【広告】楽天市場にて 母の日向けギフト値引きクーポン配布中

第二掲示板@うらたにんわあるど

小説等の、長い文章はこちらに投稿してください。

ホームページへ戻る

名前
Eメール
題名
内容
URL
削除キー 項目の保存

[229] 題名:決戦3 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年01月07日 (金) 22時34分

「最後の最後までずるい人です。いつもそうやって美味しいところをさらう。しかし」
「最早俺達はこれ以上は無理だ。貴様の言う通りな」
「忌々しいけれどね」
 彼等は口々にそう言った。
「後は任せたぞ、三影」
「ライダー達、そしてゼクロスの首、見事挙げよ」
「地獄でバダンの覇業を見てやる故な」
「先に待っていますよ」
「フン、こんなところで死ぬのは不本意だがな」
「また貴様に出て来られるのもそうだがな」
「だが任せた、同志よ」
「仕方ないわね」
「ゼクロスの首」
 彼等は立ち上がった。そして最後にこう言った。
「見事挙げてみよ!」
 そう言うと前から倒れ伏した。そして爆発の中に消えていった。
「安らかに眠れ」
 三影はその爆発を背で受けながらそう呟いた。それからゼクロスとライダー達に顔を向けた。
「さて、と。わかってるな」
「ああ」
 ゼクロスはそれを受けて頷いた。
「多くは言わん。行くぞ」
「来い」
 ゼクロスは身構えた。三影はそれを受けるかのようにサングラスをゆっくりと外した。
 すると黒い光が全身を覆った。その光が消えた時そこには七色に輝くゼクロスがいた。
 彼は無言で前に出た。そしてゼクロスに向かって来た。
「ウオオオオッ!」
 叫びながら拳を繰り出す。そしてそれでゼクロスの顔を潰さんとする。
 だがゼクロスはそれをかわした。そして逆に彼のその腕を掴んだ。
「甘いっ!」
 しかし虹のゼクロスはそれよりも前にその腕を引いた。そして態勢を崩したゼクロスに対して体当たりを仕掛ける。
 これでさらにバランスを崩したゼクロスにさらに攻撃を仕掛ける。畳み込む様にパンチを仕掛ける。
 ゼクロスはそれを両手をクロスさせ、そこに赤い光を纏わせて防ぐ。ライダー達は思わずそれに加勢しようとする。だがゼクロスはそれを拒んだ。
「手出しは無用です!」
「しかし・・・・・・」
 それでも彼等は今にも動かんとしていた。だがゼクロスはそれを拒む。
「こいつは俺一人でやります。だから安心して下さい」
「・・・・・・わかった」
 ライダー達もそれに頷いた。
「ではやってみろ。その男、御前一人で倒してみろ」
「はい」
 ゼクロスは他のライダー達に言葉に応えた。
「見ていて下さい、先輩達」
 彼は攻撃を受けながらその態勢を整えていた。
「これが俺の戦い方、仮面ライダーゼクロスの戦い方だ!」
 そう叫ぶと跳んだ。そしてその両手に手裏剣を出した。
「食らえっ!」
 手裏剣を投げる。それにも赤い光を宿らせている。
 虹のゼクロスはそれをナイフで弾き返した。そして自らは爆弾を取り出す。
「これならどうだ」
 そしてそれを投げる。ゼクロスはそれに対して空中で姿を消した。
「ムッ!?」
 これには虹のゼクロスだけでなく他のライダー達も思わず目を見張った。ゼクロスは何処なに消えた。
「何処に行った!?」
 虹のゼクロスは辺りを見回す。その時後ろから声がした。
「ここだ」
 その声と共に背中に彼がいた。そして虹のゼクロスの腰を掴んだ。
「ムッ!?」
 彼が気付いた時にはもう遅かった。ゼクロスは彼を頭から地面に叩きつけようとしていた。
「これでどうだっ!」
 プロレスでいうバックドロップだ。これ以上はないという程綺麗な形で決まった。そう、そのまま決まると、であった。
 虹のゼクロスの姿が消えた。そして今度はゼクロスが捜す番となった。しかし彼は焦らなかった。
「そう来るか」
 彼はあくまで冷静であった。そして辺りを見回すことなくその場にしゃがみ込んだ。
「何っ!?」
「どういうつもりだ」
 ライダー達はそれを見て思わず声をあげた。だがゼクロスはやはり冷静なままであった。
「どうするつもりだ」
 彼等はそれを見てかえって不安になった。彼等の方が不安な程であった。
 それでもゼクロスは冷静なままであった。そして落ち着いた様子で両肩から煙幕を出した。
「フフフ、そう来るか」
 虹のゼクロスの声がした。
「考えているな。そうでなくては面白くない」
 彼等はその煙の中に姿を消した。
「こちらの姿だけ見えていては不都合なのでな」
 ゼクロスはそれに対して普段と全く変わらない声でそう返した。
「さあ三影よ、どうするのだ」
 彼は煙の中で彼に問うた。
「決まっている」
「ほう」
 その声は笑っていた。
「最初からな。貴様を倒す。それ以外に何があるというのだ」
「確かにな」
 ゼクロスはその言葉に対して声で頷いた。
「ではこちらも仕掛けてやろう。貴様もそれが望みであろう」
「・・・・・・・・・」38
 しかしゼクロスはそれには答えなかった。そのかわりに攻撃が放たれた。
「ムッ!」
 虹のゼクロスの声がした。何かが弾かれる音がした。
「この中で手裏剣を放ってくるか。しかも俺の位置を掴んで」
 彼の声が再びした。
「俺の声から場所を探ったか」
「違う」
 だがゼクロスはそれに対してこう言った。
「貴様の気は目立つ。まるで抜き身の刃のようだ」
「ほお」
「それでわからない筈がない。今貴様が何をしているのか俺には手にとるようにわかる」
「そうか」
 虹のゼクロスはその言葉を聞き楽しそうに声をあげた。
「では俺がこれから何をするつもりなのかわかっているな」
「当然だ」
 ゼクロスはそれに答えた。
「来い。もうすぐ煙も消える」
「ふむ。では煙が消えてから見せよう」
 虹のゼクロスはあくまで楽しむ声であった。そして煙が消えた。
 ゼクロスは今までと大して変わらない場所に立っていた。そして虹のゼクロスはその正面に立っていた。だが彼は一人ではなかった。
「フフフ」
 彼は笑っていた。複数の声が聞こえてきた。
「さて、ゼクロスよ」
 五人の虹のゼクロスが彼に問うてきた。
「これもわかっていたというのかな」
「そうだ」
 だが彼の言葉は変わらなかった。
「言った筈だ、貴様の考えはわかるとな」
「フン」
 虹のゼクロスはその言葉に鼻白んでみせた。
「結構なことだ。では貴様はこれに対してどうするつもりだ。五人の俺を前にして」
「どうするかか」
「そうだ。何も考えがないとは言わせぬぞ」
 彼はそう挑発してきた。
「言っておくがこれは脅しではない」
「それはわかっている」
 だが彼は身構えるだけでこれといった動きはしてこない。まうれ無防備である。
「待っているのか」
 虹のゼクロスはそれを見てふと思った。だがそれは口には出さない。
「ゼクロス」
 彼はこの時自分が焦りはじめていることに気付かなかった。
「来ないのならこちらから行くぞ」
「勝手にすればいい」
 そしてその焦りはこの言葉で火が点いた。
「・・・・・・そうか」
 彼は冷静に返したつもりであった。だがそれが為に自分が今焦っていることにまで気がつかなかった。
「では容赦する必要はないな」
 これは自分に落ち着けと言い聞かせているようであった。
「**(確認後掲載)」
 彼は動いた。そしてゼクロスを取り囲んだ。
 その五体のゼクロスが彼自身を取り囲む。だがそれでも彼は動くことはなかった。
 三影はさらに焦った。その無意識下の焦りを消す為には最早動くしかなかった。そして彼は動いた。
 無言のまま五体の虹のゼクロスが同時に動く。一斉にゼクロスに向かって来た。
 ゼクロスはこの時地面を見ていた。今大地には太陽がある。
 光が大地を照らす。そしてそれと共に影も映し出す。そう、影であった。
 彼は影を見ていたのだ。その五つの虹のゼクロスの影を見ていた。本来ならその影は五つの筈である。
 だがそこにある影は一つであった。そう、一つしかなかったのだ。
 その影を見た。それからすぐに跳んだ。
「そこだっ!」
 天高く跳んだ。そして空中で激しく回転する。
「ムッ!」
 五体に虹のゼクロスは思わず天を見上げた。そして空中でいるゼクロスを見やった。
 ゼクロスは激しく前転しながら急降下して来る。回転しながらその目は影を見ていた。
「行くぞ・・・・・・」
 ゼクロスはその影を持つ男に向かっていた。そしてその回転をさらに速めた。
「ゼクロス回転キィーーーーーーック!」
 全身に赤い光を宿らせた。そして蹴りを放った。
 その蹴りが影を持つ虹のゼクロスを撃った。足が胸にめり込む。
「グググ・・・・・・」
 それが本体であった。影を持つ者が撃たれると他の虹のゼクロスは全て消え去った。
 足はそのままめり込んでいく。だが虹のゼクロスはその足を掴んだ。
「舐めるな・・・・・・」
 彼は言った。
「この三影英介を舐めるなよ!」
 そしてこう叫んだ。渾身の力を込めてゼクロスの足を抜こうとする。
「何ッ!」
 これにはゼクロスだけでなく他のライダー達も驚かずにいられなかった。虹のゼクロスはそのまま足を引き抜いた。
 その足を掴んだまま振り回す。そして後ろに大きく投げた。
「ウオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーッ!」
 投げた。だがやはりダメージが大き過ぎた。その力は全力ではなくゼクロスは何なく受け身をとり着地することができた。膝を折り衝撃を殺す。
 顔を上げ虹のゼクロスを見る。彼はまだ立っていた。
「さて」
 胸には激しい傷跡があった。それでも彼は崩れることなく立っていた。
「まずは見事だと褒めておくか。あの技を破るとはな」
「見事か」
「そうだ。何故俺の実体がわかったのは知りたいのだが」
「影だ」
 ゼクロスはここでこう答えた。
「影」
「そうだ。俺は貴様の姿を見ずに影を見ていたのだ。太陽に映る貴様の影をな」
「影があるのが俺の実体だとわかっていたな」
「分身は俺も使う。それを忘れていたな」
「フッ、確かに」
 虹のゼクロスはそれを聞いて笑った。だがそれは澄んだ笑みであった。
「どうやら俺は所詮貴様のコピーに過ぎなかったようだな。少なくともこのゼクロスの身体は」
 ここで彼の変身が解けた。そして三影の姿に戻った。
「誤ったか。タイガーロイドならば。いや」
 しかしここで言葉を変えた。
「以前はそれでも負けた。結局俺は貴様に勝てない運命だったということだな」
 変身を解いた三影の胸はやはり大きな傷を受けていた。そこから血がとめどなく流れている。だが彼はその傷を押さえようともしなかった。
「村雨、いやゼクロス」
 彼はここで言った。
「どうやら貴様には時を司る者もついているな。神は貴様を選んだということだ。そしてライダー達をな」
「そうだ」
 彼はそれに対してこう答えた。
「だが選ばれたのではない。俺達は自分の力でそれを掴んだのだ。平和を守る為にな」
「フッ、平和か」
 三影はそれには鼻で笑った。
「貴様等のいう平和と俺の言う理想世界、どちらが正しいかはわかっている。人間とは所詮愚かな生物だからな」
「それはどうでしょうね」
 だがここで別の者の声がした。
「その声は」
「来たか」
 ゼクロスと三影はその声がした方に同時に振り向いた。ライダー達もである。
「三影英介、暫くぶりですね」
 役は彼に対してそう言いながら前に出て来た。
「どうやら貴方は全く変わってはおられないようですね」
「戯れ言を」
 しかし三影は役に対しても臆することがなかった。すぐにそう言い返した。
「俺は貴様のことはわかっている。そしてその考えもな」
「そうですか」
