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タイトル:全能神2.5 オリキャラ(自分を含む)によるオリジナルワールド

全能神の短編集の続編です。
よければご覧ください。

カイ 2011年07月03日 (日) 23時23分(1228)
 
タイトル:龍の怒り

あの方を失ってから・・全てが終わった・・

あの方を失ってから・・私の『世界』は・・終わった・・

後に残ったのは・・『憎悪』と『憎しみ』だけだった・・


『ベジータを憎まないでくれ・・』
そう言った貴方。

『ありがとう、神龍。』
それが貴方の最後の笑顔。

『オラは、今度は一人の神としてじゃなく、一人の人間として皆を守りたい。だからおめえは、いつか全てが終わる日までオラを見守っていてくれ。』
それが貴方の最後の言葉。
それが貴方の最後の願い。


『ベジータを憎まないでくれ・・』
どうして・・・

『ごめんな・・』
どうして・・・

「うわああああああああああーーーー!!!!!」
馬鹿みたく私は白い衣を握り締めながら泣き叫んでいた。
後に残ったのは、白い衣とドラゴンボール。


許せなかった・・全てが。
その日から私は・・・全てを憎んだ・・

カイ 2011年07月09日 (土) 23時18分(1229)
タイトル:あの人の面影

今回は本編で載せようか迷っているドラゴンボールAFのザイコーの話です。
別に著作権の侵害ならやめます。
最初に謝っておきます。ごめんなさい!!


俺は父上の顔を見たことがなかった・・・
初めて父上の顔を見たのは、モニター越しに見ただけだった・・・

『あれが見えるな、ザイコー。』
モニターで見る父上の顔。

『あれがお前の父、孫悟空だ・・・。』
父の顔は・・自分が想像していたのと違う。これが父なのかと疑った。なぜなら父の顔は、
最強と疑うくらい穏やかだったからだ。こんなのが自分の父なのか?

だが・・・

戦闘になると父は変わった。いきなり姿が変わり、金色の戦士になったり、赤色の戦士になったりした。その姿は、まるで自分と同じ。

『お前は最強の戦士の血を受け継ぎ、父上の後任になるのだ!父上の血を、最強の戦士の血を絶やさせてはならぬ!!』

自分が何のために生まれたのかわからない。
でも、理由がわかった。
俺は父上の後任のために生まれた存在。
この体から流れる血は、父上から受け継いだ血。

『お前の父、孫悟空は、全能神でもある。お前はいずれその全能神の後任にもなるのだ。お前にこそ、それが相応しい!!よいな、ザイコー!!』

全能神である父、最強の戦士である父。
俺はその血を受け継いだ。

父上、俺は・・

俺はいつかあんたが認められるくらい存在になり、強くなる!!

俺はあの日から父上の面影を知ったあの日から、そう決意した。

カイ 2011年10月23日 (日) 18時56分(1318)
タイトル:繋がっている歌

世界は繋がっている・・・

時代も繋がっている・・・

人も繋がっている・・

どこかで繋がっているのだ・・・


惑星ベジータのある家で一人の女性が歌を歌っていた。彼女が微笑みながら歌を聞かせているのは、一人の赤ん坊だった。
「お前、好きだよな?その歌。ずっとカカロットに聞かせてんのか?」
女性の後ろで女性の歌をずっと聴いていた男性が聞くと、女性は微笑みながらカカロットと呼んだ赤ん坊の頬を突いた。カカロットは頬を突かれると歌をやめた時に愚図っていた顔を歪めてまた笑い出した。
「だってカカロットたら。この歌が好きみたいなんだもの。一回歌ったら気に入っちゃったみたいでね。」
ふふと女性は笑うと、カカロットをあやすように頬をまた突いた。
「子守唄代わりで歌っただけなのに、寝るどころかずっと逆に起きてるなんてな。生意気なガキだぜ。おまけにその歌を歌わないと泣き止まねえなんて・・」
「あらいいじゃない、バーダック。カカロットは貴方に似てるけど、好きな所とかは私に似てるみたいだから。」
ねー?と同意を求めるように女性はカカロットを優しくなでている。
「ターナ。」
それを言うなよとバーダックは心の中で突っ込んだ。





全能神界で歌声が聞こえた。
優しい歌声が。
悟空が珍しく歌を歌っていた。悟空を探していた神龍が近づいて呼ぶと、悟空は歌をやめて振り向いた。
「何を歌っていたんですか?」
「あー、わかんねえ。曲名知らねえし。」
「珍しいですね。主様が歌を歌うなんて・・・」
「槍でも降ると思ったか?」
「私はチチ殿ではありませんよ。ただ、優しい歌だなと思って。」
「昔、母ちゃんが歌ってた歌なんだ。」
「ターナ様が?」
「サイヤ人に転生する前や後でも歌ってたみたいなんだ。だから耳に残っちまって。」
「転生しても繋がっているんですね。」
神龍はそう言うと先ほど悟空が歌っていたのを思い出していた。


「もう一度聴いてもいいですか?」
「いいけど、笑うなよ。」
「笑ったらお詫びに私も歌いますから。」
ふーんそうかと悟空はにやりと笑うと、また歌い始めた。




「ターナ様。その歌は?」
「昔、悟空に歌っていた歌よ。」
同じ頃ターナも歌っていた。違う場所で。


全能神界と、女神界で・・・


悟空とターナの歌声が・・・


重なるように響いていた・・・


まるで・・・繋がる世界のように・・・


カイ 2011年11月24日 (木) 23時31分(1376)
タイトル:美しき絶望

今回は、ドラビルです。

ああ、美しい・・・
なんて、あの方達が与える絶望は・・・美しいのだろう・・・


暗闇でモニターに映る映像を見ながら、ドラビルはくっくっ、と上機嫌に喉を鳴らし笑っていた。それだけでも見た者の恐怖を煽る姿だというのに、ドラビルの真紅の瞳は残酷な光を灯していた。
「ああ、美しい・・なんということだ・・とても強く、綺麗に澄んだ気と魂。そしてそれを持ちながらも絶望を与える姿。何と美しい・・・」
その光を堪えたままドラビルは映像を食い入るように見ていた。
それは遥か昔の記憶。決して語られることのない、記憶。
遥か昔、悟空が全能神の時に犯した罪と言う記憶。そしてベジータも。
全能神と破壊神だった頃の彼らが、転生するきっかけとなった記憶。
「ドラビル様、ここにいらっしゃったのですか?」
「シャドランか。どうした?」
「もうすぐ目的地に着きます故、ご報告に上がった際にございます。」
「そうか。わかった、下がれ。」
ドラビルがそう言うとシャドランと呼ばれた黒ずくめは返事をした後、闇の中に消えて行った。ドラビルは笑みを深くすると漆黒の髪を隠すようにマントを羽織る。
「闇に生きるしかなかった我々が、闇に堕とされた我々が、唯一惹かれた光と絶望。」
『おめえ、名前は?』
『私は・・・  』
記憶の中に残る悟空とベジータの顔。

「あの方達は・・あのようなまがい物の世界にいてはならない・・・」
ドラビルはそう呟くと、真紅の瞳を紫に変えた。


「よいか!!我々はこれから全てを壊すために、全てを取り戻すために向かうのだ!!我々を救ってくれたあの方達を取り戻すために!!」
多くの黒ずくめ達を見下ろす場所でドラビルは声を上げた。
「この世界にまがい物の存在しかない神達はいらない!!神はあの方達だけだ!!」
ドラビルがそう言うと腕を高く上げた。すると黒ずくめ達も高く腕を上げる。


「ドラビル様。これから全能神界に向かいますが、誰を行かせましょうか?」
「私自らまずあの方に会わねばならない。」
「かしこまりました。では、こちらはドラビル様と悟空様の準備をしておきます。」
頼むぞとドラビルは言うと、剣で空間に切れ目を開けた。

もうすぐだ。
もうすぐ、あの方に会える・・・

小龍、いや神龍。
君に味合わせてあげるよ、あの方達の、美しい絶望をね・・


これは絶望が幕を開ける少し前の話。

カイ 2011年12月04日 (日) 19時44分(1407)
タイトル:語らぬ言葉・・・

悟飯が嘘つきだと思ったのは、私の本心だった・・
それは彼が、父親である彼を理解していないからだ・・・
私は知っている・・・

彼が何故、あの時、セルゲームで悟飯に託したのか・・・
おそらく彼の息子は知らないだろう・・・

彼が私だけに言ったあの言葉を・・・
そして私だけが知っている。
彼の父親としての愛情と信じている心を・・・


『なあ、神龍。本当はオラ、未来のトランクスの話を聞いた時、オラのせいで人造人間が生まれたのならオラの手で人造人間を倒した方がいいと思ったんだけど、悟飯の話を聞いた時に変えたんだ。』
『何故ですか?』
『悟飯は何故トランクスを気絶させてまで、人造人間に一人で闘ったと思う?』
『それは・・・託したかった・・から・・?』
『そう。悟飯は気づいてたんだよ。自分が人造人間に勝てないことが・・・それでも最後の希望をトランクスに託したかったんだ。オラの時だって、自分がベジータに勝てないことがわかってたのに、わざわざ戻ってきた。それは自分の大切なものが、目の前で失うことが怖かったから。だからあの時、せめて自分の大切なものを、残されたものを、託したかったんだ。そして悔しかったんじゃないかと思ったんだ。』
『悔しかった・・?』
『自分が死んだ時、自分が未来を守れなかったこと・・・そしてそれをトランクスに背負わせてしまったこと・・もう未来の世界で、ドラゴンボールが存在しない世界で悟飯や他の者を生き返させることはできない・・・その時思った。オラができることは未来で悟飯が守れなかったのなら、今悟飯が生きている世界で悟飯がこの世界を守ること。そしてそれを信じること、そして鍛えることだと。』
『結局、オラも悟飯に背負わせて、あの子を苦しめているだけだったのかもしれないけどな・・』
『主様・・』
『でも、オラは信じてた。子供の力を信じるのが親だろう?信じてたんだ。そしてオラはどっかで思ってた。いつか誰かに託すときが来るんだと。悟飯はいつか自分の弱さを知って、強くなりたいって心の底で思うときが来る。そしてそれが悟飯が本当の力を出すってわかってた。』
『だから・・・でも、主様はどうしてそれを話さなかったんですか?少しでも話していればあなたが憎まれることもなかったのに!!』
『言ったら、悟飯は弱くなるだけだと思った。強くなるために、自分に自信を持たせるためには、言わない方がいいと思ったんだ。それに・・・オラは駄目な父親だからな。』
『え?』
『最初からオラは駄目な父親だった・・家庭のことも考えてなかった駄目な父親だった・・それを誰も教えてくれなかった・・・だったら、駄目な父親のままで終わればいいと思ったんだ。』
『主様・・』
『本当はさ、ベビーに洗脳された悟飯達に刃を向けられた時、心のどこかでこうなる日が来るって思ってた。オラはどうやら、ずっと罪を背負って戦わなければならないらしいから・・』
『そんな・・・そんな残酷な・・』
『転生する時もオラは過去の罪と、神であった時の罪を背負い、償うために戦うと思う。ベジータは、絶対に負けないために戦うと思ってるけど。』
『主様・・・何であなたが転生してまで罪を背負わなければならないのですか?!!』
『オラのせいだからだよ。オラがこの世界に災いしか与えられない・・あの子達に・・何も与えてあげることもできない・・オラには・・罪を背負い、償わなければ・・ならない・』
そう言って、あなたは泣いていた・・・
私には・・わかっていた・・あなたが転生したのは、己が犯した罪を背負い、償うために、転生したのだと。
わかっていたのに・・

