」
冗談ではない、と狼輝は思った。
このまま悠子と貢永を2人っきりにしておいたら何を話されるかたまったものではない。
無駄な努力でも、ここはこの場に残るべきだとした。
「そうですか……」悠子は残念そうに目を伏せたが、それも一瞬の事、すぐに気を取り直し、話を始めた。「実は狼輝さん、肝試しが終わった人に対してお祓いをしているんですよ」
「お祓い?」貢永が怪訝そうな顔をする。
「ええ。肝試しをやった人『全員』、たったの『500円』で」
なぜか全員と500円を強調する悠子。
「………」
「不思議ですよね〜。私は家が近所だから10年位前からこのお祭り参加させてもらっているんですけど、実際に憑いてきた霊なんて両手の指で足りますよ。狼輝さんは霊が憑いているかどうかくらい分かるはずなのにどうしてなんだろうなあ〜って、小さい頃からずっと思ってきたんです」
「………」
「あ、ちなみに、毎年の肝試し参加者は約50組ですよ」
狼輝の目には貢永の後ろ髪しか見えない。表情が見えない事が余計に狼輝の不安感を増大させていた。
もはや顔色は顔面蒼白で、唇は血の気が失せ、汗は垂れ流し状態。医者がいたら速攻で緊急搬送されていたかもしれない。いや、それはさすがにないだろうが。
ゆっくりと、貢永は振り返る。
「詳しい話をお聞かせ願いましょうか、お義父さん?」
「ああ、いいとも。ゆっくりと話そうか。ああ、そうだ、悠子ちゃん。お茶を一杯、もらえるかな?」

――――――――――――――――

「はあ……」
なぜだ、何故俺はこんな所でこんな奴とこんな事をしているんだ?
「はあ……」
ため息をつくと幸せが逃げていくと言うが、多分それは間違いだな。幸せが逃げていったからつくんだろう。……なんて不毛な思考だ。
それもこれも、全ては俺の横にいるこの人間のせいだな。
「きゃー、紅君こわーい♪」
「………」
「無反応か。はあ、君って、つくづくつまらない人間だね」
「お前に面白いと思われたくはないな」
考えてみれば、俺に対する不幸やストレスの全てはコイツが作り出しているんじゃないのか?
つまり、こいつがいなければ俺の人生はもっと安泰なんじゃないのか?
なぜ高校受験の時に男子校を選ばなかったんだ、俺。……いや、ムリか。こいつなら男装をしてでも来そうだ。
「人とのコミュニケーションは世界平和の第一歩だよ。というかね、マジな話、紅君は人とのコミュニケーションをとりなさ過ぎる」
「別にいい」
「冷たいねぇ。そんな事言わずに、まずは僕とコミュニケーションをはかろうよ」
「結局はそれが言いたいだけじゃねえか」
頭が痛くなってきた。胃潰瘍になってないのが不思議だ。想像を絶するほどタフな脳と胃粘膜に敬意を表したい気分になってくる。
「蒼月。いい加減、俺の腕をムリヤリとって自分の胸を押し付けるのは止めろ。お前の胸の感触なんて感じていたくない」
「イヤン、紅君のエッチ」
「人とのコミュニケーションの究極系は殺人だと、どっかのキチガイが言っていたが、それを実践してやろうか?」
「冗談だよ」
「惚れてない」
「……人のセリフを横取りするのは感心しないなあ」
ため息をつきながら、やっと俺の腕を開放した。やっと右腕が自分のものだという確証を得た気がする。
「……しかし、看護科もよくこんなややこしいモノを作ってくれたよ」
「ああ、その意見には同感だね」
開始から5分で4つのスタンプは押した。
が、最後の1つがどうしても見つからず、さらに5分ほど無駄な時間を費やしている。……こいつの不幸パワーか?
「なんだい?」
「なんでも」
しかし………おかしい。……というか、最初の説明でなにか言ってなかったか?
「ん? ああ、言っていたよ。コースに沿っていけばスタンプがあるから、それを押していけって」
………
ふっ、まさかな……。
「蒼月。落ち着いて話し合おう。まず、この道はコースか?」
「違うよ」
「…お前が先導していたよな。わざとか?」
「そうだよ」
「………」
ああ、こいつのせいか。やっぱりそうか。不幸パワーなんてそんな曖昧なもんじゃなく、もっと確かで強力なものだったけどな。
「理由は聞かないのかい?」
「聞く必要ながないな、知っている答えの解答なんて」
受付の時俺を連れて行かなかったのも、これを予想しての事か! 何に対しても俺を巻き込むあいつの性格からすりゃおかしいとは思ったんだがな…。
くそ、俺の一生の不覚か…!
「……はぁ、はぁ……」
「大丈夫かい? いくら僕でも心の準備ってものがあるから、やる時は一声かけてからにしてね」
蒼月の声が俺の疲弊しきった精神(主にこいつへの憎悪を抑える為)をさらに追い詰める。………いっその事、この我ながら強靭すぎる理性を誰か取っ払ってくれ。
「……帰り道は分かるんだろうな?」
「う〜ん……それなんだけどね、僕もどうしてかは分からないんだけど、ここがどこかよく分からないんだ」
はっはっは、どうやら俺の耳はおかしくなった様だな。不吉な言葉を聞いたぞ。
うん、帰ったら宇美を嗾(けしか)けよう。絶対にそうしよう。
「どうしたのさ、そんなに怖い顔をして」
「分からないのか?」
「分かるよ」
「そうか、それは良かった」
俺はよろめく体をなんとか支え、歩き出した。
「蒼月、俺は今、すごく気分がいい。なんでか分かるか? まあ、そうだろうな。学校に着いたら教えてやるよ」

――――――――――――――――

バン! バン! バン!
それなりの重さのあるライフル銃から放たれた3発の弾丸は、私の狙いを裏切らず、予想通りの場所へ着弾する。
当たったターゲットはなす術もなく倒れ、軽い音が響いた。
「さ、3発全弾命中〜!!」
周りのギャラリーから歓声と拍手が巻き起こる。これで24個目ですか。
私は貰った商品を持参していた紙袋に押し込むと、その場を去った。
と、
「あ、如月先輩!?」
「え、泉さん?」
浴衣姿の泉さんがこっちに向かって走ってきた。
…というか、まずいですよ! 浴衣浴衣、乱れてますって! 際どいです、それ!
「え、あ、すすいません。さっきからずっと走りっぱなしで、浴衣なんて気にしている場合じゃなかったんですよ」
泉さんはそう言って手早く浴衣をなおした。…さすがは大富豪の令嬢、浴衣も豪華ですね。
今触ってみた感じなんか、私の着ているものよりももっとやわらかかったですよ。
と、そんな事を考えている場合ではありませんね。
「あの、どうしたんですか一体、そんなに慌てて」
「そう、それです! 姉を、命姉を見ませんでしたか!?」
ああ、なるほど。それでですか。納得。
「風紀委員会の集合があるからっていうことで、命姉にはここで待っててって言っておいたのに、集合から戻ったらもういなくて、ああもう天津会長のKY〜〜〜〜〜!!!」
いや、KYとかそんなんじゃないと思いますけど……。
なんて言ったら怒られそうですね。ただ、この事はルティアさんに伝えておきましょう。
「で、どうです!?」
「残念ですけど、見てませんね。ごめんなさい」
「いえ! それじゃあ私失礼しますね!」
と言うが早いか、いや、完全に走り出しながら言っていましたね。泉さんは一目散に駆け出していきました。
「……命さんもお年頃なのに、可哀相ですね。でも、もっと可哀相なのは泉さんですか。……自分でも気付いてないなんて、本当に、可哀相過ぎます」

――――――――――――――――

「いいの? 行かなくて」
「え、何が」
平常心を持って言っているつもりだろうけど、それじゃあバレバレだよ。
「肝試し」
「…別に。私は肝試しになんか興味ないから」
「そりゃ興味はないだろうけど……」
「けど、なに?」
う、怖い。
逆ギレするなんて反則だよ。これじゃあ何にも言えない。
「…ごめん」
「謝んないで。私は別に怒ってなんかいませんから」
怒ってるって〜。
ああ、もう、こんな事言うんじゃあなかったなあ、空気が最悪だよ。
ん〜、それにしても遅いな、紅夜達。あれから10分以上は経ってると思うけど……。
とにかく、誰でもいいからこの空気を何とかして欲しいよ。
「見つけましたよ姉さま!」
突然聞こえた覚えのある声、その声が誰かを特定して隣にいる命さんを見ると、悪戯を見つかったばつの悪そうな子供の顔をしていた。
「あ、泉?」
「あ、じゃないですよあじゃ! 私心配したんですよ!? 勝手に離れないでって何度も何度もあれだけいったじゃないですか!」
「それはそうだけどさあ……」
泉ちゃんの言うあれだけってのは多分、10回以上はかたい。30はいってないと……信じたい。
ていうか泉ちゃん、僕のことなんかきっと視界にいないんだろうな。
誰か来てっていうのは願ったけど、まさか彼女とは思わなかった。……まあ、一応喜んどこう。
「命姉、大丈夫ですか、あいつに何もされませんか!?」
「あいつって、紅夜?」
「当たり前でしょう! あの超絶下半身無節操色魔変態野郎にですよ!」
なんてひどい言われよう。超絶とか、色魔とか。
紅夜、なんだか君に黙祷を捧げたい気分になってきたよ、うん。
「な、なんにもされてないってば」
「本当ですか!?」
「ホントだってば!」
ああ、これはまだまだ続くね。
僕は肝試しの出口を見ながら言った。
「紅夜、さっきとは違う事を願うよ。まだ肝試しをしていてくれ。せめて、後30分くらいは……」
-- NEXT --------------------------



言い訳させてください。
最近色々と忙しかったんですよ。バドミントンの大会はあるし、(部活はバドミントン)本を沢山借りちゃったし、面白いゲームに出会ってしまったし、勉強はしてないですけど。
はい、すいません。大変長らくお待たせいたしいました。
本当はもうちょっと早く投稿するつもりだったんですよ。
ただ、ここに直接書いたら間違って閉じてしまうというハプニング、それが2回も起こって書く気なくしたりとか。
はい、またすいません。
これからはちょっとばかしペースアップします。
失礼します。

[237] 紅夜を分析する誰かさん。
ラスティ・ブランフォード - 2008年01月30日 (水) 20時45分

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- 終焉を観察する者 -
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彼は、何を求めている?

