[10548]ヴァンパイア - 投稿者:繰る名
いつも此処から祈っている、と。
絡めた指に舌を這わせて。
自嘲気味に笑ってみせた横顔。
祭壇に滴る赤に、目を伏せて。
現実を見ない罪を重ねる。
神の愛など所詮、まやかしに過ぎないというのに。
夕闇の暗さから逸らした視線の矛先は光。
独りの冷たさに耐えられたなら、求めることを止められただろうか。
苦しさも哀しみも全ては神が与えたものならば、神に祈ることの何が救いか。
脳裏を過ぎる讃美歌を口ずさんでは、醜い感情だと諭され続ける日々。
愛されたいと思うことの必要性を失くした自分の傲慢さに自重すべきか。
苦悩の決断を遠ざけては、今を楽しむこともできない。
貴方は来ないと告げるロザリオを握りしめて。
否定した愚かさにいつかの自分を重ねた。
また純潔なる雪が降る日がいずれ。
自分の首を自分で絞めたあの日々もいずれ。
伏せたままに目隠しをする弱さの嵐。
荒れた唇に指先を当ててなぞっては。
潤いの罪の水が欲しいと、願うことも許されず。
手首に巻いた鎖の戒めに頼っては、衝動を抑える。
こんな日々に終焉は来ないと、神父は語るだろうか。
それでもいい、など思うのは愚かだろうか。
捧げられた薔薇の命が削られていくことにしか日々の実感が湧かないこと。
目を開けて光を見て絶望することも良い。
…十字架をどうか、この果てなき身体に突いて貫いておくれ。
(
2009年10月17日 (土) 23時18分 )
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