『なあ、神龍。』
『はい。』
『こんなオラでも、お前は付いてきてくれるか?何も与えることもできない、オラに・・』
そう言ってあなたは寂しそうな顔をしていると私の目には映った。
あなたはいつも、そう言って私を突き放そうとする・・それは、私のことを思ってのことらしいが・・
でも、私は・・・

『どこまでも付いて行きます。そんなあなただからこそ・・』
ついていくと決めた・・・


私はこの出来事を決して語らない・・・
悟飯が気づくまで・・永遠に語らない・・・

主様は信じていた・・・主様は悟飯の力を、心を知っていた・・・

それを気づかないあいつは・・自分に嘘をついている嘘つきだと思った・・・


キィン!!
「うわ!!」
悟飯の攻撃を弾き飛ばした神龍は、悟飯に刃を向けながら悟飯を見ていた。今はちなみに修行中である。
「弱いな・・・」
「わかってますよ。だから強くなるために、殺す覚悟できてください!!」
そうお前はあの時も主様にそう言ったはず・・でも、ならば・・どうして・・
「ならばどうして・・セルゲームの時に、戦いたくないと言った?」
「え?何でそれを・・?」
「強くなりたいと貴様は言った。そして殺される覚悟もあったはず・・でも、貴様はセルゲームの時に戦いたくないと言った。ならば貴様はあの時嘘をついたことになる・・主様にもそして・・自分にも・・」
「それは・・」
「だから・・貴様は・・嘘つきだと言っているんだ!!!」
神龍は刀を振り上げ刀に気を溜めた後、一気に刀を振り下ろした。
ドゴーーーン!!
神龍の攻撃は地面に大きな切れ目を作り、煙を上げていた。悟飯はとっさにかわしたようだが、神龍を見失っていた。神龍が煙の中から現れると悟飯は反射的に気で溜めた腕でガードする。
「貴様は嘘つきだ!!主様の心も知らず、自分に嘘をつく嘘つきだ!!そんな貴様が、主様の息子を名乗るな!!見苦しい!!」
神龍はまるで訴えるように何度も刃を悟飯に向け続ける。悟飯は神龍の攻撃を受けるのが精一杯で反撃できなかった・・そして・・・

「終わりだ・・」
「え?」
神龍の声が間近で聞こえた瞬間、神龍の刀が自分の腹に迫っていた・・・そして刀から気が溢れ・・・辺りが光に包まれた・・・



「貴様は殺す覚悟で来いと言ったが、生憎貴様の言うことを聞くつもりはない・・」
神龍はボロボロで倒れている悟飯を見ながら刀を軽く振って鞘に戻した。
『神龍・・・』
「主様は・・貴様を信じていた・・信じていたからこそ、貴様に託した。なぜそれを理解しようとしない?なぜ・・そして自分に嘘をつく?」
神龍はそう言うと倒れて気絶している悟飯に背を向けた。
「嘘つきな貴様には、これ以上語る必要は無いな・・主様の心も理解できん貴様にはな。」
そして神龍は歩き出した・・緑色の衣を脱ぎ捨てさっきと違う服装になって・・脱ぎ捨てた衣は倒れている悟飯にゆっくりと被さった・・・

これはその後ドラビルの元へ向かう神龍の少し前の話。

カイ 2011年12月25日 (日) 00時11分(1499)
タイトル:無くした笑顔はもういらない

今回はこういうのを書いてみました。


「全く神龍ったら、人遣い荒すぎよ。」
「何か言いましたか?暇だから何か手伝いたいって言っていたのはそちらでしょう?」
神龍がパンに向かってそう言うとパンはわかったわよ!と言いブツブツ文句を言いながら神龍に渡されたバケツとモップを持って部屋を出た。神龍は溜息を吐くと、掃除に再び取り掛かる。
「我侭と意地っ張りな所さえ直せば、いい子なのに・・」


「もう、ああ言えばこう言うんだから・・」
プリプリ怒りながらパンが力だけではなく、口でも勝てない神龍に文句を言っていると、目的地に着いてドアノブに手をかけた。
「広ーーーい!!図書館よりも広そう!!」
神龍に頼まれた掃除場所は、長いこと使ってなかった本の保管庫であった。保管庫らしく、たくさんの本棚に詰まれた本と図書館よりも広そうな部屋を見て、パンは驚きに目を丸くした。パンが本棚に詰まれた本の一冊を手にとって開いてみるが、英語なのか地球語なのかわからない文字を見て首をかしげるばかりだった。
「全然わかんないや。ナメック語でもないみたいだし・・他の惑星の文字かな・・?」
パンは掃除することも忘れて、次々と本を開いてみるがわからない文字だらけだった・・するとある本が地球語で書いてあるものを見つけ、開いてみるとやっぱり地球語だった。
「これ地球語で書いてある・・・龍は神聖なる生き物であるか・・後で貸してもらおう。」
パンはそう言うと本を棚において掃除しようとした時、パンのちょうど近くに置いてあった本が本棚から落ちた。
「何かな?・・・あ!これ、アルバムだ。」
開いてみるとそれはアルバムだった。ほこりをかぶっていたが、綺麗なままだった。昔のものだと思うが、まるで最近撮られた様な写真がいくつもある。
「こんなのあるんだ・・全能神だった頃のお祖父ちゃんと神龍の写真ばっかり・・ん?」
めくりながらいくつも眺めていると、パンはある写真に目が止まった。それは・・・
「これ・・・もしかして・・神龍?」
パンはその写真を見て思わずアルバムからはがしてまじまじと見た。

「神龍も・・こんな顔するんだ・・」
それはいくつも神龍を見ていたが、いつも真面目な顔か堅物そうな顔しかしない神龍の初めて見る神龍の顔だった。
「もしかして・・これが素顔なのかな?・・こんな風に笑った神龍始めて見る・・」
写真に映っている神龍は明らかにパンや他の皆が見たことが無いように優しく笑っていた。まるで今までの顔が嘘のように・・
「そういえば神龍が笑った顔一度しか見てないけど、あれもしかして造り笑顔だったのかな?こんな風に優しく笑っているなら、私達にも見せて欲しいな・・・」
「何を見せて欲しいんですか?」
背後から聞こえた声に思わず悲鳴を上げてしまいそうになり、パンが肩越しに振り返ると、そこには腕組みをした神龍が立っていた。
「し・・神龍。いつからそこに?!」
「見せて欲しいな。から・・あまりにも遅いから様子を見に来たんですが、掃除もせずに何をしてるんですか?余計に散らかってますよ。」
神龍が床に散らばった本を数個指差すと、パンは慌てて自分が散らかした本をもって本棚に詰める。
「ここはいいですから、階段掃除して来てください。これじゃあ、日が暮れます。」
神龍がパンが適当に入れた本を見て溜息を吐きながら、パンに言うとパンが持っているアルバムに目が止まった。
「これ・・見たんですか?」
「え?ええと・・その・・」
見たんですか?と神龍が詰め寄ると、パンは慌ててはがしてしまった写真を後ろに隠して頷いた。神龍はすばやくアルバムをパンから取り返すと、アルバムをめくって異常がないか確かめる。そして一枚写真がないことに気づくと、逃げ出そうとしたパンからすばやく写真を取り返した。
「ちょっと返してよ!!」
「返すも何も、取ったのはあなたでしょう?勝手に見て、勝手に取るなんて泥棒ですよ。」
「だって、あんな所にあるなんて思わなかったし。それに・・」
「あそこに置いたのは私の間違いでしたね。でも、今度からやめてくださいね。」
そう言うと神龍はパンに階段掃除を頼み、パンを保管庫から追い出した。パンはちょっと!!と言うが、神龍は無視した。しかしパンはあきらめずに、神龍に言った。
「何で隠そうとするのよ!!?そんな顔私達には見せなかったじゃない!?」
「あなたには関係ないことです。」
「何でよ?!」
パンが神龍のに向かって言うが、神龍は背を向けたままだった。


「いらないんですよ・・」
「え?」
「もう・・無くしたんです。なくした笑顔は・・・もういらないんです・・」
神龍はそう言うとパンに背を向けたまま、ドアを閉めた。ドアを閉めた瞬間、パンには神龍の背中が少し悲しそうに見えた。

「どうして・・・?」



神龍はドアに背中を預けたまま、パンから取り返した写真を見た。
「まだ・・あったのか。・・この写真・・」
本当は捨てたかった写真。でも、結局捨てられなかった写真。
「無くした笑顔は・・・もう・・いらない・・」
神龍は誰かに呟くように呟いていた・・・

カイ 2011年12月29日 (木) 21時16分(1540)
タイトル:本当の笑顔

本当の笑顔というものが、心の底で思えばできると言ったのは、あなただった。
いつもあなたは笑っていた。
今思えば、私は太陽のようなあなたに、太陽に照らされてようやくひらいた、小さな花だったのかもしれない・・・
それがすぐに枯れてしまう、花だったとしても。