誰も寄せ付けぬその心の内は……

孤独で居たいのは、完璧すぎるが故に全てに興味が持てず、心が凍てついているからか。
あるいは、他者を嫌い、世界を嫌い、ひいては己自身が嫌いであるが、
自ら滅ぶ事を選べない臆病者だから、ただ自堕落に何も考えずに生きる事を選んでいるのか。

全てを『無意味』と定義している男。だが、その中で唯一彼にとって『無意味』では無いもの……

それが『死』なのか。

その先にあるものは、完全な終焉であり、『虚無』である事を信じているからか。
あるいは、今の全てを失う事で、今の苦しみの全てを失って生まれ変わった先の生命が今よりも良いものと信じるからか。

……いずれにせよ、その思いは力となった。

異界を引き寄せ、幻想の住人を脅かすほどに。限りなく、ゆっくりと。
遠からず、彼の願いは叶うだろう。だが、それは彼だけの願いが叶うだけでは済まない恐れすらある。

彼にとって、『死』は最も身近であり、救いと可能性のある何かなのだろう。
世界の森羅万象の中で、彼にとって『無意味でないもの』は……

……それ故に、彼は『無意味』な力を持って、『無意味でないもの』を無自覚に引き寄せる。
止めるには、彼に『死』とは異なる『無意味でないもの』を与えなければならない。

……それが『命』なのか。

……皮肉と言うには、余りにも出来すぎた冗談だろう。この世界の『創造主』は、そう願ったのか。
『紅の夜』は、血に染まった夕焼けの名残とでも言うのか。振りまかれた『死』の名残なのだろうか。
そして、その『紅の夜』を沈めるのは『死』に対する『命』と言う事か。

死神の女の子……貢永(ミクト)。
彼女は、『紅の夜』に永遠に『命』を貢ぎ続ける事を行えと言われてきたというのか。
果てしなく、だが報われぬ永遠の奉仕を。

……本当に、『運命』が定まっているというのなら。

……コイントスは、表が出るか、裏が出るか。

……いずれにせよ、コインが立つ事は無いだろう。

……世界の滅びか、男女の恋愛か。

……どちらにせよ、関わるには余りにもすぎたる領分だ。

……そう。『神』のみ知りえる、領分だ。『創造主』の手を離れた駒は、ポーンであろうともチェスをさす存在の考えによって動くのだ。

……全知全能の、この世の理その物でもなければ物語の結末は知りえぬだろう。

……世界の全てが朽ちる時。それは、彼が導くのだろうか。

……『物語』の終わりを見たくないとも思いつつ、いつかは『物語』は終わるもの。

……今は、このぬるま湯のような世界でいたいものだな。


--- End --------------------------

誰一人出ない、完全にポエム見たいな、いささかこっ恥ずかしいSS。
ネタとしては完全に異端で、不気味すぎましたな(汗

>シュレ猫さん
あ、悪霊扱いですか(^^;;
まあ、他人に害なすものとは言いがたいですけど。
恋のキューピットとかクール突っ込みばっかりやってて、
死神と言う事がまるで忘れ去られていきそうですw

>ジャッキーさん
……お払い……
実は彼のご先祖様たちが、「参加費徴収&肝試しのアクセント」の名目で勝手に取り付いてるに一票。

あるいは、先代のバアさんが強欲だったとか、歴史ある徴収とか。

狼輝は12から10年前くらいの間にやってきて、(父親が神社から出て行った為、祖母に引き取られた形)
当時は両親が死んだばかりなので、かなりネガティブに落ち込んでる。
で、6年前に七海を引き取って明るくなったのが時間軸的なイメージ。
ネガティブに落ち込んだことがあるから、妙に悟りを開いてるイメージがあったし、
このポエムっぽいもの、狼輝が考えてる事のつもりだったけど、
ここまで威厳無く振舞えるようになるとは、ある意味他人を欺く天才かも知れんな、やつはw

[240] まさか、まさかねぇ………
ジャッキー - 2008年01月30日 (水) 22時13分

まさかとは思いますけど、ラスティさん、『Missing』ってライトノベル読んだことあります?
いや、ないならそれでいいんです


狼輝のお祓いは、実際適当につけました。
理由はとりあえずあそこは狼輝と貢永と悠子の3人だけで話を続けさせたかったのと、肝試しが終わったってだけじゃなんか味気ないので、ちょいと味付けを濃くしてみたかったからです。
今考えると要らない気もしますけどね。

ほう、狼輝の過去にそんな事が。
またやっちゃったかなぁ……。

最近カッコ悪くないギャグに挑戦中なんですけどね、これが難しいんです。
やりすぎると中二病みたいな言葉の応酬になっちゃいますから。(高度な会話で現実感が無く、書いてる方は楽しいけど読んでる方は苦痛っていうアレ)
まだまだ、修行しますか。

[243] 夏祭り6
ジャッキー - 2008年02月23日 (土) 13時28分

「おお、バニング大尉にアズナブル少佐。奇遇だね」
「誰だ、そいつらは」
いつもの事だが、お前の思考は読めん。
「気にするな、いつもの事だ」
そう、俺は花園と楠葉に言った。
楠葉は何か、そう、幽霊でも見たような顔をして固まっている。……そんなに驚くような出会いか?
花園は、いつもの花園だ。それ以外に形容の仕様がない。
いや、強いて言えば何かを期待しているような………うきうきしているような………? 分からんが。
「そ、そそそそうですねね」
「は〜い、分かりました」
…しかし、楠葉このうろたえぶりは何だ?
「…楠葉」
「は、はいいぃぃ!?」
「熱でもあるのか? どうも具合が悪そうだぞ。帰って寝たらどうだ?」
「いえいえいえそんな事はありませんことですハイ! でも心配してくださってありがとうございます!」
「あ、ああ……」
そんなに感謝されるようなことか? いや、深くは考えまい。あまり他人に干渉するのもどうかと思うしな。
いつも会うとこんな感じなのは、やはり俺がこんな感じだからだろうか。
まあ…仕方ない。今更この性格をどうにかするのも大変だし、別にそこまでして変えたくはない。
2人が蒼月と話し始めたので、俺は夜空を見上げる。
蒼月に宇美を向かわすことを決意してから更に5分、全くもって無駄な時間だと我ながら思う。
やっと祭りの明かりが見えるところまで出ると、偶然にも2人に出会った。
何にせよ、これは幸いだ。俺1人では蒼月は押さえこめられん。
…この2人がいて押さえこめられるかは疑問だな、考えてみれば。
「お祓い?」
夜空を見上げていた俺は、あまり縁のない単語を耳にした。
「蒼月さん、なんですかそれ。食べられるんですか?」
「ユイ、そんなベタなボケは…」
「う〜ん、残念ながら僕は食べた事はないなあ。案外食べてみたらおいしいのかもね。それはともかく、お祓いってのは悪い霊が寄り付かないようにおまじないをかけることや、悪い霊を追い払う事を言うのさ」
お祓いか。そういえば、肝試しを終わった後にそんなものもあったな。
確か、この神社の神主…名前は忘れたな…が、自主的にやっているものだとか。雰囲気もあるということで生徒会も了承していたが、個人的にはあまり好かないな。
別に霊がいるとかいないとか言う気はないし、そもそも興味がない。いるならいるで構わないし、いないならそれでいい。ただ、俺たちに干渉さえせずにいてくれればな。
まあ、いい。
「おい、そろそろ行くぞ」
「もうかい? せっかちだね。人生は長いんだ、焦らずにいってもいいんじゃないかな?」
「置いてくぞ」
「まあ待ちなよ。ほら、遊意華君に晴美君も、一緒に行こうじゃないか。いいね?」
「別に構わんが……」
「じゃ、じゃあご一緒させていただきます」
「やったね〜」
「あ、でも紅君の隣は僕のものだからね? 横取りしちゃダメだよ?」
と言って早速引っ付いてくる蒼月。振りほどきたいが、下級生の手前、ぐっと我慢する。
「あ、じゃあ私は反対側〜♪」
と言って花園が左腕を取る。
…なぜだ、なぜこんな事になった?
「あ、ああ! ちょっとユイ!」
「だ〜め〜♪ ハルは大人しく後ろで歩いてなさい〜」
「そうだよ、晴美君。椅子取りゲームのイスは2個しかないんだ。あぶれた人は大人しくたっていなさい」
端から見れば羨ましく見えるんだろうな、端から見れば。
だが当事者になってみろ。面倒な事この上ないんだぞ、実際。誰か変われ。
「ふむ。難しい顔をしているね」
蒼月が俺の顔を覗き込む。
「お陰さまでな。というか、ゴールまでこの状態なのか?」
「当たり前だろう」
ふふん、と鼻を鳴らす蒼月。
「全く、とんだ災難だな……」

