(83) リキッドへのプレゼント |
投稿者:Tomoko
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コタロー……いや、ロタロー、そしてパプワがぐーすかと眠っている。チャッピーも。 幸せだな、俺。 こんな素敵な島にいて、子供の寝顔を見られるんだから。 俺には平穏な日はない。特戦部隊にいた時はそう思っていたよ。 だから、この時間は、ささやかな神様からの贈り物だと思っている。 「いよぅ、リキッド」 かたん、と微かな音がして、現われたのは―― 「ししま……ハーレム隊長!」 「しぃーっ!」 隊長は指を唇に当てた。 あ、一応子供には気を使ってるんすね。 「ちょっといいか?」 「ええ、どうぞ」 冗談でも嫌です、なんて言ったら、眼魔砲食らいかねないからな。 「でもちょっとだけですよ」 と、一応釘は刺しとく。 「わあってるよ。これ、おまえにプレゼントだ。給料三ヶ月分」 プレゼント……? このケチな元上司から、こんな単語を聞くなんて。 それに、給料三ヶ月分と言っても、元々が安いんだもんなぁ。一ヶ月分の給料が十円だもんなぁ。 素直に喜べねぇ……どうせ後でお返しとか要求されるに決まっているんだ。 かといって、つっ返す勇気もなくて。 結局受け取ってしまう。 白い綺麗な小箱だった。 「……なんすか?」 「開けてみな」 中には十円切手が三枚……確かに給料三ヶ月分ではある。 けれど、隊長にしては気のきいた贈り物だ。 鳥の絵、花の絵、肖像画……意外に綺麗な、芸術品といっていいものだったりする。 そういえば、昔は切手集めが趣味だったっけなぁ、俺。切手の価値はわからなかったけど。 「あ……ありがとうございます。隊長。でも何で俺にこんなものを?」 「ばぁーか。今日はおまえの誕生日じゃねぇか」 あっ、そっか。 すっかり忘れてた。毎日忙しくて。ロタローが来てから更に忙しくなって――。 それに、俺は、永遠の二十歳だから、誕生日、と聞いてもぴんと来なくなっていて……。 「あ……あんがとございますっ!」 「おうよ。じゃ、帰って寝るわ」 「本当に、ありがとうございます」 「よせよ」 隊長は照れくさそうに笑った。 隊長が帰った後も、俺は何となく嬉しくて、切手を眺めていた。 「んー、どうしたの? 家政夫」 「まだ寝てなかったのか?」 「ああ、ロタロー、パプワ。これ、隊長からのプレゼント」 「ふぅん……ん?」 「どうした? ロタロー」 「これ全部、プレミアがついてるものだよ!」 「え? ほんとに?」 「うん。あーっ! その箱も売ると高いんじゃ!」 「えーっ?!」 そんな高いものを、獅子舞隊長が俺に? 「ねぇー、ちょうだい!」 「だーめ。これは俺がもらったもんなの!」 「じゃあ、パプワくんにお仕置きしてもらう?」 「……多分これをなくすと、俺が隊長にお仕置きされます……」 それに、せっかく隊長からもらったものだから、大切に取っておきたいんだよなぁ……。 「こうなったら力づくでも手に入れるよ、パプワくん!」 ロタローがパプワにアイコンタクトを送った。 「まかせろ!」 「うっぎゃ〜!」 俺達は一晩、追いかけっこをしていた。
ぼく、ロタロー。 家政夫が寝ちゃったから、僕らもプレゼント贈ろうね。 僕達が描いた絵だよ。 起きたら、これに気付いてくれるといいな……。
「ん? 何だ?」 リキッドが気がつくと、頭のそばにさっきの白い小箱が! 切手の無事を確かめようと、中を覗いてみると――。 「……何だ、これ?」 紙が畳んであった。広げてみると――。 「くくっ。あいつら……」 下手な絵と、上手なイラストが描かれている。下手なのは、きっとコタローの方だ。パプワは器用だから、絵も上手いだろう。 「サプライズだぜ」 リキッドはしばらく笑いが止まらなかった。 コタローも、パプワも、ぐっすり眠っている。 (疲れたかな) ずれた布団を掛け直してやる。 今日はご馳走作っかな。島のみんなも呼んで、パーティーにしてしまえ! 日頃の感謝を込めて。 (パパ、ママ。この島には、いい想い出がたくさんです) とりあえず腕を振るって朝食を用意しようと、リキッドは準備にかかった。
あとがき 捏造設定です。パラレルと呼んでもいいでしょう。 しかし、ハーレムが絡まないと話を書けないのか? 私は(汗)。
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2011年05月21日 (土) 07時47分 |
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