神龍は保管庫の掃除を終えた後、保管庫に特殊な結界を張り、アルバムを見つからない部屋に隠すことにした。部屋にも特殊な結界を張った後、パンがはがした写真を神龍はしばらく眺めていた。眺めていると、自分が始めてした笑顔はこんなものだったのかと思った。
そして神龍は写真に写された自分の顔を見ながら、遠い過去を思い出していた・・



「主様、いつまでやってるんですか?」
神龍は何度目になるかの溜息を吐きながら、自分の目の前にいる人物に目線を向ける。
「んー?はにほ(何を)?」
「ですから、さっきから私の目の前で変な顔をいつまでやってるんですか?」
神龍の目の前にいる人物ー悟空が両頬にひっぱっていた手を止める様子も無く、その状態のまま変な顔を続けるので、神龍は頭を抱える。
一通りのいつもの仕事を終えた後、休憩と休んでいた時にいきなり悟空が現れて急におかしな行動を彼是一時間以上付き合わされては、さすがの神龍も頭を抱えるのは言うまでも無い。
「駄目か・・・」
悟空は神龍の問いには答えず、よし!こうなりゃ奥の手だ!!と意味不明なことを言いながら神龍に目を閉じてと言った。よくわからないがとりあえず目を瞑った神龍は何がしたいのか不思議がっていると悟空がいいぞと言うので目を開けた。すると、目を開けた瞬間悟空が両手をパチンと鳴らした。すると悟空の手から数多くの赤い花が現れ、神龍の周りに金色の鳥が舞い降りた。
「え?」
「どうだ?びっくりしたか?」
悟空が赤い花を神龍に渡すと神龍は何か何だかわからずきょとんとしていた。
「主様、これは?」
「これは赤い花は神龍の瞳の色。そして金色の鳥は神龍の髪の色だ。」
きれいだろう?と悟空が言うと神龍は金色と赤色を見ながら微笑んだ。
「ありがとうございます、主様。」
「やっと笑った。」
「え?」
悟空の言葉に神龍はきょとんとしていると、悟空は微笑みながら口を開いた。
「だって神龍ってさ、オラと会う時からずっと笑ってねえじゃん。だからどうすれば笑うか試してたんだよ。」
悟空がさっきまでしていた変な行動はそのためかと神龍はすぐにわかり、また思わず笑ってしまった。するとカシャとシャッター音が聞こえた。見ると悟空が悪戯っぽい顔をしながらカメラを持っていた。
「主様!?」
「へへーーん!!神龍の笑顔ばっちり撮ったぞ!!」
「主様!?」
「神龍、もっと笑えよ!!笑えば幸せが来るぞ!!」
そう言うと悟空は走り出した。神龍は主様と言いながら追いかける。


「なあ、神龍。オラさ、お前の髪と瞳の色を見た時、太陽を持っているみたいだと思ったんだ?」
「太陽?」
「だってどんな暗闇でも光り輝いているみたいだから。色にはさ、その人の心が表れるとか、その人の魂が現れているんだって。紫色とかも、欲求不満とか言うけど高貴な心を持っているらしいんだって。」
「高貴な心?」
「自分は赤と青に混ざっても、真っ直ぐな心を持っていますって意味だって。」
「そうですか・・・」


「なあ、神龍。お前もその笑顔を忘れずに、輝いていけよ。」
そう、笑顔がどうなのかわからなかった私にあなたが始めて教えてくれた笑顔。
太陽だとあなたは言ったが、本当の太陽はあなただった。
私は咲くのを忘れた、枯れた花。そう思った。昔から命を狙われることも多く、安堵という言葉どころか、幸せなどいう言葉すらなかった頃を過ごしていた私に、いろんなものをくれたのはあなただった。
幸せや安堵というのを教えてくれたあなた。
そう、幸せだったんだ・・・

あの日までは。

「ごめんな、神龍。幸せになってくれよ・・・」
流れる血は、あなたがくれた赤い花と同じように赤かった・・
白い衣が赤色に染まっていき、それと同時に冷たくなっていく体。どんなに抱きしめられている体を握り締めても、体温が戻ることは無かった。

太陽は、あの日に、私の前から・・・消えたのだ・・・

残ったのは血に塗れた白い衣。
あの日、太陽と同じように、私は・・・笑顔をなくした。


「だから心に決めた。もう、なくしたのならいらない。幸せなどいらない。少しでも幸せに浸ってしまったから・・別れがきた。」
だから笑顔はこの写真と共に封印しよう。
神龍はそう決心すると写真をアルバムに戻し、アルバムにも特殊な結界を張り本棚に戻した。そして神龍は部屋を出た。


「お前はどう思う?栄華・・・」

カイ 2012年01月15日 (日) 00時49分(1614)
タイトル:人という獣・・

昔誰かが言った・・・

人は獣だと・・

獣は人だと・・・

そして神は人の心によって生まれた存在だと・・

地獄は人の心が憎しみや憎悪の塊で生まれた存在だと・・・

天国は極楽に行きたいと願うために生まれた存在だと・・

それが事実かは・・・私にはわからない・・・

そして神も人も・・・同じ獣なのだと・・

そう、形あるものは・・全て獣である・・


「なあ、神龍。誰かしも、皆闘神を、いやサイヤ人を猿だと口にするよな?」
「まあ、確かにそうですね。」
「でもさ、オラには別の意味にも聞こえるんだよな・・」
「別の意味?」
「昔、じいちゃんが言ってた。神も人も獣だったって・・・猿も獣だと。サイヤ人達は確かに猿だ。だがそれ以前に猿は獣でもある。そういう風にオラは聞こえるんだよ。」
「猿も獣・・・私達、龍神族もですか?」
「さあな。だけど、獣は見えない所にいるんだよ。」
「見えない所?」
そう。と悟空は言うと、自分の胸を指差す。

「獣は・・心の中にいる・・気づかないのは眠っているからだ。獣は己の剣でもあり、武器でもある・・そしてそれは支配されてはならない・・神龍。お前は食われるなよ。そしていつ如何なる時でも獣を解放できるようになれ。己の大切なものが・・奪われる前に・・獣はそのためにある・・そして刃を持てるようにしろ。」
「わかりました。」


それがあなたが教えてくれたもの。
心の中にある・・・獣を教えてくれた・・
だから・・・私はいつでも・・獣と刃を持っている・・

カイ 2012年02月05日 (日) 23時31分(1729)
タイトル:悪夢

『ごめんな、神龍・・ありがとな。』
ぼやけた空間の中、悟空が笑っていた・・・

『これでようやく・・・』
微笑んだ後、目から涙が溢れ、頬を伝う・・

『あいつらを許すことができる・・・』
そう言って彼は・・・

『幸せになってくれよ・・・』
白い刃で・・


『バイバイ・・』
胸を貫いた・・・

目の前が真っ赤に染まった・・・

「!」
はっと目を覚まし、先程のことが夢だとわかった。
「何百年ぶりだ・・?あんな夢・・」
口ではそう言っていたが、体中汗びっしょりでうなされて震えていたのがわかった。
くそ・・眠れん・・
悪夢を見てすっかり眠気が覚めてしまった神龍は顔を洗いに洗面所へ向かった。
冷たい水で顔を洗い、汗を流すと鏡を見た。
「ひどい顔だ。これじゃあ側近が笑える・・」
鏡を見ながら呟くと神龍はアルコールの弱い酒で喉を潤した後、水と薬を続けて飲んだ。

「結局、これに頼るしかないのか・・悪夢を見るといつもこうだ。」
神龍は嫌気がさすような顔で外を見た・・

カイ 2012年02月07日 (火) 23時44分(1737)
タイトル:記憶に無い記憶

人には記憶に無い記憶がある・・・

それが思い出したくない記憶なのか、または忘れてしまった記憶なのかわからない・・

しかし、語られぬことのない記憶もあるのだ・・


動物達が賑わう自然の中で、一人の男が動物達に餌をあげていた。動物達はまるで男に懐いているように餌を食べている。男の顔もそれを見て微笑んでいた。
すると・・
「ずいぶんここの生活に馴染んでいるようだな。」
白い衣を羽織った一人の神が現れ、餌をあげている男に話しかけると男は振り向いてじっと神を見た。すると、動物達が男から離れ、神に擦り寄ってくる。
「こらこら、くすぐってえよ。」
神は頬を舐められて無邪気な顔をしながら、動物達を撫でる。その顔はとても神には思えず、まるで無邪気な少年のようだった。
「何しに来た?」
先程とは打って変わり、明らかに違う雰囲気になった男を見て、神は怯え始めた動物達を宥めるように撫でながら口を開く。
「様子を見に来ただけだよ、そんな怖え顔すんなよ。」
「お前を殺すために来た人でもない俺を、こんな所に生活させるお前がわからないだけだ。」
「オラを殺すために来たのなら、今ここでオラを殺せば良いじゃねえか?それはいつでもできるはずだろ?人でも神でもない、人によって作られた人造人間・・・16号。」
「・・・・」
その言葉に男ー人造人間16号は、黙った。
「でもおめえには今はできない。そしてオラがおめえをここで生かす理由だ。」
そう言うと神は指に止まらせていた鳥を飛ばした。すると鳥はまるで導かれるように16号の肩に止まる。
「おめえは人の心を持っていないとあの時、言った。だが、人と同じものは・・・持っていた・・・」
神がそう言うと、風が吹き、神の顔を隠していたフードが捲れた・・・
「動物や自然に好かれる者に、悪い奴はいねえと爺ちゃんに教わったんでね。」
その顔は・・・


「孫悟空・・・」


「おい、16号!」
名前を呼ばれ、16号は目を開けた。
「8号か・・」
「よかった、やっと目覚ました。ずっと起きないから心配した。」
「もう死んでるんだから、心配する必要は無いだろう?」
16号はそう言うと起き上がり、自分が夢を見ていたことに気づいた。
見に覚えの無い夢。決してデータにもない記憶だった。
すると、二人の周りに天国にいる動物達が集まってきて、リスが16号に擦り寄ってきた。
「いつも思うけど、16号は動物に好かれやすい。16号はいい奴だ。」
「なぜそう思う?18号の夫といい、わからない奴だらけだ。」
「だって・・・」