――――――――――――――――

「お話は、終わりましたか?」
悠子は、飲んでいた緑茶を即席テーブルに置きながら聞いた。
「…まぁ」
貢永は曖昧に頷いた。
「それは良かったですね。…ん〜、私もそろそろ行こうかな」
立ち上がり、テーブルの器を持つ。
それを貢永は引き止めた。
「帰るんでしたら、その前に貴方の言っていた部活の話をしてくれませんか?」
「…? ああ、そういえば。私としたことが話していませんでした。どうしてでしょう?」
「話そうとする度に、貴女が話題を毎度毎度違う方向に持っていったんじゃないですか」
貢永は嘆息気味に――ではなく、しながら言った。
悠子は合点がいった様子で手を打った。
「そうでしたね。でも、自分から部の話を聞くなんて、ご熱心で嬉しい限りです。てっきり嫌がられるものだとばかり思っていましたから」
「まだ入ると決めたわけではありません」
この人は多分、相手がどう思おうと自分の目的のためには妥協をしないタイプの人だと、貢永は思う。
更には、運の悪い事に霊能力者だ。もしも断られてストーカーされて自分が人間でないことの決定的な何かを見られたとしたら、言い逃れできる自信はあんまりない。
が、そんなリスクがあったとしても、やはり過度に接触を起こすワケにはいかないのだ。
本来ならば、私は『存在してはいけないはずの存在』なのだから。
「う〜ん。やっぱりそうですよね。ま、話を聞いてくださるだけでもありがたいですよ。今まで誘った数十人のうちの8割は話も聞かずに逃げちゃいましたから」
私もそうやって逃げればよかったかな、と後悔する。
「…その数十人、もしかして無理矢理引き入れたりとかしませんでした?」
「さて、なんの事でしょう?」
やっぱり、と貢永は思った。
「そんなことより」(逃げたな)「…私の部活ですが、名前を『心霊友好部』といいます。内容はいたって単純ですよ。一言で言えば霊との触れ合いです」
「…はぁ」
可能なのか……? いや、確かに可能ではあるだろう。相手も自分も霊感があるのだから。
が、よくこんなものを思いついたと思う。普通の人間であればまず思いつかないはずだ。それが霊能者であっても。思いつくのはキチガイか、人間ではないかのどちらかだろう。
「具体的には、学校の霊がいる場所を巡って――知ってました? 学校に限らず、いたる所に霊っているものなんですよ――とりあえずコミュニケーションでもとろうかなと」
知っている。私には学校のありとあらゆるところを知り尽くした住人が情報屋としているのだから。
「ですけどねぇ……私がせっかく霊視できるようにして紹介してあげても、みんな逃げちゃうんですよねぇ…」
「はぁ…」
それは、当たり前じゃないのだろうか。
「ちょっと脳味噌が零れてたり、足や手がちぎれてぶら下がってたり、眼球が飛び出てたりしてるのを見ると悲鳴を上げちゃうんですよ。…一体どうしてなんでしょう」
「すいません、本当に部員入れる気あるんですか?」
自分だからいいが、普通の人が聞いてたらもうここにはいない。間違いなく。
「む……。なるほど。問題はそこでしたか」
いや、それもそうだけど、もっと根本的なアレだと思う。ちょっと広義すぎてうまく当てはまる語句が見つからないが。
「…何と言われても、入る気はありませんよ。ですから、お願いですから、入る日まで私の後をつけるなんて事はしないで下さいね?」
「貢永さんすごい。私の考えている事が分かるなんて」
貢永は頭を抱えた。
人間というのは、もっと単純で分かりやすい生物ではなかったか? 幾星霜の時を見続けてきた私の考えは、間違っていたのか?
貢永は1人で悩む。
悠子はそんな彼女を見ながら、やがて飽きたのか、夜空を見上げた。
祭りの明かりで星など全く見えないが、よく晴れて、月だけが煌々と照らし出される夜空。
夏、暑い夏は、今正に盛りを迎えている。
夜空を見ながら、一言。
「……もうすぐ祭りも終わりですね」

――――――――――――――――

「あ」
「お」
「…」
「なんか喋ろうよ」
模擬店の並ぶ神社のメインストリート。そこで浴衣姿の女子が3人、顔を見合わせていた。
1人は髪が長く理性的な顔立ちで、切れ目のある瞳はきつそうな印象を与えるが、浴衣のお陰か祭りのお陰か、はたまた別の理由からか、今はその険の強さもなりをひそめている。全体的に青めの浴衣は、クールビューティーな感じを演出している。
左手にうちわを持って、軽く扇ぎながら歩いていた。
1人は肩までかかった髪を無造作に流して、丸い瞳を大きく開けて驚きの表情を作っている。浴衣が若干だらしなく着流しているが、それも彼女の容姿を見るとしっくりくるから不思議だ。つまり、エロカッコイイ(多分違う)。
手にはうまい棒とわたあめ、焼きそばにチョコバナナと、奇跡的なバランス感覚でそれらを食している。腕にさげているビニール袋にはまだまだ食べ物がありそうだ。
浴衣はオレンジと、見るからに派手目の色合いだ。肩を出していたらどっかの歌手に似ているかもしれない。
その彼女が喋ろうよ、と話しかけた少女。
まさに少女という形容詞がピッタリな彼女は、見た目は中学生くらいだろうか。大きくくりくりとした瞳と、おかっぱ頭のような個性的な髪型が印象的だった。そして、それ以上に無表情が印象的だった。
浴衣はピンク色の可愛さアピール系なのに、それを着て歩いている本人との相性が微妙に合ってない。まるで人形が歩いているように見えるから不思議だ。
更に言えば、他の2人と比べて膨らみも無いので、余計に幼く見える。
「…余計な事は言わないの」
怒られてしまった。
「久遠さん? 何か言った?」
「うん。女性の敵に代表して言ってやったの」そう言うとまた誰もいない方向を向いて、「貧乳は希少価値だ! ステータスだ! …なの」と叫んだ。叫んだといっても、声量が声量なので、他の2人にしか聞こえなかったが。
「あの、つづらちゃん? 大丈夫? あっちの世界に旅立っちゃってない?」
「おふこーす」
「…な、ならいいんだけど」
鶯は、額に汗を垂らしながら言った。
「あの…」
「ん? ああ雪菜さん。奇遇だね、こんな所で」
「そうね。……あの、鶯さん」
「何?」
鶯の顔はなんともないように見えるが、その実、結構ビビリまくりである。
どうもいつもの攻撃さがない雪菜は調子が狂うのだ。
「あの時は、ありがとう」
そう言って軽く頭を下げる。
「…へ?」
「いや、ほら、だから前に私が落ち込んでいたとき……鶯さん、活を入れてくれたじゃない。その事、まだありがとうって言ってなかったから……」
段々と語尾が小さくなる雪菜。
「あ、ああ! そういうことね、なるほど! いいっていいって、あたしもその後の会議、楽しめたし。雪菜さんはその調子でもっとバンバンやってくれれば!」
「そうですか? なら、今度の会議も容赦はしませんよ」
「お〜、いいじゃん。それでこそ相手のしがいがあるってものだよ」
「別に私は貴女を楽しますためにやっている訳じゃないですけど。欲を言うなら、もっと真剣に取り組んでもらいたいんですが?」
「うん? 私はいつも真剣に取り組んでるよ、何事も。遊びも勉強も仕事も、ね」
「仕事を遊びにしてしまうのが貴女じゃなかったんですか?」
「む、バレた」
あはは、と笑う女子2人。
その横の少女が言った。
「………今の時代は、ロリのジャンルが一番強いの」
全く関係ない。

――――――――――――――――

「はあ……泉さん、確かこっちへ行ったと…」
泉を見送ったはずの如月だが、何故か泉を探して彷徨っている。
見送ったはいいが、あの様子では何をやらかすか分かったものではないので、仕方なく探しているのだ。
「ん…この方向は、肝試しの方ですね」
人が多く集まっているからいるかもしれない。
そんな単純だが、可能性のありそうなものに引かれて、如月は行った。

[246] 主観:なし 登場人物:鶯、光、紅夜
凪鳥 - 2008年02月24日 (日) 18時46分

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- 『半年革命 〜普通科編〜』 -
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紅夜「――却下します」
鶯「へっ?」

 普通科総括会室に、この学園では珍しい男子生徒の声と、女子生徒のポカンとした声が響く。

 総括会室には合計三つの人影。
 一つは普通科総括会会長・普通科二年の庭瀬鶯。
 一つは同じく副会長・普通科二年の如月光。
 そして最後に、総括生徒会副会長・普通科一年の綾河紅夜。

 三人は一つの丸テーブルを囲み、次の総括会議についての調整を行っていた。

光「どうしてですか? 特に書類に不備は無いと思いますけど・・・」

 付き返された申請書類を見直す光。
 自分が言ったとおり、書類には特に問題は見当たらなかった。
 怪訝な表情で説明を求める光に、正面に座る男子生徒・・・紅夜は当然のように答える。

