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[249] 題名: 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 23時06分

          宇宙からの来訪者
 ドラグナーチームとの合流を決定したラー=カイラムはその宙域に向けて航行を続けていた。その間さして目立ったことはなかった。
「ティターンズやアクシズで動きはないか」
 ブライトはラー=カイラムの艦橋でトーレスに問うた。
「今のところは何もありませんね」
 彼は通信やレーダーを見ながらそれに答えた。
「やはりシャングリラやフロンティアでの戦いはほんの先遣部隊だったようです。どちらも主力はゼダン及びアクシズから動かしてはおりません」
「そうか、それは何よりだ」
 ブライトはそれを聞いて頷いた。
「だがもう一つ勢力がいるからな」
「ギガノスですね」
「そうだ。彼等が月にいることは大きいな」
「まともにこちらに圧力をかけていきていますからね。彼等も今のところは静かですが」
「だがギルトール元帥は連邦軍でも切れ者で知られた人物だ。油断はできないぞ」
「それはわかっております。ただ一つわからないことがあるんですよ」
「わからないこと?何だ」
 ブライトはそれを受けて問うた。
「いえね、ギルトール将軍っていえば連邦軍でも良識派だったじゃないですか」
「ああ」
 実際にそれで有名であった。有能であり人望も篤かった。連邦軍においては一年戦争のレビル大将に匹敵する人気を誇っていた。岡長官と並んで連邦軍を支える逸材の一人であったのだ。
「そんな人が反乱を起こすなんてどういうことでしょうね」
「真面目過ぎたのだろうな」
 ブライトはそれに対してこう答えた。
「あの人は優秀なだけではなかった。理想も持っていた」
「はあ」
「だがそれが暴走に繋がった。理想に燃え、正義感を持っているが故に今の連邦を許せなかったのだ」
 よくある話といえばそうなる。それ程連邦の官僚主義、地球至上主義は問題であったのだ。
「ましてや今の連邦軍は」
「艦長、それ以上は」
 ここでサエグサが止めた。
「おっと、そうだったな」
 ブライトはそれを受けて慌てて口を塞いだ。軍人として上層部批判はできないからだ。
「まあ気持ちはわかりますがね」
「ジュドー達なんかもう言いたい放題ですから」
「あいつ等はな。ちょっと勝手が過ぎるが」
「忍達は軍籍なのに言いたい放題ですけれどね」
「あの連中はまた特別だろ」
 トーレスとサエグサはそう話していた。ブライトはそれを聞きながら考え込んでいた。
「艦長、どうしたんですか」
 そんな彼にサエグサが声をかけてきた。
「あ、いや」
 ブライトはそれに応えて顔を上げた。
「いや、今度合流するドラグナーチームだがな」
「何かあったんですか?」
「彼等も本来は軍籍ではないそうなのだ」
「そうなのですか」
「ほんの偶然で乗り込んでそのままパイロットになったらしい。アムロやカミーユと似ているな」
「それでパイロットになるんだから世の中不思議ですよね」
「だがパイロットとしての技量はそれなりにあるらしい。一応将校待遇ということになっている」
「パイロットですからね」
 連邦軍においてはパイロットは将校となっている。責任が伴うからである。
「だが実際は下士官にかなりしごかれているようだがな」
「ははは、軍じゃよくある話ですよ」
「そうそう、軍といえば鬼軍曹ですからね」
 実際に軍隊においては士官より下士官の方が重要視されるのだ。将校で戦争をするわけではない。下士官で戦争をするのである。その為先任下士官ともなればその発言力はかなりのものである。彼等がいなくては軍は成り立たないのだ。
「よくわかったな。その三人を鍛えているのは軍曹だ」
「誰ですか?」
「ベン=ルーニー軍曹だ。知っているか」
「知らないですねえ」
「別の部隊でしょう。ちょっと聞いたことが」
「そうか。部隊では何でも鬼軍曹で名を馳せているそうだがな。その三人をしごきにしごいているらしいぞ」
「それでその三人は言う事を聞いているんですか?」
「甚だ疑問らしい」
「でしょうね」
「うちの小僧達もたいがいなものですから」
 二人はそれを聞いて納得したように頷いた。
「アムロ少佐みたいに素直な人ばかりじゃないからなあ」
「アムロだって最初はどうしようもない奴だったぞ」
 ブライトはそれを聞いて苦笑しながら言った。
「そうだったんですか」
「ああ、一年戦争の頃はな。いじけてばかりいて本当にな。軍人としての意識も全くなかった」
「意外ですね。ロンド=ベルの伝説のエースパイロットが」
「よく喧嘩もしたさ。時には殴り合いになった」
「艦長も若かったんですね」
「そうだな・・・・・・と何を言わせる。私はまだ二十代だぞ」
「あ、これは失礼」
「全く」
 ブライトは年齢のことを話に出され少しムッとした。
「確かに老けているとは言われているがな」
「はあ」
「だがあの頃は私も若かったな。士官学校を出たばかりで」
 そう言いながら昔を懐かしむ目をした。
「何だかんだ言って自分で認めてるんじゃないか?」
「ああ。何かそういうところがアムロ少佐とそっくりだな」
「行動がいつも一緒だったから似るんだろ」
「成程」
 二人はヒソヒソとブライトに聞こえないように話をしていた。ブライトはそんな二人に気付かず昔を思い出していた。
「思えば頼りない艦長だったと思う。だが多くの戦いを乗り越えて私もアムロも変わった」
「とりわけアムロ少佐は」
「そうだな。あそこまで凄い奴になるとは正直思わなかった」
「そうだったんですか」
「連邦の白い流星。今ここにいないのが残念だ」
「確かに。アムロ少佐もいるとグッと楽になるでしょうね。今何処におられるんですか?」
「丁度今ニューガンダムの再調整中だ」
「そうなんですか」
「合流はもう暫く先になりそうだ。まあゆっくり待てばいい」
「そうですね。ところで話は変わりますが」
「何だ」
「火星の話は聞いていますか」
「ああ、何でもバーム星人というのが来ているそうだな」
「ええ。何でも母星が爆発してここまで来たとか。火星に移住を求めているそうですよ」
「そうそう簡単にはいかないだろう。火星には我々も移住を進めている」
「はい。ですから今連邦政府と交渉中です。とりあえずは彼等はここまでの航海に使った宇宙船にいるそうです。何でも小バームとかいうそうです」
「そうなのか。宇宙人といっても困っている相手には手を差し伸べたいな」
「普通はそう考えますよね」
 トーレスはここで少し嫌そうな顔をした。
「ああ。何かあるのか?」
「いえ、三輪長官がね。今回の件で強硬に反対しておられるそうなんです。異星人を太陽系に入れるとは何事だと」
「馬鹿馬鹿しい。じゃあうちのミリアはどうなるんだよ」
 サエグサがそれを聞いてそう言った。
「ミリアやマクロスについてもかなり文句を言っていたらしいぜ、あの人は。周りが止めたらしいが」
「だろうな。周りの者も大変だ」
 サエグサはそれを聞いて妙に納得した。
「火星の方は今交渉が行われている最中らしいな。向こうからは最高指導者であるリオン大元帥という方が自ら出ているらしい」
「へえ、最高指導者御自らからか」
「ああ、でこっちは竜崎博士だ。火星開発の責任者のな」
「あの人なら問題はないな」
 ブライトはそれを聞いて言った。
「落ち着いた理性のある人だ。交渉は順調にいくだろう」
「そうなんですか」
「ああ。だからこそ火星の開発の責任者になったしな」
 ブライトは二人にそう答えた。
「そちらは安心していいな。木星よりも安心できる位だ」
「ああ、木星ですか。あっちはナデシコが活躍したらしいですね」
「ホシノ=ルリ少佐だな。連邦軍で最年少の艦長らしいな」
「そうらしいですね。何でもえらく可愛いとか」
「へえ、そりゃ会ってみたいな、一度」
「止めておいた方がいいと思うがな」
 ブライトは二人にそうクギを刺した。
「何でですか?」
「綺麗な薔薇には棘があるぞ」
「そういえばそうですね」
「うちなんか特に」
「そういうことだ。結城やリューネで懲りているだろう」
「あんなジャジャ馬はもう御免ですよ」
「あとアスカも。何かうちの部隊って問題児ばかりですからね」
「おい、そんなこと言ってるとまた会うぞ」
「うわ、縁起でもねえ」
 トーレスとサエグサはそんな話をしていた。ここで通信が入った。
「こちらアイダホ」
「こちらラー=カイラム。状況はどうか」
「こちらは異常はない。そちらはどうか」
「こちらも異常なし」
「了解。それではパイロットの合流をこれより執り行う。用意はいいか」
「こちらの準備はいい。では予定通り執り行おう」
「了解」
 こうしてパイロットの合流がはじまった。まずは一機のシャトルがラー=カイラムに入った。
「ダグラス中尉とルーニー軍曹が来られました」
「よし。後は問題のドラグナーだな」
「今出撃が確認されました」
 モニターを見れば三機のロボットがいた。それぞれ装備が違う。
「一つは接近戦用、一つは遠距離戦用、一つは偵察用かな」
 それを見たブライトは呟いた。
「その通りです」
 ここで横に来た一人の金髪の男が答えた。もう一人はいかつい顔立ちの男であった。
「はじめまして。ダグラスです。階級は中尉です」
「ベン=ルーニーです。階級は軍曹です」
 二人は敬礼してそれに答えた。
「この艦の艦長ブライト=ノアだ。階級は大佐だ」
 ブライトも返礼して答えた。
「以後宜しくな」
「ハッ」
 二人も返礼した。そしてモニターに目を移した。
「あれがドラグナーです。それぞれの戦闘目的に合わせて作られました」
「見たところ三機が一組になって戦うのに向いているな」
「そうですね。確かに」
 これにはダグラスも同意した。
「ただパイロットはまだまだヒヨッ子ですがね」
「ほう」
「態度も大きいですし。命令違反なんかしょっちゅうですよ。階級だけはいっちょまえですがね」
 ベンがここでこう言った。
「まあおかげでしごきがいがあるというものですよ、ははは」
「何かここまで台詞がピッタリな人も珍しいな」
「ホント。軍曹になる為に生まれてきたような人だな」
 トーレスとサエグサはベンを見てヒソヒソとそう話し合った。
「メタルアーマーはまだ試作の段階でして」
 ダグラスはブライトに説明を行っていた。
「あの三機はその試作機なのです」
「それに今のパイロット達が偶然乗り込んだらしいな」
「はい。しかもパイロット登録させまして。止むを得ず軍歴にしたのです」
「本来なら兵士にするのですが。何しろパイロットということで。仕方なく准尉の階級を暫定的に与えることになりました」
「そういえばロンド=ベルには軍に籍を置いていないパイロットが大勢いますな」
「ああ、その通りだ」
 ブライトはダグラスにそう答えた。
「だが特にこれといって問題は起こっていないがな」
「そうなのですか。ではあいつ等もそうした方がよかったかもな、ベン軍曹」
「同意です。全く奴等ときたら」
「どうやら相当な連中のようだな」
「否定はしません」
 ベンはそれに答えた。
「今までギガノスのメタルアーマーやマスドライバーよりもあいつ等に手を焼いていた程ですから。難民も乗せているというのに」
「アイダホは難民船に偽装しているのだったな」
「はい。実際に難民も乗っております。こちらに協力してくれる技官と学校の先生、あと月から逃れてきた少女ですが」
「また妙な組み合わせだな」
「他の難民は安全な場所で降ろしましたので。三人だけとなりました。その三人もラー=カイラムに来ております」
「そうか」
「三人共軍への協力を希望しておりますが。如何致しましょうか」
「喜んで迎えると伝えてくれ」
 ブライトはダグラスの問いに対してそう答えた。
「どうも昔からそういうことには縁があってな。慣れている」
「そうですか。それなら」
「うむ。三人の名を聞いておきたいのだが」
「リンダ=プラート、ローズ=パテントン、ダイアン=ランスの三人です」
「そうか、わかった。では三人には後で皆に挨拶するように言ってくれ。ドラグナーのパイロットの三人、そして君達と一緒にな」
「ハッ」
「了解しました」
 二人は再び敬礼してそれに答えた。
「まずはドラグナーの収容が終ってからだ。さて、と」
 ここでレーダーに反応があった。
「艦長、レーダーに反応が」
 すぐにトーレスが報告した。
「まさか」
 それを聞いたダグラスとベンの顔が一変した。
「敵か」
「この反応は」
 トーレスはブライトの問いに対してレーダーから目を離さずに答えた。
「間違いありません。数十機程です」
「やはりな。いつもこうした時にこそ来るからな」
 敵と聞いてもブライトの態度は変わらなかった。
「モビルスーツ隊及びバトロイド隊に出撃させろ。すぐにだ」
「わかりました」
 ブライトはすぐに指示を下した。
「ドラグナー達を守れ。いいな」
「はい」
 こうしてすぐにモビルスーツ達の出撃がはじまった。ブライトはその指示を下しながら別の指示を出していた。
「本艦はアイダホの護衛に回る。いいな」
「わかりました」
「アイダホを」
「当然だ」
 ブライトはダグラスとベンの問いにそう答えた。
「アイダホは武装は弱いと聞いている。ならばラー=カイラムで援護するのが当然だ」
「はい」
「心配はいらない。アイダホは必ず守る。安心してくれ」
「わかりました」
 彼等はブライトのその態度にかなり驚いていた。連邦軍の将校には味方を見捨てて逃げる者も多いからだ。三輪に至っては戦えない者は不要とまで言う始末であった。それを考えるとブライトの様に常識のある態度は連邦軍においては常識ではなかったのである。
(この人は信用できる)
 二人はそれを見てそう確信した。そして彼の指示に従い艦橋に残った。ドラグナー達に命令を出す為である。
 その頃三機のドラグナーは敵に囲まれようとしていた。
「ちぇっ、ここでも敵かよ。次から次にときやがって」 
 白いドラグナーに乗る東洋人の青年が不満を爆発させた。彼の名はケーン=ワカバという。元々はコロニーのスクールの落ちこぼれ不良訓練生であったが偶然ドラグナーに乗り込みパイロットとなった。いささか短気で直情的な青年である。
「もてる男は辛いね」
 これに青い両肩に砲を装備したメタルアーマーに乗る黒人の青年が少し茶化しながら答えた。彼はタップ=オセアノ、ケーンと同じスクールの訓練生である。やはり同じ理由でドラグナーに乗り込んでいる。見たところかなりお気楽な青年のようである。
「あの中に女の子がいるとはとても思えないがな」
 そして円盤に似た頭のメタルアーマーに乗る白人の若者が最後にそう言った。彼もやはり訓練生でライト=ニューマンという。先の二人よりは気品があるようである。
「どうせまたあのギガノスの蒼き鷹なんだろうな」
「タップ、あのキザ野郎の名前出すのは止めろ」
 ケーンがすぐにそれに突っ込む。
「けどよお、実際に目の前にいるぜ、ほら」
「おやおや、マギーちゃんもそう言ってるよ」
 ライトがそれを受けて応えた。
「あのお坊ちゃん達も一緒だぜ。どうする?」
「どうするって一つしかねえだろうが」
「ほんじゃ戦いますか、いつも通り」
「俺達も軍人になってきたなあ」
「・・・・・・タップの何処が軍人なんだよ。ラッパーの方がピッタリくるじゃねえか」
「そうそう、俺ってパッパラパーだから・・・・・・ってケーン、何言わせるんだよ」
「自分で言ってるじゃねえか。おい、そんなことよりもう来たぜ。相変わらず動きの速い奴等だ」
「タップ、まずは御前さんの仕事だぜ!ドラグナー2の力見せてくれよ」
「わかってますって。ほいさ」
 ここでタップは両肩の砲で発砲した。これによりまず一機撃墜した。
「よし、行くぜライト!」
「わかってますって!」
 そして他の二機のドラグナーが剣を抜いた。
「俺はここでいつも通りバカスカ撃つからよお」
「ケーンは突っ込め!フォローは俺がする!」
「よし来た!じゃあいつものフォーメーション行くぜ!」
「おう!」
 他の二人がそれに応える。こうして三機は敵に向かって行った。
「素人らしいと聞いて驚いてこっちに向かったけど」
 戦場に到着したモビルスーツ隊の中でキースがポツリと呟いた。
「あの三人かなり強くないか?押しまくってるじゃん」
「それもたった三機で五十機程に向かってるし。相当腕に自信があるのか?」
 コウもそれを見て首を傾げた。
「それか単に無鉄砲なだけか。アムロ少佐でもあんなことはしないぞ」
 バニングが呆れたように言った。それが正解であった。
「まあとにかく彼等を援護しよう。あのままだと危ないしな」
「そうだな。じゃあスカル小隊でまず突っ込むぞ」
「了解」
 フォッカーが通信で他の者に対して言う。皆それに頷く。
「よし、スカル小隊突撃だ!道を開けるぞ!」
「はい!」
 フォッカーの指示に従いバトロイド達が動く。まずはイサムとガルドの乗機が変形してファイターからバトロイドになる。そして
敵に肉弾攻撃を仕掛ける。
「ほらよ!」
「食らえ」
 イサムとアラドのバトロイドの攻撃を受けた敵が吹き飛び爆発する。そしてそこに開いたところにバルキリー達が雪崩れ込む。これで戦線が崩れた。モビルスーツ隊がそこに続く。
「大尉、このままでは!」
 メタルアーマー隊の中央にいる青い三機のメタルアーマーがそのすぐ後ろの紫の機体のパイロットに言った。
「わかっている。バルキリーは私が引き受ける」
 金髪をオールバックにした男が答えた。彼こそギガノス帝国きってのエースパイロット、ギガノスの蒼き鷹ことマイヨ=プラートであった。
「見たところロイ=フォッカー少佐や一条輝少尉もいるな」
「はい」
「相手にとって不足はない。御前達プラクティーズはいつもの三人に向かえ」
「わかりました」
 青い機体に乗る三人の青年将校達がそれに頷いた。
「それでは行きます」
「うむ、頼むぞ」
 マイヨとプラクティーズは別れた。そしてそれぞれの敵に向かった。
「何でえ、ギガノスの蒼き鷹は向こうに行っちまったぜ」
「で、来るのはいつもの三人組か」
「懲りないねえ、御前さん達も」
「馴れなれしく言うな!」
 それを聞いたプラクティーズの面々が怒って応えた。
「我々は貴様等とは違う!」
 黒髪の青年が言う。ウェルナー=フリッツという。
「ギガノスの理想を背負っているのだ!」
 金髪の青年が続く。名をカール=ゲイナーという。
「その通り、我々は選ばれたのだ!」
 そしてオールバックの青年が最後に言った。ダン=クリューガーである。
「貴様等地球の者と一緒にするな!」
 彼等の青い機体は見ればそれぞれタイプが違っていた。ケーン達のそれがそれぞれドラグナー1、2、3のそれぞれのタイプであるのに対して彼等のそれはゲルフと呼ばれるギガノスのメタルアーマーの派生型でゲルフ=マッフ、ヤクト=ゲルフ=マッフ、そしてレビ=ゲルフ=マッフの三タイプであった。なおマイヨの乗っているのはファルゲン=マッフという特別な機体であった。見ればドラグナーにもモビルスーツにも匹敵する火力と機動力があるようである。
「ヘン、何言ってやがる」
 しかしケーンは彼等の言葉を聞いても怯まなかった。
「言ってることがジオンと全然変わらねえじゃねえか」
「何っ、我々を奴等と一緒にするか!」
「だったらどう違うんだよ」
 タップもそう反論した。
「そうそう。御前さん達の主張はあんた達の嫌いなティターンズやネオ=ジオンと全く一緒だぜ。どうして気付かないのかね」
 ギガノスは連邦政府だけでなくティターンズやネオ=ジオンとも敵対関係にあるのだる。彼等は宇宙で互いに抗争を繰り返しているのだ。ライトはそれを知ったうえで彼等を皮肉ったのだ。
「まあナチスとソ連もそうだったし。案外人間ってのは似た者同士だとかえって仲が悪くなるもんかねえ」
「おい、それ位にしておけ」
 ダンが我慢しきれなくなり言う。
「我がギガノスをこれ以上侮辱することは許さんぞ」
「おやおや、言葉に暴力ですか」
「暴力はんた〜〜い」
 タップが茶化す。
「といいつつ御前の手に持っているのは何だよ」
 ケーンがタップのドラグナーの手にあるレーザーソードを指摘する。
「これか?まあ正当防衛ってとこかな」
「ヘッ、よく言うぜ」
「とにかくだ」
 プラクティーズは彼等の軽薄ともとれるやりとりにさらに怒りを増した。
「貴様等に我がギガノス、ギルトール閣下の崇高な意志がわかってたまるか」
「本当にジオンそっくりだな」
「ケーン、それは禁句だぞ」
 ライトは制止しているようで実は彼等を挑発していた。
「今それを見せてやる。今度こそ覚悟しろ!」
「それを言ってもう何回会ったのやら」
「タップ、まだ五回目だ」
「あれ、まだそれだけか。意外と少ないな」
「他はあのギガノスの蒼き鷹だったからな。多く見えるんだよ」
「じゃあお話はここまで。あちらさんもやる気満々だし」
「やりますか」
「おうよ!」
 こうして三対三の戦いがはじまった。互いに一歩も譲らない。それはフォッカー達も同じであった。
「ほお、これが噂に聞くギガノスの鷹か」
 フォッカーはマイヨの乗るファルゲン=マッフの攻撃をかわし嬉しそうに呟いた。
「噂以上の動きだな。これは面白い」
「あれがロイ=フォッカーか」
 それはマイヨも同じであった。
「見事な動きだ。マクロスきってのエースと謳われただけはある」
 彼もまたフォッカーの腕を冷静に見極めていた。
「私の相手はどうやらあの男のようだな」
「おう」
 フォッカーも周りの者に声をかけていた。
「あいつは俺に任せろ。いいな」
「はい」
 皆それに従う。そして両者は互いに睨み合った。
「行くぜ」
「参る!」
 激しい移動を展開しながらドッグファイトに入った。まるで二匹の猛禽が戦う様な凄まじい一騎打ちが幕をあけた。
「くらいなっ!」
「何のっ!」
 フォッカーのバルキリーの攻撃をかわす。そしてミサイルを放つ。だがフォッカーはそのミサイルを巧みにかわした。
「まだまだっ!」
 その間にも戦いは続く。戦局は次第にロンド=ベルに有利になろうとしていた。だがその時異変が起こった。
「ムッ!?」
 レーダーを見ていたトーレスが声をあげた。
「どうした」
「新たな敵です」
 ブライトにそう答える。
「敵!?ギガノスか」
「いえ、違います。これは」
 トーレスは反応を見ながら答える。


[248] 題名:超電磁の力 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 22時59分

               超電磁の力
 厚木においてダンクーガと合流した大空魔竜隊はビッグファルコンに向かっていた。そこでコンバトラーX及びボルテスXと合流する為である。そしてそれは順調に進んでいた。だがこれを快く思わない者達もいた。
「恐竜帝国も敗れたようだな」
 地下深く、岩で覆われた暗い一室に設けられた人骨の玉座においてククルはイキマ達と話していた。篝火が彼等を照らし出している。
「はい、そのようで」
 それにミマシが答える。
「その結果奴等はダンクーガと合流しました」
「さらに戦力を増強したということか」
「残念ながら」
 不機嫌を露わにするククルにもそう答えるしかない三人であった。
「そして奴等は今どうしておる」
「既にビッグファルコンに入りました」
「ビッグファルコンにか」
「はい。そこでコンバトラーX及びボルテスXと合流する予定のようです」
「まずいのう」
 ククルはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「これ以上奴等に戦力を増強させてはならんぞ」
「それはわかっております。しかし」
「しかし。何じゃ?」
「今我等は謎の敵にこの基地を襲撃されその回復に努めなければなりません。今動くのは」
「できぬというのか」
「はい」
 アマソが答えた。
「これはミケーネ帝国も同じようです」
「あの者達もか」
「彼等の基地もかなり手痛いダメージを受けたようでして」
「まことか」
「どうやら。その結果各地に送り込んでいた将軍達が戻っております。そして暗黒大将軍自ら基地の修復にあたっております故」
「深刻なようじゃな」
「はい。こればかりは如何ともできませぬ」
「よい。わかった」
 ククルはそこまで聞くと三人に対してこう言った。
「下がれ。そなた達は引き続きこの基地の修復に当たれ」
「はい」
「わらわは用事が出来た。暫くここを離れるぞ」
「何処に行かれるのですか」
「少しな」
 答えずに微笑むだけであった。氷の様に冷たい微笑であった。
「すぐ戻る故。安心しておれ」
「わかりました」
 彼等は戸惑いながらもそう答えるしかなかった。
「その間我等にお任せ下さい」
「わかっておる。では頼むぞ」
「ハッ」
 ククルは優美な動作で立ち上がった。そして地下から出るとそのままマガルガを駆り何処かへと姿を消した。彼女が何処に行ったのか誰も知らなかった。

