(51) JANUSコンビとライ 〜南の島の歌シリーズ〜 |
投稿者:Tomoko
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「待てっ! アス」 島の林の中で、ジャンは、アスを追いかけていた。 アスが、なんのかんのと言ってジャンをからかい、ジャンは怒ったふりをして、追いかけていたのだ。もちろん、本気ではない。 アスは、ジャンから笑いながら逃げていく。俊足だから、ジャンは簡単に追い付けない。 二人のレクリエーションのようなものだ。 「あっ、ライ」 ジャンが、小みちで散歩していたライと行き会った。 「ジャンか」 ライは、ふぅっと溜息を吐いた。 「なぁ、ライ。今日、どっか遊びに行かない?」 ジャンが誘う。 「行かない」 ライはにべもなく答えた。 「じゃあ、明日は?」 「明日も明後日も、ずーっと用事がある」 「……ストームになんか言われた?」 「なんであいつの名前が出てくるんだ。あいつは関係ない」 「じゃあ、どこか行こうよ。アスも一緒にさ」 ジャンはにへらにへらと笑っている。 「断る」 「冷たいなぁ。俺達、し・ん・せ・き、だろ?」 「いとこのはとこのまたいとこだがな。こんな奴と同じ血が少しでも流れているなんて、嫌だね」 「ライ〜」 「また今度な」 ライは、手をひらひらさせると、行きたい方にさっさと行ってしまった。 「あーっはっはっはっ。振られたな、ジャン」 アスが、腹を抱えて笑っていた。 「んだよ」 「でも、おまえもめげないな。よくアタックしていると思うよ」 「まぁね。長い付き合いだから。昔はよく遊んでたのになぁ……なんでこうなったんだろ。あっ、そうか」 ジャンは、ぽんと手を叩いた。 「きっと恥ずかしがっているんだな。もうお年頃だから」 ジャンは勝手に一人合点した。 アスは知っている。ライが自分に焼き餅を焼いているのを。 だが、こうやって振られ続けるジャンを見るのは楽しいから、教えるつもりはない。 「そろそろ飯にしよう」 「ちゃんと食べられる物を頼むぞ」 ジャンの提案に、アスが茶々を入れる。 「俺の作る食事は旨いぞ」 「何をいうか、この味音痴」 「そういう根拠はあるのか?」 「塩が好物なんて、貴様ぐらいのもんだ。それに、貴様の料理は、かなり評判悪いぞ」 「でも、おまえは喜んで食べていたじゃないか」 「青の一族に食事に呼ばれるまでだな。あそこの食事と比べれば、月とスッポンだ」 「じゃあ、おまえ、あそこで食べてくればいいだろ。同じ一族なんだから。ライもきっと歓迎してくれるさ」 すっかり気分を害したジャンは、畑を抜けて、赤と青の秘石が祀ってある城に行こうとする。 「まぁ、ヤシの実ジュースぐらいなら、呼ばれてもいいが……」 「ほんと?!」 ジャンの顔がぱあっと明るくなる。 「ああ。あれなら、ヤシの実さえ割ることができれば、簡単に飲めるからな」 「アス……もしかして、馬鹿にしてないか?」 「そのとおり」 「このっ!」 ジャンが拳固を振りかざすと、アスはまた逃げ出した。 「ヤシの実ジュース、頼んだぞ!」 「おまえを一発殴ってからだ!」 透視能力でそれを見ていた赤の秘石がこう嘆息した。 (やれやれ。ジャンは、さっぱり仕事しませんねぇ) (アスも、あんなことで番人が務まるのか。赤の番人と戯れているだけではないか。肉体を持たせたのが間違いだったかな) 青の秘石も、思念波で赤の秘石に意見を伝えた。 (肉体を持たせたのが間違いだったと言うんですか。最初に提案したのは、ジャンですよ。あの子が悪いとでも?) (おまえは過保護に過ぎる。誰もジャンが悪いなどとは思っていない。アスが、『肉体を持ちたい』と言うのは、自由意思だったしな) (でも、きっかけはジャンでしょう?) (そうだな) ジャンが、アスに与える決して少なくない影響力に、青の秘石も頭を抱えていた。もし、頭があればの話だが。 (二人が仲良くするのは、結構なことなんですがねぇ) と、赤の秘石は、友達と遊戯するのに夢中な子供の心配をするような、そんな思念波を青の秘石に送った。
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2007年09月08日 (土) 09時09分 |
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