「「動物や自然に好かれる者に、悪い奴はいねえ(いない)と爺ちゃん(悟空)に教わったんだ。」」
8号の言葉が夢に出てきた言葉と重なり、16号は目を見開いた。


「一体、今の夢は・・?」

カイ 2012年02月18日 (土) 14時58分(1778)
タイトル:心の闇

気づいたら、暗闇の中にいた。

「ここは?」
『ようやく気づいたか?』
声が聞こえ、振り向くと目の前に自分と瓜二つの者がいた。
唯一違うのは、彼は顔に刻まれたように刺青があったこと。

「おめえ、カカか?」
『ちげえよ、俺はお前の心の闇から生まれたんだ。名前はヴェルイン。』
「おらの心の闇?」
『そうだ。お前の憎しみなどによって俺が生まれた。』
「おらは誰かを憎んだことなんてねえ!!」
『それはお前が忘れただけさ。転生するときにな。』
「転生?」
『まあ、この話はいい。だが、お前は全てを破壊したい、全てを殺したい、全てを消したいと思っていた。』
「ちげえ!!おらはそんなこと思ってねえ!!」
『どうしてそう言えるんだ?何もかも背負い込んで、傷ついているのに、お前に全てを任している神達は、自分の地位ばかりで傍観してるだけじゃねえか!!俺はそんな奴等が許せねえんだよ!!』
「でもおらは・・」
何かを言う前に悟空は胸を貫くような激痛を感じた。
胸を見ると、ヴェルインの腕が突き刺さっていた。

『だから・・・悟空。』
「がは!!!」

『俺がお前の代わりに・・・』



『全部ぶっこわしてやるよ・・!!』

ヴェルインの顔は残酷そのものだった・・・

カイ 2012年02月25日 (土) 23時44分(1811)
タイトル:側近の理由

私が仕えるのは・・・今も昔もあの方だけ・・

俺が仕えるのは・・・今も昔もあいつだけ・・

理由など・・

最初からなかった・・


『なあ、神龍。オラはあいつらを縛り付けるつもりなんてないし、役立たずや使い捨てとは思ったことなんてねえ。あいつらはベジータを選んだ。それだけだ。』
『でも、あなたが生み出したものです。あなたを否定する権利など奴らにはない。』
『そうだろうな、でも、あいつらが決めたことだ。あいつらが決めた生き方を否定する権利もオラにはない。だからさ、神龍。』
『はい?』
『オラはおめえを縛り付けるつもりはないから、いつオラがいやになったらオラを見捨ててくれ。オラは止めるつもりないし、それがおめえの選択なら構わねえ。』
『私は・・・』

ワタシハ・・・



『いいか?お前を拾ったのはこの俺だ。お前だけは俺を裏切らず、俺のために従え。』
『わかってるよ。どうせ一度捨てた身とこの命を拾ってくれたのはあんただ。』
『だが・・』
『ん?』
『俺が不利な状況になった場合などは、迷わず俺を捨てろ。』
『つまり、役立たずになったら見捨てろと?』
『そうだ。情けをかけられたり、借りを作るのはごめんだからな。』
『俺は・・・』

オレハ・・・



「悪いけど、それはできねえ相談だな。」
「私も同感だ。貴様らに従う気は無い。」
そう言って腰を上げた二人は、それぞれの武器を持って背を向けた。ちなみに今、界王と界王神達が悟空とベジータのことについて作戦を立てていたのだ。二人の言葉を聞いた北の界王と東の界王神に仕えるキビトが怒鳴りつける。
「こら!!お前ら!!今はそんなこと言っている場合じゃないだろう!!」
「そうだぞ!!これは全宇宙全ての危機を言ってだな「所詮てめえらは命令だけして、自分の地位に居座りてえだけだろうが?そんな勝手な奴らに従うのはごめんだって言ってんだよ、俺達は。」
「ケルドゥンと一緒にされたくはないが、同感だ。命令を聞くつもりは無い。」
「こら!!お前ら!!お前らの主のことでもあるのだぞ!!」
「そうですよ!!今主がいないままのあなた達ならわかるでしょう?ここは皆で協力して「協力って言っててめえらは被害者きどりか?」
「そんなことは・・下界のことに安易に関わっていけないことはわかってます。確かに、悟空さんに全てを任せてしまったから、悟空さんがあんなことになってしまった。そしてベジータさんも・・・でも!!「下界のことに安易に関わってはいけない?魔人ブウのことで結局巻き込んだのは、貴様らではないか!?」
神龍の言葉に東の界王神は黙る。神龍の顔は思わずぞくりとなるほど威圧感があった。
神龍だけではない。ケルドゥンも思わずぞくりとする威圧感があった。

「ピッコロといい、ベジータといい、なぜお前らはワシらの命令が聞けんのじゃ!!」
「ピッコロの頭はともかく、ベジータが誰かの下に就くことなんてねえよ。あいつは俺の主君だからな。」
「だから、その主君達が今危険な存在なのだぞ!!ここはいやでもワシらの命令を聞くのが得策じゃ!!」


「「ふざけるな!!」」

二人の声に思わず界王・界王神達は黙ってしまった。

「俺に命令できるのは、今も昔もベジータ唯一人だ。」
「主がいない今、我らにできるのは貴様らに従うことじゃない。主を自らの手で連れ戻すだけだ。それが側近の役目だ。」
そう言うと二人は背を向け歩き出す。


「なぜじゃ!!」


「理由なんてねえよ・・・自分で決めたことだ。」


「自分で前に進むだけだ。」


「好きであいつを主と決めたんだよ。」


「「自分の意思であいつ(あの方)と一緒にいるんだ!!」」

カイ 2012年03月04日 (日) 00時47分(1849)
タイトル:ヴェルインの心

どいつもこいつも笑わせんなよ。

勝手に地球にやって来て、勝手に地球を攻めてきて、おまけに自分のこと棚に上げて裏切り者扱い?

ふざけんなよな。

どいつもこいつも、勝ってすぎる。

人を自分勝手呼ばわりして、自分達はどうなんだっつーの?

くだらねえ、くだらねえ。

人にいろんなもの背負わせて、関わるなとか言えた義理かよ?

くだらねえ、くだらねえ。

世界がどうなろうが知ったこっちゃねえんだろう?

結局、自分達の命しか見えてねえんだろう?

だったら、壊れてしまえばいい。



全部、ぶっ壊してやるよ。

そうすればいいんだろう?

なあ、悟空。


俺がお前のために、お前を自由にしてやるよ。

そうすればお前は何も傷つかなくていい・・・

カイ 2012年03月11日 (日) 22時44分(1889)
タイトル:すべてはあなたのために

偽りだらけで真実を見ようとしない奴等が嫌いだった。

神も人間も死人さえも消えてしまえばいい。

こんな世界や宇宙の運命をあの方達に背負わせておいて、えらそうな奴等が嫌いだ。

この世界には、あの方達以外存在してはならない。

そしてあの方達の隣に立ち、仕えるのは我々だ。

神龍、ケルドゥン。

君達ではないのだよ。

ふさわしいのは僕なんだ。

あの方達を理解できるのは僕で、そして僕を理解できるのはあの方達なんだ。

君達や他の神達が僕から全てを奪ったのなら、今度は僕が全てを奪ってやる。


そして君たちが壊したように、僕が全てを壊してやる。


全てはあの方達のために・・・

カイ 2012年03月11日 (日) 22時54分(1890)
タイトル:長い旅の末の・・

あれ?オラどうしちまったんだ?

そうか・・死んだのか・・・

これで何度目だっけ?

結局地球守れなかったんだな・・

ごめんな、みんな。

約束守れなかった・・


『あなたはまだ死んでませんよ。』
え?誰だ?

真っ白な空間の中、声がして悟空は辺りを見回す。すると光が差し、光の中から一人の青年が現れた。

『お久しぶりです。』
おめえ、誰だ?

フードを被った青年に悟空は尋ねると、青年はフードを取った。そして意外なことを口にする。

『私は神龍。あなたさまに仕えていた側近です。』
え?神龍?!だって神龍はそんな姿してねえし!!
今、自分の目の前にいる神龍と名乗った青年は、金色の長髪に真紅の瞳をした青年であった。

『ここは、私の精神世界。これが本来の私の姿。本来の力が戻るまでの間、あの姿でいました。そして私の力が戻る時にあなたをここへ呼びました。でも今のあなたは、魂の姿のままです。』
神龍が言っていることが理解できない悟空は、神龍に何で自分をここへ呼んだのか聞いた。
すると神龍は口を開く。

『あなたはかつて、神でした。そして私の主だった。それをお見せします。』
そう言うと神龍は手を悟空の頭に乗せる。すると淡い光が発し、悟空の頭の中から様々な映像が流れ込んでくる。


ああ・・・忘れていた。

あの日のことを・・・


『なあ、神龍。いつかオラの力が戻るまで、ドラゴンボールを預ける。それまで待っていてくれ。』


『思い出してくれましたか?』
ああ、思い出した。長いこと待たせちまったな、神龍。

『では、戻ってくれますか?神の座に。』
ああ、おめえの言うとおりにする。でも・・・

『でも?』

最後に守らせてくれないか?オラの地球を・・・


『かしこまりました・・・』



その出来事は、悟空が再び神の座に戻る前の出来事であった。


『神龍、ただいま。』

『おかえりなさいませ、全能神様。』

カイ 2012年03月12日 (月) 22時55分(1895)
タイトル:いつかくるその日まで・・・

時間を流れるふりこはゆっくりと動き続ける・・

時間を表す針はゆっくりと動き続ける・・

砂時計はゆっくりと落ちていく・・

人の一生は、神にとって瞬きのように短い・・

それは、我ら龍にとっても同じことであった・・


「よく寝てるな。余程疲れてたんだな。」
自分の膝の上で眠る二人の子供の頭をなでながら悟空は笑っていた。
「助かりました、主様。なかなか眠れなくて参っていたんです。」
神龍が言うと悟空はご苦労さんと言いながら、神龍に水を渡した。神龍が水を飲みながら、悟空を見ていると悟空の子供達を見る優しい顔は、何となくターナに似ていた。
自分を見て欲しいわけじゃなかったが、眠っているがその優しい顔を向けられている二人の子供に少し嫉妬している自分がいるのも事実だった。
そして思うことがある。
この子供二人はいつまでこの方と一緒にいれるだろう。そして、
自分はいつまでこの方と一緒にいれるだろう?