 役も臆してはいなかった。それをさらりと受けた。
「それは何よりです。それにしても貴方は愚かな方です」
「?何故俺が愚かなのだ」
「御自身では気付いておられないようですが貴方は所詮御自身の選民思想や権力欲を理論武装しているだけなのです。人を一方的に悪と決め付けることによってね」
「俺が?馬鹿を言え。俺はそんな考えは持ってはいない」
「いえ、それを気付いておられないだけです」
 役の言葉は口調こそ穏やかであったがその中身は辛辣なものが含まれていた。そして彼はそれを緩めることがなかった。
「だからこそ貴方は愚かなのです」
「俺を面と向かって愚かと言うとはな。見上げたものだ」
 三影は役を睨み据えていた。
「だがその罪はあがらう覚悟はできているのだろうな」
「罪・・・・・・。それも貴方は考えておられますね。人はその存在自体が罪なのだと」
「そうだ。何か間違いがあるか!?」
「確かに人には罪があります。そしてそれは生きている限り重ねられていくものです」
「そうした汚らわしい人間共を抹殺することこそ我がバダンの宿願の一つだ」
「しかしそれは人の一面だけを見ているに過ぎません」
 役はそう反論した。
「それは何故か。自分だけを高みに立って他者を見下したいからです」
 含まれている辛辣なものがさらに強くなった。
「そしてバダンに選ばれ、粛清する立場にあることを感謝する。それ等が選民思想、そして権力欲でなくて何と言うのですか。貴方はそうやってでしか自分を立たせることができない弱い者なのです」
「今度は弱いというか」
「ええ。少なくともあの方達よりは」
 役はここでライダー達に顔を向けた。
「御覧なさい」
 そこには立花達がやって来ていた。
「おい、無事だったか!」
「心配したぞ!」
 滝もいた。博士達もがんがんじいも。竜もチョロもがんがんじいもモグラ獣人もいた。皆無事であったのだ。
「おやっさん」
「無事だったんですね」
 彼等はそれぞれ細かい傷を少なからず受けていた。頭から血を流している者もいる。この戦いの激しさを何よりも物語るものであった。
 それでも彼等はその傷を置きライダー達の方にやって来た。そして彼等を気遣うのであった。
「皆無事だったんだな。よくやった」
「勝ったんですな、みなはん」
 そして温かい声をかける。その目は誰よりも優しいものであった。
「あの目を見なさい」
 役は三影に対して言った。
「あれが人間の本当の力です。人にはああした一面もあるのです」
「あれの何処が力だ」
 それでも三影は頑なにそれを見ようとはしなかった。
「甘い、単なる馴れ合いだろうが。あんなものが力だとは断じて認めん」
「貴方はそう考えるでしょうね。そしてそれを拒む」
「フン」
 彼は首を逸らした。
「だからこそ敗れたのです。それを最後まで理解されないのですね」
「敗れたのは俺の力が足りなかっただけだ。他に何がある」
「その力、よく考えられればおわかり頂けたのですがね」
「そうして昔から貴様は人に干渉してきたのだな」
「干渉?とんでもない」
 役はそれを口の端だけで笑い飛ばした。
「私は守護者なのですよ。人の世のね。それだけです」
「だからこそゼクロスに協力したのだな」
「ええ。そういうことです」
 役はゼクロスに顔を向けた。
「そういうことだったのですよ。先程のお話は」
「そうだったのですか」
 ゼクロスはここに来る前のことを思い出していた。その時役は彼にあるものを渡していたのだ。それは『王の石』と呼ばれる光輝く石であった。
 その石をベルトに埋め込むと傷が忽ち回復した。そしてそこで役は彼に自分の正体を話したのだ。その石のことと共に。
「あの石は神の石なのです。私があの方々に授けられたものです」
「賢者の石だけではなく、か」
 三影はそれを聞いてそう言った。
「貴様はもう一つ石を持っていたということだな」
「ええ、そういうことです」
 役はその言葉に対してそう返した。
「全てはこの世を守る為にです」
「そして貴様はライダー達に協力したのか。かってあの男を排除した時のように」
「あのコルシカ生まれの小柄な皇帝ですね」
「あの男をあれ以上置いておいては危険だからか。そしてナチスもソ連も」
「そうですね。そういうこともありました」
「バダンもか。フン、そうして人間共を守ってどうするつもりだ。愚か者共をのさばらせておくつもりか」
「少なくとも貴方達よりは愚かではありませんよ。先程も申し上げたように」
「三影」
 ここでゼクロスが口を開いた。
「何だ」
 三影はそれを受けて彼に顔を向けた。
「貴様はもうわかっている筈だ、自分が敗れたことに」
「フン、貴様にか」
「いや、違う」
 ゼクロスはそれに対して首を横に振った。
「信念においてだ。貴様は間違っていたのだ」
「間違っていた!?俺がか」
「そうだ。何故それを認めようとしない。それは貴様が弱いからではないのか」
「弱いだと。また戯れ言を」
「戯れ言ではないと言っているのだ」
 しかしゼクロスの言葉はやはり辛辣なものであった。
「それは貴様自身が最もよくわかっている筈だが」
「フン」
 やはり彼はそれを認めようとはしなかった。首を横に振りながら否定した。
「そうして俺を馬鹿にしたいようだな」
「違う、それもわからないのか」
「わかる!?何をだ」
 それでも彼は変わらなかった。
「バダンの真理がわからぬ貴様等に何がわかるというのだ」
 そして逆にそう問うてきた。ゼクロスはそれに対しても冷静に返した。
「あくまでバダンこそが正しいというのか」
「無論」
 そう言い切った。
「それ以外にどう言えというのだ」
「そうか」
 ゼクロスはそれを聞いてそれ以上言うのを止めた。
「ではそれに殉じるのだな」
「当然だ。だがな、ゼクロスよ」
「何だ」
「最後に勝つのはバダンだ。それだけは覚えておけ。貴様等は必ず敗れるということをな」
「・・・・・・・・・」
 ゼクロスはそれには答えなかった。三影はそれを見届けてニヤリと笑った。
「わかったか。では俺はそろそろ地獄へ行かせてもらおう。閻魔が心待ちにしているだろうからな」
「地獄か」
「そうだ、俺の行く道は・・・・・・そこしかなかろう」
 その言葉の意味がゼクロスにはよくわからなかった。だが役にはわかったようだ。
「さらばだ。ゼクロス」
「何だ」
 彼は最後に三影に顔を向けた。
「貴様には勝ちたかったがな。しかしいい勝負をさせてもらった。悔いはない」
「そうか」
 ゼクロスはそれを聞いて首を縦に振った。
「では俺からは何も言うことはない。それではな」
「ああ。地獄で待っているぞ」
「わかった」
 ゼクロスは頷いた。三影はそれを見て笑った。そして最後にこう言った。
「バダンに勝利を!」
 その声と共に爆発して消えた。後には何も残りはしなかった。
 こうして三影英介は死んだ。跡には何も残りはしなかった。
「三影・・・・・・」
 ゼクロスは爆風を受け、それが消えたのを見届けて呟いた。何時になく力のない、それでいて澄んだ声であった。
「遂に倒しましたね」
「はい」
 彼は役の言葉に応えた。
「手強い奴でした。そして切れる男でした」
「ええ」
「そして誰よりも俺を知っていた。恐ろしい男でしたよ」
「そうですか。今の気持ちはどうですか」
「何とも言えませんね」
 彼はそれに対してこう言った。
「虚しさがあると言えばあります」
「そうでしょうね。しかし」
 だが役はここで言葉を変えてきた。そしてこう言った。
「まだ終わりではありませんよ」
「はい」
 そしてゼクロス自身もそれに頷いた。
「行きましょう。まだ暗闇大使、そして首領が残っています。彼等がある限りバダンは滅びはしません」
「おお、その通りだ」
 ここで今まで戦いを見守っていたライダー達が二人のもとにやって来た。立花達もだ。
「まだ首領がいる。首領がいる限りバダンは滅びはしない」
「そうだ、遂に奴を追い詰めたんだ。一気に行くぞ」
「はい」
 ゼクロスはそれに頷いた。
「では行きましょう、奴等の心臓部へ。そしてあの首領を倒しましょう」
「よし」
 ライダー達は声を合わせる。そこに立花達がやって来た。
「行くか」
「おやっさん」
 立花達も行くつもりであった。
「心配するな、足手まといにはならないからな」
「ええ、歓迎しますよ」
 そしてライダー達もそれを笑顔で迎えた。
「おやっさん達の力があれば百人力ですよ」
「そうか、ならいいんだ」
 これには立花も滝もその他の者も皆笑った。
「これが最後だからな。最後まで御前達の力になりたいんだ」
「任せてくれ、これでもフォロー位はできるからな」
「はい」
 彼等はここで皆手を合わせた。ライダー達だけでなく立花達も彼等もその心はライダーであった。
「行くぞ」
 立花が一番上に手を置いた。そしてこう掛け声をかけた。
「はい!」
 そして皆がそれに応えた。これで合図が終わった。
 彼等は最後の戦場に向かおうと足を踏み出した。その前に何者かが姿を現わした。
「ムッ」
 ライダー達はそれを見てすぐに身構えた。それはまるでファラオの様なシルエットの持ち主であった。
「フフフフフ」
 それは暗闇大使であった。彼はライダー達の前で不敵に笑った。
「よくぞゼクロス達を倒した。見事であったと褒めておこう」
 彼はライダー達を見据えながらこう言った。
「だが戦いはまだ終わりではない。それはわかっているだろう、ライダー諸君よ」
「無論だ」
 ゼクロスがそれに答えた。
「貴様を、そして首領を倒さないことには戦いは終わらない。それはわかっているつもりだ」
「ならばよい。ではわしがここに来たわけはわかるな」
「ああ」
 ライダー達はそれに答えながら左右に散った。大使の周りを戦闘員達が取り囲む。
「俺達を倒す為。それ以外に何があるというのだ」
「わかっていればいい」
 彼はそれを受けてこう言った。
「これでわしも本当の力を見せることができる」
「本当の力!?まさかそれは」
「フフフ、そうだ。あれだ」
 暗闇大使はゼクロスの言葉を受けて再び不敵に笑った。
「松阪でのサザンクロスはわし自身であった」
「やはりな」
 ゼクロスは今の会話からそれを感じとっていた。
「そしてそれは一度は貴様等に敗れた。だがサザンクロスは滅んではおらぬ」
「どういうことだ」
「言っただろうサザンクロスはわし自身だと。そしてわしがいる限りサザンクロスは不滅だ。そう、わしがいる限りな」
「まさか」
「そう。今見せよう、サザンクロスの、そしてこの暗闇大使のもう一つの姿をな!」
 彼の身体が黒い光に覆われた。そしてその中で姿が変わっていく。
「ムムム・・・・・・」
 誰もがその変身に目を見張った。光が消えた時そこには赤い邪神がいた。
「フフフフフ」
 暗闇大使は笑っていた。顔と上半身はフジツボだらけであり、その他の部分は暗闇大使の姿のままであった。彼はその姿のままライダー達を見据えた。
「それが貴様の正体だというのか」
「その通り」
 暗闇大使はその禍々しい形の口でそう答えた。
「サザンクロス、わしの正体だ」
「やはりな。貴様もまた改造人間だったということか」
「そうだ。これはわかっていたことだろう」
「フン、当然だ」
 ライダー達はそれに答えた。
「大幹部の正体は改造人間、これはもうわかっていたことだ」
「そして貴様はあの地獄大使の従兄弟、必ずその正体は怪人だとわかっていた」
「そうか。ならば話は早い」
 彼、サザンクロスはそれを受けてニヤリと笑った。
「では来るがいい、ライダー達よ。この力見せてやろう」
「望むところだ」
 ライダー達は彼を取り囲んだ。しかしそれでもサザンクロスは怯むところがなかった。今最後の要塞攻略がはじまろうとしていた。


