(77) 死んでもただでは起きん奴 |
投稿者:Tomoko
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「シンタローはん……」 アラシヤマがぽつりと呟いた。そして、取り乱し始めた。 「ああっ! わては、わてはあろうことかあんさんを置いてきてしまったどす! これでまたあんさんが亡くなったら死んでも悔やみきれまへん! あんさんが帰ってこなかったら、わてもすぐ後を追い――」 「待っちゃりぃ!」 コージが止めた。 「ったく、ぬしも大袈裟じゃの」 「シンちゃん、帰ってくるよねぇ」 グンマの声は明るい。 「んだ。アラシヤマ。縁起でもねぇこと言うんじゃねぇべ」 ミヤギも窘める。 「せやかてあんさんら、平気なんどすか?」 「アラシヤマ君――」 サービスが口を開いた。 アラシヤマはかちんと来た。『君』呼ばわりされたのが、気に入らなかったらしい。 アラシヤマはサービスに背を向けた。 「ガキ扱いせんといてや」 「誰もガキ扱いしていない。君の取り方がひねくれているだけだ」 「おおきに!」 アラシヤマはやけくそ気味の大声を出した。 ――相手がシンタロー以外だところっと変わるな。 呆れながらもサービスは話し始めた。 「私はジャンのことを心配はしていない」 アラシヤマはびっくりして振り向いた。 「え、でも……ジャンはんはサービス様の親友では……」 「親友だ。だからこそだ」 サービスは力強く言い放った。 「私にはあいつが負ける気がしない。あいつは……私に心配される程、ヤワな男じゃない。私はあいつを信じてる」 そう言って、サービスはアラシヤマに視線を移した。 「おまえはどうだ? シンタローは君の信頼に足る男じゃないのか?」 アラシヤマは項垂れた。それから、こくんと頷いた。 負けた。アラシヤマはそう思った。 ――やっぱりかないまへんなぁ。わては、自分が恥ずかしい。友達ってもんは、奥が深いんやなぁ。 「サービスといったな。いいこと言うじゃないか。おまえ」 彼らを先導してきた、六歳ぐらいの少年――パプワが言った。 「シンタローは転んでもタダで起き上るような奴じゃないぞ。たとえ、死んでもな」
後書き 高校時代に書いた小説の一部分です。 長さもまぁあるし(いつもよりは短いですけれども)、まとまっていたので、発表してみました。 ちなみに、原作にも似たようなシーンがありますが、私が元にしたのは、同人誌です。台詞とかシチュエーションははもちろん変えてあります(当たり前)。
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2010年11月17日 (水) 16時20分 |
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