 ビッグファルコンに到着した大空魔竜隊はすぐにこの基地の責任者である剛健太郎博士達と会った。既にコンバトラーもボルテスもそれぞれの機体及びパイロットを集結させていた。
「そうですか、ダンクーガも合流したのですか」
「はい」
 大文字は青い髪と髭の端整で気品のある顔立ちの男にそう答えた。この男こそ剛健太郎であった。本来ならばボアダンの皇帝になるべき男であったが弟に陥れられ牢に入れられた。だが何とか脱出し今ではこの基地の責任者となっている。ボルテスのパイロットのうち三人の父親でもある。
「このところ何かと物騒ですし。戦力を集結させる意味でも」
「そうだったのですか。ではこちらに来た理由も」
「はい。コンバトラーとボルテスの力をお借りしたいのですが。宜しいでしょうか」
 大文字はそう申し出た。剛はそれを聞いてすぐに答えた。
「喜んで」
「おお」
 大文字はそれを聞いて顔を綻ばせた。
「宜しいのですか」
「少なくともボルテスは平和の為にあるのですから」
「それはコンバトラーとて同じですからな」
 剛の側にいる頭の禿た口髭の男がそれに応えた。彼は四谷博士、コンバトラーチームをまとめる人物である。
「喜んで力を貸しますぞ。なあ御前達」
「勿論だぜ、おっちゃん」
 色とりどりの服に身を包んだ五人の少年少女がそれに応えた。黒い髪で赤い服の少年が葵豹馬、長髪で青い服の少年が浪花十三、オレンジの服のがたいのいい少年が西川大作、緑の髪の美しい少女が南原ちずる、そして眼鏡をかけた小柄な少年が北小介であった。彼等がコンバトラーチームであった。
「元々甲児達とは仲間だしな。今回も一緒に戦おうぜ」
「嬉しいこと言ってくれんじゃねえか、豹馬」
 甲児はそれを聞いて目を細めた。
「じゃあまた一緒にやろうぜ」
「おう、こっちこそな」
「隼人、これからまたよろしゅうな」
「ああ」
 十三が隼人にそう言った。隼人もそれに応えた。
「何か十三さんと隼人さんって声が似てますね」
 小介がそれを聞いてふと呟いた。
「全くでごわすな」
 大作がそれに相槌を打った。
「けどそれなら」
 ちずるが口を開いた。
「あたしとめぐみだってそうよ」
「ねえ」
 黒く長い髪を後ろで束ねた黄色い服の凛とした顔の少女がちずるに相槌を打った。彼女は岡めぐみ、ボルテスチームの紅一点である。
「おいどんもよくそう言われますたい」
 緑の服の大男がそれに応えた。剛三兄弟の次男剛大次郎である。
「何か筋肉質の昔の映画タレントにそっくりの声だと」
「兄さんはシュワルツネガーとかスタローンだよね。おいらはどういうわけかエリザベス=テーラーに似てるって言われるんだよな」
 茶色い髪の小柄な少年が言った。三兄弟の末っ子剛日吉である。
「似ていないか、何処か」
 これに青い服のキリっとした顔の男が言った。ボルテスチームの一人峰一平である。
「俺もそう思う」
 それに黒い髪に凛々しい顔の少年が頷いた。三兄弟の長男剛健一である。ボルテスのメインパイロットでもある。尚コンバトラーのメインパイロットは豹馬である。
「何か時々本当にそう聞こえるからな」
「それは俺もよく言われるな」
 宙が二人に対して言った。
「何か左ピッチャーや聖闘士の声そっくりだって。どういうわけか全くわからないんだが」
「その前に宙の声ってアムロ少佐に似てるよなあ」
「ああ、そっくりだぜ」
 忍と豹馬がヒソヒソとそういう話をしていた。
「まあそれはいいとしよう。ところでだ」
「はい」
 大文字は話を戻した。
「どうやら彼等のことは私より君達の方がよく知っているようだな」
「ええ、それはまあ」
「一緒に戦った中ですからね」
 甲児や忍達はそれに答えた。
「なら心配はいらないな。剛博士」
「はい」
 剛に顔を戻した。
「宜しいでしょうか。どうやら話は我々がするより彼等がした方が早いようですが」
「そのようですな。どうやら我々が出る幕はないようです」
 彼も苦笑しながらそう答えた。
「そでれは決まりですな。彼等のことはお任せ下さい」
「はい。こちらこそ彼等の力を平和の為に役立てて下さい」
「わかりました」
「少なくとも三輪長官に預けるよりはましですからな」
 ここで四谷博士が言った。
「四谷博士、それは」
 これには大文字も剛も少し引いた。
「いや、おっちゃんの言う通りだぜ」
 しかしここで豹馬が四谷に同意した。
「あんなのの下じゃやってられねえよ」
「それだけは豹馬に同意やな」
 十三もであった。
「わいかてあんなやばいおっさんの下ではやりたないで。どんな命令されるかわかったもんやないからな」
「そうそう、何かといえば非国民だからね」
 雅人が相槌を打つ。
「一体何であんなのが長官になったんだか。常識じゃ考えられないよ」
「沙羅が言ってもねえ」
「貴女だって相当無茶やってるじゃない」
 ちずるとめぐみが彼女に突っ込みを入れた。だが沙羅はその程度では怯まなかった。
「あれは別格よ。普通考えられないでしょ。あんなのをトップに置くなんて」
「連邦軍環太平洋区司令官だからな。地球の約半分があのおっさんの手の中にあるんだよな」
 健一も眉を顰めさせていた。
「連邦政府は何であんなとんでもない奴を長官にしたんだ?岡長官でもよかった筈だ」
「隼人、それは言い過ぎだぞ」
 竜馬が彼をたしなめた。だが一平がそんな彼に対して言った。
「いや、言い過ぎじゃない。あいつは本当にとんでもないことを次々に平気でやる。この前宇宙に展開するロンド=ベルに何て命令したか知っているか」
「いや」
「月を核攻撃しろと言ったんだ」
「核攻撃!?それは本当か」 
 普段は冷静な鉄也もそれを聞いて驚きの声をあげた。
「ああ、本当だ。流石にそれはブレックス准将に止められたが」
「当然だな」
 一同それを聞いて胸を撫で下ろした。
「大体そんな命令する方が異常だぜ。確かに月にはギガノスがいるけれどよ」
「それでも一般市民を巻き添えにしていいってもんじゃねえだわさ。おいらだってそんな無茶はしないわ」
「確かにな。ボスはそれだけはしねえ」
 甲児はボスの言葉を聞いてそう言った。
「大体ボロットには核なんてないだわさ」
「普通はないわよ、そんな物騒なもの」
「そうね。私も鉄也も核を使ったことはないわ」
 さやかとジュンもその話を聞いて呆れていた。
「それにしてもつくづくとんでもないおっさんだな、あのおっさんは」
「ああ」
 健一がそれに頷いた。
「他の管轄にまで平気で口出しするしな。当然ここにまで口を出して来る」
「私がボルテスを大空魔竜に派遣するのに同意したのはそこにも理由がある」
 ここで剛が言った。
「三輪長官の介入を防ぐ為だったのですか」
「はい」
 大文字にそう答えた。
「俺達もかなり色々言われたからなあ」
 サンシローがそれを聞いてぼやいた。
「だが命令に従わなくては何も出来ないからな。それは仕方ない」
「リーの言う通りだ」
 ピートの考えはやはりかって軍人だっただけのことはあった。
「サンシロー、御前は何かと無茶が過ぎるんだ。それはわきまえるんだ」
「ちぇっ、また小言かよ」
「皆サンシローさんを心配してくれているんですよ」
 だがここでブンタがすかさずフォローを入れる。
「まあ何かあったら俺が助けてやるからよ」
「ヤマガタケさんが一番問題かも」
 ミドリは誰にも聞こえないようにポツリと呟いた。
「血の気が多過ぎるのだろうな、あの御仁は」
 サコンはその冷静な観察眼を発揮してそう述べた。
「だからこそああした過激な言動や行動に走るのだ。誰もがああなる可能性はある」
「それでもあの人は極端過ぎるな」
 亮がそれを聞いてこう言った。
「水で頭を冷やしてみたらどうかと思う時があるよな。それか野球でもしてストレスを発散させるか」
「HAHAHA,弁慶は本当にベースボールが好きね」
「そういう兄さんだって。人のこと言えるの?」
「宙さんも野球好きだったわね」
「・・・・・・まあな。さっき話したが変なことも言われるが」
「まあまあ」
 一同何だかんだと言いながら和気藹々としだしていたそれを見て大文字も剛も顔を綻ばせていた。
「早速仲良くやっておりますな」
「どうやらそのようで」
「そのかわり喧嘩も絶えませんがな、ははは」
 四谷は何時の間にかその手に酒を持っていた。
「どうですか、一杯」
「いや、私は」
 大文字はそれをやんわりと断った。
「これから指揮を執らなければなりませんので。お酒は控えさせて頂きます」
「博士は飲み過ぎなんですよ」
「そうでごわすな」
 小介と大作が彼に突っ込みを入れた。
「うちのお父さんは真面目なのにね」
「お母さんも。厳しいですたい」
 日吉と大次郎がそれを見て言う。
「まあそんなことはどうでもいいのじゃ」
 四谷は彼等の突っ込みから逃れる為かあえて大声でそう言った。
「これからうちの小僧共とボルテスチームのお別れ会じゃ。皆パッといくぞ!」
「お酒はなしでね」
「ええい、豹馬、御前はちっとは大人しくせんかい!」
 こんな調子でそのままパーティーに入ろうとした。だがその時であった。基地のサイレンが鳴った。
「ムッ!?」
 その場にいた全ての者がそれにすぐに反応した。
「敵か!?」
「恐竜帝国か!?」
「イエ、違イマス」
 赤いロボット、ロペットがここで出て来た。
「見タコトモナイ敵デス。コレヲ御覧下サイ」
 そう言いながらモニターのスイッチを入れた。そこには奇妙な形をした鳥型のロボットが映っていた。
「何だありゃ」
「見たこともないロボットだな」
 ここにいる誰もがそう言った。
「ミケーネノモノデモ恐竜帝国ノモノデモアリマセン。マシテヤドクターヘルが作ッタモノデモナイヨウデス」
「じゃあ何なんだ」
「次ニコレヲ見テ下サイ」
 映像を切り替えた。そこには巨大な土偶が空に浮かんでいた。
「邪魔大王国!?いや、違うか」
 宙がそれを見て言った。
「ハイ、識別信号ハ明カニ邪魔大王国ノモノデハアリマセンデシタ」
 ロペットは彼にそう答えた。
「じゃあ何だ」
「それがわからないから困ってるんだろうが」
「それもそうだが」
 皆頭を悩ませようとしていた。だがここにはそれより先に動く手合いの方が遥かに多かった。そして彼等は即座にそれに従った。
「うだうだ考えても仕方ねえ。行こうぜ」
 最初にそう言ったのはやはり甲児であった。
「そうだな。敵がいたら倒す、それだけで充分じゃねえか」
 そして士官ながらまだるっこしい思考を一切しない忍がそれに同意した。ここで意外な人物が続いた。
「よし、そうと決まれば全員すぐに出撃だ」
「ピート君」
 大文字がそれを聞いて思わず驚きの声をあげた。
「博士、驚かれることはありませんよ」
 そんな彼に対してサコンがそう言った。
「ピートらしいじゃないですか。敵ならば倒す。それだけです」
「そうだろうか」
「それもピートですよ。それに連中が敵なのは間違いないでしょう」
「確かにな」
「だったら結論は出ていますよ。俺達も行きましょう」
「よし」
 彼はそれを聞いて頷いた。
「では大空魔竜隊出撃だ。パーティーは後でたっぷりとやるぞ」
「そうですね、戦いの後の方が飯が上手い」
「ヤマガタケさん、そう言ってもう食べてるじゃないの」
 ミドリがもうおにぎりを口にしているヤマガタケを呆れた顔で見ていた。
「まあまあ。話は後で。皆さん行きましょう」
 ブンタがそんな彼をフォローする。そして他の者に出撃を急かした。
「よし。すぐに一匹残らずやっつけようぜ」
「それで後は楽しいパーティーだ」
 豹馬と健一が言った。そして皆駆け足でその場を後にした。後には剛と四谷、そして剛の妻である光代の三人だけが残った。見れば気の強そうな顔をした美人である。
「また戦いに行くのか、健一達は」
 剛は出て行った息子達のことを思いながらそう呟いた。
「ええ。けれどそれがあの子達の運命です」
 光代はそれでも気丈にそう言った。その表情の通り気の強い女性であった。
「それはもう貴方もわかっていいることでしょう」
「ああ、それはそうだが」
 だが彼はそれでも思うところがあった。
「しかしそれでもな。あの子達の辛さを思うと」
「けれど誰かが戦いに行かないと。そしてあの子達にはその力があります」
「力か。その為にハイネルも。今もこの宇宙の何処かで戦っているのだろうな」
 ここで彼はもう一人の誇り高い息子のことを思った。
「息子達よ。戦うのだ。そして」
 彼は言葉を続けた。
「地球の、宇宙の平和を守ってくれ。それが地球とボワダンの血を引く御前達の務めだ」
 そして彼等は戦場に目をやった。既にそこでは戦闘がはじまっていた。
「行くぜ、皆!」
「おう!」
 コンバトラーもボルテスも既に合体していた。そして彼等はそのはじめて見るロボットに向かっていた。
 コンバトラーとボルテスは並んで敵に向かう。まずはボルテスがバズーカを出した。
「ボルテスバズーカ!」
 そしてそれで敵を撃った。まずは一機撃墜した。
 次はコンバトラーであった。敵に近付くと二本の槍を出した。
「ツインランサァーーーーーーッ!」
 豹馬が叫ぶ。そしてそれで敵を切り裂いた。それにより敵を倒した。
「ふむ、腕は落ちておらんようですな」
 四谷はそれを見て安心したように笑った。
「そうでうな。健一も。やはり戦いのない間トレーニングを続けさせた介がありました」
 剛もそれを見て答えた。
「ですが油断はなりませんな。わしはどうもあいつが気にかかるのです」
 四谷はそう言いながら敵の後方にいる巨大な土偶のメカを指差した。
「あれが一体何をするかですな、問題は」
「はい」
 剛も同じ考えであった。
「どうもあれは敵の母艦のようですが」
「それだけではないでしょうね」
 光代も口を開いた。
「装備もあるようですし。何より」
「何より?」
「戦いだけを求めているようではないようです。見て下さい」
「!?」
 二人はその言葉を受けその土偶に目を集中させた。見れば住宅地区に向かっている。
「何をするつもりじゃ!?」
「まさか!」
 剛はそれを見て思わず叫んだ。そして慌てて大空魔竜隊に通信を出した。
「皆、聞いてくれ!」
「父さん、どうしたんですか!?」
「おっちゃんも。何があったんだい?」
 健一と豹馬がすぐにそれに応えた。
「あの土偶を見ろ!とんでもないことをするつもりだぞ!」
「!?土偶!?」
 四谷が彼等にそう叫んだ。それを受けて皆土偶に顔を向けた。
「なっ!」
 皆それを見て思わず声をあげた。何とその土偶は住宅地区に攻撃を仕掛けようとしていたのだ。既にミサイルを放っている。だがそれは幸いにして外れ海に落ちた。
「腕は悪いようだわさ」
「ボス、呑気なこと言ってる場合じゃねえぞ!」
 甲児がボスに対して言った。
「そうよ。このままだと関係ない人にまで被害が出るわよ!」
 さやかも叫んだ。彼等のうち何人かが土偶に向かおうとする。しかしその前に敵が立ちはだかった。
「クッ!」
「どきやがれ!」
 ゲッターとダンクーガが斧と剣で彼等を両断し大空魔竜がその間に突っ込む。だが敵はさらに姿を現わし彼等の行く手を阻む。
「クソッ、キリがねえぜこりゃ」
「まずいぞ、このままでは」
 豹馬も健一も焦っていた。何とか土偶に向かおうとするが敵に阻まれ進むことができないのだ。その間に土偶は住宅地区にさらなる攻撃を仕掛けようとしていた。
「まずいぞ、このままでは」
「攻撃はとても届かない。どうしようもないか・・・・・・」
「諦めるにはまだ早い」
 だがここで一人の男が動いた。
「ムッ!?」
 皆そちらに顔を向けた。そこにはゼンガーの乗るグルンガストがいた。
「俺が行く。皆はここで敵を頼む」
「ゼンガー」
 彼等はそれを受けてその名を呼んだ。
「馬鹿言え。あんなに離れてるんだぞ。間に合う筈がない」
「それに一機であんなデカブツに向かうってのか。無茶するんじゃねえ」
「無理は承知のこと」
 だがゼンガーは他の者に対して落ち着いてそう答えた。
「それに俺のグルンガストにはこれがある」
 そう言うと機体を変形させた。そして航空機の形態になった。
「なっ」
「では行って来る。後ろを頼むぞ」
 そう言うと土偶に向かった。敵を振り切り一直線に向かう。
「我が名はゼンガー=ゾンバルト」
 目の前で今にも住宅地区に攻撃を仕掛けようとする土偶に向かって呟いた。
「悪を絶つ剣なり!」
 そしてグルンガストに戻った。そしてその剣で思いきり切りつけた。土偶はそれを受けて動きを停止した。
「ムオッ!?」
 土偶の艦橋から声がした。
「誰じゃ、わしの楽しみの邪魔をしたのは」
「俺だ」
 ゼンガーはその声に対して答えた。
「力を持たぬ罪のない者達を傷つけるのは許さん。俺が倒してやろう」
「フォフォフォ、面白いことを言う」
 声は低い男のものであった。無邪気そうではあったがそこにはえも言われぬ残忍さがこもっていた。
「貴様一人で何が出来るというのじゃ」
「悪を討つことが出来る」
 ゼンガーは怖れることなくそう答えた。
「もう一撃、行くぞ!」
「フン、返り討ちにしておくれるわ!」
 土偶はミサイルを放った。しかしグルンガストはそれを切り払った。
「ムオッ!」
「この程度の攻撃が示現流に通用するか」
 ゼンガーは言った。
「そしてこれが今の攻撃への返答だ」
 グルンガストは剣を振り被った。そしてそれを大上段に振り下ろす。
「■い、邪なる者共よ!」
 それで両断せんとした。だがそれでも土偶は空に浮かんでいた。かなりのダメージを負いながらもそれでも生きていた。
「まだ生きているか」
「グググ、甘く見てもらっては困るのう」
 中にいる男も何とか生きているようであった。
「この程度でバンドックを沈められると思うなよ」
「バンドック!?」
「フォフォフォ、貴様が知らんでもよいことじゃ」
 男はそう答えた。そしてグルンガストと距離を開けた。
「さらばじゃ。ここは貴様の勝ちにしておいてやるわ」
「待て」
 ゼンガーは追おうとする。だがその前に敵が立ちはだかった。
「ムッ」
 そちらの相手をするしかなかった。その間に土偶は何処かへ姿を消した。そしてゼンガー達が敵を全て倒し終え戦いは終った。
「行ったか」 
 健一は大空魔竜の側に集まりながら周りに敵がいなくなったのを見て呟いた。
「何だったんだ、あいつ等は」
「それはわからん。とりあえず今サコンが敵の破片を調べているが」
 甲児にリーが答えた。
「詳しいことはそれが終ってからだな」
「そうか。それまではとりあえず休息だな。ビッグファルコンに戻ろう」
「そうだな。パーティーもあるしな」
 健一に促され皆ビッグファルコンに戻った。そしてそこでパーティーを開いた後大空魔竜に戻った。そしてそこでサコンの説明を受けた。
「さっき俺達が戦った奴等だが」
 サコンの説明がはじまった。
「今まで戦ったどの敵のものとも違うな。かといってバルマー帝国のものでもない」
「じゃあ何なんだ?」
「どうも真空状態の場所を通ってきたようだがな。調べてみると」
「真空・・・・・・宇宙か」
「おそらくな。それを考えると宇宙から来た奴等らしい」
「宇宙怪獣でもないんだな」
「それはない」
 サコンは答えた。
「奴等は曲がりなりにも生物だ。しかしこれは機械だ。生物も乗ってはいないようだな」
「そうか。道理で動きが単調だった筈だ」
 鉄也がそれを聞いて呟いた。
「そういえばそうね。動き自体は単調だったわ」
 ジュンもそれに同意した。
「数だけで大した強さじゃなかっただわさ。陸にいる奴もボロットで簡単にやっつけられただわさ」
「ボス、久し振りに戦えたでやんすね」
「よかったですね」
 二人の子分がそれに合わせた。彼等もここにいたのである。
「じゃああの土偶が遠隔操作でもしていたのか」
「それかAIだな。しかしそれもあまり性能はよくなさそうだ」
 サコンは亮の問いに答えた。
「どうも質より量で押すやり方らしいな」
「そうなのか」
 宙がそれを聞いて頷いた。
「だが奴等のやり方で一つ他の連中とは違うところがあるな」
「ああ」
 これは皆よくわかっていた。
「一般市民を狙っていた。あんなやり方は他の勢力にはない」
「恐竜帝国も邪魔大王国もまずは軍事基地を狙うからな。これはミケーネも同じだ」
「とすると奴等は一般市民をも優先的に狙っているということか。とんでもない奴等だな」
「ああ。だがまだまだ情報が足りない」
 サコンは意見をまとめるようにして言った。
「まだ敵の名すらわかってはいない。全ては」
「これからということか」
「そうだな。だが一つだけは言える」
「ああ」
 皆また頷いた。
「厄介な敵が一つ増えたということだ。そして俺達はより多くの仲間が必要だ」
「そうだな」
 こうして彼等の次の行く先が決定した。今度はチバシティのムートロン研究所であった。そこでライディーン及びコープランダー隊と合流することにした。大文字は早速彼等に連絡をとった。すると研究所の方で快諾してくれた。これでライディーンの合流も決定した。
「それでは」
「はい」
 次の日の朝大空魔竜隊はすぐにチバシティに向かった。そしてそれは次なる戦いはじまりもであった。それでも彼等は行かなければならなかった。それが彼等の務めであったからだ。


第八話    完



                               2005・2・15


[247] 題名:戦国魔神2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 22時54分

 カークスはそれを聞いて満足そうに頷いた。
「それではこれで決定だな。他の部隊はシュテドニアス軍を叩く」
「はい」
「遊撃隊はスプリガンを相手にする。それでよいな」
「了解」
 タダナオ達がそれに答えた。こうして作戦が決定した。魔装機と二隻の戦艦、そしてオーラバトラー達が出撃する。そしてそれぞれの獲物に向かうのであった。

