(31) 宇宙 |
投稿者:Tomoko
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ここは、K国にある公立の小学校。サービスとハーレムが、今年通うようになった。 マジックは、いたずらっ子の弟ハーレムの親の代わりに、担任に呼びつけられた。 (新学期も始まったばかりだというのに、あいつと来たら……) 保護者代わりのマジックも、子供ということで、先方も同情したのであろう。お咎めはなしで済んだ。 子供ひとしきりお詫びが終わり、帰ろうとすると、相手が言った。 「マジックさん。少し見てもらいたいものがあるんだけど」 そういうと、弟の担任は、これでもないあれでもない、と机を引っ掻き回した。 「あった、これだ」 先生は、得意そうに、マジックに一枚の絵を差し出した。 「これ、ハーレムくんが描いたんですよ」 その画面には、わけのわからない幾何学模様がたくさん描いてあった。 「なんですか、これ」 「宇宙だよ」 そう言って、先生は、両手を大きく広げた。 「わからないかな。このスケールの大きさ。このカオスの神秘の素晴らしさ。この閃き、まさにただ者じゃない。ハーレムくんは、天才とは言われないかね?」 マジックは首をひねった。 確かに非凡な絵ではあるのだろう。しかし、いまいちピンと来ない。 双子達の兄のルーザーは、確かに天才と呼ばれていた。だが、ハーレムが天才と言われたことは一度もない。 マジックは吹き出した。 「私はハーレムくんを、『英才教育センター』へ送ることを望みますが。家族の無理解で、才能の芽がつぶれるのは勿体無い」 マジックは、それまでおかしがっていたが、『英才教育センター』の名を聞くと、急に体の芯が冷えてきた。 英才教育センター。マジックもそこに入っていた。主に幼稚園から高校生ぐらいの年齢の人間がそこで学んでいる。飛び級ありで、マジックは二年でそこを卒業した。 そこの教育たるや、半端なものではなかった。発狂する者も稀にいると聞く。 入学する場合、待っているのは、おそらく――地獄。 (冗談じゃない。こんなまぐれみたいな作品で、弟をあんなところに入れてたまるか) しかも、あそこは、K国の軍部と密接な関係を持っている。 父はこの頃、反K国の組織を造りあげつつある。よほど目先のきかない人間でない限り、謀反を企てているのは明らかだ。しかし、何故止めないかというと、その組織のトップ、クラウン達青の一族の軍事力に、依存しているからだ。――閑話休題。 マジックは、しばらく考え込んでいたが、やがて、口を開いた。 「いいでしょう。センターの試験に合格すれば」 「本当ですね」 「本当です」 「では、早速手続きをしてきますね」
さて、その夜―― 「ハーレム。おまえは、『英才教育センター』というところのテストを受けにいかなければならないんだが――そのテストは白紙で出していい」 マジックが告げると、ハーレムは、大きい眼を更に大きくした。 「本当?! お兄ちゃん!」 「ああ、許すとも! お兄ちゃんが許すとも! ただし、今回だけな」
後日。返ってきた答えは当然不合格。 天才を見出したと喜んでいた、担任の先生は泣いたという。
後書き K国という、なんかわけのわからないものが出てきましたが、これ、『光と闇』という小説にもあります。 軍事大国Kは、青の一族の、いわばパトロン的存在です。でも、K国の方が頼りにしているという。 話が逸れてしまいました。『英才教育センター』は、『女王○教室』に出てくる、『再教育センター』のパクりです。 何かわけのわからないものを描いて、『宇宙』を表現するのも、昔、ブロックで摩訶不思議な形を作って、『宇宙』を作った男の子が出演していたCMのパクりです。パクりが多くてすみません。
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2006年04月23日 (日) 22時33分 |
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