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第二掲示板@うらたにんわあるど

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[239] 題名:シャングリラ1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時14分

           シャングリラ
 地上で小競り合いが続いている頃、宇宙でもそれは例外ではなかった。
 月にはギガノスがおりゼダンの門にはティターンズ、そしてアクシズにはネオ=ジオンが存在していた。そしてそれぞれ強力な指導者を得ていた。
 まずギガノスにはギルトール元帥がいた。能力とカリスマ、そして理想を備えた彼に心酔する者は多く、月を完全に掌握していた。
 ゼダンにいるティターンズにはジャミトフ=ハイマンがいた。戦いに敗れ宇宙に退いたとはいえ彼にはまだかなりの戦力が存在していた。かおかつジオン共和国やジュピトリアン達とも結び付きを強めその勢力を大幅に回復させていた。最早彼等は宇宙の一大勢力となっていた。
 そしてネオ=ジオンである。先の戦いでギレン=ザビ及びドズル=ザビを失いキシリア=ザビも終戦直後の不慮の事故で失った彼等だがその勢力は衰えることがなかった。それどころか盟主となったドズルの遺児ミネバ=ザビの摂政に就任したハマーン=カーンと奇跡的に生き残っていたエギーユ=デラーズの手によりその勢力を維持し、アクシズに独自の勢力を保っていた。彼等はジオンの残党を吸収し、やはり独立勢力と化していた。そして地球圏及び火星にいる連邦軍、とりわけロンド=ベル隊と激しい対立関係にあった。
 それは各コロニーにおいても同じであった。各サイドでもティターンズと友好関係にあるサイド3をはじめとしてそれぞれの勢力と結び付こうとしていた。それはモザイク状に絡み合い各勢力の小競り合いを促す結果となっていた。それはかってジュドー達がおり、そして今も住んでいるシャングリラにおいても同じであった。
「敵機はいるか」
 ロンド=ベルの旗艦ラー=カイラムの艦橋に座る男の声がした。この艦の艦長ブライト=ノアである。黒い髪を後ろに撫で付けた理知的な顔立ちの男である。連邦軍の制服がよく似合っている。
 一年戦争以来の名艦長と言われている。冷静沈着かつ的確な戦況判断で名がある。エースパイロットであり一年戦争からの戦友でもあるアムロ=レイと並んでロンド=ベルの重鎮とされている。今もこの艦を指揮し最前線に立っていた。
「はい、今のところ反応はありません」
 レーダーを見る金髪の男が答えた。トーレスである。
「そうか。だが油断するな」
「わかってますよ」
 トーレスはブライトに答えた。
「敵は何時何処から出て来るかわかりませんからね」
「そういうことだ」
 ブライトはそれを受けてこう言った。
「ティターンズやアクシズだけではないからな」
「ギガノスですか」
「そうだ。彼等はまた彼等でかなりの勢力を有している。油断は禁物だ」
「ロンド=ベルの勢力だけじゃ心配ですね」
「そうだな。連邦軍は今地球だけで手が一杯だ。とても宇宙にまでは手が回らない」
 やはり恐竜帝国やミケーネとの戦いがあるからだ。甲児達だけで何とかなるものではなかった。
「我々の戦力も心もとない。今動けるのはスカル小隊とヘンケン艦長の部隊、そして」
「俺達だけですね」
 いかつい顔の男がここでこう言った。サエグサである。
「そうだ」
 ブライトは彼の言葉に頷いた。
「どちらも戦力はかなりのものだがな」
「ヘンケン艦長の部隊にはリュウさんやスレッガーさん、ウッディさん達がいますしね」
「それにシュラク隊もな。どうもヘンケン艦長は彼女達が回って残念なようだが」
「そりゃそうでしょうね」
 トーレスはブライトのその言葉を聞いておかしそうに笑った。
「ヘンケン艦長はエマ中尉がいなくて残念なんですよ」
「エマ君がか」
 ブライトはそれを聞いて何かに気が付いた。
「確かにな。彼女は優れたパイロットだからな」
「問題はそうでもないようですか」
「だったら何だ?」
 ブライトはヘンケンがエマに持っている感情に気付いてはいなかったのだ。
「私にはよくわからないぞ」
「じゃあいいです」
 トーレスはそれで話を終わらせることにした。
「ところでそろそろですよ」
「うむ、そうか」
 ブライトはここで指揮官の顔に戻った。
「それではオビルスーツ隊に発進命令を出してくれ」
「了解」
「全機いけるな」
「勿論ですよ」
 艦橋にいた茶色の髪の男が答えた。この艦のチーフ=メカニックであるアストナージ=メドッソである。
「どれも整備状況は万全ですよ」
「それならいい」
 ブライトはそれを聞いて口の端を少し綻ばせた。
「ではすぐに向かわせよう」
「わかりました」
「指揮官はバニング大尉だ。04小隊とコウ、そしてカミーユを出そう」
「わかりました」
「先行しているクリスとバーニィから連絡はあったか」
「いえ、まだです」
「そうか」
 艦橋は次第に騒がしくなってきた。ブライトはその中で的確に指示を出していく。
「だがいい。あの二人なら大丈夫だ、すぐに出撃させるぞ、敵が側にいるのは間違いないからな」
「はい」
 サエグサとトーレスはブライトの命令に頷いた。
「では出撃させます」
「ああ、頼むぞ。ラー=カイラムはとりあえずはコロニーの側で待機する。そしてそこで哨戒に当たる」
「わかりました」
 こうしてモビルスーツ隊が発進した。彼等はまずラー=カイラムの側で隊を編成した。
「ふう」
 戦闘機の形態をしたリ=ガズィのコクピットで声をあげる者がいた。
「性能がいいだけあって操縦が厄介ですね」
「そうか?」
 その隣にいる緑のモビルスーツディジェSERから声がした。
「俺はそうは思わないぜ」
「おい、モンシア」
 そこで銀色の量産型F90からディジェのパイロットを嗜める声がした。
「アデルのリ=ガズィと御前さんのディジェじゃ操縦の形式がまた違うだろうが。一緒にするな」
「おお、ヘイトか」
 ディジェの中にいる茶色い髪と口髭の中年の男がF90に顔を向けさせた。
「御前さんはありかし普通に動かしているな」
「まあな」
 F90の中にいる金髪のリーゼントの男、ヘイトはそれに答えた。
「こっちはわりかし操縦が楽なんだよ」
「そうなのですか」
 リ=ガズィの中の黒い髪と髭の男がそれに頷いていた。彼がアデルである。この三人は一年戦争からの同僚であり、かっては『不死身の第4小隊とまで呼ばれていたのである。歴戦のパイロット達であった。
「隊長は何の問題もないみたいだな」
 ここで三人は彼等の前にいる銀色のガンダム、GP−01に目をやった。するとそこから声が返って来た。
「当たり前だ」
 渋い男の声であった。
「このガンダムには何度か乗ったことがあるからな」
「そういえばそうでしたね」
「ああ」
 男はまた答えた。白い髪をした初老にさしかかろうかという男であった。彼がこの小隊のリーダー、バニングであった。連邦軍においては名のあるエースの一人である。
「アデルもじきに慣れるだろう。いや、慣れてもらわないと困る」
「わかっていますよ」
 アデルはそう答えた。
「慣れないと命に関わりますからね。それはわかっているつもりです」
「ならいいんだがな」
 バニングはそれを聞いてそう言った。
「機体がよくなったのはいいがな。慣れないとどのみち同じだ。それはわかってくれ」
「了解」
 三人は彼の言葉にそう頷いた。
「ところでだ」
 バニングはここで話を変えた。
「カミーユの隊は何処にいる」
「あっちですよ」
 ディジェが右手を指差す。そこには四機のモビルスーツがいた。
 一機は黄色いモビルースーツであった。Zガンダムの試作機の一つメタスである。試作機ながらコストパフォーマンスが高く、修理機能もある。中々優れた機体だ。
 そしてガンダムマークUにGディフェンサーを付けたスーパーガンダム、そしてガンダムマークUを更に発展させたガンダムマークV、そしてZの発展型ZUであった。どれも名のあるパイロットが乗っている。
「ねえカミーユ」
 メタスから少女の声がした。黒い髪のあどけない顔立ちの少女だ。ファ=ユィリィである。ロンド=ベルのパイロットの一人である。歳の割に戦歴は長く、この隊においては主要なエースの一人でもある。
「もう私達の小隊は全員揃ったわ。早く行きましょう」
「ああ、そうだな」
 ZUに乗る少年の声がした。青い髪の少年である。彼がアムロ=レイと並ぶロンド=ベルのエースパイロットであり、ニュータイプとしても知られるカミーユ=ビダンである。先の戦いで獅子奮迅の活躍をしたことでも知られている。
「ファの言う通りね」
 それに合わせるかのようにスーパーガンダムから女の声がした。
「バニング大尉が待っているわ。早く行きましょう」
 茶色い髪をショートにした凛とした顔立ちの女性であった。エマ=シーンである。先程艦橋でブライト達が話していたその女性である。彼女もまたエースパイロットとして有名である。その操縦技術には定評がある。
「私もそう思うわ」
 ガンダムマークVからも声がした。空色の髪の少女であった。
「フォウ」
 カミーユは彼女の名を呼んだ。彼女はカミーユに名を呼ばれると微笑んだ。
 彼女の名はフォウ=ムラサメ、ティターンズにより養成された強化人間の一人である。かってはカミーユ達と死闘を繰り広げたが、彼の心からの説得により今こうしてロンド=ベルにいる。この隊においてはカミーユに匹敵するエースの一人である。
「早く言った方がいいと思うわ、バニング大尉は厳しいから」
「そうだな」
 カミーユは彼女の言葉に頷いた。
「行こう、そしてバニング大尉の指示に従う」
「ええ」
「了解」
 他の三人もそれに従った。そして彼等はバニングのところに来た。
「来たか」
「はい」
 バニングは彼等が来たのを認めてそう声をかけた。カミーユ達はそれに頷いた。
「これで二つだな」
「ええ。ところでウラキ少尉とキース少尉は」
「先に行かせた」
 バニングはカミーユにそう答えた。
「クリス中尉とワイズマン少尉から連絡がないのでな。二人も先行させた」
「そうなのですか」
「我々もすぐに行くぞ。用意はいいか」
「はい」
 カミーユはそれに頷いた。すぐにZUを変形させる。
「何時でも行けますよ」
「ならばいい」
 バニングはそれを受けて頷いた。
「では我々も行こう。二人から連絡がにところを見ると何かある」
「そうでしょうね」
 カミーユもそれには同じ見方をしていた。
「中にいるのはティターンズかネオ=ジオンか」
「ギガノスの可能性もあるぞ」
「はい」
 他の者達も頷いた。
「ギガノスにも凄腕のパイロットがいるそうだしな」
「蒼き鷹ですね」
「そうだ」
 バニングはカミーユの言葉に頷いた。
「まさかこのシャングリラにも」
「そこまではわからん。だが用心するにこしたことはないぞ」
 バニングの言葉は歴戦の戦士故の言葉であった。だからこそ重みがあった。
「わかるな」
「ええ」
 カミーユは答えた。
「では突入だ。カミーユ、先頭は俺が務める。サポートを頼む」
「了解」
「後は続け。敵がいたならばすぐに叩くぞ」
「わかりました」
 彼等はそれに続いた。こうして八機のモビルスーツがシャングリラに潜入した。

 戦いが終わった後ジュドー達は元のジャンク屋を経営していた。顔触れは以前よりもかえって増えていた。そしてその商売の状況も以前よりよくなっていた。彼等は今そのジャンク屋になっているジュドー=アーシタの家に集まっていた。
「ねえジュドー」
 長い薄紫の髪の美しい少女がジュドーの名を呼んだ。ルー=ルカである。
「何だ」
 黒い髪の少年ジュドーが彼女に応えた。
「何か気になることでもあるのかよ」
「あるわよ、それも大あり」
 ルーは強い声でそう答えた。
「ここにティターンズかギガノスが来ているって話じゃない」
「まさか」
 だがジュドーはそれを否定した。
「こんな所にわざわざ来るもんかよ、あいつ等は今ゼダンにいるんだぜ」
「いや、わかんねえぞ」
 蜂蜜色の髪をした少年、ビーチャ=オレーグがジュドーに対してそう言った。
「ここはアナハイム社の業者も出入りしているしな。それの関係なら有り得るぜ」
「そういえば昨日でっかい船が来たよね」
 黒い髪に浅黒い肌の少年がそれに合わせた。モンド=アカゲである。
「ああ、あの船だね」
 茶色の髪の少年も言う。イーノ=アッバーブである。
「それならあそこに泊まっているよ」
 彼はそう言ってコロニーの彼方を指差した。港のある方である。
「そうなのか」
 ジュドーはそれを聞いていささか事情がわかってきた。
「ティターンズのやつなんだな」
「ああ」
 彼等はそれに頷いた。
「じゃあ話が早え、それかっぱらっちまおうぜ」
「やるか」
 皆それを聞いてにんまりと笑った。
「こうこなくっちゃね」
 黄色い髪の少女が言った。エル=ビアンノである。
「プル、プルツー」
 ジュドーは店の奥にいる赤髪の二人の小柄な少女に声をかけた。
「仕事だぜ。お宝を見つけたぞ」
「お宝!?」
「ザクか何かか!?」
 二人はそれを聞いて店の先に出て来た。
「おいおい」
 ジュドーはザクと聞いて苦笑した。
「確かにザクなんて手に入ったら高く売れるだろうけれどな」
 やはり名機なのは事実である。その筋のマニアには高く売れるのである。
「けれど今回はもっと違うぜ」
「違うの?」
「じゃあ何だ?」
「よく聞けよ」
 ジュドーはまずそう断った。
「うん」
「わかった」
 そして二人はそれに頷いた。彼はそれを確かめてから語った。
「相手はティターンズだ」
「ティターンズ」
 二人はそれを聞いて顔を引き締めさせた。
「そうだ」
 ジュドーは二人のその顔を確かめながら頷いた。
「わかるな。今回は儲かるだけじゃねえぜ」
「そうだな」
 プルツーはそれを受けて応えた。
「ティターンズはどのみちあたし達によくするとは思えない。連中を妨害することならした方がいいな」
 ティターンズはスペースノイドにとっては公然とした敵であった。地球至上主義を唱え彼等を排除するティターンズを敵視
するのは当然であった。
「そう思うだろう。じゃあ決まりだな」
「うん」
 今度はプルが頷いた。
「じゃあすぐに行こうよ。早くしないとあっちが出て行っちゃうよ」
「まあそう焦るなって」
 ジュドーはそんなプルを宥めた。
「準備ってやつが必要だよ。なあ」
 ここでビーチャ達に顔を向けた。
「ああ」
「今車を持って来るよ」
「うちのワゴンでいいよね」
 エルとイーノがそう言って何処かに駆けて行った。彼等はそれを見送った。
「さて」
 ジュドーは二人が車を持って来に去ったのを見届けた後で店の奥に顔を戻した。
「リィナ」
 そして別の女の子の名を呼んだ。
「何?」
 暫くしてプルやプルツーと同じ位の歳の少女が出て来た。髪の色はジュドーと同じである。顔付きも似ている。だがその表情は可愛らしく、如何にもといった感じの整った顔立ちであった。そこがジュドーとは違っていた。ジュドーの妹であるリィナ=アーシタであった。
「おお、いたか」
「さっきからいるわよ」
 リィナは兄の言葉に口を尖らせた。
「ティターンズ相手にやるんでしょ」
「ああ」
 彼は答えた。
「何だ、知っているのかよ」
「知ってるわよ」
 リィナは口を尖らせたまま答えた。
「さっきからそれだけ騒いでいたら。ご近所に聞かれたら大変よ」
「あらら」
 ジュドーはそれを聞いてバツの悪い顔をした。
「聞こえてたのかよ」
「どうせ止めたって行くんでしょ」
 ジュドーは兄に対して言った。
「相手はティターンズだし」
「ああ」
 ジュドーはそれを否定しなかった。頷いて答えた。
「気を着けてね」
 リィナは兄達に言った。
「あたしが言えるのはそれだけだけれど」
 その顔は不安に満ちたものであった。
「わかってるさ。心配するなって」
 ジュドーはそんな妹を励ますようにして言った。
「すぐに大金持って来るからな」
「そうしたらパーティしようぜ。パッとな」
「いいわね、皆で」
 ルーがビーチャの言葉に賛同した。
「そういうこと。リィナちゃんは何も心配する必要はないよ」
 モンドも彼女を励ました。それを聞いてもリィナの顔は晴れなかった。
「うん」
 まだ何か言いたげであった。だがここでエルとイーノが乗るワゴンが来た。
「お待たせ」
「これなら皆乗れるよね」
「ああ」
 ジュドーはそのワゴンを見て満足そうに頷いた。
「じゃあ早速行くか。皆乗れ」
「了解」
「まずあたしが乗るね」
「子供は後だよ、プル」
「あーーーっ、自分だってまだ子供の癖に」
「ビーチャずるいぞ」
 口喧嘩をしながらワゴンに乗り込む。そして皆乗った。それから出発した。
「行ってらっしゃい」
 リィナは彼等を手を振って送った。もうそれだけしか出来なかった。
「けれど」
 それでも顔は不安気なままであった。
「大丈夫かなあ。ホントに」
 それが本音であった。やはり兄達が心配でならないリィナであった。


