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(43) 特戦部隊の仕事 投稿者:Tomoko MAIL URL
 ある日の昼下がり、俺達は任務に勤しんでいた。
 その任務というのは……
「力に自信のある方、特殊能力を持つ方、特戦部隊に入隊しませんかー?」
 そう言って、ロッドが、俺の傍らでポケットティッシュを配っていた。しかも、ガンマ団内で(マジック総帥に怒られないといいけど)
 俺はリキッド。特戦部隊のルーキーってことになっている。俺がこの部隊に入ったいきさつは、お願いだから聞かないで。
「リキッドちゃん。何ボーッとしてるの。Gだって真面目にお仕事してんのよん」
 そうだ。俺は、俺達二人の対角線上にいるGを見た。
 Gは無言で、黙々と、廊下を歩く人々に、ティッシュを渡している。そして、胸板もりもりの、2M以上ある体格だ。その迫力におされて、「受け取らないとなんかされるんじゃないか」と思うのだろう。たいていの人は、逆らわずにティッシュをもらっている。まぁ、ティッシュだったら、使い道あるし。
 そして、残る隊員、マーカーは、こんな下らんことはごめんだと、エスケープを決め込んだらしい。
 俺も、どこかにフケようとしたところ、同僚のロッドにつかまった、というわけ。
「リキッドちゃ〜ん。俺らから逃げようたって、百万年はやいよ〜」
 でも、ティッシュ配りなんてなぁ。確か俺ら、戦闘が仕事じゃなかったっけ? それがこんなサラ金紛いの……。
 それをロッドにグチったら、
「仕方ないじゃん。隊長、この頃仕事回してくんねぇし。新人勧誘して来いっておっぽり出すんだもん」
との答えだった。
 ロッドは、なんだかんだ言っても、俺らの隊長、ハーレム(あっ、呼び捨てにしたことは内緒にしといて)に忠実なのか、それとも、ただ単に面白がっているだけなのか、いまいちわからない。
「えっとぉ、俺らの隊長は、逞しくって強くって、男らしくって……」
「競馬狂いの趣味はSMプレイの、アル中親父のどーしよーもない獅子舞です」
 ロッドが誘っている脇から、俺が真実を教えてやった。
 これは効果があった。
「行ってみる?」
「どうしようか」
などと命知らずなことを話し合っていた二人組(無知というのはおそろしい)は、たちまち逃げ出してしまった。
「何邪魔してんのよぉ。リキッドちゃん」
「黙れ。おまえのやっていることは、詐欺罪にあたる」
 しかし、そんなことでめげるロッドではなかった(少しはめげてほしい)
「特戦よいとこ一度はおいで。ブタ箱行かずに人殺し」
「やめろよ……著作権ぎりぎりの台詞を吐くのはよぉ……。それに、ガンマ団は殺戮集団じゃねぇか」
「オー、ベリーキュート」
 筋肉質の、大柄の男が言った。誰のことかと思ったら、俺のことらしい。
「なになに? リキッドちゃんに興味があるの?」
 ロッドが流暢な英語で話している。これには、俺も驚いた。
「イエス、イエス」
「よーし、じゃあリキッドちゃんを貸してあげましょう! ただし、対戦に勝ったらね?」
「対戦って?」
 俺が訊く。なんかイヤな予感がする。
「アームレスリングで、リキッドちゃんに勝ったら、ドレイとして好きなことやっていいよん」
 ぐわぁぁぁぁっ! やっぱりッ!
 逃げようとする俺の襟首を、ロッドが、ガッとつかんだ。
「だ〜か〜ら〜、逃げようったって、百万年早いよん」
 あーーーーーーーーーっ!

 いつの間にか設定された、腕ずもうの会場に、たくさんのギャラリーが来ていた。
 こういうときには人が集まるんだ。ヒマ人め。
「オー、俺、絶対負けない」
「こっちだって、ドレイになるわけにはいかないんだよ」
 一回目、俺の勝ち。
「オー、何てこった」
 えらく俺にご執心(?)だった大柄の男は、悔しげに頭を抱えながら涙を流した。
 二回目、俺の勝ち。
 三回目、俺の勝ち。
 ロッドがピューと口笛を吹いた。
「強いじゃん、リキッドちゃん」
 バーロー。これでも、ヤンキー時代は番張ってたんだ。
 それに、特戦でも鍛えられてる。こんな奴らにしたがうわけにはいかねぇ。
「なになに、アームレスリング?」
 そう言いながら現れたのは……
「しっ、獅子舞ッ! 獅子舞ッ!」
 俺は即座に逃げようとしたが、ロッドが押さえた。
「隊長もいかがっすかぁ? 勝ったら、商品はリキッドちゃんね」
「ん〜。おもしろそうだが、リキッドは既に俺の家来だしなぁ」
 いつの間にそうなったの?!
「じゃ、こうしましょうか。リキッドちゃんが勝ったら、特戦部隊を辞められるってのは?」
「ロッド……」
 特戦を抜けられるなんて、夢のような話だ。
 だが、この目の前の獅子舞は強い。
「何言ってやがんだ。リキッドは自分から入ってきたんだろうが」
 でたらめ言ってやがる! 獅子舞めッ!
 今まで通り、ロッドがレフェリーを務めることになった。
「レディー、ゴー!」
 ロッドはイタリア人のくせに、ときどき英語を使う。なぜなのかはわからなかった。隊長に付き合っているからかもしれない。が、今は、そんなこと気にしている余裕はなかった。
 なにせ、かかっているのは自由の身!
「おお、けっこう強いな、リキッド」
 獅子舞は、笑いながら、俺の健闘を褒めている。
 俺は全力を出し尽くして、隊長の手を机の上にねじ伏せようとした。
 が!
 がくんっ、と、俺の腕が倒された。
「ハーレム隊長の勝ちだ!」
 わぁぁっと、野次馬達が歓声をあげた。
「私の勝ちだな。ロッド」
「ちぇ〜、マーカーちゃんには敵わないよ」
「大穴狙いをするからだ」
 つーか、なんでこんなときだけ戻ってくんの? マーカー。
「と、いうわけだ。リキッド。これからも俺の下で働いてもらうぞ」
 隊長は、すっかり力を尽くした俺の手をひいて、意気揚々と自分の部屋へと向かって行った。

 翌日。
「隊長〜。なんすか? コレ」
「ん。仕事だ」
「仕事ぉ?」
「んな不満げな表情するな。おまえ、動物は好きだろ」
「そりゃ好きっすが……」
 犬、猫、ウサギの小動物に混じって、キリンやゾウやライオンの子供もいる。
 Gは実にうれしそうに(表情には出さないが)子熊にミルクを与えていた。
 隊長は、動物園からリベートをもらったに違いない。
(ここって、戦闘部隊のはずだよな……)
 俺は、思わず遠い目をしてしまった。

後書き
はいはーい。後書きです。
アームレスリング大会、というのは、ハガレンのパクリ? パクリといえば、動物たちのお世話のアルバイトもそうですね(これは忍たまから)
ロッドが言った著作権ぎりぎりの台詞というのは……『2821コカコーラ』からです。あと、伊達衆が歌っていた、『ロックンガンマ』からも。
大丈夫だとは思いますが、小心者な私としては、少しどきどきしてます。

2007年03月30日 (金) 18時12分




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