(49) ガンマ団にて |
投稿者:Tomoko
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「総帥!」 執務室の扉をいささか乱暴に――急いでのこと故、仕方のないことではあったが――開けた者があった。 ふわりと耳に軽くかかった、柔らかい栗色の髪。聡明そうな切れ長の目。 さっきの荒々しい動作に似合わぬ、知的な雰囲気を全体に醸し出している。 事実、これほど沈着冷静で真面目な部下も他にない。 その彼が、いきなり部屋に飛び込んできたというのは、つまり、それほど取り乱しているというわけであった。 マジック直属の秘書の一人、ティラミスである。 マジックは目を細め、うろんげにドアの方を見遣った。 「なんだ。騒々しい。――ハーレムみたいに」 彼は、今、遠征で留守の弟の顔を思い浮かべ、一見、どこも似ていない、目の前の青年との共通点に苦笑した。 椅子が軽く軋む。 「ところで、どうした? ティラミス」 「シンタロー様が逃亡致しました」 「逃亡者に様をつけんでいい。――秘石もなくなっていたな」 マジックは石の乗っていた金の台に目を移した。 「シンタローは、本部を脱出。ただ今行方を捜索中です。――それから、ガンマ団中枢管理室のメインコンピューターに、日本支部のシークレットデータが、何者かによって調べられた形跡がありました」 「――コタローか」 データを開けたのは、シンタローに違いないと、マジックは悟った。一族か管理者のIDがないと、メインコンピューターにはアクセスできない。 マジックは、データに、二人目の息子の名を入れていたのである。 「日本支部の方に、『私が行くまで全て封鎖しろ』――そう伝えておけ。それと、警備の数は倍に増やしておけ、と」 「はっ」 ティラミスの姿が廊下に消えた。
後書き またもや、ノートに書きつけておいた短編です。
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2007年08月24日 (金) 09時48分 |
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