紅夜「『通す気の無い提案』は俺の独断で全て却下させてもらいます」
光「なっ!?」
紅夜「今の生徒会は貴女方の『お遊び』に付き合っている暇はありませんので」

 光の驚きの声をさらりと聞き流し、紅夜は鶯に視線を向ける。

鶯「それはそれは、随分横暴ですね、生徒会副会長殿?」

 自身に向けられた視線を受け止めると、鶯は自分より一つ年下の生徒会副会長を試すように言い放つ。

紅夜「俺のやり方に文句があるのなら相応の場で・・・そのための総括会議ですから」
鶯「・・・それもそうだね」

 鶯と同じように、紅夜も自分に向けられた視線を受け止めると、こともなげに言い放つ。

 かかってくるなら望むところだ、相手になってやる――と。

 その紅夜に、鶯は自分でも気づかないうちに口元に笑みを浮かべる。
 鶯の笑みに気づき、紅夜もまた口元に笑みを浮かべた。

紅夜「・・・裏でこそこそ舞台を整えている暇があったら、さっさと舞台に上がってきてください」
鶯「でないと、私達の『出る幕が無くなっちゃう』のかな?」
紅夜「えぇ、『出ないつもり』なら」
鶯「・・・・・・」
紅夜「・・・・・・」
光「あ・・・えぇと・・・」

 只ならぬ雰囲気の二人に、光は口をはさむ事もできず視線を鶯に、そして紅夜にと右往左往させる。

 暫くの沈黙。

鶯「・・・ふぅ、仕方ないですね。 解った、善処する方向で考えるよ」

 こうしてても仕方ないと感じたのか、先に折れたのは鶯のほうだった。
 それに、そろそろ頃合だしね〜・・・と、ポツリと呟く鶯。

鶯「光、お茶をお願い〜」
光「え? あ、はい、ちょっと待ってください」

 鶯の言葉で光は自分の席を立つと、部屋の奥に備え付けられてあるキッチン・・・もとい、給湯室へと消える。

紅夜「・・・庭瀬会長」

 その様子を見ていた紅夜は、頃合と見たのか口を開いた。

鶯「うん? なんだい紅夜くん」
紅夜「・・・暫くの間普通科には俺の思惑通りに動いてもらいます」

 驚いたのは一瞬。
 しかし、直ぐに鶯は楽しそうな表情を浮かべる。

鶯「・・・大きく出たね、そんな話黙って聞くと思いますか?」
紅夜「えぇ、思います」
鶯「その言葉といい、総辞職といい・・・ほんと、大した自信だね」
紅夜「自信ではありません、現実問題として『今はまだ』俺の思惑通りに動しかないと思いますが?」
鶯「・・・・・・」

 鶯は考え込む。
 実際その通りであった。
 女帝率いる看護科をこの副会長が牽制しているおかげで、普通科もどうにか身動きが取れるようになってきた。
 とはいうものの、こちらが前に出て行くにはもう少し準備が必要だし、時間も必要だ。
 そう考えると、看護科・普通科・美術科それぞれの勢力を一旦イーブンに戻し、それから体制を創り直そうという、彼の思惑通りに動いたほうがいい。
 一旦並んでしまえば、こちらも負けるつもりは無い。
 今無駄に反発するよりも、暫く従っていた方がこちらの怪我は少なくてすむ。

紅夜「・・・正直に言いましょう」
鶯「ん〜?」
紅夜「俺は普通科を敵に回したくは無い」
鶯「うん、それはそうだろうね」

 今彼が背負っている問題は、そのことごとくが厄介で、そして膨大だ。
 生徒会の運営しかり立て直ししかり。
 看護科との正面衝突に美術科の補助、そして中等部との連携に菫ノ宮生徒会への牽制。
 探せばきりが無いが、今のところ彼は、その全ての問題を完璧に把握し制御している。
 とはいうものの、綱渡りな状況にはなんの変わりも無い。
 特に問題なしとしていた普通科が敵に回ってしまったのでは、流石にバランスが危うくなるのだろう。

 言ってしまえば、彼が考えているシナリオは、良くも悪くも普通科しだいということ。

 そんな事は解っている事だ。
 それをわざわざ言葉に出すという事は・・・。

鶯「・・・潰すつもりなんだね『私達』を・・・看護科よりも、先に」
紅夜「・・・貴女方が俺の『敵』になるというのなら」
鶯「出来るつもりなの?」
紅夜「・・・今なら」
鶯「そう、今なら・・・ね」

 今なら・・・。
 それは自分の余力があるうちに。
 それは普通科の勢力が戻ってくる前に。

 数秒か数分か・・・。
 暫くの間、二人はお互いの真意を探るように視線を合わせる。
 一人は思考を巡らせながら、一人は唯まっすぐに。

 そして、ふぅと一人が息を吐くと、視線は逸らさず口を開いた。

鶯「・・・解りました、こちらとしても共倒れは面白くないものね」
紅夜「・・・ありがとうございます」

 そういって紅夜は小さく頭を下げる。
 そこでようやく両者の視線が外れた。

 話が終わると、ここにはもう用は無いと言わんばかりに机の上の書類を片付け始める紅夜。
 まぁ実際打ち合わせは殆ど終わっていたわけだが。
 程なくして片付け終わると、紅夜は椅子から腰を上げる。

 次の仕事が待っている――そういわんばかりに。

鶯「それにしても紅夜くん、君はどうしてそこまで頑張るんです?」

 素朴な疑問を鶯は立ち上がった紅夜にぶつけた。
 この学園がそれほどまでに好きなのか?
 いや、まだ入学して半年しか経っていない。
 中等部からずっとこの学園に居るのならばまだしも、流石にそれほどの愛着はわかないはずだ。
 それどころか、男子生徒はこの学園での風当たりは強いはず。
 特に彼は性格や立場のせいでそれが顕著だ。
 義務だから? 学園長の命令だから?
 純粋に興味があった。

 その問いに、紅夜は考えるそぶりもなく簡潔に答える。

紅夜「・・・頼まれた、それだけです」

 それでは。
 そういって、紅夜は総括会室を後にした。

鶯「・・・頼まれた、ね」
光「――あれ、紅夜さんは?」

 紅夜が総括会室を出てすぐ、奥から紅茶を入れ終えたらしい光が戻ってくる。
 結構時間がかかっていたようだが、どうやら紅茶のストックを探していたらしい。

鶯「もう帰っちゃったよ」
光「そうなんですか、折角紅茶を入れたのに・・・残念」

 言葉どおり、残念そうに光はお盆の上の物を机に並べていく。

鶯「わおっ! お菓子もある〜手作り?」
光「一応紅夜さんにも食べてもらおうと思ってたんだけど・・・」
鶯「ん、そなの? だったら生徒会室に持っていってあげるといいよ」

 お菓子を次々と口に放りこみながら、鶯は言う。

光「う〜ん、いいのかしら・・・」
鶯「いいのいいの、ついでに色々と助けてあげてきて」
光「え? 助けてって、紅夜さんをですか?」
鶯「そ、あれは自分で助けてっていうタイプじゃないから〜」

 断言できる、口が裂けても言わないだろうあれは。

光「は、はぁ・・・貴女がそういうなら解りましたけど」
鶯「よろしくね〜」

 首を傾げながらも光は、机の上からお菓子とポットを持つと、総括会室の扉に手をかける。
 鶯はぱたぱたと手を振って、生徒会室へ向かう光を見送った。

鶯「・・・可哀想な子だね」

 ポツリと、鶯は呟く。

 本当に彼はこのまま一人でやり遂げるつもりなのだろうか?
 なにもかもを、誰にも頼らず唯の一人で。
 きっと今までもそうしてきたのだろう。
 『天才ゆえの孤独』というよりは、唯の性格か。
 それに彼はどちらかというと天才ではなく秀才・・・努力の人だ。
 同じ一年ならば、看護科の副会長の方が天才といえるだろう。

 しかし、彼がどれほど優秀でも所詮は一人だ、いずれ限界が来る。

 崩すのは造作も――無い。

 それはきっと、彼もわかっているのだろう。
 だがそれこそが、彼の強さ。
 一本の矢は容易く折れてしまう・・・その事を理解しつつもあえて一本である事を望む。

 自分で自分を追い込み、自分自身と闘う事で強くなれる。
 誰にも止める事はできないし、誰にも手伝う事など出来ない。

 ――そんな、可哀想な子なのだ、あの少年は。

 本当に、簡単に崩せそうだ。

鶯「・・・さ、これからどうしようかな〜」

 光の入れてくれた紅茶を飲みながら、ふんふ〜んと鼻歌交じりに書類を整理し始める。

 どうすれば一番楽しいのか・・・それを、考えながら。



 ――それが、普通科総括会が、たった一人の生徒会を認めた瞬間だった。


-- NEXT ---------------------------------

桜ノ宮過去編 〜半年革命〜

一年前の半年革命を、総括会側からの視点で書いてみようかなぁ〜と。
にしても・・・。
生きてます! 生きてますよ私は!

