(37) ニーナ |
投稿者:Tomoko
MAIL
URL
|
※これは、オリキャラだけの小説です。
「ニーナ、その髪型、可愛いわね。縦ロール」 私は、クラスメートのニーナに、そんな言葉をかけた。 「あら、イザベラ。嬉しいわ。どうもありがとう。似合うかしら」 「似合う似合う。ところで、それ、どこの美容院でやってもらったの?」 私が訊くと、ニーナは、近所の、高いことで有名なヘアーサロンの名前を出した。 「おしゃれにお金かけるのはいいけど……アンタ、大丈夫?」 「何が?」 「何がって、私達、孤児院上がりで貧乏じゃない」 「そう言われたくないから、この髪にしたのよ」 「で、費用は、どこから出たの?」 「――……ジュリアに借りたわ」 私は、何か変だな、と思った。態度や、仕草に現れる、何か。 「あ、そう。ならいいけど」 私は、この場はさり気なく片付けた。
「え? お金? 最近は貸してないわよ」 ジュリアに訊いたところ、予想通りの返事が帰って来た。 「じゃあ、あの子、美容院代、どうしていたのかしらねぇ……」 私が呟くと、ジュリアが言った。 「あの子がお金持ちそうな男の子と歩いているのを見たっていう人がいたんだけど、私、そのときは本気にしなかったの。でも、もしかしたら――」 「もしかしたら?」 「ニーナ、その男の子に代金払ってもらったんじゃないかしら」 「ええっ?! ニーナが?!」 私は叫んだ。ニーナにそんなことをする根性があるとは思わなかった。 寮での規則でも、男女交際は厳しいというのに。 「ニーナ、今日出かけるって言ってたわ」 「本当かしら。後をつけてみましょう」 私に『とりあえず面白そうなこと』に好奇心をそそられたことは、否定できない。それはジュリアも同じだと思う。 ジュリアはお金持ちなので、いろいろな洋服がある。私達は、それと、サングラスと帽子をつけて、いざ出陣!したのだった。
「待ったー?」 ニーナが甘い声を出して走り出す。向かった先は――。 噴水の前。長髪の、目の大きな男の子が、本を読んで待っていた。なかなか可愛い子だ。私達と同じ年くらいね。多分。 「いや、今来たところだよ」 デートには慣れてないらしく、マニュアル通りの応対をする。 「じゃ、行きましょ」 「じゃ、行きましょ、だって」 私が草むらから、こっそり繰り返す。 ニーナの方が手馴れた感じだ。 「今日はどこ行く?」 「えっとねぇ……あ、あれ!」 ニーナは高そうな洋服を指差した。 「ああいうの、欲しいなぁ。似合うと思わない?」 「ああ。似合うだろうね。――買ってあげようか」 「ええっ?! いいの?!」 ニーナの驚き方が、いかにも嘘っぽい。 「ただし、大事にしなきゃダメだぞ」 「はぁい」 そのとき、ニーナが何気なさそうに振り向いた。 背中に冷や汗。バレた? だが、ニーナは、気がついていないようだった。 男の子は、本当のお坊ちゃんらしく、ドレスを一着、ぽんと買った。 店から出てきた二人は手ぶらだったから、後で届けるようにしたのだろう。
お次は喫茶店―― 私達は、ニーナ達から少し離れたところに陣を取った。 「どうしよう。私、参考書買うお金、ないのよね」 「参考書?」 「ええ? 五教科全ての参考書買うお金、ないの」 「だったら、これ使うといい」 ここからだといくらか知らないが、数枚のお札が。 「ニーナ! いい加減にしなさい!」 私は思わず立ち上がって叫んだ。 「そんな男の子騙して、可哀想よ! だいたい、参考書を買う費用なら、学校から賄われているじゃない!」 「ニーナ……僕のこと、騙してたのかい?」 「イザベラ! せっかくうまくいきそうだったのに。バカ、バカ!」 「どっちがバカよ。学校に言うわよ!」 「それだけは止めて! 私、あそこ辞めたら、他に行くとこないもの」 それは本当だった。私達は、奨学金で、孤児院から立派な寄宿学校へと移ることができたんだから。 「そうか……僕、もう君と会うのはよすよ。プレゼントは返さなくていいから」 男の子は、寂しそうに、喫茶店を出た。
「イザベラのバカ、バカ」 「はいはい。バカで結構」 「なんでジュリア、止めなかったの」 「だって、イザベラの言う通りだと思ったし」 「私が悪かったら、あなた達は何なわけ? 黙って私の後をつけたりして」 「それについては、私達が悪かったわ。ごめんなさい」 ジュリアが頭を下げた。 「興味があったのは事実だし」 ジュリアはそれも認めた。ジュリアってお人よしなのよね。お嬢様育ちだからかしら。 「でも、人を騙すのは、良くないことだわ」 私は釘を刺した。 「騙すなんて……ちょっと買ってもらって、お金もらっただけじゃない」 「それが良くないの!」 私とジュリアの声が、綺麗にハモった。 ダメだわ。この子。反省がないわ。 「アンタ、今までもこんなことしていたの?」 「……」 ニーナは俯いて、黙ったままだった。私はそれを、無言の肯定と受け取った。 「じゃ、今からでも、貢いでもらえばぁ? 私は知ーらない」 「ニーナ、お金が足りなくなったら、私のところに来てね。少しは都合できるから」 「いいのよ。ジュリア。こんな子放っておいて」 私は、ジュリアと二人で帰って行った。 ニーナの涙には気付かずに。 そう。思えばあのとき、ニーナは泣いていたような気がする――。
その頃から、ニーナは、昔のような格好に戻った――。
後書き これは、私のオリジナルキャラクター、ジュリアとイザベラとニーナの小説です。 ジュリアは、青の四兄弟の母親、という設定があります。イザベラとニーナは、その友達です。 ニーナはどういうわけか死んじゃって、イザベラは、青の一族達にとって、怖ぁい家庭教師になるのですが。 ジュリアはどうなるのか、まだわかりませんね。 昔はジュリアが理想でしたが、今では、イザベラさんの方が好きな私です。
|
|
2006年09月25日 (月) 16時20分 |
|