(6) マジシャン――MAGICIAN 3 |
投稿者:Tomoko
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「…………」 「…………」 異様な沈黙が辺りに流れる。 バイオ桜は確かに咲いた。――咲き過ぎた。 一面の桜、桜、桜。薄く色づいた花びらが風に舞い狂っている。 弁当もたくさんの花びらにうずもれている。 桜花地獄――そんな言葉が、一同の脳裏に浮かんで消えた。 「ドクター……」 怒りも爆発といった態で、シンタローが唸るように声を出す。 「なんですかぁ?」 高松はすっとぼけた声を出す。 「いくらなんでもこれはないだろうがッ! これじゃ狂い咲きだっつーの!」 「うーん。おかしいですねぇ」 「わぁい。お花がいっぱいー」 グンマは無邪気にはしゃいでいる。 「グンマ様に喜んでいただけるなら、私は満足です」 「はいはい。勝手にやってろよ。ったく」 シンタローは匙を投げた。 「これが花見というものか」 そう言ったのは、キンタロー。 「うっとおしい! これじゃ酒も飲めねぇぜ!」 ハーレムの酒の入った紙コップにも、こんもりと花びらが。 「こういうのも、趣向が変わっていいんじゃないかな」 「やれやれだな」 マジックは笑っているし、サービスは呆れ顔だ。 「おっ。そうだ。ジャン、さっきは悪かったな。また、あの手品やってくれよ」 シンタローは、「頼むぞ」といった具合に、ジャンの肩を叩く。 「え?」 「ほら、桜を葉桜に変えるヤツ」 「――あれ、ただの失敗なんだけど」 「どっちでもいいからやってくれよ。なぁ、みんなもそれでいいだろ?」 「賛成。これじゃ酒も飲めやしねぇ」 「そうだな」 「私はどっちでもいいんだけどね」 「仕方ないですねぇ。グンマ様とキンタロー様はいいですか?」 「うーん。ちょっと残念かな」 「俺も」 「いいだろ。グンマ、キンタロー。もう花見は充分堪能したろ。これじゃ掃除が大変だぞ」 「わかったよ。シンちゃん」 「つーわけだ」 シンタローがジャンに向き直る。ジャンは立ち上がった。 「3・2・1……それっ」 ジャンはまた手を叩いた。 花吹雪は、ますます勢いを増したようだった。 「えっと――成功しちゃったみたい」 ジャンは「てへっ」とかわいらしく笑ってみせても、おそらく許してもらえないだろうな、と思った。
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2003年09月08日 (月) 18時04分 |
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