歌帖楓月 |
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おはようございます。 こちらを見てくださる方がおいでかどうかは謎ですが。 新年、お年玉代わりの小話?というか設定?プロット?? を載せますね。 (ツイッターにも同じものを載せています。)
少し未来の話になります。 ロイエルが学校に通う時期が、ほんの少しだけある予定です。 その時の話です。
レオ君とロイエルの、途中までは友情、でも男の子だもんね事件 学校の夏期講習だけに参加することになったロイエルは、レオという同年の男の子と仲良くなる。 「友達になろうぜ!」「うん!」二人とも純粋にその気持ち。 夏期講習には、ほかに「やればできるくせにやらないんだよこの子」ルイセも参加。二人の意気投合ぶりを見て「まー、合う二人だろうとは思ってたけど」と思うが、同時に「友情ねえ」と、先のほころびも予見してる。 家に帰ってロイエルはゼルクに、お友達ができたことを報告する。 「レオっていうの! すごく元気がいい子で……(以下省略)」 ゼルクにっこり「男の子?」 ロイエルにっこり「うん!」 ゼルク(まずいことにならなきゃいいけど) 予感的中するんですなあこれが。 二人とも純粋な子なんですが。でもロイエルはゼルクから色々されてて艶つけられてる。 レオ君は、純粋ゆえに自分の下半身のミンミンゼミのことにあんまりかまけてない。 数日後、レオ君の両親不在のときにロイエルは家に誘われる。「一緒に宿題しよーぜ?」「うん!」二人とも他意はない。誓って他意はない。 なんだけど。 クラスで二人話す場合と、ほんっとうに二人きりで話す場合の空気の違いに、先に気づいたのはレオ君。男の子だからね。仕方ないね。 ロイエルって……めちゃくちゃ可愛いな……。 どきどき。 ゼルクから艶つけられてるから、仕草の一つ一つにぬぐえない色がついてる。 良い匂いするし。 どきどき。 ロイエルは、相手がどきどきしてることに「全く」気づかず、宿題に集中。 「ねえ、レオ。ここで使う公式って……」 押し倒される。 「え?!」 「ロイエル、」 キスされようとするのを「嫌。駄目!」と必死でブロックするロイエル。 「やだ! レオ、触らないで、やだ」 ロイエルは、ゼルクからきっちり「性教育」受けてるので、ゼルク以外には決して触れられたくないし触れさせない。 レオ君は、男の子としての力の差にものを言わせて、ロイエルの両手首を握って床に押さえつける。 「やだ!」 レオ君がロイエルの首筋にかみつく。愛撫とは程遠いのが、何もわかってない男の子たる証拠。 「!! 痛い! やだ、助けて、ゼルク!」 ロイエルの姿消える。同時に、見えない手がレオ君の額を強く「でこぴん」する。(byアインシュタイン)
『ゼルク、ロイエルを受け取ってくれ』 自宅の書斎にて、ノートパソコンに向かうゼルクに、アインシュタインの声が届く。 同時に、膝の上にロイエルが表れる。 「ロイエル、」 「……」 涙まみれの顔。首筋に噛み痕。乱れた髪。何があったか、ほぼ丸わかり。 「ぅ、」 ぼろぼろぼろ、と、涙が落ちる。 「ゼルク、」 ぅわぁん、と、ロイエルは、泣きながらゼルクにしがみ付く。 机を挟んで向かい側に現れるアインシュタイン。 「一緒に勉強してた男の子がロイエルに『おいた』したぞ」 アインシュタインは、自分の左首筋を、とん、と、人差し指で叩いて「ここを噛みつかれたとこで、こっちに移した」。 ゼルクにしがみついて、わんわん泣くロイエル。 まだ、ロイエルにはそちらの方面の「教育」が足りなかったなあ、と、思うゼルク。 「怖かったね。もう大丈夫」 ゼルクはロイエルの背中を優しくさする。 アインシュタインが「どうする? ことの経緯は俺が話そうか? それともこの子から聞く?」と尋ねる。 ゼルクは苦笑して「ありがとう。ロイエルが話してくれた分だけでいいよ。二人で話す」 アインシュタイン「わかった。じゃあな。また」 ゼルク「ああ。ありがとう」 半時後、ロイエルがなんとか泣き止む。 ゼルクはロイエルを抱き上げると、書斎の椅子から立ち上がって、ソファに腰掛け直す。ロイエルはゼルクの膝の上に抱っこされる。 ひっく、と、しゃっくりを上げながら、ロイエルが話す。 「レオの家で、」 「うん」 「一緒にお勉強してたの、」 「うん」 「そしたら、……ぅ」 涙ぽろぽろ溢れる。ゼルクがロイエルの背中を撫でて、ぎゅっと抱きしめる。