(65) 長い戦いの始まり |
投稿者:Tomoko
MAIL
URL
|
ルーザーは途方に暮れていた。 「ハーレム、どうして僕の言うことをきかないの?」 弟のハーレムが昼寝の時間にも関わらず、なかなかベッドに入ろうとしないのである。買ったばかりの小鳥に夢中で。 「鳥ーィ、鳥ーィ」 ハーレムは抱きかかえている兄の腕から身を乗り出し、もみじのような小さな手を鳥籠に向かって嬉しそうに伸ばす。傍目には微笑ましい光景として映ったかもしれない。だが、どうしても弟達を寝かしつけなければならないと考えているルーザーは、この状況にほとほと困り果て、ため息混じりに呟いた。 「サービスはちゃんとお昼寝してるのに……」 ハーレムの双子の弟、サービスは既にベッドで夢の中だ。 幼い弟達に食後の昼寝をさせるのは、ルーザーの役目である。父や、兄マジックの忙しそうな様子を見かねて、自分から志願したのだ。 (そうか。じゃあ、お願いするよ) 尊敬すべきマジックから託された仕事なら、完璧に果たしたかった。 マジック兄さんを呼んできてもらおうか、そんな考えがちらと頭に浮かんだが、いやいや、こんなことで兄の手を煩わせてはなるまい。 そうだ。原因はこの鳥にあるのだから……。 「そんなにこの鳥のことが気になるのかい?」 優しい声でルーザーは言い、鳥籠の扉を開け、小鳥を取り出すと、弟の目の前で力いっぱい握りつぶした。小さな体から流れ出た血が、絨毯を汚した。小鳥は彼の手の中で微かに痙攣している。 「さあ、ハーレム。僕の言うことをきくんだよ」 ルーザーは笑った。邪気のない、無垢な笑顔。 ハーレムは、目を見開いていた。そして、しばしの沈黙の後、 サービスを起こしにかかったところを、ルーザーに止められた。サービスにまで起きられては、元も子もない。 「だめじゃないか。ハーレム。サービスまで起しちゃ。さあ、おまえも寝るんだよ」 ハーレムは震えながら、ベッドに入った。 「いい子だ。ちゃんと大人しくなったね。いい子は大好きだよ。ハーレム」 いい子にはご褒美をやらなければ。 「今度もまた、新しい鳥を買ってあげるよ。今度はどんなのがいい?」 「あの小鳥……あの小鳥が好きだったんだよ。ルーザーお兄ちゃん」 ハーレムは泣いていた。何故泣くのだろう? 「馬鹿だなぁ。鳥は鳥じゃないか」 勝ち誇った表情で。 人間や、青の一族に比べれば、あんな小鳥一羽、ちっぽけな存在だ。構うことはない。 だが、この事件で、ルーザーとハーレムの仲に大きな亀裂が走った。ハーレムの中で、この次兄に対する敵対心が芽生えるのに、そう時間はかからなかった。
後書き またパプワに戻って参りました。と言っても、今回の話は、原作のシーン殆ど丸写しですが(汗) 心理描写は、高校時代のノートを参考にしました。あの頃は熱かったなぁ……(遠い目)
|
|
2008年07月27日 (日) 06時59分 |
|