(33) 決意表明(続き) |
投稿者:Tomoko
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「こんにちはー」 アメリカザリガニのカオルがやってきた。 今、この家には、傷を負っているトットリと、留守番のコージとアラシヤマしかいない。 「おお、久しぶりじゃのぉ。カオルちゃん」 「お元気どしたかぁ?」 普通の人間が見たら、驚き口もきけなくなりそうな巨大ザリガニにも、コージ達は慣れたもので、平然と応対していた。 「トットリくんはいる? 眠っているのかしら」 トットリは、まだ床についたままだ。カオルはそぉっと顔を覗き込む。 「じゃ、トットリくんが目を覚ましたら、伝えてね」 カオルが、二人の方に向き直った。 「ミヤギくんねぇ、髪切るとき、土下座までしたのよ。トットリくんの為に」 「……それ、本当だらぁか?」 トットリが、薄く目を開けた。 「本当よ」 「――……ミヤギくん、僕の為に、髪切ったんだらぁか?」 「ああ、そうじゃ」 「どすわ」 コージとアラシヤマが交互に答えた。 「……あの、プライドの高いミヤギくんが、土下座までして……」 トットリの一滴の涙が、枕を濡らした。彼は、肘で顔を覆った。 「僕らぁは、ベストフレンドだっちゃ……」 「ところで、あんさん、急に起きて。今までのは、狸寝入りだったんどすか?」 「うつらうつらしていただけだっちゃ」 アラシヤマの言葉に、トットリは反駁するが、その声にも、いつもの張りはない。怪我のせいだろうか。 「ミヤギくん、ミヤギくん――……」 アラシヤマの言葉を一蹴した後、トットリは、本格的に泣き出した。 「大丈夫? トットリくん」 カオルが訊いた。 「アホらし」 アラシヤマが言った。 「トットリは、感激しているだけじゃけぇ」 年長のコージが、フォローに回った。 「じゃ、アタシはもう行くわね。シンタローさんとパプワくんにも、よろしくね」 カオルが告げた。 「ああ、達者でな」 「ほなな」 二人に見送られ、カオルは帰って行った。 「それにしても――あてつけられましたなぁ。わてももうちょっと髪が長かったら、切りに行きますよってに」 「ぬしは、右目の髪を切ったらどうじゃ? もっと視界が明るくなるじゃろ」 コージが尤もな発言をした。 「これは、わてのトレードマークどす」 「ころころ言うことが変わるやつじゃのぉ」 「髪切るのが友情の証なら、シンタローはんにも、髪切ってもらいたかったどすなぁ」 「そりゃあ、無理っちゅうもんじゃろう。シンタローには、シンタローのやり方がある」 アラシヤマは、シンタローしか見えていないからのぉ、と、コージは心の中で苦笑した。 でも、彼が求めていた仲間達が、すぐ傍にいるのに気付く日が、きっと来る。 コージは、視線をアラシヤマからトットリに移し、そちらに近づいて行った。 「ええ友達を持ったの」 コージは、トットリの頭をわしゃわしゃと撫でた。トットリが、涙目でこくんと頷いた。
後書き これは、『決意表明』の続編です。 トットリが主人公なんだか、アラシヤマが主人公なんだか、わかりませんね。それにしても、短いなー。 ほんとは、もう少しアラシヤマの台詞があったのですが、アラシヤマがひどいやつになったので、カットしました。
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2006年07月11日 (火) 13時58分 |
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