ここ一月からず〜と卒業関係で忙しくって、昨日や〜と終わってこれからいくらかゆっくりできるなぁ〜って感じです。

うぅ〜ブログ〜・・・ブログを更新しないとぉ〜・・・。

[249] あ〜、いい響き
ジャッキー - 2008年02月25日 (月) 21時10分

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- 桜ノ宮inラジオ『さくら放送局』  -
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「今日も始まりました、桜ノ宮inラジオなの」
「今日もって……しばらくなかった気がするんだけど?」
「みーちゃん、それは言っちゃメな話題なの。まあ、いざとなったら不定期ラジオってことにするから問題ナッシングなの」
(今でも十分な気が…)
「DJはもちろん私、看護科2年の久遠つづらが送り届けるの」
「アシスタントは私、有栖川瑞樹が受け持ちます」

「そういえば、最初はDJとアシスタントは毎回交代する予定だったんだよね〜。なんで固定になっちゃったんだっけ?」
「この私の人気によるものなの(断言)」
「…そ、そう(汗)」
「それは冗談として、きっとそれはこの世ならざるものの力によるものなの」
「…つづらちゃん、大丈夫?」
※概ね、その説明であってます。

「気を取り直して今日のゲストは、皆さんの憧れの的にして桜ノ宮学園の最終兵器、楠葉晴美ちゃんです。パチパチパチ」
「つづら、無感動な声だけの拍手はやめてくれ。ていうか、今の憧れの的ってのも気になるけど最終兵器って何だ。私はそんなのになった覚えはないぞ」
「えーと、日本に危機が迫ったら政府がはるくんを拉致って最終兵器にしちゃうの」
「なるか! てかそれじゃ地球滅びちまうだろ!」
「冗談なの」
「真顔で冗談は勘弁してくれ…」
「それじゃ、ミュージックスタートなの」

スキ〜ル、マイハ〜ト、ぎぃんがの果てまで〜音符

「なんだこのBGMは!」
「skill my heart」
「それは知っている。だから、なんでこのBGMなんだ!」
「こういうのが好きと思ったの」
「た、確かに嫌いじゃないが…」
『絶対無敵最強バトール!!!』
「あんたが歌いたいだけじゃねえかぁ!」

「それでは『教えて☆ゲストさん』のコーナーなの」
「最初はDJとアシさんだったんだよね〜、これ」
「今となってはいい思い出なの。ん…?」
「ぜぇ、ぜぇ…」
「どうしたの? まだラジオは始まったばっかりなの。今からそんなに疲れてちゃ身が持たないの」
「てっきりどうして疲れているかって聞くかと思った」
「分かりきった質問はしない主義なの。じゃ、お便りいくの。…P.N『女子高生A』さんからのお便り」
「なんてRPG的なP.N」
「『晴美さんのそれはどうしてそんなに立派なものなのですか? 毎日牛乳を飲めばそうなるのですか? お願いです、答えてください。やっぱり夜な夜なマッサ―――』」
「だああああああああああああ!!! そんな質問に答えるかぁ! いくら女学校と言えども、てか男いるし! 立派なセクハラ!」
「む…。答えたって減るもんじゃないのに、ケチなの」
「………」←無言の殺意
「次のお葉書に行くの。P.N『ユーカリの葉っぱ』さんからのお便り。『ずるいずるいずるい! ハルだけあんな立派なものがあるのはずるい!』…だそうなの。じゃあこれについてのお答えを…」
「既に質問じゃねー! ああもうその事に対してのお便り一切禁止!」
「その事じゃわかんないの」
「おのれは小学生か!」←必殺技準備完了
「それじゃあさっさとお便りを分別するの」

「お便りのコーナーは終わりなの」
「なかったんかい!」

「それでは、ゲストとDJによるトークコーナー、題して『座談会』を始めるの」
「無駄に物々しいな」
「この日のために我ら有志一同は、はるくんに対する身辺調査を行ったの」
「てオイ! そんな話聞いてないぞ!」
「今話したから聞いてなくて当然なの」
(…なんか疲れてきた。でも大丈夫、婆ちゃん、私、がんばる!)
「調査したところによると、はるくんは攻めより受けのほうがいいという意見が多いという結果が……」
「ちょおっと待ったあ!」
「さっきから待ったが多すぎるの。話が全然進まないの」
「これが言わずにいられるか。なんだその調査は!」
「授業中に紙を回して全校生徒にアンケートをすること一ヶ月なの」
「地味! しかも時間かかりすぎ!」
「まあそれは置いといて、この結果についてどう思われますかなの」
「どうもこうも、そんなこと聞くな!」
「む、残念なの。じゃあ次に………」

ドッッッッッパアアアアアアアアアアアアアアァァッァアァァァァァァァァァァァァアン!!!!!

「「「!!?」」」
『ハーッハッハッハッハァ!』
「く…誰なの!?」
「天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ私が呼ぶ! 月下最強空前絶後、前人未到焼肉定食! その名は…仮面ライダー『ウグイス』!!!」
「…何をやってるんスか庭瀬会長オオォ!!!」
「ケホ、ケホ……これは、一体なんですか?」
「うん、煙幕と癇癪玉と爆竹をありったけ放り込んでみた。いやあ、密室だとかなりいい音がするね」
「あんたアホ!?」
「占めて3000円くらいにはなったかな」
「正真正銘の大アホ!?」
「こんなことをして…一体何が目的なの!?」
「面白そうだから」

………

「そ…」
「なるほど納得なの」
((えええええええええええええええ!!??)
「うん、つづらちゃんならそう言ってくれると思ってた」
「ということで、多少のアクシデントはあったけど、こちらは何の問題もないの。ただゲストにうーちゃんを入れることになったから、よろしくなの」
「そ、そんな突然…」
「つづら、本気か?」
「私はいつでも100パーセント本気なの」
(…だよなあ、聞いた私がバカだったよなあ…)

ドタドタドタ バァン

「ここにいましたか…」
「あ、光? どったの」
「どったのじゃなくて…さあ、早く行きますよ…?」
「あ〜、ゴメン。今から私ラジオに緊急生出演する事になってさあ」
「!!!」
「…だから一緒には行けませんです、ハイ」
「…さあ、早く行きますよ…?」←暗黒闘気チャージ中
「あの、生出演…」
「行・き・ま・す・よ?」チャージ完了
「………(((コクコク)))」

「…お悔やみ申し上げます、なの」
「いや死んでない。死んでないから」
「ええ。あのゴキブリ並みにしぶとい鶯さんが死ぬはずないです」
「…で、どうして天野会長がここにおわすので?」
「様子を見にここに来たら久遠さんが『暇?』と聞くので、とりあえず急ぎの仕事もないので『ええ』と答えたら引っ張りこまれました」
「つづら、なんでだ」
「うーちゃんの代役」
「立てる必要ねえだろ!」
「まあ、もうこうなちゃったらやるしかないの」
「…はぁ。それにしても天乃会長、落ち着いてらっしゃいますね」
「慣れましたから」
「…はぁ」

「で、雪ちゃん。士仙君との関係はどうなの?」
「? どうしてここで士仙が出てくる?」
「さあ…そういうのは3Aさんに聞いてくれないと…」
「3A? 誰だそれ。なんか聞き覚えがる気が…」
「3S(スリースピード)の親戚なの」
「久遠さん、それはネタがマイナーすぎです」
恐らく分かる人はいないだろう。個人的には面白いと思うのだが、電波娘に抵抗ある人が多いらしい。
「初めての地の文なの」
「とうとう、入れてしまいましたか」
「あんたら2人とも、一体何の話をしているんだ?」
「……ああ、考えてみたら……」
「?」
「……晴美お姉様」
「ぶっ!!?」
「と呼ぶ日が来るのかもしれませんね」
「ちょちょちょちょっと待った。それって一体どういう意味で…」
「あー、そういえばそうなの。今まですっかり気付かなかったの」
「ああああのね、私を置いていかないでね!?」
「お姉様……御姉様……。呼ぶ時は、後者の方が私らしいわね」
「なんとなくいい響きなの」
「だーかーらー!?」
「あ、もう時間なの。それでは、これで桜ノ宮inラジオ『さくら放送局』を終わります。またの機会を」
「あのー!?」
-- END --------------------------

なんとなくラジオ書きたくなって、晴美を出して、なんか鶯が乱入してきちゃって、しまいには雪菜が出てきてしまったというなんともまとまりのない話。
正直、晴美御姉様が書きたいだけだったりして。

[250] そろそろノンジャンルは新スレに移行したほうがいいと思う。
ラスティ・ブランフォード - 2008年03月05日 (水) 18時35分

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- 〜さくら放送局〜 ブラコンVS親馬鹿 -
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つづら「今日も、元気に放送を始めるの。今日のゲストは、とってもスペシャルな人なの。」
狼輝「学園の裏手にある、黒森神社の神主の霜月狼輝です。」
氷雨「桜ノ宮学園OBの綾川氷雨と言います。」
つづら「狼輝さんはこの間の生徒会企画、ホスト部で知ってる人も多いと思うけど、氷雨さんも結構すごい人なの。
    あの、半年革命を成し遂げた綾川紅夜のお姉さんで、3年連続主催権を看護科にもたらした伝説の人物で、
    女帝と呼ばれる現看護科会長のゆきちゃん憧れの人なの!」
氷雨「そんなに強調して言わなくても。」
狼輝「へー、そんな風に言われてるんだ、学園の『表面』では。」
つづら「……?ろーさん、何か知ってるの?」
狼輝「そりゃあ、当時を知ってる人間だからね。……この写真、ラジオだから皆に公開できないけど紅夜君に」
氷雨「お願い!止めて!」
狼輝「……やるわけ無いでしょう。と言うか、視線が痛いです。」
つづら「このスタジオに、こーやくんとみくちゃん(紅夜と貢永)が来てるの。放送には参加しないと宣言してるけど、
    お二人に対して冷ややかな視線を常に刺しているの。正直、保護者の立場がないじゃないかと思うの。」
狼輝「立場が無いってそんなはっきり……まあ、ワザワザ家族が学園の放送室に来てふざけてたら、普通は冷たい態度とられますよね。」
つづら「とりあえず、雑談はこの辺にしてミュージックGOなの!」

