[10556]国という『場所』について - 投稿者:繰る名
終わりを告げる鐘が啼く。
歓喜の声が響いたあの日々は何処に往ったのだろう、と。
過去の栄光を知る者は嘆き。
知らぬ者は、当然として受け入れる。
乱世はいずれの国に於いても訪れるものだ。
乗り越えられぬ『場所』は必要とされない。
崩れた城、果てた戦旗、民の追悼歌。
それだけが残される『場所』には、禍々しい念が漂い、更なる災いをもたらす。
そんな『場所』には居られない、と民はやがて消える。
美しい音たちが流れていた城下には、廃城に取り残された皇子の罵倒が木霊する。
囚われの姫は、次の悲劇を演じるために、再び舞台に降り立つ。
永遠を誓った人でさえも、忘却の彼方に沈んだ。
それでも、刻は過ぎ行くもので。
赤の滴りし剣を翳す戦士が一人、二人…。
人が争いを起こすのではなく、争いが人を興すのだと。
過ちは幾重にも重なり、深淵現る。
狂気の皇子が何を云う。
鎖の姫が何を思う。
風と共に去っていく民は何を願う。
―その、『場所』に。
(
2009年10月23日 (金) 21時27分 )
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