 敵はすぐに見つかった。グランヴェールとガッテス、ザムジード、そしてマーベル達四機のオーラバトラーがまず前に出た。
「メギドフレイム!」
 まずヤンロンのメギドフレイムが放たれた。それにより最後尾の何機かが炎に包まれる。
 それを合図にガッテスとザムジードが何かを放った。一見するとニュータイプ用のモビルスーツに備えられているファンネルに似ているが違っていた。ハイ=ファミリアと呼ばれる兵器である。
「フレキ、ゲリ、お願い!」
 テュッティがガッテスから放たれた二つのハイ=ファミリアに声をかけた。
「わかっております」
「御安心下さい」
 そこから声がした。どうやらテュッティの二匹の使い魔達がそこに乗り移っているようである。これはマサキのハイ=ファミリアと同じであった。
 敵に向かう。そしてそれに超音波に似たビームを放つ。
「うわっ!」
 攻撃を受けた敵は大破した。そして炎に包まれ爆発する。かろうじて脱出だけはできた。
「ゴー!ゴー!」
 ミオが叫ぶ。三つのファミリアが放たれる。それは敵に向かい斬り刻んだ。それにより敵を撃破した。
 グランヴェールもファミリアを放っていた。それは一つであった。
「行け、ランシャオ」
「畏まりました、御主人様」
 やはりファミリアから返答があった。渋い男の声であった。
 そしてザムジードのそれと同じ様に敵を切り裂く。そして撃破するのであった。
 これにより敵陣の穴が開いた。そこに剣を抜いたオーラバトラー達が入った。
「皆、行くわよ!」
 先頭にいるダンバインに乗ったマーベルが仲間達に対して声をかける。後ろにはニー、キーン、そしてリムルがいた。
「わかってる!」
「行きましょう!」
 彼等はそれに答えた。やはり彼等も剣を抜いていた。
 それで穴が開きうろたえるシュテドニアス軍の魔装機に斬りつかた。縦に、横に両断し次々と撃墜していく。そこに他の魔装機とオーラシップ達も来た。
「火力を前面に集中させよ」
「ハッ」
 エイブはエレの指示に頷いた。そしてそれに従いゴラオンは前面に集中攻撃を仕掛けた。
 これにより魔装機が何機か撃墜された。だが彼等も怯んでばかりいるわけではなかった。
「糞っ!」
 その中の一機がビーム砲を放った。それはグランガランを狙っていた。
「シーラ様!」
 カワッセが叫ぶ。しかしシーラは落ち着いた態度を崩さない。
「大丈夫です」
 彼女はカワッセに対してそう答えた。そこにビームが直撃した。しかしそれは弾き返されてしまった。
「我々の良きオーラ力が守ってくれますから」
 そして反撃を開始する。それにより先程ビーム攻撃を仕掛けたシュテドニアス軍の魔装機があえなく撃墜されてしまった。
 シモーヌやファング達の魔装機も攻撃を開始していた。それによりシュテドニアス軍はその数を大きく減らしていた。
「やっぱり滅茶苦茶強いわ」
 それを見たロドニーは思わずそう呟いた。
「将軍、感心している場合ではありませんよ」
 青いショートの髪の少女が彼に対しそう言った。シュテドニアスの軍服を身に纏っている。
「わかっとるわい、ラディウス少尉」
「そうなのですか?」
 その少女エリス=ラディウスはその言葉にも半信半疑であった。
「安心せい。もうすぐ援軍が来る。その間に撤退や」
「援軍ですか」
「ああ」
 ロドニーはそう答えたエリスに頷いた。
「オーラバトラーがな。もうすぐここに来る頃やで」
「オーラバトラーですか」
 しかしそれを聞いたエリスは顔を曇らせた。
「将軍、御言葉ですが彼等は」
「わかっとるよ」
 だがロドニーは落ち着いた声でそれに答えた。
「連中は信用できん、そう言いたいんやな」
「はい」
「けれど今はそんなことを言うとる場合やない。それはわかるな」
「そうですが」
「とにかく今撤退せなあかんのや。とにかくな」
「はい」
「ホンマは貴官にも出撃してもらいたいのやが生憎魔装機が足らへん。だから我慢してくれ」
「いえ、それは」
 エリスは上官に謝罪され思わず戸惑った。
「お気になさらずに。あれは私の責任ですから」
「そうか。けど今はここにおるんや。わかったな」
「はい」
「今生き残らんとどうしようもない。はよ奴等が来てくれればええんやが」
 そう言うロドニーの顔にはいささか苛立ちが現われてきていた。
「何が来るかや。下手に遅いのやったらかえって足手纏いになるで、こっちの」
 彼はそれを最も怖れていたのだ。協力関係にあるからいざという時には互いにフォローしなくてはならない。だが今のシュテドニアス軍にそれをできる戦力はないのである。
 戦局はロドニーがぼやいている間にも推移していた。倒されるのはシュテドニアス軍の魔装機ばかりでありロドニーの乗る移動要塞にも攻撃が加えられていた。
「撃ち落としたらんかい!」
 彼の命令が下る。そしてダンバインに向かって対空射撃が加えられる。だがそこで彼等は信じられないものを見た。
「甘いっ!」
 何とダンバインが分身したのである。そしてそれで対空射撃をすり抜けたのだ。
「何やとっ!」
 それを見たロドニーは叫ばずにはいられなかった。
「あんなことができるんかい!」
「相当な技量があれば可能ですが」
 後ろに控えるエリスがそれに答えた。
「それにあのオーラバトラーの驚異的な運動性と。どちらにしろそうそうできるものではありません」
「そうやろうな」
 ロドニーはまだ顔に驚きの色を漂わせたままそれに応えた。
「しかじ実際に見ると信じられへんもんや」
「はい」
「あんなんがおるとなるとこの戦い」
 ロドニーの声は深刻さを増していた。
「洒落にならん程やばいかもしれへんな」
 彼の危惧はやはり当たった。移動要塞を護衛する魔装機も次々とやられていく。何時しか移動要塞の他には何もいなくなっていた。
「覚悟しとくか」
「はい」
 エリスが彼に答える。だがその時であった。
 空に何かが現われた。それは巨大な黄色い船のようであった。
「あれは!?」
「ロドニー将軍か」
 要塞の艦橋に通信が入った。
「そやが。あんたは一体誰や?」
「私か!?私はバイストンウェルの者だ」
 ここでモニターに映像が入った。痩せた頬に傷のある長身の男だ。
「ショット=ウェポンだ。そして今そちらにいるのはブブリィ。私の部下の乗るオーラボンバーだ」
「オーラボンバー」
「こちらの兵器の一つだ。まあ詳しい話はいい。ここは我々が受け持つ」
「撤退してええちゅうことか」
「そうだ。そちらの損害は大きいだろう。すぐに撤退した方がいいのではないか」
「確かにな」
 ロドニーはそう答えながらこのショットという男が只者ではないと思っていた。
(ようわかっとるわ。何でもお見通しかいな)
 しかしそれは声には出さなかった。そして答えた。
「じゃあここは任せたで。あんたもあんじょうにな」
「わかっている」
 ショットはそれに答えた。
「私としてもむざむざ死ぬつもりはない。手頃なところで引かせてもらう」
「そうかい。じゃあここはそちらの御言葉に甘えさせてもらうぜ」
「うむ。そうしてくれ」
「わかった。それじゃあな」
 こうしてロドニーはショットの言葉に従い戦場を離脱しにかかった。要塞を全速力で移動させにかかる。
「クッ!」
「逃がすか!」
 魔装機やオーラバトラーがそれを追おうとする。しかしその前にブブリィが立ちはだかる。
「ここは通させない!」
 中から女の声がした。紫の髪を肩のところで切り揃えた女がそこにいた。ショットの忠実な部下にして恋人であるミュージィ=ポーである。かってはリムルの音楽教師であったがショットのその素質を見込まれ戦士となったのである。
 ブブリィは一機でラングラン軍とオーラバトラー達を止めていた。そしてそこに別の影が大空に姿を現わした。
「ムッ!」
 それは銀の巨大な船であった。恐ろしい速さでラングラン軍に向かって来ていた。
「スプリガン!」
 それを見たマーベル達が叫んだ。
「あれがスプリガンか」
 魔装機に乗る者はそれを聞いて問うた。
「ええ。速度と火力に秀でているわ。注意して」
「わかった」
 彼等はそれを受けて身構えた。
「私達はブブリィを引き受けるから。貴方達はあれをお願い」
「了解」
 魔装機達が身構える。そしてこちらに急行して来るスプリガンに対して照準を合わせた。スプリガンの方でもそれはわかっていた。周りに飛ぶオーラバトラー達が戦闘態勢に入った。その時だった。
「させるかあっ!」
 その左から赤い鳥が姿を現わした。ショウの乗るビルバインの巡航形態であるウィングキャリパーであった。
 それだけではなかった。サイバスターやヴァルシオーネ、バストールもいた。当然インディゴのダンバインもいた。
 最後尾にいるタダナオがまず攻撃を開始した。ハイパーリニアレールガンを放った。
「食らえっ!」
 それでスプリガンを沈めようとする。しかしそれは間にいたドラムロに当たってしまった。そのドラムロは四散し、パイロットだけが脱出した。
「チッ、外したか!」
「待たせたな、皆!」
 ショウがウィングキャリパーをビルバインに戻しながら他の者に対して言った。
「スプリガンを捕捉するのに手間取った!だがもう安心だ!」
「頼むぞ!」
「わかった!」
 こうしてショウ達とスプリガン直属部隊との戦いがはじまった。他の部隊はシュテドニアス軍の追撃を再開した。ビルバインはスプリガンに向かおうとする。だがそこにブブリィが来た。
「ショット様はやらせない!」
 ミュージィはそう叫ぶとオーラキャノンをビルバインに向けて放ってきた。
「甘いっ!」
 しかしショウはそれを何なくかわした。そしてスプリガンにではなくブブリィに向かった。
「ここは俺に任せろ!」
 そして他の者にスプリガンに向かうよう促す。そして他の者はそれに従った。
「わかった!」
 トッド達がそれに応える。そして剣を抜きスプリガンとその周りのオーラバトラー達に向かった。
 タダナオはやはり後方にいた。
「あんたはフォローを頼む!」
「了解!」
 マサキにそう答える。そしてリニアレールガンで敵を次々と撃ち落としていく。しかしそれでも戦局は進展しなかった。スプリガンの動きが素早く攻撃が中々当たらないのだ。
「俺の攻撃をここまで避ける奴なんてはじめてだぜ」
 彼はそう言って歯噛みした。
「あんなでかい身体でどうやってかわしていやがる」
 ぼやかずにはいられなかった。だがここで彼の側で一つの光が沸き起こった。
「ムッ!」
 それは淡い緑色の光であった。そしてその中から青い身体と赤い兜を持つロボットが姿を現わした。
「何だあれは!?」
「見たこともねえやつだぞ!」
 ガラリアとトッドがそのロボットを見て思わず叫んだ。
「ダイターンの試作か何かか」
「だとしたら中に乗っているのは」
「その前にダイターンがこんなところに出て来るの?」
 ショウもマサキもリューネも呆気にとられていた。そして戦いを続けながらそのロボットを見ていた。
「あれ、また変なところに出て来たな」
 中から若い男の声がした。
「万丈さんやブライトさんの声に似てるな」
 その声を聞いたマサキが言った。
「というかそっくりなんだけれど」 
 リューネがそれに合わせる。
「真吾ぉ、まさかまた訳のわからないところに出たのお」
 色気のある女の声がした。
「今度は女か」
「声変わりする前のサフィーネの声そっくりだな」
「あの女の名前出すのは止めようね、出てきそうだから」
 リューネはすかさずショウとマサキに突っ込みを入れた。
「まあ何時出て来るかわからねえ奴だけれどな」
「だから出さないでよ」
 ここでもう一人の声がした。
「まあ俺は何処でも可愛い子ちゃんがいればいいけれどな」
「今度はウッディ大尉か」
 タダナオがそう呟いた。
「何か皆何処かで聞いたことのある声だな」
「おやおや、どうやら俺達はかなりの有名人みたいだな」
 ここで若い男がそれに答えた。
「そりゃそうよ。グッドサンダーチームっていえば正義の戦士なんだから」
「何ならサインしてもいいぜ」
「正義の戦士」
「また胡散臭えな」
 ショウもマサキもそれには首を傾げた。
「自称正義の味方程あてにならないものはないぞ」
 タダナオもであった。
「あらら、あたし達って信用ないのね」
「大体名前も何処の誰かもわからないのに信用出来る筈ないじゃない」
「そうだな。あんた達は一体何者なんだ?」
 リューネがぼやきタダナオが彼等に問うた。
「俺か?俺は北条真吾」
「あたしはレミー=島田」
「キリー=ギャグレー。よろしくな。そしてこれはゴーショーグンっていうんだ」
「おいキリーそれは俺が言う筈だぞ」
「言った者勝ちだぜ、真吾」
 ここで三人の顔がそれぞれのモニターに映った。若いアジア系の男と金髪のハーフの大人びた女、そして白人の若い男の三人であった。
「宜しくな。といってもここが何処かもわからないんだが」
「ラ=ギアスってんだ」
「ラ=ギアス」
 真吾はマサキの言葉を首を少し傾げさせた。
「異次元にある世界か」
「まあ詳しい話は後にしないか。今戦闘中だし」
「あら、そうだったわね」
「見れば妙な戦艦が空に浮かんでいるな」
 レミーとキリーは軽い調子でそう話した。
「見たところあれが悪者だぜ、真吾」
「そうだな。見たところドクーガのメカにも似ているし」
「何か凄い予断で話してない?」
「当たってるけれどな、ある意味」
 リューネとマサキは通信でヒソヒソと話をしていた。
「ドクーガ!?」
 タダナオは別のものに注意を向けていた。
「何だそれは」
「それは後で。ラ=ギアスの話と交換でね」
 レミーが彼にそう言葉を返した。
「わかった、坊や」
「坊やとは生憎だな」
 タダナオはそれに対して不敵に笑った。
「坊やなんかじゃないってとこを見せようか」
「あら、何処で。お姉さんを満足させられるようなものかしら」
「そうさ。何なら二人きりでどうだい」
「お生憎様。今は間に合ってるわ」
「おやおや。じゃあ今見せるとするか」
「是非お願いするわ」
 そうしたやりとりの後彼等は戦闘に戻った。タダナオはすぐにリニアレールガンを放った。
 それでまたオーラバトラーを一機撃墜した。何時の間にか数は大きく減っていた。
「あとはあの戦艦だけだな」
 真吾は他の二人に対して声をかけた。
「ええ」
「じゃあ派手にやりますか」
「よし」
 そしてゴーショーグンは力を全身に込めた。その身体を緑の光が包む。
「あれがあのロボットの技か」
「一体どうするつもりだ」
 他の者はゴーショーグンの動きに注目した。ゴーショーグンはその光を背中に集中させた。
「ゴーフラッシャーーーーーッ!」
 真吾が叫ぶ。そしてその緑の光を幾条にもして背中から放った。それでスプリガンを撃った。
 光がその脇を直撃した。忽ち火の手が挙がる。
「ウワアアッ!」
 艦内に衝撃が走り悲鳴が覆う。ショットはかろうじて体勢を維持しながら周りの者に対して問うた。
「被害状況を知らせよ!」
「左側面中破!炎上しております!」
「他に影響はないか!」
「主砲が破壊されました!これ以上の攻撃は不可能です!」
 部下がそれに答える。ショットはそれを聞いて頷いた。
「そうか。ならばこれ以上の戦闘は無意味だ。ミュージィとオーラバトラー隊に伝えよ」
「ハッ」
「ここは撤退する。よいな」
「わかりました」
 まず急いで戦線を離脱した。そしてそこからミュージィのブブリィのフォローを受けてオーラバトラーを収納した。そして最後にブブリィを収めて何処かへ去った。こうしてスプリガンは姿を消した。
「行ったか」
 マサキ達はそれを見送って呟いた。ここでヤンロンから通信が入った。
「そちらはどうなった?」
「今終わったところだ。スプリガンは戦場を離脱したぜ」
「そうか。こちらはシュテドニアス軍にさらに打撃を与えることが出来た。おそらくこれでトロイアまでさしたる軍事行動は出来ないだろうな」
「またえらく戦果を挙げたな」
「ああ。ただ一つ気になる話を聞いた」
「気になる話?」
 マサキはそれを聞いて声をあげた。
「一体そりゃ何だ」
「何でもバゴニアで変わった形をした三隻の戦艦が姿を現わしたらしい。どうもオーラシップではないようだ」
「奇妙な戦艦だって」
 それを聞いた真吾が声をあげて通信に入って来た。
「それは本当か!?」
「何だ、彼は」
「ああ、ゴーショーグンってロボットのパイロットらしい」
「ゴーショーグン」
「そうさ。まあ今後会った時は宜しくな」
「うむ。こちらこそ宜しく」
 ヤンロンはそれに対して挨拶を返した。マサキとは違いこうしたことはしっかりしている。
「それじゃあな。バゴニアまで行って来る」
「おっと、待てよ」
 マサキが行こうとする彼等を呼び止めた。
「何、去る女を追っ掛けるのはよくないわよ」
「そうそう、去る者は追わずってね」
「そんなんじゃねえよ。あんた達バゴニアって知ってるのかよ」
「それは関係ないさ。俺達はビムラーに導かれてるからな」
「ビムラー」
「詳しい話は今度会った時に聞かせてあげるわ。楽しみにしててね」
「そういうこと。それじゃあ」
「シーユーアゲイン」
 ウィンクと共のレミーの言葉が別れの言葉となった。ゴーショーグンは緑の光に包まれ何処かへ姿を消した。
「何だったんだ、ありゃ」
 マサキはまだ戸惑っていた。
「彼等は姿を消したのか」
 ヤンロンはマサキに問うた。
「ああ、今さっきな。緑色の光に包まれてな。ビムラーとかいったが」
「それが今の光なのだろうか」
「そこまではわからねえが。だが消えちまったのは事実だ」
「ふむ。まあいい。今はそれより今後のことを話そう」
「ああ、そうするか」
 こうしてマサキ達はヤンロン達と合流しカークスの許へ帰った。そして勝利を報告すると共に今後のことを話し合った。そしてトロイアに向けて進軍が決定されたのであった。

「ジェスハ准将は敗れたか」
 トロイアのある都市のホテルの一室でラセツは部下から報告を受けていた。
「はい。そしてこのトロイアまで退却しております」
 シュテドニアスの軍服を着たその部下はそう報告をした。
「やがて我々とも合流するでしょう。そしてロボトニー元帥もトロイアに到着されました」
「動きが遅いな」
 ラセツはそれを聞いてそう呟いた。
「魔装機に乗ってはおりませんから」
「それもあるか。ところで大統領からのご命令はあったか」
「はい、こちらに」
 部下はここで一枚の電報を彼に差し出した。
「どうぞお読み下さい」
「うむ」
 ラセツはそれを手にとった。そして封を切り中を開いて読みはじめた。暫く読んでいたがやがて口を開いた。
「状況が変わった。すぐにここを引き払うぞ」
「何かあったので」
「うむ。少しな」
 ラセツはそう答えてニヤリと笑った。
「国境にまで退くぞ。バイラヴァと共にな」
「ハッ」
 部下は何が何かわからないままそれに敬礼して応えた。
「ジョグ中佐にも伝えよ。特殊部隊は国境にまで退くとな」
「部隊全体ですか」
「そうだ。おそらくラングラン軍は国境まで迫る。それまで我等の戦力を温存せよとのことだ」
「そういうことですか」
 部下はそれを聞きようやく納得した。それならば話がわかる。
「しかし妙ですね」
「何がだ」
「いえ。最初はこのトロイアで彼等と戦う予定してたよね」
「うむ」
「それが急に。一体どういうことでしょうか」
「よくあることだ。状況が変わったのだ」
 ラセツは微笑んでそれに答えた。
「だからそれについては貴官が案ずることはない。いいな」
「はあ」
「では撤収の用意を頼む。よいな」
「わかりました」
 彼は敬礼してそれに応えた。ラセツはそれを見ながら心の中で思っていた。
(大統領もよく考えておられる。これを機に軍部を抑えようとは)
 やはり何かがあるようであった。しかしそれが何かまではまだわかってはいなかった。


第七話    完



                                 2005・2・13


[246] 題名:戦国魔神1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 22時50分

            戦国魔神
 王都ラングラン周辺から撤退を開始したシュテドニアス軍はトロイアに向かっていた。その指揮はロドニー=ジェスハ准将が執っていた。
 濃い茶の髪と口髭の男である。わりかし凛々しい顔立ちをしているがその表情は何処となくユーモラスに見える。
「何ちゅうかなあ」
 彼は呟いた。いい声であるが口調が合わない。ロボトニーと電話でやり取りしていたあの声だ。
「もうちょっと動きが速くならへんかな」
 彼は移動要塞の艦橋でそうぼやいていた。
「これが限界です」
 その隣にいるこの移動要塞の艦長がそう答えた。
「これでも全速力ですよ」
「それはわかっとるけれどな」
 それでもまだ不満なようであった。
「けど敵に追いつかれたら終わりや。それはわかっとるやろな」
「はい」
 艦長はそれに答えた。
「だからこそ後詰には精鋭を置き、警戒を怠ってはおりません」
「それがわし等や」
「はい」
「そやけどな。果たして連中が来たら満足にやれるかどうかや、問題は」
「それは難しいですね」
 艦長は悲観的な意見を述べた。
「ラングランの魔装機の力は圧倒的ですから」
「他にヴァルシオーネとかいうのもおるしな。何であんな滅茶苦茶強いのが何機もおるねん」
「我が軍にも魔装機はありますが。強力なものが」
「ジンオウやトゥルークがありますが」
「どれもむっちゃ高くて数がないやろが」
「はい」
「それにトゥルークはもうあらへんぞ。あいつも死んだしな」
「ルビッカですか」
「ああ。まああんな屑はとっとと死ぬべきやったんやけれどな。もっと早い時に」
「はい」
 ロドニーの顔が嫌悪感に歪んでいた。このルビッカという男はラングランから召還された殺人鬼であった。ラングランに召還されたが脱走してシュテドニアスの傭兵となっていた。しかし王都の戦いの直前にガッテスにより破壊されたのである。ルビッカは脱出しようとしたところを惨めに爆死した。それを見て誰も悲しむ者はいなかった。シュテドニアスにおいても祝杯を挙げる者すらいた程である。
「高いだけでそんなに役に立つわけでもあらへんかったわ。何が秘密兵器や。しかも屑を寄越しおって」
「全くです」
 ルビッカはラセツの系統の人間であった。ロドニー達とは違うのである。
「ジンオウも数が少ないしな。それに思ったより強いことあらへんし」
「そうでしょうか」
「その証拠にラングランの魔装機には負けとるやろが」
「はい」
「そういうこっちゃ。強い方が勝つ、それが戦争や。ジンオウはラングランの魔装機よりも弱いということになる」
「しかしそれでは我が軍には彼等に対抗できる魔装機がないことになりますが」
「その通りや」
 ロドニーはそれを認めた。
「だからこそや。用心が必要や」
「はい」
「敵はそれだけ強い。わし等では相手にならん程にな。だから撤退するんや」
「トロイアまでですね」
「そうや。そこで地形を利用して戦えばちょっとは違うやろ。そしてそのまま本土まで撤退や」
「難しいですね」
「難しいいうてもやらな仕方あらへんで。わかっとるやろ」
「はい」
「今も後ろから来とるやろしな」
 ロドニーはそう言いながら後ろを振り返った。
「それを何とか凌がなな」
「ですね」
 艦長はそれに頷いた。
 彼等は一路トロイアを目指していた。そしてそれはラングラン軍も同じであった。
「シュテドニアス軍は今何処にいるか」
 フェイルはテントに設けられた臨時の作戦室において情報参謀に問うていた。
「ハッ、ここより南東に二百キロの時点をトロイアに向けて進行中であります」
「そうか。予想通りだな」
 彼はそれを聞いて頷いた。
「では追撃部隊を派遣するとしよう」
「ハッ」
「そして同時でトロイア以北を奪還するのですな」
 ここでカークスがフェイルにそう上奏した。
「その通りだ」
 彼はその言葉に頷いた。
「まずはトロイア以北を奪還する。そしてそれからシュテドニアス軍を彼等の国境まで押し返したい」
「わかりました」
「その指揮は将軍に執ってもらいたいのだが」
「私にですか」
「そうだ。出来るか」
「わかりました」
 カークスはそれに頷いた。
「謹んで承ります」
「うむ。本来は私が行くべきなのだが」
 フェイルはここで表情を曇らせた。
「少し気になる気配を察知してな」
「気配」
「ああ。魔力だ」
 フェイルの魔力はかなりのものがある。だからこそそれを察知することができるのだ。
「クリストフの気を感じるのだ」
「まさか」
 それを聞いたカークスはまずその言葉を否定した。
「そんな筈がありません。クリストフ殿下はもう既に」
「その筈だな。マサキ達に倒された」
「はい」
「だが感じるのだ。北の方からな」
「北から」
「そうだ。そして徐々に南下してきている。その気は次第に強くなってきている」
「まさかまたラングランを狙って」
「その可能性は否定できないな」
「それでは」
「そうだ。それに備えて私はラングランに留まる。申し訳ないが前線の指揮を頼むぞ」
「わかりました。それでは」
「うむ。だが一つ気になることがまだあるのだ」
「それは何でしょうか」
「そのクリストフの気だ」
「はい」
「どういうわけかわからないが以前の様な邪悪さは感じられない」
「そうなのですか」
「むしろラングランにいた頃のクリストフのものに近い。これがどういうことなのかはわからないが」
「しかし油断はできませぬぞ。クリストフ殿下とあのグランゾンは」
「わかっている。だからこそ私が王都に留まるのだ」
 フェイルはそう答えた。
「彼とそのマシンは私に任せてくれ。将軍はシュテドニアス軍を頼む」
「ハッ」
 カークスは敬礼してそれに応えた。
「これからすぐにラングランに戻る。それではな」
「わかりました」
 こうしてフェイルはラングランに戻った。そして作戦指揮はカークスが引き継ぐことになったのであった。
「あのおっさんが指揮を執るのか」
 マサキはフェイルがラングランに戻ったこととカークスのことを聞いてまずそう言った。
「何か不安そうね」
 リューネはそんな彼に対しそう声をかけた。
「まあな。あのおっさんの仇名を知ってるか」
「いや。何ていうんだい?」
「昼行灯だぜ。とにかくぼーーーーっとしててな。何で将軍になれたのか不思議な位だったんだ」
「へえ、そうだったんだ」
「そんな人だったからなあ。かなり不安って言えば不安だよ」
「けれど今の作戦指揮はかなり評判いいじゃない。あれはどうして?」
「実戦において実力を発揮する人だったということだな」
 ここでヤンロンが言った。
「実戦でねえ」
「そうした意味ではマサキやリューネと一緒だ」
「そうなんのかなあ。あのおっさんと一緒だと言われるとちょっとばかり複雑だな」
「聞こえているぞ」
 横からカークスの声がした。
「あ、将軍」
「全く。いつも好き勝手言ってくれるな」
 かなり失礼な発言であるがカークス自身は怒ってはいなかった。
「しかしそんなことはどうでもいい。マサキ、リューネ、ヤンロン」
「はい」
 三人はそれに答えた。
「これからシュテドニアス軍を追撃する。さしあたってその際の君達の任務だが」
「はい」
「先陣を頼むぞ。テュッティやミオと一緒にな」
「了解」
 三人はそれに不平を言うことなく答えた。
「他の魔装機も同じだ。そしてオーラバトラー隊も同行させる。それでいいな」
「将軍」
 ここでヤンロンが質問した。
「何だ」
「オーラバトラー隊も我々と同行させるのですね」
「そうだ。何か不満でもあるか」
「いえ」
 ヤンロンはそれには不満ではなかった。ショウ達に対してもこれといって悪意があるわけではない。むしろシーラやエレと話をしてその人柄に心打たれている程である。
「そういうわけではありませんが」
「それではどうした」
「あのオーラシップという戦艦です。あの二隻も我々と同行するのでしょうか」
「そのつもりだが。戦艦が同行していた方が何かと補給や修理で便利だろう」
「はい。実はそれを懸念していたのです。ですがそれならば僕としては異論はありません」
「そうか。ならばそれでよいな」
「はい」
 ヤンロンはそれ以上は不平等言うことなく頷いた。
「あの二隻の戦艦は思ったより船足が速いしな。追撃戦にも期待できるだろう」
「まあ確かにね」
 リューネがここで言った。
「グランガランもゴラオンもあれでかなり速いからね」
「宇宙でも使えるしな」
「そうそう」
「かなり凄い船のようだな」
 ヤンロンは二人の話を聞きながらそう呟いた。
「だが一つこちらも注意することがある」
「それは」
「敵もオーラバトラーやオーラシップを持っているということだ。それも情報によるとあのウィル=ウィプスの他に二隻の戦艦を持っているらしい」
「ああ、あれか」
 マサキはそれを聞いて思い出したように頷いた。
「やはり知っているか」
「ああ。ゲア=ガリングとスプリガンだろ」
「一体どの様な戦艦だ」
 カークスは真剣な面持ちでマサキに尋ねた。
「ゲア=ガリングは蝶みたいな形でかなり大きい。そしてオーラバトラーもかなり多く積んでいる」
「ふむ」
「スプリガンは他の二隻に比べたら小さいが機動力が高いんだ。どちらかというと火力はゲア=ガリングの方が弱いな」
「そうか。だがオーラバトラーの搭載量が多いとなると問題だな」
「そうよね。あたし達もこの前の戦いでそれにかなり苦しめられたし」
「しかし三隻もいるとはシュテドニアスにとっては貴重な戦力となるな」
「それはどうだか」
 ヤンロンの言葉にマサキはシニカルに返した。
「何かあるのか?」
「ああ。実はな」
「それはショウ達の方が詳しいよ」
「それもそうか」
 カークスはリューネの言葉に頷いた。
「では彼等に話を聞くとしよう。今何処にいるかな」
「グランガランだと思うよ」
「わかった。それではすぐに通信を入れよう。そして司令部に来てもらうか」
「うんうん」
 リューネはそれを見ながら頷いていた。
(わりかしいい動きしてんじゃん)
 彼の的確かつ迅速な判断にいい印象を持っていたのである。だがここで彼女にもお鉢が回ってきた。
「君達も会議に参加してくれるな」
「え、ええ」
 不意にそう言われて慌ててそう答えた。
「勿論だよ、これから戦いなんだし」
 そしてこう答えた。
「よし、それではすぐに会議に入ろう」
「よし」
「はい」
 マサキとヤンロンもそれに応えた。
「では集まってくれ。全魔装機のパイロットも招集してくれ。いいな」
「了解」
 こうして魔装機のパイロットと二人の女王、そして聖戦士達が召集された。そして会議がはじまった。議長はカークスであった。
「さて」
 カークスハ一同が集まったのを確認してから口を開いた。
「今回の作戦だが」
「シュテドニアス軍の追撃ですね。そして彼等をトロイアまで押し返す」
 テュッティがここで言った。
「そうだ」
 カークスは彼女の言葉に頷いた。
「その為に追撃を仕掛ける。攻撃目標はシュテドニアス軍主力部隊」
「はい」
 一同それに頷く。
「後方から強襲し大打撃を与える。それにより敵を退かせると同時に今後の作戦に影響を与える程のダメージを加える。それでよいな」
「異議なし」
 皆それには賛同した。
「敵はシュテドニアス軍。しかし彼等だけではない」
「はい」
 それはわかっていた。そしてカークスはそれについて言及した。
「問題はオーラバトラーだ。先程ゼノサキス達から聞いたことだが」
「マサキでいいぜ、将軍」
 だがマサキはここでこう言った。
「そうか。ではマサキ達に聞いたことだが」
「はい」
「敵のオーラバトラーにはこの前の戦いで姿を現わしたウィル=ウィプスの他にもう二隻のオーラシップがあるという。それについてお話を窺いたいのですが」
 カークスはそう言いながらシーラとエレに顔を向けた。
「宜しいでしょうか」
「はい」
 二人はそれに頷いた。
「バイストンウェルは複数の国に別れていまして」
「はい」
 皆シーラの言葉に耳を傾けた。
「私はナの国、エレ女王はラウの国の女王なのです。そしてドレイクはアの国の領主でした」
「領主だったのですか」
 デメクサがそれを聞いて以外そうに言った。
「私はてっきり王様か何かだと思っていました」
「それはドレイクにそれだけの力があるからです」
 エレがそれに答えた。
「ドレイクは他の領主達を取り纏めアの国を自らのものとしました。そして他の国に対し侵略を開始したのです」
「ふむ」
 アハマドはそれを聞いて頷いた。
「何処にでもよくある話だな」
「バイストンウェルではそうではありませんでした」
 しかしシーラはそれに対してこう答えた。
「バイストンウェルは人の魂の安息地なのですから」
「魂の安息地、それは一体」
「それは後であたしが話してあげるよ。長くなるから後でね」
「うむ」
 モハマドとヤンロンはリューネの言葉に頷いた。
「その世界において彼は邪なオーラ力を発動させました。そしてそれにより多くの国が滅び、多くの者が命を失いました。ですがその中にはドレイクと手を結ぶ者もいたのです」
「それがその二隻のオーラシップの持ち主達ですか」
「はい」
 シーラとエレは答えた。
「一人はクの国の国王ビショット=ハッタ、そしてもう一人は地上人であるショット=ウェポンです」
「ショット=ウェポン、あの科学者か」
 ヤンロンがそれを聞いて言った。
「やはり御存知でしたか」
「ええ。何でもロボット工学の権威だとか。地上に出ていたとは聞いていましたが」
「はい。彼こそドレイクが最初に召還した最初の地上人でした。当初はドレイクに従っていましたが」
「今は違うと」
「そう思われます」
 エレがカークスに答えた。
「地上では独自の行動をとっていましたから。これはビショットにも言えます」
「独自行動を」
「はい」
 カークスの問いに答えた。
「左様ですか、成程」
 カークスはエレの返答に何かを見たようである。
「もしかすると三者は互いに独自の勢力を持ってはおりませんかな」
「はい、その通りです」
 エレはまた答えた。
「ドレイクもビショットもそれぞれ国を持っておりますし。ショットはショットで独自の勢力を築いております。彼は独立した部隊を率いております」
「やはり。では地上でも色々とあったでしょうな」
「ええ、よくおわかりですね」
「まあ。道理であの時ウィル=ウィプスだけが出て来た筈です」
 カークスの頭の中で何かが宿ったようであった。
「どうやら三者は表向きは手を結んでいても実際は対立関係にあるようですな」
「よくおわかりですね」
「まあ。よくある話ですから」
 カークスの脳が働きを増していた。
「それでは今回もまた出て来るとしたら三者のうちどれかの勢力だけでしょうな。ドレイクは前の戦いでダメージを受けておりますから」
「はい」
「ビショットかショットか。ここで一つ御聞きしたいのですが」
「はい。何でしょうか」
 シーラが答えた。
「船足はショットとやらの乗るスプリガンの方が速いそうですね。本当ですか」
「はい、その通りです」
 シーラはそう答えた。
「スプリガンは正式にはオーラクルーザーといいまして。オーラバトラーの搭載よりも機動力を重視した設計となっております」
「ふむ。そうですか」
「はい。ショット=ウェポンは他のニ者に比べて勢力は弱いですがこの艦によってそれをかなり補っております」
「性能も高いと」
「はい」
「そうですか。では今度の戦いで出て来るのはそちらになりますな」
「スプリガンが」
「そうです。機動力を生かして攻撃を仕掛けてくるでしょうな」
 カークスはそう言った。
「出撃してくるオーラバトラーはそれ程多くはないでしょうが遊撃戦を展開してくるものと思われます」
「ではどうすれば」
「案ずることはありません。機動力ならこちらも負けてはおりません」
 彼はここでマサキとショウに目をやった。
「彼等がおりますから。ここは思う存分活躍してもらいましょう」
「俺達が」
「うむ」
 カークスは二人の問いに頷いて答えた。
「諸君等にはスプリガンを頼む。よいな」
「わかりました」
 二人はそれに答えた。
「頼むぞ。だが二人だけではやはり心許ない」
 カークスも二人に全てを任せる気はなかった。
「少数精鋭でいきたいがな。リューネとトッド、ガラリアにもお願いしたい」
「あいよ」
「スプリガンが相手なら不足はないぜ」
「同意するよ」
 三人はそれに応えた。
「これでよし、といきたいが」
 だがカークスはまだ考えていた。
「遠距離戦にも強い者が必要だな。よし」
 ここでタダナオに目を向けた。
「行ってくれるか」
「喜んで」
 タダナオは微笑んでそれに答えた。
「思う存分暴れさせてもらいますよ」
「よし」