[238] 題名:悪を断つ剣2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時11分

 起き上がりながら文句を言う。そしてその敵に向かおうとする。だがそれは出来なかった。
「マジンガーーーブレーーードッ!」
 鉄也のグレートマジンガーが剣を抜きその敵を両断していた。その横にいるヴィーナスAはビームでその側にいる敵を撃破していた。
「何でえ、おいらの出番はなしかよ」
「ボス、そう言うな」
 そこで上にいる甲児がそう慰めた。
「御前の出番はたっぷりあるさ。これからな」
「いつもそう言うけれどよ」
 ボスはここで上を見上げた。
「おいらはいつもこんなんだぜ。ちょっとは格好いい場面が欲しいぜ」
「それならボス」
 ここでジュンの声がした。
「何だ!?出番か!?」
「ええ。ちょっと前に出て」
「おうよ」
 ボスはそれに従い嬉々として前に進んだ。そこにゲッターが来た。
「おい、まさか出番って」
 ボスはそれを見てあからさまに嫌そうな顔をした。
「ええ、そうよ」
 ジュンは微笑んだ声で答えた。
「ボス、悪いな」
 竜馬が声をかけてきた。
「回復させてくれ」
「大至急な」
 隼人と弁慶の声がする。ボスはそれを聞いてはああ、と溜息をついた。
「結局ボロットは補給役かよ」
「ボス、そう落ち込まないで」
「そうですよ」
 後ろからヌケとムチャが出て来た。
「頑張ってればきっといいことありますって」
「いつもそう言うけれどな」
「あれ、不満ですか?」
「当たり前だよ!何でおいらはいつも兜や剣にいいことさらわれてばっかりなんだよ!おいらは引き立て役じゃねえぞ!」
 それを聞いて二人はポツリと頷いた。
「そのものじゃん」
「俺達はその引き立て役だけれどな」
「何か言ったか!?」
「いや」
「別に」
 二人は咄嗟に誤魔化した。彼等がそうした緊張感のない話をしている間にも戦いは続いていた。
「行くぞ!」
 ファン=リーの声が響く。そしてスカイラーからミサイルが放たれる。
 スカイラーだけではない。ネッサーとバゾラーも同時に攻撃を仕掛ける。
 そして三機のハニワ幻人を仕留める。しかしそれで終わりではなかった。
「グウオオオオオオッ!」
 一機残っていた。そしてその一機がスカイラー達と共にいたガイキングに襲い掛かる。
「甘いぜ!」
 だがサンシローは余裕のある態度を崩さなかった。敵を前にしても不敵に笑っていた。
「行くぞ」
 彼は叫んだ。そして腹から光の弾を取り出した。
「ハイドロブレイザァアアアアアアアアーーーーーーーッ!」
 それを右手で投げた。放たれた光の弾は複雑な動きをしながら敵に向かって行く。そして敵を直撃した。
「ガアオオオオオオオンンンッ!」
 直撃を受けた敵は絶叫した。そして爆発の中に消えた。
「すげえな」
 甲児はそれを見てこう呟いた。
「何でなの?」
「決まってるじゃねえか」 
 問うたさやかに答えた。
「元野球選手だっただけはあると思ってな。あんな技は野球選手じゃなきゃできねえよ」
「それを言ったら巴先輩も一緒だぜ」
 ここで前線に戻って来たゲッターから弁慶の声がした。
「大雪山おろしがあるからな」
「おっと、そうだった」
 甲児はうっかりとしていたことを思い出したように言った。
「あいつのあの技は凄いよなあ。よくあんなのできるよ」
「全くだ。海ではあいつの独壇場だからな」
 鉄也がそれに同意した。
「グレートも海でも戦えないわけじゃないけれどな」
「それでも限界があるな」
 隼人がそれに答えた。
「俺のライガーは特にそうだ。海ではてんで駄目だ」
「俺のドラゴンのだ」
 竜馬もここでこう言った。
「空はいいけれど海はな。どうしてもドラゴンの性能が落ちる」
「その点ジャックのあれは大丈夫だけれどな」
「ジャックってテキサスマックか」
「ああ」
 甲児の問いに竜馬が答えた。
「テキサスマックは何処でも戦えるんだ。汎用性の高いメカなんだ」
「そうだったんだ。以外だな」
「そういえばジャックは今どうしてるの?」
 ジュンが三人に問うた。
「えっと、どうしてたっけ」
 弁慶はとぼけた声を出した。
「おい、何言ってるんだ。アメリカにいるだろうが」
「あっ、そうだったか」
「おいおい、頼むぜ」
 隼人がそれを聞いて呆れたような声を出した。
「戦友の所在位覚えておいてくれよ」
「HAHAHAHAHA!その通りデーーーーーース!」
 ここで胡散臭い英語混じりの日本語が聞こえてきた。
「その声は」
 皆それが誰の声であるかすぐにわかった。
「ジャック、来たのか」
 皆そちらに顔を向けた。するとアメリカのガンマンの様な格好の銀色のロボットがそこにいた。
「そうYO!ミーを入れないのは寂しいね!」
 彼は不自然な程明るい声でそう言った。
「おい、ジャック」
 だが竜馬がそんな彼に冷静な声で返した。
「一体何時日本に来たんだ?」
「HAHAHA,それはね」
「もう兄さん」
 ここで帽子の方から声がした。
「ちょっと静かにして。話が進まないわ」
「OH,SORRY」
 ジャックはやはり笑ってそう答えた。
「まあ来てくれたんなら有り難いよ」
「ジャック、宜しくな」
「これからも頼むぜ」
 三人は彼に対してそう言った。ジャックはそれに応え早速敵に攻撃を開始した。
「シューーーーーートッ!」
 手に持つ銃を発砲する。それで敵を撃った。
 それで倒した。見かけによらずかなりの破壊力だ。
「へええ」
 ジーグはそんなテキサクマックを見て思わず感嘆の声を漏らした。
「思ったよりやるな。見かけによらないもんだ」
「HAHAHA、その通りね」
 それを聞いてやはり笑うジャックであった。
「ミーはグレイトYO!それは覚えといて!」
「もう、また兄さんたら」
 帽子からまた声がした。
「なあ」
 ジーグはそれを受けて竜馬に問うた。
「さっきから帽子から声が聞こえるんだが」
「ああ、あれか」
「中に誰かいるのか?」
「いるよ。ジャックの妹が」
「妹!?」
 ジーグはそれを聞いて思わず叫んだ。
「あいつ妹がいるのか!?」
「驚くことか?さっきから兄さんって言ってるじゃないか)
 竜馬はそれを聞いて不思議そうな顔をした。
「君にも妹がいる筈だが」
「あ、ああ」
 ジーグにも妹がいる。まゆみという可愛らしい少女だ。
「だったら不思議じゃないだろう」
「しかし」
「信じられないと言いたいんだな、ジャックにいることが」
「まあな」 
 その通りであった。あの話し方からは信じられないのであった。
「美人だぜ。この戦いが終わったら会ってみるといい」
「わかった」
「何を話しているのデスか!?」
 ここでまたジャックの声がした。
「ミーの妹のメリーは美人ですよ」
 やはり変な日本語であった。
「それは後でじっくり見て下さいね、HAHAHAHA」 
「もう、兄さんたら」
 またメリーの声がした。困った様な声であった。ジーグはそれを聞いて変な兄を持つと大変だと思った。
(俺も人のことは言えないか)
 ここでふとこう思う彼であった。
 戦いはスーパーロボット達に有利になってきていた。既にハニワ幻人達はその数を大きく減らしていた。
「まだまだ!」
 だが彼等も怯んではいない。戦意は衰えず戦いを続けていた。
 ククルの乗るマガルガは後方にいる。先頭にはヤマタノオロチがいた。
「おのれ、これで終わりと思うな!」
「我等がいる限り!」
 ヤマタノオロチの中にいる彼等は必死に指揮を執る。そして目の前にいる大空魔竜を見た。
「あれをやるぞ!」
「おう!」
「わかった!」
 イキマの声に他の二人も従う。そしてヤマタノオロチを突っ込ませた。
「行けっ!」
 竜の首を出して襲い掛かる。それで大空魔竜を破壊せんとする。だがそれを見るピートの目は冷静であった。
「来たな」
「ピート君、どうするつもりだね」
 大文字は彼に問うた。信頼しているのか落ち着いた声であった。
「ジャイアントカッターでいきます」
「あれを使うのか」
「はい」
 ピートは頷いた。
「それでいいですね」
「うむ、君に任せる」
 彼はそれを認めた。ピートはそれを受けて言った。
「ジャイアントカッターーーーーーッ!」
 竜の腹から巨大なカッターを出す。そしてそれを出したままヤマタノオロチに突撃した。
「食らえっ!」
 その刃が切り裂く。直撃を受けたヤマタノオロチは真っ二つとなった。
「ぬうう!」
「致し方ない、撤退だ!」
「ククル様、宜しいでしょうか!」
 三人は敗北の悔しさに身を震わせながらククルに問うた。
「止むを得ん、退け」
 ククルはそれを認めた。三人はそれを受けてヤマタノオロチから脱出した。そしてその直後要塞は爆発して消え失せた。
「終わったか」
 サンシローはそれを見て言った。
「いや、まだだ」
 だがすぐにサコンの声が返って来た。
「あの女がいるぞ」
「邪魔大王国の新しい女王か」
「そうだ、気をつけろ」
 サコンの声は警戒を促すものであった。見ればマガルガは空中でまるで女神の様に立っていた。
「見たところあいつはかなり手強い。御前でもそうそう楽には勝てないぞ」
「おい、何を言ってるんだ」
 サンシローは勝てないという言葉に反応した。
「俺が負けるとでも言うのか」
「いや、それは違うぞサンシロー」
 ピートとリーが同時に彼に言った。
「敵を知れ。俺達はあいつのことをまだ何も知らないんだ」
「ピートの言う通りだ。それにあいつからは得体の知れないものを感じる」
「得体の知れないもの」
 それはサンシローにはよくわからなかった。
「それは何だ」
「そこまではわからん。だがな」
 サコンは彼だけでなく他のパイロット達全てに言った。
「気をつけなければならないのは事実だ。皆油断するな」
「ああ」
「わかった」
 竜馬と鉄也はそれに頷いた。
「確かにな」
 ジーグもであった。
「ヒミカとはまた違う。あいつにはかなりの気を感じる」
「そうだな」
 甲児もそれに同意した。
「ここは用心しねえとな。下手するとこっちがやられるぜ」
 いつもの無鉄砲さは何処にもなかった。
「ボス、わかってるな」
「お、おう」
 不意にそう言われて慌てた。実は彼は突っ込むつもりであった。
「四方から囲め、いいな」
「了解」
 ピートの指示に従いマガルガを取り囲もうとする。だがマガルガはそれを見ても動かない。
「ふふふ」
 ククルはその中で笑っていた。
「何時でも来るがいい、弱き者達よ」
 そう言った。囲まれてもまだ余裕を崩さなかった。
「誰にもわらわを倒すことは出来ぬ。それを今から教えてやろう」
「言ってくれるんじゃねえか」
 甲児がそれを聞き口を尖らせた。
「だがな、そう簡単にはそっちの手には乗らねえぞ」
「そう言うか」
「何度でも言ってやらあ。御前の手には乗るもんか」
「それならばそれでよい」
 ククルはそれに返した。
「ならばこちらから仕掛けるまで」
 動きをはじめた。まるで舞を舞う様に優雅な動きであった。
「来るか」
 皆それを見て身構えた。だがこおで新たな声がした。
「待てっ!」
 大空魔竜の後ろから声がした。そして何かが飛んで来る。
「何だっ!?」
「敵かっ!?」
 皆そちらに顔を移す。だがそこにいるのは敵ではなかった。
「あれは・・・・・・」
 それは赤い巨大ロボットであった。ここにいる多くの者がそのロボットに見覚えがあった。
「グルンガスト!」
 サンシローやジーグもその名は聞いていた。かってバルマー戦役にて活躍したスーパーロボットである。最早その名は伝説と化していた。
「じゃあ中にいるのはクスハかブリットか!?」
「残念だが違う」
 中から男らしい低い声が聞こえて来た。
「我が名はゼンガー=ゾンバルト。かってディバイン=クルセイダーにいた」
 男はそう名乗った。灰色の髪と瞳を持つ精悍な顔立ちの男である。赤い軍服を身に纏っている。
「そして今邪魔大王国及び多くの地下からの侵略の手に立ち上がった。義により助太刀致そう」
「俺達にか!?」
「そうだ」
 ゼンガーは甲児に答えた。
「他に誰がいるというのだ」
「そりゃまあそうだけれどよ」
「しかし突然言われても」
「事情は連邦軍に聞くがいい。後でな」
 彼はそう言うとグルンガストを前に出して来た。
「少なくとも敵ではない。今それを見せよう」
 グルンガストは手を前に出す。そしてそこに液体が浮かび上がる。
「受けてみよ、斬艦刀」
「残酷刀!?」
「斬艦刀だ」
 リーがヤマガタケに突っ込みを入れる。
 グルンガストはマガルガに向かって行く。ククルはそれを見て妖しげな笑みを浮かべていた。
「来たな、愚か者が」
 彼女はやはり動かない。ゼンガーを見てもまだ余裕であった。
「わらわに勝てると思うておるのか」
 マガルガは優雅な舞をはじめた。そしてグルンガストの前に出る。
「受けてみよ」
 舞いながらグルンガストに向かう。そして叫んだ。
「黄泉舞!」
 グルンガストに襲い掛かる。華麗な動きでその全体を撃つ。だがグルンガストは怯んではいなかった。
「まだまだっ!」
 ゼンガーは機体を襲うダメージにも怯むことはなかった。むしろそれを受けてさらに戦意を高揚させていた。
「先程も言ったな」
 ゼンガーはその刀をククルに向けてから言う。
「我が名はゼンガー=ゾンバルト」
 その声は剣の様に鋭い。
「悪を断つ剣なり!」
 そう叫ぶとマガルガに向けて突進する。そしてその巨大な刀で斬りつけた。
「ムッ!」
 マガルガはそれを避けようとする。だが斬艦刀の方が速かった。それはマガルガの右腕を一閃した。
「ぬうっ!」
 右腕が断ち切られた。ククルはそれを見て苦悶の声をあげた。
「おのれっ!」
「我が太刀筋、見切れるものではない」
 ゼンガーは怒りに顔を歪める彼女に対してそう言った。
「女よ」
 そして言った。
「この勝負、俺の勝ちだ。潔く敗北を認めよ」
「認めよだと」
 ククルはそれを聞きさらに怒りを高めた。その白く整った顔が紅潮し、醜く歪む。
「わらわに敗北を認めよだと」
「そうだ」
 ゼンガーは彼女にそう言い放った。
「貴様は今俺に右腕を切り落とされた。それが敗北でなくて何だというのだ」
「ヌヌヌ・・・・・・」
「敗北を認めぬのならそれでよい。だが」
 彼は言葉を続けた。
「俺に腕を切り落とされたのは事実。これは言い繕うことができぬぞ」
「戯れ言を」
 ククルは怒りに身体を打ち震わせながらも言葉を返した。
「この程度でわらわに勝ったなどとは」
「やるつもりか」
「無論」
 左腕だけで構えをとった。
「そこになおれ。今すぐその戯れ言への褒美をくれてやろう」
「褒美か」
「そうじゃ。わらわの舞をもう一度受けてあの世に行くがよい。そしてそこで永遠に悔やむがよい」
「面白い」
 だがゼンガーはそれでも動じてはいなかった。
「我が剣、もう一度見せてやろう」
 再び斬艦刀を取り出す。そしてそれを構える。だがここで新たな敵が姿を現わした。
「待て、ククルよ」
 遠くから声がした。
「その声は」
 甲児と鉄也は咄嗟に声がした方に目をやった。そこにあの男がいた。
 そこには巨大な身体をした巨人がいた。宙に立ち、腹にある髭の生えた男の顔がこちらを睨んでいる。
「暗黒大将軍!」
「貴様もここに!」
「フフフ」
 暗黒大将軍は二人を見て笑った。
「久し振りだな、二人共」
「ああ、全くだ」
「まさかまた会うとはな。これで三度目だ」
「三度目!?」
 暗黒大将軍はその言葉にふと気付いた。
「それは違うな。わしが貴様等に会うのはこれが二度目だ」
「それは俺達の話だ」
「貴様には関係のないことだ」
「ふむ」
 やはり彼にはわからなかった。彼は甲児達が未来に行っていたことを知らないのである。
「まあいい。わしがここに来た理由はわかるな」
「俺達とやり合うつもりか」
「貴様等がそう望むのならな」
 彼は悠然とそう答えた。
「しかし今はそのつもりはない。ククルよ」
「何だ」
 声をかけられたククルは彼に顔を向けた。
「今は退け。よいな」
「何故だ」
 彼女はそれを受けて暗黒大将軍を睨みつけた。
「わらわはまだ戦える。余計な助太刀は無用だ」
「無論それはわかっておる」
 彼はそう言葉を返した。
「では何故だ」
「今我等の帝国に敵が向かっておる。すぐに戻って欲しいのだ」
「何、敵!?」
 彼女はそれを聞いて眉を顰めさせた。
「連邦軍か」
「いや、どうやら違うのだ」
 暗黒大将軍は彼女の問いに首を横に振った。
「かといって恐竜帝国でもない」
 彼等と恐竜帝国は中立関係にあるのだ。
「では何じゃ?」
 ククルは少し苛立った声で暗黒大将軍に問うた。
「それはわからん。だが今は七大将軍は全て出払っていてな。お主の力を借りたいのじゃ」
「そういうことならわかった」
 彼女はようやく頷いた。
「では行こう。そしてその敵を倒すぞ」
「うむ、闇の帝王様に何かあってはいかぬからな。すぐに行くぞ」
「わかった」
 ククルは風の様な動きで抜けた。そして最後にゼンガーの方に振り向いた。
「ゼンガー=ゾンバルトといったな」
「そうだ」
 彼はそれに応えた。
「今はこの勝負預けておこう。じゃが今度会う時は」
 その目が赤く光った。
「その命貰い受ける。よいな」
「望むところだ」
 ゼンガーも退いてはいなかった。そう返した。
「俺は何時でも貴様が来るのを待っている。思う存分来い」
「その言葉、忘れるでないぞ」
 そう言い放つと姿を消した。見れば他の邪魔大王国のハニワ幻人達も全て消えていた。
「終わったな」
 甲児は敵がいなくなった戦場を見てそう呟いた。
「ああ、とりあえずはな」
 ピートがそれに返した。
「だが奴等はしつこい。どうせまた来るぞ」
「ああ、それはわかっている」
 ここにいる誰もがわかっていることであった。
「ミケーネも恐竜王国もな。そう簡単には退きはしない」
「だが負けるわけにもいかないぞ」
 竜馬が鉄也に言った。
「奴等がどれだけしつこくてもな」
「それもわかっている」
 やはり鉄也は冷静であった。そう返した。そしてその冷静さを別のところに向けた。
「今ここにいるだけでは奴等を相手にするのは難しいな」
「そうだな」
 サコンも同じ考えであった。
「とりあえずは戦力を集めるか。誰かいるか」
「それなら心当たりがあるぜ」
 甲児が答えた。
「ダンクーガにコンバトラーにボルテスだ。あいつ等なら力を貸してくれる筈だぜ」
「おお、彼等がか」
 大文字はそれを聞き思わず声をあげた。
「彼等が参加してくれるとなると心強いな」
「あとは大介さんか。今何処にいるのかな」
「スペインの方に行っているらしいぞ」
 鉄也がそえに答えた。
「ひかるさんやマリアちゃんと一緒にな」
「へえ、そうだったんだ。暫く見ないと思ったら」
「大介さん?」
 サンシローはそれを聞いて不思議そうな声をあげた。
「それは誰だい?」
 そして甲児達に尋ねた。
「あ、すまねえ。知らなかったか」
「ああ。よかったら教えてくれ」
「グレンダイザーのパイロットさ。UFOみたいな形に変形できる」
「そしてスペイザーっていう戦闘機と合体するのさ。色々な形になるんだ」
「へえ、そりゃ面白そうなロボットだな」
 サンシローは甲児と鉄也の話を聞いて興味深そうに頷いた。
「後で大介さんにも連絡しておこう。スペインの方の事情にもよるが」
「お願いします」
 甲児は鉄也に頼み込んだ。これで話はおおよそ終わった。そして次の問題であった。
「とりあえずこれからどうするかだな」
 大文字が大空魔竜の側に集結して来たパイロット達に声をかけてきた。
「まずは甲児君の言う通り戦力を増強させよう」
「はい」
 皆それに頷いた。
「まずは何処に行くかだな」
「それでしたら厚木に行きましょう」
 鉄也が提案した。
「厚木に」
「丁度そこに獣戦機隊がいるんです。彼等と合流しましょう」
「そうか、ならそうしよう」
 大文字は彼の提案に首を縦に振った。それから他の者に対して言った。
「ではこれから我々は厚木に向かう。いいか」
「はい」
「了解」
「わかりました」
「合点だ」
 皆それに頷いた。こうして彼等の行く先は決定した。
「決まりだな。では向かうとしよう」
 大空魔竜にロボット達を収容すると厚木に向かった。新たな力を加える為に。
 ゼンガーは大空魔竜の中に入るとすぐに他の者と離れた。そして一人窓の側に佇んでいた。
「・・・・・・・・・」
「何だ、あいつあんなにクールな奴だったのか」
 甲児達はそれを見ながら話をしていた。
「意外だったな。戦っている時はかなり熱い奴だと思っていたが」
 サンシローもそれは同じ考えであった。
「戦っている時は変わるんだろ。よくあることだ」
「リーはそんなに変わらねえけれどな」
「まあな」
 サンシローの言葉を否定しなかった。
「俺はそれでいいと思っているしな。だからといって御前のその熱さも悪いとは思わん」
「そうなのか」
「人それぞれだ。少なくとも俺はそう考えている」
 彼は落ち着いた声でサンシローにそう語った。
「ブンタにもヤマガタケにもそれぞれのキャラがあるかな」
「そういうものですか」
「俺はそんなに個性は強くはねえぜ」
 皆ヤマガタケのそんな言葉を聞いてを言ってやがる、と思ったがそれは口には出さなかった。
「それにしても獣戦機隊が入るのか」
 ピーとが少し困ったような顔をしてそう語った。
「知っているのか?」
「知っているも何もあの連中は有名過ぎるからな」
 ピートは当然といった口調でそう答えた。
「命令違反の常習犯ばかりで構成されているからな。否が応でも知っているさ」
「ああ、そういう意味だったか」
 これには甲児も竜馬達も同意した。
「確かにあいつ等はな。気性が滅茶苦茶激しいからな」
「特に忍はな。ダンクーガのパイロットには合ってはいるが」
「何でも厚木には三輪長官が直接来るように命令したらしいな」
「それは本当か、隼人」
「ああ、本当だ」
 隼人は鉄也にそう答えた。
「北米に配属されていたらしいがとにかく命令を聞かなくてな。それでこっちに呼び寄せたらしい。ついでに東京防衛も兼ねてな」
「成程な。毒を以って毒を制すというわけか」
 竜馬はそれを聞いて納得した。
「あの長官にしては珍しく頭の回ることじゃねえか」
「実際は葉月博士の提案らしいがな」
 隼人は甲児にそう説明した。
「厚木は東京に近いからな。もしもの時に備えたのだろう」
「そうか、それなら話がわかるな」
 鉄也はその説明に深く納得した。
「だがそれだと問題があるぞ」
 大文字が彼等にそう言った。
「彼等は軍属だ。我々に協力してくれるものかどうか」
「それは御心配なく」
 鉄也が言った。
「葉月博士は話のわかる人ですから。事情を話せば協力してくれますよ」
「そうなのか」
「ええ、それに北米から呼び寄せたのは獣戦機隊だけじゃありませんから。厚木の戦力はかなり充実したものになっていますよ。ですから御安心下さい」
「そういうことならいいが」
 彼はそれを聞いて安心した。
「ならば予定通り向かうとしよう。ミドリ君、いいな」
「はい」
 ミドリはそれに頷いた。そしてそのまま大空魔竜は厚木に向かった。
 ゼンガーはその中でもやはり何も語らない。ただ夕焼けの空を眺めているだけであった。 
「ククルか・・・・・・」
 彼はあの女の名を呟いた。だがそれ以上は何も語ろうとはしなかった。