この子供二人はやがて大人になって別れる日が来る。
そして自分はいずれこの方よりも先に別れる日が来る。

「どうした?」
はっとして、神龍が顔を上げると悟空が子供二人を寝室に寝かせた後だった。
「いえ、何でもありません。」
「なあ、神龍。」
はい?と神龍が言うと悟空は微笑んだ。
「いつかあの子達と別れる日が来るんだろうな。」
え?と神龍は目を見開く。それはまさに自分がさっき思っていたことだったからだ。

「命というのは儚いものだ。長くても短くても、同じものだ。永遠の命を持つオラが言うのもなんだけど、いつか悟飯と悟天と別れる日が来る。でも、その時思うんだ。
いつかくるその日まで、一分一秒でもあの子達といられる時間を大切にしようって。」
「・・・・・」
「そして神龍。お前と一緒にいる時間も大切にしよう。いつかくるその日までな。」

いつかくるその日まで。
私は何を考えていたのだろう?主様はいつかくるその日をわかっているから、だから一日一日大事にできるんだ。だから笑っていられるんだ。
それなのに、私は・・

何て・・馬鹿なことを考えてしまったんだ。


「全身全霊をかけて一生貴方に忠誠を注ぎます。ずっとお傍におります。主様。」

もしも私が貴方より先に逝ってしまう日が来るのであれば、私は最後までこの方と傍にいよう。
もしもあの子供達がこの方より別れる日が来るのであれば、私がこの方の支えになろう。

いつかくるその日まで・・

カイ 2012年03月24日 (土) 14時54分(1960)
タイトル:主君の獣

「お・・お助けを・・」
「助けを言うくらいなら、破壊神に喧嘩なんか売ってんじゃねえよ。」
目の前で助けを求める魔物にケルドゥンはそう言うと、舌打ちして剣を納めた。
ケルドゥンは剣を納めた後、魔物に背を向けさっさと歩き始める。すると、背を向けた瞬間
魔物はにやりと笑って飛び掛った。
「!!神獣族!!」
「・・だろうと思ったよ。」
ケルドゥンは呟くと飛び掛ってくる魔物に振り向くと同時に真っ二つに胴体を斬った。
斬られた魔物はそのまま胴体が分かれたまま倒れ、呻き声を上げる。
「敵にわざと油断させて最後に斬る。これが俺流さ。」
ケルドゥンはそう言うと手に気を溜め始めた。
「悪いな、ベジータに徹底的に殺せって言われてんだ。助けを求めても求めなくても、お前の命運は尽きてたんだよ。」
ケルドゥンはそしてじゃあなと言って魔物を気で焼き尽くした。


「ずいぶんと遅かったな、ケルドゥン。」
「どうもお待たせして申し訳ありません。かの、魔物以外にも魔物と手を組んでいた輩がいた模様で、制裁に時間がかかりました。」
「そう硬くするなといつも言っているだろう?普通にしろ、ケルドゥン。」
「悪いな、ベジータ。」
ケルドゥンはそう言うと跪いていた足を崩して楽な姿勢になる。
「報告を続けろ。」
「簡単に言うと、お前に濡れ衣を着せてる輩が魔族と手を組んでるみたいって話。胡散臭せえ輩はある意味全員黒だったけどな。」
有名人は困るなとケルドゥンが言うとベジータは舌打ちして、呆れ顔だった。
「知識の神以外に厄介ごとはごめんだな。」
「安心しろよ、ベジータ。そういう厄介ごとは・・・」
ケルドゥンはそう言って会話を切ると・・・



立ち上がった。



すると・・


窓ガラスを割る音がし、たくさんの魔物が飛び出してきた。


「俺の仕事だ。」


そして床を蹴ると高く飛び上がり、一瞬で魔物を殺してしまった。無残な姿になった魔物は次々と床に無残な姿のまま落ち、床を汚してゆく。だが、ケルドゥンは自分どころかベジータにさえ返り血を付けていないのはさすがだろうか?
「・・・残党か?」
「たぶんな。まだ残ってたみたいだ。」
「俺は徹底的に処分しろと言ったはずだ。」
「悪いな。後でまだいるかどうか調べてみるよ。たぶんこれで全部だろうけど。」
「床の掃除と窓の修理はナッパにでもやらせるから、調べは自分でやれよ。今度はしくじるなよ。」


「わかってるよ。一度捨てたこの身を拾ってくれた恩は、全て主君であるお前に尽くすためにあるからな。・・ベジータ。」

ケルドゥンは魔物の血で染まった剣を軽く振って払い落としながら言うと、ベジータはふんと言って、座っていた椅子から立ち上がって背を向ける。

「勝手に言っていろ。」

カイ 2012年03月28日 (水) 23時35分(1992)
タイトル:吼える獣

僕から羽を奪うとしても、彼らから羽を奪うことは許さない。

一人は太陽、一人は月。

そして僕はそれに向かって吼える・・・獣であればいい・・

牙を失ってもすぐに生え揃う獣であればいい・・


「ドラビルが?」
高価な椅子に腰掛けていた二人のうち、一人が呟くと報告しに来た部下が返事をし報告を続けた。
「はい。先日の件で深手を負った模様です。おそらく「いい。」
言葉を遮った男ーヴェルインが言うと部下は不思議そうな顔をした。
「ドラビルに深手を負わせるまでにはなったようだな、神龍。」
ヴェルインが呟くと同時に立ち上がると部下にドラビルの容態とドラビルが療養されている場所を聞いた後、歩き出した。
「手負いの役立たずの様子を見に行ってどうする?ヴェルイン。そんな役立たず、さっさと捨ててやればいいものの。」
「手負いでも、牙が折れたかどうか見るだけさ。それであいつの忠誠心がその程度かどうかをな・・」
ヴェルインの言葉に椅子に腰掛けていた男ーシュテールが舌打ちしながら部屋を出て行ったヴェルインを見ながら呟く。
「相変わらず貴様の甘さには反吐が出るな。それに付き合う俺の身にもなれ。」
シュテールは溜息をついて煙草に火を付けた。



硬質的な音を立てながら廊下を歩くヴェルインを部下達は列になりながら敬礼するが、ヴェルインは何食わぬ顔で歩いている。すると藍色のウェーブがかかった長髪の美女が現れ、ヴェルインは立ち止まる。美女ー黒藍はヴェルインを見ると一礼する。
「ヴェルイン様。」
「ドラビルの様子はどうだ?」
「先程治療が終わりました。今は眠っております。」
「再生には思ったより時間がかかるということか・・」
ヴェルインの言葉に黒藍は申し訳ありませんと頭を下げる。するとヴェルインはなぜお前が謝るのか尋ねると、答えたのは黒藍ではなく、別の声だった。
「ドラビル様をお守りできなかったことに、そしてドラビル様を止められなかったことに悔いているのですよ、ヴェルイン様。」
声の主ー黒夜が言うとヴェルインは先日の件以来落ち込んでいた黒藍を思い出し、いつも黒藍が首に巻いている蛇が黒藍の周りをうろうろしているのを見て蛇と黒藍の頭を撫でる。
「先日の件は、ドラビルの意志と行動に責任がある。お前達が悔いることは無い。」
ヴェルインはそういい残し、二人の前を通り過ぎる。二人はヴェルインが通り過ぎると同時に頭を下げる。すると・・


「まあでも・・勝手に行動したあいつをどうするかは俺達の意思だけどな・・・」
ヴェルインの言葉と同時ににやりとした顔に二人は思わずぞくりと背筋が凍った。
それだけで力の差を思い知らされる気がした。

「甘さだけでは、飼い犬を躾できんぞ、ヴェルイン。」
声がし、二人が振り向くとそこには煙草を口に咥えたシュテールがいた。



ヴェルインがドラビルの眠っている部屋を見つけ、中に入ると薬の匂いがし、思わず顔を歪めた。薬の匂いを嗅ぐと、悟空だった時にベジータと戦った時に入院した記憶もあるが、それ以上に前世の頃、いろいろ実験された記憶もある。ヴェルインは頭を軽く振って記憶を消すようにすると、ドラビルが寝ているベットに近づいた。するとベットで眠っているドラビルには、包帯で体中を巻かれている状態であった。口にはボンベがある。
「さすがのお前でも勘が鈍ったか?ドラビル。」
ヴェルインはそう言うと眠ったままのドラビルに話し続けた。

「一応言っておくがドラビル。お前には悟空から引きずり出してくれた恩があるし、それは感謝している。だがな、俺やシュテールに従うと言ったのはお前の意思であり、俺やシュテールの意思じゃない。」
「それはいざとなったら捨てるという意味か?ヴェルイン。」
ヴェルインの言葉に答えたのは、ドラビルではなくシュテールでヴェルインは背後に壁に背を預けながら煙草を吸っているシュテールに目を向けた。シュテールは紫煙を吐いた後、ヴェルインの隣に立つ。ヴェルインは大して表情も変えず、まるでシュテールが来るのをわかっていたように何も発しなかった。
「忠誠心がどうかとほざいてやがったくせに、結局牙が折れたら捨てるのか?貴様も俺と大して変わらんではないか。」
そう言うとシュテールは黒い羽を刀に変え、寝ているドラビルに向かって振り下ろした。


ガキン!!!
「!!」
刀を振り下ろした瞬間、応戦した剣にシュテールは舌打ちし、ヴェルインはへえと笑った。

「牙なら・・・折れても・・・もう生え揃ってますよ・・・主様方。」
先程眠っていたはずのドラビルがいつの間にか起き上がり、剣でシュテールの刀を受け止めていた。その顔は動けるようであったが、まだ傷が癒えてないのか辛そうだった。シュテールは舌打ちした後、刀を退き羽に戻す。
「今回は見逃してやる。今度しくじりやがったら、俺が真っ先にお前に止めを刺すぞ。」
良く覚えておけと言い残し、シュテールは部屋を出て行く。出て行く際にドラビルが肝に銘じて起きますという言葉を無視しながら。

