(17) ザ・チャレンジャー |
投稿者:Tomoko
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ルルル……ルーザーの部屋の電話が鳴った。 「はい。ルーザーですが」 「くくく……あんたの弟、ハーレムを預かっている。取り戻したくば、南方TV局の、5スタに来たまえ」 そこで、電話は切れた。 ルーザーは、早速、南方TV局に向かった。 (早く……早く! あの子が無事であればいい) やがて、目指す所へ到着した。 が、そこは、想像した所と、全く違っていた。 かなりの数の人々がうごめいている。 「あ、あの、ハーレムは! 僕の弟は!」 ルーザーはディレクターに言った。 「ああ、今来るから、待ってて、待ってて。君の出番も、あるからね」 「出番……」 「さあ。ルーザーくんも来たことだし、本番、行こうか。ルーザーくん、この台本、読んでてくれる?」 それから5分後、「3・2・1・キュー」の声で、本番が始まった。 (出番……) ルーザーの顔つきが変わった。 「さあ、今宵も『ザ・チャレンジャー』の時間がやってまいりました! 解説はこの私、ルーザーです! 今日のチャレンジャーは、ハーレムくん12歳! さあ、この少年と対決するのは……なんと、獰猛な雌ライオン! しかも、かなりおなかをすかしているようです! さあ、この二人の対決、軍配はどちらに!」 ルーザーは、いまや、全くの別人と化していた。 「兄貴ー! 助けてくれよー!」 ハーレムが叫ぶ。 「ハーレムくんは、椅子にくくりつけられ、動けない状態です。そのいましめをほどき、相手を倒すことができるか! さあ、今、雌ライオンの檻が、スタジオに運ばれてきました! 雌ライオンが、くびきから解き放たれました!」 「兄貴ー!」 ハーレムが叫んだが、ルーザーにその声が届いた様子もない。 ディレクター達は、襲われる危険のない場所で、その模様を見守っている。ルーザーも、そこにいた。 ハーレムは、まだ修行前で、青の一族に代々伝わる必殺技、眼魔砲も使えない。第一、今は、縄で後ろ手にしばられ、手の平を対戦相手に向けることもできない。 「なんで来ないんだよ! 兄貴ー!」 このままだと食われる。そんな恐怖が、ハーレムを襲っているようだ。 「ガルル……」 雌ライオンが、ゆっくりと近づく。 ハーレムは、なんとか自力で縄をほどいて立ち上がった。が、対手の動きの方が早かった。 ハーレムは覚悟を決めたようだ。 その時! 雌ライオンが、ハーレムに甘える仕草をした。 「おおっと! ここで思いもかけない展開が! この雌ライオン、どうやら発情期ででもあったのでしょうか! ハーレムくんのことを、雄ライオンと勘違いしているようです!」 ハーレムは、この頃から見事な獅子頭であった。 「雌ライオンに戦う意思がないとすれば、この勝負、ハーレムくんの不戦勝です!」 ルーザーの声に、ハーレムはへたへたと地面に座り込んだ。 「た……助かった」 「良かったですねぇ。ハーレムくん。おめでとう!」 「おめでとう、じゃねぇよ! ルーザー兄貴! なんだ、助けに来てくれたかと思ったら、こんなやつらとグ、グルになって! もうおまえなんか知るもんか!」 「ハーレム……」 ハーレムはわああっ、と叫びながら、スタジオを出て行った。 「ハーレム……」 ルーザーの手には、ちゃっかり、賞金の100万円と、副賞のハワイ旅行の券と、ギャラが握られていた。
後書き 元ネタは、「笑う犬の○活」だったかでやってた、レポーターのおばさんです。衝撃映像を伝えるためだったらば、実の息子でも売っちゃうの。うふっ。
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2005年01月10日 (月) 18時15分 |
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