第二話   完



                               2005・1・17


[237] 題名:悪を断つ剣1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時07分

            悪を裁つ剣
 宇宙においても各勢力がそれぞれの勢力圏を築き不穏な空気が流れている中で地球も例外ではなかった。やはり戦いが行われており戦士達は戦いに狩り出されていた。
 それは日本においても同じであった。今富士の上を数機のロボットが飛んでいた。マジンガーZにグレートマジンガーとそのパートナー達、そしてゲッターロボの他にも数機ある。どれも日本、いや地球を守る偉大なロボット達であった。
「ちぇっ、またかよ」
 空を飛ぶ鉄の巨人マジンガーZに乗る少年が何か嫌そうな顔をして舌打ちしていた。
「三輪のおっさんにも困ったもんだぜ」
 黒い髪にもみあげをたくわえている。癖のある髪なのか上に向き、そしてその量も異様に多かった。
「甲児君、そうも行ってはいられないぞ」
 その隣を飛ぶやはり黒い巨人グレートマジンガーの頭から通信が入って来た。
「今俺達は地球を守る為に戦っている。それはわかるな」
「ええ、それは」
 その男兜甲児は彼に答えた。見ればそのコクピットには濃い眉をした男らしい顔立ちの青年がいた。年齢は甲児より幾分か上であるようだ。
「けれど鉄也さんもあいつには頭にきているでしょう」
「それは否定しない」
 グレートマジンガーに乗る剣鉄也もそれについては甲児と同じ考えであった。
「俺は確かに戦士だ」
 彼は幼い頃より戦士として育てられてきた。それこそが彼のアイデンティティである。
「間違っても狂人ではない」
「そうですよね」
 甲児はその言葉に同意した。
「ったく、何であんなのが環太平洋区の長官になるんだか。わからねえよな」
「それは俺も同意する」
 彼等の後ろから声がした。見れば馬に似た身体に緑の頭を持つ黄色い身体のロボットである。いや、どうやらロボットではないようである。
「宙」
 二人は彼の名を呼んだ。
「いや、今は鋼鉄ジーグと呼んでくれ」
「ああ、わかった」
「それでだ」
 鋼鉄ジーグは二人に話をはじめた。
「邪魔大王国との戦いに勝ったらいきなり呼び出されたんだ。母さん達を人質にとられてな」
「まじかよ。本当にやることが滅茶苦茶だな」
「地球の為に戦えってな。それで今回あんた達の仲間に加わることになったんだ。よろしくな」
「ああ、こちらこそな」
 甲児が彼にそう答えた。
「俺もな」
 鉄也も彼に声をかける。
「お互い頑張ろう。どのみち戦わなくちゃいけないのは事実だ」
「そうだな」
 彼等も長い間様々な地球、そして人類を脅かす勢力と戦ってきた。だからこそわかることであった。この男鋼鉄ジーグこと司馬宙も同じであった。彼は邪魔大王国との戦いに備えて父にサイボーグに改造されていた。そして多くの苦難を乗り越えて彼等に勝ったのである。そうした経緯があった。
「宙さんも成長したわね」
 そこで後ろから女性の声がした。
「ミッチー」
 ジーグはそちらに顔を向けた。
「前はあんなに嫌だったのに」
「前はな」
 ジーグは少し渋い顔をした。
「あの時は色々と思うこともあったさ。父さんにも憤りがあった」
「それはわかるわ。けど」
「ああ、今ではわかっているさ。これは俺の運命なんだ」
 ジーグの声は決意に満ちたものであった。
「だからもう俺はそれについては迷わない。地球の平和を脅かす悪がいれば戦う。それだけだ」
「わかったわ」
 後ろに飛ぶ戦闘機でありジーグのサポートメカであるビッグシューターに乗る卯月美和は彼の言葉に頷いた。茶色の髪をした清楚な少女である。
「何か重たいもん背負ってるな」
 甲児はそれを聞きながら呟いた。
「俺とはえらい違いだ」
「いや、それは違うぞ」
 だが哲也が彼に対してこう言った。
「甲児君も色々あったじゃないか」
「そうでしたっけ」
「何とぼけたこと言ってんのよ」
 ここでまた少女の声がした。
「甲児君程色々ある人もいないじゃない」
 マジンガーのすぐ後ろを飛ぶピンク色の女性型メカ、アフロダイAからであった。
「さやかさん」
 甲児はマジンガーの首を振り向かせ彼女を見た。そこに茶色い長い髪をした少女がいた。やや甲児より大人びている。そしてその余裕に基づく落ち着きがある。やはり顔は整っている。
「お祖父さんが亡くなられてるしドクターヘルとの戦いがあったし。そんなに境遇は変わらないと思うわ」
「そうかなあ」
「哲也もね」
 アフロダイAの隣のオレンジのマシンに乗る褐色の肌の女が鉄也に声をかけた。このマシンはヴィーナスA、そしてこの褐色の肌に彫の深い顔立ちの女は炎ジュンという。
「ジュン、御前だってそうじゃないか」
 鉄也はそんなジュンにそう言葉を返した。
「幼い頃から戦う為に育てられてきたんだからな」
「ええ」
 ジュンはそこで少し暗い顔になった。
「皆同じだわさ。そういうところは似た者同士ということさ」
 地上から彼等に声を掛ける者がいた。ピンクの丸い頭にオレンジの身体を持つ変わった形のロボットがそこにいた。
「ボス」
「へへへ」
 それに乗る大きなアゴの男、ボスはハンドルを回しながら笑った。
「ボスだけじゃないよ」
「そうそう、俺達も」
 ここで鼻をたらした少年と前髪を変に伸ばした少年が出て来た。
「何だ、ヌケにムチャもいるのかよ」
「俺達を忘れるんじゃねえよ、兜」
「そうだそうだ、いつも自分ばっかり目立ちやがって」
 二人は甲児にそう反論した。
「御前等もかなり目立ってると思うがなあ」
「その通りだな」
 鉄也も甲児の言葉に同意した。
「大体君達の本当の名前は何というんだ?聞いたことがないが」
「えっ、そ、それは」
 三人はそれを聞いて急に慌てだした。
「まあそれはいいってことよ」
 ボスは咄嗟に誤魔化しにかかった。
「おいら達には関係ない話だわさ」
「そういうもんか?」
「大変なことだと思うが」
 だがボスは甲児と鉄也のそんな言葉をスルーした。ここで後ろに飛ぶ赤いマシンがやって来た。ゲッター線を使うマシン、ゲッターロボである。その改良型のドラゴンだ。
「まあそう言うな」
 そこから高く若い声がした。
「ボスにも色々と事情があるんだ」
 茶色い髪をした精悍な若者であった。ゲッタードラゴンのパイロット流竜馬である。
「そういうことだな」
 同じくゲッターに乗るパイロットの一人がそれに同意する。黒く長い前髪を持ったいささか斜に構えた印象の男だ。彼は神隼人、ゲッターのもう一つの姿、ゲッターライガーのパイロットである。
「それについてとやかく詮索するのはよくないぜ」
「そうだよな。俺もそれには同意するよ」
 ここでもう一人パイロットが出て来た。ゲッターの第三の姿ゲッターポセイドンのメインパイロット車弁慶である。
「俺だって詮索されたら困ることあるからな」
「弁慶にもそういうことがあるのか」
「おい、リョウ」
 弁慶は怒った声で竜馬に声を向けた。
「それは一体どういう意味だよ」
「おっと、悪い悪い」
 竜馬はすぐに謝った。
「悪意はなかったんだが」
「ならいいけれどな」
 弁慶も本気で怒っているわけではなかった。彼の謝罪をすぐに受け入れた。
「しかしゲッターも凄いロボットだよな」
 地上からボスがまた言った。
「ん、そうか!?」
 隼人がそれに応えた。
「ああ。三機の戦闘機が合体してなるんだからな。それも空でも陸でも海でも戦えるじゃねえか。おいらのボロットなんか陸でしか戦えねえからな」
「そういうものかな」
「そうだよ。だから頼りにしてるぜ大将」
「おいおい、おだてたって何も出ないぞ」
 竜馬はその言葉に苦笑した。
「俺達だって財布は軽いんだからな」
「御前さんはこの前牛丼を食べ過ぎたからだろうが」
 隼人が突っ込みを入れる。
「三杯も食べるなんて異常だぞ」
「仕方ないだろ。美味いんだから」
 竜馬はそう反論した。
「何でかわからないけれど牛丼が好きなんだよ」
「まあいいさ。そういえばこれから合流する奴の中にも牛丼が好きな奴がいるそうだな」
「それは本当か!?」
 竜馬は隼人の言葉に反応した。
「ああ。大空魔竜隊のエースパイロットでな。何でもツワブキ=サンシローというらしい」
「ツワブキ=サンシロー・・・・・・何処かで聞いた名前だな」
 竜馬はそれを聞いて呟いた。
「それってレッドサンのピッチャーだった奴じゃないのか!?」
 弁慶がここで叫んだ。
「レッドサン・・・・・・ああ、あのチームか」
 甲児もそのチームのことは知っていた。
「最近特に強くなっているチームよねえ」
「あれ、さやかさんも知ってたの?」
「贔屓のマリンシャークとはリーグが違うけれどね。知ってるわよ」
「へえ、そうなんだ。俺はあまり知らないなあ」
「甲児君は同じ赤でもレッドバイソンのファンだったわね」
「ああ」
「だったらあまり知らないのも無理はないわ。リーグが違うし」
「何だ、二人は大西洋リーグのファンだったのか」
 弁慶はそれを聞いて言った。
「だったら無理はないな。リーグが違うと」
「そうだな、それはわかる」
 竜馬がそれに同意した。彼はサッカーファンだが野球も見ないわけではないのだ。
「俺も案外他のチームのことは知らないからな」
「そういうもんだよ」
 弁慶が言った。
「俺だってそうだしな。実はレッドサンのファンなんだ」
「ほう、それは意外だな」
 隼人がそれを聞いて声をあげた。
「俺はてっきりシースターズかと思っていたぞ」
「何でシースターズなんだ!?」
「何となくだ」
「というか御前がファンだけじゃないのか」
「そう言うかも知れないな、ははは」
 彼は笑ってそう答えた。そこで前から何かが見えて来た。
「あれは」
 見れば巨大な戦艦である。青い恐竜の形をしている。その頭部は金色の角を生やした髑髏に似たものであった。
「あれがガイキングよ」
 ミッチーが皆に言った。
「大空魔竜隊の母艦なの」
「戦艦まで持っていたのかよ」
 皆それを聞いて言葉を飲んだ。
「何で大きさだ。まるで山だな」
 その周りに二機の戦闘機が飛んでいる。その二機の戦闘機も恐竜の形をしている。
「翼竜と首長竜だな」
 鉄也がそれを見て呟いた。
「どうやら全て恐竜みたいだな」
 地上にもいた。剣竜の形をしている。ここでその大空魔竜に動きがあった。
「ガイキング、パート1、パート2、ゴーーーーーッ!」
 アナウンスがかかる。女の声である。
 それと共に二つのマシンが飛び出す。そして空中で合体した。
 そこに大空魔竜の首の部分が外れ合体する。そして一体のロボットが完成した。
「ガイキング、合体完了!」
 声が響いた。それは竜馬の声と酷似していた。
「似てるな」
 それは彼にもわかった。思わずそう呟いてしまった。
「よお」
 声がした。そして五つの画像がそれぞれの機体のモニターに入って来た。
「はじめてだな。俺はツワブキ=サンシロー。今合体したガイキングのパイロットだ」
 癖のある髪にモミアゲの男がそう言った。
「俺はファン=リー。スカイラー、翼竜のパイロットだ」
 細面の男が名乗った。
「僕はハヤミ=ブンタ。海竜ネッサーのパイロットです」
 体格がいいが穏やかな顔立ちの男である。
「で、俺がヤマガタケ。剣竜バゾラーのパイロットだ」
 アゴの異様に大きな男が出る。そしてもう一人いた。
「俺が大空魔竜のメインパイロットピート=リチャードソンだ。キャプテンも務めている」
「へえ、こんなにいたのか」
「少し驚きだな」
「おっと、まだいるぜ」
 サンシローが彼等に言った。ここでモニターが増えた。
「大文字洋三。この隊の指揮官です」
 濃い髭を生やした中年の男であった。
「サコン=ゲン。メカニックだ」
 細い目をした端整な顔の男であった。
「ん?俺の声に似てるな」
 それを聞いた隼人が思わず呟いた。
「そしてフジヤマ=ミドリです。オペレーターです」
 長いブラウンの髪の美しい女性であった。
「おほお、可愛い子ちゃんじゃないのお」
 ボスなどは彼女の顔を見ていきなりこう言った。
「以上が大空魔竜隊のメインだ。以後宜しくな」
「ああ、こちらこそ」
 竜馬がサンシローに答えた。やはり声が似ていた。
「ではこれから宜しくな一緒にミケーネや恐竜帝国の奴等と戦おう」
「よし」
 彼等は空中で手を握り合った。そして一先大空魔竜の中に入ろうとする。その時であった。
「ムッ!?」
 樹海の中から何かが急に出て来た。
「あれは!?」
 それは奇怪な形をしたロボットであった。
「ハニワ幻人だ!」
 ジーグがそれを見て叫ぶようにして答えた。
「ハニワ幻人!?」
「ああ、あれこそが邪魔大王国の兵器なんだ。古代の呪術を使って作られたものだ」
「あれがか」
「まさかまだ残っていたとは。俺全部やっつけた筈なのに」
「フフフ、その通りだ」
 ここで巨大な壷の様な形をしたものが空中に出て来た。多くの髑髏がある。幻魔要塞ヤマタノオロチである。
「生きていたのか!」
「そうだ、俺達はな」
 その中から声がした。
「久し振りだな、司馬宙。いや、鋼鉄ジーグよ」
 そして三人の化け物に似た外見の男達の映像が空中に映し出された。
 一人は緑の肌に黄色い髪と髭をたくわえている。そしてその右には岩石の様な顔と髪をした男が。そのまた右には左半分に肌がなく剥き出しの男が。どれも異形の者達であった。
「イキマだ」
「アマソだ」
「ミマシだ」
 彼等は左から名乗った。
「鋼鉄ジーグよ、貴様がここに来ることはわかっていたのだ」
「そして俺達を待ち伏せていたというのか」
「その通り」
 彼等は答えた。
「ヒミカ様の仇、とらせてもらうぞ」
「待て、ヒミカは死んだのか」
「フン、何を言うか」
 それに対して彼等は怒気を強めた。
「貴様に倒されたのだろうが」
「それは覚えている」
 ジーグはそう返した。
「だがそれは貴様等もそうだ。何故今ここにこうしている」
「生き返ったのよ」
「生き返った!?」
「そうだ、この御方の御力でな」
 彼等は不敵に笑いながらそう言葉を返した。
「貴様等にも教えてやろう。その御方をな」
「我等が新しき女王」
「女王だと」
 それを聞いたジーグ達は思わず声をあげた。
「まさかそれは・・・・・・」
「そう、ヒミカ様の跡を継がれた邪魔大王国の新しき主」
「それがこの方よ!」
 古代日本の女神にも似た独特の形を持つロボットが姿を現わした。それは天から舞い降りて来た。まるで舞を舞う様に優雅な動きであった。
「そのロボットは」
「マガルガという」
 そこから女の声がした。そしてやはり宙に映像が浮かぶ。
「待っておったぞ、地上の戦士達よ」
 灰色の髪をした美しい女であった。その髪を古代日本風に結い、服もそれに倣っていた。顔立ちは確かに美しいが何処となく冷酷さが漂っていた。氷の美貌であった。
「我が名はククル。邪魔大王国の新たな主である」
「ククル」
「そうだ。鋼鉄ジーグ、貴様に倒されたヒミカ様の後継者だ」
「まさかヒミカに後継者がいたなんて」
 美和がそれを聞いて思わず呟いた。
「知らぬのも道理。わらわのことは王国の中でもごく一部の者しか知らなかったのだからな」
 ククルはやはり氷の様に冷たい声でそれに答えた。
「だがわらわは貴様等のことをよく知っている」
 そしてこう言った。
「鋼鉄ジーグよ。貴様にはその仇がある」
「だからどうしたというんだ」
 だがジーグも引くつもりはなかった。
「どのみち俺に用があるんだろう。この身体の中の銅鐸に」
「その通り」
 ククルは頷いた。
「それがわかっているのなら話は早い。今ここでその銅鐸貰い受けてやろう」
「やれるものならな」
「そして他の者達にも恨みはないが」
 宙に浮かぶその巨大な影が甲児やサンシロー達を見回した。
「ここで死んでもらおう。どのみち貴様等は我等のこれからに邪魔となるのでな」
「へっ、問答無用ってわけかい」
「貴様等はいつもそうだな」
「何とでも言え」
 だがククルはそれには全く動じていなかった。
「わらわはあくまでこの国の為にある。そして国の為ならどの様なことでもやる」
 言葉を続けた。
「例えそれが悪鬼の道でもな」
「じゃあ御前は鬼になるのか」
「そう受け取るなら受け取るがいい」
「よし、ならばもう何も言わない。俺も鬼退治はしたことはないが」
 ジーグは身構えながら彼女に言う。
「今からしてやろう。来い!」
「望むところよ」
 ククルはそう言って冷たい笑みを浮かべた。
「行け」
 そしてハニワ幻人達をむかわせる。ハニワ幻人は四方八方からあらたに姿を現わしジーグ達に襲い掛かる。
「来たか!」
 スーパーロボット達はそれを見て再び身構えた。
「敵は多いが」
 見ればかなりの数である。彼等の十倍はいるだろうか。
「だが負けるわけにはいかない。行くぞ!」
「おう!」
 竜馬の言葉に皆応える。そして一斉に散った。
 まずはマジンガーがハニワ幻人達の前に出る。そしてその手を向けた。
「ロケットパァーーーーーンチッ!」
 右手を発射する。そしてそれで敵を撃ち抜く。撃ち抜かれたハニワ幻人は爆発四散する。
「ダイアナンミサイル!」
 ダイアナンAもミサイルを放つ。そしてそれで先程ロケットパンチを受けた敵のすぐ後ろにいるハニワ幻人を撃った。やはりかなりの威力があるのか敵は四散した。
 ボスもいた。彼はハンドルを器用に動かしながら敵に向かう。
「ジャンジャジャーーーーーン!いいいくわよお!」
 そう叫びながら左手をブンブンと振り回す。
「ボロットパァーーーーーンチッ!」
 そして思いきり敵を殴りつけようとする。だがそれは見事にかわされてしまった。
「あらっ!?」
 そこに敵の反撃が来る。一撃で吹き飛ばされる。だがそれでもボスボロットはすぐに立ち上がった。
「いってえなあ、何するんだよ」