[245] 題名:フロンティア2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 22時47分

 イーノもいた。彼等は四機一組となって敵を倒していた。そこへコウの部隊が来た。コウの乗るGP−03を先頭にキース、クリス、バーニィが続く。彼等は左翼を受け持っている。
 右はカミーユとジュドーの部隊が展開している。そして正面はバニングの小隊が。ロンド=ベルはクロスボーンの部隊を相手に上手く渡り合っていた。
「正面が弱いな」
 だがザビーネとドレルは戦線を冷静に見ていた。
「やはり一個小隊では限界がある。主力を正面に向けろ」
「了解」
 ドレルの指示に従いバニングが兵を動かす。そしてそこに集中攻撃を仕掛けようとする。だがバニングはそれにも動じてはいなかった。
「来るぞ」
 ヘイト達に声をかける。
「わかってますって」
 そして彼等はそれに動じてはいなかった。
「不死身の04小隊を見せてやろうぜ」
「そうですね、久し振りに」
 ヘイトもモンシアもアデルも笑っていた。彼等は危機を前にしてさらに燃え上がっているようであった。そこに黒いモビルスーツ達が来る。四機はそれに対してライフルを向けた。
「やらせんっ!」
 一斉にビームを放つ。それで忽ち何機かが落とされた。ザビーネはそれを見て呟いた。
「流石と言うべきか」
 しかし彼もクロスボーンにおいてそん名を知られた男である。動じてはいなかった。
「私が行く。後ろを頼むぞ」
 部下達に声をかける。だがそこでそれを制止する声があった。
「待て」
 それはドレルの声であった。
「ドレル様」
「私も行く。卿だけは行かせはしない」
「しかし」
「何、死にはしない」
 ドレルはそれに対して笑って答えた。
「死んだとしてもそれはコスモ貴族主義に殉じたものだ。恥ではない」
「左様です」
 これはザビーネも同じ考えであった。
「では行くぞ。そして奴等を倒す」
「ハッ」
 こうしてドレルはザビーネを従える形でバニングの小隊に向かった。既にバニング達は身構えていた。
「私はあの先頭にいるガンダムをやる」
 ドレルはバニングのGP−01を指し示しながら言った。
「卿は他の者の足止めを頼むぞ」
「了解」
 ザビーネはそれに従った。そして彼等は前に出た。
「来たか」
 バニングはそれを見てビームサーベルを抜いた。そしてドレルのベルガ=ギロスに向かった。だがここで思いも寄らぬ助っ人が現われた。
「ムッ!?」
 もう一機ガンダムが姿を現わした。それは小型のガンダムであった。
「このガンダムは」
 ドレルとザビーネはそれを見て驚きの声をあげた。
「久し振りだな、ドレル」
 そこから声がした。少年のものであった。
「シーブックか!」
 二人はその声を聞いて声の主の名を呼んだ。
「その通り」
 その小型のガンダム、F91に乗る青い髪の少年シーブック=アノーが答えた。
「シーブック、貴様もロンド=ベルに戻っていたのか」
「ああ、色々と事情があってな」
 シーブックはそれに応えた。
「貴様等が前にいるのなら戦う。それだけだ」
「面白い」
 ドレルはそれを聞いて笑った。
「貴様がいるということはベラもいるのだな」
「ええ、そうよ」
 ここで若い少女の声がした。
「やはりな」
 F91の後ろを見る。そこには銀色のモビルスーツ、ビギナ=ギナがいた。そこに乗っているのは茶色の髪の少女、セシリー=フェアチャイルドであった。
「久し振りね、兄さん。そしてザビーネ」
「確かにな」
 ザビーネはその言葉に頷いた。
「ならば私達がここにいる理由はわかるだろう」
「ええ」
 セシリーはそれに答えた。
「けれど私の答えはもう決まっているわ」
「そうだろうな」
 それはもうわかっていることであった。二人はそれを聞いても驚かなかった。
「そしてそこにいるのはわかっている」
 ザビーネが呟くように言った。
「アンナマリー」
「わかっていたのね」
 アンナマリーの乗るダギ=イルスも来た。
「貴様が手引きしたのだな」
「手引きといったら聞こえが悪いね」
 彼女はそれに悪びれることなく答えた。
「セシリー様とこの坊やをあるべき場所に導いただけさ」
「フン、戯れ言を」
 ザビーネはそれを鼻で笑った。
「では貴様もいるべき場所にいるということか」
「そうさ。悪いかい」
「我がクロスボーンの鉄の規律は知っているな」
「裏切り者には死を」
「そういうことだ」
 ザビーネはそう答えながら剣を抜いた。
「行くぞ」
 彼はビームサーベルを構えた。そしてそれで切ろうとする。アンナマリーも剣を抜く。しかしその前にシーブックのF91が来た。
「待ってくれ、アンナマリーさん」
「シーブック」
「ここは俺に任せて。アンナマリーさんは他を頼む」
「いいのかい?手強いよ」
「それはわかってるよ」
 彼はモニターでにこりと笑って答えた。
「だからこそここに来たのさ」
「そうかい。わかってるのかい。じゃああたしからは言うことはないね」
「ああ」
「ベラ様もはじめられたみたいだし」
 セシリーは既にドレルのベルガ=ギロスとの戦いをはじめていた。
「あたしも戦いに行くとするか。じゃあ任せたよ」
「はい」
 シーブックは彼女の言葉に頷いた。
「お願いします」
「よしきた。ビルギット」
「おうよ」
 何時の間にか隣に来ていたビルギットの量産型F91に声をかける。
「雑魚を始末しに行くよ。どっちが先にエースになるかかけないかい?」
「面白いな。乗ったぜ」
「よし来た。じゃあ行くよ」
「おうよ」
 こうして二人は周りのモビルスーツの相手に向かった。それには既にバニング達もあたっていた。そして戦局を有利に進めていた。
「むう」
 それを後方のザムス=ガルの艦長は苦い顔で見ていた。
「ドレル様とザビーネ様も動きを止められているな」
「はい」
「我等も迂闊に攻撃はできん。こうまで混戦になっていると」
「ですがラー=カイラムはそれでも的確に援護を行っておりますな」
 これは艦長であるブライトの技量の賜物であった。やはりこうしたものは歴戦の知識と経験がものをいうのである。
「そうだな。それにより我が軍はさらに戦力を減らしている」
「はい」
「どうするべきか。御二方に進言するか!?」
「撤退を」
「そうだ。これ以上戦っても勝利は望めないだろう。ならば」
 彼等はこう話していた。その隣にはもう一隻ザムス=ガルがいる。だがその僚艦が突如として炎に包まれた。
「何だっ!」
 これには彼等だけでなくドレルもザビーネも驚きの声をあげた。
「よし、間に合ったな!」
 炎に包まれ消えていく戦艦の向こうに複数の戦闘機が姿を現わした。
「ラー=カイラム、聞こえるか!?」
 ラー=カイラムに通信が入った。色の黒い金髪の彫の深い顔立ちの男がモニターに出た。マクロスのエースパイロット、ロイ=フォッカー少佐であった。
「スカル小隊、今よりそちらに合流する。返答を求む!」
「スカル小隊が!?」
 マクロスの艦載機である変形メカバルキリーで構成される部隊である。通常は可変翼の戦闘機だがそこからガウォークやバトロイドに変形する独特のメカである。
「そういうこと」
 アジア系の男がモニターに出た。柿崎速雄であった。
「グローバル艦長の命令で。助っ人に来ましたよ」
「そうだったのか」
「うむ」
 ここでいかつい顔の大男が出て来た。ガルド=ゴア=ボーマンである。
「私も派遣させてもらった。また宜しく頼む」
「おい、ガルド」
 アジア系の顔をした茶色い髪の男も出て来た。
「何畏まってるんだよ」
 イサム=ダイソンであった。
「御前らしくないぜ」
「場所をわきまえろ」
 だがガルドはイサムに対し冷静に返した。
「今は戦闘中だぞ」
「だからこそだろうが」
 イサムも負けてはいなかった。
「ハレの場だぜ、ハレの」
「戦闘を何だと思っているのだ」
「今言っただろうが、ハレの場だって。そうそう落ち着いていたんじゃ勝てるものも勝てはしねえよ」
「ではそうして戦死するのだな。誰も悲しむことはない」
「何、御前この前撃墜機数で俺に負けてただろうが。偉そうに言うな」
「あの」
 ここでモニターにまた人が入って来た。
「ブライト艦長、お久し振りです」
 黒い髪の若者だった。一条輝である。
「今回また御一緒させてもらうことになりました」
「僕もです」
 青い髪にサングラスの青年、マクシミリアン=ジーナスである。
「私も」
 赤い髪の美しい勝気な顔立ちの女、ミリアもいた。
「以上七機、宜しくお願いします」
 フォッカーが彼等を代表してまたブライトに挨拶をした。
「で、今のは手土産ってわけです」
 そしてそう言いながら後ろの爆発を親指で指し示した。
「手土産か」
「はい」
「いつもながら派手な手土産だな」
「そうでなくちゃ面白くないでしょ」
「確かにな」
 そう答えるブライトはいささか苦笑していた。
「だがそれなら話が早い。これからも宜しく頼む」
「こちらこそ」
 そして彼等はもう一隻のザムス=ガルに向かった。しかしその前をクロスボーンのモビルスーツ達が守りを固めている。
「ここは守り抜け!」
「ドレル様とザビーネ様が戻って来られるまで持ち堪えよ!」
 彼等は口々にそう命令する。そして迫り来るバルキリー達に備えた。
「よし、スカル小隊突撃だ!」
「了解!」
「少佐に続くぞ!」
「はい!」
 フォッカーと輝の指示に従いバルキリー達が突っ込む。そしてまずはミサイルを一斉に放つ。
 複数のミサイルが煙を吐きながら複雑に飛ぶ。そしてそれぞれの敵に目標を定め突っ込んでいく。
「クッ!」
 クロスボーンの兵士達はそれをかわそうとする。だがミサイルの動きは速く、到底よけきれるものではなかった。次々と被弾し、炎の塊と化していく。
「まだだ、まだやられたわけじゃない!」
 それでも踏み止まる。しかしそこに新手が来た。
 紫のメカと青いメカであった。二機のメカはそれぞれ絡み合う様に飛びながらクロスボーンの部隊に向かって来た。
「ゼオラ、いいか!?」
 紫のマシンから声がした。アラドのものである。
「それはこっちの台詞よ!」
 青いマシンからすぐに返ってきた。ゼオラのものである。
「アラド、遅れないでよ!」
「俺が何時遅れたんだよ!」
「いつも遅れてるじゃないの!」
 そんなやりとりをしながらクロスボーンの部隊向かって突き進む。クロスボーンの部隊はその前に立ちはだかる。
 しかしそれはゼオラの乗るビルトファルケンのライフルの前に倒されていく。
「やらせないわよ!」
 ミサイルも放たれる。それもまた敵を襲った。こうして道を開いた。
「今度は俺だ!」
 アラドの乗るビルトビルガーが剣を抜いた。
「食らえっ!」
 それでクロスボーンのモビルスーツを両断していく。ZZのハイパービームサーベルに匹敵する威力であった。
「何かすげえのがいるな」
 フォッカーはそれを見て思わず呟いた。
「はじめて見る機体だがありゃかなり凄いぜ」
「そうですね」
 輝がそれに同意した。
「だが中にいるパイロットはまだまだこれからだな」
「これからですか」
「ああ。筋はいいがな。ちょっとばかり若いな」
「はあ」
「それもなおっていくだろうな。こいつは将来が楽しみだ」
 二人は瞬く間にクロスボーンのモビルスーツ部隊を退けた。そしてザムス=ガルに向かう。
「行くぞゼオラ、あれでいく!」
「わかったわ!」
 ゼオラがそれに応える。
「あたしの方はいいわよ!」
「よし!」
 アラドはそれを聞いて頷いた。そしてエンジンを全開にした。
「行くぞ、ツインバード・・・・・・」
「ストラァーーーーーーイク!」
 二人はほぼ同時に叫んだ。そして機体のリミッターを解除して戦艦に特攻した。
「いけええええええっ!」
 アラドは接近用の武器で、ゼオラはライフルやミサイルで総攻撃を仕掛ける。それで戦艦にダメージを与えた。
「うおおおおっ!」
 攻撃を受けたザムス=ガルは揺れた。艦の至るところから火を噴いた。
 それは艦橋においても同じであった。艦長は一度宙に浮き床に叩き付けられた。
「グハッ!」
 口から空気を吐き出した。背中を鈍い激痛が走った。だがそれでも彼は何とか立ち上がった。それは艦長としての責務であった。
「被害状況を知らせよ!」
 彼は立ち上がると周りにそう叫んだ。それを受けて一人の将校が伝えた。見れば頭から血を流している。
「大破です。これ以上の戦闘は・・・・・・」
「そうか」
 彼はそれを受けて頷いた。
「ドレル様とザビーネ様に通信を開け」
「はい」
「その必要はない」
 だがここでモニターが開いた。そしてドレルとザビーネが出て来た。
「これ以上の戦闘は無理だ。撤退するぞ」
 ドレルが彼にそう伝えた。
「わかりました」
 艦長はそれに頷いた。そしてこう言った。
「それでは先に退かせて頂きます。最早これ以上の戦闘は」
「うむ。致し方あるまい。我々も今から撤退に入る」
「ハッ」
 艦長は敬礼した。そして周りに対して言った。
「撤退!弾幕を張りつつ後退せよ!」
「了解!」
 皆それに頷いた。こうしてザムス=ガルは大破しつつも戦場を離脱しにかかった。
「逃げるつもりか!」
「やらせるもんですか!」
 ゼオラは尚も追おうとする。だがここでフォッカーからの通信が入った。
「止めときな、お嬢ちゃん」
「けど」
「これ以上追うとかえって藪から蛇を出しちまうぜ。まあここは大人しく逃がしてやるんだな」
「いいのですか?」
「ああ。どのみちここでの戦いは俺達の勝ちだ。敵さんもあれだけ痛めつけられりゃ当分は来ないさ」
「少なくともクロスボーンはね」
 輝がここで言った。
「あくまでティターンズの一部隊だけれど」
「それでも大きいぜ」
 フォッカーがそれに対して言った。
「クロスボーンは連中の中でもかなり大きな部隊だからな。それに大きなダメージを与えておくと当分楽になる」
「そういうものでしょうか」
「輝、御前はちと心配性過ぎるんだよ」
「少佐が楽天的過ぎるんですよ」
「おやおや」
 フォッカーは輝の反論に思わず肩をすくめさせた。
「まあそれはいいさ。そこの坊やとお嬢ちゃん、わかったな」
「はい」
「わかりました」
 二人、ゼオラは渋々ながらもそれに答えた。
「ただ少佐」
「何だい」
「あたしはゼオラって名前があるんです。お嬢ちゃんじゃありません」
「わかったよ、お嬢様」
「同じじゃないですか」
「おっと、そうだったか。ははは」
 フォッカーの明るい笑い声と共に戦いは終わった。ロンド=ベルはフロンティアの前で集結した。
「さっき話した通りこれからこっちでやらせてもらいますね」
 フォッカ^はブライトに対してそう言った。
「宜しくな」
 ブライトは微笑んでそれに応えた。
「君達が来てくれると何かと心強い」
「それは有り難い御言葉です。何せ前の戦いじゃ一緒に楽しくやらせてもらいましたからね」
「そうだな。そしてそれはこれからもだ」
「はい。まあ気楽にやりましょう」
「うん」
 ブライトとフォッカーは手を握り合った。次にシーブックとセシリーが出て来た。
「また戦いに参加するのだな」
「はい」
 二人はブライトの問いに答えた。
「その為にここに来ました」
「クロスボーンがある限り私は彼等と戦わなくてはいけないようですから」
「そうか」
 ブライトは感情を顔には出さなかった。
「色々とあるようだが頼むぞ」
「はい」
 二人は頷いた。こうしてシーブックとセシリーもロンド=ベルに加わることとなったのである。
「また賑やかになってきたな」
 ジュドーは皆がホールに集まったのを見てそう言った。
「これで獣戦機隊とかが入るともっと騒がしくなるな」
「地上で大空魔竜のチームと合流したらしいよ」
 輝が彼に対してそう答えた。
「あ、そうなんですか」
「ああ、だからいずれ一緒に戦うことになるかも知れないな」
「ふうん、何か嬉しいような懐かしいような」
「ジュドーと忍さんの声って似てるもんね」
 ここでプルが言った。
「御前とプルツーの声もそっくりだろうが」
「だってあたし達双子だもん」
「そうそう」
「厳密には双子じゃねえんだが」
 ジュドーは二人の反撃にいささか閉口しつつそう呟いた。
「そういえばフォッカーさんの声も竜馬さんの声に似てますよね」
「おっ、そうか!?」
「それに洸さんにも。本当にそっくり」
「ううむ、よく言われるけれどな」
 ルーとエルの言葉に首を頷かせていた。
「俺の声は結構パイロット向きなのかも知れんな」
「ははは、確かに」
 それを聞いて皆笑った。
「シーブックさんとバーニィさんもそっくりだし」
「あ、それは
「よく言われるよ」
 二人はここで口を揃えた。本当にそっくりであった。
「他にも結構いるよね。雅人さんとショウとか」
「ショウはトロワにも似ているよな」
 モンドとビーチャもそれについて言及した。
「ビーチャの声はアストナージさんに似てるな」
 コウの指摘も鋭いものであった。
「あとヒイロとマサキ」
「あいつ等今どうしているかな」
 そんな話をしていた。だがアラドとゼオラは今一つその話に入り込めないでいた。
「声ってそんなに似ているものなのかな」
「そうなんじゃないの?よくわからないけど」
 ゼオラは少しキョトンとしていた。
「そういうものよ」
 ここで金髪にスラリとした長身の女がゼオラに話しかけてきた。
「私も結構色んな人に声が似てるって言われるから」
「ニナさんはそう言われることが多いな、確かに」
「そういえばそうね」
 カミーユとフォウがそれに同意した。
「私は案外そう言われることがないけれど」
 ファは少し残念そうであった。
「ニナさんって声変えられるしね」
「よく知ってるわね」 
 そう言われて彼女は少し戸惑った。
「けれどそれはエマさんだって同じよ」
「私も!?」
 ニナに話を振られたエマは少し驚いていた。
「ええ」
「そうかしら。私はそうは思わないけれど」
「エマさんの声でリィナの声に似ているような気がするな」
 ここでジュドーが言った。
「似てる?」
「そうかしら」
 リィナもエマもそれには懐疑的であった。
「全然違うように思うんだが、ジュドー」
「そうですかね。俺はそうは思わないけれど」
 カミーユの言葉にも首を振らなかった。
「似てますと、二人の声は」
「そういうものかしら」
 エマはまだ首を傾げていた。
「ブライト艦長と万丈さんの声ならわかるけれど」
「あれで何回聞き間違えたか」
 皆それで困ったような顔をした。
「他にもマックスとバーンの声がそっくりだったし。一瞬あいつが二人いつかと思ったわ」
「ははは、すいません」
 クリスの言葉にマックスは笑って謝罪した。
「クリスさんの声も綾波に似てるよな」
「そうかしら」
 キースの指摘にクリスは半信半疑であった。
「こうしてみると本当に声が重なるよな」
「うんうん」
 皆そうした話をしていた。ここでブライトがやって来た。
「よし、皆揃っているな」
「はい。次の作戦ですか?」
「そうだ。よくわかったな」
「ここにいるとね。どうしてもそうなりますよ」
「そうぼやくな。次の作戦は合流だ」
「合流」
「そうだ。ドラグナーの試作機三機をこちらで引き受けることになった。その機体及びパイロット達と合流することになった」
「はあ。場所は何処でしょうか」
「ここからすぐの宙域だ。あちらから指定があった。三日後に合流したいとのことだ」
「じゃあそれまで休めますね」
「うむ。期日までこのフロンティアに停泊し英気を養うことにしたい。皆それでいいな」
「はい!」
 一同喜んでそれに答えた。
 こうして戦士達は束の間の休息に入った。だがそれは本当に束の間の休息であった。彼等はまた戦場に向かわなければならないのだから。