【流れるのは、ルパン3世オープニング】

狼輝「ふふんふーん、ふーんふーんふん。(伴奏に合わせて鼻歌で歌う)」
つづら「結構ノリノリなの、神主さん。氷雨さんも少しはテンションあげて欲しいの。」
氷雨「……紅夜に会いに来た、だけなのに。なんで、校内放送されなきゃいけないの?」
狼輝「……筋金入りのブラコンですね。」
氷雨「……ロリコン光源氏(ボソッ。」
狼輝「……コレの事をお忘れで?」
氷雨「……うう。」
つづら「氷雨さんを黙らせる、封筒の中身が物凄く気になるの。そして、一段と被保護者達の視線が鋭くなった気がするの。」
狼輝「気にしないで欲しい。と言うか、彼女の若さゆえの恥を全校放送で言ってしまうほど、意地が悪い事はしない。」
つづら「被保護者’s、こーやくんは頭を抱えてみくちゃんは溜息をついたの。み、みくちゃん、睨まないでほしいの。とっても怖いの。」
狼輝「殺気すら感じさせる、このプレッシャー……これを、皆さんにお伝えできないのが残念でなりません。」
つづら「と、とにかく『教えて☆ゲストさん』にいってみるのー。コレ答えてみてー。」
狼輝「何々……?『結婚したい異性のタイプを教えてください。』」
氷雨「私は……」
狼輝「はいはい、聞かなくても『紅夜』って言うんでしょ?いろんな意味で完璧な人だし。」
氷雨「……そう言う貴方は、幼女とか答えるんでしょ?」
狼輝「世間が誤解するから止めなさい。……そうだね。咆哮一つで世界を消せる魔物に、たった一人で挑んで勝てる人。
   さしずめ、竜王を自力で倒して帰ってくるローラ姫。」
つづら「それ、もはや女性どころか人間ですらないと思うの。」
狼輝「そのぐらい理想が高いって事だよ。肉体的にも精神的にも。」
氷雨「尻に敷かれたい願望でもあるの?」
狼輝「自分よりレベルの高い人に敷かれるなら本望だよ。」
氷雨「……告白した連中を、貴方が全部断った理由が分かる気がする。振られた連中は可愛そうに。」
狼輝「……アレ、全部からかい半分で来させてたんじゃないのかい?」
氷雨「一部は、本気で告白しに行った人もいたよ?私の知る限り、3人は間違いない。」
つづら「何の話なの?」
狼輝「このブラコンが桜ノ宮の学生だった時の事さ。
   当時の看護科会長の思いつきで、主催権取り損ねたら罰ゲーム!って言うのを、看護科内で徹底させたんだ。
   その内容は多岐に渡るけど、夏場の暑い日、それも人が集まる夏祭りの時に巫女服着用っていうのは特に酷かったよ……
   貸し出した巫女服、全部がお風呂にでも入ったかの如く、ずぶ濡れで凄い匂い放ってたし、着てた子達は死んだ眼をしてたね。」
氷雨「あの罰ゲームは、流石に反省した。」
狼輝「……その後、逆襲にあった時の内容は言わないでおくけど、アレは多分一生忘れられない思い出だな。」
つづら「それより、告白の話についての話を聞きたいの。」
狼輝「……さっきの罰ゲームの派生。『誰でも良いから、男の人に告白して来い』ってもの。
   確実に失敗して、誤解も後腐れも無く終われそうな人物の槍玉として挙げられたんだよ。」
氷雨「あっさりネタバレしてから、なんか告白の練習台と化してたような気もするけど、
   それでも本気で好きになった奴だっていた。意外と良いフォローしてたし……」
狼輝「……まさか、とは思いたいけど、君も本気だった中の一人とか言い出さないよね?」
氷雨「そんな事は、ない。」
狼輝「ならいいけど。どうせブラコン一筋だから興味無いとか言うんだろうけど、少しは離れてあげた方が良いと思うよ?」
つづら「……お二人に、一言言っていいの?」
狼輝&氷雨『なんでしょうか?』
つづら「仲良しですね。付き合ってもいいんじゃない?」
氷雨「なっ!?」
狼輝「落ち着いてください、氷雨さん。……つづらさん、男女の関係と言うものはそう生易しくないのですよ?
   ましてや、理想が異常と言うか、人外のものを望む人に、弟との禁断一歩手前の関係を求める人では釣り合わないでしょう?」
氷雨「……言いたい放題言われてる……」
狼輝「第一、家族が後ろで控えている状況でそんな事を言うのは、自殺行為だというのには気づかなかったのかい、つづらさん。」
つづら「い、言われてみれば、殺気がコッチを向いてる気がするの。」
狼輝「……ともかく、そろそろ時間ですし、切り上げましょうか。(ひらひら)」
つづら「えっと、あ、本当だもう時間なの。」
狼輝「さて、殺される覚悟をして放送終了後に備えますか。」
つづら「コレで放送を終わるの。それではまたライシューなの。」

-- END or NEXT --------------------------

いかがなものか、このネタは。
別に、狼輝と氷雨フラグを立てるつもりは無いけど、氷雨さんがまったく紅夜や柊兄妹以外のキャラに関わらないので
無理やり狼輝が氷雨を(一方的に)弄って見ました。

[251] つまり100いったら交代という事で
ƒジャッキー - 2008年03月06日 (木) 00時30分

写真の中身大予想…は、雑談スレか。

こう考えると狼輝って桜ノ宮のジョーカーですよね。
困った時に助けに入る、機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナでしたっけ?)的なポジション。
霊能力はあるし地位と名声もある程度あるし長く住んでるから情報は沢山あるだろうしミクトと協力関係にあるし。

[256] よくやる。
雲理 - 2008年03月15日 (土) 23時28分

「わかっているんだ。」
背中をなでる。
「話して楽になれよ。」
やさしく頭を触る。
「私以外はだれもいないから。」
手を握る。やわらかい。


「…本当は喋れるんでしょう?」


「……ゆきちゃん、何してるの」
びく
「な、な何も…」
「にゃー」

[258] 主観:鶯 登場人物:鶯、光
雲理 - 2008年03月19日 (水) 12時58分

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- 『半年革命 〜普通科編〜 のおまけ』 -
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「ねえ光。」
他の人員が帰宅し、そろそろ私たちも帰ろうか。というタイミングで私は相方に声をかけた。
「なんですか?」

「私の敵にならない?」

「は?」
私の問いを聞くなり、疑問符を浮かべる光。まあ、もっともな反応だ。
唇をなめて湿らせ、次の言葉を繰り出す。
「私ねー。彼が気に入っちゃったよ。」
「…彼、ですか?」
「そうそう。俗に言う一目惚れ、というやつだね。」
相方はその言葉を聞くや、何を言ってるんだこいつは。という表情でこちらをみる。
彼とは総括生徒会副会長の綾河紅夜のことだ。
だが私の目を見て、光の表情はすぐにポカンとしたものに変わる。
「…本気で言ってるんですか?」
「当然さ。失礼だねキミ。マルコキアス、おいで。」
傍にいた小さな友を抱き上げ、膝に乗せる。
「なかなかいい男だよ、彼は。頭も切れるし、なにより…………目立つ。」
「それはそうでしょうけど…唐突ですね。」
「うん。あと、普通科で彼を補佐すると言った件なんですけどー。」
「あ、はい。」
「あれ、撤回する。」
「え?あ、う。」
光は混乱した。
これは意地悪な言い方だったかな、と私が反省した時、
「共倒れですか?」
光は無表情でそう、言った。
「ともだおれ、共倒れね、うーん。あ、そうか。なるほど。」
私は手を軽く打ち合わせる。
「それは考え付かなかったな。うん。斬新だ。」
どうやら光は、私を悪代官か何かだと思っているらしい。少し、傷つく。
だが嬉しかった。刃に向かって踏み込むような光の考えは、相手を弾き、寄せ付けない。
まさに彼女自身のようだったからだ。そしてそれ以上に、
「何年ぶりかな…、想像できない答えを聞いたのは。…驚いたよ。」
「…はあ。」
光は少し恥ずかしそうだった。見当はずれな答えを言ってしまった、とでも思っているのかな。かわいい奴め。
彼女が言ったのは、看護科と生徒会のことだ。だが、
「いや、協力は続けるよ?」
「?」
再び疑問符を浮かべる光。私は膝のマルコキアスを撫でながら、言葉を続ける。
「協力とはいえ、やっぱり女性だらけだからさー。彼に悪い虫が付くかも知れないしねー。」
「でも、」
私は彼女の反論を遮る。