決戦   完


                              2004・12・26


[228] 題名:決戦2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年01月07日 (金) 22時31分

「同志達よ。準備はよろしいですか」
「無論」
「今すぐにでも」
 彼等は答えた。それを受けてヤマアラシロイドはまた笑った。
「ではお見せしましょう。我等ももう一つの姿を」
 そう言うと黒い光が彼等を包んだ。
「ムッ!」
 ライダー達はそれを見て思わず目を見張った。世界が一瞬闇に包まれたかに見えた。
 だがその光が去ると別の者達がそこに立っていた。何とゼクロスがそこにいたのだ。
「いや、違う」
 彼等はすぐにそれを見破った。
「貴様達はゼクロスではないな」
「フフフ、確かに」
 銀色のゼクロスがそれに応えた。その声はヤマアラシロイドのものであった。
「私達はゼクロスの力を移植されたもの。暗黒の力を以ってして」
「さっきの黒い光か」
「その通り」
 紫のゼクロスがストロンガーに答える。タカロイドの声であった。
「私達は暗闇大使よりこの力を授けられたのよ」
「そして同時に残っていたゼクロスの力をもとに改造手術を受けたのだ」
 バラロイドの声で紫のゼクロスが、そしてアメンバロイドの声で灰色のゼクロスが語る。
「では貴様等はゼクロスの力をそのまま持っているとでもいうのか」
「ええ」
 ]に黄色のゼクロス、ドクガロイドが返答した。
「何なら証拠を見せてやろうか」
「ここにあるぞ」
 ジゴクロイドの声で黒いゼクロスが、カメレオロイドの声で緑のゼクロスが言う。
「証拠だと」
 X3がその言葉にすぐに反応した。
「面白い、そんなものがあるのか」
 二号はここであえて挑発するようにして言った。
「では見せてあげるわ」
 白いゼクロスは女の声であった。バラロイドのものであった。
「これを見るがいい」
 橙色のゼクロスがカニロイドの声で言うとその手に手裏剣が現われた。
「たっぷりとな」
 青いゼクロスもそれに続き爆弾を取り出す。トカゲロイドの声で語りながら。
「受けてみる?」
 茶色のゼクロスもそれに続く。女の声、そうカマキロイドの声で。
「容赦はせぬぞ」
 最後に金色のゼクロスが言った。クモロイドであった。
「望むところだ」
 ライダー達はそれに臆することなく返した。その目の光は強く、輝いていた。
「ゼクロスと同じ姿か、面白い」
「もっともそれで能力まで同じとは限らないがな」
「何!?」
 これには全てのゼクロス達が声の色を変えた。
「それはどういう意味だ」
「そのままだ」
 これにスーパー1が言葉を返した。
「ゼクロスは村雨良が変身してはじめてゼクロスとなる、そう言ったのだ」
「では我々はゼクロスではないというのか」
「そう表現する以外にどう言えばいいのか俺にはわからんな」
 ]もここでそう言った。
「姿は同じでも中身が違えばその力も違うということだ」
「では我々がゼクロスより劣っているとでも言うのか」
「聞こえなかったようだな」
 ストロンガーが言った。
「その通りだ。少なくとも貴様等は心でゼクロスに負けている」
「戯れ言を」
 それを聞いたゼクロス達の声が怒りに満ちていく。
「裏切り者と我々を比べるだけでも許せぬというのに劣っているとさえ言うのだ」
「フン」
 X3がその声を鼻で笑った。
「貴様等は他のどの者にもそれは負けている。何故なら貴様等の心は腐り果てているからだ」
「それ以上言うと容赦はせぬぞ」
「容赦!?何を今更」
 スーパー1も続いた。
「これから戦うつもりなのだろう。そしてその心は貴様等の身体から発せられるドス黒い気ですぐにわかることだ」
「そう、御前達の気も心も醜い。アマゾンそれ感じる」
「醜いだと」
「そう。御前達の気邪念そのもの。権力や力のことだけ考えている。自分達のことしか考えていない」
「クッ・・・・・・」
 これには反論できなかった。
「アマゾンの言う通りだな。これは何時になっても変わらん」
 ライダーマンの言葉は彼がかってデストロンにいたことがある為重みがあった。
「自分達の欲望の為なら例えどのようなことでもする。それが貴様等だ」
「まだ言うか」
「ああ、何度でも言ってやる」
 スカイライダーまで言った。
「貴様等のその心がこの世を脅かす限りな。そして我々は何度でも戦う」
「おのれ」
「どうした、それで終わりか」
 二号が彼等を挑発するようにして言う。
「それならばそろそろはじめさせてもらおうか」
「こちらは何時でもいいぞ」
 それに合わせて一号も口を開いた。
「さあ来い。ここで貴様等を完全に討ち滅ぼしてやる」
「それはこちらの台詞」
 しかしそれでもゼクロス達は気負ってはいなかった。それどころか怒りによりその力を増大させているようにさえ見えた。
「今の言葉、地獄で後悔させてやろう」
「地獄か」
 だがライダー達はその言葉を冷笑した。
「地獄とは貴様等の為にこそあるものだ。それを教えてやろう」
「来い!」
「面白い、ではどちらが地獄に相応しいか確かめようぞ!」
「ライダー達よ、覚悟しろ!」
 ゼクロス達は一斉に跳んだ。そして空中で回転する。
「来るぞ」
「ああ」
 ライダー達は互いに背中を合わせ円陣を組んでいる。
「覚悟はいいな」
「無論」
 怖れている者は誰もいなかった。その彼等の周りにゼクロス達が同時に着地した。
「行くか」
「うむ!」
 そしてライダー達は一斉に散った。そしてそれぞれの敵へ向かって言った。
 ゼクロス達もそれを迎え撃つ。遂に最後の戦いがはじまった。
 拳が唸り脚が舞う。ライダー達もゼクロス達もその力と技の全てを出して戦いを開始した。
 戦いは五分と五分であった。だが数にやや勝るゼクロス達は特定の相手を持たない者を後方に置き他の者を援護させた。それで戦いを少しでも有利にしようとしていた。
「そう来るか」
 ライダー達はその後方からの攻撃を受けて舌打ちした。
「まずいな、今はあいつ等にまで手が回らない」
「フフフ」
 それがバダンの狙いであった。そしてそれにより互角の状況となっているこの戦いを少しでも有利にしようとしていた。
 だがライダー達には考えている余裕もなかった。どちらにしろこの戦いは負けるわけにはいかなかったからだ。
「やるしかない、どの様な状況でも」
 その通りであった。どれ程劣勢であっても勝たなければならなかったのだ。
 それでも数は如何ともし難い。彼等はそれにより互角の状況に追い込まれて、それを覆す余力もなかった。
「クッ・・・・・・」
 思わず歯噛みする。しかし焦ってはならない。彼等はそのジレンマに苦しささえ感じていた。その時であった。
「先輩達、遅れてすいません!」
 その声と共に何者かが戦場に入って来た。それは赤い風であった。
「まさかっ!」
 ゼクロス達はその風を見て思わず叫んだ。そこにいるのは彼等自身であった。
「ゼクロス、来たのか!」86
 ライダー達は彼の姿を認めてやはり叫んだ。
「ええ、何とか間に合いましたね」
「しかし大丈夫なのか」
「大丈夫!?何がですか!?」
 他のライダー達の心配そうな言葉にもしれっとしたものであった。
「御前はあの戦いでのダメージが」
「それなら大丈夫ですよ」
 彼はそれに対して笑ってそう答えた。
「役さんのおかげでね」
「役君の!?それは一体」
「フフフ、それは秘密ですよ」
 だが彼はそれには笑って答えようとしなかった。
「それよりもこの連中を何とかしましょう。ここを突破しないと首領のところへは行けませんよ」
「あ、ああそうだったな」
 彼等はその言葉で戦場に心を戻した。
「では行くぞ。あらためてな。御前は後方に回っている奴等を頼む」
「はい」
「二体だがいけるな。攻撃を止めるだけでいいからな」
 そこにいるのはクモロイドとヤマアラシロイドが変身した金のゼクロスと銀のゼクロスであった。
「大丈夫ですよ。それどころか」
「それどころか!?」
「あの二体も俺が倒しますよ」
 彼は不敵な声でそう答えた。
「馬鹿な。無茶をするな」
「心配御無用、無茶がライダーでしょう」
「しかし」
 それでも彼等はゼクロスのことが心配でならなかった。それだけ彼のダメージは深刻な筈であるからだ。
「では行きましょう」
「いいのか」
「勿論ですよ。その為にここまで来たんですから」
「そうか。ならわかった」
 もう彼等はそれを止めることはしなかった。
「では行くがいい。そして勝て!」
「はい!」
 ゼクロスは頷くと自分自身に向かって言った。金色と銀色の姿をした二人の自分に。
「フン」
 金のゼクロスはそれを見て鼻で笑った。
「聞いたか、同志よ」
 そして隣にいる銀のゼクロスに対して言葉をかけた。
「ええ」
 銀のゼクロスはそれに頷いた。
「どうやらきついお仕置きが必要ですね」
「うむ」
 彼はそれに頷いた。そして身体を屈めた。
「どちらが先に行く?」
「それは決まっています」
 彼はその問いに余裕を以って答えた。
「早い者勝ちです。それ以外にありますか?」
「フフフ、バダンの掟だな」
「その通り。獲物はより強い者が手に入れる、それだけです」
「ならばそうしよう。私としても異存はない」
「そうこなくては。では行きますか」
「うむ」
 彼等はそれぞれ跳んだ。そしてゼクロスに向かって来た。
「来たな」
 ゼクロスはそれを見ながら呟いた。
「こちらとて望むところ」
 そしてナイフを取り出す。敵も取り出してきた。
「来い!必ず勝ってやる!」
 そう叫ぶと切り込んだ。忽ち激しい戦いがはじまった。
 ライダー達はそれぞれのゼクロスと戦いを続けていた。一号は青のゼクロスと、二号は黒のゼクロスと、X3は白のゼクロスと、ライダーマンは緑のゼクロスと、]は橙のゼクロスと、アマゾンは茶のゼクロスと、ストロンガーは黄のゼクロスと、スカイライダーは紫のゼクロスと、そしてスーパー1は灰のゼクロスとそれぞれ戦っていた。どれも互いに譲らぬ状況であった。
 だが次第に形勢が明らかになってきた。ライダー達がゼクロス達を押してきていたのだ。
「ぬうう」
 ゼクロス達は自分達が劣勢になってきたのに対して次第に焦りを覚えていた。だがそれはライダー達にとっては有り難い
ことであった。
 そこに隙ができる。そしてライダー達にそれを見せることは死を意味していた。
「ムッ」
「今だ!」
 ライダー達はすぐに動いた。ゼクロス達に攻撃を仕掛け、態勢を崩させると一斉に跳んだ。
「トォッ!」
 空中で一回転する。そして止めの攻撃に移った。
「食らえ・・・・・・」
 十の光が天に輝く。そしてそこから蹴りに入った。
「ライダァーーーーー月面キィーーーーーーック!」
「ライダァーーーーー卍キィーーーーーーーック!」
「X3スクリューーーーーキィーーーーーーック!」
「ライダーーーーマンキィーーーーーーーーック!」
「]必殺キィーーーーーーーック!」
「アマゾンスピンキィーーーーーーック!
「超電子ドリルキィーーーーーーーーック!」
「ライダァーーーーーームーンサルトキィーーーーーーーック!」
「スーーパーーーライダァーーーーーー閃光キィーーーーーーーーック!」
 そしてゼクロスも跳んでいた。全身に赤い光を纏わせそこから回転する。そこから蹴りを放つ。
「ゼクロスダブルキィーーーーーーッ!」
 まずは金のゼクロスに対して蹴りを放つ。その反動を利用して後ろに跳びそこからまた蹴りを放つ。今度は銀のゼクロスに対してだ。
 銀のゼクロスも撃った。それからようやく着地した。
 ゼクロス達は弾き飛ばされた。そして大きな音を立て大地に崩れる。
「グオオオオオ・・・・・・」
 呻きながら起き上がる。起き上がりながら徐々に人間の姿に戻っていく。
「ま、まだまだ・・・・・・」
 それでもなお戦いを続けようとする。しかしそれができないことは彼等自身が最もよくわかっていた。
「止めておけ」
 ここで何者かが姿を現わした。
「最早貴様等にこれ以上の戦いは無理だ。安らかに死ぬがいい」
 彼は同志達に前に立ってそう言った。
「三影」
 彼等はその男を見上げてその名を呼んだ。
「後はこの俺に任せるのだ。いいな」
「しかし」
「同志達よ」
 だが彼はゼクロス達に対して強い声を返した。
「貴様等はよくやった。後は俺に任せるのだ。ゼクロス、そしてライダー達を倒すことをな」
「フ・・・・・・」
 彼等を代表するようにヤマアラシロイドが笑った。


[227] 題名:決戦1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年01月07日 (金) 22時29分

              決戦
「サザンクロスが敗れたそうだな」
「ハッ」
 暗黒の部屋の中で怪人達が人としての姿で跪いていた。そして前に蠢く何かに対して答えていた。
「ゼクロスの特攻を受けまして」
 その中央にいるヤマアラシロイドがそう報告した。
「そうか。そして暗闇大使はどうしておるか」
「只今手術を受けられております。どうやらかなりのダメージであったようで」
「そうだろうな。本来ならば死んでもおかしくはないのだからな。サザンクロスはあの男の分身なのだからな」
「そうだったのですか」
 これにはヤマアラシロイド以外の怪人達も驚いた顔をした。
「そうだ。サザンクロスは暗闇大使の脳波による完全なコントロールを受けていた。その動きもあの男の身体と連動していたのだ」
 首領はそれに対しそう答えた。
「感覚も直結していた。だからダメージもそのまま受けるのだ」
「そうだったのですか。だからダメージを」
「そうだ。そしてその傷は如何程か」
「思わしくありませぬ。ですが御命に別状はないかと。手術の後ですぐ復帰できるものと思われます」
「それは何よりだ」
 首領はそれを聞いて安心したような声を出した。
「やはりライダー達との戦いにおいてはあの男の力が必要だからな」
「ハッ」
 皆その言葉に対して頭を垂れた。
「そしてゼクロスは今どうしているか」
 彼はそこでゼクロスについて尋ねてきた。
「あの男がそう簡単に死んだとは思えぬのだが」
「その通りです」
 ヤマアラシロイドがそう答えた。
「重傷を負いましたが生きているようです。あの特攻でも死ななかったようです」
「そうであろうな。ライダーはそう簡単に死んだりはせぬ。だからこそ油断してはならんのだ」
「ハッ」
「だがそうそう動けはしまい。かあんりのダメージを受けているのは事実であろうからな」
「仰せの通りでございます」
 ヤマアラシロイドはそう返した。
「暫くは休ませておきたいが。そうも言っていられぬ状況だ。回復を急がせよ」
「わかりました。科学班にはそう厳命しておきます」
「頼むぞ。そして」
 首領はここで言葉をかける相手を変えた。
「タイガーロイドよ」
「ハッ」
 ヤマアラシロイドの横に控えていた三影がそれに応える。
「・・・・・・・・・」
 ヤマアラシロイドは横目でそれを見ていた。心中何か思うところがあったようだがそれは一切出さない。
「ここの守りは万全であろうな」
「無論です」
 彼はそれに答えた。
「既に各所に戦闘員達を配しております。そしてその連携も整えました」
「そうか、ならば良い」
 首領はそれを聞いて満足そうに言った。
「やはり貴様にここを任せたのは正解だったようだな」
「有り難き幸せ」
 褒め言葉を受けてそう答えた。
「何時でもライダー達を迎え撃つ準備はできております」
「今すぐにでもか」
 首領は問うた。
「今すぐにでも」
 三影はすぐに返した。迷いはなかった。
「よし。全ては整ったということだ」
 そして首領は他の怪人達にも声をかけた。
「バダンの誇る戦士達よ」
「ハッ」
 彼等はそれを受けて跪いたまま姿勢を正した。
「行くがいい。最後の戦いの時が来たのだ」
「ライダー達との」
「そうだ。為すべきことはわかっているな」
「無論」
 そしてそれがわからぬ筈もなかった。
「ではよい。さあ、行け。そしてライダー達を倒してくるがいい」
「わかりました」
 彼等は一斉に席を立った。
「ではこれで」
「うむ」
 首領は鷹揚に答えた。
 怪人達は姿を消した。そして後には首領の気配だけが残っていた。
 しかしそれも消えた。何も残りはしなかった。

 その頃ライダー達も出撃しようとしていた。
「頼みます」
 村雨は他のライダー達や立花達に対して見送りの言葉を述べていた。
「俺も行けたらよかったんですが」
「無理はするな」
 彼に対して伊藤博士が言った。
「君はあのサザンクロスを倒した。それだけで充分だ」
「そうでしょうか」
「ああ。だから今度は我々に任せてくれ。いいな」
「・・・・・・はい」
 見れば村雨は松葉杖をついている。その右足にはギプスをしている。
 左手にも包帯を巻いている。頭にもだ。それが戦いの結果であることは言うまでもない。
「心配するな」
 本郷も言った。
「俺達は負けはしない。絶対にな」
「そうですか」
「何時だってそうだった。そして今度もな。だから御前は心配しなくていい」
「わかりました」
 彼はそれに頷くしかなかった。
「では健闘を祈ります。吉報を待っていますよ」
「おお」
「任せとけ」
 ライダー達はそれを受けてそれぞれ頷いた。そしてエンジンに足をかけた。
「ではな」
 ライダー達は発進した。爆音が轟きはじめ発進した。
 それに立花達の乗る車が続く。そして彼等は戦場に向かって姿を消した。
「行きましたね」
 村雨の横にいる役がそれを見て呟いた。
「はい」
 村雨はそれに応えた。
「こんな身体じゃなかったら俺も行けたのに」
「行きたいですか」
 役はここで彼にこう尋ねてきた。
「勿論ですよ」
 彼はここで本音を返した。
「俺だってライダーですから。わかるでしょう」
「ええ」
 役はその言葉に対して頷いた。
「役さん」
 村雨の声は少し強いものになった。
「役さんはカナダでの戦いの時のことを覚えていますか」
「トロントでの戦いでしたね。勿論」
 役はそう答えた。
「あの時俺に言ってくれましたね。ライダーだって」
「はい」
 忘れる筈もなかった。彼はあの時本心から村雨を認めたのだから。
「ではわかってくれている筈です。今の俺の考えが」
「わかっていますよ」
 役は答えた。
「行きたいのでしょう、戦いに。ほかのライダーや立花さん達と共に」
「ええ」
「そしてバダンを倒したい。世界の平和を取り戻す為に」
「そうです、勿論です。怪我なんか関係ないですよ」
「それだけの怪我を負っていてもですか」
「ライダーはどれだけ傷ついても戦ってきた。そして勝ってきた。違いますか」
「その通りです」
「先輩達だってそうだった。そして俺も」
 村雨の顔はさらに苦渋に満ちたものになっていった。役はその顔を黙って見ていた。
「村雨さん」
 そして彼の名を呼んだ。
「はい」
 村雨はそれを受けて俯きかけていた顔を上げた。
「今のままではライダー達は敗れます。バダンの力はあまりに強大です」
「ではやはり」
「はい、貴方の力が必要です。しかし今の状態の貴方だと戦力にはなりません」
「ではどうすれば」
 彼は役の言葉に戸惑った。
「一つだけ方法があります。しかしそれは」
「それは・・・・・・!?」
 役の言葉が止まったのを受けて問うた。
「可能性は極めて薄いものです。そして失敗すれば貴方の命はありません」
 彼は村雨の心を試すようにして語り掛けてきた。
「それでもいいですか。命をかけても」
「はい」
 迷うことはなかった。村雨は即答した。
「言いましたよね、俺はライダーだと」
「はい」
「ライダーになったからには命をかけます。可能性が僅かでもあればそれにかけます。それがライダーなのですから」
「その言葉、偽りはありませんね」
「ライダーの言葉に嘘はありません」
 彼は強い声でそう返した。
「わかりました」
 役はその言葉を受け取った。そして頷いた。
「では行きますか」
「はい」
 二人は何処かへ向かった。そしてその場から立ち去ったのであった。