第六話    完



                                 2005・2・8


[244] 題名:フロンティア 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 22時44分

            フロンティア
 シャングリラでの戦いを終えジュドー達を迎えたラー=カイラムは次にフロンティアに向かっていた。そこでティターンズの傘下に加わっていたクロスボーン=バンガードのモビルスーツが見られたからだ。
「今度はクロスボーンか」
 ジュドーは艦内の一室でビーチャ達とくつろぎながらぼやいていた。
「何か連中もしぶといな。鉄仮面も死んだってのに」
「本当に死んだかどうかまではわからないぞ」
 ここでカミーユが言った。
「ジャミトフやバスクもドゴス=ギアが沈められても生きていただろう」
「それは確かに」
 皆カミーユの言葉に頷くしかなかった。
「じゃあフロンティアにもあのラフレシアがいるかも知れないわね」
 ルーが口に手を当てながら言った。
「いや、それはないだろう。あんなデカブツとてもコロニーに入りきれないさ。バグを送り込む位だろう」
 ビーチャがそれに反論した。
「もっともそれだけで問題だがな」
「確かに」
 コウの言葉は的をえていた。
「ラフレシアの怖ろしさはそこにもあるんだ」
「ええ」
 皆それに頷いた。
「確かにラフレシアは脅威だけれどな」
 ここで後ろから声がした。
「けれどここにはいないぜ。これは確かな情報だ」
「本当ですか?」
 一同それを聞いて後ろに顔を向けた。そこには金髪で鼻のやや高い男がいた。
「ああ、俺がここに来る前に司令部で聞いた話だ。奴は今ゼダンの門にいる」
「ビルギットさん」
 彼等はその男ビルギット=ピリヨの名を呼んだ。
「こっちに転属になったんですか」
「ああ。ヘンケン艦長の意向でな。攻める方に戦力が必要だってことでな」
「ふうん」
「あっちにはケーラさんがいるしな。それにアムロ少佐も」
「それ程多くの戦力は要らないということですね」
「そういうことになる」
 アムロの名を知らぬ者はいなかった。ロンド=ベル、いや連邦軍を代表するエースパイロットであった。そのパイロットとしての技量は最早伝説の域にまで達していた。
「しかも量産型のF91までもらったよ。ヘンケン中佐も気前がいい」
「それは凄い。いつものジェガンじゃなくて」
「ああ。それだけじゃないぜ」
「他にもあるんですか?」
「オリジナルのF91にビギナ=ギナもだ。もっともこれはパイロットがいないようだがな」
「ええ、まあ」
「俺達もう皆乗っていますし。それもかなりいいのが」
「F91もビギナ=ギナもあたし達には合わないよお。やっぱりキュベレイでないと」
「そうだな。あたしもあの赤いキュベレイが一番いい」
 彼等は口々にそう言った。
「そんなもんかな。俺は量産とはいえF91に乗れてかなり気分がいいんだがな」
 いつもジェガンに乗っている者としてはこれは当然かも知れなかった。
「バニング大尉はどう思われてるかはわからねえがな」
「上機嫌だったよ」
 キースがビルギットに答えた。
「やっぱり大尉もガンダムに乗れて嬉しいみたい。それに操縦も手馴れたものだったよ」
「あの人の操縦は別格だからな。ああ、そうそう」
 ここで彼は何かを思い出した。
「大尉に新兵を紹介しなくちゃいけないんだった」
「新兵?」
「ああ、俺の他に二人来ているんだ。連邦のパイロット養成学校を卒業した二人がな」
「へえ」
 ジュドーもカミーユもそれを聞いて声をあげた。
「専門のパイロットですか」
「ああ。テスト用に機体と一緒にな。残念だがモビルスーツじゃない」
「まあそういったのもあるでしょ。連邦軍だってモビルスーツばかりに頼ってはいられないし」
「ドラグナーの計画もあった筈だ」
 ジュドーとカミーユは口々にそう言った。
「そういうのもありかな。SRXもあったし」
「リュウセイ達元気かなあ」
 中にはかっての仲間達を懐かしむ者もいた。
「それでその二人だけれどよ」
 ビルギットが話を戻した。
「あの男の子と女の子?」
 ここでフォウが部屋に入って来た。
「ああ。知ってるのか?」
「はじめて見る顔だったから。さっきモンシアさんとヘイトさんが艦橋に連れて行ったわよ」
「えっ、もうか!?」
「ええ。何でも挨拶が先だって。ビルギットさんは挨拶は済ませたの?」
「おうな。そうか、もう行ったのか」
 彼は少し残念そうに答えた。
「何か先を越された気分だな」
 何処か悄然としない彼であった。その時艦橋では一組の男女がブライトの前にいた。
 紫の上着に黒いズボン、銀の肩当てを身に着けた紫の髪のまだあどけなさの残る少年と青緑の胸が大きく開いた上着に黒いかなり丈の短いスカートを履いた銀髪の綺麗な顔立ちの少女がいた。少女の方がニ三歳程年上であるようだ。そのせいか彼女が右にいた。
「ゼオラ=シュバイツァー少尉です」
 少女がまず敬礼して答えた。
「アラド=バランガ少尉です」
 少年も答えた。二人共階級は同じであった。
「ブライト=ノア大佐だ」
 ブライトは返礼して答えた。
「このラー=カイラムの艦長を務めている。以後宜しくな」
「はい」
「宜しくお願いします」
 二人はそれに応えた。
「君達二人はパイロット学校を卒業してロンド=ベルに配属されたのだったな」
「はい」
「テスト用の機体と共にか。ビルトビルガーとビルトファルケンだったな」
「はい」
 二人はまた答えた。
「マオ社の製造か。百舌と隼か」
 ブライトはその機体の名を呟いた。ドイツ語で百舌と隼の意味であるのだ。
「いい名前だな」
「大佐もそう思われますか?」
 それを聞いたアラドの目が輝いた。
「あ、ああ」
 ブライトは彼が急に態度を変えたのでいささか驚いた。
「私はそう思うが」
「よかった。何て言われるか不安だったんですよ」
「そうだったのか」
「はい。スクールでは何か古いネーミングだって言われてきましたから」
「ふむ」
 それを聞いてブライトは思うところがあった。確かにかってのドイツ軍の戦闘機の名前を彷彿とさせるものがそこにはあったからだ。
「けれどよかったです。大佐にそう言って頂けると」
「ちょっとアラド」
 ここでゼオラがアラドを咎める声を出した。
「な、何!?」
「大佐の前でそんな態度はないでしょ」
「いや、構わない」
 しかしその程度のことを気にするブライトでもなかった。
「それに私のことは艦長でいいからな。どうも堅苦しいのはこの隊には合わないからな」
「そうなんですか」
「アムロともそうだしな」
 ここで彼は長年の戦友のことを出してきた。
「あいつとは階級や経歴こそ違うがな。それでも砕けて話をしている。中には全く命令を聞かない連中もいた」
 ジュドーや忍達であるのは言うまでもない。
「そうしたこともこの隊には多い。民間人も多いということもあるが」
「民間人も」
 それを聞いたゼオラは思わず表情を変えた。
「あれ、知らなかったのか!?」
 アラドはそんな彼女に対して言った。
「コンバトラーチームもマジンガーチームもそうだぜ」
「そ、そうだったの」
「そう、アラドの言う通りだ」
 ここでブライトが言った。
「彼等は民間人だ。あくまで協力しているという形でな」
「知らなかった」
「それ位常識だろ。そんなんだから頭でっかちって言われるんだよ」
「何よ、あんたには言われたくないわ」
 それを聞いて怒った。
「あんたはどうなのよ。いつも私が助けてあげなきゃ何もできないじゃないの」
「誰が助けてくれなんて頼んだんだよ」
 アラドはそう言われて怒った。
「お節介はいらないんだよ」
「そうしなきゃ何もできないくせに」
「そんなんだから年増って言われるんだろ」
「何ですってえ」
 二人はブライトの前で口喧嘩をはじめていた。バニングがそんな二人を制止した。
「馬鹿者、艦橋で何をやっている」
「あっ」
 二人はそう言われハッとした。
「す、すいません」
 そして慌てて離れた。
「まだ若いとはいえ御前達も将校だ。ならばそれらしい行動を心掛けろ」
「は、はい」
「申し訳ありませんでした」
 怒られて畏まる二人であった。
「わかればいい。では艦長」
 二人を大人しくさせるとブライトに声を向けた。
「うむ」
 それを受けてブライトは頷いた。
「それではパイロット達を集めてくれ」
「わかりました」
 彼は敬礼をして応えた。そして言われるがまま他のパイロット達を艦橋に集めた。全員集まると彼は言った。
「今回の作戦はフロンティアとなった」
「フロンティア」
「またあそこか」
 皆そこはよく知っていた。
「そうだ。クロスボーン=バンガードが接近しているらしい」
 ブライトは皆にそう説明した。
「我々の作戦は彼等の撃退だ。そしてフロンティアを防衛することだ。いいな」
「了解」
 皆それに頷いた。
「これからすぐに出撃してもらう。全機出撃用意は整っているな」
「はい」
 皆頷いた。
「何時でもいけます」
「それなら話は早い。今すぐ出撃する」
「了解」
「敵はもうすぐ側まで来ているらしい。すぐに迎撃態勢をとれ、いいな」
「はい!」
 皆それに答えた。そしてそれぞれモビルスーツに乗り出撃した。ラー=カイラムはフロンティアの前方に展開し、モビルスーツ部隊は四機ずつの小隊を組みその周りに展開する。そして敵を待った。
「来たぞ」
 先頭にいるバニングが呟いた。レーダーに反応があった。
「敵接近中、その数五十」
 彼はラー=カイラムに報告する。
「敵艦二隻、いずれも大型艦と思われる」
「了解」
 それを聞いたトーレスが頷く。
「艦長、敵が来ました」
「うむ」
 その通信はブライトも聴いていた。
「全機攻撃用意、それぞれ攻撃態勢に入れ」
 各機にその通信が入る。
「一機たりともフロンティアに近付けるな。いいな」
「了解!」
 各機から返答が来た。そして敵を待ち受ける。すぐに敵が来た。
「ドレル様、フロンティア周辺に敵が展開しています」
 黒い小型の騎士に似たシルエットのモビルスーツ、ベルガ=ギロスに乗る隻眼の男が隣の赤紫のモビルスーツ、ベルガ=ダラスに乗る紫の髪の青年に尋ねた。
「わかっている」
 その青年、ドレル=ロナはそれに答えた。
「当然と言えば当然だな」
「はい」
 隻眼の男はそれに頷いた。
「それではこのまま進みますな」
「無論」
 ドレルはその問いに対して強い声で答えた。
「それ以外にどうするつもりだ」
「いえ」
「ザビーネ=シャル」
 ドレルは彼の名を呼んだ。
「はい」
「卿とその部隊が先陣を務めよ。よいな」
「わかりました」
「第二陣は私が率いる。そして戦艦は我々の援護に回れ」
「了解」
 戦艦からも返事が返ってきた。
「敵を退けフロンティアを制圧する。そしてそれからべラを手に入れるぞ」
「はい」
「べラがいなければ何もはじまらんからな」
 ドレルはここでこう呟いた。
「では頼むぞ」
「わかりました」
 ザビーネは頷いた。そしてクロスボーン=バンガードはロンド=ベルの前に姿を現わした。
「来たか」
 ブライトは敵機を見て言った。
「援護射撃の用意をしろ。いいな」
「了解」
 トーレスとサエグサが頷く。それと共に主砲が動く。
「間違ってもジュドー達に当てるなよ」
「わかってますって」
 彼等は明るい声でそう応えた。
「もっとも連中が戦艦の主砲にそうそう当たるとは思えませんがね」
「ふふふ、確かにな」
 ブライトもそれは同意であった。
「カミーユもジュドーもかなりの力量だからな」
「はい」
「もう少しでアムロの域に達するのも夢ではなくなるぞ」
「まさか」
「私はそう見ているがな」
 だがブライトはそれにも応えた。
「ただアムロはさらに上の域にまでいくかも知れないが」
「少佐は特別ですからね」
「あれはもう天才ですよ」
「天才か」
「ええ」
 サエグサとトーレスはそれに頷いた。
「あれは間違いないでしょう。ニュータイプってこともありますが」
「それを抜いても凄いですよ」
「確かにな」
 それはブライト自身が最もよくわかっていることであった。
「けれどカミーユとジュドーが凄いのは本当ですね」
 トーレスはここでこう言った。
「それはな」
 サエグサもそれを認める。
「これでシーブックもいれば完璧なんだがな」
「今どうしているかな」
「フロンティアにいるだろ、今も」
 二人はこう話していた。ここで後ろからモビルスーツが一機近付いてきた。
「ん!?」
 まずブライトがそれに注視した。
「ダギ=イルスか」
「はい」
 すぐに女の声で通信が入って来た。
「アンナマリーです。ブライト大佐、お久し振りです」
 茶の髪の青い瞳の黒人の女がモニターに映った。アンナマリー=ブルージュである。かってクロスボーンに所属していたパイロットだ。
「ああ、元気だったか」
 ブライトは彼女の顔を見て声をかけた。
「はい。今回はロンド=ベルに加えて頂きたくこちらに参りました」
「それは何より」
「それで一先ラー=カイラムに入って宜しいでしょうか」
「構わないが。一体どうしたのだ?」
「詳しい話は後で。まずは着艦の許可をお願いします」
「何かあるな」
 ブライトはそれを見て思った。
「わかった。では着艦を許可する」
「有り難うございます」
 それを受けてアンナマリーの乗るダギ=イルスはラー=カイラムに着艦した。その頃にはもう戦闘がはじまっていた。
「おっまかせえ!」
 ビーチャが叫ぶ。そしてビームライフルからビームを放った。
 それでベルガ=ギロスが一機撃墜される。その側にはガンダムチームが展開している。
「ビーチャ、あまり前に出るなよ」
 モンドが彼に声をかける。
「わかってるさ!」
「あたしもいるんだからね!」
 エルの声もする。
「僕も」


[243] 題名:超獣機神 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時29分

            超獣機神
 富士においてハニワ幻人達との戦いを終えた甲児達は大空魔竜に乗り込み獣戦機隊がいる厚木に向かっていた。富士から厚木までは目と鼻の先である。
「さて」
 大文字は時計を見ながら言った。
「明日の朝に着けばいい。今日はここで休息をとるとしよう」
「了解」
 ピートはそれに応えて大空魔竜を手頃な場所に着地させた。そしてそこで休むこととなった。
「出発は明日の七時だ。それまで各員英気を養うように」
「わかりました」
 皆それに従いそれぞれ休息に入った。食事を採った後でくつろぐ。中には身体を鍛える者もいた。
「一、ニ・・・・・・」
 鉄也はトレーニング室でダンベルを挙げていた。
「一、ニ・・・・・・」
「鉄也さんも頑張るねえ」
 甲児はその隣で自転車をこいでいた。二人共ジャージである。
「毎日よく続くよ」
「トレーニングは毎日してこそだからな」
 彼は流れる汗を拭きながら甲児にそう答えた。
「それは甲児君だってそうだろう」
「俺はちょっと違うけれどね」
「そうなのか」
「ああ、単なる腹ごなしさ。腹いっぱい食った後は動かないと気が収まらないんだ」
「そりゃあんだけ食えばな」
 サンシローが甲児に言った。彼は腹筋をしている。
「ヤマガタケ並に食うんだもんなあ」
「そんなに食ってるかなあ」
「食い過ぎだよ」
 サンシローはその言葉に苦笑した。
「ピッチャーは試合前なんか殆ど食えないのにな」
「そういやそうだったな」
「ああ」
 サンシローの顔が真摯なものになった。
「それに空腹の方が神経が研ぎ澄まされるんだ。まるで野生になったようにな」
「これから会う連中と同じだな、それだと」
 隼人が彼に対してこう言った。
「そうなのか」
「ああ、御前さんに負けない位熱い奴等だぜ」
「熱いだけじゃねえけどな」
 甲児も言った。
「とにかく血の気の多い連中でな。何かっていうとすぐ喧嘩になるからな。気をつけろよ」
「そんなに凄いのか」
「まあな。命令無視に喧嘩にってトラブルの塊みたいな連中だ」
「悪い奴等じゃないんだがな。実力もあるしな」
「ふうん」
 サンシローは甲児と隼人の説明を聞きながら頷いた。
「それでも何か軍人には思えないな、とても」
「それはあるな」
 甲児はその言葉に応えた。
「けれど一応軍人だぜ。階級もある」
「そうなのか」
「まあそれは行ってからのお楽しみだ。会っていきなり喧嘩売られないように気をつけろよ」
「わかった」
 こうして彼等はトレーニングを続けながら話をしていた。それが終わるとシャワーを浴び眠りに入った。そして次の日の朝予定通り厚木に向かった。
 
 厚木はかっては自衛隊及びアメリカ軍の基地があった。かなりの規模の基地であり今は連邦軍の基地として使われている。多くのモビルスーツや戦闘機等がここに置かれていた。
「しかし何時来てもここはでけえな」
 黒い髪に険しい目をした男が滑走路を眺めながらそう言った。黄色っぽい作業服を着ている。連邦軍のものである。
「そうだな」
 細面の長身の男がそれに応えた。
「流石は連邦軍の一大航空基地なだけはある」
「それだけじゃないからね」
 赤い髪の小柄な青年がここに入って来た。
「俺達もいるし」
「そうだな」
 黒髪の男がそれを聞いて笑った。
「今まで何かと暇だったんだ。これからはまた大暴れさせてもらうぜ」
「あんたは変わらないね、ホントに」
 ピンクの長い髪をしたいかにも気の強そうな女が呆れた顔で黒髪の男に言った。
「そんなんだから三輪長官に睨まれるんだよ」
「それは御前もだろうが」
 黒髪の男はそれを聞き少し怒ったような声で言った。
「この前あのおっさんに面と向かって罵倒しただろうが」
「あれは当然だよ」
 女はそう反論した。
「何処にあんな無茶な命令出す奴がいるんだよ」
「確かにそうだけれどよ」
 どうやらそれは同意なようである。
「けれど掴みかかろうとするのは幾ら何でも駄目だろう」
「全くだ」
 細面の男が呆れたような言葉を出した。
「沙羅、御前はもう少し落ち着いた方がいいぞ」
「亮」
 その女結城沙羅はその言葉に反応し細面の男司馬亮に顔を向けた。
「けどあんただって同じ考えでしょう」
「まあな」
 亮はそれを否定しなかった。
「俺もあの長官は好きじゃない。だがな」
「だが・・・・・・何よ」
「俺達は軍人なんだ。命令には従わなくではならない」
「一応そういうことになってるな」
 黒髪の男はそれに頷いた。
「忍は全然守っていないけれどね」 
 赤い髪の男がからかうようにして黒髪の男、藤原忍に対して言った。
「雅人も人のこと言えねえだろうが」
「あらら」
 赤髪の男、式部雅人はその言葉におどけてみせた。彼等が獣戦機隊のパイロット達である。彼等のロボットが合体してダンクーガになるのである。
「おい、四人共」
 ここで後ろから彼等を呼ぶ声がした。
「ちょっと来てくれ。司令が御呼びだ」
 白衣を着た白い髪の男がそこに立っていた。
「博士」
 彼等はその男の方に顔を向けた。その獣戦機の開発者である葉月健太郎である。
「君達のこれからについて話がある。いいな」
「了解」
 四人は彼に連れられて司令室に向かった。そこにはいかめしい顔立ちをした男がいた。厚木の基地司令に就任したロス=イゴールである。
「四人共よく来てくれた」
 イゴールは四人が部屋に入るとまずそう声をかけた。
「はい」
 亮が四人を代表して応えた。
「俺達の今後のことで話がるとか」
「うむ。今恐竜帝国やハニワ幻人達が活動しているのは知っているな」
「はい」
「それで君達には出向して欲しいのだ」
「何処にでしょうか」
「大空魔竜隊だ。実は今あちらから要請があったのだ」
「大空魔竜隊・・・・・・ああ、彼等ですか」
 亮はその名を聞いて頷いた。
「亮、知っているのか!?」
 忍がここで彼に尋ねてきた。
「ああ。地球防衛の為に作られた部隊だ。大文字博士を司令にして多くの民間人で構成されている」
「というとゲッターやコンバトラーと同じか」
 雅人がそれを聞いて言った。
「そうだな。似ているといえば似ている」
 亮はそれに応えた。
「だが規模がかなり違う。大空魔竜隊は戦艦まで持っている」
「へえ、そりゃ凄いね」
 沙羅が驚きの声をあげた。
「よく知っているな、司馬」
「実は知り合いがいまして」
 亮はイゴールにそう答えた。
「あそこにいるファン=リーってやつとは以前手合わせしたことがあるんですよ」
「拳法でか」
「あっちはキックボクシングですけれどね。中々腕の立つ奴です」
「そうだったのか。では話が早いな」
「ええ」
「それにマジンガーやゲッターも彼等と一緒にいるらしい。よろしくやってくれ」
「あいつ等もいるのか」
 忍はそれを聞いて呟いた。
「また喧嘩ができるね」
 雅人がそこに突っ込みを入れた。
「こら、二人共」
 ここで葉月が二人を嗜めた。
「私も同行する。勝手な真似は許さないぞ」
「えっ、博士も!?」
「当然だ」
 彼は四人にそう答えた。
「私がいなくてはダンクーガに合体できないだろう」
「確かに」
「それに整備も必要だ。私も同行させてもらうぞ」
「整備なんて俺達だけでできるのになあ」
「全くだぜ」
 雅人と忍はとりわけ不満そうであった。暫くして通信が入った。
「来たか」
 それは大空魔竜の到着を告げる通信であった。イゴールと葉月、そして四人はそれを受けて滑走路に出た。やがてそこに青い巨大な恐竜が姿を現わした。
「でけえな」
 忍達はそれを見て思わずそう呟いた。
「ホワイトベースよりずっと大きいわね」
「ああ」
 その大きさは彼等の予想を超えたものであった。四人はその大きさに言葉を失っていた。
「これから我々はあれに乗って戦うことになる。いいな」
「了解」
 答えはしたがまだ驚きが残っていた。
「では頼んだぞ。思う存分戦って来い」
「長官はどうするんですか?」
「そうそう、あたし達がいなくて大丈夫なの?」
「それは心配するな」
 ここでイゴールの隣に一人の男が出て来た。
「俺とブラックウィング隊がいるからな」
「アラン」
 イゴールの息子でありブラックウィング隊の隊長であるアラン=イゴールが出て来た。
「ここだけじゃなく関東も守ってみせるからな。それは安心してくれ」
「頼めるか」
「ああ」
 亮に答えた。
「任せておけ。こういった時の為の俺達だからな」
「じゃあ宜しくな。また会おうぜ」
「おう」
 忍にも挨拶をした。その間に大空魔竜は着地していた。まるで地震の様に大地が揺れた。
 そして中から人が出て来た。大文字である。
「ようこそ、厚木へ」
 イゴールが前に出て挨拶をする。
「私がこの基地の司令ロス=イゴールです」
「どうも」
 大文字が手を差し出した。
「大空魔竜隊を預かる大文字洋三です」
 イゴールはその手を握った。こうして両者の挨拶は終わった。
「先程お伝えしたことですが」
「ええ、わかっております」
 イゴールはそう返した。
「獣戦機隊ですね。彼等はそちらに合流させます」
「それは有り難い。これで我々の戦力はさらに充実します」
「そちらはこれから何かと大変でしょうからな。こちらも出来る限りの協力をさせてもらいます」
「はい」
 忍達四人と葉月も前に出た。葉月が挨拶をする。
「はじめまして、大文字博士」
「おお、貴方が」
「はい。ダンクーガの設計者である葉月健太郎博士です」
 イゴールが紹介をする。
「以後彼も同行します。宜しくお願いします」
「こちらこそ」
 大文字は紳士的に対応する。非常に落ち着いたその物腰にイゴールは好感を覚えていた。
(彼なら大丈夫だな)
 そう考えていた。
(藤原達も使いこなせることが出来る。三輪長官に任せておいては不安だったが)
 彼もまた三輪には危険なものを感じているのである。だからこそ忍達を基地から外したという側面もあった。事情は複雑であった。
「それでは」
 彼等はここで格納庫に顔を向けた。
「獣戦機隊を収納しましょうか」
「はい」
 忍達は格納庫に向かった。その時だった。基地に警報が鳴り響いた。
「ムッ!?」
 皆それを聞いて顔色を変えた。
「敵か!?」
 その予想は不幸にして的中した。兵士が一人駆けて来た。
「長官、大変です!」
「敵襲か!」
「はい、恐竜帝国が基地に迫って来ております。既に基地から間も無くの場所にまで来ております!」
「ぬうう、何時の間に」
「既にジェガンを数機スクランブルさせていますがとても対処出来ません!至急指示をお願いします!」
「わかった。藤原」
「おうよ」
「君達はすぐに出撃してくれ。そしてダンクーガに合体だ」
「了解」
「我々も戦闘用意だ」
 大文字は後ろにいる大空魔竜のスタッフ達に振り向いた。
「いいな」
「わかりました」
 彼等はそれを受けてすぐに大空魔竜に入る。忍達は既に格納庫へ駆けている。
「俺達の行くぜ」
 アランが父に言った。
「スクランブルの用意はできているんだろ」
「ああ」
 父は息子に対して頷いた。
「じゃあ出る、すぐにな。藤原達が合体するまでの時間稼ぎだ」
「やってくれるか」
「その言葉は適切じゃないな」
 ここでこう答えた。
「いつものことさ。言う必要はないよ」
「・・・・・・そうか」
「そういうことさ。じゃあ出るぜ」
「うむ」
 アランは側にあった車を拾った。そして滑走路にある黒い戦闘機に乗った。そしてすぐに出撃する。後に同じような黒い戦闘機達が続く。
 その間に大空魔竜の中でも動きがあった。こうして恐竜帝国を迎え撃つ準備が整っていた。