「申し訳ありません、このような失態は二度と致しません。」
「まあ勝手に行動して、勝手に傷を作ったのはお前の責任だからな。だが、すぐ動けるようで安心したぜ。・・・神龍は強くなっていたか?」
神龍という言葉にドラビルはぴくりと反応し、ヴェルインはドラビルの反応を見た後口を開く。
「俺はシュテールと違って、捨てるかどうかなんて考えてない。お前が自分で決めたのならそれをどうこういう権利も無い。だがな・・・」
ヴェルインはそう言うと鋭い目をして、ドラビルを見た後刀を出して、ドラビルの首筋に当てた。

「お前が半端な忠誠心で俺に命を預けるのなら・・俺に預けたお前の命、真っ先に消滅させてやる・・・よく覚えでおけ。」
ヴェルインの不気味な目を見て、ドラビルは額に汗が浮かんだが笑って首筋に当てられた刀を握った。強く握ったためか、手から血が刀を伝って流れてくる。

「この身、この血、この命、全て貴方様達に使う覚悟でございます。半端な忠誠心と見えるのであれば、今すぐ僕を消滅させてもらって結構です。」
ドラビルの紫色の瞳には強い意志が宿っていた。ヴェルインの片目の金色とドラビルの紫色の瞳が交差する。


「それでいい・・」
ヴェルインはそう言うと刀を下ろした。



牙や爪が折れても、この意思だけは折らせない。

でも牙や爪が折れたなら、生え揃うようにすればいい・・

いや、折れないようにすればいい・・

ただ吼えるだけの獣として、生きるより、血に染まった獣で生きるほうがいい。




カイ 2012年04月07日 (土) 22時21分(2035)
タイトル:地獄に咲く花

『なあ、じいちゃん。何で天国には花が咲いてるのに、地獄には花が咲かないんだ?』
幼いまだいろんなことがわからなかった自分が遠い昔、自分を育ててくれた祖父にそんなことを尋ねたことがある。
『地獄は悪い者が堕とされ、悪い者が自分の罪を償う所じゃからな。花は咲かん。何しろ、あそこには日の光も届かんからな。』
『そうなんか?でも、何か寂しいな。』
『寂しい?』
『だってよ、いくら悪い奴らでも、太陽も見れずにお花も見れないなんて何か可哀想じゃん。』
『そうじゃの。元々罪の犯した者達は、自分で自分を壊してしまった連中ばかりじゃからのう。』
『なあ、じいちゃん。前神様たちが言ってたんだけどよ、あの世で死んじまった者達は跡形もなく消えるって本当か?』
『まあのう。転生することもできず、ただの砂と化す者も多いと聞く。』
『じゃあ地獄の連中もか?』
『たぶんな。』
『じゃあ・・そん時さ・・』



それから何百年もの時が流れた・・

『千年の孤独』という罪から解放された時、自分を待っていたのは、何もない世界だった・・何も無かった・・自分以外は・・

神も人間も、死人も、何も無かった・・

その時、悟った。

自分は取り残されたのだと・・


場所はあるのに、そこにだけ人がいない・・まさに無空間にいるようだった・・

「地獄にも誰もいねえや・・・」

渇いた土に盛り上がった砂があるだけの地獄・・そこにも誰もいない・・
盛り上がった砂を両手で掬い上げ、過去の自分を思い出す。
『砂になったのが死人なら・・オラさ・・』
目から涙が溢れたのは、また感じる孤独の痛みか、それとも・・

『砂になった奴らを・・』
涙は頬を伝い・・流れ出て・・・


『真っ赤な太陽みたいに、真っ赤な華に変えてあげたいな!!』
砂に落ちる・・すると・・

『そしたらどんな悪い奴らだって・・・』
砂から一輪の・・

『浄化されて綺麗な心に戻る気がするから!!』
真っ赤な華が・・


咲いた・・

「真っ赤な華が・・咲いた・・地獄に・・」
その時、自分の涙の力に気づいた・・・



カイ 2012年06月04日 (月) 23時50分(2197)
タイトル:ターナの涙

ごめんなさい、ごめんなさい。

私には何もできない・・・

一人残してしまった私をどうか許して。

ごめんなさい、ごめんなさい。

悟空・・・私の愛しい子供。

ごめんなさい・・・

でもどうか忘れないで。

貴方をずっと愛してるわ。

いつか生まれ変わったら、今度は本当に貴方を生むわ。

ごめんなさい、悟空。

そしてバーダック、ラディッツ。

貴方達を・・・

ずっと愛してるわ。

カイ 2012年07月15日 (日) 23時46分(2289)
タイトル:従者の決意

たとえ世界が貴方の敵になろうと、私だけは貴方の味方です。

たとえ全てが貴方を裏切ろうとも、私だけは貴方を裏切らないと誓う。

そう決めたのだ。

私は・・・


ズバン!!
目の前にいる敵をなぎ払うように斬り捨てると同時に、まるで紅い華が咲くように鮮血が舞う。だが鼻につく匂いは、紅い華のような甘い匂いではなく血の臭い。
「何度やっても慣れんな・・」
深い溜息をつく神龍だが、その神龍の顔には返り血すら浴びてない。しかし神龍の下には、数多くの死体があった。
「『鮮血の貴公子』か・・厄介な名前が付けられたものだな・・」
神龍が呟いて血の付いた刀を軽く振って血を払い落とすと、近くで突然爆音がした。はっとして振り返ると遠くで爆発が起きていた。
あの方向は・・
一瞬頭を不安が過ぎり、刀を納めるとすぐさま走り出した。
「主様!!」
自分の主である悟空の顔が頭を過ぎったのは・・気のせいではなかった・・



穏やかだった惑星の住人が突然変異したかのように凶暴になってしまった話を聞き、悟空と神龍は調査のため見に行ってみると、なんと惑星の住人達はほとんど滅んでいて、凶暴になっていたのは寄生型の宇宙人でコピーだったらしい。惑星の住人達を後で蘇らせることにして悟空と神龍はそれぞれに別れ、とりあえず寄生型宇宙人を倒すことに専念したが、思ったより時間がかかってしまった。最後の寄生型宇宙人のコピーを斬った後、悟空のいた方向から爆発が起きたので、神龍は不安を振り払うように走り続けた。
「主様!!」

思えばあの時からだ・・

私があの方の心を知ったのは・・


「これは・・一体・・?」
目の前の光景に私は目を疑った・・

そこにいたのは・・


「また・・やっちまった・・」
地面が抉られ・・木が倒れ、そこらへんに転がっている寄生型宇宙人達の屍と・・

その屍の上にいる自分の主である悟空だった・・

その光景に誰もが一瞬は言葉を失い、恐怖に震えるであろう・・

だけど私には・・

屍に佇む主様の姿がどこか寂しく、そして・・血で浴びたその顔がまるで泣いているように見えたのだ・・


彼が時折、我を忘れて、暴走することは彼の半身殿から聞いていた。
これ以上とは知らなかったが・・
その後、彼がどうしてこうなったのかを彼から聞くのを待つのに時間はかからなかった。


「ごめんな、あんなの見せて。今回はどうかしてたよ。実はさ、あいつらが襲ってきた時の顔を見て、昔のこと思い出しちまって・・」
「昔のこと?」
「昔まだちいせえ頃、異端だといわれて命を狙われたことあったんだ。そしてさ、襲い掛かってきたあいつらの顔が、その時の先代の神の使いの者達の顔と重なっちまって・・」
「そうですか・・」
「なあ、神龍。」
「はい?」
「こんなこという資格、オラにあるかわかんねえけど、おめえだけは、オラを裏切らねえでくれねえか?」
その時の貴方の顔を私は忘れない・・

その時の貴方の顔が・・本当に悲しそうだったからだ・・

だから決めた。

たとえ全てを敵に回しても、私だけはあの方の味方でいると。

たとえ全ての者が裏切っても、私だけは裏切らないと。

そう・・誓ったのだ・・

カイ 2012年08月11日 (土) 23時31分(2355)
タイトル:兄弟の心

お前が生まれた時のことを・・お前はもう覚えていないだろう・・

お前が幼い時の事を・・お前は覚えているだろうか?

上の責任は、下の務め。

そして下の責任は、上の務めである・・

それは兄弟でも、同じなのだ。

だが、兄にも務めがある・・

それは、後から生まれてくる弟妹を・・守ることである・・


『精が出るな、牙龍。』
『父上・・』
素振りの練習をしていた時、声をかけられ声の方を向くと、声の主は父の傲潤だった。
『少しは強くなったか?』
『いえ、まだまだです。まだ髪の色が変わってませんから。』
傲潤が水筒を渡して尋ねると、牙龍は首を振って自分の髪を掴みながら言う。
龍神族はかつて様々な髪の色をしていたが、時代の変化と共に幼少期は緑色を持ち、強くなることによって色が変わる。
『母上は?』
『厘玲は今大事な時期だからね、追い返されたよ。お前にもうすぐ弟妹ができるのにな。』
『兄弟ですか・・なら私はもっとその者を守れるくらい強くならねば。』
『そうだな。でもな、牙龍。これだけは覚えておきなさい。』
『え?』
『最初に生まれてくる者はね・・・、後から生まれてくる者を守るためにある。
だけどそれは力ではないんだ。確かに力も必要だが、それ以外のものを守るんだ。そして、
それは王も神も同じことだ。』
『同じことですか・・?』
『それはね・・・』



ガキン!!
『うわ!!』
『どうした?小龍。腕が鈍っておるぞ。』
竹刀を突きつけ牙龍が言うと、数年前に生まれた牙龍の弟ー小龍は顔の傷を拭いて立ち上がった。小龍は遊びとして覚えた剣術をどんどん自分のものにしていった。何も執着がなかった小龍に唯一自分が最初に教えたものだった。
『互いに強くなると誓っただろう?!もう忘れたか?』
『忘れてません!!お願いします!!』

