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小説を完成させる自信の無い方、または小説を書く練習をしたい方、そしていつも作品が完成しない無責任なしんかー進化(笑)、等々気軽にこの板で小説をどうぞ!

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[89] 聖「むう、暑いな……」
埴輪 - 2008年07月23日 (水) 11時56分

聖「夏だから暑いのがむしろ当たり前なの、だ、が……」

聖「暑い……」

聖「……」

聖「そうだ」

聖「着物だから暑いんだ」

聖「こんな猛暑の時に着物なんぞを着ているから暑く感じるんだ。我ながらよくこの事実に気付いた」

聖「ということで浴衣に着替えるとするか」




聖「着替え完了だ」

聖「うむ、やはり夏は浴衣に限る。まず生地からして涼しげだし」

聖「それに、この金魚の柄がなかなか愛らしい。着るだけで『涼』を感じるぞ」

聖「……」

聖「私は今『涼』を感じているはずだ、いやむしろ『涼しい』と思い込んでいるはずだ」

聖「なのになんなんだ!この不愉快な暑さは!」

聖「大体なぜ私の家には『くーらー』がないのだ!みずきの家にはあるのに!聖タチバナにだってあるのに!」

聖「『くーらー』さえあれば万事解決するのに…」

ミーンミンミンミンミンミーン

聖「……」

ミーンミンミンミンミンミーン(×2)

聖「……」

ミーンミンミンミンミンミーン(×3)

聖「だーっ!蝉だ!蝉の鳴き声が私を不快にするっ!」

聖「何故この暑さの中、あんな大音量で鳴くんだ!そんなに人をイライラさせたいかっ!この餓鬼畜生め!」

聖「……」

聖「……私としたことが、落ち着け聖。相手はたかだか虫。しかも命幾数日しかもたない儚き運命の虫ではないか」

聖「あの鳴き声だって、残り短き命を精一杯生きている証だと思えば……」

ミーンミンミンミンミンミーン(×4)

聖「やはり思えん!私には思えんぞ!」

聖「ふぅ……」

聖「カッカしたら、余計に暑くなった」

聖「この暑さ、どうしたものだろうか……」

聖「……水羊羹でも食べて涼の求め方を考えるか」




聖「確か、お父さんが檀家回りの時に貰った水羊羹が、冷蔵庫に入れてあった気がするのだが……」

聖「どこに入れたかな……?」

聖「むむっ、それらしき包み紙の箱を発見。もしや……」

ガサガサゴソゴソ

聖「なんだ、随分前に貰ったあさりの時雨煮ではないか。しかも賞味期限が大分前に過ぎてる……」

聖「哀れな時雨煮だ、冷蔵庫奥深くに入れられ、日の目を見ぬまま賞味期限が過ぎ、今日たまたま私に発見されなかったらずっと冷蔵庫の中だったろうな」

聖「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」

聖「供養も済んだし、ゴミ箱に捨てておかねばな」

聖「さて、水羊羹水羊羹……」


(10分経過)


聖「冷蔵庫をくまなく探したが……」

聖「とうとう見つからなかった」

聖「うーむ、どこに入れたんだ……?」

聖「……もしかしたら、誰かが水羊羹をこっそり食べたのか?」

聖「お父さんは甘いものはあんまり食べないし、私も食べた覚えがない。あと誰が思いつく……」

聖「そうかわかったぞ!犯人はみずきだ!この前みずきが遊びに来たし、きっとその時こっそり食べたんだ!」

聖「みずきめ、許せぬ、ど許せぬぞ。罰として今度みずきにパワ堂のきんつばを奢ってもらうことにしよう」

聖「ふふ、みずき……。食べ物の恨みは末代まで続くぞ……」




たちむかうゆうきーもーちつづけーろーいっぽずーつーでもー♪

ピッ

みずき「はーい、もしもし〜?」

聖『私だ、聖だ』

みずき「あらー、聖じゃない!元気してる〜?」

聖『私は元気だ、それよりもみずき』

みずき「ん?な〜に?」

聖『お前、私の水羊羹を食べただろうっ!」』

みずき「……はぁ!?あんたなにいtt

聖『しらばっくれるな!いいか、調べはついてるんだ!白状するんだ!』

みずき「だーかーら、一体なんn

聖『お前が私の家に遊びに来たとき、お前は冷蔵庫から水羊羹を盗み、こっそり食べた。そうなんだろう!さっさと吐け、吐くんだ!』

みずき「……あんたねえ、確かに聖の家に遊びに行ったけど、その時はあんたと一緒にず〜っと実パワで遊んでたじゃない」

聖『!?』

みずき「ずっと一緒に遊んでたのに、どうやって隙を見つけてあんたの家の冷蔵庫から水羊羹を見つけて、こっそり食べれるのかしらねえ?」

聖『……そ、そうだったな……。確かあの時、終始ずっとみずきと2人で実パワで遊んでたな……』

みずき「そうよね〜……?わ・か・っ・た・か・し・ら?」

聖『わ、わかった……』

みずき「もう、なんであたしが有らぬ疑いをかけられなければいけないのかしら。罰として今度パワ堂のプリンを奢るのよ?」

聖『そ、そんな!待てみずき、ご慈悲を!』

みずき「き・ゃ・っ・か♡ じゃっあねぇ〜」

プツン、プーップーップーッ

聖「……」

聖「はぁ……」






聖父「ただいまー」

聖「おかえりなさい、お父さん」

聖父「今日はひどく暑かったなあ。お父さん檀家回りで汗が滝のように流れたよ」

聖「ご苦労様だ。ところで、その紙袋はなんだ?」

聖父「これか、これは聖にあげようと思ってな。パワ堂の水羊羹と金つばだ」

聖「それはありがたいが……、どんな風の吹き回しだ?」

聖父「はっはっ。此間もらった水羊羹を勝手に食べてしまったからな。それのお詫びだよ」

聖「……な、なんだって!?どういうことだお父さん!!」

聖父「あ、ああ。先日お父さんの友人が訪ねてきてね。丁度いいお茶菓子がなかったものだから、冷蔵庫の水羊羹を出したんだ」

聖「そ、そんな……。私はその友人とやらにあってはいないぞ!」

聖父「そりゃあそうだ、聖が出かけてる時に来たんだから」

聖「そう、だったの、か……。みずき、有らぬ疑いをかけてしまい本当に申し訳ない……」

聖父「?何があったかは知らんが、そろそろ夕飯にしないか?お父さんお腹がペコペコでね……」

聖「あ、あぁ。すぐ用意するからしばらく待っててくれ……」




聖「ふう、しかしまさかお父さんが水羊羹の犯人だったとはな」

聖「しかし、結局は水羊羹は元通りだし、それに金つばも手に入った」

聖「みずきがプリンがどーたらこーたら言ってたが……まあすぐ忘れるだろう」

聖「では、早速水羊羹を頂くとするか……」

パクリ

聖「……うむ、美味い。非常に美味い。あんの甘さといい、このつるりとしか食感といい、まさしく夏の和菓子の王だな」

聖「しかし、金つばには負けるがな」

聖「はっはっはー」

カナカナカナカナカナカナカナカナ――――――

聖「ヒグラシか……」

聖「昼間、あれだけ不快だった蝉の鳴き声も、ヒグラシだと情緒深く聞こえてくるな」

聖「カナカナという物悲しさが、夏の暑さを忘れさせてくれるな」

聖「とは言ったものの……」

聖「くーらーがほしいなあ」



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