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(53) 先生と大佐が結婚した理由(わけ) 投稿者:Tomoko MAIL URL
「サーリッチ大佐」
 マジックが、扉を開けて、茶色のオールバックの髪の、軍服姿の男を呼んだ。
「グラントでいい。マジック」
 グラントは、鷹揚に答えた。
「でないと、君のことも、マジックではなく、マジック様と呼ぶぞ」
「えーっ、よしてくださいよ」
 グラントは、はははは……と笑った。
 グラントは、クラウンの友人で、この間までQ国にいたが、またガンマ団に舞い戻っていたのだ。
 彼とマジックは、マジックが幼い頃からの付き合いである。陰ながら、クラウン達をサポートしてくれたのだった。
 窓の外では少し大きくなったハーレムとサービスと、追いかけっこしながら遊んでいる女の人の姿が見える。
「あれは、どなたですか? 随分若くてお綺麗な方だ」
「ああ。イザベラ先生ですか? 僕達の家庭教師ですよ。呼びましょうか」
「いや、いい」
 グラントは、目を細めて、外の様子を眺めていた。
 彼女らがいなくなったかと思うと、やがて、ノックの音がした。
「マジック、お茶の時間よ。あら?」
 入ってきたのは、マジックの家庭教師、イザべラだった。
「まぁ、どなた? このハンサムなお客様」
「イザベラ先生、好奇心むき出しにするのは失礼ですよ」
「いやいや。私こそ、こんな美人に好意を持たれるのは、嬉しいことですよ。私は、グラント・ジェファーソン・サーリッチ。貴女はレディ・イザべラですね。マジックから聞きましたよ。フルネームを教えてくださいませんか?」
「私はレディというほど上等なものではないけど――イザべラ・ミリアム・ガーネットですわ」
 そのとき、イザベラの視線が、グラントの目を射抜いた。
「ガーネット。ざくろ石のことですか。素敵な名字ですね。青いガーネットって知ってますか? ホームズに出てくるんですけどね」
「私も、シャーロック・ホームズは大好きですわ。シャーロッキアンという程ではありませんが。私もこの名前は気に入っていますの。昔、お世話になったところでつけられた名前ですから」
「お世話になったところとは? もし聞いてよろしければ」
「孤児院です」
「どうして孤児院に? 失礼を重ねるようですが」
「父も母も、戦争で亡くなりましたもの」
 グラントは、手持ち無沙汰だったので、帽子を脱いで、両手で挟んで揉みしだくようにしながらこう訊いた。
「戦災孤児の方は、軍人はお嫌いでしょうか」
「さぁ。人によるのではないでしょうか」
「貴女は?」
「私? 嫌いだったら、こんな軍人だらけのとこ、とっくに辞めていますわ」
「そうですか」
 グラントが、やや緊張の解けた顔をした。
(ははーん。そういうことか)
「イザべラ先生、グラントのお相手、よろしくお願いします。僕は弟達とティータイムを楽しみたいので」
 そして、扉を後ろ手に閉めたとき、マジックは、むずむずするような感情におそわれた。それは、愉快な感情であった。彼は、ひゅうっと、口笛を吹きながら、スキップした。

 数ヶ月後、彼らは結婚した――。
 ウェディングドレスのイザべラは、光輝くばかりの美しさだった。
「先生、きれい」
 サービスが、感嘆の溜息を洩らした。
「ふん、馬子にも衣装だな」
 ハーレムが、憎まれ口を叩く。
「なんですって」
 イザべラは、尖った声を出す。だが、彼女は、ハーレムの気性を飲み込んでいた。綺麗なものを綺麗と言えない、ハーレムの素直でなさを、イザべラは、どこかで愛しているのであるらしかった。お世辞の言えないハーレムを、イザべラは、サービスと共に、気に入っていた。
 だから、少し眉を吊り上げ、怒った真似をするだけである。
「ほうら、地が出た。地が出た」
 ハーレムは笑っている。
「もう、仕様がない子ね」
 イザべラも、くすっと笑った。
 その笑い顔に、ハーレムは、一瞬、ぼおっとなった。
「ハーレム。ほんとは、イザベラ先生みたいなお嫁さんが欲しいんだろ」
 サービスがからかうと、
「ちっ、ちがわい! イザべラ先生なんて、おっかないからな」
「でも、今日のイザべラ先生なら、別だろ?」
「ん、ん、まぁ……」
 ハーレムは、赤くなりながら、満更でもなさそうだった。
 それを、ルーザーが、ニコニコしながら、見守っていた。
「グラントさんに、早く見せなくてはね」
 グラントの格好は、白いタキシードだった。
 りゅうとして、背格好の立派なグラントは、その姿も、映えて見えた。
 結婚式は、ニーナの葬式を出したのと、同じ教会で出すことになった。ニーナにも、花嫁姿を見せたい、というイザべラの申し出に、グラントもオーケイしたからだ。
「それでは。汝、グラント・サーリッチは……」
(見て。ニーナ。私、結婚するのよ。おかしいわね。そういうのには、一番縁遠かった私が。イザベラ・サーリッチ。素敵な名じゃないこと?)
 イザベラは、心の中で、ニーナに話しかけた。
 結婚式には、たくさんの人が詰めかけていた。テレビ記者もたくさん来ている。
 グラントが有名人だったのと、イザベラが、ガンマ団を統べる青の一族の家庭教師として話題の人であったことが原因である。
 ニーナもいない。ジュリアもいない。クラウンもいない。
 けれど、これからは夫がいる。夫が全てとはいわないまでも、優先順位が変わるのだ。
 時は流れていく。容赦もせず。
 けれど、たまには、陽だまりのような、暖かい恩恵を授けてくれるものなのだ。
 結婚は、決まるときは、早く決まる。
 それに、グラントとは、会った瞬間から、腹を割って話せた。縁、というものなのかもしれない。
 グラントとイザベラは、腕を組んで、ライスシャワーの降る道を、歩いて行った。

後書き
もう少し、独身時代のグラントとイザベラが書きたかったです。
最初、イザベラは既婚者の予定でしたが、独身という設定にして、またもや結婚させるという、後付けこの上ない、宙を舞っているような不安定な設定になりました。
私のせいじゃないもん。急にアイディアが降ってきたんだもん。
まぁ、イザベラ先生も、独身じゃ可哀想かな、と思って。
あ、でも、そしたら、サービス、他人の奥さんであるイザべラ先生を押し倒したっていうことになってしまいますね(汗)
どうしたらいいんだろう……う〜ん……。

2007年11月09日 (金) 11時45分




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