まだ自分も小龍も髪の色は変化してなかった・・それは安心でもあったし、逆に焦りもあった・・



『父上・・?母上・・?』
全てを打ち砕くような光景を・・あの日を・・私も小龍も忘れていない・・
全てを無くした・・あの日を・・そして全てが変わった・・あの日を・・・
『父上!!母上!!』
目の前が紅かった・・残酷なくらい・・自分達の瞳と同じくらい紅かった・・泣き叫ぶ弟を私は抱きしめてやることしかできなかった・・
『泣くな、小龍。私達は生きている・・父上と母上の思いを忘れてはならぬ。互いに強くなろう!!』
『は・・はい。兄上・・』
私と小龍の髪の色が変わったのは、その頃だった。



カイ 2012年08月25日 (土) 00時42分(2406)
タイトル:彼岸花と神

「ここは暗くて何もねえな・・当たり前か・・」
悟空は暗くて日も差さない所にいた。いつもの白い衣の上にはマントを羽織っている。
「ごめんな、いくらここが地獄でもちょっとやりすぎちまった・・・」
見ると悟空の周りには、たくさんの地獄の者達が倒れている。
「せめて飾らせてやるよ。おめえらにも、華をな・・」
悟空はそう言うとマントを脱ぎ捨て、背中の羽を広げて数枚抜き取った。すると数枚の羽はみるみるうちに真っ赤な扇に変わる。
そして悟空は扇を広げてまるで日本舞踊のように舞い始めた。舞を踊って歌いながら・・
すると辺りがまるで光るように輝き始め、地面が鳴り響く・・


しばらくして悟空がいた所は先程まで日も差さず、草一本も生えていなかった渇いた地面にたくさんの紅い華が咲いていた。
「地獄でも華ぐらいは咲いたほうがいいぞ。せめて・・来世ではいい笑顔で。」
そう言って悟空は紅い華ー彼岸花に触れて微笑んだ。

カイ 2012年09月22日 (土) 23時34分(2467)
タイトル:兄弟の心2

『兄弟で兄が先に生まれるのは、次に生まれてくる弟か妹を守るためだ。わかるな?ケルドゥン。』
『おう!!わかったぜ、親父!!』
『父上と呼べ!!全く、お前は・・』
そう言って兄ーケルドゥンは幼い頃、毎日のように父に殴られていた。それは日常茶飯事で、もう慣れてしまったことが恐ろしい・・
『だがな、ケルデア。よく聞くんだぞ?』
『え?』
『お前は次に生まれた弟として役目がある。』
『役目・・ですか?』
『そうだ。それは、支えることだ。そして、止めることだ。』
『支える?止める?』
『いいか?上の者がどんなに自分の足で立っていたとしても、いつかは壊れてしまうかもしれない・・その時に下の者が上の者の支えになるんだ。壊れて堕ちてしまった者を支える、体と心を・・持ちなさい・・世界が全ての敵になろうとも、お前だけは兄である、ケルドゥンを支える、止める、心を持ちなさい・・ケルデア・・』
父の言葉が理解できるようにはまだ足りなかった幼い自分。
でも、その父の言葉だけはわかる日が来るまで覚えておこうと心に誓った・・・


神獣族は、龍神族と同じで神に仕える役目を持っていた・・
だがそれは力故に与えられる存在・・上級と下級もあり、神に仕える役目がなければ、ただの獣と成り下がる・・
そんな中で、嫉妬もあれば差別だってどこにでもあった・・・
まさに獣の世界の中で、俺達は・・いた・・
「おい、またあいつケルドゥンがやったらしいぜ?」
「またかよ。力があるだけのくせして、あの性格じゃ神に仕えることなんて到底できそうにねえな。」
「弟のケルデアも、まだ神に就いてないらしいわよ。可哀想・・」
「やっぱり兄があれじゃあ、弟もあれか?気の毒だな・・」
よくそんな声を耳にたこができるくらい言われたことがあった・・普段喧嘩っぱやい兄がそれを聞き流していたのはなぜだったのか?


「兄者は悔しくないんですか?あんなこと言われて・・」
「悔しいって思った方が負けだぜ?あんなの、言うしか能のない奴の戯言さ。気にすんなって。」
そう言って兄は笑って頭を撫でる。いつも兄はそうやって慰める・・
別にもう慣れてしまったから、どうでもよかった・・
「しかし、神獣族ってのも厄介ですね。神に仕えなければ、ただの獣とそう変わりないというものなのに・・」
「まあな。だけどさ、上に仕えるのが下の役目って奴だろう?まあ、自分の神ぐらい自分で決めるけどな。」
下の役目か・・どんなに兄弟であろうが、それは変わりないのか・・
「そうですね・・」
父の言葉が少しわかってきたような日々・・
そんな日々が・・ある日変わった・・・


バキ!!!!
「兄者!!」
いつものように買い物を終えたときだった・・
兄ーケルドゥンが同類を殴っていた・・それを見た瞬間、咄嗟に兄を止めた。
「何してるんですか?!!やめてください!!」
「うるせえ!!こいつだけは、許さねえ!!」
ケルドゥンが珍しく怒っていた。こんな兄を始めて見るとケルデアは思った。
「てめえ!!俺のことはどうこう言っても構わねえがな!!ケルデアを能無しなんて言うんじゃねえよ!!!」
「え?」
「こいつは俺の弟だがな!!てめえらみてえな奴とは違うんだよ!!俺の自慢の弟なんだよ!!」
『弟を守るのが、兄の役目・・』
『そして兄を支えるのが、止めるのが・・弟の役目だ・・』
父の言葉が脳裏に蘇った・・
「兄者、やめてください。」
「何だよ、ケルデア。悔しくねえのかよ?!」
「悔しいと思ったら負けと言ったのはあなたです。こんな奴に力を使う必要はありません。」
ケルデアはそう言った後、同類を睨みつけた。
「俺の顔に免じて今回は許してくれ。だが、もう二度とその言葉を口にするな。俺と兄者の逆鱗に触れたくなければな・・」
そう言ってケルデアはケルドゥンと共に、その場を後にした。


『支える・・心を持ちなさい・・ケルデア・・』
父上、俺は・・今ならあなたの言葉をわかった気がします・・

カイ 2012年10月13日 (土) 23時43分(2534)
タイトル:自分を呼ぶ声

前世の記憶というのは、転生してから消えるというが・・
『心』には、どこかで残っているらしい・・

あまりよく覚えてないけど・・
懐かしい声を聞いた気がする・・

赤ん坊だった頃よりもっと前に・・ずっと聞いていた声が・・・

でもその人は自分のせいで死んだ・・・

月を見た時、ぼんやりとその人の顔が映った・・

そしてそれから様々な事が起きて、覚えるというより思い出すような感覚で自分は力を得た気がする・・

何を自分は忘れている?

そして一度死んだ自分があの世に行って、初めてあの世に来た時もどこか懐かしい気がした・・


そして始めて界王様に会った時も、どこか懐かしい気がした。修行も全て思い出すような感覚だった・・


自分が生き返った時に久々に現世の地面に足を踏み入れ、目の前の敵を見た時、怒りもあったが、どこか懐かしい気がした。

記憶の歯車がゆっくり回り始めて、懐かしい想いがどんどん溢れていく・・


強くなる度に、懐かしい思いをするのは何故だろう?

様々な事をどんどん体験するたびに、どこかで声が聞こえた。

自分を呼ぶ声が・・

そして自分が何度も死ぬ想いをするたびに聞こえる声。


おめえは誰なんだ?


心も体も限界でボロボロだった時・・また声が聞こえた。


ぼんやりと見える姿。


夢の中で、金色の髪と真紅の瞳をした青年が・・笑った気がした。

ああ・・おめえだったのか・・

神龍・・

カイ 2012年12月15日 (土) 15時41分(2636)
タイトル:戦場の雪

いつだったか忘れたが、まだ自分が神と言われる前に、周りには自分をギラついた目で見る者達ばかりだった・・


いつだったか忘れたが、まだ自分が神と言われる前に、周りには自分を汚いものを見るような目の者達ばかりだった・・


そしてオラ(俺)の周りは・・血と硝煙が舞う『戦場』という場所だった・・


いつ自分がそこにいたのかはわからない・・

気づけばそこにた。


だから・・


いつも目の前に来る『敵』を・・


殺すしか道はなかった・・・


それがいつぐらい続いただろう・・?


季節なんてわからない・・

何人斬ったか、殺したかなんてわからない・・


それでもオラ(俺)達は・・・


違う場所で・・


同じようなことをしていたんだ・・・・


「いい加減雑魚ばっかりだと飽きるな・・どこか強え奴はいねえのか・・?」
何本目になるかわからない煙草を吸いながら空を見る。
自分の近くには、たくさんの死体が・・
そして自分には自分の血だか死体の血さえわからないくらい血塗れ。

「いつになったら、何か変わるのかな?・・どこか強え奴はいねえのかな?」
何本目になるかわからない肉を頬張りながら、空を見る。
自分の近くには、たくさんの死体が・・
そして自分には自分の血だか死体の血さえわからないくらい血塗れ。

そんな時・・・

「「あ・・・」」

空から舞い降りる白い物・・・・


「「雪だ・・」」

カイ 2012年12月29日 (土) 23時18分(2668)
タイトル:神龍の心

どいつもこいつも、猿だの獣だのくだらない・・

戦場に立つか立たないかなどくだらない・・

猿だの犬だの、山だの・・うるさい・・

上だの下だの・・くだらない・・


何が誇りだ、くだらない・・


一度刃を持った者に・・・

一度戦いをその身で知った者に・・・


誇りだの、上だの下だの・・


関係ないのだ・・愚か者!!!