[236] 題名:魔装機神2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時03分

 これを聞いたそこにいた者全員が思わず驚きの声をあげた。
「少しでも人手がいるんだろう?じゃあ手伝わせてくれよ」
「簡単に言うけどなあ」
 そんな彼に対してマサキが言う。
「魔装機の操縦は簡単には出来ないんだぞ。プラーナもいるし」
「プラーナは地上人の方が多いんだろう?」
「ああ、そうだが」
「それに俺はマシンに乗っている。それも問題はない」
「マシン!?何にだ」
「ヘビーガンだ。戦闘獣と戦ったこともあるぜ。三機撃墜している」
「そうか。なら実戦経験も問題ないな」
「ああ。どうだ、俺も入れてくれるか?」
「そうだな。そこまで言うのなら」
 フェイルは少し考えた後でそう答えた。
「では協力して欲しい。いいか?」
「ああ、是非頼む。帰るのはその後でいい」
「わかった、では頼む」
「そうこなくちゃな」
 彼はそう言って笑った。そしてすぐに魔装機が並べられている場所に案内された。
「色々あるなあ」
 一人の女性に案内されながら彼はその魔装機達を見ていた。
「全体的に鋭角的なデザインだな」
「そうね」
 案内する女性がそれに応えた。見れば紫の髪を持つ美しい女性である。膝までのタイとスカートがよく似合っている。
「私が設計、デザインしたのだけど。確かにそういったものが多いのは事実ね」
「へえ、あんたが設計したのか」
「そうよ」
「ふうん、凄いんだ。綺麗なだけじゃなくて」
「何言ってるのよ」
 彼女はタダナオのその言葉に顔を少し赤くさせた。
(おや)
 タダナオはそれを見てにやりと笑った。
(どうやらそちらは奥手なようだな)
 何かしら掴んだようであった。
「ところで」
「ええ」
 彼女はタダナオに問われ顔を彼に向けてきた。
「あんた名前は?俺は栗林忠直っていうんだけれど」
「ウェンディ。ウェンディ=ラスム=イクナートっていうの」
「ふうん、いい名前だね」
「そうかしら」
「あんたには合ってると思うよ。ところで」
 彼は攻勢に取り掛かろうとした。だがそれはならなかった。
「空いている魔装機はここにあるわ」
 それより先に到着してしまった。見れば目の前にその鋭角的なマシンが立ち並んでいた。
「わりかしあるな」
「そうかしら。あと三機しか空いていないのだけれど」
「それだけあると目移りするな。何に乗ればいいのか」
「貴方は接近戦と遠距離戦どちらが得意?それにもよるわよ」
「どちらかか」
「ええ。どちらがいいかしら」
「どっちかと言われても」
 彼は少し返答に戸惑った。
「ヘビーガンは量産用ですからね。どちらでもある程度はいけるんですよ」
「あら、そうなの」
「ええ。けれどどちらかというと遠距離戦向きですかね。ライフルが強力ですから」
「だったらジェイファーがいいかしら」
「どんなやつですか?」
「これよ」
 ウェンディは両肩に巨大な砲を持つ魔装機を指し示した。
「何か凄いですね」
「ええ。機動力もあるし。かなりの自信作なの」
 ウェンディはそう言って微笑んだ。
「これならどうかしら」
「そうですね」
 彼はその魔装機を見ながら答えた。
「接近戦もできそうですし。じゃあこれにします」
「わかったわ。では乗ってみて」
「はい」
 彼はそれに従いジェイファーに乗り込んだ。まずはコクピットの中を見回した。
「へえ、中はヘビーガンと似ていますね」
「あら、そうなの」
「ええ。これだと操縦し易いや」
 そう言いながらハッチを閉めた。
「じゃあ行って来ます」
「えっ、もう行くの?」
「はい。もうそろそろ出撃の時間でしょう」
「それはそうだけれど」
 周りでは既に他のパイロット達が乗り込みはじめていた。中には起動しはじめているものもある。
「だから行きますよ。俺もパイロットですから」
「テスト飛行もなしで!?」
「テスト飛行ならしますよ」
 すぐに声を返した。
「戦場でね」
 その声はあまりにもはっきりとしたものでありウェンディもとやかく言うことはできなかった。
「大丈夫ね」
「ええ。操縦は」
「危なくなったら何時でも戻るのよ」
「脱出装置が着いているんでしょう?大丈夫ですよ」
 だが彼の返答は変わらなかった。
「それはそうだけれど」
「ですから心配無用。それでは」
 ジェイファーが起動をはじめた。ゆっくりと動き出す。
「行って来ます」
 既に他の魔装機は全て出撃していた。残るはジェイファーだけであった。
「気を付けてね、本当に」
「はい」
 流石にこの時の声はしっかりとしたものであった。軽いものではなかった。
「ではこれで」
 ジェイファーは飛び立った。そして他の魔装機の後をついて行った。
「本当に気をつけてね」
 ウェンディはそんな彼を見送っていた。何処か弟を見守る姉の様な顔であった。

 魔装機は四機の魔装機神とヴァルシオーネを先頭に王都ラングランに向かっていた。
 その次にシモーヌ達の乗る魔装機、そして一般のパイロット達が乗る量産型の魔装機が続く。全部で百機は越えていた。
「おお、かなり多いな」
 タダナオは空を飛ぶその魔装機達を見てそう呟いた。その声は何処か上機嫌なものであった。
「おお、来たか」
 通信に声が入った。マサキのものであった。
「ジェイファーに乗ったんだな」
「ああ」
 彼はそれに答えた。
「ウェンディから聞いていると思うがそれは遠距離戦が得意だ。俺達のフォローに回ってくれ」
「了解」
「もうそろそろ敵が来るからな。悪いが俺達のところにまで来てくれ」
「おう」
 彼はそれに従い速度を上げた。そして量産の魔装機を追い越して前面に出た。かなりの速さでありすぐに前に出た。
「あ、来たね新入り」
 そこに女の声が入った。
「ん、あんたは誰だい?」
「シモーヌ。シモーヌ=キュリアンさ」
 女はそう答えた。
「ザインのパイロットやってるんだ。宜しくね」
「ザイン!?」
 彼はそれを聞いて少し戸惑った。
「ああ悪い悪い、知らなかったね」
 シモーヌはそれを聞いて返答した。
「あんたの目の前の紫の魔装機だよ」
「紫の・・・・・・」
 見れば円盤に似た形の魔装機があった。
「その丸いのがか」
「ああ、そうだよ」
 シモーヌの気さくな声が返って来た。
「あたしのザインは接近戦が得意なんだよ。これだけ言えばわかるね」
「ああ」
「だったら話が早いね。後ろは頼むよ」
「了解」
 彼はそれを快諾した。
「後ろは任せといてくれ。これでも連邦じゃパイロットだったからな」
「へえ、そうだったんだい。道理で操縦が上手いと思ったら」
「だから安心してくれ。こっちもフォローは頼むがな」
「了解」
 シモーヌの声には微笑が含まれていた。
「じゃあそろそろ行くよ。敵さんのお出ましだ」
「敵」
 目の前に自軍のそれとは形が異なる魔装機が大勢姿を現わしてきた。数はこちらと同じ位であった。
「戦闘開始さ。いいね」
「おう!」
 彼は強い声で頷いた。そして他の機と共に散開する。
「行くぜ」
 マサキの声が通信に入る。
「こいつ等を蹴散らして王都を奪還するんだ!」
「よし!」
「了解」
 他のパイロット達がそれに応える。皆戦闘態勢に入る。
「全軍攻撃開始!目の前の敵を撃破せよ!」
 通信にフェイルの声が入った。それを受けてラングランの魔装機が一斉に攻撃に入った。
「よし!」
 まずは銀色の鳥にも似た外見の魔装機が前に出る。マサキの乗る風の魔装機神、サイバスターであった。
 サイバスターは信じられない速さで敵の中の躍り込む。攻撃は全てかわす。
「何て動きだ」
 タダナオはそれを見て思わず驚嘆の声を漏らした。
「マサキの奴あんなに操縦が上手かったのか」
「それだけじゃないよ」
 ここでまたシモーヌの声がした。
「見ときな。こっからが凄いんだからね」
「こっから」 
 サイバスターは敵の真っ只中に入っていた。少女に似た外見のロボットもそこにいた。
「あのロボットは」
「あれはヴァルシオーネっていうんだよ」
「ヴァルシオーネ」
「そうさ、あれはリューネの乗ってるロボットだよ。魔装機じゃないけれどね」
「リューネ?魔装機じゃない?」
「ああ悪い、それは聞いていなかったね」
 ここでシモーヌの詫びの言葉が入る。
「詳しい話は後でね。今は戦争だからね」
「ああ」
 彼はその言葉に頷いた。
「まあ見ておきな。こっからが凄いのは本当なんだから」
「わかった」
 タダナオはそれに従い戦場に目を戻した。サイバスターから緑の光、そしてヴァルシオーネから赤い光が発せられていた。
「あれは」
 タダナオがそれを見て何かを言おうとしたその時である。その二色の光が辺りを覆った。
「いっけええええぇぇぇぇ、サイフラアッシュ!」
「サイコブラスターーーー!」
 二人は同時に叫んだ。そして二色の光が彼等の周りを支配した。
 光はすぐに消えた。それが消えた時彼等の周りのシュテドニアス軍の魔装機は皆傷を受けていた。
「広範囲への攻撃兵器か」
「そうだよ」
 再びシモーヌから通信が入って来た。
「あれが魔装機神の力なんだよ」
「凄いな」
「ヴァルシオーネは違うけれどね。けれど凄い力だろう」
「ああ。あんなのがあったらそうそう負けはしないな」
「確かにね」
 シモーヌはそれを聞いて笑った。
「けれどあの二機だけじゃないよ」
「そうだったな」
 タダナオはそれを受けて答えた。
「あと三機あるんだろう」
「そうさ、それもよく見ておきな」
「わかった」
 そう話をする彼等の前に新たに二機の魔装機神が姿を現わした。
 右にいるのは青い魔装機、左にいるのは黄色い魔装機であった。
「あれは」
「右にいるのがガッテス、左にいるのがザムジードさ」
 またシモーヌが答えた。
「ガッテスとザムジード」
「そうさ、どちらも強力な魔装機神だよ」
「あれも魔装機神か」
「ああ。見てな、どちらも凄いから」
「ふうん」
 見れば互いに距離を開けている。そしてサイバスターとヴァルシオーネは既に敵の中から離脱していた。
「ケルヴィンブリザーード!」
「レゾナンスクエイク!」
 二人の女性の声がした。だがその声の質は全く違っていた。
 ガッテスから聞こえるのは澄んだ美しい大人の女性の声であった。それに対してザムジードからの声は可愛らしい少女の声だった。
「両方共乗っているのは女性みたいだな」
「そうさ。ガッテスに乗ってるのはテュッティ、ザムジードがミオさ」
「テュッティさんって美人なんだろうな」
 ここで彼はふとこう呟いた。
「ああ、その通りさ」
 シモーヌはそれにすぐに答えた。
「金髪に青い目のね。まああたしにはかなわないけれど」
「へえ、あんたも美人さんなんだ」
「そうさ」
 ここでコクピットのモニターの一つに顔が入って来た。ショートのブロンドの女性、シモーヌであった。
「これでわかったかい?」
「ああ」
 タダナオはそれに微笑んで答えた。
「じゃあ俺の顔もわかったな」
「まあね」
 シモーヌは左目をウィンクしてそれに応えた。
「どんな顔してるかと思ったらいい顔してるじゃない。この戦いが終わったらお別れなんて寂しいね」
「ははは、そうか?」
「まあそれは後でじっくりと話すことになるね。おや」
 ここでシモーヌの表情が変わった。
「今度はヤンロンかい。速いね」
「ヤンロン!?人の名前かい!?」
 彼はそれを聞いて首を傾げた。
「それとも魔装機か」
「人の方だよ」
 シモーヌはまた答えた。
「あの赤い魔装機神グランヴェールのパイロットさ」
「あれのか」
 前ではその赤い魔装機神が出て来ていた。やはりその動きは俊敏で敵の攻撃を見事にかわす。
「見え見えなんだよ!」
 ヤンロンはコクピットの中で敵の攻撃をかわhしながら叫んでいた。
「焼き尽くせ・・・・・・」
 そしてグランヴェールの前方に炎が宿った。
「メギドフレイム!」
 それは複雑な線を描いて敵に襲い掛かる。そして先の四機の攻撃でダメージを受けている敵機をさらに痛めつけた。
「今度は火か」
「ああ。グランヴェールは火を司るからね。攻撃もああしたものになるんだよ」
「そうなのか」
「サイバスターは風、ガッテスは水、ザムジードは土を司るのさ」
「精霊の力だな」
「ああ、そうさ。そしてそれは全ての魔装機にも言える」
「ということは俺が今乗るジェイファーも」
「そう、あんたのは火の魔装機だ。だから攻撃力はかなりのものなんだ」
「そうだったのか」
「そしてあたしのこのザインはね」
 彼女はそう言いながらザインを前に出してきた。その瞬間であった。
「なっ!?」
 それを見たタダナオは思わず声をあげた。何とザインが姿を消したのである。
「驚いたかい?」
 シモーヌの声が入って来た。
「ザインは水の魔装機の一つ。隠れる能力が高いんだよ」
「そうなのか」
「じゃあ行くよ、あたし達も攻撃開始だ」
「ああ」
「隠れてるけれどね、中には見える奴もいる。そうした連中を頼むよ」
「わかった」
 見ればタダナオ葉次第にそのザインがおぼろげながら見えるようになってきていた。それが何故なのか彼はまだよくわからなかった。
 ザインは敵の中に切り込んで行く。他の多くの魔装機もだ。
「よし」
 タダナオはそれを見て両肩の砲を動かした。そして彼も攻撃に向かった。
「行くよ!」
 ザインをはじめとしてラングランの魔装機達が敵に突っ込む。既にダメージを受けているシュテドニアス軍には彼等を防ぐことは出来なかった。為す術もなく撃ち落されていく。
「また凄いな」
 タダナオは目の前のその光景を見て思わずそう呟いた。
 先程の四体の魔装機神とヴァルシオーネもいた。彼等の戦いは一際凄まじいものであった。
 周りの敵機を剣や奇妙な形をした飛び道具で次々と撃ち落していく。まるで寄せ付けない。それを見て彼も負けてはいられないと思った。
「俺も・・・・・・!」
 リニアレールガンを放った。目標は丁度目の前にいる一機の敵機であった。
 砲から白い光が放たれる。そしてその光が敵を撃った。
「やったか!?」
 彼はすぐにその敵を見た。見れば直撃を受け墜落して行く。コクピットが離れ別の場所に向かって行く。
「人が乗っているのか」
 見れば撃墜された敵機から次々と脱出していく。そして戦場は撃墜され、爆発する敵機と離脱するパイロット達が次々と出ていた。
 とりあえずそれを見て安心した。戦争とはいえやはり敵が死ぬのはあまり気分がよくないからだ。
「逃げろよ、落ちたら」
 タダナオはそんな彼等を見てそう呟いた。
「だが落とさせてはもらうぜ。それが戦争なんでな」
 だが感傷には浸らなかった。すぐにまた照準を定め次の敵に攻撃を仕掛けた。そしてまた撃墜した。
「へえ」
 マサキは戦いの中タダナオの乗るジェイファーの動きを見て声を漏らした。
「あいつも結構やるじゃねえか」
「元々パイロットだそうだな」
 グランヴェールからヤンロンの通信が入った。
「ああ、何でも連邦軍でヘビーガンに乗っていたらしい。戦闘獣を何体か落としたことがあるそうだ」
「そうか、それでか。はじめてにしては操縦も攻撃もかなり上手いと思っていたが」
「やっぱり実戦経験があると違うな。あいつはこれからかなりの戦力になるぜ」
「そうだな。帰らなければな」
「ああ」
 二人はそんな会話をしつつも戦闘を続けていた。戦局はさらにラングランに有利なものとなりシュテドニアスの魔装機はその数を大幅に減らしていた。
「そろそろ終わりかな」
 タダナオは戦場を見てそう呟いた。
「けれどまだ来る奴は来るな」
 そこに敵の魔装機が来た。一直線に彼のジェイファーに向かって来る。
「リニアレールガンは間に合いそうにもないな」
 その敵機の動きを見ながら呟く。
「じゃあこれを試してみるか」
 腰にある剣を抜いた。それで向かって来る敵を斬りつける。
「これでどうだっ!」
 敵機の首を斬る。斬られた首は飛び、そして爆発して消えた。
「う、うわあああっ!」
 モニターが急に見えなくなり混乱したのであろうか。それを見た敵機のパイロットが慌てて脱出する。そして主をなくした敵機は地面に落下していく。
「ひゅう」
 敵機を斬り倒してタダナオは思わず口笛を吹いた。
「こりゃ凄いや。ヘビーガンのビームサーベルとは比べ物にならねえ」
「当然だ」
 マサキの声が入って来た。
「それはビームとは違うからな」
「そういえば」
 見ればビームではない。魔装機に合わせて作られたような大型の剣であった。ビームに似ているがそれはビームではなかった。
「何か特別なエネルギーみたいだが?」
「ああ、プラズマだ」
「プラズマ」
 タダナオはそれを聞いて声を顰めさせた。
「随分と変わったエネルギーを使っているな」
「ラ=ギアスじゃ常識だぜ」
「そうか、常識か」
 彼はそれを受けてこう言った。
「やはりここは地上とはかなり違っているようだな」
「ああ」
 マサキはそれに答えた。
「成程な」
 タダナオはここでこのラ=ギアスに興味が湧いているのを感じていた。
「ところで戦いはどうなった?」
「ん?もう終わったぜ」
 見ればシュテドニアス軍は撤退している。ラングラン軍はフェイルの指示に従い彼等をあまり追わず王都の確保に回っていた。戦いは終焉していた。
「これで王都が俺達の手に戻ったんだ」
「そうか、それは何よりだ」
 タダナオはその言葉を聞いて微笑んだ。
「御前さんもこれで帰れるな」
「それなんだが」
 彼はここで言った。
「暫くここにいてもいいか?」
「ん!?何でだ」
「いや、ちょっとな」
 そう言って苦笑いする。
「まあ気が変わったとだけ言っておこうか。いいだろ?」
「俺はいいけれどよ」
 だがマサキの声はいささか困った様子であった。
「御前さんの軍の方は大丈夫なのかい?」
「ああ、それか」
 彼はそれについて答えた。
「実は当直の後長期休暇に入る予定だったんだ」
「どれ位だ?」
「実質的には退職に近いな。実は上司と揉めちまってな。それも環太平洋区の長官とだ」
「岡長官か?あの人はそんな悪い人じゃねえだろ」
「知ってるのか」
「ああ、まあな。昔ロンド=ベルに協力していた関係でな」
「へえ、あんたロンド=ベルにいたんだ」
「バルマー帝国の時だけれどな。あの時はあの人にも色々と世話になったよ」
「確かに岡長官だったら問題はなかっただろうな」
 彼の声が曇った。
「人でも変わったのか!?」
「ああ。よりによって三輪長官だ。知ってるか!?」
「いや」
 マサキはそれには首を横に振った。
「一体どんな奴なんだ?」
「それは後で話す」
 タダナオは何か嫌なものを思い出したような声でそう答えた。
「とりあえず戦いも終わったしそっちの殿下や将軍に暫くここにいたいと申し上げたいんだが」
「それなら」
 マサキはそれに応えた。
「俺が殿下や将軍に言っておくぜ。一緒に行くか?」
「ああ、頼む」
 タダナオはそれに頷いた。
「じゃあ行こうぜ。どちらにしろ殿下のところには勝利報告で行かなくちゃならねえからな」
「わかった。じゃあ一緒に行くか」
「おう」
 こうして彼等はフェイルの下に戻って行った。そしてタダナオは暫くラ=ギアスい留まることとなったのであった。