「だからさ、うちの役員を反対派に仕立ててくれない?」

え、と言いかけ、光は停止した。
俯き、口元に手を当てて考え込む。彼女の脳内からガリガリと音が聞こえそうだ。
「………!!!」
しばらくして、驚愕した表情を浮かべた。うん、やっぱりこの娘は優秀だ。
顔を上げてこちらを見る。その表情を満足げに見ながら続ける。
「うん。そうだ。普通科(うち)はたしかに守りに定評がある。だけど、」
「攻撃には、向いていない?」
「うん。」
「するつもりなんですね。」
何を、とはいわない。
これは私たちにとって、またとないチャンスなのだ。
生徒会が普通科と手を取り合って、看護科の勢力を弱める。それはいい。
だが、問題が一つだけある。
先ほど言ったように私たちは守りには定評がある。
生徒会が盾を身に着ける。するとどうなるか。
看護科は全力をもって潰そうとするだろう。最悪美術科と手を組むかもしれない。
だが、普通科の総括会全体がそれに反対していたら?
賛成しているのが彼に心酔した会長だけだとしたら、どうか。
さらに私は仕事をしていない、とそう思われている。
相手が身に着けた盾がぼろぼろだとしたら、どう来るだろうか。
「…馬鹿にされるだろうなー。」
ああ、やれやれ。攻め手になるとあの女は容赦がない。
「そうですね。あの様子だと、看護科は最後まで反対するでしょうね。」
光が言うにはあの女帝は生徒会副会長にどうやら、かなりの敵意をもっているらしい。
好都合だ。
頭を垂れるのが遅ければ遅いほど、相手の力を削ぐことになるのだから。
「鶯会長の先見性はすばらしーなー。それに比べて看護科はー。」
「マルコキアス、嫌がってますよ…」
「うん?そうだ。伝令役はこいつにやってもらう事にします。」
「はい。」
さすがに反対派と仲良く話すのは良くない。嫌そうな顔をするなよ、友達だろっ。
「ああ、光が私の敵だなんて…よよよ。」
わざとらしい演技をして立ち上がる。膝のマルコキアスを抱き、鞄を持ち上げる。
「それでは、行って来る。」
「愛しの彼の所へ、ですか?」
「ああ内堀から埋めないと。彼は料理も一級らしいよー。あわよくば泊めてもらう。」
「それにしても、ずいぶんと買っていますね。」
確かに、彼とあったのは少しの間だ。
「まあ、恋というものは元来盲目。恐ろしいものだよ。」
「あなたのは下心です。」
「失礼だなあ、恋だって下心だよ?恐い、恐い。」

-- END ---------------------------------

なーどりさんの話を読んで、浮かんだ会話。
不都合な点があれば無視して下さい。

[281] 常世の星空 感想と誤字などの報告
紅白まんじゅう - 2009年05月30日 (土) 11時57分

書き込み先に困ったので一番無難そうなココに(汗)

常世の星空をプレイいたしました。
読み応えあってとてもおもしろかったです^^
絵も文章も上手いですし、音楽の選曲センスいいですね。
お一人で作られたとのことですけど、もしかしてプロ関係の方ですか?
続編か別の新作を楽しみにしております! と煽りつつ密かに期待(笑)

誤字、脱字等ありましたら掲示板に〜とのことでしたので、プレイしながらメモってた分だけご報告します。


■常世の星空ver1.00 誤字・脱字・誤用など
・見上げた星空 純白の少女
  × ・・・? (中点3つは近年よくある誤用)
→ ○ ……? (正しく書ける人は3点リーダーを2つ並べる)
   ("誤字"扱いではなく「、」の代わりに「,」「.」「。」を用いているような"用法ミス")

  × 丁度良い具合にその姿を"表した" (提示)
→ ○ 丁度良い具合にその姿を"現した" (出現)

  × 変わらない輝きが視界に"写る"  (転写)
→ ○ 変わらない輝きが視界に"映る" (表示、反映。目に映る)

  × "ボーっ"としていたらしい俺を      
→ ○ "ボーッ"としていたらしい俺を
"っ"でも構わないが前の単語にかかるので正しく書くならカタカナの小さい"ッ"。
同シーンに"ムスッ"や"ぷいっ"とあるのでボーの小さい"つ"もやはりカタカナが無難

  × 冗談の色は"伺えない" (聞く、訪ねる) 
→ ○ 冗談の色は"窺えない" (覗き見る、様子を探る、機嫌を〜)

  × "純粋"無垢なまなざし          
→ ○ "純真"無垢なまなざし(心に穢れのない清らかな様。用例四字熟語)
   意図は分かるものの、無垢=純粋なので純粋無垢と書くと"頭痛が痛い"や"馬から落馬する"と同様の重複表現になる

  × ベンチから"除け" (のぞく。除去する) 
→ ○ ベンチから"退け"(のく、どく、ひく、しりぞく。横に〜)
  × "純粋"無垢な表情だ           
→ ○ "純真"無垢な表情だ

  × なんで俺が"どけ"なきゃならんのだ(対外) 
→ ○ なんで俺が"どか"なきゃならんのだ(対自)

  × "堂堂"巡り               
→ ○ "堂々"巡り
  間違いではないが直前に"弱々しい"と記述しているため

  × 【少女】「っ!」            
→ ○ 【少女】「ッ!」
   間違いではないが同シーン少し前に「ッ!」、少し後に「──ッ!?」とあるので統一したほうが無難

  × "ボーっ"と星空を            
→ ○ "ボーッ"と星空を

  △ その存在への興味が薄れ"掛けて"た頃、
    ボソリと、少女が俺に声を"かける"
  一文章中でもあるので"薄れかけて"の方が読みやすい

  × 鼓膜"か"破れるかと思った        
→ ○ 鼓膜"が"破れるかと思った

  × 俺もそれに"習って"空を見上げる(教わる)
→ ○ 俺もそれに"倣って"空を見上げる(模倣する。前例にしたがう)

  × この子がすべての"現況"だということは(現在の状況)
→ ○ この子がすべての"元凶"だということは(諸悪の根源)

  × 足を"勧める"              
→ ○ 足を"進める"

  × 【少女】「っ!?」           
→ ○ 【少女】「ッ!?」(表記を統一した場合)

  × きっとへそで湯が沸かせるだろう
  滑稽なことに対して蔑みをこめて笑い飛ばす際に用いることわざ。へそで茶が沸く。
  やかんの湯も沸けそうなくらい凄まじく怒っている人の比喩には湯でも茶でも残念ながら使えない


・自動販売機 孤高の黒猫
  × 俺の睨みが"訊いた"のか (尋ねる、聞く)
→ ○ 俺の睨みが"効いた"のか (効果がある)

  × 実感が"沸かない"が (騒ぐ。激しく動く)
→ ○ 実感が"湧かない"が (感情などが生じる。新たに出てくる)

  × ここら辺"一体"のボス (単体)       
→ ○ ここら辺"一帯"のボス (地域)

  △ 蚯蚓腫れ 
  正しいものの小説向き。バランス的にも蚯蚓単独でもとっさに読みにくい漢字なので"ミミズ腫れ"とするか
  ルビを振る方がゲーム向きで美しい

  × 非難の声が"挙がる" (示す。証拠が〜) 
→ ○ 非難の声が"上がる" (用例そのまま)

  × 俺もそれに"習う"            
→ ○ 俺もそれに"倣う"

・鈴の音 漆黒の夢
  × もう一度足を止め、周りを"伺う"     
→ ○ もう一度足を止め、周りを"窺う" 

  × 目の前に人影が"写る"          
→ ○ 目の前に人影が"映る"

  △ 子供、多分小学校高学年位か
  漢字は正しいし小学生でも読めるものの、「子供。多分、小学校高学年くらいか」の方がパッと見キレイで読みやすい。
  上記の理由は、分けていないと"多分小学校"は瞬間的に"学校名"と混乱しやすく、
  範囲をあらわす"位"は同時に地位を表す漢字なので、直前に"高学年"とあるのは直感的に関連した漢字として
  "こうがくねんい"と音読み流れで捉えやすく、文章的にも美しくなくなるため

  × 片膝を付く"体制"になって  (制度)  
→ ○ 片膝を付く"体勢"になって  (姿勢)

  × 俺の様子を"伺って"いた姉        
→ ○ 俺の様子を"窺って"いた姉

  × "純粋"無垢な眼差し           
→ ○ "純真"無垢な眼差し (最初の章と合わせるなら"まなざし"でも可)


・少女の見栄 流れぬ涙
  × "覚えて"いるほうが(習得、意識)    
→ ○ "憶えて"いるほうが (記憶)


・渡せぬ心 夢想の現実
  × 拒絶の意思は"伺え"なかった       
→ ○ 拒絶の意思は"窺え"なかった

  × "様態"が急変              
→ ○ "容態"が急変 ("容体"でも可。お好きな方をどうぞ)

  × 一つの小袋が"写る"           
→ ○ 一つの小袋が"映る"

  × 生まれて"始めて"食べた         
→ ○ 生まれて"初めて"食べた


・止まらぬ時間 問いの答え
  × 良い事"と"なのか悪い事なのか      
→ ○ 良い事なのか悪い事なのか

  × 確実"は"方法はそれしか見当たらない   
→ ○ 確実"な"方法はそれしか見当たらない

  × 実感が"沸かない・・・"         
→ ○ 実感が"湧かない……"

