(4) マジシャン――MAGICIAN 1 |
投稿者:Tomoko
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ジャンはわくわくしながらテレビを観ていた。 デビット・カッパーフィールドの手品は華麗で大掛かり。バーミュータ・トライアングルの島を消したり、オリエントエクスプレスを消したり――と、消すネタばかりだが、とにかく、ジャンは、子供のように夢中で魅入っていたのだ。 「よーし! 俺もカッパーフィールドやハリー・フーディ二のような手品師になる!」
「おみゃあ、何しに来たぎゃ。ここは関係者以外立ち入り禁止だでよ」 かえるやヤモリのミイラ、黒魔術の怪しげな本、煮立っている液体のたたえられた鍋。様々の奇妙な代物の揃った部屋で、名古屋ウィローは渋い顔をしていた。 「ウィローさん、頼みがあるんだ。アンタをガンマ団一の手品師と見込んで!」 「ワシは手品師じゃにゃあ」 「俺、カッパーフィールドのような手品師になりたいんだ」 ジャン、人の話を聞いていない。 「ワシは忙しいから、他を当たるぎゃ」 ウィローはジャンに背を向ける。ジャンは、がばっと床に手をついた。 「そんなこと言わないで。お願いします。師匠」 本棚に向かおうとしていたウィローの足が、ぴたりと止まる。 「師匠……?」 ウィローはジャンのところに戻ってきた。 「おみゃあ、ちょっと、さっきの言葉、まっぺん言ってちょ」 「え……あの、師匠ってやつ」 「そうそう」 「師匠」 「まっぺん」 「師匠」 「くーっ。いい響きだぎゃ。まっぺん言ってくれるきゃ?」 「OK! し・しょう! し・しょう! し・しょう! し・しょう! ワーッ」 どんどんぱふぱふ〜っ。 紙吹雪でもぱっと散りそうな勢いである。 「わかったぎゃ。おみゃあさんの師匠、引き受けるぎゃ。ますは初歩的な手品から始めるでよ。魔術は日々是精進だで。早速レッスンだぎゃ」
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2003年08月27日 (水) 16時13分 |
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