 王都での戦いの結果はすぐにラングラン各地に伝わった。それはこの大陸の片隅にまで伝わっていた。
「御主人様」
 その片隅にある暗い神殿の奥でかん高い声が聞こえてきた。
「ラングラン軍がシュテドニアス軍に勝っちゃいましたよ」
 青紫の小さな小鳥が話していた。可愛らしい外見であるが何処か品がないように見える。
「それも大勝利ですよ。シュテドニアスの奴等もう見事な位ボロボロにやられたそうですよ」
「知っていますよ、チカ」
 部屋の壁に顔を向けている男がそれに答えた。チカと呼んだその小鳥に背を向けており、顔は見えないが白い丈の長い服に青い青いズボンを履いている。そして髪は紫であった。
「それは予想通りです」
「あれ、そうだったんですか?」
「マサキ達の力を以ってすれば容易いことでしょう。それにフェイル王子もカークス将軍もおりますし」
「フェイル王子はともかくあの将軍がですか」
「ええ」
「まあ確かにあたしも驚いていますよ。まさかあんなに活躍するなんて」
「人間の能力は時として急に開かれるものなのです」
 彼はそれに答えた。
「カークス将軍もそうです。彼は今までその能力を発揮する機会がなかっただけだったのです」
「そういうものですか」
「はい」
 男はやはり静かな声で答えた。
「ですから今回の戦いの勝利は特に話すようなものではありません」
「そうですか。けれどそれなら」
「何です?」
「何であの連邦軍のパイロットをここに召還したんですか?」
「彼ですか」
 男はそれを受けて声を微笑ませた。
「それはいずれわかりますよ」
「何か御考えがあるんですね」
「勿論です」
 男は答えた。
「その為に彼等を召還したのですから」
「それはいいですけれど」
 チカはここで話題を変えた。
「今はあまり無理はなさらない方がいいですよ。折角怪我が治ったばかりなんですから」
「わかっていますよ」
 男はやはり声だけで微笑んでいる。
「私だけの身体ではありませんから」
「そうです、そういうことです」
 チカは騒がしい声をたてた。
「御主人様がいなかったらあたしは消えてしまうんですからね。気をつけて下さいよ」
「わかっていますよ」
 男はそう答えた。
「ところでチカ」
「はい」
「ルオゾールはどうしていますか」
「ルオゾール様ですか」
「ええ。今ここにはいないようですが」
「あの人ならあちこちを飛び回っていますよ。やっぱりお忙しいようで」
「そうなのですか。それは何より」
 声がニヤリと笑った。
「復活に向けて働いてくれているのですね」
「ええ、まあ」
「それでは私も時が来たら動きますか」
「どうするんですか?」
「サフィーネを呼んで下さい。そしてモニカも」
「わかりました」
「全てはそれからです。いいですね」
「はい、わかりました」
 チカは主の指示に頷いた。
「では行って来ます」
「どうぞ」
 チカは羽ばたくとそのまま出口に向かって飛んだ。そしてそのまま廊下へ飛び去って行った。
「マサキ」
 彼はチカを横目で見ながら呟いた。
「貴方のおかげですかね。今こうしてヴォルクルスの呪縛から逃れることができたのは」
 そしてこう言った。
「それは感謝しましょう。ですが貴方に遅れをとることはありませんよ」
 そのまま彼は部屋に留まっていた。そして時を待っているのであった。


第一話 魔装機神   完


                               2005・1・12


[235] 題名:魔装機神 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 22時00分

             魔装機神
 ラ=ギアス。これはそこの言葉で『真の地球』を意味する。言うならば地球の中にあるもう一つの人類社会である。だが純粋に地球の中にあるのではなく多次元的に存在すると言った方がよい。つまりただ単純に地球の中にあるのではないのである。鑑の様なものであろうか。
 この世界では地球のそれとは全く違った技術が存在している。魔術や錬金術等がその一つである。そしてそれの集大成と言えるのがラングラン王国の兵器魔装機であった。この魔装機により世界を守ろうと考えていたのだ。これにはラ=ギアスを滅ぼすと言われる邪神ヴォルクルスの話があった。
 しかしこれが仇となった。あまりにも強力な魔装機はその存在だけで脅威とみなされたのだ。そしてそれが遂にはシュテドニアス共和国のテロ、及び侵攻に繋がった。
 この騒ぎの中で国王アルザール=グラン=ビルセイアは死亡し後継者であり王国の重鎮であったフェイルロード=グラン=ビルセイアは行方不明となった。シュテドニアスはそれを好機と見てラングランの大部分を瞬く間にその掌中に置いた。だがそれも束の間のことであった。ここでラングランに救世主が現れるのである。
 カークス=ザン=ヴェルハルビア。かっては家柄だけで将軍にまでなったと陰口を叩かれるような人物であったがその彼が兵を率いシュテドニアス軍を次々と破ったのだ。これを見て元々ラングランとの戦いに消極的であったシュテドニアスの議会及び世論は反戦に傾いた。そして侵攻軍に向けられる戦力はさらに減少した。
 だがそれでもシュテドニアス大統領ゾラウシャルドは諦めなかった。彼は元々軍人であり軍部や軍事産業をバックとしていた。その彼がおいそれと戦争を止める筈がなかったのである。そして彼は尚も戦いを主張し半ば強引に戦争を続けさせた。しかしシュテドニアス軍の劣勢は次第に明らかとなっていった。
 それに対してラングラン軍の攻勢は順調であった。行方不明であったフェイルロードが戻り、魔装機も揃った。中でもとりわけ四機の魔装機である魔装機神が全て揃っていたのは大きかった。一時行方知れずであった彼等が戻ったことによりラングラン軍の優勢は明らかとなり遂には王都ラングランまであと一歩のところまで来ていた。
「遂にここまで来たな」
 今ラングラン軍は王都のすぐ側に陣を敷いていた。そこには多くの魔装機がある。その中の赤い拳法着の男が目の前の王都を見ながら言った。
 彼の名を黄炎龍という。元々地上人であり中国で体育教師をしちえた。だがラ=ギアスに召還され今は四機の魔装機神の一つであり炎を司るグランヴェールのパイロットを務めている。魔装機神のパイロットの中でもリーダー格である。
「あれがラングランだね」
 その隣にいる金色の長い髪に青い瞳を持つ整った顔立ちの少女が前を指差した。白いタンクトップに右半分が露わになったジーンズを履いている。彼女の名はリューネ=ゾルダークという。ディバイン=クルセイダーズの総帥であり天才科学者でもあるビアン=ゾルダークの一人娘であり父が作ったロボットヴァルシオーネのパイロットである。彼女はそのマシンごとこのラ=ギアスに召還されたのだ。
「そうだ、あれがラ=ギアスだ」
 ヤンロンはそれに答えた。
「遂にここまで来たのだ」
「あたしは遂にとは思わないけれどなあ」
 だがリューネはここでヤンロンの感慨深げな言葉に異を唱えた。
「何故だ」
 ヤンロンはその言葉にムッとして顔をリューネに向けた。
「だって今まで特に手強い奴にも遭うことなく進んできたじゃない。それもあっさりと」
「確かにそうだが」
「それでついにと言われてもねえ。何か感慨が沸かないのよ」
「それは君がここに来て間もないからだ」
 ヤンロンはそれに対してこう反論した。
「一度あの王都を見てみればいい。何故僕が今こう言ったかよくわかる」
「そんなもんかね」
「はい、御主人様の仰る通りです」
 ここでヤンロンの足下に控えていた。一匹の黒豹に似た生き物が声をあげた。
「あ、ランシャオ」
「はい」
 リューネに名を呼ばれたその生き物は彼女に応えた。
「リューネ様はこちらに来られてからまだ日が浅いですから。無理もないことです」
「それはそうだけれどね」
 リューネはそれに対して素直に認めた。
「けれどそんなんだったら一度見てみたいな。戦争でボロボロになっていなけりゃいいけれど」
「そうだな」
 ヤンロンはその言葉に少し顔に陰をさした。
「あの状況から復興しているとはあまり思えないが」
 彼はシュテドニアスの王都襲撃のことを思い出していた。
「だが奪還しなければならないことに変わりはない」
「はい」
 ランシャオがそれに答えた。
「リューネ、まずは作戦会議に入ろう」
「またそれ!?あんたも好きねえ」
 リューネはそれを聞いて少し嫌な顔をした。
「すぐに攻め込めばいいじゃない。もう目と鼻の先なんだし」
「そういうわけにはいかない」
 だがヤンロンはここでこう反論した。
「作戦を立てないと勝てるものも勝てはしない。まずは敵を知り、そして己を知ることだ」
「わかったわよ。あんたの言葉ははじまると長くなるからこれでね」
「・・・・・・うむ」
 ヤンロンはリューネにあしらわれて少し渋い顔をした。だがそれは一瞬であった。
「ランシャオ、すぐに他の皆も集めてくれ」
「畏まりました」
 ランシャオはそう答えて頭を下げた。
「では行って参ります」
「うん、頼むぞ」
 ランシャオはすぐにその場を発った。ヤンロンはそれを見届けてリューネに顔を向けた。
「じゃあ行こうか」
「あいよ」
 リューネは渋々といった様子であるが立ち上がった。そしてヤンロンと共にそこから姿を消した。

 作戦会議は陣にある大型のテントの中で開かれた。その中に円卓と椅子がそれぞれ置かれていた。
「マサキは?」
 ヤンロンはテーブルにいるメンバーを見回した後で問うた。
「ええと、お兄ちゃんは」
 その中に座る金色の髪に青い瞳を持つ小柄で可愛らしい少女が辺りを見回しながら口を開く。
「また迷ってるんじゃないかなあ」
「やれやれ、またなのね」
 隣にいるブロンドのショートヘアをした女が呆れた様に声をあげた。見れば少々きつい顔立ちながらスラリとした身体を持つ美女である。
「マサキの方向音痴にも困ったものね。プレセアも大変ね」
 そして彼女は少女に声をかけた。
「いえ、それ程でも」
 プレセアと呼ばれたその少女はそれを否定した。
「いつものことですから」
 だがシニカルな言葉は忘れなかった。
「確かシモーヌさんとここで再会された時もお兄ちゃん道に迷っていたんですよね」
「ああ」
 そのブロンドの女性、シモーヌは苦笑しながらそれに答えた。
「王都陥落の後暫くゲリラ戦をやっていたんだけれどね。ベッキーと一緒に」
「あいよ」
 ここで赤い髪の大柄の女性が気さくな声で応えた。
「二人でね。あの時は結構大変だったねえ」
「そう、そして一番大変だったのがあいつに会った時だった」
 シモーヌはそこで左の肘をテーブルに着いて顎に手を当ててそう言った。
「何でかわからないけれどあたし達が敵に襲撃を仕掛けようとしたら前にいきなり出て来てね。それで大暴れして」
「あたし達も見つかってね。まあそれでも戦いは勝ったんだけれど」
「死ぬかと思ったわ。あいつ他の敵の部隊のところにまで行ってそいつ等まで引き連れていたんだから」
「まあそれはあいつが一人でやっつけたけれどね」
「相変わらずなんだ、お兄ちゃん」
 プレセアは二人のそんな話を聞いて完全に呆れていた。
「まああいつらしいといえばあいつらしいな」
 ここで黒い髪をして左眼に特殊なスカウターを付けた男が言った。
「ファングさん」
「だがそれで戦いには勝ったけれどね。その後か、あんたに会ったのは」
「ああ、そうだったな」
 ファングはシモーヌに答えた。
「シュテドニアスの奴等を追っていたんだったな。ゲンナジーと一緒に」
「あれ、そういえば」
 ここでベッキーがあることに気がついた。
「ゲンナジーは何処!?確かここにいる筈だけれど」
「いるぞ」
 ここで低く重い声がした。見ればベッキーの横にいかつい顔で角刈りをした男が座っていた。彼がゲンナジー=コズイレフである。
「あ、あんたいたんだ」
「最初からな。悪かったな、存在感がなくて」
「あ、いや御免。しゃべってなかったから」
「無口かららね、あんた」
「うむ」
 彼はここで何故か頷いた。
「まあそれがゲンちゃんのいいところだけれど」
 ここでツインテールをした日本の女子高生の制服を着た少女が話に入って来た。
「ミオ、あんたは喋り過ぎ」
 シモーヌは彼女にはこう言った。
「もうちょっと落ち着きな、折角顔は可愛いんだから」
「えへへ」
 ミオはシモーヌにそう言われ思わず笑った。
「綺麗な薔薇には棘があるのよ、シモーヌさんと同じで」
「あんたはどちらかというとワライダケね」
「えっへん」
「そこは威張る場面ではないぞ」
 今度は頭にターバンを巻いた浅黒い肌の男が言った。見れば口髭を生やしている。
「どうも最近の日本人は落ち着きがない。困ったことだ」
 彼は嘆かわしいといった顔でそう呟いた。
「それはここにいる女全員そうだろうに」
「そうそう。アハマド、あんたは固いのよ」
 シモーヌとベッキーは彼に対して共同戦線を張ってきた。
「そんなのだから今でも独身なのよ」
「結構なことだ」
 だが彼はそれを気にはしていない。
「俺は俺に相応しい敬遠な女性しか好きになれないからな」
「・・・・・・アハマドさんに合う女の人ってどんな人なんだろう」
 プレセアはそれを聞いて首を傾げていた。
「アハマド、そんなことだからお主はいかんのだ」
 そんなアハマドをスキンヘッドの男が嗜めた。
「わしのように柔軟な考えを持つがよい。それこそが御仏の思し召しぞ」
「チェアン、あんたは柔らか過ぎ」
「というか破門されてるでしょうが」
「むむむ」
 これを受けてさしものチェアンも沈黙してしまった。
「まあ私は釣りさえできれば」
 大人しそうな外見の黒人の青年がぽつりと呟いた。
「デメクサはねえ」
「朴念仁過ぎるわ」
「そうでしょうか」
 だが彼はそれを意に介してはいなかった。
「そういえばテュッティもいないわね」
「そういえばそうだな」
 ここでポツリと呟いたリューネにヤンロンが答えた。
「御主人様でしたら」
 だがテントの端に控える二匹の狼のうち一匹が口を開いた。
「フェイルロード殿下を御呼びに行っておられます」
「ザシュフォード様は御父上を」
「あ、そういえばザッシュもいないわね」
「子供はもうお休みの時間かと思ったわよ」
「シモーヌさんとベッキーさんは少し大人過ぎると思う」
 ここでプレセアがポツリと呟いた。
「殿下と将軍はわかったが」
 ヤンロンはまだ顔が晴れなかった。
「マサキは何処へ行ったのだ」
「あたし探して来ようか?」
 ここでミオが名乗りを挙げた。
「いや、師匠が出る幕やおまへんで」
 するとここでミオの影から三匹の小さな生物が出て来た。
「そう、ここはわて等にお任せを」
「ご期待あれ」
 見ればカモノハシ達であった。しかし普通のカモノハシではない。
 何と服を着ている。妙に洒落たタキシードに蝶ネクタイである。そして髪の毛まである。
「いや、いい」
 だがヤンロンはそれを断った。
「どのみちこの基地の中からは出られない。近いうちに誰かに連れられて来るだろう」
「そういうものかしら」
「ああ。だから放っておこう。しかしミオ」
「何?」
 ここでヤンロンの目が変わった。
「そのファミリアは何とかならなかったのか」
「仕方ないじゃない。あたしの深層心理にあるんでしょ。そうしたらこれになったの」
「そうか」
 何故かヤンロンはあまり何も言おうとしない。
「あのヤンロンにしては珍しいね」
「やっぱり苦手なものあるんだ」
 シモーヌとベッキーはそんな彼を見てヒソヒソと話し込んでいる。
「まあここは殿下と将軍が来られるまで少し待とう」
「了解」
「わかった」
 そこにいた魔装機のパイロット達はそれに賛成した。
「しかしマサキは」
 シモーヌはここで苦笑しながら言う。
「何時まで経っても子供ね」
「おや、惚れたかい?」
 ベッキーがそこにすかさず突っ込みを入れる。
「ば、馬鹿言ってるんじゃないよ」
 その言葉に顔を赤くさせるシモーヌであった。

 その頃基地内をうろつく一人の少年がいた。白いジャケットに青いズボンという出で立ちのアジア系の少年であった。だが顔立ちは年齢より少し上に見える。
「マサキ、早く言った方がいいニャ」
 その足下にいる黒い猫が彼に言った。
「そうだよ。もしかしてまた道に迷ったの?」
 同じく足下にいる白い猫も言う。見れば二匹の猫がいる。
「うるせえ。いいから俺に任せてろ」
 黒い猫にマサキと呼ばれたその少年は少し怒った声でそれに答えた。彼の名はマサキ=アンドー。四機ある魔装機神の
一つサイバスターのパイロットである。日本人であり他の魔装機のパイロット達の多くと同じくこのラ=ギアスに召還されたのである。
「この道で正しい筈なんだ、絶対な」
「そう言っていつも迷ってるニャ」
「こんなところでどうして迷うんだよ。おいらそれが不思議でならないよ」
「いいから黙ってろ」
 マサキはそれに対して怒った。
「クロ、シロ」
 そして二匹の猫達の名を呼んだ。
「とにかく辿り着けばいいんだ。わかったな」
「あ〜〜あ、またそんなこと言って」
「何ならおいら達が案内しようか?」
 クロとシロは彼のその言葉に呆れてしまっていた。
「とにかくだ」
 それをあえて無視してマサキは言った。
「誰かに聞こう。そうすればすぐだ」
「それ最初にあたしが言ったよ」
「おいらも。本当に人の話聞かないんだから」
「・・・・・・いいから黙ってろ」
 マサキは二匹を黙らせてとりあえず道を聞くことにした。相手は誰でもよかった。
「おお、いたいた」
 彼はすぐにそこにいる一人の少年に声をかけた。この時彼はその少年について詳しくは見ていなかった。
「おい、そこのあんた」
「ん!?俺か!?」
 見れば黒い軍服を着ている。軍歴らしい。黒い髪と瞳を持ち、やや幼さの残る整った顔をしている。目が大きい。
「ああ、あんただ。ちょっと変わった軍服だな」
「そうか!?」
 だが彼はそれを気にはしていないようである。
「特殊部隊か。黒いラングランの軍服なんてはじめて見たぜ」
「ラングラン!?それは何だ」
 ここでその少年は首を傾げた。
「おい、何を言ってるんだよ」
 マサキはそれを聞いて怪訝そうな顔をした。
「あんたはそのラングラン軍だろうが。悪ふざけにも程があるぜ」
「・・・・・・俺は連邦軍だが」
「何っ!?」
 それを聞いたマサキは思わず声をあげた。
「おい、そりゃ本当か!?」
「嘘を言ってどうするんだ」
 彼はそれに対していささか憮然とした声で答えた。
「俺の名は栗林忠直。連邦海軍日本駐留艦隊に所属している。階級は少尉だ」
「そうだったのか。俺と同じか」
「あんたも日本人なのか!?」
 栗林と名乗ったその若者はマサキのその言葉に反応した。
「ああ、俺はマサキ、マサキ=アンドーだ」
「安藤正樹か」
「ああ、そうだ。マサキでいい。それで栗林さんっていったな」
「タダナオでいい」
「そうか、じゃあタダナオ」
 マサキはあらためて彼の名を呼んだ。
「説明が長くなりからとりあえず俺と一緒に来てくれるか」
「何処にだ!?」
「あんたは日本からこっちに来たんだろう?」
「ああ、急にな。当直を終えて帰ろうとしたらだ。光に包まれて気がついたらここにいた」
「そうか。俺達と同じだな」
 マサキは彼の話を聞いて妙に納得した。
「とりあえずは日本に戻りたいな」
「悪いが今すぐには無理だ」
 マサキは厳しい顔をして答えた。
「それはわかるだろう」
「・・・・・・ああ」
 残念ながらタダナオにもそれは理解できた。ここが見たことも聞いたこともない世界なのがわかったからだ。
「まずは詳しい話だ。いいな」
「わかった」
 タダナオはそれに頷いた。そして彼はマサキと二匹の猫、そして途中で会った一人の兵士に案内されて他の魔装機のパイロット達やフェイルが待つテントに向かった。