 ライダー達は伊勢に入った。それはバダンからも確認されていた。
「遂に来ましたね」
 ヤマアラシロイドは指令室のモニターからそれを見ていた。ライダー達は今伊勢に入ったところであった。
「で、どうするつもりだ」
 隣に立つ三影が彼に問うた。
「俺は貴様が指揮を執りたいというから任せたのだが」
「はい」
 ヤマアラシロイドは何かを楽しむような顔でそれに頷いた。
「思う存分やらせてもらいますよ。貴方にはこの基地の防衛に専念してもらいます」
「そうか。美味しい場所は独り占めというわけか」
「そうなりますね」
 彼はそれを否定しなかった。
「ですがそれは貴方も同じでしょう」
「どういう意味だ」
「ゼクロスとの勝負、それだけが貴方の望みなのですから。彼が出て来ないとなれば貴方もやる気は起こらないでしょう」
「ふん」
 彼はそれに答えなかった。そのかわりにモニターに目を移した。
「その通りだがな。俺の望みはあいつを倒すことだけだ」
 モニターにはライダー達が移っていた。しかしそこに村雨の姿はなかった。
「あいつがいないと出る意味がないからな」
「わかりました」
 ヤマアラシロイドがそれを聞いて満足したように笑った。
「では彼が出て来るその時までここの守りをお願いしますよ」
「わかった」
「あと暗闇大使はどうされていますか」
 彼はここで暗闇大使のことを問うてきた。
「手術は無事終わった後回復に努めておられるようですが」
「順調らしいぞ」
 三影はそう答えた。
「暫くしたら復帰できるらしい。何の心配もいらないそうだ」
「それは何より。ゼクロスの方はそうはいかなかったようですが」
 ややシニカルにそう言った。それは三影に向けられているのは言うまでもない。
 だが三影はそれを無視した。かわりに彼に対してこう言った。
「行った方がいいのではないか」
「戦場にですか」
「そうだ。そろそろ戦闘がはじまるぞ」
「ええ、わかっていますよ」
 別のモニターには戦闘員達が映っていた。彼等はライダー達に接近しようとしていた。
「それではそろそろ行きますか」
「そうした方がいいな」
 三影はヤマアラシロイドを一瞥もすることなくそう言った。感情のこもっていない声であった。
「ここは俺に任せろ。安心して行って来い」
「わかりましたよ」
 彼はすっと笑った。そして足を出口に向けた。
「ここは頼みましたよ、三影英介。いや」
 ここで言葉を変えた。
「タイガーロイド。虹のゼクロスと御呼びした方がいいですかね」
「勝手にしろ」
 だが彼はそれに答えようとしなかった。早く出て行けと言わんばかりの態度であった。
「わかりましたよ」
 ヤマアラシロイドはまた笑った。そして出口をくぐった。
「では邪魔者は退散するとしましょう。潔くね」
「フン」
 ヤマアラシロイドは最後に顔を三影に向けると姿を消した。彼はやはりそちらに顔を向けはしなかった。
「何がヤマアラシだ」
 彼はそのかわりに吐き捨てるようにしてそう呟いた。
「狐が。精々その戦いを見せてもらうぞ」
 そして後ろにある椅子に座った。そのまま指揮を執りはじめた。

 ライダー達は伊勢に入り暫くして早速歓待を受けていた。
「来たな」
 彼等は迫り来る戦闘員達を前にして不敵に笑った。
「おっと」
 だがその前に姿を現わす男がいた。
「ここは私に任せてもらいますか」
「竜さん」
「ええ」
 竜は彼等のほうを振り向いてにんまりと笑った。
「最近運動不足でしてね。ここはやらせてもらいますよ」
「しかし」
「大丈夫ですよ。戦闘員なんて相手じゃありませんから」
 彼はそう言うと懐から拳銃を取り出した。
「これもありますからね」
「どうしてもここに」
「勿論ですよ」
 深刻な口調であるライダー達に対してあくまで明るく返した。
「だから何も心配しないで。わかりましたね」
「・・・・・・はい」
 彼等は頷くしかなかった。そして後ろを竜に任せ先に向かった。佐久間もそこに残った。
「俺もここに」
「ケン」
 風見がそれを止めようとするが彼はそれを振り払った。そしてそこに残った。
「先輩、後で何か食べましょう。それとも小樽でまた寿司でも食べますか」
「悪くないな」
 風見は微笑んでそれに応えた。
「この戦いが終わったら行くか。二人でな」
「はい」
 風見はそこで前に向き直った。そして二度と振り返りはしなかった。
 暫く進むとまた戦闘員達が姿を現わした。今度はモグラ獣人とチョロが残った。
「アマゾン、俺らここで待ってるぜ」
「モグラ」
「俺も」
「チョロも」
 四人はそれぞれ全く異なった表情で互いを見やった。
「アマゾンで何食う?また魚で一杯やろうな」
「仙台で何か食べ残したものあrましたっけ?」
 二人は深刻な素振りなぞかいまも見せることなく二人に逆に尋ねた。
「うん、そうしよう」
 アマゾンは意を決してそれに同意した。
「そうだな。きりたんぽがいいな」
「おっと、きりたんぽは秋田ですよ」
「いいじゃないか。遠くに出て食べよう。ついでにわんこそばも食べないか」
「いいですね。そうしましょう」
「じゃあな、頼んだぞ」
「ええ」
「モグラ、魚食べよう」
「ああ」
 そして二人はそこに残った。ライダー達はさらに進む。
 またしても戦闘員達が姿を現わした。今度は三人の博士達が残った。
「おっと、わし等も」
「博士達だけじゃ数が多過ぎますさかいな」
 谷とがんがんじいが立ち止まった。
「おやっさん、がんがんじい」
「浩、帰ったら何か食うか」
「大阪に行きまへんか?お好み焼きでも」
「お好み焼きか。そういえばがんがんじいの好物だったな」
「ええ。たんまりとおごりまっせ」
「そうか、じゃあ頼むよ」
「任せといて下さい。それじゃあ」
「ああ」
 そして彼等も残った。ライダー達はさらに先に進んだ。
 また戦闘員達が前から出て来た。今度ばかりは戦いは避けられそうにもなかった。
「行くぞ」
 先頭を進む本郷が他のライダー達に対して言った。
「おお」
「はい」
「わかりました」
 ライダー達はそれに頷いた。そして前に出ようとする。その時だった。
 立花と滝が前に出た。そして戦闘員達の中に飛び込んだ。
「おやっさん、滝!」
 本郷と一文字は彼等の姿を見て思わず叫んだ。
「危ないですよ、ここは俺達に任せて」
「そうですよ、無理をしちゃいけません」
 風見と神も二人に対してそう言った。だが二人はそれに対してにかっと笑ってこう答えた。
「何言ってやがる、無理しているのは御前等だってそうだろ」
「そういうことだ、俺達にも無理をさせてくれ」
「しかし・・・・・・」
「いや」
 それでも言おうとする結城に立花は顔を引き締めさせた。
「御前達にはバダンの本拠地に乗り込んでもらわなくちゃいかん。こんなところで無駄な体力を消耗してもらっちゃ困るんだ」
「そういうことだ、だからここは俺達に任せろ」
「わかりました」
 最初に答えたのは城であった。
「皆、ここはおやっさんと滝さんに任せよう」
「しかし」
 それでも他のライダー達、とりわけ結城は不安そうであったが皆頷いた。今の状況を最もよくわかっているのは他ならぬ彼等であるからだ。
「じゃあ行こう。おやっさん、滝」
 本郷が彼等に対して言った。
「あとは頼みますよ。そしてアミーゴでコーヒーを入れて下さい」
 一文字も続いた。立花はそれを聞いてにこやかな笑みを浮かべた。
「おう、任せとけ。ただ滝のコーヒーはまずいから気をつけろよ」
「ちょっとおやっさん、何言ってるんですか。俺は元々紅茶派じゃないですか」
「アメリカにいた癖にミルクティーなんて飲むな」
「そんなの人の勝手じゃないですか」
 ライダー達は二人のやりとりを暖かい目で見た。そして前を振り向くとそのまま走り出した。
「・・・・・・行って来い。そして帰って来い」
 立花は消えていく彼等の背中を見てそう呟いた。そして戦闘員達に向き直った。
「行くぞ、滝」
「はい」
 滝もであった。二人は迫り来る戦闘員達を前にして身構えた。
 そして戦いをはじめた。後ろから聞こえるライダー達の走る音はもう聞こえなくなっていた。

 ライダー達は海沿いの岩場に来た。村雨と役から聞いた情報ではここに入口があるという。
「あいつの情報が正しければ」
「そろそろ来るな」
 ライダー達は辺りを警戒しつつ前に進んでいく。そして周囲を岩に囲まれた広い場所に出た。
「ここなら戦いに持って来いだな」
「ああ」
 そう話をしていた。その時であった。
「その通り」
 岩の上に一斉に影が現われた。
「来たか!」
 ライダー達はそれを見てすぐに身構えた。
「よくぞ来られました、ライダー達よ」
 彼等の正面に立つヤマアラシロイドが慇懃な声でそう言った。
「我がバダンの招待に応じてくれて心より感謝致します」
 そして心にもないことを述べた。
「何が感謝だ」
 それはライダー達にもよくわかっていた。
「それに貴様等に呼ばれてここに来たわけではない。貴様等を倒す為に来たのだ」
「おやおや」
 ヤマアラシロイドはそれを聞きながらにこやかに笑った。
「何と余裕のない方達でしょう。折角の宴の前です。もう少し落ち着かれてはどうでしょうか」
「戯れ言を」
 だがライダー達はその言葉をはねつけた。
「貴様とてそのようなことは望んではいないだろう」
「貴様等の考えはもうわかっている。さあ来い、決着をつけてやる」
「フフフ」
 ヤマアラシロイドだけではなかった。他の者もそれを聞いて無気味に笑った。
「ここで貴方達を倒せば我がバダンの覇業は成ったも同じ」
「一人残らず倒してやろうぞ」
「それはこちらの台詞だ」
 ライダー達は臆することなくそう返した。
「行くぞ」
「これが最後の戦いだ」
 彼等はそれぞれ変身の構えに入った。腰からベルトが姿を現わした。
 そして変身に入った。九つの光が輝きそこに九人のライダー達が姿を現わした。
「変身しましたね」
 ヤマアラシロイドはそれを見てやはり笑っていた。
「では我々も変身しなくてはなりませんね」
 そして他の者達に顔を向けた。


[226] 題名:悪魔の兵器3 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年01月07日 (金) 22時26分

 ライダー達はそれを受けて身構えた。
「ではその力見せてもらおうか」
「フフフ」
 暗闇大使は笑った。その後ろには怪人達が控えていた。
「では見せてやろう。わしの力をな」
「来るか」
 ライダー達は目を瞠った。
「出でよ」
 彼は静かに言った。その時空が割れた。
「何っ!」
 ライダー達は思わず空を見上げた。割れた部分は赤くなっていた。
「まさか」
「ククククク」
 大使はライダー達が驚く様を見ながらさらに笑った。
「そのまさかだ」
 彼は言った。そしてその割れた場所から何かが出て来た。
「さあ見るがよい。我がバダン、そしてこの暗闇大使の力の結晶」
 その顔は自信に満ちていた。
「サザンクロスをな」
 巨大なサザエに似た怪物が姿を現わしてきた。無数の突起を持った貝であった。
 いや、それは貝ではなかった。何か得体の知れない装甲であった。
「あれは」
 ライダー達はその中央に何かを見ていた。そこには顔があった。
「フフフ」
 大使は笑っていた。サザンクロスの顔も笑っていた。
「サザンクロスよ」
 彼は上を向いてその化け物に言った。
「やれい」
 サザンクロスの顔も笑った。そしてその無数の突起が何かに変化した。
「ムッ」
 それは大砲に変わった。禍々しく伸びライダー達にその砲口を向ける。
「受けるがよい、我が力」
 暗闇大使は言った。するとその砲の全てに黒い光が集まってきた。
 そしてそこから黒い光が放たれる。それはライダー達に襲い掛かる。
「危ない!」
 ライダー達は咄嗟に立花達を抱いて跳んだ。そしてその黒い光を避けた。
「ほう、今のをかわしたか」
 大使は相変わらず余裕に満ちた笑いを浮かべていた。
「流石だな。しかし何時まで続くかな」
 再びサザンクロスの砲口に黒い光が集まる。そしてまた放たれた。
「クッ!」
 ライダー達は再び跳んだ。そしてその光を何とかかわした。
 着地した彼等は立花達を下ろした。そして彼等に対して言った。
「ここは俺達に任せて下さい」
「おやっさん達は安全な場所に」
「しかし」
 立花はその言葉に一瞬戸惑った。だがすぐに決めた。
「いや、わかった」
 そして彼等に対して言った。
「では頼んだぞ。ここは御前達に任せた」
「はい」
 ライダー達はそれに頷いた。
「勝って来い、いつもみたいにな」
「わかってますよ」
 彼等は微笑んだ声を出した。これだけで充分であった。
「じゃあな」
「ええ」
 立花達は後方へ退いていく。ライダー達は彼等を守るように身体を暗闇大使達に向けた。
「別れの挨拶は終わったな」
「あくまで余裕でいるつもりか」
 ライダー達は彼に対して言った。
「無論だ。わしの勝利は決まっているのだからな」
「ほう」
「では受けるがいい。再び我が力をな」
 また黒い光が放たれた。ライダー達はまたもやそれをかわした。
「何時までそうしてかわせるかな」
 大使はそれを見ながら言った。
「次第に疲れてくる。そして貴様等はサザンクロスに対して手出しはできない」
「クッ・・・・・・」
 そうであった。サザンクロスは遙か上空にある。そこまで飛び上がっても無理がある。かえって狙い撃ちにされる怖れがあった。
「俺が行けば」
 ここでスカイライダーが言った。
「いや」
 だが他のライダー達がそれを止めた。
「御前一人では無理だ。あいつを倒すのはな」
「しかし」
「よく聞け」
 ここで一号が彼に対して言った。
「一人では、と言ったんだ」
「ということは」
「そうだ。あれをやるぞ」
「あれを」
 それを聞いたライダー達の顔に緊張が走った。
「あれをやるんですか」
「そうだ」
 一号は他のライダー達に顔を向けてそう答えた。
「それしかないだろう」
「わかりました」
 ライダー達はその声に対して頷いた。これで決まりであった。
 そこにまた黒い光が来た。ライダー達は上に跳んだ。
「今だ、やるぞ!」
「はい!」
 ライダー達は頷いた。一号はスーパー1とゼクロスに対して言った。
「はじめてだがいけるか」
「はい」
「やってみせます」
 二人はそれに頷いた。これで決まりであった。
 ライダー達は互いに手を繋いだ。そして空中でリングを作った。
「ムッ」
 暗闇大使はそれを見上げながら怪訝そうな顔をした。
「何をするつもりだ」
「行くぞ」
 だがライダー達はその間にも攻撃の準備にかかっていた。その中央にスカイライダーが来た。
「よし」
 ライダー達のベルトが光る。そしてその光がスカイライダーのベルトに集まっていく。
「ムムム」
 その力が彼の全身にみなぎっていく。それと共にライダー達は飛んでいく。
「馬鹿め、隙だらけだ」
 サザンクロスが砲撃を仕掛けてきた。黒い光がライダーを貫かんとする。
 だがその光は彼等の前で打ち消された。ライダー達の光によって打ち消されたのだ。
「何っ」
 それを見た暗闇大使は思わず声をあげた。光を打ち消したライダー達はそのまま突き進んでいく。
「食らえ」
 スカイライダーを中心とした彼等はサザンクロスに向かって行く。そして光の強さがさらに強まった。
「セイリングアターーーーーック!」
 スカイライダーの身体に蓄えられた光が放たれた。そしてそれはサザンクロスに一直線に向かっていく。
「フン、そう来たか。だがな」
 暗闇大使はそれを見てもまだ余裕であった。
「それでサザンクロスを倒せると思っているのか」
 だがその言葉は彼等には通用しなかった。光はそのまま突き進んでいく。
 そして光がサザンクロスを撃った。そしてそのままその厚い装甲を圧迫していく。
「何っ!?」
 装甲は鈍い音を立てて壊れていく。そして遂にそれが破られた。
 サザンクロスの動きが止まった。光はそのままその中を進んでいく。
「ま、まさか・・・・・・」
 暗闇大使は思わず呆然としていた。光はその間にも中を進む。
 やがて反対側の装甲が盛り上がってきた。そしてまた音を立ててきた。
 その装甲も突き破られた。光はサザンクロスを撃ち抜いたのだ。
「やったか!?」
 ライダー達は空中でそれを見守っていた。だがサザンクロスはまだ空中にあった。
「クッ、これでも落ちないのか」
「何という奴だ」
 彼等は歯噛みした。だがそれでもまだ諦めてはいなかった。
「もう一撃繰り出すか」
 既に先程の攻撃でかなりのエネルギーを使っていた。しかし諦めるわけにはいかなかった。
「よし」
 ライダー達は再びエネルギーを集めようとする。だがここでゼクロスが叫んだ。
「ここは俺だ!」
 そして一人前に飛び出した。
「ゼクロス!」
「何をする気だ!」
 他のライダー達はそれを止めようとする。だがゼクロスの動きはそれよりも速かった。
「ヘルダイバーーーーーッ!」
 彼は叫んだ。すると地上にヘルダイバーが姿を現わした。
 マシンが跳んだ。ゼクロスはそれに空中で乗った。
「行くぞ!」
 そしてそのままサザンクロスに向けて突っ込む。進みながらその身体を赤い光が覆った。
「何っ!」
「まさかっ!」
 ライダー達だけではなかった。暗闇大使達バダンの者も目を瞠った。ゼクロスは赤い光となっていた。
 そしてサザンクロスに突き進んだ。砲撃が仕掛けられるが当たりはしない。
 当たった。その瞬間サザンクロスは爆発した。空中で四散する。
「ゼクロスッ!」
 ライダー達は叫んだ。だが返答のかわりに爆発が起こるだけであった。
「おのれ・・・・・・」
 それを見上げる暗闇大使は苦渋に満ちた顔を浮かべた。
「まさかサザンクロスを破壊するとは・・・・・・」
 その時彼の口から一条の血が零れた。
「グフッ!」
 大使は血を吐いた。そしてその場に崩れ落ちた。
「暗闇大使!」
 怪人と戦闘員達がその場に駆け寄る。そして彼を助け起こした。
「大丈夫だ」
 彼は同志達に対してそう言った。
「それよりもこの場は退くぞ。これ以上の戦闘は無意味だ」
「ハッ」
 それはわかっていた。サザンクロスが破られた今戦意も潰えていたからだ。ライダー達の勝利は明らかであった。
「サザンクロスを失ったのは惜しいが」
 暗闇大使は戦闘員達に左右から抱えられながら呟いた。
「ゼクロスを倒せたのはよしとしなければな」
 そして戦場から去った。後にはライダー達だけが残っていた。
「あの化け物こそ倒すことはできたが」
「失ったものは大きいな」
「ああ」
 だがライダー達はその場から去った。彼等にはそれを伝える義務があるからだ。