わぁん、と、また、泣き声が上がる。 「いいよ。話したいときに話して? 怖かったね。ロイエル、大丈夫だからね」 「お友達って言ったのに、」 「うん」 「友達だって言ってたのに、……どうして? どうして、私のこと押し倒したり、キスしようとしたり、噛みついたり、したの?」 体の傷は少々で済んだが、心の傷が大きかった。 ゼルクは、先日、ルイセから、ロイエルとレオが二人でひまわりのように笑い合っている写真を見せられていたので、「年不相応に純粋そうな子だなあ、二人とも」と思っていた。それゆえ、今回の件は、男の子がよからぬ下心でロイエルを自宅に誘い込んだわけではなく、純粋に宿題をしているうちに、という流れなのだろうな、と、推測される。 ロイエルの髪をさらりと撫でて、額に、ちゅ、と、キスをする。 「友達だと思っていたんだと思うよ。そうだな、途中までは」 「途中、まで?」 「そう。それはきっと、レオ君が一番よくわかってると思うけど、」 びく、と、肩が揺れて、ロイエルがふるふると首を横に振った。 「聞きたくない。こわい」 「じゃあ、私の推測でいい?」 「ゼルクがしてくれる話なら、聞きたいの」 「うん。わかった。じゃあ、話すね? ロイエルもレオ君も純粋な子だけど。でもね、レオ君は男の子だから、女の子のロイエルより性欲が強い」 「……」 ぎゅ、と、ゼルクしがみつくロイエルを、しっかりと抱きしめ返してあげる。 「ごめんね。こわいね?」 「お話、聞きたいの。でも、こうしていて?」 「うん。つづき、話すね。レオ君自身も、気づかなかったんじゃないのかな。教室で、たくさんのクラスメート達に混じってロイエルと話すことと、家で、二人きりで近くにいて話すこととの、違いについて」 「……? なにが違うの?」 ゼルクはロイエルを大切そうに守るように、少し強く抱きしめる。 「ロイエルが自分だけを見て話してくれること、ロイエルの仕草を見てるのが、自分しかいないこと」 「? よく、わからないわ?」 「そうだよね。女の子だから、男の子のようには思えないからね。『二人きりの今なら、独り占めできる。手に入れたい』って、心のどこかが、それはきっと性欲の部分だと思うんだけど、欲してしまったんだろうね」 「そんなこと思われても困る。……嫌、」 「うん。きっと、レオ君自身も、そんな自分がいたことにびっくりしてると思うよ」 「……自分のことなのに?」 「もし知ってたら、きっと『友達の』ロイエルを家には誘わなかったと思う。そんな、卑怯な子じゃないでしょう?」 「うん、」
夕食はゼルクがミルクリゾットと温野菜サラダを作ってあげる。 お風呂は一緒に入る。ゼルクがロイエルの体を洗ってあげる。 「一緒に寝ようか? ロイエル」 「いいの?」 「うん。おいで」 ベッドに招き入れるゼルクに、ロイエルが「……わがまま、言っていい?」と伺う。 「うん。いいよ。なぁに?」 「あなたの肌に触れながら眠りたいの。だめ?」 にこ、と笑うゼルク。 「裸で抱っこしてあげればいい?」 「……うん、だめ?」 「いいよ。おいで?」 室温を2℃上げて、ロイエルと横になって上掛けを被る。 逞しい腕の中に、華奢で優美な身体がおさまる。 「おやすみ」 「おやすみなさい」
ロイエルが寝入ってから間もなくして、魔法使いがベッド脇に現れる。 「消そうか? 『おいたの痕』」 「頼む」 ロイエルの首筋から、青紫の歯形が消える。 アインシュタインが苦笑した。 「男の子が純粋すぎるのは、困るな」 「同感だ」
翌朝。 ゼルクの腕の中で目覚めるロイエル。悪い夢は見なかった。 「おはようロイエル」 すでに起きているゼルクが声を掛ける。 「おはよう、ゼルク」 する、と、長い指が、細い首筋を撫でた。 「昨夜、アインシュタインに、傷痕を消してもらったからね」 確かめようとする指が逡巡する。 「なにも、残っていない?」 「何も残っていないよ。大丈夫」 ゼルクの言葉を受けて、そっと、ロイエルは自分の首筋につけられていた噛み痕の部分を撫でた。嘘のように何もない。 「よかった」 「ね、大丈夫。朝食にしようか。……学校は、どうする?」 「……行きたくない、の」 「わかった。具合が悪いって連絡しておくね」
朝食は、トーストとヨーグルトとハムサラダにコンソメスープ。お茶は紅茶。 ロイエルはヨーグルトしか食べられなかった。 「ごめんなさい。せっかく用意してくれたのに、」 「気にしないで。あとは、もらっていい?」 「うん。おねがい」 「後片付けも私がするから。……今日は私に全部甘えて?」 「でも、」 「私がロイエルを甘やかしたい。駄目?」 「……じゃあ、……また、わがまま、言っていい?」 「なぁに?」 「だいて、ほしいの」