  × "確立"はもっと低くなる         
→ ○ "確率"はもっと低くなる

  △ 何の技術も"いらない"、何の知識も"要らない"。(どちらかに統一を)

  × "ただ唯一の"事なのだから
  ただ=唯または只なので重複表現です。「ただ一つの」「唯一つの」「唯一の」のどれか


修正時にお役立てください。

[282] 貴方は犬派?猫派?
ラスティ・ブランフォード - 2009年10月22日 (木) 01時54分


七海「七海はね。犬も猫もどっちも大好きだよ!」
狼輝「パパは犬派。お父さんもお婆ちゃんも犬好きだったから、遺伝なのかな?」
七海「わんこわんこ〜わんこキングダ〜ム♪ねっこねっこねっ〜こアイランド〜♪」
狼輝「はは、七海は本当に可愛いな。」



光「私はどちらかと言えば猫派ね。」
宇美「犬派。躾を聞かない猫は勘弁して欲しい。」
光「マルコキアスの事、やっぱり怒ってる?」
宇美「せめて鈴くらい付けてくれよ……」

[286] 孤独の中でも、夢見ていたい。
ラスティ・ブランフォード - 2011年08月13日 (土) 00時23分

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- 預言 -
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特に疲れたというわけでもない。ただの気分転換だ。
少しばかり空を見上げると、雲が風に流されていくのがハッキリ分かるほどに勢いよく動いていた。
形を変えることなく地平の向こうへと消えていく雲。
それをを眺めて見ようと、散歩の足を一旦止めて黒森神社の入り口にある鳥居に寄りかかっていた。

紅夜「……。」

視線を感じる。いや、それより先に背後に誰かがいる気配を感じた。
振り返ってみると、何時からいたのか音も立てずに2匹の犬が鳥居を挟んで反対側にいた。
いや、それだけではない。神社に続く道の方から随分と遅れて小さな子供が降りてきている。

七海「早すぎるよ〜」

息を切らせながら、じゃりじゃりと小石を踏む音を大きく立ててこちらへと走ってくる。
……ご主人の足音が聞こえないほど距離を突き放し、なおかつ気配を感じさせずにこの2匹の犬は背後を取った。
何かしらの訓練でも受けた事のある犬なのかと疑いたくなるような異常な駿足だ。
そんなことを思っている内に、神社の娘……七海がこちらにやって来た。

七海「こんにちは。」
紅夜「……こんにちは。」

七海「この間のメレンゲクッキー、美味しかったよ。」

丁寧なお辞儀と共に挨拶するあたり、よく躾けられている。
学園の評判でも、そういうところが可愛いと言われていたな。

紅夜「どういたしまして。」
七海「七海ね、この間のお礼がしたいんだ。」

そう言うと、満面の笑みが少しだけ真剣なものに変わる。

紅夜「お礼?」

七海「その前に、神託を伝えるね。」
紅夜「神託?」

普通の子供とは思えない言葉に、思わず目が丸くなる。

七海「あ、そんなに深い意味は無いからね。この間のお返しだから。」

そう言って、一旦深呼吸をする。

七海『半身を求めよ。汝は孤独にあらざるべきだ。世界を否定するな。汝が守るべき命(いのち)は儚く、脆い。汝の命(みこと)はすぐ傍にあるのだから。』
  「簡単に言うとと、恋人探せって意味だってお姉ちゃんが言ってた!」

紅夜「……。」

あいつ……、貢永が余計なこと吹き込んだな。

七海「はい、これあげる。パパにも手伝ってもらったけど、七海の作ったお守りだよ。」

そういってポケットの中から渡されたものは、金糸で「御守り」と縫ってある、見るからに立派そうな代物だった。
正直、どこを手伝ったのか?と言いたくなるほどに高級感があふれている。

七海「外側の装飾はパパのお手製なんだよ!すっごく手先が器用なんだ!中の御神体は七海の特製!御利益なくなるから開けちゃダメだからね!」

……外側の装飾は既製品なのだろうか。

七海「顔に出てるよ、お兄ちゃん。その御守りは、パパが布から切って袋にして文字を縫って、可能な限りの力を込めて作ってるんだからね!」

……なるほど、貢永から聞いてはいたが噂通りの親馬鹿だ。
娘にせがまれたからと、全力尽くして作っている図が目に浮かぶ。

七海「これでクッキーのお礼、渡せたよ!」
紅夜「ん、ありがとうございました。」

お礼を期待しているような目をしているような気もするが、
あいにくと今日はこれといってお菓子は持ってきていない。
おねだりを避けようと、丁寧に挨拶を返しておくことにした。

七海「じゃあね、紅夜おにいちゃん!また会おうね〜。」

そう言うと、早足で神社の方へ走っていく。
それを見送りながら、先ほどの言葉を反芻する。
『半身を求めよ。汝は孤独にあらざるべきだ。世界を否定するな。汝が守るべき命(いのち)は儚く、脆い。汝の命(みこと)はすぐ傍にあるのだから。』

……『神託』と言っていたが、あの子のペースにかき回されっぱなしで、何の為に言ったのか、
そもそもどこからその『神託』とやらを聞いたのか。
詳しい事は何も聞けなかった。

紅夜「……まあいい。」

深く気にする必要も無いだろう。
もし、気になるようだったら、もう一度会って聞けばいい。

再び空を見上げると、先ほど眺めていたはずの雲は、風に流されてもう影も形も無かった。

-- END or NEXT --------------------------

久しぶりの投稿。話が浮かんで、直ぐに投稿。
形にならないままの話もいくつかあった中、形になる程度にお話がすっと纏まったのは
未だに桜ノ宮の皆に愛着があるからだと思います。

[287] 無駄にイメージだけは広がっていく。
ラスティ・ブランフォード - 2011年10月19日 (水) 12時29分

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- 白羽の矢 -
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七海「光お姉ちゃん、これなあに?」
光「これ?これはね、弓矢だよ。」


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ヒューン カツン

「狼輝さん、一体どうしました?何でまた、弓の練習を。」
「……七海が、やってみたいと言い出してね。」

そう言いつつ、次の矢に手を伸ばす。
だが、疲れが出てきており、取ったばかりの矢を弓に番える前に落としてしまう。

「……流石にガタが来てるな。左手の感覚が無くなっている。」
「やり過ぎですよ。」
「まともに弓を取ったことなんて数えるほどしかない。が、あの子が教えて欲しい、と言うからには手本となるべきものを見せてやるべきだろう。」
「光さんに教えてもらえばいいじゃないですか。」
「彼女は今年で卒業する。七海は、まだ体が出来上がってないから、弓を持たせてやるには早すぎる。せめて、中学に上がってからだ。」
「それなら、弓道場に通わせれば良い訳で、お父さんが教えてあげる必要は……」
「……一応、この黒森神社も神道に分類される。歴史的に見ても矢とは切っても離せない事情はあるよ。」

弓矢は古くから武器の他、儀礼や呪術の道具としても用いられてきている。
寺や神社において縁起物として有名な破魔矢はその代表例だろう。
黒森神社は死の使いを束ねる神を祭っており、その気性は獣性が強いとされる。
そんな存在である為、荒ぶる神の例に漏れず白羽の矢を持って生贄を求めてきた歴史があり、それが朝廷軍に討伐された一因であった。

もちろん、今では完全に廃れた風習であり、生贄をさし出すようなことはもう無くなってはいるが、
それでも神器と言うべき弓矢は残されており、それを扱うだけの技量が神主に求められているのは確かだ。

「七海さんもあくまで、今やって見たいって言ってるだけなんですよね?だったら、子供用の玩具でもあげたらどうですか?」

「それもそうだね。」


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彫刻刀が、鉋(かんな)が鑢(やすり)が散乱している。
狼輝さんの片手を広げたほどにも満たない小さな弓が、わずか一日で出来上がっていた。
既に出来上がった弓に、簡易ながらも装飾を施していく。
その装飾は、一見蔓草(つるくさ)のようにも見えた。
だがそれは、薬品に漬け込まれ、しなやかにしなるように工夫した色つきの木の枝だ。

「つくづく器用でマメで親馬鹿な人ですね……」

娘が欲しがっていたとはいえ、ここまで丁寧でかつ手の込んだ物を自作してしまえる事には驚嘆するほか無い。
装飾が弓に収まるように、削り削られて形が整えられていく。
仕上げに、弓を引いても痛くないよう弦はゴムバンドを付ければ完成のようだ。

「よし、出来た。」

それは可愛らしいサイズの、可愛い弓だった。
……ちょっとだけ欲しいと思ってしまったくらいに。

「私は子供向けの玩具をあげたら?とは言いましたが、自作してまで弓をあげるなんて。」
「……一応、七海に神社の後を継いで欲しいからね。」

まっすぐ、視線を向けて見返してくる。
……これは。狼輝さんは、誤魔化そうとする時ほど目を逸らさないで逆に見つめてくる。

「自分でも、甘すぎるとか親馬鹿にもほどがあるとか自覚があるんですね。」
「建前は必要だと思うけどね?」
「別に良いんです。私には関係の無いことですから。」

親馬鹿なのは今更だと思う。

「君が欲しいと思うんだったら、何か作ってあげるよ?」

……私を物で釣るつもりなのでしょうか?

「結構です。」
「遠慮することは無いよ。家族なんだから。」

-- END or NEXT --------------------------

コツコツと。チョコチョコと。ひっそりと。
忘れません。



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