「どうだった」
 立花達は松阪の駅で彼等を待っていた。
「良の奴がいないようだが」
「ええ」
 彼等を代表して本郷が口を開いた。
「特攻して・・・・・・。それで俺達は勝つことができましたが」
「そうか」
 彼はそれを聞いて頷いた。何とか表情は変えないことに成功した。
「惜しい奴だったな」
「はい」
 ライダー達も滝達もそれに頷いた。だがそれ以上のことはできなかった。その時だった。
「勝手に殺してもらっちゃ困るな」
 彼等の後ろから声がした。
「その声は」
 皆後ろを振り向いた。そこに彼がいた。
「おやっさん、先輩達、皆、遅れてすいません」
 彼がマシンを引き摺るようにしてこちらにやって来ていた。全身傷だらけだが確かに立っていた。
「良・・・・・・」
「無事だったのか!」
 彼の姿を見て誰もが驚きの声をあげずにはいられなかった。村雨はそんな彼等に対して微笑んでみせた。
「あれ位じゃ死にはしませんよ。だってそうでしょう?」
「どうしてだ?」
 立花がそれに合わせて問うてきた。彼はそれに答えた。
「ライダーだからですよ。ライダーはそう簡単には死なないんでしょう?だから生きてるんですよ」
「確かにな。その通りだ」
 立花はその答えに対して笑った。
「無事で何よりだ。おう、今日もわしの奢りだ」
 ここで彼は他の者に顔を向けた。
「ステーキでも焼肉でも何でも食え。松阪牛の食べ放題だ」
「本当ですか!?」
「ああ、良が帰って来たんだ。それ位は奮発してやる。いいな」
「はい!」
「喜んで!」
 戦士達は同志の帰還を心から喜んでいた。だがそれは最後の戦いへ向かう前の盃でもあるのを忘れてはいなかった。

悪魔の兵器   完


                                  2004・12・16
 


[225] 題名:悪魔の兵器2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年01月07日 (金) 22時25分

 ライダー達はオートキャンプ場に入った。そこにはトレーラーハウスが並んで置かれていた。
「油断するな」
 立花はライダー達に対して言った。
「連中のことだ。何時来るかわからんぞ」
「わかってますよ」
 立花達を護る様にして位置するライダー達はそれに頷いた。見れば既に変身している。
「いつもいきなり来るからな。特にこうした隠れるところの多い場所だと特にな」
「その通りだ」
 そこで何者かの声がした。
「ムッ!」
「来たか!」
 彼等はその声に反応してすぐに身構えた。すると上空から赤や青の布が飛んで来た。
 それはライダー達を取り囲んだ。そしてそれは戦闘員達に変わった。
「やはりな!」
「ギィッ!」
 戦闘員達は手にする剣で斬り掛かって来る。ライダー達はすぐに攻撃に入った。
「ここは俺が!」
 ]が彼等の先頭に出る。腰からライドルを抜いた。
「ライドルホイップ!」
 そのらライドルを剣にする。そしてそれで戦闘員達の中に切り込んだ。
 ]のライドルが風と共に唸る。そして左右に群がる戦闘員達を次々に斬り伏せていく。
「流石にやるな」
 そこで先程の声がした。
「その声は」
「そう、俺だ」
 そこにカニロイドが姿を現わしてきた。
「]ライダーよ、あの時の決着をつけてやろうか」
「望むところだ」
 ]は彼と対峙した。ライドルを握る手に力が篭る。
「待て、カニロイド」
 だがここで別の声がした。
「今ここで我等の任務を忘れるでないぞ」
「チッ」
 彼はその声に対して舌打ちした。トレーラーハウスの陰からクモロイドが姿を現わした。
「わかっている。同志暗闇大使の作戦はな」
「それならばよいがな」
 彼はそれを聞いて頷いた。
「アメンバロイドは何処だ」
「俺はここにいるぞ」
 クモロイドの声に応えて彼が姿を現わしてきた。丁度ライダー達の後ろに出た。
「心配無用だ、俺はわかっている」
「ならば良い」
 クモロイドはそれを受けて納得したように首を縦に振った。
「では行くぞ」
「うむ」
 三体の怪人はライダー達を取り囲んだ。そしてその後ろに新手の戦闘員達が姿を現わしてきた。
「また出て来たか」
「流石に暗闇大使がいるだけはある、かなりの数の戦闘員がいるな」
「フフフ」
 怪人達はライダーの言葉を笑みをもって聞いていた。
「それだけではないのはわかっているだろう」
「・・・・・・確かに」
 それは当然のことであった。
「さあ、かかれ」
 クモロイドが戦闘員達に号令をかけた。
「ギィッ」
 すると彼等はそれに応えるように腰から何かを取り出した。それは鎖鎌であった。
 左手に鎌を持ち右手で分銅を振り回す。そしてゆっくりと前に出て来た。
「さあ、ライダー達を」
 怪人達は後ろに下がって彼等に対して言う。
「これにはどうするつもりだ」
「知れたこと」
 だが彼等はそれでも臆することはなかった。
「倒すまでだ。他に何がある」
「ではやってみせるがいい。できるものならな」
 クモロイドはそれを聞いて冷淡に返した。そして戦闘員達に対して号令した。
「やれ」
 それと同時に分銅が一斉に放たれる。それにライダー達が前に出た。
「おやっさん達は伏せて!」
「ここは俺達が!」
 すぐに立花達に声をかける。
「わかった!」
「頼む!」
 彼等はそれに従いすぐに身を屈める。ライダー達はそれを横目に分銅に立ち向かう。
「トォッ!」
 その両手で分銅を掴む。それも一度に何本もだ。
 続いてそれを引く。すると戦闘員達は態勢を崩した。それで全ては決まった。
 ライダー達が突進する。そして態勢を崩していた戦闘員達を薙ぎ倒していく。勝負はほぼ一瞬で決まってしまった。
「これで終わりだな」
「次はどうするつもりだ」
 ライダー達は怪人達の前に出た。だが怪人達は不敵な笑みを浮かべたままである。
「ククククク」
「何がおかしい」
 X3が問うた。
「ここは下がってやろう」
「だがこれで終わりではないぞ」
 そして三体の怪人達は後ろへ退いた。
「クッ!」
「逃がすか!」
 ライダー達はそれを追う。立花達もそれに続く。
 
