(46) シンタロー、ガンマ団脱出 その一 |
投稿者:Tomoko
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「いたか!」 「いいや!」 「あっちを探せ!」 口々に響き合う部下の声を耳に、青年は思った。 (へっ! そう簡単に捕まるかよ!) 青年の名はシンタロー。24歳。21のときガンマ団内で行われた格闘技戦で優勝し、それ以降、ガンマ団ナンバー1の座を恣にしてきた。 だが、彼は今、反逆者であった。ガンマ団の最高責任者、マジック総帥を筆頭とする青の一族の家宝、青の秘石を盗んだのである。 秘石のセキュリティーシステムは流石に万全で、シンタローが金の台座の上に乗っている秘石に手を伸ばし、持ち出した途端、ただちに発動した。 部下達は躍起になって彼の姿を捜している。秘石のことだけではない。今、彼に逃げられると、いろいろとことなのだ。 シンタローが逃亡を企てている――その噂は、ここ最近、あった。だから、秘石が持ち出されたときも、迅速に対応に移すことができたのである。 本部の扉という扉は全て閉められた。部下を総動員して、シンタローを捜す。 これでシンタローは袋の鼠、すぐに御用と相成る……はずであった。 (ちっ、まさかこんなに早く厳戒態勢が敷かれるとは、思ってなかったぜ!) シンタローは薄黄色の小型リュックを抱えた腕に力を込めた。この中には彼の頼みの綱、青い宝石が入っている。 掌にすっぽり納まるぐらいの、丸い球体。 これを持って、弟のコタローのいる日本支部へ帰ること――それが、シンタローが己に課した使命だった。 「お兄ちゃん――」 記憶の中のコタローは、天使のように笑っている。 (待ってろよ。コタロー。お兄ちゃん、もうすぐ日本に帰るからな) 辺りに追っ手の姿がないのを見てとると、シンタローは羚羊のように軽やかに走り出す。いつもの軍靴ではなく、平べったいゴム製の靴底の靴のおかげで、足音を立てずに済む。 ――と。 向こう側からやってきた五、六人の兵士達に姿を見つけられてしまった。 ガンマ団の団員であることを示す腕章と、緑の隊服。 シンタローは、ランニングシャツに黒いズボン、白い腰紐を前で結んで長く垂れ下げ――団員であることをやめた彼は、腕章も制服も必要なかった。 浅黒い肌をした、勇気ある男が前に進み出た。 「さ、そいつをこっちに寄越しな」 「嫌だと言ったら?」 「……かかれぃっ!」 どうやら頭らしいその男が命ずると、兵士達は束になってかかってきた。 ――面倒くさい。 やにわにシンタローはリュックを宙空へ放り投げる。 黒い髪がふわりと揺れた。 一瞬でけりがついた。男達は重なって倒れた。 リュックは放物線を描き、彼の手中にストンと納まった。 (雑魚が手間取らせやがって。これ以上遊んでいるわけにゃ、いかねぇな) シンタローは猛スピードで走り、廊下を突っ切り、部下をかわし、本部の正面玄関前に到達した。 無論、それは自動ドアであるが、今は電源を切ってあるため、作動しない。 「眼魔砲!」 彼の手から放たれた光の球がドアを突き破る。 彼はその穴から脱出した。 「待てっ!」 大勢の部下が追いかけてくる。 正面玄関からほどなく、眼前に崖が現れる。下は海。 シンタローは半分ほど振り返り、手を、軽くピースの形に作った。その瞬間、彼は、ほんの少し、別れを惜しむような目をした。 「あばよ」 そう言い残すと彼は、春もまだ浅い、冷たい海へと飛び込んだ。 彼は泳いだ。ここより少し離れた河岸に、船が用意してある。船、と云っても、一人乗り用のモーターボートだが。 とにかく、一刻も早くここを離れなければ。その思いが、シンタローを駆り立てた。
後書き そのまんま原作の情景を文章に移してみました。パクリです。 ノートに書いてあったので、ちょっと視写しました。
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2007年08月10日 (金) 14時49分 |
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