「新しい地上人か」
 テントの中のテーブルの中心に座る緑の波がかった髪と澄んだエメラルドの瞳を持つ青年がマサキとタダナオの説明を聞き顎に手を当てて呟いた。地味ながら整った白い軍服がその気品のある顔によく合っている。彼がこのラングランの第一王位継承者であるフェイルロードである。
 幼い頃より聡明な人物として期待されていた。勤勉であり生真面目な人物として知られている。そして人望も篤く将来を期待された人物であった。
 だがこの度の戦乱で一時その消息が途絶えた。しかし彼はすんでのところで部下達に救い出されており今はこうしてラングラン軍を率いシュテドニアス軍と戦っている。将としても優れている。
 そしてその魔力も突出したものである。ラングランにおいては王となるべき者はある程度以上の魔力を持っていることが要求される。儀式等に必要だからだ。そして彼はそれにおいても及第していた。ラングランにマサキ達地上人を召還したのは彼であった。
「フェイル殿下が呼んだんじゃねえのか?」
 ようやくテントに入ったマサキは彼に尋ねた。
「私が?」
「ああ。殿下位しかいないだろう。ここに地上人を召還できるのは」
「確かにそうだが」
 だが彼の顔は訝しげであった。
「私は今は地上人を召還してはいないが」
「あたしで終わりだって言ってたわよね」
 ここでミオが話に入って来た。
「何だって!?じゃあ」
「俺はどうしてここに来たんだ」
 タダナオはそれを受けて首を傾げさせた。
「どうやってここに連れて来られたんだ」
「残念だが今はそれについてはわからない」
 ヤンロンが彼に対してそう述べた。
「だがこの戦いが終われば地上に帰そう。今は流石に無理だが」
「戦いか」
 それを聞いたタダナオの表情が変わった。
「今からはじまるのかい?」
「そうだ」
 フェイルが彼に答えた。
「今から王都を奪還する。その為の戦いだ」
「さっき聞いたシュテドニアスとの戦いだな」
「ああ。遂にここまで来たんだ」
 マサキは感慨深そうにそう語った。
「シュテドニアスの奴等め、吠え面かかせてやるぜ」
「ふうん」
 タダナオは彼の横顔を見ながら考え込んでいた。
「だったら少しでも人手が必要だな」
「ああ」
 マサキはそれを認めた。
「何で王都奪還だからな。向こうもかなりの兵力を投入して来る」
「おそらくこの戦争のターニングポイントとなるだろう。少しでも戦力は欲しいところだ」
 ヤンロンもそう述べた。
「兵力においては互角、だからこそ難しい」
 フェイルの隣にいる赤髭の男がそう言った。鋭い眼光が印象的である。
「我等には魔装機がある。だがそれだけで勝てるとは容易には思ってはならないだろう」
「カークス将軍の言う通りだ」
 これにフェイルも同意した。
「今の我々にはあまり予備兵力もない。負けたら後がないのだ」
「そうなのか」
 タダナオはそれを聞きながら考え込んでいた。
「だったら俺も参加させてくれないか」
「何っ!?」


[234] 題名:プレリュード 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月03日 (木) 21時56分

          スーパーロボット大戦D
             プレリュード
 バルマー帝国、そして宇宙怪獣達との死闘を終えた地球の覇権を掌握したのはティターンズであった。だが彼等はその高圧的なやり方が反発を受けロンド=ベルとの戦いに敗れ退けられた。ジャミトフ=ハイマン及びバスク=オムの生死は不明だが少なくとも地球には存在しなくなった。それと共にティターンズも宇宙に引き上げ彼等はセダンの門において集結し独自の勢力を維持するだけであった。
 そしてロンド=ベルは一時行方不明となっていたがやがて戻って来た。そして彼等は岡長官が管轄する環太平洋区を中心として地球圏を防衛する任務を与えられていた。指揮官はブライト=ノア、そしてアムロ=レイに委ねられそこにマクロスも協力する形となっていた。ブライトは大佐、そしてアムロは少佐にそれぞれ昇進し彼等の権限もそれと共に強化されていた。
 それと共に人類の社会は再び復興に向かっていた。危惧されていたブラックホールの衝撃波も回避され太陽系は平穏な時代を迎えたように思われていた。火星にも再び移住が計画され選抜された開拓チームが派遣された。そして月にも軍が置かれ司令官として能力、人望共に厚いギルトール大将を置いた。だがこれが誤算であった。
 実はギルトールは連邦軍の中で危険人物と目されていたのだ。それは何故か。彼が切れ者だからである。そしてそれだけではなく人格にも優れ理想にも燃えていた。そしてそれは連邦政府のそれとは異なる理想であった。
 月に到着した彼はすぐに行動に移した。すぐさま月の全権を掌握すると独立を宣言し、自ら臨時政府の主席、そして国防長官に就任し元帥になった。彼はあくまで月の市民達の権利の保護を主張し、それは月の市民達の絶大な支持を得た。戦いの度に微妙な立場に置かれ、そして翻弄されてきた月の市民達にとってギルトールは彼等を導くべき理想の指導者であったのだ。例えそれが独裁的なものであったとしても。
 それに呼応してネオ=ジオンも活動を再開した。彼等はアクシズを奪回し、そこに勢力を築いた。そしてミネバ=ザビを盟主、ハマーン=カーンを摂政として連邦政府に宣戦を布告した。平和に向かうかと思われた人類社会は再び戦乱に包まれようとしていた。
 悪いことは重なるものである。それと共に地球、とりわけ極東地域において再び怪しげな者達の活動がはじまったのである。今回はミケーネ帝国、そして恐竜帝国という爬虫類から進化したハ中人類達の国家であった。
 こうした状況を受けて連邦政府内でも強硬派が台頭するのは当然であった。とりわけ地底勢力からの脅威に晒されようとしていた極東地域、そして環太平洋地域においてはそれが顕著であり穏健派の岡に変わって連邦軍の中でもジャミトフですら鼻白むと言われた過激派三輪防人が環太平洋区の司令官に就任した。
 彼は司令官に就任するとたちどころに全権を無理矢理掌握した。そして極東地域に存在する多くのスーパーロボット達とロンド=ベル隊をその管轄下に置こうとした。これには連邦軍だけでなく政府も驚いたがだからといってそれを止める三輪でもなかった。そしてスーパーロボットのパイロット、その基地の関係者、そしてロンド=ベル隊と激しい衝突を繰り返すようになった。これがかえって地球圏の混乱を招いていた。
 地球は今混乱の中に落ちようとしていた。だがそれは地球圏だけではなかったのである。今人類史上未曾有の戦いが幕を開けようとしていた。


[233] 題名:戦士達の旅立ち 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月01日 (火) 23時34分

                          戦士達の旅立ち
 バダンは遂に滅び首領も消え去った。世界には再び平和が戻ろうとしていた。だが戦士達に休息はないのだ。
「行くのか」
 成田空港で立花達は戦士達を前にしていた。
「ええ」
 彼等は答えた。そして立花達を見た。
「まだまだ世界には裏で企む奴等がいますから」
「それにあの首領のことです。また出て来るかも知れませんから」
「そうだな」
 立花はそれを受けて頷いた。
「御前達らしいな。戦いが終わってもそうして次の戦場に向かう。そして新たな悪と戦うんだな」
「ええ」
 ライダー達はその言葉に頷いた。
「それがライダーの宿命と言えばそれまでだが。辛いことだと思う」
「いえ」
 だが彼等はその言葉には首を横に振った。
「それが俺達の使命ですから。今更何とも思わないですよ」
「そうですよ。だから気にしないで下さい。俺達はそれが当然だと思っていますから」
「そうか、そうだったな」
 今度は逆に立花が頷いた。
「じゃあわしはこれ以上はあまり言うことはない。ただ御前達を見送るだけだ」
「はい」
「行って来い。そしてたまには帰って来いよ」
「わかってますよ」
 彼等はそれには笑顔で答えた。
「おやっさんのコーヒーが飲みたくなったら何時でもね」
「おう、何時でも来い」
 立花はそれを受けて笑顔でこう返した。
「とびきり上等のやつを御馳走してやるからな」
「楽しみにしてますよ。では」
「おう、行って来い」
 まずは本郷が向かった。
「今度は何処だ」
「イランです」
 彼は答えた。
「そこでルリ子さんと待ち合わせてるんです。あそこでテロリストの動きが活発化しているらしいですから」
「そうか。ルリ子のことを頼むぞ」
「はい、任せて下さい」
 彼はそう言うと空港の奥に消えていった。次には一文字が発った。
「御前は何処だ」
「中国に行きます。西安の辺りで人を襲う怪物が出たと聞きましたんで」
「怪物がか」
「バダンの残党かも知れませんしね。調べて来ます」
「気をつけてな」
「後から俺も行くからな」
 ここで滝も言った。
「楽しみにしているぜ。待っているからな」
「おう」
 一文字も消えた。そして風見が足を進めた。
「俺はタンザニアに行きます」
「俺もです」
 佐久間も言った。
「タンザニアには何があるんだ」
「あそこでカルト宗教の団体が蠢いているということなので。奴等を調べて対処する為に」
「そういえばあそこには得体の知れない化け物もいたな」
「ええ」
 風見はそれに応えた。かってタンザニアにはムングワというネコ科の猛獣に似た怪物が夜な夜な人を襲っていたことが
あるのだ。
「それの可能性もあります。ですから俺が行きます」
「よし、行って来い」
「はい」
 風見も行った。結城も進みはじめた。
「俺は東南アジア、フィリピンに行きます」
「この前地震があったな」
「はい、それの救助に向かいます」
 これもライダーの仕事の一つであった。
「俺達のこの力はそういった時の為にもありますから」
「その通りだ」
 立花はそれを聞き頷いた。
「わかっているのならいい。思う存分やって来い。そして一人でも多くの人を救うんだ」
「はい」
 結城もそれに返すようにして頷いた。
「行って来ます」
「私もすぐに行きますよ」
 竜が結城に対して言った。
「貴方も」
「はい。お一人じゃ何かと厳しいでしょう。人は多い方がいい。違いますか」
「確かに」
 結城はそれを受けて微笑んだ。
「じゃあお待ちしていますよ。是非ともお願いします」
「はい、期待していて下さい。それでは」
「ええ」
 結城も別れた。神も。
「御前が次に行くのは何処だ」
「キューバです」
 彼は答えた。
「あの海で海難事故が相次いでいますから。原因を突き止めてそれを収めて来ます」
「海か。御前にはおあつらえ向きのところだな」
「ええ。それが何なのかはわかりませんがね」
 彼は笑顔でそう答えた。
「何が出ようと恐れはしませんよ。それは安心して下さい」
「馬鹿野郎、しみったれたことを言うな」
 立花はその言葉を笑い飛ばした。
「御前にはいつも心配させられてきたんだ。今更何を言ってやがる」
「あれっ、そうだったんですか」
「そうだよ。だから今更そんなことを言う必要はない。わかったな」
「はい」
「それに私も行くからな」
 ここで志度が出て来た。
「博士」
「君一人じゃ何かと辛いだろう。それに」
「それに?」
「あの辺りの生態系にも興味があるんだ。科学者としてもお願いしたいのだが」
「ええ、いいですよ」
 神はそれを快諾した。
「では行きましょう。確かに一人より二人の方が何かと都合がいいですし」
「うむ」
 こうして神も去った。次はアマゾンであった。
「御前はやっぱりアマゾンか」
「違う」
 だが彼は立花の問いに首を横に振った。
「アマゾン今度はアメリカに行く」
「アメリカ!?また意外だな」
「アメリカと言っても色々ある。アマゾン今度はロッキーに行く」
「ロッキーにか」
「うん。あそこで何かトカゲと人の合の子みたいなのが出ている。そして人襲っているらしい。アマゾンそれ本当なら許せない」
「そうだな」
 それは立花も聞いていた。アメリカではチュチェカブラという謎の生物が蠢いているという噂があるのだ。
「それ調べる。そしてもしそれ本当ならアマゾンそいつやっつける」
「そうか、わかった。だが御前一人じゃないだろう」
「おう、俺らが行くよ」
 ここでモグラ獣人が前に出た。
「アマゾン、行こうぜ」
「モグラ」
「俺ら達は何処でも一緒だろ。これからも」
「うん」
 アマゾンはその言葉に頷いた。
「だからな。行こうぜ、一緒に」
「わかった。モグラ、頼む」
「こっちこそな」
 二人は手を握り合った。そして彼等も発った。次は城であった。
「俺はロシアに行きます」
「ロシアの何処だ?」
「カフカスです」
「あそこか」
 ロシアとイラン、トルコの国境である。山脈であり多くの民族がモザイク状に入り混じっている。ソ連の独裁者スターリンも
ベリアもカフカスの中の国グルジアの生まれである。彼等の行動や性格からもわかる通り過酷な歴史を歩んできている。
今も深刻な民族闘争が繰り広げられている。
「ええ、やることはわかっています」
「そうか。ならばいい」
 彼はその紛争を止めるつもりなのだ。
「幸い俺は銃や爆弾では死にはしませんからね。丁度いいかと」
「だがあそこは辛いぞ」
「わかってますよ。けれど逃げるつもりもありません」
 彼はそう言いながらニカッと笑ってみせた。
「あいつだって逃げなかったんですから」
「そうだったな」
 立花はここであの女戦士のことを思い出した。
「しかし一人では辛いだろう」
「何、心配する必要はない」
 ここで海堂博士が出て来た。
「私も行くからな」
「博士」
 城と立花はそれを見て同時に声をあげた。
「一人で行くつもりかい?幾ら何でもそれは格好つけ過ぎだよ」
「けれど」
「けれども何もないさ。君みたいな無茶する人間を放ってはおけない。それに」
「それに・・・・・・!?」
「私もライダーになりたいんだ。いいかね」
「ええ」
 城はその言葉を受けて微笑んだ。
「ではお願いします。宜しく」
「ああ。これからもな」
 そして城も新たな場所に向かった。今度は筑波が出た。
「俺はポーランドに行きます」
「わいも」
 がんがんじいも名乗り出た。
「あそこで地震がありましたさかい。行って来ますわ」
「そうか」
 立花と谷がそれを受けて頷いた。
「洋、張り切って行って来い」
「はい」
 彼は谷に言われ快い返事を返した。
「がんがんじい」
「はいな」
「洋の足を引っ張るなよ。日本人の恥を晒すなよ」
「何で洋はんとわいでこんなに違うんかなあ」
 がんがんじいはその言葉を受け思わずぼやいてしまった。
「洋、こいつを頼むぞ」
「え、ええ」
 筑波も思わず苦笑していた。
「がんがんじい」
 そしてそれを受けた形でがんがんじいに顔を向けた。
「はい」
 彼の方はいささかふてくされていた。
「頼むよ。二人で頑張ろう」
「それでしたら」
 その優しい声を受けて彼も機嫌を直した。そして二人は快く次に戦場に向かった。沖が次に出る。
「御前は何処に行くんだ」
「タヒチに行きます。今あそこも大変ですから」
 彼は答えた。
「津波があったらしいな」
「ええ、それで。この腕が何かの役に立つでしょう」
 彼はそう言いながら自らの腕を見た。
「人々の為に役立てるなら」
「そうだな。御前の腕は本来その為にあるからな」
 谷はそれを見てこう言った。
「一也」
「はい」
「御前の本来の仕事をしてこい。そして多くの人を救ってくるんだ。いいな」
「わかりました」
 彼はそれに答えた。
「それじゃあ俺も」
 ここでチョロが出て来た。
「そうだな。一也だけじゃ何かと大変だろう。頼めるか」
「勿論ですよ、その為にここへ来たんですから」
 彼はにこやかに笑ってそう答えた。
「俺一人じゃちっぽけなもんですけれどね」
「いや、それは違うよ」
 だが沖はその言葉を否定した。
「確かに一人一人の力は小さい。けれどそれが集まって大きな力となるんだ」
「そうだ、一也の言う通りだ」
 これには谷も賛同した。
「確かに俺達はちっぽけなものさ。けどな、それが集まって凄い力となるんだろうが」
「そういうものですか」
「そうだ。だからバダンも倒せたんじゃないのか。違うか」
「そう言われてみるとそうですね」
 彼は戸惑った顔から明るい顔に変わっていった。
「じゃあ俺もその力の一部になってみせますよ。一也さん、それでいいですね」
「ああ、勿論」
「ではまた」
「おう、何時でも戻って来い」
 沖も去った。こうして九人のライダー達は皆次の戦場へ向かって行った。
「行ったな、皆」
 立花達は彼等が消えた道を見ながら感慨深げに呟いた。
「いえ、まだいますよ」
 ここで声がした。
「おう、そうだったな。すまん」
 彼等はそれを受けて声がした方を見た。そこに彼がいた。
「俺がいますから」
「御前はどうするんだ」
 立花が問うた。
「そうですね」
 村雨は考えながら言葉を出した。
「俺も先輩達と一緒ですよ。バダンは倒しました。しかし」
「しかし」
「まだ俺の仕事は終わってはいません。いえ、永遠に終わらないかも知れませんね」
 そう話す彼の顔は澄んだいいものであった。
「この世界にはまだまだ俺達の力を必要としている人達がいます。それは今までの戦いと今の先輩達を見てよくわかり
ました」
「そうか、わかったか」
「はい。そしてあの首領も何時復活するかわかりません。いえ」
 彼の目が鋭いものになった。
「何時の日か復活するでしょうね。そして俺達の前に姿を現わすでしょう」
「死んだわけじゃないのか」
「確かにあの時死にました。けれどあの首領はおそらく」
 彼は言葉を続ける。
「この世に悪の心がある限り何度でも甦るのでしょう。そしてまたこの世界を掌中に収めんとする筈です」
「だろうな。今までもそうだったからな」
「だからです。俺も行きます。そして世界を守りますよ。ライダーとして」
「ライダーとしてか」
 立花はその言葉を受けてライダーという言葉を自分も口にした。
「ええ、ライダーとして」
 村雨は答えた。
「これからも戦います。この世に生きる全ての人の為に」
「自分を捨てて」
 役が問う。
「ええ、勿論です。それがライダーですから」
 それにも答えた。その声には最早迷いはなかった。
「なら問題はありません。仮面ライダーゼクロス、いえ村雨良」
 ここで彼は村雨を言い直した。
「これからの貴方の活躍を期待していますよ」
「有り難うございます」
「私は長野の戻りますがね。何かあったら遊びに来て下さい」
「はい」
「蕎麦と林檎ならふんだんにありますから」
「わかりました、楽しみにしています」
 蕎麦と林檎を聞いた村雨の顔がほころんだ。そして笑顔で答えた。
「良君」
 今度は伊藤が出て来た。
「立派になったな。本当に」
「いえ、それ程でも」
「あの時のことは覚えているな」
「勿論です」
 彼等はバダンを二人で脱出した時のことを思い出していた。長いようで短い旅であった。
「全てはあの時からはじまりましたね」
「そうだ。何か遙か遠い昔のようだな」
「それでいてついこの間のことのようです。不思議ですね」
「ああ」
 伊藤はそれに頷いた。
「本当にな。あの時はどうなるか本当にわからなかった」
「はい」
「だが必ず何とかなると思っていた。それは何故かわかるな」
「ええ、希望がありましたから」
「そうだ、希望だ」
 伊藤はそれを聞いて満足したように頷いた。
「希望があった。私は常にそれと一緒にいた。だから君と一緒に行けたんだ」
「その希望とは」
「決まってるじゃないか」
 伊藤はそう言ってにこりと笑った。
「君だよ」
 そして村雨を指差してこう言った。
「俺が」
「そうだ、君自身がだ」
 彼は村雨を見上げて微笑んでいた。
「君は希望だったんだ。バダンを倒しこの世に平和を取り戻す希望だ。そう、光だったんだ」
「光」
「そうだ。君はこの世を照らす光なんだ。仮面ライダーはね」
「大袈裟ですよ」
 村雨は苦笑せずにいられなかった。
「俺一人じゃここまで出来ませんでしたから」
 そしてこう語った。
「それは違うな」
 しかし伊藤はその言葉を否定した。
「君達があればこそ、だ。だからこそバダンを滅ぼすことができたのだ」
「その通りだ」
 立花もそれに同意した。
「御前達がいなければここまではとてもいけなかっただろう。世界はバダン、いやもうショッカーに征服されていただろうな」
「おやっさん」
 立花ならではの言葉の重みがあった。多くの組織を向こうに回して戦ってきた男の言葉は重かった。
「良、御前はわし等を導いてくれた光だ。御前達全員がな」
「そうだぞ、それは誇りに思ってくれ」
「はい」
「ライダーの誇りとしてな。世界を守る戦士としての誇りだ」
「この機械の身体にそれがある」
 彼は自らの左手の平を見てそう呟いた。
「そう、その身体にだ。辛い宿命だと思ったこともあるだろう」
「ええ。それは認めます」
 ライダー達は身体は人間のものではない。それに苦しんだ者もいた。
 村雨も同じである。だが今彼はそれを苦しみとは思っていなかった。
「自らのこの運命を呪ったこともあります。しかし今は」
「違うのだな」
「はい、これは先輩達も同じだと思います」
 彼はそれに答えた。
「今は誇りに思っています。この身体だからこそ戦ってこられたのですから」
「そうか」
 伊藤はその言葉を温かい目で受けていた。
「君を改造したのは私だ。君には済まないことをしたと思っているのだが」
「いえ、博士が悩まれる必要はありません」
 村雨はここでそう言った。
「それどころか今は博士に感謝しています」
「有り難う」
 伊藤の目はその言葉でもう潤んでいた。
「君にそう言ってもらえるとは」
「ライダーだからこそ、ゼクロスだからこそバダンを滅ぼすことができましたから。そして人々を救う力を手に入れることが
できた。感謝してもし足りませんよ」
「済まない、本当に済まない」
 彼は泣いていた。泣きながら村雨の両肩を持っていた。
「博士・・・・・・」
「バダンに協力し、君の身体を機械にした私を許してくれるなんて・・・・・・」
「許すも何も」
 しかし村雨の声は温かいままであった。
「博士が、そして皆がいたからこそ俺は戦えたんです。許すだなんて」
「そうか、有り難う」
 伊藤はそれ以上は言えなかった。ただ泣くだけであった。
「良さん」
 今度は少女の声がした。
「ルミちゃん」
 見ればルミが微笑んでいた。
「今度は何処へ行くんですか」
「そうだなあ」
 彼は言われて考え込んだ。
「アイルランドに行って来る」
「アイルランドに」
「そう、それも北にね。あそこもまだ物騒だから」
 言わずと知れた北アイルランド問題であった。まだ完全に解決はしていないのである。
「そう、気をつけて下さいね」
「ああ」
 村雨は笑顔で答えた。
「ルミちゃんもな。今度会う時は何時になるかわからないけれど必ず会おう」
「ええ」
「そして・・・・・・今度は」
「今度は?」
「笑顔で再会しよう。最初会った時みたいに無表情なやつじゃなくて」
「ええ、わかったわ」
 ルミはそれを受けて微笑んだ。
「楽しみにしてますえ、良さんの笑顔」
「ああ、是非待っていてくれ。その時を」
 村雨は言った。
「笑顔で」
 そして微笑んだ。人間の、優しい微笑みであった。
「はい!」
 ルミも笑顔で頷いた。そして村雨は彼等に別れを告げ背を向けて彼を必要とする場所に向かって行った。
「行ったか、皆」
 立花は完全に消えた村雨の背をまだその目に見ながら呟いた。
「はい、行っちまいましたね」
 隣にいる谷がそれに応える。二人の目も潤んでいた。
「次に会えるのは何時かわかりませんがここはあいつ等の活躍を温かく見守りましょう」
「ええ」
 立花は彼に言葉に頷いた。
「御前達」
 彼は窓に見える今まさに旅立とうとしている飛行機を見た。十機ある。
「行って来い、そして何時でも帰って来い。ずっと待ってるからな」
 一機ずつ飛び立っていく。そして十機全てが飛び立った。瞬く間に消えていく。
 戦士達は新たな戦場に向かう。戦いは終わることはない。だが彼等はそれでも戦い続ける、平和の為に、人々の為に。
それは何故か。彼等が仮面ライダーであるからだ。


