[96] 題名が思いつかないから苦肉の策で無名 |
- ロキ - 2008年11月03日 (月) 15時19分
あたしは世界一不幸な少女。そう思わない?
何故って、こんなにも退屈な世界に生きているからよ。
どうせなら創作物のなかに生まれたかった。二次元の中で生きるキャラクターになりたかったわ。
それならいつだって“有り得ないこと”に遭遇できるから。
そうでしょう?
ビックバンを間近で見たくはない? 世界の終わりを自分で起こしてみたくは?
じゃあ……せめて人を殺してみたいと思ったことは?
……うそ、冗談よ。
そんなことできっこないもんね。
ねぇ。覚えてる?
自分が生まれてきたときのこと。
あたしは覚えてない。思い出したいな。
だってさ、……ねぇ、ちゃんと聞いてる? そう、ならいいけど。
だってね、そのときには何も知らないわけでしょ?
この世界がなんなのか、そして目の前にいる人間たちがどういった存在なのか、自分が人間だってことも、さ。
有り得ない世界に、知らない世界に生まれた衝撃っていうの? ……そういう興奮があると思うの。
あたしが小さかったときは何もかも新鮮だった。スイカが野菜だってことも、人を好きになるってことも、何もかも。
今ではどんな知識を得ても新鮮なんてことはないのよ。
悲しいな。平坦でつまらない。世界を揺るがすような真実が欲しいの。
みんな、こんな体験はないかな?
お前は、子供だ。って言われて、異常に反抗したくなったこと。
あたしはある。すごい悔しかった。あたしは大人なんだ、って高らかに叫んでやりたくなった。
客観的に自分を見つめなおしたとき、あたしは「あ、やっぱり大人じゃん」って確信した。
今まで生きてきた16年間があたしにとってとても重いものに感じれて、それが根拠になった。
でね、思うの。
他人を見たとき、その人が軽そうに見えたことってある?
もちろん体重とかそういうのじゃないよ。
その人の生きてきた重み、存在の影響力、そういったものを全て含めて、軽そうに見えたこと。
あたしはね。ほとんどの人がそう見えるの。
どうせくだらない人生しかおくってこなかったんだろう。あたしのような重苦しい大人な価値観を持った人生を送ってこなかったんだって。
でもねー。
違うんだよね。
あたしの人生も誰の人生も、比べようがないんだ。
それどころかあたしの自分は大人なんだっていうナルシストぶりを発揮しただけで、実際にはそんな大差ない下らない人生を送ってきたんだ。
つまらない世界。そして、自分自身への落胆。
あたしは流れに促されるように、病んでいた。
プロローグ 主人公の考えと苦悩
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