カイ 2013年02月16日 (土) 16時03分(2718)
タイトル:譲れない決意

「はあ・・はあ・・」
止め処なく血が体中から流れていく・・

自分の体温が低くなって、口から流れるのもまた血であった・・

紅い・・全てが紅い・・


自分はもうすぐ死が近いことを・・頭の中でぼんやりと考えていた・・

「なあ・・ベジータ・・オラは・・・おめえを・・・・」


「       」


「主様!!」
聞き覚えのある声になくなりかけていた意識を取り戻し、目を開けると傷ついた肩を抑えて自分の従者である神龍がいた。
「神龍・・・」



「もうすぐです!!もうすぐ全能神界に着きますので、頑張ってください!!」
悟空が意識を失わぬように神龍は悟空を支えながら、懸命に声をかけ続けた。


「お願いです!!主様!!全能神は、貴方様しかいないのです!!他に誰がいますでしょうか?!」
そうだな・・じゃあ・・オラの決意は・・決まった・・


「神龍・・ありがとな・・」
「え?」



「何をなさるのですか?!!主様!!!」
「ごめんな・・こうするしかねえんだ・・この世界を守るためには・・こうするしか・・」


「主様!!」

「でも安心しろよ、神龍。全能神の地位は捨てない・・いつかオラが戻る日まで・・待っていてくれ・・そしてこの地位は・・誰にも譲らない・・」

「主様!!」


「ベジータだって同じこというと思うから・・オラは・・この地位は全能神は・・オラの代で・・終わらせる!!決して誰にも継がすことはない!!」

「主様ーーーー!!!!」


「ありがとう・・」



ありがとう・・神龍。
そしてごめんな、神龍。

でも安心してくれ、全てが終わったら必ずまたオラはおめえと会うから・・
だから・・今はさよなら・・

そしてこの地位は誰にも譲らないから・・そんな簡単に誰かが務まる地位じゃないから・・
だからこの全ての記憶はオラが持っていく・・
でもおめえだけは覚えていてくれ・・

神龍・・    

カイ 2013年03月08日 (金) 20時21分(2747)
タイトル:弱さと強さ

己の弱さと向き合えなど・・大抵の者は、ごめんだと軽くあしらうだろう・・

己は強いだのを思い込むのは悪いことではない・・

でもその強さを・・その強さに溺れてはならない・・

そしてその力を向ける矛先を違えてはならない・・

人は所詮、己の弱さと向き合うのを恐れているのだから・・

認めていてもそれを拒むしかないのだから・・

認めていてもそれを隠すしかないのだから・・


でもこれだけは覚えてほしい・・


己の弱さと真剣に向き合えとは言わない・・でも・・

己の弱さから・・


逃げてはいけない・・・

カイ 2013年05月04日 (土) 18時50分(2811)
タイトル:僕は忘れない1

今回は、ビルスの話です。
映画見ましたが、こんな感じか不安です。タイトルはこんな感じですが、最初は少しギャグっぽい。


僕は忘れないよ・・・
たとえ君達が僕を忘れても、僕だけは忘れないよ。


「ビルス様、また全能神界に行かれるのですか?」
側近であるまた師匠であるウイスに呼ばれ、ビルスは気まずそうな顔をする。ウイスはというと、杖を持ったまま、咳払いをした後、ニコリと笑った。その顔を見てビルスはまたかとはああと溜息を吐いた。
「もういい加減全能神界には一人で行けるんだから、ついて来なくてもいいだろう?」
「別について行くとは言ってませんよ、それにビルス様。私がそんなことで呼び止めるとは思ってないでしょう。」
「もうだったら直接神龍に頼めばいいだろう?何でいつも僕に頼むのさ…」
ビルスは面倒くさそうに耳を掻くと、また溜息を吐いた。その仕草はまさに猫のようだった。

「まあ私が言ってもいいんですが、やはりここはビルス様が効果的かと思いまして。」
「言っとくけど、また僕の分まで食べないでよ!」
ビルスがビシッと言うが、ウイスは対して表情を変えず、わかりましたと頷く。

「神龍さんに今度はプティング作ってくださいと頼んでくださいね!」
ウイスが手を振りながら言うのを背中で聞きながら、ビルスはプティングって何だろう?と考えながら、全能神界に向かった。

カイ 2013年08月05日 (月) 22時09分(2818)
タイトル:自分を許せない者

昔から我々には、『差別』があった・・

そして我々には、『狩られる者』というレッテルが貼られていた。

「いたぞ!!龍神族だ!!」
「はあ・・はあ・・」

龍・・かつてそれは神聖な生き物であったが、その鱗はどんな盾にも使えるように頑丈で、
その肉は不老長寿の妙薬になるという・・

いつの日か我々はそう呼ばれていた・・

たしかに龍の寿命は6千年。そう言われればそう信じるだろう・・

だから我々は、それぞれの子孫を残すために、様々な姿に変えられるように進化した。そして退化もした・・

そしてひっそりと暮らすしかなかった・・・


「オラがおめえらを救ってやるよ。」
暗闇や姿にしか変えなければ生きれない我々に手を差し伸べたのが、あなただった。


「主様。私はどうも神も人間も好きになれません。そして宇宙人達や闘神達も。」
「まあすぐに好きになれとはいわねえよ。でもさ、人間にだって悪い奴はいるし、宇宙人にだっていい奴はいると思うぞ?人括りするのは間違ってねえか?」
「そうでしょうか・・?」
「じゃあおめえの目で見たものを信じてみたらどうだ?人間だってそうなんだからよ。」
「そうですね・・」


人括りするのは間違いだと言うことはわかっていた・・でも欲に溺れ、自分のことしか考えているものは嫌いで、信じようとしないものは嫌いだった。


「お前って好き嫌い多いよな。俺もそうだけどさ。」
「自己中な者は嫌いだ。差別するのは嫌いだ。高飛車な者は嫌いだ。人間は女は子孫を残せると言うから偉いというが、確かにそれは偉いと思うが、差別するのはどうかと思うがな。」
「人間ってわかんねえからな。」
「心の狭いものは嫌いだ。信じようとしないものは嫌いだ。人は結局は自分の目で見たものしか信じようとしないからな。」
「わかるわかる。」
「それに合わせるのは・・とっても辛いな・・」
「でも神龍。本当にお前が嫌いなのは・・お前自身なんだろう?そして許せないのも信じられないのも、おまえ自身なんだろう?」
「・・・そうだ。私が本当に許せないのは人間でも神でもない・・己自身だ・・・」

カイ 2014年03月01日 (土) 22時42分(2900)
タイトル:僕は忘れない2

それははるか昔の話…
今よりもっとはるか昔の語ることのない昔の話…


全能神界…
悟空(全能神ヴェルイン・当時)は神龍に渡された大量の仕事をようやく終え、木の上で仮眠を取っていた。しばらくすると悟空は何かの気配を感じ、目を覚まして起き上がる。
「そろそろ来る頃か…」
欠伸をしながら伸びをした後、悟空は木から降り、地面に着地する。すると神龍が毛布を片手に持って悟空の元に行こうとしていたところだった。
「あれ?主様、もう起きたのですか?毛布を持って行こうと思っていたのに…」
「悪いな、神龍。ちょっと気配感じてな…」
「気配ですか?」
「急で悪いけど、食事とデザートを頼む。ビルスがそろそろ来る頃だ。」
「ビルス様がですが!!ですが連絡は来てませんよ。」
「あいつのことだからな、何か用があって来たんだろう。予知夢も当たったし…ちょっとオラ着替えてくるから。」
悟空はそう言うと普段の道着から正装の服に着替えようと自分の部屋に向かう。神龍は着替えはクローゼットに掛けていると言った後、食事の準備などをしに調理場に向かった。


カイ 2014年03月22日 (土) 23時39分(2921)
タイトル:僕は忘れない3

『おめえ、強いな!!』
そう言ったのは君だった・・・


「よっと!到着!!」
ビルスは地面に着地した後、軽く伸びをして辺りを見渡す。
「相変わらずここは、気が澄んでいるな・・僕の所とは大違いだ。」
ビルスは目的の場所に着いたことを確認すると、歩き出した。

「全能神はいないのかな?いつもならすぐ出迎えてくれるのにな・・」
歩きながら呟くが、なかなか目的の人物に会えないので、少しイライラし始めた。

「あーあ、やっぱり破壊しちゃおうかな・・?「どうしておめえはいつもそうなんだよ!!」
ビルスの言葉を遮るように声がし、その声が目的の人物だとわかり、振り向く。
そこには自分と会った時に着ていた格好の姿の悟空がいた。

「おめえな・・いくらオラがおめえの『破壊』の力を元に戻すことができるからって手当たり次第破壊すんなっていつも言ってんだろう!!」
「君がさっさと出迎えてくれないから悪いんだろう?全能神・・いや悟空。」

カイ 2015年08月23日 (日) 19時30分(3187)
タイトル:僕は忘れない4

生まれてすぐに並外れた力を持ち、いろんな者を破壊した。でも、罪悪感も何も感じなくて、師匠を与えられても何も感じない。兄弟がいても情なんか無くて、気に入らなければ壊すだけ。
でも、君は壊れなかったね・・


「おめえな・・今日は何しに来たんだ?」
「この間、ウイスが僕より先に食べたって言う、美味しい物を食べに来たに決まってるじゃないか。」
「ああ・・・この間どこかの惑星の作物を使った神龍が作った料理か。ちょっと待ってろよ。」
悟空はビルスが来た理由を聞いた後、神龍にテレパシーを送った。神龍から返事が来るとテレパシーを切り、ビルスに目線を戻す。
「神龍がそれも今から作るって。」
「あ!ついでにプティングも作っておいて。ウイスから頼まれたんだ。」
注文を追加するビルスに悟空は何だそれ?と首を傾げながらも、まあいいかとテレパシーを送る。

「どれくらいで出来る?」
「うーん、わかんねえ。おめえが突然来るってこと伝えたのは、さっきだったからな。」
ビルスが退屈そうにドカッと沈むように椅子に座る。ちなみにそれは来客用の椅子ではなく、悟空の椅子なのだが、悟空は大して文句も言わずいつものことなので、ビルスの好きにさせておいた。
「何か美味しい料理を食べる時って、待つのはやっぱり退屈だよね。」
ふあああと欠伸をするビルスを見て、悟空は神龍が自分が起きた時に用意していたジュースを啜りながら、そうか?と呟く。ちなみにビルスの分も用意していたということは、いつ来客が来てもいいようにする神龍の気遣いであろう。

「なあ、ビルス。じゃあよ、神龍の料理が出来るまで、食前の運動でもしねえ?」
悟空がジュースを飲み干した後、グラスを置いて拳を構える。ビルスは退屈そうな目をしながらしばらく黙っていた。

すると・・

「いいよ。体を動かした後のご飯は最高だからね。」
ビルスは組んでいた足を戻し、椅子から立ち上がる。

カイ 2016年02月01日 (月) 00時05分(3249)


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