 ライダー達はそのまま市街地に入った。江戸時代の建物が立ち並ぶ古い街並みだ。
「おい、気をつけろ」
 ここで立花が一向に対して言った。
「奴等のことだ。こういった場所でこそ何かしてくるぞ」
「わかってますよ」 
 それはライダー達もわかっていた。
「おそらくここにもいるでしょうね」
「来ますよ、絶対」
 彼等も油断してはいなかった。身構え、辺りを警戒しながら進んで行く。
「ケッ!?」
 ここでアマゾンがふと顔を上げた。
「いるのか!?」
 それを見て二号も辺りを見た。
「来る、アマゾンにはわかった」
 そう言った瞬間に何かが飛んで来た。
「危ない!」
 二人は左右に散った。それまでいたところに鎌が突き刺さっていた。
「この鎌は!」
「ホホホ、アマゾンよ久し振りだねえ」
 屋根の上から女の声がした。
「奈良での恨み、晴らさせてもらうよ」
 カマキロイドは無気味な笑い声を立てながらアマゾンを見下ろしていた。
「ぬうう」
 ライダー達も立花達も彼女を見上げて構えをとった。だがアマゾンが彼等を制した。
「ここはアマゾンがやる」
「しかし」
「大丈夫。アマゾン負けない」
「・・・・・・わかった」
 二号がまずそう言った。
「こいつは御前に任せる。頼むぞ」
「うん」
 アマゾンは頷く。その横にモグラ獣人がついた。
「モグラ」
「俺らも手伝わせてくれよ」
 彼は笑いながら彼に顔を向けてきた。
「けどこいつは」
「戦闘員もいるだろ。そいつ等を任せてくれよ」
 そこでその戦闘員達が姿を現わして来た。彼等は鉈を手にアマゾン達を取り囲んで来た。
「わかった。モグラ、頼む」
 アマゾンは彼の意を受け入れることにした。それを聞いたモグラ獣人はまた笑った。
「そうこなくっちゃ」
「けれど気をつける。いいな」
「わかってるよ」
 こうして二人がカマキロイドとその配下を引き受けた。ライダー達は先に進もうとする。だがその前に新手が現われた。
「残念だがそうはいかん」
 そこにはカメレオロイドが立っていた。
「我々とて仕事なのでな。貴様等にはここで死んでもらおう」
「戯れ言を」
「戯れ言!?」
 カメレオロイドは滝のその言葉に顔を歪めさせた。
「生憎これでも私はかっては神父だったのでな。嘘は言わん」
「バダンが嘘を言わなかったことがあるか」
「ある!」
 そう言いながら彼は自らの舌を剣に変えてきた。
「この剣で貴様等を倒す。これが嘘だと思うか」
「クッ・・・・・・」
 これには滝も言葉を詰まらせた。だがここで一号が出て来た。
「ではその言葉、偽りにしてやろう」
「できるのか、貴様に」
「では俺も言おう。不可能を可能にする」
 その言葉尻が強くなった。
「それがライダーだ!そしてライダーは決して嘘はつかん!」
「面白い」
 カメレオロイドはそこでまた笑った。後ろに戦闘員達が姿を現わす。かなりの数であった。
「ではその言葉、偽りのものとしてやろう。覚悟はいいな」
「待て」
 そこで新たな声がした。
「ムッ」
 それは後ろからだった。カメレオロイドの目が後ろにまで動いた。
「貴様等か」
「ああ」
 そこには二体の怪人がいた。トカゲロイドとタカロイドであった。
「貴様一人では流石に分が悪いだろう」
「俺達も参戦させてもらうぞ」
「勝手にしろ」
 彼はそれを受け入れるでもなくそう言った。
「私は私のやり方でやらせてもらう。だが御前達が戦うというのならそうしろ」
「わかった」
「そうさせてもらう」
 二人は答えた。そしてアマゾンと対峙するカマキロイドに声をかけた。
「カマキロイド」
「何だい?」
 彼女はそれに反応して顔を向けてきた。
「こちらに来い。まとまるぞ」
「フン」 
 彼女はそれを聞いていささか不満げであった。だがそれに従うことにした。
「わかったよ。確かにそっちの方が何かとやり易いだろうしね」
「それでいい」
「では行くぞ」
「ああ、わかったよ」
 カマキロイドは跳んだ。戦闘員達もそれに続く。
 そして別の屋根の上に着地した。そこはライダー達のすぐ側であった。
「ケケケッ」 
 アマゾンとモグラ獣人もそこに来た。こうして四体の怪人達とライダー達が対峙する形となった。
「まずは俺からやらせてもらおう」
 トカゲロイドはそう言うと口から炎を吐き出してきた。それでライダー達を焼き尽くそうとする。
 そこにスーパー1が出て来た。すぐに腕を換える。
「チェーーーーンジ冷熱ハァーーーーーーンドッ!」
 両手を緑のものに変える。そして左腕を前に突き出して来た。
 そこから冷気を発する。それで炎を退けた。
「ヌヌヌ」
 それを見たトカゲロイドは怒りで顔を歪めさせる。その間に戦いは動いていた。
 一号とカメレオロイドが戦いをはじめた。一号は素手ながら彼と五分に渡り合っていた。
 空ではスカイライダーがタカロイドと戦っている。両者は激しい空中戦を展開している。
 そしてアマゾンとカマキロイドもだ。彼等は屋根の上を激しく飛び回りながら切り合っている。
「ケケッ!」
 アマゾンの叫び声が響き渡る。両者は互いに譲らず打ち合う音を響かせている。
 他のライダー達は戦闘員達を相手にしている。二号の拳が唸った。
「食らえっ!」
 それで戦闘員達を倒していく。やはり力の差は歴然たるものがあった。
 立花も谷も戦っていた。歳を言われたとはいえ彼等もひとかどの戦士である。戦闘員達には負けてはいなかった。
 戦いはライダー達が優勢に進めていた。やがて戦闘員達はあらかた倒されてしまった。
「これ以上の戦いは無意味だな」
 トカゲロイドは戦闘員達が殆どいなくなったのを見てそう呟いた。そして同僚達に対して言った。
「退くぞ、ここでの戦いは終わりだ」
「わかった」
「もう少し戦いたかったがな」
「仕方ないわね」
 彼等はそれに従った。そして後ろに大きく跳んだ
「それではな、ライダー達よ」
 屋根の上に着地するとライダー達に対して言った。
「さらばだ」
「おのれ!」
「待て!」
 彼等はそれを追う。そしてさらに進んで行った。
 怪人達は西に向けて逃げて行く。やがて泉の森に入った。ここはかっては大神神社があった。今は森になっている。ここには春の種蒔きの時に泉が沸き、そして秋の刈り入れ時に枯れるという言い伝えがある。
「森か」
「また何かありそうな場所に案内してくれたな」
 ライダー達はやはり立花達を守る様に円になり身構える。そして上下左右を警戒している。
「来るぞ、絶対にな」
「ああ、わかっている」
 ライダー達は警戒を緩めない。その時木々が動いた。
「ムッ!」
 そこから何かが飛んで来た。それは薔薇の蔦であった。
「ヒヒヒヒヒヒ!」 
 バラロイドが姿を現わして来た。怪人は奇声と共にライダー達に襲い掛かる。
「ここから先は行かせないよ」
「それは貴様等だけの都合だ」
 X3はスッと前に出て来た。
「俺達には俺達の都合がある。悪いが通らせてもらう」
 そして拳を繰り出す。それでバラロイドを打とうとする。
「おっと」
 だが怪人はそれを蔦で防いだ。余裕をもった動きで後ろに下がる。
「甘いね、X3。それでは倒せはしないよ」
「クッ」
 X3はそれを聞いて歯噛みした声を漏らした。だが怯んではいなかった。
「ならば」
 さらなる攻撃に移ろうとする。だがその前に戦闘員達が姿を現わして来た。
「ギィッ」
「やはり出たな」
 それを見た他のライダー達も立花達も彼等に向かって行った。こうして森での戦いがはじまった。
 戦闘員達との戦いがはじまった。ライダー達はその戦闘力により数をものとしなかった。戦闘員達は瞬く間にその数を減らしていく。
「油断するな」
 ここで二号が他の者に対して言った。
「まだ来るぞ」
「ええ」
 それは他の者もわかっていた。そしてそれは来た。
 槍が来た。それは一直線に二号に向けて飛んで来た。
「ムッ!」
 二号はその槍を掴み取った。そしてそれを膝で叩き折った。
「来たな」
「フフフフフ」
 森の中からヤマアラシロイドが姿を現わしてきた。
「あれを掴み取るとは。流石と褒めておきましょうか」
「戯れ言はいい」
 だが二号はその言葉を受けなかった。
「まさか貴様がここに出て来るとはな」
「意外でしたか」
「どうやらそう言って欲しいようだからな。そう言っておこうか」
「やれやれ、素直ではありませんね。仮面ライダー二号は一号に比べて明朗闊達だと聞いていたのですが」
「それは平和を愛する人々に対してだ」
 二号はそう言い返した。
「貴様等には違う。平和を害する貴様等にはな」
 そして前に出た。そのまま攻撃に入る。
「フフフ」
 ヤマアラシロイドは笑った。そして彼も二号に向かって行った。
「後悔しますよ」
「それはこちらの台詞だ」
 拳が激しい音と共に撃ち合った。両者は戦いをはじめた。
「さあ、こっちに来い!」
 ストロンガーは戦闘員達のかなりの数を相手にしていた。相手にしながら他のライダー達がいない場所にまで誘導していく。
「そうだ、来い、来るんだ」
 やがてその誰もいない場所に来た。森の出口だ。
「よし、ここならいいな」
 ストロンガーはそれを確かめて笑った。そしてその拳に雷を宿らせた。
「エレクトロサンダーーーーーッ!」
 拳を地面に打ちつけた。すると雷が地を走った。
「ギエエエエェェェェェッ!」
 戦闘員達は断末魔の悲鳴をあげて絶命した。そして皆地に倒れ伏した。
「これでよし、出口も押さえたぞ」
 ストロンガーはそれを見て満足そうに笑った。だがそれはやや早計であった。
「それはどうでしょうか」
 後ろから何者かの声がした。
「その声は」
 ストロンガーはそれに反応して後ろを向いた。
「やはり貴様か」
「うふふふふ」
 ドクガロイドは身体を向けてきたストロンガーに対して無気味に笑った。
「私だけではありませんよ」
「何!?」
「俺もいる」
 そこにジゴクロイドも姿を現わしてきた。
「ここで戦闘になれば来る予定だった。間に合ったようだな」
「ええ」
 ドクガロイドは同志に対して頷いた。
「丁度いいタイミングでしたよ」
「それは何よりだ。さて」
 ここであらためてストロンガーに向き直った。
「どうする、ライダーストロンガーよ。こちらは二人だ。観念するか」
「観念!?何だその言葉は」
 だが彼はそれを聞いてとぼけたふりをしてみせた。
「生憎だが俺はそんな言葉は知らないな」
「ふふふ、相変わらずですね」
 ドクガロイドはそれを聞いて笑った。
「強気な方です。ですがそれが何時まで続きますかね」
「何時まで?これはまた愚問だな」
 ストロンガーはそう言い返した。
「死ぬまでだ。いや、俺は死ぬことはないから永遠にだ」
「面白い人だ」
 ドクガロイドはまた笑った。
「ではあの世に導いてさしあげましょう。行きますか、ジゴクロイド」
「おお」
 ジゴクロイドは頷いた。そしてストロンガーの後ろに回る。
「行くぞ、ライダーストロンガー」
「挟み撃ちか。これはいい」
 だがそれを見てもストロンガーは余裕なままであった。
「こうでなくては面白くはないからな」
「そういう強がりもいい加減にしておけ」
 ここでライダーマンが姿を現わしてきた。
「見ないので何処に行ったかと思ったらこんなところにいたのか」
「ライダーマン」
 ストロンガーは彼に顔を向けた。
「ストロンガー、助太刀させてもらうぞ。幾ら御前でも怪人が二体では辛いだろう」
「いえ、大丈夫ですよこの程度」
 だがストロンガーも引かない。何か今の状況を楽しんでいるようである。
「ピンチを楽しむのもいいがな。俺にも戦わせろ」
 だがライダーマンはそんな彼に対して言った。
「俺もライダーなのだからな」
「そうきましたか」
「当然だ。では行くぞ」
「はい」
 ストロンガーはそれを受けてジゴクロイドと対峙した。ライダーマンは毒がロイドとである。
「覚悟はいいな」
「それは貴方の方こそ」
 双方の宣戦布告は終わった。ライダーマンはパワーアームを装填するとドクガロイドに切りかかって行った。
 こうして二組の一騎打ちがはじまった。ライダー達も怪人達も互いに譲らず五分と五分の戦いが繰り広げられていた。
 だが次第にライダー達の方が優勢になってきた。やはり長年の経験とその地力がものを言ってきた。
「まずいな」
 ジゴクロイドはストロンガーの拳をかわしながらそう呟いた。
「やはりこの辺りが潮時か」
 そう言うとドクガロイドに顔を向けた。
「おい、下がるぞ」
「わかりました」
 彼はそれに頷くとライダーマンとの間合いを離した。
「ライダーマン、また御会いしましょう」
「クッ、待て!」
 ライダーマンはドクガロイドを追おうとする。だが彼はその前に毒の霧を発した。
「ムッ!」
 彼はそれを見て咄嗟に後ろに退いた。ストロンガーもである。その間に二体の怪人は後ろに下がった。
「しまった・・・・・・」
「よりによってこんな時に」
 二人は逃げ去って行く彼等を見て歯噛みした。そこに他のライダー達や立花達がやって来た。
「おう、ここにいたのか」
 立花は二人のライダーを見て声をかけてきた。
「何処に行ったかと思ったぞ。無事で何よりだ」
「ええ」
 ストロンガーがそれに応えた。
「ところでそちらは」
 ライダーマンが彼に戦いの行方を尋ねた。
「駄目だ、逃げられた」
 立花は首を横に振ってそう答えた。
「相変わらず逃げ足も速い奴等だ」
「そうですか」
 それは大体予想できていた。ライダーマンもそれに関しては特に驚いてはいなかった。
「それで奴等は何処に」
「大河内城の跡に向かっているようだ」
 X3がそれに答えた。
「バラロイドが逃げた後X3ホッパーを使ったらそこに反応があった。だがそれだけじゃない」
「どういうことだ」
「そこにかなりの数がいた。どうやらそこが本拠地のようだ」
「この松阪のか」
「ああ」
 X3はライダーマンの問いに対して頷いた。
「おそらくこれまでの戦いはほんの前哨戦だろう。そこに奴等の切り札がある筈だ」
 二号がここでこう言った。
「そして暗闇大使もいる」
「暗闇大使」
 ゼクロスがそれに反応した。
「気をつけろ、あいつはあの地獄大使の従兄弟だからな。一体どんなことをしてくるかわからんぞ」
「そうですね」
 二号は立花の言葉に頷いた。
「おやっさんの言う通りだ。皆、気をつけていけ」
「おう」
 ライダーも滝達もそれに応えた。
「ところでだ」
 ここで滝がゼクロスに尋ねてきた。
「はい」
 ゼクロスはそれを受けて彼に顔を向けた。
「その暗闇大使だがあいつも改造人間なのか?見たところそれっぽいが」
「おそらく」
 ゼクロスはそれに答えた。
「今までの大幹部や改造魔人もそうでしたし。あの魔神提督も脳と心臓以外は機械でしたよね」
「そうだったな。ショッカーでもそうだった」
 滝はそれを聞きながら呟いた。
「じゃああいつも何かしらの改造人間か。一体どんな正体かはわからないが」
「でしょうね。大幹部の正体は怪人、その鉄則からすればあの男も怪人なのでしょう」
「ゾル大佐は黄金狼男だった。死神博士はイカデビルだった」
「そしてあいつの従兄弟はガラガランダだった。毒蛇の化身の」
 ここで一号が言った。
「ではあいつは一体」
「わからん。だがこれだけは言える」
 一号の声が深刻なものとなった。
「かなりの力を持っている。そう、今までの大幹部達に勝るとも劣らぬ程にな」
「そうか」
 皆その言葉に息を呑んだ。
「注意しなくてはな。かなり激しい戦いになる」
「それはもとより承知」
 誰かがそう言った。
「それを覚悟で来たんだからな」
「そうだな」
 一同それに頷いた。
「行くぞ」
「ああ」
 そして戦士達は大河内城に向かった。そこに何があるのかはわかっている。だがあえてそこに向かうのであった。
「来るぞ」
 暗闇大使はそれを察知してそう言った。
「同志達は戻って来たか」
「ハッ」
 後ろに控える戦闘員の一人が敬礼をして答える。
「つい今しがたバラロイド達が戻って来られました」
「そうか。ならばよい」
 彼はそれを聞いてそう答えた。
「全ては整ったな」
 そして二歩前に出た。
「あれの用意は出来ているな」
「何時でもいけます」
 その戦闘員が答える。
「では行くとするか」
 暗闇大使はそれを受けてさらに前に出た。
「さあ、ライダー達よ」
 彼は歩きながら呟く。
「このわしに勝てることができるかな」
 その声は笑っていた。血に濡れた声で笑っていた。

 ライダー達は大河内城跡の前に来た。そこには既に戦闘員達がいた。
「もういるのか」
「どうやらここが本拠地と見て間違いないな」
 ライダー達を先頭にそこへ突っ込む。だが戦闘員達はそれでも動こうとしない。
「どういうことだ」 
 そう思った時だった。不意に戦闘員達が左右に分かれた。
「ムッ!?」
 彼等は思わず立ち止まった。そこにあの男が姿を現わしてきた。
「フフフ、久し振りだなライダー達よ」
 その男、暗闇大使はゆっくりと前に出て来た。
「まずはここまで来たことを褒めてやろう」
『戯れ言を」
 だがライダー達はそれを受け流した。
「貴様が本心から俺達を褒めるとは思えん。ここで倒すつもりだろう」
「その言葉、半分は正解だが半分は間違っておるな」
「どういうことだ」
 ライダー達に問われ彼はまず口の両端を耳まで拡げて笑った。
「まずわしは他の者の力は素直に認める、例え貴様等であろうとな。これは間違いだ」
 彼は説き聞かすようにして言った。
「そしてもう一つ。これは正解だな」
 彼は言葉を続けた。
「貴様等はここで倒す。わしの力をもってしてな」
「望むところ」 


[224] 題名:悪魔の兵器1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年01月07日 (金) 22時22分

