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- 夏目 はごろも - 2010年03月05日 (金) 16時16分
TJ稼働開始から1年と半年が経過したある日。
一人の男がTJを始めようとゲームセンターへ向かった。
「我慢して正解!やっとプレイ料金が下がったよ!」
圧倒的人気で一時は100人に1人はプレイしているとまでいわれていたTRUE JUSTICE。通称TJ。
現実世界では味わうことのできない感覚、刺激が体験できるゲーム性が売りに売れた結果だ。
だがそのTJにも衰退期が訪れていた。
稼働から1年したころ。プレイヤー離れが始まったのだ。
原因と思われるのはなによりプレイ料金の高さ。
1000円という金はライトなゲーマーには高すぎたのだ。
ライトなゲーマーがどんどん離れていき残されたのはレベルの高い上級ゲーマー。
一時のにぎわいは消え失せゲームの中の世界もどこか暗くよどんでいた。
そこでメーカーは電力消費をギリギリまで抑えるなど改良を加えた新しい匡体を発売。
内容は新要素を携えプレイ料金も半額の500円という衝撃的であった。
この新匡体により人気が爆破。離れていったユーザーを取り戻し、さらに新規のユーザーも爆発的に増えていった。
これによりTJの世界がさらに混沌としたものとなってしまうのだが。
先ほどの男がゲームセンターの中から出てくる。
プレイしたわけではない。プレイできなかった。
あまりの人気に順番待ちの長蛇の列ができていたのだ。
流石に順番待ちしていると日が暮れてしまう。そう考え、男は別の店へと向かった。
そして4軒目。ここも空いてなかったら諦めようと決めて店内に入ると丁度一台だけ空いているではないか。
よほど運がよかったか神様がほほ笑んだか。誰にともなく男は感謝し匡体に座る。
『Please equip with a helmet. 』 男はヘルメットを被った。
『ようこそ,TRUE JUSTICEへ。 本ゲームにご参加いただき、まことに有難う御座います。 まずは、私からこのゲームについてご説明させていただきます。』
男は説明に聞き入る。
そして基本的な設定を埋めていった。
名前欄には「夏目」。
そして職業には何週間も考えて考えて決定した「武器商人」と。
この職業は夏目本人にすればかなりのひらめき。
ゲームの中で戦えると評判のゲームであえて商人というジャンルを選び、他人との違いを出したかったのが一つ。
そしてゲームの中の金は現金へ換金可能であるので、ゲームの中でお金を稼ぎ高いプレイ料金をそこからねん出しようという考えであった。
他にも郷土料理などわけのわからないものも考えたがしっくりこないので武器商人に決定したのだ。
夏目が職業を入力し終えた瞬間画面が暗くなった。
『本日はありがとうございました。紙に書いてある住所へお越し願います。』
プツーン
機械が変な音をたて画面が消える。
ジジジ…ジジジジ…
画面の下の換金した紙幣が出る口からレシートのような紙切れ。
夏目は何事か分からずただ茫然とした。
そして混乱の中で思った。
「…なけなしの500円が紙切れに…」
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