(73) 魂の恋人 |
投稿者:Tomoko
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「魂の恋人……か」 ジャンは、読みさしの本を膝の上に置いた。主人公が、燃えるような恋をする物語である。 「何読んでたんだ? ジャン」 サービスが訊く。 「ん。何でもない」 「さっき、なんか呟いていなかったか?」 「気のせいだよ」 「ふぅん」 それきり、サービスはどこかへ行ってしまった。休み時間である。 (俺の、魂の恋人は……) 誰だろうな、と、ジャンは考えた。 今までは、ライのことをずっと想っていた。今は―― (サービス……) ライにそっくりなサービスのことを、気にするようになっていた。 それは、単なる淡い恋心ではないのだろうか。 サービス。 彼はライにそっくりだ。でも、違う。別人だ。 だからと言って、ライに見かえるようなことはしない。それに、今はライよりもサービスが好きかもしれぬ。 (あいつを傷つける奴は、俺が許さない) そう思うまでになった。 たとえ、自分自身であったとしても――
自分の気持ちをはっきり自覚したのは、ビリーが現れてからだった。 ビリーが要注意人物だったから、サービスがビリーを好きになったのを危険視していたのかもしれないが――。 もし、ビリーがただの何の問題もない一生徒であっても、素直に祝福できただろうか。 できる、と初めのうちは思っていたが。 今はどうだかわからない。 気付いてはならないことに気付いてしまったのだから。 だが、彼が誰に恋をしようと、自分は身を引くしかあるまい。 自分は、サービスに恋をしてはいけない。青の一族に想いを寄せるのはタブーなのだから。赤の番人として。 そう思うと、胸が痛んだ。 ビリーには、サービスが魂の恋人である、と打ち明けた。 片思いでも構わない。 (俺は、ずっとサービスを想っていく) 気の遠くなるほど生きてきた男として。それは切ないことだったけれど。 サービスもいつかは死ぬ。 それまでは、一緒にいたい。 自分一人が持ち続ける恋心。長い長い時が、忘れさせてくれるかもしれない。 この辛さが、穏やかな思い出に変わることを望んでいる。 それまでは、胸の中で密かに想い続ける。 サービス。俺の――魂の恋人。 後書き ジャンが『マジック総帥の恋人』でビリーに言った、『魂の恋人』のことについてのフォローを書きました。
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2009年10月05日 (月) 10時15分 |
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