 その時恐竜帝国の者達は厚木からすぐの場所に進出していた。
「さて、攻撃準備は整っているな」
 髭を生やした男が後ろに控える鎧の男に問うた。
「ハッ」
 鎧の男は自信に満ちた声でそれに応えた。
「既に整っております、叔父上」
「そうか。ならばよい」
 この髭の男はバット将軍、恐竜帝国の重鎮である。そして鎧の男はザンキ、彼の甥である。
「ではわしはグダに乗る。御前はゼンUに乗り最前線の指揮を執れ」
「わかりました」
「すぐに総攻撃にかかる。一気に押し潰す。よいな」
「了解」
 ザンキは叔父に対して敬礼した。そして彼の言葉に従いゼンUに乗り込んだ。こうして恐竜帝国の攻撃が開始されたのであった。
 陸と空を埋め尽くさんばかりの数で攻めにかかる。その前にはジェガンが数機いるだけである。
「な、何て数だ・・・・・・」
 彼等はその数を見ただけで戦意を喪失していた。
「とてもかなわないぞ」
「そうだ、無理をするな」 
 ここで通信が入った。
「俺達に任せろ。すぐに後ろに下がるんだ」
 黒い戦闘機がそこにやって来た。ブラックウィングである。
 すぐに恐竜帝国のメカに攻撃を仕掛ける。そして次々に撃破していく。
「いいな。それよりも基地を頼む」
「りょ、了解」
 ジェガンのパイロット達はそれに頷く。そして後方に下がっていった。
「さて、と」
 アランは目の前の敵達に目をやった。
「これはやりがいがあるな。見渡す限り敵しかいない。思う存分やってやるか」
「待ちな」
 だがここで声がした。
「俺達がいるってことを忘れてもらっちゃあ困るぜ」
 甲児の声であった。マジンガーZがそこにいた。
 マジンガーだけではなかった。グレートマジンガーやアフロダイAもいた。そしてガイキングやゲッターもいた。
「アランさん、ここは俺達に任せてくれよ。こいつ等は俺達にとって宿敵だからな」
「おいおい、君達だけでやるつもりか」
「あれっ、悪いんですか?」
「たまには俺にも活躍させてくれ。バルマーとは一緒に戦った仲じゃないか」
「けどいいんですか?こいつ等かなり手強いですよ」
「それは承知しているさ」
 彼は不敵にそう答えた。
「だからこそ戦いがいがある」
「成程」
「そういうことだ。俺も祭りに参加させてもらう」
「了解」
 皆それを認めた。そして同時に攻撃に移った。
「隼人、弁慶、行くぞ!」
「おう」
「わかってるぜ!」
 ゲッターチームはとりわけ気合が入っていた。まずは変形に入った。
「オーーーーープンゲエエエエーーーーーーーット!」
 竜馬が叫ぶ。そして三人はスイッチを押した。
「チェーーーーーンジライガーーーーーースイッチオン!」
 隼人が叫んだ。するとゲッタードラゴンは分裂し三機の戦闘機となった。
 そして空を舞う。それから合体し青いロボとなった。
「行くぞ、二人共!」
 隼人がゲッターを駆る。そしてまずは目の前の敵に右手を突き出す。
「チェーーーンアタック!」
 右手から分銅がついた鎖を発射する。それでギロの首を絡め取った。
「うおおおおおっ!」
 そしてそのまま振り回す。それから空中に放り投げた。
「ガオオオオオンッ!」
 ギロは断末魔の叫びをあげて爆発する。ライガーはその叫びを聞く間のなく次の攻撃に移っていた。
「ライガーミサイル!」
 空中にいるシグを撃つ。一撃で破壊した。恐るべき威力であった。
 そのまま敵の中に突っ込む。そして次々と撃破していく。
 ライガーの後ろに続く形で他のロボットも突っ込む。戦いは一気にゲッター達に傾いていた。
「ぬうう、何という強さだ」
 ザンキはそれを見て歯噛みしていた。
「ザンキ、何をしておるか!」
 ここでバットから通信が入った。
「それでもわしの甥か!武門の家として恥を知れ!」
「ハッ、申し訳ありません」
 彼は表面上はそう謝った。だが内心では舌打ちしていた。
「わしも前線に行く。もう見てはおれん」
「いえ、そこまでは」
「このままでは我が軍の敗北だ。言い訳は許さんぞ」
「わかりました」
 不承不承ながらもそれに従った。
「今すぐ予備兵力を全て投入する。よいな」
「ハッ」
 彼はそれに従った。
「ではそれまで前線を維持致します」
「当然だ。醜態を晒すなよ」
「わかりました」
 ここで通信は一旦切れた。ザンキはそれを確かめてから舌打ちを露にした。
「フン、今に見ておれよ」
 そして彼は戦場に目を移した。
「今にとって代わってやるからな。俺を甘くみるなよ」
 その間にもゲッター達は恐竜帝国のメカを次々と撃破していた。バットの軍が到着する頃には戦線はもう崩壊寸前であった。
「おのれ、ゲッターめ」
 バットはその戦線を見て口を歪めさせた。
「この借り、今から百倍にして返してやろうぞ」
 そしてグダを前に出してきた。
「行け、恐竜帝国の誇り高き戦士達よ!」
 飛行甲板から戦闘機を次々に送り出していく。
「敵を滅するがいい!そして恐竜帝国の誇りを見せてやるのだ!」
 戦闘機はマジンガーやゲッターに襲い掛かる。特にボスボロットを狙っていた。
「こんなくそおっ!」
 ボスはそんな戦闘機を何とか殴り潰そうとする。だが当たらない。
「うう、空が飛べねえと辛いなあ」
「ボス、仕方ないでやんすよ」
「そうそう、ここは諦めて後ろに下がりましょう」
 後ろにいる二人がそう言ってフォローする。
「ちぇっ、じゃあいつも通り補給役に徹するか」
「そうそう」
 こうしてボスボロットは後ろに下がった。その間にも恐竜帝国の戦闘機達がマジンガー達に襲い掛かる。しかし彼等はそれをものともしない。
「やはり手強いな」
 バットはそれを見てさらに顔を顰めさせた。
「ならばこのグダで倒すか」
 グダを最前線に出そうとする。
「ザンキ、御前も来い」
「ハッ」
 ザンキもそれに従う。彼は残った戦力を再編成し攻撃を仕掛けようとする。だがここで新手が来た。
「待たせたな!」
 四機の獣の姿をしたロボットが戦場にやって来た。
「来たか!」
 甲児はそれを見て叫んだ。
「あれがダンクーガか!?」
 ジーグはそれを見て言った。
「ああ。見てな、これから凄いもんがはじまるからよ」
 甲児は楽しそうな声でそう言う。そしてそこで葉月の通信が入った。
「藤原、いいな」
「おう、何時でもいいぜ」
 忍は彼にそう答えた。
「沙羅、雅人、亮、いいか!」
 鷲のマシンに乗る忍が豹、獅子、そして象に声をかけた。
「あたしはいいよ!」
「俺も!」
「すぐにでもいけるぞ!」
 三人はそれに答えた。こうして合体がはじまった。
「データキーワードロック解除」
 忍はイーグルの前のコンピューターのロックを解除した。
「キーワードD・A・N・C・O・U・G・A。ダンクーガ!」
 そして叫んだ。
「うおおおおおおおおおっ!やっっっっっっっってやるぜ!」
 思いきり叫ぶ。そして四機のメカが変形した。
 沙羅の乗るランドクーガーと雅人の乗るランドライガーが獣の姿から足になる。そして亮の乗るビッグモスが重なる。忍の乗るイーグルファイターが頭になる。そしてそれぞれ重なった。
 光がその巨体を包んだ。そしてそこに黒い巨大なロボットが姿を現わした。
「あれがダンクーガか」
 ジーグはその姿を見て呟いた。
「凄い気を感じるな」
「そりゃそうだろ」
 甲児がそれに応えた。
「ダンクーガはあいつ等の闘争心をそのまま力にしているからな。だから気もすげえんだ」
「そうなのか」
「そしてすげえのは気だけじゃねえぜ」
 甲児は言った。
「見てな。俺のマジンガー程じゃねえがとんでもねえ強さだからな」
「それは面白いな」
 ジーグはそれを聞いて笑った。
「だが強さなら俺も負けちゃいねえぜ」
「そうかい。じゃあ見せてくれよ」
「おう」
 ジーグはそれに答えて跳んだ。そして前にいるサキに襲い掛かった。
「うおおおおおおっ!」 
 そしてその胴を掴む。そのまま両手で締めつけた。
「ジークブリーカーーーーーーッ!」
 一気に押し切った。そしてその胴を砕いた。サキは断末魔の叫びをあげることもなく爆発四散した。
「どうだ」
 ジーグは甲児に顔を向けて問うた。
「やるじゃねえか。俺も気合入れなくちゃな」
 彼も奮起した。そして再び戦いに入るのであった。
 ダンクーガが戦場に到着した。まずは剣を取り出した。
「断・空・剣」
 それで敵を切り裂く。斬りつけられた敵が唐竹割りになり爆発する。そしてザンキの乗るゼンUに顔を向けてきた。
「あれが敵の指揮官の一人みたいだね」
 沙羅が他のメンバーに対してそう言った。
「らしいな。雰囲気が違う」
 亮がそれに同意する。
「ならすぐにやっちゃおうよ。もう敵はかなり減ってるし」
「雅人の言う通りだな」
 忍がここでこう言った。
「やるぜ、一気にかたをつける」
「了解」
 他の三人がそれに頷いた。ダンクーガはそれを受けて全身に力を溜めた。
「行くぜ、断空砲フォーメーションだ」
「よし!」
 亮が頷く。ダンクーガの支持アームを伸ばしてビッグモスの主砲を出してきた。
「行いいけえええええええっっっっっっ!!」
 忍は絶叫した。そしてその主砲をゼンUに向けて放つ。それは一直線に向かった。
「うわっ!」
 あまりもの速さにかわすことはできなかった。ザンキはそれをまともに受けてしまった。
 ゼンUは大破した。爆発するのは時間の問題となった。
「おのれっ、覚えておれよっ!」
 ザンキは捨て台詞と共に脱出した。そして何処かへと去って行った。
「フン、情ない奴だ」
 バットは甥の不甲斐無い姿を見て舌打ちした。
「だがまだまだわしがいる。そう簡単にはやられんぞ」
「果たしてそうかな」
 ライガーに乗る隼人がそれを聞いて不敵な笑みを漏らした。
「御前さんの乗るその空母もかなりのダメージを受けているようだがな」
「この程度でか」
 しかしバットはその言葉にも笑っていた。
「わしも恐竜帝国も甘く見られたものよ。哺乳類共にここまでコケにさえるとはな」
「じゃあ違うという証拠を見せてみろ」
 鉄也がグダの上に飛びながら言った。
「御前のその主張が正しいということをな」
「言われずとも」
 バットはそれに対しても余裕の笑みで答えた。
「この戦闘機達で見せてやろうぞ」
 そして搭載している戦闘機を全て出してきた。
「まだだ!」
 その上で砲撃を開始してきた。
「これが貴様等にかわせるかな!」
「戯れ言を」
 しかし隼人の声は冷静なままであった。
「戦闘機程度で俺達の相手が務まると思っているのか!」
「そうだ、あまり俺達を甘く見るんじゃねえぞ」
 弁慶もそれに同意した。
「リョウ、出番だぜ」
 彼は竜馬に対して声をかけた。
「おう」
 竜馬の方もそれに応えた。
「行くぞ隼人、弁慶」
「了解」
「わかってるぜ」
 二人はそれに頷いた。
「行くぞ、チェーーーーーーーンジドラゴンスイッチオン!」
 またゲッターが別れた。そして三機のメカが空中で合体する。そしてゲッタードラゴンとなった。
 ドラゴンはそのままグダに突き進む。しかし戦闘機達がその行く手を阻もうとする。そこにダンクーガが断空砲を放った。
「援護は俺達に任せな!」
「すまない!」
 ダンクーガだけではなかった。他のロボット達もドラゴンを援護する。そしてドラゴンはそのまま順調に突き進んでいった。
「ゲッターの恐ろしさ、貴様にも味あわせてやる」
 竜馬はグダの前に来るとそう呟いた。
「行くぞ・・・・・・」
 全身に力を込めた。
「シャイイイイイイイイイイイインンンンンスパアアアアアアアアアッッッッッッッッククククククク!!!!!」
 ドラゴンの全身を光が包んだ。そして一旦グダから離れると恐るべき速さで突攻に入った。
 グダの直前で離脱する。そして光をぶつけた。
「グワワワアアアアッ!」
 グダは大破した。とりわけ艦橋のダメージは深刻であった。
「このままでは!」
 艦橋にいる士官達がバットに対して言った。
「わかっておる。無念だが」
 彼は歯噛みしながら答えた。
「全軍撤退!一度退き態勢を立て直すぞ!」
「ハッ!」
 こうして恐竜帝国の軍は退いた。こうして厚木での戦いは幕を降ろした。
「どうやら敵さんは逃げたようだな」
 隼人はそれを見て言った。
「ああ。だがこれはほんの小手調べだろうな」
「それはわかっているさ」
 竜馬にそう答えた。
「あの世界でも奴等は強大だった。それはここでも変わらないだろう」
「だろうな。だが負けるわけにはいかない」
「そうそう」
 ここでマックが話に入ってきた。
「ミーが負ける筈がないしね、HAHAHAHAHA」
「そうだな、確かに」 
 隼人は彼の言葉を聞いて苦笑せずにはいられなかった。
「ジャックも貴重な戦力だしな」
 竜馬もであった。何処か彼のその楽天性に救われている一行であった。
 戦いが終わり皆基地に戻った。そして一行はイゴールの前に集まった。
「よくやってくれたな」
「いえ」
 ピートはそれに対し硬い声と態度で返した。
「これが仕事ですから」
「ふむ」
 イゴールはそれを聞いて少し眉を上げた。
「まあ俺は派手に戦えたからそれでいいですけれどね」
「もう、甲児君たら」
 さやかがそれを聞いて呆れた声を出した。
「ははは、そういった言葉がないとな」
 しかしイゴールはここで顔を崩した。
「そうでないと君達らしくない。ピート君もピート君で君達らしいが」
「そういうものですが」
「うむ。何というかな。ロンド=ベルの頃からそうだった」
 その言葉には親しみと懐かしさがあった。
「色々な個性が存在してな。そういったところも君達のいいところだ」
「その中でも俺達が特にすげえと言われてるな」
 ここで忍が言った。
「それは褒め言葉ではないぞ、藤原」
 葉月がそう言って忍を嗜めた。
「君達の素行の悪さは軍の中でもかなり問題になっているからな」
「まともにやって勝てるならそうするさ」
 だが忍はそれに反論した。
「まともにやって勝てねえ奴等だからこうやってるんだ。博士だってそれはわかってるだろう」
「私やイゴール長官はそれでも別にいいのだがな」
「なら問題はねじゃねえか」
「だからといって三輪長官にまで拳を振り上げるのはよくない。もう少しで大変なことになるところだったじゃないか」
「あのおっさんにか」
 サンシローはそれを聞いて驚きの声をあげた。
「何かとんでもない連中みたいだな」
「忍は特にそうだけれどな」
 ここで甲児が囁いた。
「まああいつはちょっと特別だからな。そう割り切ったらいいさ」
「聞こえてるぜ、甲児」
 ここで忍が彼に顔を向けた。
「おめえだって相当なもんじゃねえか」
「あれっ、そうだったっけ」
 甲児はそう言ってとぼけた。
「まあいい」
 きりのいいところでイゴールが言った。
「大文字長官、これからどうされるおつもりですか」
「はい」
 大文字はそれを受けて答えた。
「今後も戦力を拡充させていこうと考えております」
「ではビッグファルコンに行かれてはどうですかな」
「ボルテスですか」
「それだけではありません。今あそこにはコンバトラーチームもおります」
「おお、それはいい」
 大文字はそれを聞いて喜びの声をあげた。
「それではすぐに向かわせて頂きます」
「うん、そうされた方が宜しいかと。では我々はお約束通り獣戦機隊と葉月博士を出向させます」
「はい」
「それではお願いします。今後何かと大変でしょうが」
「何、それは覚悟のうえですよ」
 大文字はイゴールに対してこう言って笑った。
「大空魔竜隊は戦いの為に結成されましたから。ですからそういったお気遣いはいりません」
「そうですか」
「はい。それではこれで。すぐにビッグファルコンに向かわせて頂きます」
「お願いします」
 こうして大空魔竜はビッグファルコンへ向かうのであった。新たな仲間達を迎える為に。