            悪魔の兵器
 青山町での対峙を終えたライダー達は鈴鹿に向かっていた。そこで立花達と合流する為である。
 この鈴鹿はレース会場として有名である。立花達は今そのレース場にいた。
「ここでレースを見るのが好きなんですよ」
 立花は笑いながら谷達に語っている。
「やっぱりレースはいい。男のロマンですよ」
「おやっさんまだ諦めていなかったんですか」
 谷がここで笑いながら口を入れてきた。
「当然だ」
 立花は口を尖らせてそう反論した。
「まだまだ諦めていないぞ、何なら御前がレーサーになるか」
「いや、もう俺は歳ですから」
 彼はそれを笑って断った。
「流石にもう駄目でしょう」
「何を言っているんだ、わしはまだやるつもりだぞ」
「おやっさんがですか!?」
「当然だ。誰もやらないのならわしがやるだけだ」
 彼は胸を張ってそう言った。
「もっとも他の若い奴も探しているがな」 
 そしてここで顔を綻ばせた。
「アマゾンなんかはかなりいい素質があるんだがなあ」
「あいつはまた勘が違いますからね」
「そうだ、まあライダーの仕事があるから仕方ないが」
「史郎なんかはどうです?」
「あいつがか?あいつは駄目だよ」
「何でですか?」
「向き不向きがあるんだ。あいつはカウンターにいるのが一番似合ってる」
「ははは、確かに」
 滝だけでなく他の者もそこで笑った。
「あいつがバイクに乗る姿はちょっと想像できませんね」
「五〇CCは乗れるみたいだがな。あと車も」
「それでもバイクには向いていませんね」
「そういうことだ。ましてやレースともなるとな」
 立花はここで顔を引き締めさせた。
「センスが必要なんだ。そうした奴はそうそういるもんじゃない」
「本郷にはそれがありましたね」
「ああ。ライダーには全員あるな。だからこそライダーになったんだろうが」
「確かに」
 皆その言葉に対して頷いた。
「ところでだ」
 立花はここで志度に顔を向けた。
「時間はどうなっていますか」
「はい」
 彼はそれを受けて腕時計を見た。
「そろそろですね」
「そうですか」
 立花はそれを聞くと顔を前に戻した。そしてその向こうに何かを見ていた。
「来るな」
 そう呟いた。すると一陣の風が来た。
 青いマシンが姿を現わした。それはコーナーを高速で回りながらこちらにやって来た。
「まずはあいつですか」
 滝はその青いマシンを見て言った。
「ちょっと予想とは外れましたね」
「そうですか。風見先輩らしいですけれど」
 だが佐久間はそれを見て当然のようにコメントした。
「あの人はああいう人なんですよ」
「そうだったのか」
「確かにな。あいつらしいと言えばあいつらしいな」
 立花もそれに納得したようである。ニューハリケーンが彼等の前に止まった。
 挨拶をするよりも早く次のマシンが姿を現わした。それは雷を纏っていた。
「また派手に出てきやがったな」
 立花はそれを見て苦笑した。
「いつもああなんだ。とにかく目だちたがり屋でな」
「ライダーにしては珍しいですね」
 伊藤がそれを聞いて言った。
「まあその分結果は出していますがね。それでも見ている方はヒヤヒヤしていますよ、いつも」
「そうでしょうね」
 ニューハリケーンの横にそのマシンは止まった。
 またマシンがやって来た。今度は銀のマシンだ。
「今度は」
 それは新サイクロン改であった。
「本郷か隼人か」
「あれは」
 滝と立花はそのマシンを見ながら話をしていた。やがて立花が言った。
「本郷だな」
 見れば手袋とブーツが銀色であった。そしてマシンの動きも流れるようであった。
「隼人のは少し強引なんだ。本郷は流れに従う」
「そうだったんですか」
「おい、御前はいつもあいつの走りを見ていただろうが」
「そこまで見ていませんよ」
「何言っているんだ、そんなんだから御前はレーサーとしては今一つだったんだぞ」
「それは関係ないでしょう」
 そんな話をしているうちに一号も到着した。
「次は誰ですかな」
 谷がコーナーに目を向けた。
「さて、誰でしょうね」
 立花もであった。他の者も目をみはっている。
 そしてすぐに次のライダーが姿を現わした。青いマシンであった。
「あれで来たか」
 谷はそれを見て思わず口に出した。
「Xジェットカスタムで来ると思ったんだがな」
「あれは小回りがききませんからね」
 横にいる立花が言った。
「ブルーバージョン改はオフロード用ですから。その分機動性がいいんですよ」
「成程、確かにあれは小回りがききませんからね。それもありますか」
「はい。おそらくそうでしょう」
 ブルーバージョン改が到着するや否や次のマシンがやって来た。それは激しい動きをしていた。
「今度はあいつか」
 立花の目には獣に似た形のマシンが映っていた。
「相変わらず独特な動きをするな」
 そのマシンはまるで生き物の様に激しく動いていた。
「操る動きもな。あいつはちょっと他のライダーとは違うんだ」
「違うんですか」
 竜がそれに尋ねてきた。
「違うさ。わしにはわかる」
 立花はジャングラーGから目を離しはしない。
「そして操縦しながら喜んでいる。それも変わらないな」
 到着すると背鰭を激しく動かした。そしてアマゾンもマシンも立花に挨拶をした。
 次に出て来たのはプロペラを持つ銀色のマシンであった。
「ほう」
 立花はそのコーナリングを見て目を細めた。
「いいな。あのマシンは動かすのがかなり厄介なんだが」
「そうなんですか」
「ええ。バランスがね、独特なんですよ」
 海堂の質問に答える。
「もっともあいつは最初からあれを乗りこなしていましたけれどね。それでもあのコーナリングはそうそう出来るもんじゃない」
 彼はマシンの動きに関心していた。
「センスだけでも駄目なんですよ。やっぱり経験がなければ」
「そういうものなんですね」
「ええ」
 クルーザーDが到着すると同時に別のマシンが来た。
「今度はあいつか」
「待たせてくれましたわ」
 谷とがんがんじいが同時に声をあげた。スカイターボカスタムがやって来た。
「あれはかなりのスピードが出るんですよね」
「ああ」
 谷が滝に答えた。
「流石に今はそんなにスピードは出せませんか」
「そりゃね。けれどそれでもかなり速いな」
 谷がマシンの動きに感心していた。
「よくあれだけ出せるものだ。重力も相当なものだろうに」
「あいつは空を飛ぶからな。重力には強いんだよ」
「成程」
 スカイターボカスタムも止まった。そこで荒々しい風の音が聞こえてきた。
「この音は」
「来たな」
 立花はその音を聞いてニヤリと笑った。
「やっぱり最後の方になって出て来やがったか。変わらねえな、あいつも」
「ええ」
 滝がそれに賛同した。
「あいつらしいと言えばあいつらしいですね、本当に」
「ああ、マシンの動きも変わっちゃいね。そのまま長所を伸ばしてやがる」
 二号の新サイクロン改は立花が言うには荒々しい動きでコーナーを曲がりこちらに来た。その止まり方も一号とは微妙に違っていた。急停車であった。
「じゃあ次は」
「あいつだな」
 立花には次のライダーがもうわかっていた。
「どちらだと思います」
「決まっているじゃないか」
 彼は他の者に対して自信ありげに答えた。
「ライダーマンだよ」
 その言葉と同時にライダーマンのマシンであるライダーマンマシンカスタムがコーナーを曲がってきた。
「な、わしの予想は当たっただろ?」
 立花は他の者に声をかけた。やや自慢げに聞こえる。
「ええ。何故わかったんです?」
「勘だよ」
「勘、ですか」
「ああ。あいつの性格も考えてな。多分次に来るんじゃないかと思ったんだ」
「それで予想できたんですか。流石ですね」
「長い付き合いだからな。わかるさ」
 それは立花だからこそ言える言葉であった。
「マシンの動きもな。あいつのは特徴があるんだ」
「そうなんですか。見たところそうは思えませんけれどね」
「無駄がないだろ。それにハンドル裁きも慎重だ」
「ううむ」
 だがそこまでわかる者はいなかった。わかるのは立花だけであった。
「わししかわからんのかな。まあいいさ」
 彼は笑ってそう言った。
「これがわかるようになるにはかなりの年期ってやつが必要だからな」
「はあ」
 そう話している間にライダーマンも到着した。そしていよいよ最後のライダーの番である。
「やっぱりトリはあいつか」
「まあこれは予想通りですけれど」
 やがて先の尖ったマシンがやって来た。それはコーナーをやや傾きながらやって来る。
 曲がり終えるとそのまま姿勢を元に戻しこちらに来る。それはまるで影の様に静かな動きであった。
「ほう」
 立花はそのマシンの動きを見て思わず声を漏らした。
「あいつの動きは今初めて見るがなかなか」
「どうですか」
 伊藤が彼に尋ねてきた。
「彼のマシンの動きは」
「いいですね。またこれはいい」
「そうですか」
 彼はそれを聞いて安心したように微笑んだ。
「そう言ってもらえると有り難いですね」
 彼とは長い付き合いである。共にバダンを抜け出している。だからこそそう言ってもらえると有り難いのである。
「またこれは無駄がない。あんな派手なマシンに乗ってよくあれだけやれますよ」
「そうなんですか」
「ええ。筋がいい。これは楽しみですね」
 立花はここで笑った。
「この戦いが終わったら誘ってみるか」
「レーサーにですか」
「ああ」
 滝の問いに頷いた。
「あいつ次第だけれどな。けれどあいつはいいレーサーになるぞ、わしが保障する」
 そのゼクロスも彼等の側で止まった。こうして十人のライダーが勢揃いした。
「行くか」
 立花は彼等に声を掛けた。
「はい」
 戦士達はそれに頷いた。そして戦場に向かうのであった。

 ライダー達と立花達は合流した後すぐに鈴鹿を発った。そしてそのまま南に向かった。
 先にライダー達のバイクが進む。彼等は変身を解いていた。
「おおい」
 その彼等に立花は後ろの車から顔を出して声をかける。
「はい」
 風見がそれに振り向いた。
「今どの辺だ」
「ええと」
 問われた彼は遠くに見える標識を見る。普通の者では見えないが改造人間である彼には容易に見ることができた。
「今丁度河芸です」
「そうか」
 立花はそれを聞いて頷いた。
「じゃあ津までもう少しだな」
「ええ」
 風見はそれに答えた。
「そこで一旦休むぞ」
「はい」
 他のライダー達もそれに頷く。彼等はそのまま進んで行く。
 そして津に着いた。既に日が落ちようとしている。
 彼等は旅館に入った。海の見える旅館だ。
「さてと」
 一向は浴衣に着替えて部屋に集まっていた。その前には刺身等海の幸の料理と酒が並んでいる。
「これはわしの奢りだ。思う存分食ってくれ」
 立花は周りに座る一行に言う。
「はい」
 ライダー達だけでなく滝や志度達もそれに頷いた。
「ここで一泊した後朝に発つぞ。松坂にな」
「わかっています」
 彼等は顔を引き締めてそれに応える。
「その後はわかっていると思う。健闘を祈るぞ。そしてだ」
「そして」
「必ず勝つ。そして誰も死ぬな」
「わかっていますよ」
 本郷と一文字がそれに応える。
「おやっさんもね」
「無理はしないで下さいよ、歳なんですから」
「おい、何を言うんだ」
 立花はそれを聞いて口を尖らせた。ここであえてひょっとこの様な顔をしてみせる。
「わしはまだまだ若いぞ。御前達には負けんぞ」
「そう言っていつも後で腰が痛いとか言ってたじゃないですか」
 ここで城が入ってきた。
「そうそう、戦いの後はいつもそうでしょね、おやっさんは」
「おい敬介、御前まで言うのか」
 立花はそれを聞いてさらに口を尖らせる。
「わしみたいに若い奴はそうそうおらんぞ」
「気持ちだけは」
「こら丈二」
 立花は結城を叱るふりをした。
「御前はこの前わしを二十代みたいだと言ってただろうが」
「そうでしたっけ」
「くそ、どいつもこいつも。おいアマゾン」
 退路がなくなった彼はアマゾンに助っ人を頼んだ。
「御前はどう思う。御前はわしの味方だよな」
「うん」 
 アマゾンは頷いてそれに応えた。
「アマゾンおやっさんの味方。これ変わらない」
「よしよし、流石にアマゾンはわかっているな」
 それを聞いて目を細める。
「だからアマゾン言う。おやっさん無理しちゃ駄目」
「なぬ!?」
「おやっさんもう歳、だから無理するのよくない。アマゾンそう思う」
「御前もか」
 立花の顔はそれを聞いてさらに渋くなった。
「まあまあ」 
 谷がそれを宥める。
「彼等も悪気はないんですし」
「しかし」
「いいじゃないですか。心配してくれてるんですから。それだけ立花さんが慕われているってことですよ」
「そうですかね」
 彼は自分が年寄り扱いされることを嫌う。だからヘソを曲げているのだ。
「まあ今回は私にも任せて下さいよ。私もまだまだやれますし」
「そうですかぁ!?」
 ここで筑波と沖が声をあげた。
「谷さんも立花さんと大して変わりませんよ」
「関節痛は大丈夫ですか!?」
「何を言うんだ、御前達は」
 谷はそれを聞いて立花と同じ様に口を尖らせた。
「わしのことをまだよくわかっておらんようだな」
「わかってますよ」
 筑波は苦笑しながら答えた。
「背中にお灸していることは」
「これは気合を入れる為だ」
「じゃあそこのサロンパスは」
 沖が指摘する。見れば肩から見えている。
「うぬぬ」
 彼はそこで観念した。顔を顰めるだけである。
「どうやらお互い様みたいですな」
 立花はそれを見ながら谷に言った。顔はもう苦笑いとなっている。
「全く」
 認めるしかなかった。彼はおもむろに盃を手にした。
「こうなったらやけ酒だ。どんどん飲むぞ」
「肴もありますしね」
 谷は刺身を醤油に漬けて食べはじめた。平目の刺身である。
「皆食ってやる。年寄りを馬鹿にするとどういうことになるかよく教えてやるからな」
「あ、ちょっと待って下さいよ」
「俺達の分もあるんですよ」 
 ライダー達だけでなく滝達もそれに入った。そして彼等は食べ物の争奪を開始した。
「おい、まだまだあるからそうがっつくな」
「全部食うって言ったのはおやっさん達の方じゃないですか」
 そう言いながらも朗らかに食事を続ける。喧騒はあるが比較的和気藹々とした感じであった。
 村雨はその時場の端にいた。そしてそれを微笑みながら見ていた。
「食べてるかい」
 そこに伊藤がやって来た。
「はい」
 彼はそれに頷いた。
「美味いですね、ここの魚は」
「魚だけじゃないぞ」
 伊藤はにこやかに笑ってそう答えた。
「伊勢に来たらあれを食べないとな」
「あれですか」
「そうだ。見れば役君なんかはそれを楽しみにしているようだぞ」
「役さんが」
 彼はここで役に目をやる。見れば確かに何かを待っているようだ。
「お待たせしました」
 ここで仲居が入って来た。
「おお、来たな」
 立花が仲居が手にするそれを見て喜びの声をあげた。
「こっちに持って来て」
 そして彼女に声をかける。仲居はそれに従いそれを台の中央に持って来た。既に平目は全部食べられていた。
 それが台の上に置かれる。伊勢海老の刺身であった。
「これだよ、これ」
 立花はまだ動いている伊勢海老を指して言った。
「伊勢に来たらこれを食わないとな」
「おやっさんって海老好きだったんですね」
 本郷が彼に問うた。
「まあ嫌いじゃないな。他の海老も好きだしな」
「そういえばこの前海老フライをかなり食べてましたね」
 一文字がそこで言った。
「ああ。美味かったからな。ささ、話はそれ位にして食おう」 
 そこで他のものに声をかけた。
「この後は味噌汁も来るからな。たっぷり楽しめよ」
「はい!」
 こうして一同は伊勢海老に箸をつけた。それは瞬く間に消えていった。
 特に役はそれに舌づつみを打っていた。どうやら伊藤の予想は当たっていたようである。
「ところで良君」
「はい」
 伊藤がまた声をかけてきた。
「君は酒は飲まないのかい」
「いや、そういうわけじゃないですけれど」
「そのわりに進んでいないね」
 見れば彼の杯は殆ど減ってはいなかった。
「実は日本酒は駄目でして」
「そうか。じゃあビールはどうだい」
「いただきます」
 彼は笑顔で答えた。どうやらビールは好きらしい。
「それじゃあ」
 伊藤はそれに応えてコップを持って来た。そしてビールをそこに注ぎ込んできた。
 一向は飽きるまで食べ、そして飲んだ。全てを食べ終え、飲み終えるともう台の上には何もなかった。
「ああ、食った食った」
 それで終わりであった。彼等は何とか布団の上にまで行くとそこで倒れ込んだ。そしてそのまま潰れてしまった。
 台は村雨が呼んだ仲居により片付けられた。村雨はそれを見届けると一人外に出た。そして風呂に向かった。
 ここの風呂は外にあった。彼はそこに浸かり酒を抜いていた。
「ふう」
 大きく息を吐く。それは湯気の中に消えた。
 彼は夜空を見上げた。そこには星が瞬いていた。
「綺麗ですね」
 横から声がした。そちらに目をやると役がいた。
「役さん」
「こうして空を見上げることなんて最近なかったですね」
「そうですね。・・・・・・いや」
 彼はここで口ごもった。
「俺はあります」
「そうなんですか」
「はい。覚えていますよ、あの時を」
 彼はここでバダンを脱出し東京に向かって伊藤と共に旅をしていた時のことを話した。その途中で彼はふと夜空を見上げた時があったのだ。
「あの時の空は綺麗でしたね。とても」
「そうだったのですか」
「はい、今でも覚えていますよ」
 彼はにこやかに微笑んでそう言った。
「あの時の星は綺麗でしたね。まだ感情ってやつが戻っていなかったんですけれどよく覚えていますよ」
「そうなんですか」
「ええ。感情を取り戻すまでに本当に色々とありましたけれどその中でもいい思い出の一つですね」
 彼はやや饒舌に語った。
「少なくともバダンでは見れないものでしたよ」
「それはわかります」
 役はそれに同意した。
「バダンの支配する世界ではこんな綺麗な空はありませんよ」
「はい」
 それは誰もがわかることであった。彼等にとって夜空の星は不要なのだ。
「彼等に必要なのは自分達だけです。首領を崇めない者は彼等にとっては敵でしかありません」
「そして弱い者も」
「そうです。彼等の世界、それは地獄です。この世に存在してはならない世界です」
「暗黒の世界ですね。俺もあの時まではそれがわからなかった」
 彼はそこで顔を俯けた。
「心がなかったから。その心はバダンに消されていた」
「それがバダンなんですよ。不要なものは全て抹殺する」
「姉さんも」
 ここで彼は姉しずかのことを思い出した。
「俺の目の前で殺された。まるでゴミの様に」
「彼等にとってはゴミだったのでしょう」
「はい」
 激昂する気になれなかった。実際にバダンにとってはそうだったのだから。
「だから姉さんは殺され俺は心を奪われた」
「全ては彼等の野望の為にです」
「つくづくとんでもない連中ですね」
「はい。その様な者達はこの世に残しておいてはいけません」
 役の声が強くなった。
「わかりますね」
「ええ」
 もう詳しく言う必要もなかった。村雨もただ頷くだけであった。
「松坂には暗闇大使がいます。そしてバダンの改造人間も」
「それだけではないでしょうけれどね」
「そうでしょうね。あれを持って来ているでしょう」
「時空破断システム」
「どの様なものかは御存知ですね」
「ええ、黒い光を発するのですよね。今までは色々な形になって各地で暴れてましたが」
「今度のはおそらくこれまでのよりも遙かに強力なものでしょう」
「そうでしょうね、あの暗闇大使のことですから」
 村雨にはそれが嫌になる程よくわかった。
「恐らくとんでもないのを用意していますよ」
「ええ。今はそれに備えて英気を養いましょう。戦いの前に」
「そうですね」
 彼はそれに頷いた。そして湯を楽しんだ。
 翌朝彼等は出撃した。向かうは松坂であった。