戦士達の旅立ち   完



仮面ライダー     完



                                 2005・1・4


[232] 題名:バダン最後の日2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月01日 (火) 23時33分

「どういうことだ」
「ブラックサタンもデルザーも互いに私の細胞から生まれ出たもの。だがブラックサタンは私の脳ではない。あくまで分身だっただけだ」
「では岩石の首領の中にいた貴様は」
「そう、あれは私の脳の一部だ」
 首領は声に笑みをたたえてそう言った。
「恐竜に複数の脳があったのは知っているな」
「無論」
「だからあの姿だったのか」
 岩石の首領の中にいたのは巨大な一つ目の頭脳であったのだ。一度見たら忘れられぬ無気味な姿であった。
「あれは私の脳の一部。デルザーの様な組織を操るにはそれしかなかったのでな」
 デルザーは強力な改造魔人によって構成されている。その個々の力は他の組織とは比較にならないものであったのだ。それを陰から操るにはそれなりのものが必要だったのである。
「だがそれが敗れた。私は今度は諸君等に正面から当たろうと考えた」
「それがネオショッカーか」
 スカイライダーが声をあげた。
「そうだ。かってのショッカーの様にせんとな。それは成功した」
「何を言うか」
 しかしライダー達はそれに反論した。
「威勢がいいな」
 だが首領は動じてはいなかった。平然とそう返した。
「だからこそ私も真の姿で乗り込んだのだ」
「あの怪獣が貴様の正体だったというのだな」
「そう、あれが私の実体だった。本来は暗黒星雲にいたのだがな」
「暗黒星雲」
「私の故郷だ。今となっては懐かしい」
「それでは貴様はそこから地球への侵略を目論んでいたのか、ショッカーの頃から」
「そうだ。だがネオショッカーも潰えた。諸君等の手によってな」
 ライダー達はあの時のことを思い出していた。彼等はスカイライダーを中心として決死の覚悟で首領に立ち向かいそれに勝利したのであった。
「あの時は誰もが全てが終わったと思っただろう」
「・・・・・・・・・」
 彼等はそれに答えなかった。その通りであったからだ。
「だが私の分身は故郷にも残っていたのだよ」
「テラーマクロと悪魔元帥か」
「そうだ」
 スーパー1の問いに答えた。
「彼等もまた私の分身だったのだ。いざという時の為に残しておいてよかった」
「そして再び地球に」
「途中でテラーマクロと悪魔元帥が対立したのは予想外だったがな。所詮分身は分身ということか」
「クッ・・・・・・」
「だが実体をなくした私には仕方のないことだった」
「実体か」
「そうだ」
「では聞こう。今の貴様は何だ」
 ライダー達はそれに気付いた。そして問うた。
「今俺達に話しかけている貴様は一体何だ!?実体がないのなら貴様は・・・・・・」
「知りたいか」
 首領はライダー達の反応を楽しむ様に問うてきた。
「この場合は知りたくないと言ったら貴様も納得しないだろう」
「フフフ、わかっているではないか」
「ごたくはいい。早く今の姿を現わせ」
「よかろう」
 首領はそれに答えた。
「ではライダー諸君、見るがいい。今の私の姿を」
 何か得体の知れぬ影が動いた。
「これがこの世を支配する神の姿だ!」
 影が姿を現わした。そう、それは影であった。
「な・・・・・・」
 ライダー達はその姿を見て絶句した。その影は普通の影ではなかったのである。
 身体は確かに黒い巨大な影であった。だがその頭はドクロであった。
 しかも普通のドクロではない。額にもう一つ禍々しい目を持つドクロであった。
「フフフ、どうだライダー諸君、今の私の姿は。素晴らしいだろう」
「何と・・・・・・」
 これにはライダー達も呆然としていた。実体ではないのは勘付いていた。しかしこの様な姿であるとは思いもしなかったからである。
「ネオショッカー崩壊の時私は実体を失った。だがこの魂までは死んではいなかったのだ」
「どういうことだ」
「そのままだ。今私が言ったままだ」
 首領は嬉しそうに答えた。その黒いドクロの歯が無気味に動く。
「私は一度故郷に帰った。そしてテラーマクロと悪魔元帥を送り込んだのだ」
「それはさっき聞いた」
「まあ聞くがいい。諸君等とは長い付き合いだ。是非聞いてもらいたいのだ」
 首領は彼等に対してそう言った。
「その間私は何もしなかったわけではない。そう、力を集めていたのだ」
「力を」
「そうだ。宇宙にある負の気。地球にもふんだんにあるだろう」
「憎しみや悲しみか。貴様が最も好きなものだな」
「フフフ、流石に察しがいいな」
「言うな、貴様はそれを取り込んだというのか」
 ライダー達はその黒い姿に臆することなくそう問うた。首領を見上げ指差して問い詰める。
「宇宙にある負の力、美味であったぞ」
 首領は答えるかわりにこう言った。やはり楽しむ様な声であった。
「その力を蓄えた私は地球に戻ったのだ。そしてかっての部下達をこの力で甦らせ再び部下とした」
「それがあの大幹部や改造魔人達か」
「手強かっただろう。諸君等の相手をさせ、我が世界征服の手足とするべくわざわざ呼び戻したのだからな」
「言うな。それがバダンだったというのか」
「それは言うまでもないことだと思うがな」
「クッ・・・・・・!」
 ライダー達はそれを聞いて吐き捨てる様にして呟いた。
「何処までも諦めの悪い奴だ」
「私は諦めたりはしない。野望を実現させるまではな」
 首領はこれに対してもこう答えた。
「それももうわかっていることだと思っていたがな」
「フン」
 だがライダー達はそれに対して首を横に振った。
「そしてその負の力を集めたのが今の貴様だと言うのか」
「その通り」
 首領は得意気にそう答えた。
「この影は全て負の力だ。どうだ、素晴らしいだろう」
「そうなってもまだ諦めないとはな」
 だがライダー達はそれを認めようとはしなかった。
「だが首領よ、わかっているな」
 そして彼を指差してこう言った。
「無論」
 首領もそれに応える。
「貴様が、この世に悪がある限り俺達は、ライダーは戦う。そして貴様を倒す!」
「できるかな」
 だが首領は鼻で笑ってこう返した。
「諸君等に今の私を倒すことが」
「出来る。いや」
 彼等はここで言葉を変えた。
「必ずやる!行くぞ首領」
「ここで貴様を完全に倒す!」
「よかろう」
 首領は笑いながらそれに応える。
「では来るがいいライダー諸君よ。今ここで諸君等を完全に滅ぼし我が野望の糧としてくれよう!」
「滅びるのは首領・・・・・・」
 彼等はそう言いながら一斉に身構えた。
「貴様だ!」
 そして跳んだ。こうして最後の戦いがはじまった。
 ライダー達は跳び、それぞれ決しの攻撃を仕掛ける。だが首領は実体を持たない。その攻撃は全てすり抜けてしまう。
「おのれっ!」
 首領はそれを見ながら笑っている。そして彼はゆっくりと構えた。
「今度はこちらの番だ」
 全身からその黒い影を放ってきた。それでライダー達を貫かんとする。
「ヌッ!」
「ウォッ!」
 彼等は左右に散った。そしてその黒い影をかわした。それはあの黒い光とはまた違っていた。
「これは一体・・・・・・」
「これこそが負の力だ」
 首領はその言葉に対してこう答えた。
「宇宙にある負の気、これがそうなのだ」
「これが・・・・・・」
「そうだ。確かに私は実体を持たない。だがな」
 首領は言葉を続ける。
「諸君等を攻撃することはできるのだ。この言葉の意味はわかるな」
「ヌウウ・・・・・・」
「さあ覚悟するがいいライダー諸君。そして我が生け贄となるのだ!」
 首領はさらに攻撃を強めた。ライダー達はそれに対してその攻撃を避けるだけで手が一杯であった。
「どうすれば・・・・・・」
 ライダー達は考えた。だがこちらの攻撃は通用しないのだ。打つ手がないと思われた。
 しかし諦めるわけにはいかなかった。彼等がここで倒れては世界はどうなるのか。それは言うまでもないことであるからだ。
 その間も攻撃は続く。やはりどうすることもできない。そう思われたその時であった。
「こうなったら・・・・・・」
 ゼクロスが首領の前に出て来た。
「ゼクロス」
 他のライダー達は彼を見据えてその名を呼んだ。
「ほう、貴様か」
 首領も彼を見下ろしていた。その三つの目が無気味に動く。
「裏切りここまで来るとはな。やはりこうなったか」
「答えるつもりはない」
 だがゼクロスはそれには答えない。
「行くぞ」
 ただこれだけを言った。そして身構える。
「戯れ言を」
 首領はそれを聞いてこう言った。
「何もできないというのがまだわからないようだな」
「それはどうかな」
 しかしゼクロスは諦めてはいなかった。
「この世に存在するもので決して死なないもの、滅びないものは存在しない。それは首領、貴様もだ」
「ほお」
 首領はそれを聞き面白そうに声をあげた。
「ではどうやって私を倒すつもりだ。攻撃が効かないというのに」
「それを今から見せよう」
 ゼクロスはそう言うと構えた。そして全身に力を溜める。
 その全身を赤い光が覆っていく。そして彼は跳んだ。
「喰らえ・・・・・・」
 今赤い矢となった。そのまま首領に突き進む。
「ゼクロスキィーーーーーーック!」
 そして蹴りを放った。それは首領の黒い胸に向かう。
「フフフ」
 しかし首領はそれを見ても微動だにしなかった。
「それがどうしたのだ。先程から言っておろう」
 彼は絶対の自信があった。
「攻撃が通用しないということをな」
 そうであった。彼はライダーの攻撃など全く恐れてはいなかったのだ。
 それでもゼクロスは突き進む。今彼は赤い流星となっていた。
「効かないかどうかは」
 飛びながら彼は言う。
「これでわかることだ!」
 そして叫んだ。それと同時にその蹴りが首領の胸に突き刺さった。
「無駄だと言って・・・・・・」
 首領は言おうとする。だがその言葉が止まった。
「ムゥッ!」
 何とその蹴りが胸に突き刺さったのだ。そして首領の胸に深くめり込む。
「ググ・・・・・・」
 呻き声が漏れる。首領の動きが止まった。
 ゼクロスはその反動で後ろに跳ぶ。そして着地した。
「やはりな。思った通りだ」
「どういうことだ!?」
 他のライダー達は彼に問うた。
「はい、俺のこの赤い光のことは知っていますね」
「ああ」
 彼等はゼクロスの説明を聞き頷いた。
「これは気なんです。俺の身体から発せられる気」
「気」
「そうです。これは実体じゃない。だから首領にダメージを与えることが出来たんです」
「そうだったのか」
 ライダー達はそれを聞いて首領が苦しむのを理解した。
「そしてこれは俺だけじゃない。皆持っているんですよ」
「俺達も」
「そうです。それこそ」
 ここで彼は仲間達の腰のベルトを指差した。
「そのベルトにある力です。その力を使えば首領を倒すことが出来ます」
「サザンクロスを破った時のようにか」
「はい。ですがそれは同時に行わなければなりません」
「同時に」
 そう言いながら首領を見上げる。
「ええ。やりますか」
「無論」
 彼等に反対する理由はなかった。
「方法があるのならそれに賭ける。例えその可能性が限り無くゼロに近くとも」
「それを必ず成功させる。それがライダーだ」
「はい」
 ゼクロスは彼等の言葉に頷いた。
「ではやりましょう。そして今度こそあいつを」
「おう」
「わかった」
 ライダー達はそれに頷いた。そして力を溜めはじめる。
 その間に首領は態勢を整えていた。ライダー達を見下ろす。
「よくもやってくれたな」
 その声は怒りに満ちたものとなっていた。
「最早容赦はせぬ。これで始末してやろう」
 再び全身から闇を放つ。それはライダー達に襲い掛かる。
「来たな」
 ライダー達はその闇を見ていた。しかし怯んではいなかった。
「行くぞ」
「ああ」
 そして互いに顔を見合わせ頷き合う。その身体をそれぞれのベルトから発せられる光が包んでいた。今彼等はそれぞれの色の光に包まれていた。
「よし・・・・・・」
 一斉に跳んだ。そのままキックの態勢に入る。
「ライダァーーーーーーーー・・・・・・」
 闇が迫る。しかし彼等はその闇さえも切り裂いた。
「何ッ!」
 それを見た首領は思わず叫んだ。その間にもライダー達は矢となって彼に向かって来ていた。
「キィーーーーーーーーーーッ!」
 そしてその全身を蹴りが貫いた。額の第三の目にはゼクロスの蹴りがあった。
 額が貫かれる。貫いたゼクロスはそのまま突き抜けて行く。
 着地した。他のライダー達も同時に着地する。皆首領のその黒い身体を貫いていた。
「やったか!?」
 彼等は振り向き首領を見やった。そこには漆黒の巨人がまだ立っていた。
「グオオオオ・・・・・・」
 しかしその闇は次第に弱くなっていた。額は貫かれ第三の目は完全に潰れていた。
「み、見事だライダー諸君。まさか実体を持たぬ私を倒すとは」
「言った筈だ、首領」
 彼等は立ち上がり首領を見上げてこう言った。
「例えどの様な姿だろうと貴様を倒すと。俺達は貴様を倒しこの世に平和を取り戻す為に戦っているのだからな」
「フフフ、そうか」
 首領はそれを聞き笑いながら言った。
「そうだったな。迂闊だったわ。実体を持たぬからといって油断していたわ」
 彼は己に言い聞かすようにしてそう言葉を続ける。
「私の負けだ。私はまたしても諸君等に敗れたのだ」
「・・・・・・・・・」
 ライダー達は何も語らない。首領の姿が次第に薄くなっているのを見守っているだけであった。
「だがな」
 しかしここで首領の声の色が変わった。
「私は死なぬ。また諸君等の前に姿を現わすだろ。そして」
 残された二つの眼がギラリ、と光った。
「今のこの姿が滅びようとも諸君等をこのまま生かして返すわけにはいかぬ。覚悟しろ!」
「ムッ!」
 その瞬間首領の全身が闇となった。そして爆発を起こした。黒い闇の爆発であった。
「諸君等も道連れにしてやる。覚悟しろ!」
「クッ、逃げろ!」
「おう!」
 その瞬間基地は爆発に包まれた。黒い闇に包まれてバダンは完全に崩壊した。
「おやっさん、あれは」
 それを夫婦岩のところから見た滝はその黒い闇を指差して立花に言った。
「おう、わかっている」
 立花はそれを見て答えた。
「やってくれたよ、あいつ等。遂にバダンを倒したんだ」
 彼はそれを見て感慨深げにそう呟いた。
「遂にな。首領もとりあえずはこれで最後だ」
「ええ。しかし」
 志度はそれを見ながら前に出て来た。
「彼等は無事でしょうか。あの爆発の中にいては」
「それは・・・・・・」
 誰もがそれを受けて不安な顔になった。だがここで役が言った。
「大丈夫ですよ。心配いりません」
「何故ですか!?」
 皆それを受けて役に顔を向けた。
「彼等はそう簡単には死んだりしませんよ。それは貴方達が最もよく御存知の筈です」
「しかし・・・・・・」
 それはよくわかっているつもりであった。しかし今回ばかりは。彼等は不安を隠せなかった。
「嘘だと思われるなら」
「はい」
 まるで彼に誘われるようにして声をあげる。
「あれを御覧下さい、ほら」
 役は前を指差した。皆それにつられ前に顔を向ける。
「おお・・・・・・」
 皆そこを見て声を漏らした。そこに彼等がいたのだ。
「彼等は決して死にはしませんよ」
 役は微笑んでそう言った。
「この世に正義がある限り。そして」
 ライダー達はそれぞれのマシンに乗っていた。横一列に並んでこちらにやって来る。
「私達がいる限りね。ですから私達は彼等を安心して迎えればいいんですよ」
「ああ、その通りだ」
 立花はそれを受けてこう言った。
「それが一番わかっている筈なんだがな。どうしても心配になっちます」
「俺もですよ。何でかなあ、いつも帰ってくるのに」
 滝もであった。他の者も二人と同じ顔をしていた。
「それはですね」
 役はそんな彼等に対して語った。
「皆ライダーが好きだからですよ。だから心配するのです。そう、それは」
 彼は話を続ける。
「私達も心はライダーであるからでしょうね。だからこそ彼等が好きなんですよ」
 しかしそれは誰も聞いてはいなかった。彼等は皆役を置いてライダー達の下へ向かっていた。
「おやおや」
 役はそれを見て苦笑した。
「しょうがない人達ですね。人が折角話しているのに」
 だがその顔は怒ってはいなかった。
「けれどこれでいいのでしょうね。私が言うまでもない」
 怒るどころかその顔は微笑んでいた。そして彼も歩きはじめた。ライダー達のところへ。
 ライダー達は立花達の出迎えを受けていた。その顔も声も明るく、戦いに勝った男達のそれであった。


バダン最後の日    完


                                


[231] 題名:バダン最後の日1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年02月01日 (火) 23時30分