第五話    完



                                    2005・2・3


[242] 題名:聖戦士2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時25分

「ドレイク=ルフト。やはりいましたね」
「チッ、見たくねえ奴が来たな」
 マサキはその巨艦ウィル=ウィプスを見て舌打ち混じりに言った。
「他にもいるね」
 リューネが前に出て来た。変形していたサイバスターの他の三機の魔装機神もやって来た。
「あれがウィル=ウィプスか」
 ヤンロンが巨体を見て呟いた。
「ああ」
「話には聞いていたが大きいな」
「大きいだけじゃない、あいつは」
 ショウは巨艦を見据えて言った。
「あの中にいるのは・・・・・・」
 言葉を続ける。
「怪物だ。皆注意するんだ」
 その時ウィル=ウィプスの艦橋に一人のスキンヘッドの大柄な男が立っていた。
 威風堂々たる姿であった。彫の深い顔立ちがそのスキンヘッドと長身によく合っている。そしてその服にも合っていた。将に覇王といったいで立ちであった。
「ビルバインがいるな」
 その男、ドレイク=ルフトは前を見据えながら左右の者に問うた。
「ハッ、グランガランやゴラオンもおります」
 側近の一人がそう答えた。
「そうか」
 ドレイクはそれを受けて呟いた。この男をバイストンウェルにおいて知らぬ者はいない。
 かってはアの国の地方領主であった。だが地上人ショット=ウェポンが召還され、オーラバトラーが開発されたのを機にその野心を開花させ、アの国を掌握し、覇道を歩みはじめた。そして地上においてもショウ達と■闘を繰り返し、バイストンウェルに戻っても戦っていた。そして今ラ=ギアスにも姿を現わしたのであった。
「バーンとガラリアはいるか」
「既に出撃準備に入っております」
「他の者は」
「同じく」
 側近達が次々に答える。
「ならばよい」
 ドレイクは報告を全て聞き終えて呟いた。
「全機出撃させよ。よいな」
「ハッ」
「ところでガラリアはどうした」
「今だ行方が知れません」
「ビショットとショットは」
「ビショット様はゲア=ガリングの調子が思わしくないようです。ショット様は御身体が」
「いつも通りか」
 ドレイクはそれを聞いて微かに舌打ちした。
「やはりな」
 だがそれは側近達には聞こえないように小さく出した。
「だがよい。ではオーラバトラー隊をすぐに出せ」
「ハッ」
 彼の命令に従いオーラバトラー達が出撃する。赤いテントウムシに似たシルエットのオーラバトラー達だ。
「ドラムロか」
 ショウ達がそれを見て言った。
「気をつけろ、オーラバトラーにはビーム兵器が聞きにくい」
「そうなのかい」
「ああ」
 タダナオがシモーヌに答えた。
「俺も一度戦ったことがあるがな。弾き返された」
「へえ」
「おまけに運動性能もいいしな。厄介な相手だよ」
「小さいしね。けれど運動性ならこっちも負けちゃいないよ」
「そういうことだ」
「うむ」
 ソルガディとジャオームが前に出て来た。
「風の魔装機の力、見せてやろう」
「行くぞ」
 そう言うとそのまま突撃をはじめた。かなりの速さであった。
「へええ」
 タダナオはそれを見送りながら感心したような声を出した。
「どうしたんだい?」
「いや、ゲンナジーだけれどな」
「ゲンナジーがどうしたんだい?」
「風の魔装機のパイロットだったんだなあ、って」
「意外そうだね」 
 これは実はシモーヌも同じ考えであった。
「あの外見だからな。ミスマッチと言えばミスマッチだよな」
「好き勝手言ってくれるな」
 ここで二人のコクピットにゲンナジーのモニターが入って来た。
「あ、聞いてたの?」
「ああ。まあそれは否定しないが」
「あらら」
「悪いね」
「本来俺は水の魔装機が合っていたのかも知れないがな」
「だろね、あんたは」
 シモーヌはそれを聞いて納得したように頷いた。
「何でだい?」
「実はね」
 タダナオの質問に答える。
「ゲンナジーは水泳の金メダリストなんだよ」
「えっ、マジ!?」
 それを聞いて思わず声をあげずにはいられなかった。
「ええ、本当よ。こう見えてもかなり動きは速いんだよ。力も強いしね」
「フッ」
 そうシモーヌに説明されて何処か得意気なゲンナジーであった。
「これでもう少し存在感があればねえ」
「・・・・・・大きなお世話だ」
 これにはムッとした。
「まあいい。御前達も来てくれ。そろそろ敵が出て来た」
 見ればウィル=ウィプスから次々と敵が出て来ていた。
「了解」
 それを見て二人は答えた。
「すぐに行くよ。任せときな」
「頼むぞ」
 ゲンナジーはそれに答えた。シモーヌはそれに答えるかわりにザインを前に出した。
「行くよ、タダナオ」
「ああ」
 タダナオに声をかける。彼もそれに従う。
 そして彼もオーラバトラーに向かって行く。リニアレールガンのボタンに手をかける。
「リニアレールガンはビーム兵器じゃなかったよな」
「ああ」
 シモーヌが答える。
「じゃあ問題はないな。どんどん行くぜ」
「頼むぜ。後ろは任せた」
 マサキの声がした。
「じゃあ任された。思う存分戦いな」
「了解」
 マサキはニヤリと笑った。同時にミオの通信も入る。
「あたしも頼むね。ゲンちゃんも」
「ゲンちゃん!?」
「ゲンナジーのことさ」
 ここでシモーヌが言った。
「ミオはそう呼んでるの。本人は嫌みたいだけれど」
「だろうな」
 それを聞いて妙に納得するタダナオであった。戦闘は新たな局面に入っていた。
 ビルバインと魔装機神達を中心として戦いが繰り広げられる。特にショウの強さは群を抜いていた。
「やるかよっ!」
 群がる敵を断ち切っていく。まさに鬼神の如くであった。
 戦局はショウ達に傾こうとしていた。しかしそれでもドレイクには余裕があった。
「行け」
 彼は呟いた。するとショウのビルバインの前に二機のオーラバトラーが姿を現わした。淡い赤のオーラバトラーと、
それとはまた違った形のオレンジのオーラバトラーであった。
「バストールとレプラカーン、まさか」
「その通りさ」
 バストールから声がした。
「ここでも会ったね、ショウ!」
「ガラリアか!」
 ショウはその声を聞いてバストールの中の女の名を呼んだ。その中には青い髪の美しい女がいた。
「そうさ、どうやらあたし達は何処までも縁があるようだね」
 その女、ガラリア=ニャムヒーはショウを嘲笑いながら答えた。
「だがそれもここで終わりにさせてもらうよ」
「どういうことだ!?」
「貴様がここで■ぬってことさ」
 彼はショウに対してそう言った。
「待て」
 だがここでレプラカーンから声がした。
「ショウ=ザマを倒すのは私だ」
「バーン=バニングス」
 ガラリアは彼の名を呼んだ。灰色の長い髪をした端整な顔立ちの男がそこにいた。
「それはわかっている筈だ。その為に私は今ここでいるのだからな」
「嫌だと言えば?」
「わかっていると思うが」
 彼は殺気に満ちた声でそう返した。
「クッ、わかったよ」
 ガラリアは引いた。
「じゃああたしはダンバインの相手でもしようかね」
「貴様の相手は別にいる」
「何!?」 
 ガラリアはその声に反応した。
「誰だい!?あの銀色のやつかい!?」
 サイバスターを指差した。
「違うな」
 だがバーンはそれを否定した。
「いらつかせるねえ。誰なんだよ」
「感じないか、この気を」
「気!?」
「そうだ」
 バーンは答えた。そこに一機新たなオーラバトラーがやって来た。青い、インディゴブルーのダンバインであった。
「ダンバインがもう一機!?」
「あれの相手をしてもらおうか」
 バーンは落ち着いた声でガラリアに言う。
「面白い」
 ガラリアはそのダンバインを見て笑った。
「あたしの相手には充分だよ。裏切り者が」
「裏切り者とはまた結構な言葉だな」
 インディゴのダンバインから声がした。
「俺にも色々と都合ってやつがあるんだがな」
 金髪の若い白人の男であった。トッド=ギネス。アメリカボストン出身の聖戦士である。ショウと共にバイストンウェルに召還され、紆余曲折の末にショウ達と共に戦うことになった男である。
「トッド、何処に行っていたんだ!?」
 ショウは彼の姿を認めて問うた。
「出た場所が俺だけ違ってな。これも日頃の行いってやつか」
 それに対してトッドはややシニカルに答えた。
「急いでここまで来たんだ。生憎乗っていたのがこれだがな」
 どうやらダンバインはあまり好きではないようである。
「だがそんなこと言ってる場合じゃねえな。ここは半分は俺が引き受けるぜ」
「頼めるか」
「その為に来たんだ。任せときな」
「頼むぞ」
 こうしてトッドが参戦した。彼はガラリアに向かった。
「さあて、俺は女でも容赦はしねえぜ」
「フン、この軽薄男が」
 ガラリアは彼に対しても臆することがなかった。
「あたしに勝てると思っているのかい。真っ二つにしてやるよ」
「できるものならな」
 トッドのダンバインは剣を抜いた。そして対峙する。
 戦いがはじまった。それはショウの方でも同じであった。
「行くぞ、ショウ=ザマ」
 バーンは既に剣を抜いていた。
「バイストンウェル、そして地上での雪辱、ここで晴らしてくれる」
「バーン、退くつもりはないな」
「無論、私は武門の家の者。そして貴様に受けた屈辱を忘れたことはない」
「わかった」
 ショウも引き下がらなかった。両者は互いに剣を構えた。
「ならばここで終わらせる、俺達の戦いをな」
「それはこちらの言葉だ」
 バーンはレプラカーンを突進させた。
「ショウ=ザマ、覚悟」
 剣を大きく振り被る。そして一気に振り下ろした。
「■っ!」
「何のっ!」
 ショウのビルバインはその剣を受け止めた。そしてその衝撃を引いて殺す。それから反撃に転ずる。
「これならどうだっ!」
 突きにかかる。だがレプラカーンはそれをかわした。
「甘いぞっ!」
 両者互角であった。二人は一騎打ちに入っていた。
 その間にマーベル達と魔装機が他のオーラバトラーを撃ち落していた。その数はかなり減っていた。
 やがてウィル=ウィプスにも迫った。だがその周りを護衛のオーラバトラーが固めている。それでも彼等は迫った。
「こいつ等は僕達に任せてもらおう!」
 ヤンロン達が前に出た。
「メギドフレイム!」
「レゾナンスクエイクッ!」
 それぞれ攻撃を放つ。それで護衛を一掃した。
「さあて、後は」
 サイバスターが前に出た。
「あのデカブツをやるぜ!」
「了解!」
 各機散開する。そしてそれぞれ攻撃に移る。その中にはタダナオもいた。
「よし」
 彼はハイパーリニアレールガンのボタンの覆いを取った。
「これを使うのははじめてだな」
 そして照準を合わせる。当然ウィル=ウィプスに狙いを定める。
 そして放つ。巨大な光が戦艦に向けて放たれた。
「行けっ!」
 それは戦艦の側面を直撃した。一撃で船が揺れ動いた。
「何事だっ!」
 ドレイクは揺れる艦内で仁王立ちしながら周りの者に問うた。声は大きいが動揺はなかった。
「敵の攻撃です、かなりの威力です!」
「損害は」
 彼はなおも問うた。
「右側面が中破しました」
「そうか。まだ戦えるか!?」
「これ以上は難しいかと」
 部下は畏まってそう答えた。
「わかった」
 ドレイクはそれを聞いて頷いた。
「撤退だ。オーラバトラー部隊にもそう伝えよ」
「ハッ」
「バーンにもだ。殿軍を受け持つように伝えよ」
「わかりました」
 命令が次々と下される。それに従いウィル=ウィプスは戦場を退いていく。
「逃がすか!」
 マサキとショウはそれを追おうとする。だがそれをバーンのレプラカーンが阻む。
「ここは行かせぬ!」
「クッ!」
 ガラリアも来た。彼等は二人でショウ達の追撃を阻んだ。
 その間にドレイク達は戦場を離脱する。それを見届けたバーンとガラリアも動いた。
「よし」
 彼等も戦場を離脱しにかかった。全速力でショウ達を引き離そうとする。
 バーンはそれに成功した。だがガラリアのバストールは一瞬遅れた。そしてその遅れが命取りとなった。
「甘いんだよ、そこがっ!」
 トッドはそれを見逃さなかった。オーラショットを放った。
「グッ!」
 それはバストールの腹を直撃した。それを受けて地面に落ちていく。
「やったか!?」
 だが爆発はなかった。バストールはそのまま大地に沈んでいた。
「ガラリア、しくじったな」
 バーンはそれを冷淡に見ているだけであった。彼は既に戦場を離脱し、ウィル=ウィプスに帰還しようとしていた。
「だがいい。私にとってはどうでもいいことだ」
 彼にとってガラリアは出世のライバルであった。しかもショウを狙ううえでも同じであり、そこでもライバルであったのだ。言うならば同じ陣営に属する敵同士であった。
 彼は何もなかったように着艦した。そして羽を休めに入った。
 戦いはラングラン軍の勝利に終わった。マサキ達は戦いが終わるとその場に着陸し、ショウ達と話し合いの場を持つことにした。
「何はともあれ久し振りだな」
「ああ」
 マサキとショウは気軽にそう挨拶を交わした。
「あんた等が来るとは思わなかったぜ。どうやらあっちもかなり複雑な事情のようだな」
「恥ずかしながらな。それでまた出されたわけだ」
「あっちは何かと排他的みたいだな」
「仕方ないさ。バイストンウェルは本来戦いのない世界だったんだ。それが」
「戦いをしているということ自体が問題なのです」
 シーラがここで言った。
「全てはドレイクのせいだ」
 ショウはそれに応える形で吐き捨てるようにしてこう言った。
「ちょっとそれは待って」
 だがここでマーベルが口を挟んだ。
「今までは私もそう思っていたけれど」
「違うのか!?」
「ええ。確かにドレイクも問題よ。けれど」
「けれど!?」
「あのルーザ=ルフトの方が問題じゃないかしら。最近そう思うようになってきたのだけれど」
「それはあるな」
 ニーが彼女の言葉に頷いた。
「あの女の気は普通じゃない」
「はい」
 ここでリムルが頷いた。
「母は恐ろしい女です。父が変わったのも母のせいだったのです」
「そうだったのかよ」
 マサキはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「前の戦いではそれ程気にはかからなかったけどよ」
「あまり姿を見せないからな」
 ニーが答えた。
「何処にいるかはわからないが」
 彼等はルーザが今もゲア=ガリングにいることを知らないのだ。
「おそらくここにも召還されているだろう」
「だとしたら厄介だな」
 ショウの顔が引き締まった。
「あの女までいるとなると」
「問題は何処にるか、だがな。それがわからないうちはどうしようもない」
「ああ」
 結局ルーザについては結論は出なかった。ここで戦いに敗れ捕虜となったシュテドニアスやドレイク軍のパイロット達が連れて来られてきた。その中にはガラリアもいた。
「ガラリア」
「フン」
 ショウの言葉に悪態をついた。
「笑いたきゃ笑いな。気持ちいいだろ、あたしのこんな姿を見られてさ」
「何を言っているんだ」
「おためごかしはいいよ」
 だが彼女は悪態を続ける。
「どうせあたしは負けたんだ。大人しく罰を受けるとするよ」
「そんなつもりはありません」
 そんな彼女に対してエレが言葉をかけてきた。
「ガラリア=ニャムヒー」
 そして彼女のフルネームを呼んだ。
「何だい」
「貴女はわかっておられません」
「何を言っているかさっぱりわからないね」
「いえ、言葉をかえましょう」
 エレは言葉を変えてきた。
「貴女はわかっていないふりをされているだけです」
「言うねえ。じゃああたしは何に対してわかっていないふりをしているんだい?」
「御自身のことについてです」
「自分の」
「はい」 
 エレは答えた。
「貴女は以前東京に出たことがありましたね」
「ああ」
 ショウと戦っている時に出たあの時のことだ。
「その時でわかっている筈です。自分が一体何であるかを」
「あたしが」
「はい。貴女はドレイクの下で戦う運命ではありません。貴女は」
 エレは言葉を続けた。
「ショウ=ザマと共に戦う運命なのです」
 そして大胆にこう結論付けた。
「あたしが!?馬鹿を言うねえ」
 ガラリアはそれを聞いて思わず笑った。
「何であたしがこいつと一緒に戦わなくちゃいけないんだよ」
「それもわかっておられる筈ですが。東京で」
「ウッ」
 それを聞いて言葉を詰まらせた。あの時彼女はショウと共にバイストンウェルに帰った。協力してである。
「あの時にショウ=ザマについて知ったと思いますが」
「確かにね」
 渋々ながらもそれは認めた。
「けれどこいつと一緒にいたのはたまたまさ。それを知らないわけじゃないだろうね」
「それが運命なのです」
 エレはまた言った。
「あの時ショウ=ザマと共に地上に出、そして帰ったのも運命だったのです」
「そんなもんかい」
「そう、そして今貴女が私の前にいるのも運命なのです」
「そしてショウと一緒に戦うこともかい」
「そうです」
 エレはまた答えた。
「そして今貴女は運命に従われる時なのです」
「嫌だと言ったら?」
「それは有り得ません」
 エレの声が強くなった。
「それは貴女御自身が最もよくおわかりでしょう」
「ふん」
 それを聞くと今度は微笑んだ。
「わかったよ。じゃああんた達に協力するよ」
「はい」
「ただし条件があるよ」
「条件!?」
「そうさ」
 彼女は答えた。
「バストールの修理は頼むよ。あれはあたしの分身なんだからね」
「了解」
 ショウ達は微笑んでそれに応えた。
「じゃあ頼んだよ。あとショウ」
「何だ?」
「今度勝負しないかい?二人でね」
 そう言って妖艶に笑った。
「?」
 だがまだ若いショウにはよくわからなかった。こうしてガラリアが仲間に入った。
 その後フェイルの決裁でショウ達はラングランの客分となった。そして彼等もラングラン軍に協力することとなった。双方にとって大きなプラスとなることであった。これはシュテドニアスにも伝わっていた。
「また負けたそうだな」
 絹の豪奢な服を着たダークブラウンの髪をした六十近い男が重層な執務室で不機嫌な顔をしていた。彼はシュテドニアスの大統領ゾラウシャルドである。
「元より予想されたことですが」
 その傍らに立つ軍服姿の禿げ上がった頭を持つ老人が答えた。シュテドニアス軍統合作戦本部長のノボトニー元帥である。
「言ってくれるな」
 ゾラウシャルドはこう言って彼を見据えた。
「それを何とかするのが諸君等軍人の仕事だろう」
「御言葉ですが」
 ノボトニーはそれに食い下がった。
「戦争を止めるのもまた軍人なのです」
「ではどうするつもりだ」
 ゾラウシャルドは一言発する度に不機嫌さを増していく。
「だからといって今すぐの撤退は危険です。暫くは戦いながら戦線を縮小していくべきかと」
「そうするしかないか」
「はい」
 彼は答えた。
「ではそれは貴官に任せる。ラセツ=ノバステ大佐」
「ハッ」
 控えて立っていた赤い軍服の男が答える。青い髪をした彫の深い顔立ちの男だ。
「貴官はバイラヴァで以って出撃しろ。よいな」
「わかりました」
「バイラヴァを!?」
 それを聞いたノボトニーの顔色が急変した。
「あれを実戦投入するのは危険です」
「おかしなことを言うな」
 だがゾラウシャルドは彼のそうした言葉を笑った。
「撤退するといったのは貴官ではないか」
「はい」
「ならばそれを援護する者も必要だ。だからこそバイラヴァを出撃させるのだ」
「しかしあれは」
「本部長」
 ゾラウシャルドはここで強い声を出した。
「私は一体何だ」
「ハッ」
 そう問われて姿勢を正して答えた。
「シュテドニアス共和国大統領であります」
「そうだろう」
 それを聞いて満足そうに答えた。
「軍の最高司令官は誰だ」
「大統領であります」
 これは至極当然のことであった。ラングランにおいては国王が、共和制であるシュテドニアスにおいては大統領が軍の最高司令官とそれぞれ定められている。ラングランは多分に形式的であるがシュテドニアスではこれはかなり明確に定められている。
「そして軍人の責務もわかっているな」
「はい」
「ならばいい」
 ゾラウシャルドは言葉を続けた。
「それではシュテドニアス共和国大統領の名において命じる」
「ハッ」
 ロボトニーだけでなくラセツも姿勢を正した。
「戦線をトロイアまで後退させる。その指揮は本部長がとれ」
「わかりました」
「その撤退の援護にバイラヴァを派遣する。その指揮官はラセツ大佐とする」
「ハッ」
 ラセツはそれを受けて敬礼した。
「そしてトロイアで敵を迎え撃つ。戦局を挽回にかかるぞ」
「了解」
「わかりました」
 ラセツの方が先に答えた。階級はロボトニーの方が遥かに上であるにも関わらず、だ。そしてゾラウシャルドはそれをあえて咎めようとしなかった。ここに三者の関係が露骨に表われていた。しかしロボトニーはそれについては何も言おうとしなかった。口をつぐんだ。
 そして三人は別れた。ロボトニーは自室に戻るとすぐに電話を手にとった。
「おう、わいや」
 いきなりなまりの強い言葉で返事が返ってきた。
「ジェスハ准将」
 ロボトニーはそれを聞いて叱るような声を出した。
「士官学校の時から言っている筈だが」
「その声は」
 電話の声の主はそれを聞いて急に慌てだした。
「ロボトニー閣下でっか」
「私以外に誰がいる」
 彼は憮然とした声でそう答えた。
「ざっくばらんもいいがもう少し将軍としての態度を保ち給え」
「そんなもんどうでもええと思いますけれど」
「だからいかんのだ、君は」
 ロボトニーはまた彼を叱った。
「そんなところは本当に変わらないな」
「おかげさまで。まあまた降格しましたし」
「聞いているよ。だがそれはいい」
「はあ」
「また昇格すればいいだけだからな」
 彼はそれについては特に何も言わなかった。話は別のところにあった。
「そちらの状況だが」
「はい」
 電話の主も態度をあらためた。
「かなり深刻な状況のようだな」
「ええ。また負けましたわ」
「やはりな。最早王都の奪回は不可能だろう」
「それどころかあちらさんにもあれがつきましたわ」
「オーラバトラーか」
「はい」
 彼はロボトニーに答えた。
「それもこっちのよりずっと強そうでしたわ」
「そんなにか」
「はい」
 彼は答えた。
「少なくともこっちにいる連中よりは信用できそうですわ」
「それは言うな」
 ロボトニーは顔を顰めた。彼もドレイク達は信用していなかった。
「だが厄介なことになったな」
「ええ」
「今までの敗戦でこちらの戦力は著しく低下している。そのうえこちらのオーラバトラーよりも強力な者達があちらについたとなれば」
「どうしようもないかも知れませんな」
「それでだ」
 彼はここで言った。
「トロイアまで戦線を後退させることになった」
「やっぱりそうなりますか」
「その指揮は私が執る。すぐにそちらに向かう」
「はい」
「撤退の援護は特殊部隊が行なう。ラセツ大佐が」
「あの男がでっか!?」
 電話の声の主はそれを聞いてあからさまに不機嫌な声を出した。
「嘘でっしゃろ」
「嘘ではない」
 ロボトニーは残念そうな声でそう答えた。
「しかもまだある」
「何でっしゃろ」
「バイラヴァを投入するらしい」
「・・・・・・お言葉ですが」
 彼はあらたまってロボトニーに言った。
「あれは危険でっせ。今出したら何が起こるか」
「それは私も大統領にそう申し上げた」
「けどあかんかったということですな」
「そういうことだ。大統領とラセツ大佐の関係はわかっているな」
「はい」
「ならばこれ以上は何を言っても無駄だ。今は我々に出来ることをしよう」
「わかりました。後一つ気になる話があるんですが」
「?何だね」
「いや、まああまりあてにならん話ですけど」
「噂でもいい。軍事に関することだな」
「はい。何でもクリストフがこっちにおるらしいですわ」
「馬鹿な」
 それを聞いたロボトニーの顔が一気に蒼白となった。バイラヴァの話を出しても表情を変えなかった彼が今その顔を白くさせたのである。
「確か■んだ筈だが」
「わいもそう聞いてましたけど」
 彼は電話の向こうで首を傾げていた。
「北の方で展開していた部隊が一つ壊滅しまして。その生き残りが言うてるんですわ。たった一機の魔装機にやられたて」
「魔装機」
「けどそれだけの力のあるラングランの魔装機は全部王都の方に来てます」
「うむ」
「それにその魔装機はやけにゴツい形で青かったらしいですから。そんなんいうたら」
「あれしかないな」
「はい。どうしますか?」
「それは北の方に出たのだな」
「ええ」
「では北の方に展開している部隊はすみやかに後退させよ。私が来る前にな」
「わかりました」
「あれが出たとなると事情は変わってくる」
 その表情は深刻さを増してきていた。
「彼以外の者もいたのか」
「それはないそうです」
「そうか。だが必ずいる筈だ」
「はい」
「紅蓮のサフィーネに魔神官ルオゾール。特にルオゾールには注意が必要だぞ」
「わかってますがな」
「ならばいい。では私が行くまでの指揮を頼む」
「了解」
 ここで電話が切れた。ロボトニーは受話器を置くとその深刻な顔のまま考え込んだ。
「クリストフ、まさか生きているとはな」
 シュテドニアスにおいてもその名は忌むべきものであるのだ。
「今度は何を考えている。そして」
 表情がさらに暗くなる。
「何をするつもりなのだ」
 彼はそう思いながらも戦場に向かう用意に入った。彼自身もまた祖国のことを憂えていた。そしてそれを救う為に動くのであった。

聖戦士   完



                                   2005・1・30


[241] 題名:聖戦士1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時21分

               聖戦士
 王都ラングランを解放したラングラン軍はまずそこで戦力を再編成した後軍の主力を東に向けることとなった。当然ながらその基幹戦力は魔装機であった。
「また出番か」
 タダナオは上機嫌でジェイファーを見上げていた。
「嬉しそうね」
 隣にいるリューネが問う。
「何かピクニックに行くみたいじゃない」
「そういうわけでもないさ」
 彼はそれを聞いて苦笑いを浮かべた。
「ただこの機体に乗るのが楽しくてな」
「楽しいの?」
「ああ」
 彼は答えた。
「やっぱりロボットに乗るのはいい。昔からな」
「連邦軍にいた時から」
「そうだな。あの時からその時が一番楽しかった」
 語るその目がにこやかなものとなっていた。
「いつも張り合っていたしな」
「張り合った?」
 リューネはその言葉に反応した。
「連れがいてな」
 タダナオはそれに答えた。
「ガキの頃からの。そいつとは士官学校でも連邦軍でも一緒だった」
「そうだったんだ」
「そいつとは部隊も同じだった。それでいつも競争していたんだ」
「つまりライバルね」
「そういうことになるな。だが決して仲は悪くなかった。喧嘩はよくしたがな」
「親友ってところかあ」
「そうだな。そうかも知れない」
 語るタダナオの目が温かいものとなっていた。
「今連邦軍にいるだろうな。どうしているやら」
「案外ここにいたりして」
「まさか」
 それを聞いて苦笑いに戻らざるを得なかった。
「それはないさ、絶対にな。今も俺が帰るのを待っているだろうな」
「ふうん」
「何せ俺には借りがあるからな、あいつは」
「借り!?」
「ああ。喧嘩で勝ったんだ。ここに来る前の日にな。それだ。次の日俺をぶちのめしてやるって言っていたんだ」
「喧嘩の理由は!?」
「大したことはないさ」
 そう前置きした。
「アイドルのことでな」
「アイドル!?」
「そう、リン=ミンメイとミレーヌ=ジーナスどっちが可愛いかってな」
「・・・・・・何か下らない理由で喧嘩してるね」
 いささか呆れた声であった。
「あんた達」
「馬鹿を言え」
 タダナオは語気を少し荒わげた。
「俺にとっては重要なことだ。ミンメイの方が可愛いに決まっている」
「まあミンメイのことは知らないわけじゃないけれど」
「そうなのか」
「マクロスにもいたことがあるからね」
「先の戦争でか」
「ああ。確かに可愛いね」
「そうだろう。だがあいつはミンメイを年増だと言ったんだ。ミレーヌの方がいいと」
「ミレーヌのことは知らないけれど」
「そうか。けれどまだ小さな女の子でな。あいつは若い方がいいと言うんだ」
「好みだからね」
「それで俺は言ってやった。女は大人になってからだ。それでこそ本当の素晴らしさが醸し出されるってな」
「あんた年上が好みなんだ」
「そうかもな。あいつは全く逆だ」
 いささか憮然としていた。
「それから口論になり殴り合いになった。最後は俺の拳が奴の顎を撃った。それで決まりだった」
「で、次の日に雪辱を晴らすってことになったのね」
「ああ。だけどそれは伸びちまっているがな」
 彼は残念そうにそう答えた。
「それだけは何とかしたいな」
「あ、二人共ここにいたんだ」
 後ろから二人を呼ぶ声がした。
「ん!?」
 タダナオはそちらに顔を向けた。すると急に身体が硬直した。
 そこにいたのは紫の短い髪と同じく紫のミニの袖のないワンピースに身を包んだ女性であった。顔立ちは整い、その紫の瞳が印象的であった。
「あ、セニア」
 リューネは彼女の名を呼んだ。
「セニア・・・・・・」
 タダナオはその名を繰り返した。
「一体どうしたの?」 
 だがリューネは彼に目を向けずセニアに声をかけた。
「お呼びよ、兄さんから」
「殿下から」
「ええ、次の作戦のことでね。すぐに王宮に向かって」
「了解」
 リューネは答えた。
「タダナオ、じゃあ行きましょう」
 ここでタダナオに顔を向けた。だがそこで異変に気付いた。
「タダナオ!?」
 彼は完全に硬直していた。そして顔も紅潮したものとなっていた。
「どうしたのよ」
「あ、ああ」
 リューネに問われてようやく我に返った。
「何でもないよ、ちょっとな」
「何か変だよ、今のあんた」
「気にしないでくれ、何でもないから」
「だったらいいけど」
「二人共送るね」
 セニアは二人に対して言った。
「乗るでしょ」
 そして後ろにある車を指差した。二十世紀初頭にあったような古風な車である。
「頼める?」
「勿論」
 セニアは答えた。
「すぐに行きましょうよ、さあ早く乗って乗って」
「了解」
 リューネは答えた。そしてタダナオに声をかけた。
「さ、あんたも」
「ああ」
 彼は頷いた。そして車に乗る。
 二人は後ろに席に乗った。セニアはそれを確かめると車のエンジンを入れた。そして車は出発した。
「ねえ」
 セニアは車を運転しながら後ろに話し掛けてきた。
「何!?」
 リューネがそれに応えた。
「御免、リューネじゃなくて」
「俺ですか!?」
「ええ、そうよ」
 セニアはそれに頷いた。
「貴方日本から来たのよね」
「は、はい」
 彼は紅潮した声で答えた。
「連邦軍におりました」
「そうだったんだ。マサキと同じ国だから気になっていたけれど」
「マサキの」
「感じは違うわね。日本人って皆ああいったのだと思ってたけど」
「はあ」
「けれど貴方は違うわね。方向音痴でもないし無闇に熱くならないし」
「そうでしょうか」
「少なくともあたしはそう見ているけど」
 セニアは彼にそう答えた。
「そ、そうですか」
「ええ」
 彼女はまた答えた。
「それにプラーナもかなり高いみたいね」
「プラーナ」
「気のことよ」
 そう説明した。
「気ですか」
「ええ。誰でも持っている気よ。普通地上人はそれがここの人間より高いのだけれどね」
「そうなんですか」
「そうなのよ。だから召還されるのよ」
「はあ」
「それが今の魔装機のパイロット達なの。ファングとプレセア以外は皆そうよ」
「あたしも地上生まれなのよ」
 ここでリューネが言った。
「リューネもか」
「そうよ。アメリカ生まれなんだ」
「そういえばそういう外見だな」
 彼女の髪と服装を見てそう言った。
「何か変!?」
「いや」
 少しムッとした彼女に答えた。
「ところでセニアさん」
 話題を変えようとする。セニアに話を振った。
「何!?」
「魔装機はそのプラーナで動いているのですよね」
「そうよ」
 彼女は答えた。
「じゃあオーラバトラーと一緒か」
「そういうことになるわね」
 リューネもそれに同意した。
「オーラバトラーってバイストンウェルのやつよね」
「はい」
 セニアの問いに答えた。
「私は一度見ただけですがかなりの戦闘能力を持っています」
「それはマサキ達から聞いてるわ。何か面白そうね」
「面白い」
「ええ」
 セニアは笑って答えた。
「実はね」
 ここでリューネがタダナオに説明した。
「セニアは魔装機の設計者の一人なのよ。整備も担当しているの」
「そうだったのか」
 女性の兵士は珍しくはない。タダナオは無機質に声をあげた。
「しかも王女」
「えっ!?」
 だがこれには驚きの声をあげた。
「本当ですか!?」
「継承権はないけれどね」
 セニアは笑ってそう答えた。
「それでも・・・・・・」
「ははは、大したことないよ」
 畏まるタダナオに笑ってそう言った。
「あたしは只のメカニックだからね」
「そうなのですか」
「そうよ。だから特に気にすることはないわよ」
「はい」
 しかし彼は畏まったままであった。
「固くならないでね」
「わかっております」
 だがやはり固くなっていた。リューネはそれを不思議そうに見ている。
(どうしたんだろ、こいつ)
 だがそう考えている間に王宮に着いた。そして三人はその中に入った。
「これが王宮か」
 タダナオは王宮の外と中を見ながら声をあげた。
「どう、結構凄いでしょ」
「確かにな」
 リューネにそう答えた。
「ただ思ったより質素だな。意外だ」
「そうなの」
「いや、ここで一番の大国だろ。もっと凄い宮殿かと思ったんだけれど」
「そうしたものよ」
 セニアが答えた。
「変に飾り立てても意味がないから。だから質素な造りにしてるのよ」
「そうだったんですか」
「けれどこの王宮も戦争でかなり傷んじゃったしねえ。まずいかなあ」
「建て直しですか」
「落ち着いたらね。けれど今は駄目」
「はい」
 戦争をしている以上王宮の再建は二の次であった。その程度の分別のないフェイルでもセニアでもなかった。
「これは兄さんが考える話だけれどね。あたしにはあまり関係ないけれど」
「その割にセニアって結構色々やってるよね」
「仕方ないじゃない」
 リューネに返した。
「モニカは今行方不明だし。テリアスも」
「そうだったね」
 リューネはそれを聞いて少し暗い顔になった。
「何か色々とあったみたいだな」
 タダナオはそれを聞いて思った。だが口には出さなかった。
「着いたわよ」
 セニアは大きな木の扉の前で二人に言った。
 そしてその扉を開ける。それから二人を扉の向こうに入れた。
「兄さん、二人を連れて来たわよ」
「おお、済まないな」
 そこには円卓があった。フェイルはその中央に座っていた。立ち上がり三人を出迎えた。
「じゃあ三人共空いているところに座ってくれ。すぐはじめよう」
「了解。ところでマサキは?」
「もういるぜ」
 ここでマサキの声がした。見ればもう座っていた。
「あら、珍しいじゃない。もういるなんて」
「私が一緒に来たからな」
 フェイルが妹にそう説明した。
「そうだったんだ。保護者同伴だったんだ」
「うるせえ」
 マサキはセニアの言葉にふてくされた顔をした。
「どうせ俺は方向音痴だよ」
「まあそれは置いておいてだ」
 フェイルは話を先に進める為に半ば強引にその話を終わらせた。
「すぐに今回の作戦会議に入ろう」
「わかったわ」
 セニアは頷いた。そして三人はそれぞれ空いている席に座った。見れば魔装機のパイロットは全員揃っている。
「今の戦局だが」
 フェイルは一同に説明をはじめた。その後ろにはラングランの地図がある。彼はそれに振り向いた。
「我々は王都を奪還した。そして今国土の大部分を奪還した」
「はい」
「だがシュテドニアス軍はまだかなりの占領地と戦力を維持している。そしてその戦力を王都の東方に再集結させている」
「まだ戦うつもりのようですね」 
 ヤンロンがそれを聞いて言った。
「そのようだな。魔装機だけでかなりの数に及んでいる」
「どれ位ですか?」
 テュッティが問うた。
「八十機程か。他にも戦車や移動要塞等が存在している。王都に駐屯していた戦力とほぼ同じ程度だ」
「そうですか」
「それだけではない。どうやら本国から援軍が来ているようだ」
「援軍!?」
「詳しいことは不明だがかなりの戦力らしい。それが今東方のシュテドニアス軍と合流しようとしているようだ」
「そうなのですか」
「まだ戦力があったのか」
 今回の戦争でシュテドニアスもかなりの戦力を消耗していた。元々この戦争はラングランとの衝突を望まない議会の多数派に対して大統領であるゾラウシャルドが強引に推し進めたものである。彼は強硬派で軍需産業を主な権力基盤としている。その彼がシュテドニアスの戦力をほぼ全て投入して侵攻が行われたのである。だが今までのラングランとの戦いでその戦力は大幅に消耗しているのである。それはシュテドニアスの国力を考えると到底無視出来ない程である筈だった。
「しかも軍の上層部とも衝突している筈だし、の大統領」
 シモーヌがここでさらに付け加えた。これは事実であった。
 シュテドニアス軍の内部でも今回の侵攻には懐疑的な者が多かった。最終的には負けるのではにか、無闇にラングランと衝突するのはどうか、という声が多かった。その先頭にいるのが統合作戦本部長であるロボトニー元帥であった。彼はシュテドニアス軍きっての良識派として知られ今回の戦争に対してもゾラウシャルドを批判していた。その為彼からは疎まれていた。
「軍は言う事を聞くしかないけれどそれでもよく出せたものね」
「そうだな」
 ゲンナジーがベッキーの言葉に頷いた。
「だが戦力を送って来ていることは事実だ」
 アハマドの声は冷静であった。
「問題はそれをどうするかにある」
「アハマドの言う通りだな」
 フェイルは彼の言葉をよしとした。
「今はその援軍も含めて彼等とどう戦うかを考えよう」
「はい」
 皆それに異論はなかった。一様に頷く。
「今彼等はここにいる」 
 フェイルは王都のすぐ東を棒で指し示した。
「そしてそこから王都を狙っている。我々はこれを迎撃したい」
「その戦力が俺達か」
「そうだ」
 マサキの言葉を認めた。
「君達は精鋭部隊と共に彼等を迎撃してくれ。魔装機全機でな」
「了解」
「出撃は明朝とする。各自それに備えてくれ」
「わかりました」
 一同それに頷いた。
「明日か。じゃあ帰ったら用意しておくか」
「お兄ちゃん、迷わないでね」
 ここでプレセアはマサキに対して言った。
「わかってるさ」
 彼はそれに不機嫌そうな顔で応えた。
「だからっていつも言うんじゃねえよ」
「けれどいつも道に迷ってるじゃない」
「気のせいだよ」
「違うもん」
 そんなやり取りを周りの者はクスクスと笑いながら見ていた。だがここで思わぬ報告が入って来た。
「殿下、大変です!」
 ラングランの軍服を着た男が一人入って来た。
「どうした!?」
「戦闘がはじまりました」
「何っ!?」
 フェイルだけではなかった。そこにいる全ての者がそれに顔を集中させた。
「何処でだ」
「東方です。シュテドニアス軍と交戦を開始しております」
「どの部隊だ」
「それが・・・・・・」
 だがそこで彼は口篭もった。
「見たこともない部隊でして」
「地上のか?」
「それがその」
 だがそれでも口篭もっていた。
「実は城が空を飛んでいるらしいのです」
「城!?」
 それを聞いたマサキとリューネが声をあげた。
「城がか!?」
「はい」
 男は答えた。
「かなり大きな青い城が空を飛んで戦っているそうです。そしてもう一隻戦艦が。それは緑だとか」
「間違いねえな」
「ええ」
 二人はそこまで聞いて顔を見合わせた。
「そして小さな空を飛ぶロボットがいるだろう」
「はい」
 彼はまた答えた。
「かなり強いそうです。特に赤いロボットが」
「それだ」
 マサキはここまで聞いてそう言った。
「殿下、それは俺達の知っている連中だ」
「本当か!?」
「ああ、オーラバトラーとオーラシップだ。この前バイストンウェルの話はしたよな」
「ああ」
「そこの兵器なんだよ。それもそこにいるのは俺達と地上で一緒に戦った連中だ」
「本当なのか、それは」
「嘘なんか言わねえよ。すぐに助けに行かなきゃいけねえ。仲間だからな」
「そうか」
 フェイルはそこまで聞いて頷いた。
「ではすぐに救援に向かってくれ。マサキの言うことが本当ならな。どのみちシュテドニアス軍とは戦わなくてはならない」
「了解」
 魔装機のパイロット達が一斉にそれに答えた。
「では出撃だ。予定よりかなり早いが頼むぞ」
「任せときなって」
 マサキが一同を代表してフェイルに言った。
「行くからには勝つからよ」
「そうそう」
 リューネもそれに合わせた。
「どんな奴がいても負けないよ。あたしのヴァルシオーネがいる限りね」
「そう調子に乗るな」
 ここでヤンロンが二人を嗜めた。
「油断大敵だ。侮るとろくなことにはならないぞ」
「ヤンロンの言う通りよ、二人共」
 テュッティも彼に同意した。
「敵を馬鹿にしてると何時かとんでもない目に遭うわよ」
「それはわかってるよ」
 リューネはそれを聞いてバツの悪そうな顔をした。
「けれど少し心配性じゃない?」
「僕はそうは思わないが」
 ヤンロンはまた釘をさした。
「まあ待て」
 話が長くなりそうだと見たフェイルが仲裁に入った。
「とにかく今は一刻も早く戦場に向かってくれ。いいな」
「わかりました」
 彼の言葉を聞き皆口論を止めた。そしてそれぞれの乗機に向かって行った。
 その中には当然タダナオもいた。彼は兵士の車に乗せられジェイファーに向かった。そしてそれに搭乗し、戦場に向かうのであった。
「行くか」
「ああ」
 皆魔装機に乗り込んだ。そしてそこから出撃した。戦場では既に戦闘がはじまっていた。

