(18) ザ・チャレンジャー2 |
投稿者:Tomoko
MAIL
URL
|
ルーザーの部屋の電話が鳴った。 「お宅の弟、ハーレムくんは預かっている。場所は……」 それは、南方TV局からのものだった。ルーザーは至急、指示された所へ向かった。 局内では、ディレィクターがわめき、たくさんのスタッフがわらわらと動いていた。 「待ってましたよ。ルーザーくん」 ルーザーは台本を読み終え、本番を迎えた。 「さあ、今日も『ザ・チャレンジャー』の時間となりました。解説はこのルーザーが務めさせていただきます! 今日のチャレンジャーは、おなじみハーレムくん!」 わぁっと、歓声と、拍手が沸き起こる。 ハーレムが、横に寝かされ、手足を台に固定された姿で出てきた。 「今回のチャレンジは、人間の胴体を真ん中から切断することです!」 「やめろー! 兄貴ー!」 ハーレムが叫んだ。 「この台には、種も仕掛けもありません」 「典型的なヤラセだな」 「どうせ手品だろ」 スタジオからヒソヒソ声がする。 「これは手品なんかじゃねぇ! 本当に種も仕掛けもないんだから! だから助けてくれ!」 ハーレムが哀願する。 「さあ、参ります。5・4・3・2・1・ゴー」 丸い電気ノコギリにスイッチが入った。ノコギリはウィーンと音を立ててハーレムに近づいてくる。 「やめろー! 離せー!!」 哀れハーレムは真っ二つ。血が飛び出て、見るも無残な姿となった。まるでスプラッタだ。 うう……というおめきが、場内から起こった。 それでも生きてるハーレムは言った。 「いてぇよぉ……」 「大丈夫。これはフィクションだから。死んでも生き返る」 ルーザーはエンジェルスマイル。 「こいつ……確かにまだ生きてるけどよぉ。死にてぇぐらいの痛さだぜ」 電気ノコギリが離れると、ルーザーはハーレムの胴体の、それぞれの切り口を接着する。すると、なんとくっついたではないか! 「さあ、これでおまえは自由だよ」 ルーザーが、ハーレムの手足の枷を外した。だが、ハーレムは泣いている。 「ちくしょう……フィクションだからってフィクションだからって……弟を番組の企画に売り飛ばす兄がどこにいる!」 「売り飛ばすなんて人聞きの悪い。ただちょっと協力してもらっただけじゃないか」 「ちくしょう! おまえなんか兄貴じゃねぇ!」 そう言って、前回のごとく、ハーレムは走り去った。 「ハーレム……兄さんのどこがいけないというんだい?」 ルーザーには、さっぱりわかっていないようであった。
|
|
2005年02月03日 (木) 22時48分 |
|