          バダン最後の日
「さて、ライダー達よ」
 サザンクロスはライダー達と対峙しつつ言った。
「来ないのか。まさかわしに臆したわけではあるまい」
「何ッ」
 これにはストロンガーやアマゾンがまず反応した。だがそれをダブルライダーが止めた。
「待て、これは挑発だ」
「しかし」
「むざむざ相手の挑発に乗る必要はない。いいな」
「クッ・・・・・・。わかりました」
 彼等は渋々ながらもそれに従った。そして矛を収めた。
「フフフ、チームワークは変わってはおらんな」
 サザンクロスはそれを見て満足そうに笑った。
「だがそれではわしに勝つことはできんぞ」
「それはどうかな」
 しかしライダー達も怯んではいなかった。
「それを今から証明してみせようか」
 そしてこう言った。サザンクロスはそれを受けてもやはり笑っていた。
「面白いことを言うな、やはり」
 その周りにいる戦闘員達が前に出て来た。
「どのみち貴様等をここで止めなくてはならん。覚悟はできているな」
「それはこちらの台詞だ」
 やはりライダー達は強気にこう返してきた。両者の間合いが詰められていく。
「行くぞ」
「来い」
 互いにそう言い合った。遂にサザンクロスとライダー達との戦いの幕が切って落とされた。
 まずは戦闘員達が前に出る。それには立花達が向かって行った。
「こいつ等はいつも通りわし等に任せろ!」
「御前達はサザンクロスをやれ!」
 そして彼等は戦闘員達の前に立ちはだかった。ライダー達はそれを受けて頷いた。
「済まない!」
「おやっさん達、頼みます!」
「おう、任せとけ」
 彼等はニヤリと笑ってこう言った。
「そのかわり、頼むぞ」
「はい」
 ライダー達はそのまま前に進む。そこにはサザンクロスが仁王立ちしていた。
「来たか、ライダー達よ」
 彼は自信に満ちた顔で悠然と立っていた。
「今こそ見せようぞ、復活したサザンクロスの力」
 そう言いながら右手の鞭を振りかざしてきた。そしてそれを動かした。
「ムン!」
 それでライダー達を撃たんとする。だが彼等はそれより前に動いていた。
「甘いっ!」
 一斉に上に跳んでそれをかわした。それぞれサザンクロスを取り囲むようにして着地する。
「囲んできたか」
 サザンクロスはそれを見渡した後でそう言った。
「さて、次はどうするつもりだ」
「それは決まっている」
 ライダー達はすぐにそう答えた。
「行くぞ!」
「これがライダーの真の力だ!」
 そして一斉に動いた。サザンクロスめがけて総攻撃を仕掛けてきたのだ。それでもサザンクロスの余裕は変わりはしなかった。
「面白い」
 彼はそう呟いた。
「こうでなくては面白くとも何ともないわ」
「まだ言うか!」
 まずはX3がパンチを仕掛けてきた。サザンクロスはそれを左手の鍵爪で受けた。
「言える、わしのこの力を以ってしたならな」
 その爪でX3に反撃を加える。X3は後ろに跳び退きそれをかわす。入れ替わりに]が来た。
「ムン!」
 ライドルでその脳天を砕かんとする。そしてそれはサザンクロスの脳天を直撃した。
「やったか!」
 ]は確かな手応えを感じ見た。だがサザンクロスは相変わらず余裕に満ちた顔で仁王立ちを続けていた。
「所詮その程度か!?」
 彼はその返礼に鞭を放って来た。]はライドルでそれを払い難を避けた。
「ならば!」
 今度はストロンガーが攻撃にかかった。拳で地面を撃つ。
「エレクトロサンダー!」
 電流が地面を伝い襲い掛かる。そしてそれはサザンクロスを撃った。
 激しい電流がその全身を包む。これは流石に効果があるかと思われた。
 しかしサザンクロスは立っていた。そして悠然とした物腰でストロンガーに対して言った。
「甘く見てもらっては困る。わしは戦闘員などとは違うぞ」
「クッ・・・・・・」
「さて、どうしたライダー達よ」
 彼は電流を打ち消すと周りに散るライダー達を見回して問うてきた。
「この程度か!?貴様等ライダーの力とはその程度ではないだろう」
 そう言って彼等を挑発にかかった。
「見せてみろ、貴様等の力を。このわしにな」
「見せろだと」
「そうだ、わしは今までの者とは違う。貴様等一人一人では相手にもならんわ」
「戯れ言を。まだ言うか」
「ほう、戯れ言か」
 サザンクロスはそれを受けてまた笑った。
「ではわしの言葉がまやかしなどではないということを見せてやろうぞ」
 彼はそう言うと両腕をクロスさせ力を溜めた。そして全身の穴という穴に黒い光を宿らせた。
「まさか・・・・・・」
 それを見たライダー達は思わず呟いた。
「そう、そのまさかだ」
 彼はそれに答えた。するとその黒い光が一斉に放たれた。
「ウワッ!」
 無数の黒い光が蛇となってライダー達い襲い掛かる。それはのたうち回りながら飛び掛って来た。
「させんっ!」
 しかしライダー達はその驚異的な反射神経でそれをかわした。だが細部には無数の傷を受けてしまっていた。
「ほう、急所はかわしたか」
 サザンクロスは攻撃を終えライダー達の状況を見てこう言った。
「だがダメージは少なからず受けたようだな」
「クッ・・・・・・」
 それは否定できなかった。ライダー達は所々から血を流していた。
「まさかあのサザンクロスの力をそのまま使っているというのか」
「その通り」
 彼はニヤリと笑ってそう答えた。
「他の怪人達とは比べ物にならぬ。それはこれでわかっただろう」
「クッ、確かに」
 ライダー達は苦渋の顔でそれを認めざるを得なかった。
「だが貴様を倒すということに変わりはない」
「ほう」
 サザンクロスはそれを受けて目を細めた。
「ではどうするのだ?やってみせるがいい。そして見事わしを倒してみよ」
「言われずとも!」
「貴様を倒す!」
 ライダー達は再び動きはじめた。サザンクロスの周りを走りだす。
 サザンクロスは微動だにしなかった。ただ彼等が来るのを待っていた。
「ククク」
 笑っていた。笑いながらライダー達の動きを見ているのだ。
 鞭を振るってきた。それでライダー達を撃ちにかかる。
「トォッ!」
 ライダー達はそれをかわす。しかしダメージのせいか動きが鈍かった。
「どうした、動きが遅くなっているぞ」
 それはサザンクロスにもわかっていた。そしてそれを受けて挑発するように言う。
「おのれ・・・・・・」
 それを受けて憤るライダーもいる。X3やストロンガーだ。だがそれを他のライダー達が止める。これはダブルライダーであった。
「焦るな、焦ったら奴の思う壺だ」
「しかし・・・・・・」
「わかったるだろう、いいな」
「クッ、わかりました」
 彼等はそして落ち着きを取り戻した。そして再び動きはじめた。
「それがチームワークというものか」
 サザンクロスはライダー達のやりとりを見て興味深げにそう言った。
「中々面白いものだ。だがな」
 その声も目もやはり笑っていた。
「それだけでは勝てはせぬ。わかっているな」
「それはどうかな」
 だが一号がそれに反論した。
「何!?」
「仮面ライダーの本当の力は全員が揃った時に発揮されるということだ」
 今度は二号がそう言った。
「そう、そうやって俺達は今まで死地を乗り越えてきた」
 X3はサザンクロスから目を離さない。
「そして貴様等に勝ってきたのを忘れたとは言わせない」
 ライダーマンがそれに続く。
「そして今も」
 ]がサザンクロスを見据えながら言う。
「勝つ!」
 アマゾンが吠えた。
「この命ある限り」
 ストロンガーの身体に超電子の力がみなぎっている。
「貴様等の野望が適うことはない!」
 スカイライダーも駆けていた。
「今からそれを証明してやる!」
 スーパー1の銀の拳が光った。
「行くぞサザンクロス!」
 ゼクロスがその正面にやって来る。
「もう一度貴様を倒す!」
 ライダー達が跳んだ。回転しながら彼等は光となる。そして空中で十の光が交差した。
「何ッ!」
 サザンクロスはその光に目が眩んだ。だがすぐに態勢を立て直し身体中から黒い光を発する。
 しかしそれは全く通用しなかった。光と化したライダー達はその黒い光をことごとく弾き返してしまったのだ。
「喰らえ・・・・・・」
 ライダー達の声が木霊する。
「ライダァーーーーーライトニングアタァーーーーーーーック!」
 一斉に体当たりを敢行する。サザンクロスに向けて一直線に突き進む。
「おのれ!」
 避けようとするが避けられない。十に光がサザンクロスを直撃した。
「グフッ!」
 今度はサザンクロスがダメージを受ける番であった。全身に激しいダメージを受け吹き飛ぶ。天に舞い上がった時全身から黒い光を放出した。だがそれは攻撃の光ではなかった。
 黒い光を放ちながら暗闇大使の姿に戻っていく。そして大地に落ちていく。
「やったか!?」
 着地し、態勢を戻したライダー達は暗闇大使を見た。大使は大きな地響きを立て落ちた。
 しかしそれでも彼は生きていた。全身に激しいダメージを負いながらも立ち上がってきた。
「おのれ・・・・・・」
 身体中から血を吹き出している。それでも生きていた。
「それが貴様等の力だというのか」
「そうだ」
 ライダー達はそれに答えた。
「貴様が侮っていた力だ。どうだ」
「クッ・・・・・・」
 彼はそれを聞いて歯噛みした。しかしそれはすぐに微笑みに変わった。
「見事なものだ。ダモンが敗れただけはある」
「ダモン・・・・・・地獄大使のことか」
「そうだ。フッ、あ奴と同じく貴様等に敗れるとはな。これも因果か」
「因果ではない、宿命だ」
「宿命!?」
 彼はライダー達に言われ目をしかめさせた。
「バダンが敗れるのは宿命だ。ならば貴様が倒されることも宿命なのだ」
「そう言うか。だがそれはどうかな」
「何!?」
「暗闇大使が滅びようとバダンは滅びぬということだ。首領がおられる限りはな」
 そして後ろを振り向いた。それから言った。
「首領、あちらで覇業を見守っております。どうか志を果たして下さい」
 そう言い終えると頭を垂れた。それからライダー達に向き直った。
「さらばだ、ライダー達よ。そしてダモン」
 彼はまた従兄弟の名を呼んだ。
「再び貴様のところへ行く。共に地獄を席巻しようぞ!」
 それが最後の言葉であった。彼は爆発の中に消えていった。
「死んだか」
 ゼクロスはその爆風を見て呟いた。
「敵ながら見事な男だった」
「ああ」
 他のライダー達もそれに同意した。
「それが敵というものだ。三影だってそうだっただろう」
「ええ」
「その敵に勝ったんだ。誇りを持て」
「わかりました」
 彼は答えた。爆発が消えるとライダー達に向き直った。
「では行きましょう、首領の下へ」
「おう」
「わかった」
 ライダー達は答えた。戦闘員達を倒し終えた立花達もだ。
「しかしわし等はこれまでだな」
 だがここで立花がこう言った。
「わし等もかなり傷を負った。悪いが待たせてもらうぞ」
「わかりました」
 心は同じといえどその身体は違う。無理はできなかった。
「夫婦岩のところで待っている。いいな」
「はい」
「じゃあ行って来い。帰ったら派手に宴会をやるからな」
「おやっさんの奢りで」
「当然だ。何でも頼め!」
「はい!」
 ライダー達は大声で答えた。そして彼等に別れの挨拶をして駆けて行った。
「頼むぞ」
 立花は彼等の背を見送って呟いた。それから他の者に対して言った。
「行こうか」
「はい」
 皆それに頷いた。そして彼等は戦士達の帰る場所に向かうのであった。

「ここだな」
「ええ」
 入口を見つけた。ゼクロスは他のライダー達の問いに頷いた。
「じゃあ行くぞ」
「おう」
 彼等は頷いた。そして入口をこじ開け中へ入った。
 内部は巨大な迷路となっていた。通路は狭く、暗かった。だがライダー達は順調にその中を進んでいった。彼等にはわかっていたのである。
 首領が何処にいるか、彼等は直感でわかっていた。そして中を進んで行った。
 遂に最深部に到達した。そこは暗闇に包まれていた。
「ここだな」
 彼等はわかっていた。ここにあの男がいると。
「その通りだ、ライダー諸君」
 それを証明するかのようにあの声が響いてきた。
「出たな!」
「フフフフフ」
 首領は笑っていた。その声はこの暗闇の中から聞こえてきた。
「よくぞここまで来た」
「戯れ言を。何処にいるのだ」
「ほう、私の姿を見たいか」
 首領はそれを聞いて楽しそうに声をあげた。
「私の姿は諸君等にはそれぞれ見せてきたが」
「馬鹿を言え。あれは全て貴様の分身だったのではないのか」
 一号がそれを受けてそう問うた。
「ショッカー、そしてゲルショッカーの時もそうだったな」
 二号はあの時の戦いを思い出していた。その時は一つ目の化け物であった。
「そして俺の前に姿を現わした時はドクロだったな」
「そういうこともあったかな」
 首領はX3の言葉を聞いてそううそぶいた。
「今となっては覚えていない話だ」
「だが貴様はその時は中にいなかったのではないのか」 
 ライダーマンはもうあの時のライダーマンではなかった。あくまで首領と戦う心ができていた。
「あのテープレコーダーか」
 首領はそれについて言った。
「あれは私の仮の姿の一つ。声は出せなかったのでな」
「何!?」
「私の分身はあの心臓だったのだ。あの死神の姿もまた私だ。だがな」
 彼は言葉を続けた。
「私は分身を操ることができるのだよ。ショッカーの時も姿もデストロンの時も姿も分身の一つ。あの死神の時はテープを通して言葉を送っていたのだ」
「そうだったのか・・・・・・」
 ライダー達はそれを聞いて長い間の謎を解いた。
「では呪博士は何だったのだ」
「あの時か」
 ]の問いにも答えてきた。
「呪博士もまた私の分身の一つだったのだ。彼はそれに全く気付いてはいなかったようだがな」
 呪博士はこうした時に備えた首領の分身であったのだ。そして首領は彼を、彼自身をコントロールしていたのだ。
「それはガランダーの時も同じだ」
「やっぱり。では十面鬼も御前が」
「その通り」
 首領はアマゾンの問いを肯定してみせた。
「あの男は面白いように私の言葉に乗ってくれたな。だが所詮はあの程度であった」
「クッ、ではアマゾンの皆は御前のせいで」
「それがどうしたというのだ?」
 首領にとっては他の者の命などどうでもよいのだ。だからこそこう言えた。
「世界制覇の邪魔になる、それだけだ」
「おのれ」
「それはブラックサタンでも同じだったな」
 ここでストロンガーが問うた。
「ご名答」
「やはりな」
「あのサタン虫は私が作り出したもの。そしてあの首領もまた私の分身であったのだ」
「では何故デルザーを怖れた!?あれもまた貴様の組織ではないか」
「私の分身はあくまで分身だということだ」
 彼はそう答えた。
「私の真意を知りはしない。分身が不要になっただけだ」
「ではデルザーがあの時の貴様の真の組織だったのか」
「そういうわけでもない」
 しかし首領はそれを否定した。


[230] 題名:戦士小話 クイーンモネラの娘 名前:真理 MAIL URL 投稿日:2005年01月09日 (日) 13時05分

宇宙を飛ぶ光玉がひとつ。光玉は、地球を目指していた。

光玉は、地球に降り立つとひとつの生命体の形になっていった。それは、植物生命体が特殊な進化を遂げたクイーンモネラによく似た姿だった。
クイーンモネラに似た姿の獣の出現に驚く人類。だが、その獣が暴れる様子もなく何かを待つような様子に、暫し顔を見合わせる。
「ダイナ様…会いに来ましたぞ」
クイーンモネラに似た姿の獣の呟きに応えるように、銀の光玉が飛ぶ。
銀の光玉は、ダイナの姿になった。
「私を呼ぶは、お前か? …クイーンモネラ?! なぜ?!」
「ダイナ様!」
ダイナの驚きに、クイーンモネラに似た姿の獣は、嬉しげに駆け寄ってきた。
「人間たちよ、下がるがいい。私はこの者と話がある」
ダイナの厳かな言葉に、人類はその場を離れていった。

人類が近寄らない場所で、ダイナはクイーンモネラに似た姿の獣と向き合う。
「…それで、私に用事があるのか?」
クイーンモネラは倒したはず…と思いながらも問いかけるダイナ。
「ダイナ様…私は過日、あなたとティガ殿に倒されたクイーンモネラの娘、プリンセス・モネでございます。
あなたにお話があって、会いに来た次第です」
「クイーンモネラの娘だと?!」
プリンセス・モネの言葉に驚いたダイナは、ティガに助けられながら協力してクイーンモネラを倒したことを思い出した。
「私どもモネラ星の民は『地球の民が目障り』という理由でこの地球を襲い、地球の民たちに多大なる迷惑をかけてしまいました。今更詫びても許してもらえぬことは承知の上で、こうしてダイナ様に会いに…。
私はモネラ星の民たちの集合体である母の遺伝子より生まれし者」
「しかし、モネラ星に戻った方がお前のためだぞ。クイーンモネラの娘にしてモネラ星の次期クイーンたるお前の責任でモネラ星をより良い惑星にすることがお前のなすべき使命のはずだ」
プリンセス・モネの言葉に、ダイナは一瞬絶句したが諭すように言った。
「ごめんなさい、私が帰るべきモネラ星はありませぬ…過日の地球襲撃の際はモネラ星は既に放棄されていたのです」
プリンセス・モネは泣きながらダイナに縋った。
「モネラ星が滅びたというのか?」
「モネラ星の民は皆攻撃性の強い精神の持ち主ばかり、目障りなものは手当たり次第に滅ぼしていきます。モネラ星ごと移動するので定まった場所を持たぬゆえ、モネラ星はあってもなくても同じこと」
ダイナは、プリンセス・モネの言葉に『そういう事情だったか』と納得した。
「もし、許してもらえるならば、ダイナ様の傍にいてもいいですか? ダイナ様のために、役に立ちとうございます」
「はぁ?!」
ダイナは、プリンセス・モネの思わぬ言葉に驚いた。だが、ダイナは頭を横に振る。
「想いは嬉しいが、私は私のなすべきことがあるゆえ、お前の傍にいることはできぬ」
「私がクイーンモネラの娘だからですか?」
ダイナの拒絶の言葉に、プリンセス・モネはダイナを見つめる。
「そのつもりで言ったのではない。この地球においても、広大なる宇宙においても、平和を脅かす存在があとを絶たぬので、その存在を鎮めるのが私をはじめとする戦士≠フ使命。その使命に本当の終止符が打たれた時、お前の傍にいてあげよう。
それより、私よりも優しく強い戦士≠ェ見守る惑星があるので、そこにお前を連れて行こう」
ダイナはプリンセス・モネを抱えて飛び立った。

宇宙の片隅にある惑星ビオトークでは、コスモスとジャスティス、そして2人が過日助けたサンドロスが雑談をしていた。ビオトークには故郷をなくした宇宙の住人がジャスティスの計らいで暮らしており、ジャスティスは時折コスモスとともにその住人たちの様子を見守っている。宇宙の住人たちは新しい惑星を探し、見つからなければビオトークに戻るという繰り返しをしている。

「この波動は、ダイナか?」
「確かにダイナだ…もうひとつ、我らの知らぬ波動もある」
ジャスティスの言葉に、コスモスも頷いた。サンドロスはキョトンとした仕種でジャスティスとコスモスを見守る。
光とともに、ダイナとプリンセス・モネが舞い降りた。
「ジャスティス、コスモス、突然の頼みですまぬが、この者をこの惑星に暫く住まわせてくれぬか?」
ダイナは、ジャスティスとコスモスにプリンセス・モネの事情を語った。
「なるほど…そのような事情ならばこのビオトークに住むことを許そう」
「この惑星なら、誰も危害を加えることはない。安心するがいい」
「あ…ありがとうございます」
ジャスティスとコスモスの心遣いに、プリンセス・モネは礼を言った。
「モネ、私はこれで帰るが、この惑星で暮らしている者たちに迷惑をかけるのはダメだぞ」
「わかりました。いずれまた、お会いできる時がありますように」
ダイナの言葉に、プリンセス・モネは頷いた。

 (完〉




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