「はあああああああああっ!」
 赤いロボットから声が轟く。そして目の前にいるシュテドニアスの魔装機を両断する。倍近い大きさがあるがそれは問題とはなっていなかった。
 前にいる魔装機を倒すと隣にいる敵機をすぐに撃墜した。そして返す刀でもう一機。鬼神の如き強さであった。
「ショウ!」
 その後ろにいる青い甲虫に似たシルエットのロボットの中から声がした。
「無理はしないで!」
「わかってる!」
 赤いロボットから声がした。中にはアジア系の顔立ちの少年がいた。彼の名をショウ=ザマという。
 日本人である。裕福だが家庭を顧みない両親に反発して空手やモトクロスバイクに熱中していた。だがある日バイストンウェルに召還された。そして紆余曲折の末この赤いロボット、オーラバトラービルバインに乗る聖戦士となったのである。戦士としてはずば抜けた力を持っていると言われている。
「マーベル」
 ショウは青いオーラバトラーダンバインに乗る茶色の髪の白人の女性に声をかけた。
「何!?」
 彼女はそれに応えた。彼女も地上から召還された者である。アメリカテキサスの出身だ。
「ニー達はどうしてる」
「我々はここにいる」
 見ればビルバインの後ろに数機の同じタイプのオーラバトラーがいた。そしてその後ろには青い巨大な城の様な戦艦と緑の戦艦があった。どれも激しい攻撃を繰り返している。
「ニー、キーン、無事か」
「ああ」
「何とかね」
 その赤いオーラバトラー、ボチューンに乗るパイロット、ピンクの髪をした青年ニー=ギブンと黒髪の少女キーン=キッスが答えた。二人はバイストンウェルの人間である。だが戦士としての能力、オーラ力が強い為二人も聖戦士と称されている。これはマーベルも同じである。
「リムルは!?」
「ここにいるわ」
 瑠璃色の髪の美しい少女が答えた。彼女が乗っているのはボチューンではなかった。黒っぽく、その手に斧や鎌を持っている。やや禍々しい感じがするのは否めない。
 彼女はリムル=リフトという。バイストンウェルの戦乱の元凶とされるアの国の領主ドレイク=ルフトとその妻ルーザ=ルフトの娘である。彼女はニーを慕い、そして父の野心に反発してショウ達と共にいるのだ。
「そうか、ならいい」
 ショウは皆がいるのを確かめてそう言った。
「だが戦局は危ういな」
 ニーがここで言った。
「まあな」
 それはショウにもわかっていた。
「このままじゃグランガランもゴラオンも持たない」
 見れば敵を追い払うのだけで必死であった。
「シーラ様とエレ様は?」
「御無事だ」
 ここで各機に通信が入った。そして映像が映る。白髪の老人と黒い髪の痩せた中年の男である。白髪の老人はエイブ=タマリ、ゴラオンの艦長である。黒髪の中年はカワッセ=グー、グランガランの艦長である。それぞれの女王達の側近でもある。
「こちらに来る敵は任せろ。いいな」
「宜しいのですか?」
 ニーが問うた。
「構わん」
 カワッセが答えた。
「シーラ様は我々が御守りする」
「エレ様もだ」
 エイブも言った。
「だからお主達は目の前の敵に対処せよ。よいな」
「わかりました」
「それに敵の援軍が迫って来ている。注意しろ」
「援軍!?」
「はい」
 ここで水色の髪に赤い目の気品のある少女とピンクの髪の美しい少女がモニターに姿を現わした。ナの国の女王シーラ=ラパーナとラウの国の女王エレ=ハンムであった。
「邪悪なオーラ力を感じます。それもかなりの数の」
「オーラ力」
 それを聞いてショウの顔が曇った。
「まさかそれは」
「そこまではわかりませんが」
 シーラが答えた。
「ですが敵が近付いていることは事実です」
「はい」
 エレの言葉に頷いた。
「ですからお気をつけ下さい」
「わかりました」
 ショウ達はそれに頷いた。
「ではやってみせましょう。まずは今ここにいる奴等を」
「待って下さい」
 だがここでシーラが言った。
「どうしたんですか!?」
「味方です」
「味方」
「はい。もうすぐここに来ます。これは・・・・・・」
「ええ、彼です」
 エレも感じているようであった。
「来ます、ここに」
「風が。そして新たな聖なる戦士が」
「聖なる戦士」
 ショウがその言葉を呟いた時であった。戦場に風の戦士がやって来た。
「ショウ、久し振りだな!」
 サイバードであった。サイバスターが鳥の形に変形した巡航型である。
「サイバード、マサキか!」
「おう、まさかラ=ギアスに来ているとは思わなかったな。どうしたんだ!?」
「またバイストンウェルから出されたんだ。ジャコバ=アオンにな」
「そうか、やっぱりな」
「ここが前御前が言っていたラ=ギアスだったとはな」
「どうだ」
「バイストンウェルに似ているな。だが話は後にしよう」
「そうだな」
 マサキはそれに頷いた。
「まずはこの連中を何とかしないと」
「敵の援軍も来ているらしいしな。協力するぜ」
「頼む」
 こうしてマサキ達はショウ達の援護に回った。魔装機達は次々にやって来てシュテドニアスの機を撃墜していく。タダナオも戦場に来ていた。
 戦局はマサキとショウ達に有利となりつつあった。シュテドニアスの機はその数を大きく減らし撤退に向かおうとしていた。だがその時であった。
「来ました!」
 エレが叫んだ。ショウもそこに何かを感じた。
「これは・・・・・・!」
「御父様!」
 リムルが叫んだ。すると前に黒っぽい巨大な戦艦が姿を現わした。
「やはりな」
 エイブはその巨体を見て腕を組みながら呟いた。
「ここに来ていると思ったが」
「ええ」
 エレが頷く。青い顔をしていた。


[240] 題名:シャングリラ2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時17分

 ジュドー達はワゴンを飛ばして港に到着した。そしてティターンズの船を捜した。
「あれか」
 それはすぐに見つかった。アレクサンドリア級巡洋艦であった。
「ドゴス=ギアじゃないんだ」
 イーノはアレクサンドリアを物陰に隠れながら見て呟いた。
「流石にあれは目立つからな」
 ジュドーその隣にいた。彼もアレクサンドリアを見上げていた。
「それに入れないだろ、あんなでかい船は」
「それもそうだね」
 イーノはそれを聞いて納得した。
「けれどあれに入っているモビルスーツって何なのかなあ」
 今度はモンドが首を傾げていた。
「凄いのだったらいいけれど」
「案外バーザムとかだったりしてな」
 ビーチャが言った。
「ハンブラビとかだったらいいけれど」
 エルが合わせた。
「それだったら一緒にいるパイロットが問題よ」
 ルーが何かを思い出して露骨に嫌な顔をした。
「どうせ生きてるんでしょうけれど」
「だろうな」
 ジュドーがルーの言葉に同意した。
「あのおっさんはそう簡単に死ぬタマじゃねえよ」
「ティターンズだからな」
 プルツーがここでこう応えた。
「あのリーゼントの人もそうだしね」
 プルがここでジェリドについて言及した。
「あの兄ちゃんもなあ」
 ジュドーも彼については知っていた。
「よくもまああれだけカミーユさんばかり追いかけられるよ、本当に」
「それが生きがいなんでしょね」
 そうした話をしながら隙を窺う。見たところティターンズの将兵の警護は緩かった。
「行くか」
 ジュドーがそう皆に問うた時であった。不意に艦の後ろで何やら爆発が起こった。
「ンッ!?」 
 そちらに顔を向けた。これはティターンズの者達も同じであった。
「おい、あっちだ」
 彼等はすぐにそちらに向かう。出入り口はガラ空きとなった。
「ジュドー」
 エルが囁いた。
「今だよ」
「おっ、そうだな」
 ジュドーだけでなく他の者も気付いた。伊達にこの商売をやっているわけではなかった。
「行くぜ」
「おう」
 彼等はすぐに入り込んだ。そしてそのまま潜入した。
 アレクサンドリアの中はあまり知らない。だが連邦軍の艦艇なおでおおよその造り方はわかっていた。彼等は格納庫の方に向かった。
「見つかるなよ」
「わかってるって」
 そうしたやりとりをしながら慎重に進む。そして格納庫に辿り着いた。中に入って彼等は思わず声をあげた。
「お、おい」
「あ、ああ」
 そこには多くのモビルスーツがあった。そして何とそれはガンダムであったのだ。
「おい、ZZがあるぜ」
「Zもよ」
 見ればキュベレイマークUもある。それも二機だ。
 他にもあった。人数分、いやそれ以上あった。どれも量産型のものではない、特殊なものであった。
「どうするよ」
 ジュドーはそれを見て興奮を抑えられなかった。
「どうするってよお」
 ビーチャもそれは同じである。
「何でティターンズがこんなの持ってるんだよ」
「大方アナハイム社からの横流しでしょうね」
 ルーがそれに答えた。
「あそこの社長わりかし狸だから」
「有り得るね、それ」
 エルがそれに同意した。アナハイム=エレクトロニクス社の社長メラニー=ヒュー=カーバインは腹芸の達者な寝業師として知られているのである。
「こんなのティターンズに渡ったら大変だよ」
「そうそう、モンドの言う通りだよ」
 この面々では比較的穏やかなイーノも声をあげている。ジュドーはそれを見て考え込んだ。
「どうするかだよな」
「盗むしかないよ、ジュドー」
 ここでプルが言った。
「丁度キュベレイもあるしさ。盗んじゃおうよ」
「そうだな、最初からそのつもりだったし」
 彼もそれに乗った。いや、最初から決めていたことを実行に移す決心をしただけであった。
「やるぞ」
「よし来た」
 皆それに従った。そしてそれぞれ気に入ったモビルスーツに乗り込む。ジュドーはZZ,ルーはZ,ビーチャはフルアーマー百式改に乗った。エルはスーパーガンダムの黒、モンドはフルアーマーマークU、イーノはメタス改だ。やはりガンダム系のモビルスーツを選んでいた。プルとプルツーは当然キュベレイマークUであった。
「何か前と乗っているのは同じだな」
「それもそうだな」
 プルツーが答えた。しかも彼女のキュベレイは赤であった。
「だがそっちの方がいい。慣れたモビルスーツの方が何かとやり易い」
「それもそうだな」
 見ればどの者も的確に動かしていた。やはりどれも以前に乗ったことがあるものか、それの発展型であるせいであった。操縦は見事であった。
「さてと」
 ジュドーは他の者を見回して言った。
「では行きますか」
「おう」
「了解」
 皆頷いた。そして出て行こうとする。その時であった。
「おい、見ろ!」
「大変だ、モビルスーツが!」
 ティターンズの将兵達が気付いた。そしてこちらに集まって来る。
「いけね!」
「早く逃げろ!」
 彼等は急いで逃げ道を探す。とりあえずは艦内から脱出しようとする。辺りを見回す。
「おい、あれ見ろよ!」
 モンドが叫ぶ。すると格納庫が開き外に出られるようになっていた。
「行く?」
「勿論」
 ジュドーはイーノに答えた。
「ここで行かなきゃどうにもなんねえだろ」
「それもそうね」
 エルはそれに頷いた。
「じゃあ行きましょ。後ろはあたしに任せて」
 ルーが後方に回った。
「Zはいざって時にはすぐに逃げられるからね。火力も強いし」
「頼むぜ。じゃあ俺は突っ切る」
「あたしも」
「あたしも行くよ」
 プルとプルツーがその左右を固める。そして彼等は脱出に向かう。
 まずは言葉通りジュドーが出る。その左右を二機のキュベレイマークUが固め他の機体がそれに続く。Zはやはり一番後ろであった。
「行くぜえ!」
 ジュドーは叫んだ。そしてそのまま艦の外に出る。それからコロニーの中に出た。
「皆いるか!?」
 ジュドーはコロニーに出ると他の者に声をかけた。すると周りに次々と集まって来た。
「いるよ」
「俺も」
 皆いた。だがルーのZだけは見えなかった。
「ルー!?」
「心配しないで」
 ここで彼女の声がした。
「あたしもいるから」
 ZZの前にウェイブライダーが姿を現わした。そしてそれはすぐにZに変形した。
「よし、これで全員揃ったな」
 ジュドーはそれを見て満足そうに声を出した。
「後は・・・・・・だ」
 見れば港の方からモビルスーツ達がやって来る。バーザムやマラサイである。どれもティターンズのモビルスーツだ。
「あいつ等をやっつけるだけだな」
「よし」
 彼等は前に出た。皆歳は若いが先のバルマー戦役を生き抜いた者達である。そのパイロットとしての力量は普通のそれを遥かに凌駕しているのだ。
 照準を合わせる。そして狙い撃とうとする。その前にティターンズでも彼等でもないモビルスーツ達が姿を現わした。
「待てっ!」
 それはZUであった。ジュドー達はそれのパイロットが誰であるか知っていた。
「カミーユさん!?」
「久し振りだな、ジュドー」
 コクピットにカミーユの声と映像が入って来た。
「シャングリラだからまさかと思ったが」
 彼はジュドーに対して微笑みながら声をかける。
「また盗もうとしていたのか」
「ええ、まあ」
 ジュドーだけでなく他の者もカミーユに対してバツの悪い顔をした。
「ティターンズですからね。別にいいでしょ」
「俺はいいけれどな」
 カミーユも相手がティターンズならば特に問題としてはいなかった。
「どのみち俺達も連中を倒すつもりだったし」
「そうだったんですか」
「ところでウラキ少尉を知らないか」
「コウさんですか!?」
「ああ。先にコロニーに入った筈なんだが」
 彼は辺りを見回しながらそう言った。
「知りませんけど」
 ジュドーは本当に知らなかった。
「そうか。あの人のことだから大丈夫だと思うが」
 その間にティターンズのモビルスーツは距離を詰めて来ていた。
「そうこう言っている場合じゃないか」
「はい」
 それは二人共よくわかっていた。
「話は先だ。まずあいつ等を何とかしよう」
「了解」
 再びライフルを構える。そして攻撃に入る。だがビームは彼等だけが放ったのではなかった。
 左からも来た。そしてジュドー達の照準から外れていたモビルスーツ達を撃った。そして忽ち数機撃墜していた。
「バニング大尉か!?」
 カミーユはそれを見て思わず叫んだ。
「悪いけど違うよ」
 その声は若かった。
「済まん、調査に長くかかっちまったよ」
「悪い、俺もだ」
 GP−03と量産型F90であった。コウとキースである。
「けれどこれで合流したんだ。宜しくな」
「ええ」
 カミーユはそれに頷いた。
「じゃあ早くこの連中を倒しましょう。それからアレクサンドリアを」
「そっちにはもうバニング大尉が向かってるよ」
「そうなんですか!?」
「クリスとバーニィの案内でな。後はこの連中だけだ」
「それなら話は早いですね」
「そうだな。早く終わらせよう」
「わかりました。ジュドー」
 カミーユはジュドーに顔を向けた。そのカミーユの周りにエマやフォウ達がやって来た。
「そういうことだ。すぐに終わらせるぞ」
「了解」
 ジュドーはにこやらに笑ってそれに応えた。
「パッパッとやっちゃいますか」
「けれどあまり調子に乗るなよ」
「わかってますって」
 彼はそう答えて前に出た。そしてダブルビームライフルで次々と撃ち落とす。彼等の活躍もありシャングリラでの戦闘はすぐに終結した。そして外でもアレクサンドリアが拿捕されていた。
「会うだろうとは思っていたがな」
 ブライトはラー=カイラムの艦橋でジュドー達を前にしてそう語っていた。
「しかしまたモビルスーツに乗るとは。しかもまた盗んで」
「堅いことは言いっこなしですよ、ブライトさん」
「そうそう、俺達のおかげで今回の作戦は成功したようなもんだし」
 ジュドーもビーチャも全く悪びれてはいなかった。
「それにティターンズとは前から色々あったし。今回もあるんでしょ?」
「それはそうだが」
 ブライトはそれを認めた。
「じゃあ話は早いや。ブライトさん」
 ジュドーが一同を代表して彼に対して言った。
「俺達もロンド=ベルに入れてくれよ。金も入るし」
「そうそう、パイロットでお金いいのよね」
「エル」
 ブライトは彼女を咎めるような声を出した。
「あ、御免御免」
「そういう言葉は謹んでもらおう」
 だがそれは事実であった。パイロットは他の軍人達と比べてその給料は高いのである。
 何はともあれ彼等は再びロンド=ベルに入隊した。そしてすぐに軍属扱いとなった。
「まあこれは仕方ないな」
 ジュドー達はラー=カイラムの廊下を歩きながらそう話していた。
「そうよね」
 ルーがそれに同意した。
「お給料はいいんだし」
「それしかないの?」
 イーノが彼等があまりにも金のことばかり言うので呆れた声を出した。
「それ以外に何があるんだよ」
 ここでモンドが突っ込みを入れた。
「そうそう」
 ジュドーがそこで相槌を打った。
「リィナをいい学校に行かせる為なんだからな」
「気持ちは有り難いけれど」
 ジュドーの横にいるリィナがここで言った。
「お兄ちゃん何でもケチケチし過ぎ」
「そうか?」
「というか石鹸位ケチらないでよ」
「いいじゃねえかよ」
 ジュドーはそれを聞き不満を露にした。
「大体御前が綺麗好き過ぎるんだよ」
「そうじゃないわよ」
 だがリィナはそう反論した。
「今履いているトランクス何日目?」
「うっ・・・・・・」
 彼はトランクスは一週間履く主義である。
「まだ三日目だよ」
「もう三日よ」
「ええ、ジュドーそんなに下着替えないの!?」
 プルがそれを聞いて驚きの声をあげた。
「トランクスはいいんだよ」
「そうそう」
 男組がそれに対して頷く。彼等も大体同じである。
「ガラのせいで汚れが目立たないからな」
「そういう問題じゃないでしょ」
「そうよそうよ」
 リィナとプルが言う。そこにプルツーも加わる。
「不潔なのはよくないな」
「不潔じゃねえよ」
 ジュドーは反論する。
「生活の知恵だ」
「それは生活の知恵じゃないな」
 ここで若い男の声がした。
「その声は」
 見れば金髪の青年が立っていた。ロンド=ベルのパイロットの一人バーナード=ワイズマン、バーニィであった。
「バーニィさん」
「それはズボラっていうんだよ」
 彼は笑いながらそう言った。
「かえって危ないよ。怪我でもしたらそこからばい菌が入る」
「うっ・・・・・・」
「や〜〜〜い、バイキンバイキン」
 プルがそれを聞いて楽しそうに囃し立てる。
「病気になっちゃうぞお」
「プルの言う通りだ」
 バーニィは真面目な顔で言葉を続ける。
「いざという時にそうなったら困るだろう」
「そりゃまあ」
「だから普段から清潔にしておくんだ。いいね」
「はい」
「バーニィは何時でも綺麗好きだからね」
 今度は女の声がした。赤いロングのストレートの女性であった。クリスチーナ=マッケンジー、クリスである。
「当然さ」
 バーニィはそう返した。
「いざという時に困るじゃないか」
「ザクを動かす時ね」
「えっ!?」
 ジュドー達はそれを聞いて思わず声をあげた。
「バーニィさん、あんたもしかして」
「まだザクに乗ってるの!?」
「ああ、そうだよ」
 彼は先程とはうって変わって不貞腐れた顔をして答えた。
「それが悪いのかい!?」
「いや」
 彼等はそれには首を横に振った。
「別に悪いとは思わないけれど。ただ」
「言いたいことはわかってるよ」
 バーニィにもわかっていた。
「けれどザクはいい機体なんだ」
「それでもなあ」
「ザクはザクだけれどな」
 ジュドー達に反論にかかった。
「ザクVなんだ。これなら文句はないだろう」
「確かに」
 ジュドー達もそれには同意した。ザクVはネオ=ジオンの機体でありその性能、とりわけ装備はかなりいい。ザクとは思えぬ程である。
「けれど何でロンド=ベルにそんなものが」
「捕獲品よ」
 クリスが答えた。
「私だってそれに乗っているんだから」
「そうなんですか。そしてそれは?」
「ドーベン=ウルフよ」
 にこりと笑ってそう言った。
「中々いいでしょ」
「中々どころじゃ」
 ネオ=ジオンの誇る重モビルスーツである。その装備はかなりいい。
「何か今のうちの軍って凄い装備だよな」
「ああ」
 そう言うジュドー達もガンダムやキュベレイである。ロンド=ベルはこれまでの戦いにより多くのモビルスーツを手に入れていた。従ってその装備もかなりのものとなっていた。
「そんな中でもザクを選ぶバーニィさんも」
「悪いのかよ」
「いや」 
 それには首を横に振った。
「けれどなあ」
「ああ」
「・・・・・・いいじゃないか、別に」
 バーニィは頬を膨らませた。そうこうしている間にラー=カイラムのエンジンに火が灯った。そしてそのまま次の戦場に向かうのであった。


第三話   完



                                     2005・1・23




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