朝食後に1回、昼食後に1回抱いて、15時に一旦ロイエルを休ませ、ゼルクが彼女におやつでも食べさせてあげようかなと台所で準備しているところで、来客を知らせるインターフォン。 レオ君です。 『こんにちは! あの、俺、ロイエルに謝りに来ました!』 「……(苦笑)。ロイエルは出られないんだ。ごめんね」 『わかりましたすみません! これ、あの、お見舞いです!』 「(苦笑)ちょっと待っててくれる?」
「ルイセから聞いて! ロイエルがパッションフルーツジュースが好きだって言ってたから、これ! どうぞ!」 「(それはルイセの好物だね、とは言わないでおこう)ありがとう。気を遣ってくれて」 「……」 深々と一礼していたレオ君は顔を上げます。 すっきりと大人の笑顔を見せる、超絶かっこいい軍人お兄さん。 なんかもう、憶測しなくてもわかるというもの。 「あの、ロイエルって、」 「うん」 「ゼルクさんの、恋人、なんですか?」 「そうだよ?」 「すみませんでした!」 「君が謝っていたことは、ロイエルに伝えておくよ。それからね、」 「はい!」 「2度目はないからね? 覚えておいて?(にっこり)」 「すみませんでした!!!!」
「お見舞いの品」を台所に置いて、ゼルクがおやつの林檎ゼリーを持って寝室に入る。 「ロイエル、」 「……ん……、」 「おやつ持ってきたよ? 食べられそう?」 ベッドの上で微睡む女の子に、「林檎のゼリー」と言い加えた。 長いまつげに縁どられたまぶたが少し開いて、きれいな紅茶色の瞳を覗かせる。 左の頬に口づけして、「起きてみる?」、と、たずねると、ゆったりとうなずきが返ってきた。 なめらかな背中に左腕を差し入れて、上体を起こしてあげる。 すり、と、白シャツを着た胸板に頬を寄せると、ロイエルは、「脱いで?」、と、請う。 「おやつ食べ終わったらね。……また抱かれたい?」 「……うん、」 「じゃ、おやつ食べようね。昼食も少ししか食べてないでしょう?」 ゼルクはゼリーをスプーンですくってロイエルの小さな口に運ぶ。 「はい。あーんして」 「……」 ロイエルがゼルクを見上げる。 「ゼルクのお口から、食べたいの」 ゼルクがにこりと笑う。 「甘えん坊さん」 「だめ?」 「うれしいよ?」
翌日は別の意味で夏期講習に行けなかったロイエル。 事情はわかってるのでニヤニヤしているルイセと、事情がまったくわかってないのでどんよりなレオ。 放課後、ルイセが「レオ、今日も暗かったねー?」と明るく声を掛けると、はあ、と、ため息をつくレオ。 「ロイエル、今日も具合が悪いって……。俺、なんてことしたんだろ」 「まあいいんじゃない? 幸せにやってるみたいだよ? (パッションフルーツジュースは自分がもらいましたとは言わないでおく)」 「なんで俺がひどいことして、ロイエルが幸せになるんだよ。訳わかんないよルイセ」 「そういうのがわかんないから、ロイエルに酷いことしちゃうんだよレオ」 「はーっ。俺、ガキなんだろうなあ」 「うんそうだね!」 「いつもだったら腹立つけど、今回はルイセのそのはっきりした物言いがグサグサくるぜ。俺、いつになったら大人になれるんだろ。ロイエルと友達でいたかったのに」 「すっげえはっきり言うと、その股間のミンミンゼミを飼いならせるようになったら、じゃないかな?」 「ルイセお前ほんっと女子なのか心配になるけど、外見がどう見ても女子だもんなあ……はあ……」 「まあ、頑張れ! 少年! ロイエルは幸せみたいだから、心配すんな!」 「……はぁ……(ため息)」 友情と初恋とを同時に失ったレオ君なのでした。(一応終わり) ロイエルとレオの友情はうまくいかなかったけど、 ルイセとレオの友情(?)は、まあ、成り立ってるかな。
その数年後に、軍に入ったレオ君が、今度は異性としてロイエルに直球告白しますが、やっぱり玉砕します。ルイセ大笑い。しかたないね。
以上でしたー。読んでくださってありがとうございます。
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(621)投稿日:2020年01月10日 (金) 05時13分
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