 松坂には既に暗闇大使が改造人間達と共に布陣していた。彼は大河内城跡にいた。ここはかって伊勢に勢力を持っていた北畠氏の居城である。
「そうか、来たか」
 彼は戦闘員からの報告を受けていた。
「そして今奴等は何処にいる」
「ハッ、今市内に入ったところです」
「そうか」
 彼はそれを聞いて頷いた。
「ではまだこちらの防衛ラインには達してはおらぬな」
「その様です」
 報告をする戦闘員は彼の前に跪いていた。そして報告を続ける。
「確か第一防衛ラインにはアメンバロイドとクモロイド、そしてカニロイドがいたな」
「はい」
「二人に伝えよ。ギリギリまで奴等を引きつけろとな」
「わかりました」
 戦闘員は跪いたまま頭を垂れた。
「そして無理をするなとな。予定通りある程度戦ったならば退け、と」
「ハッ」
 戦闘員は再び頷いた。
「それから市街地に誘い込め。そして分断して攻め掛かるのだ」
「予定通りですね」
「そうだ。よいか、決して無理をするな。まだその時ではないのだ」
「ハッ、そう伝えておきます」
「ここまで誘い込め。その時が勝負なのだ」
「この城跡にですね」
「ここ程それに相応しい場所はないからな」
 彼はそう言って笑った。
「織田信長ですら陥とせなかったこの城、果たしてライダー達に陥とせることができるかな」
 不敵に笑っていた。そして彼は市街に目をやった。
「来るがよい、そして死ぬのだ」
 その声はまるで毒を滴らせている如くであった。
「神の御業によってな」
 そして彼はさらに奥に向かった。そこでは何かが胎動していた。


[223] 題名:戦士達の集結3 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2004年12月16日 (木) 22時03分

「ここにいるのか」
 それはバダンの戦闘員達であった。
「間違いない」
 その中の一人が答えた。
「家に灯りが点いていたからな」
「他の者ではないな」
「ああ、間違いない」
 彼はそれに頷いた。
「二人の顔も見た、この目でな」
「そうか、なら間違いないな」
 彼等はそれを聞いて頷いた。
「では行くとしよう。だがわかっているな」
「無論だ。我々の任務はあくまで偵察だ。彼等を倒すことではない」
「そういうことだ」
 そして彼等は木々の中に消えていった。
 村雨と役は山の中を歩き回っていた。そして青山公園に辿り着いた。
 ここは青山の山地を公園にした場所である。風光明媚であり緑豊かな公園である。
 二人はここで何か打ち合わせをしていた。
「ではもうすぐですね」
「はい」
 彼等は椅子に座り話をしている。
「それでは我々も」
「ええ。時は来ました」
 何かがあったようである。二人は頷き合う。
 それから立ち上がる。そして再び公園の中に消えた。
「あそこだ」
 それを遠くから見る影達がいた。あの戦闘員達である。
「遂に尻尾を掴んだな」
「うむ」
 彼等もまた頷き合う。そして姿を消した。
「本部に連絡だ」
 そう囁き合っていた。そのまま消えていった。
 それから数日経った。ここに何人かの異様な風采の者達が入って来た。
「行きましょう」
「おお」
「了解」
 彼等はそれぞれに別れた。そして個々に山に入っていくのであった。
 その時村雨と役はあの家にいた。丁度朝になった時であった。
「お早うございます」
 村雨は居間でソファーに横になって寝ていた。家に残されていた古い皮のソファーである。
「はい」
 役は二階から降りて来た。彼は二階で寝ていた。これはここに隠れる時に二人で決めたことであった。一人が互いに警戒をする為である。
 一階は村雨が担当する。そして二階は役。彼等はこうして手分けしてバダンを警戒していたのだ。
「ところで」
 役が彼に声をかけた。
「わかっていますよ」
 村雨はそれに対して引き締まった顔で答えた。
「では」
「はい」
 村雨は起き上がった。そして二人はすぐに家を出た。そしてそのまま森に入って行った。
 二人は青山公園に出た。森から出るとすぐに日差しに迎え入れられた。そして他の者達にも。
「お待ちしておりましたよ」
 そこで誰かの声がした。
「その声は」
 村雨はその声を聞くとすぐに身構えた。そして辺りを見回した。
 そこに彼等はいた。皆既にゼクロスを取り囲んでいる。
 村雨と正対する位置にヤマアラシロイドがいた。彼は村雨を見ながら不敵な笑みを浮かべている。
「ふふふふふ」
「何がおかしい」
「いえ、楽しいのですよ」
 彼は余裕に満ちた様子でそう返した。
「貴方と再び御会いできたのがね」
「戯れ言を」
「戯れ言ではありませんよ」
 彼は言った。
「ようやくあの時の戦いの続きができるのですからね」
「横須賀での時か」
「はい」
 彼は答えた。
「まさかお忘れになったわけではないでしょう。貴方が記憶を取り戻された時なのですから」
「確かにな」
「そしてこれも」
 彼はここで腕を振るった。するとその手の中に一本の槍の様な針が現われた。
 そしてそれを村雨に向けて投げた。しかし村雨はそれを上に跳んでかわした。
「どういうつもりだ」
「挨拶ですよ。ほんのね」
 彼は笑いながらそう言った。
「これから貴方を地獄にお送りする前の」
「どうやら復活しても大言する癖はなおっていないようだな」
「大言!?とんでもない」
 彼はやはり笑いながらそう言った。
「真実ですよ。私が言う事は全て真実です」
「バダンが真実なぞ言うのか」
「ええ。何故なら」
 彼の後ろにいる他の者達も動いた。
「貴方がここで死ぬのも事実だからです」
「やってみるか」
「ええ」
 彼はそう言いながらニヤリと笑った。
「今ここでね」
 左手を広げて顔の前にかざす。するとまず目が変わった。
 髪が伸びそれが針になる。そして服が徐々に化け物の身体になっていく。
 他の者達も同じであった。皆バダンの改造人間に変身していた。
 そして戦闘員達も姿を現わす。彼等もまた村雨と役を取り囲んだ。
「さあ貴方も」 
 ヤマアラシロイドは村雨に対して言った。
「変身しなさい。そして私達に倒されるのです」
「倒されるつもりは毛頭ないが」
 彼はゆっくりと前に出ながら言った。
「だが変身するのは同意だ。言われずともな」
「ふふふ」
「では行くぞ、バダンの者達よ」
 彼はゆっくりと変身の構えに入った。
「ここを逆に貴様等の墓場にしてくれる」

 変・・・・・・
 まずは右手を真横に置く。そしてそこから斜め上四十五度に上げる。そして左手をそれと合わせ垂直にする。
 それから左手を上げて左斜め上に持って行く。右手はそれを合わせて垂直にさせる。
 それと共に身体が変わっていく。銀色になり手足が赤い炎の色になる。だがその先の手袋とブーツは機械の色である。
 ・・・・・・身!
 左手を拳にし、それを脇に入れた。右手はそれと連動し斜め前に突き出す。
 顔を赤い仮面が覆った。まずは右を、そして左を。眼が緑になった。

 光が彼を覆う。そしてそれが消え去るとそこに赤い機械のライダーがいた。
「トォッ!」
 彼はすぐに跳んだ。そして空中で攻撃の態勢に入る。
「無駄なことを」
 ヤマアラシロイドはそれを見上げて不敵に笑った。
「空中でも貴方の相手をしてくれる者はおりますよ」
 ここで彼の後ろにいる二体の改造人間が動いた。
「頼みますよ」
「了解」
「わかりました」
 タカロイドとドクガロイドがすぐに動いた。彼等は翼を羽ばたかせ天にあがった。
「食らえっ!」
 まずはタカロイドが羽根を投げつけてきた。
 だがゼクロスはそれをかわした。空中で身体を捻ったのだ。
「甘いっ!」
「甘いですか!」
 だがそこにドクガロイドが襲い掛かって来る。間髪入れぬ攻撃だ。
「バダンが甘い。よくぞ言ってくれました」
 そう言いながら翼をはばたかせる。
「その言葉、後悔させてあげましょう」
 毒粉を撒き散らしてくる。そしてそれでゼクロスを覆おうとする。
 だがゼクロスはそれに対して急降下してかわした。だがその下には既に他の者が待っていた。
「見え見えだ!」
 そこにはトカゲロイドとクモロイドがいた。
 まずはクモロイドが攻撃を仕掛ける。口から糸を吐いてきた。
「フン!」
 それはゼクロスに向けて襲い掛かる。だがゼクロスはここで足に赤い光を溜めた。
「これでどうだっ!」
 そしてその赤い光で糸を切り裂いた。そのまま急降下を続けクモロイドに攻撃を仕掛けようとする。
 だがそこにトカゲロイドが出て来た。
「させんっ!」
 口から炎を吐く。それでゼクロスを焼き尽くさんとする。
「これは防げまい!」
 だがゼクロスはそれも薙ぎ払った。何と赤い光の足でその炎を断ち切ったのである。
「何と!」
「この程度の炎で!」
 そのまま急降下を仕掛ける。そしてこの二体の怪人を倒そうとする。だがそれはならなかった。
「そうはさせないわ」
 横からバラロイドが攻撃を仕掛けてきたのだ。バラの棘の蔦でゼクロスを打とうとする。
「ムッ!」
 それは上からゼクロスに襲い掛かってきた。彼は止むを得なくそちらに攻撃を向けた。
 腕に光を集める。それでバラの蔦を弾き返した。
 そして着地する。攻撃に移る暇もなくカマキロイドとカメレオロイドが攻撃を仕掛けてきた。
「**(確認後掲載)ぃ!」
 鎌と刀が来る。ゼクロスはそれを巧みなフットワークでかわす。そして一旦後方に退いた後攻撃に移ろうとする。
 しかしそこにも怪人達の攻撃が来た。
 ジゴクロイドとアメンバロイドである。拳が彼を襲う。
「クッ!」
 それは普通の拳ではなかった。ボクサー、そして拳法家の拳である。動きが尋常なものではない。
 だがゼクロスはそれを身を屈んでかわす。そして彼等の腹に逆に拳を繰り出そうとする。
 そこで二体の怪人は退いた。そして今度はカニロイドが出て来た。
「これならどうだ!」
 鋏でゼクロスの首を狙う。それで断ち切るつもりなのは言うまでもない。
 彼はその鋏を掴んだ。だがカニロイドは力で押し切ろうとする。
「グググ・・・・・・」
 両者は力比べに入った。互いに一歩も譲らない。
 しかし遂にゼクロスが勝った。彼は怪人を上に放り投げた。
「今だ!」
 そこから飛び上がり蹴りを放とうとする。しかしそこにも邪魔が入った。
「そうはさせません」
 ヤマアラシロイドが来た。彼は棘の槍でゼクロスを追い詰めてきた。
 稲妻の様な速さで槍を繰り出す。それは的確にゼクロスの急所を狙っている。
 ゼクロスはそれを巧みな動きでかわす。だがその後ろに他の怪人達も迫って来ていた。
「危ないゼクロス!」
 役がそれを見て叫ぶ。後ろからバラロイドの蔦が来た。
「喰らえっ!」
「クッ!」
 ゼクロスはそれを避けようとする。だがヤマアラシロイドの槍に気をとられそれは鈍かった。
 間に合わない。蔦がその背を撃つ。そう思われた瞬間であった。
 蔦が弾け飛んだ。何かがその蔦を撃ったのだ。
「ムッ!?」
 バラロイドだけではない。他の怪人達も動きを止めた。
「誰だっ!」
 まずはその弾き飛ばしたものが何であるか確かめようとした。それは一本のロープであった。
「まさか」
「そうだ、そのまさかだ」
 左手からあの声がした。
「バダン、ゼクロスは倒させはしないぞ!」
 そこには仮面ライダー]がいた。彼はライドルロープを手に太陽を背にして立っていた。
「]ライダー!」
 怪人達は彼の姿を見て思わず叫んだ。
「どうしてここに!」
「貴様等の行動なぞすぐにわかることだ。もっとも今回はゼクロスと合流する為にここに来たのだがな」
 彼はライドルをスティックに換えながらそう答えた。
「さてと」
 彼は跳躍してゼクロスの側に来た。
「加勢するぞ、ゼクロス。もう安心していいぞ」
「申し訳ありません」
 ゼクロスは彼に対して礼を述べた。だが]はそれに対して言った。
「礼はいい。今はこの連中を退けることだけを考えよう」
「はい」
 ゼクロスはそれに答えた。そして彼もナイフを取り出した。
「さあ来い」
 彼等は背中合わせに取り囲む怪人達と対峙した。彼等はジリジリと睨み合う。
「フン、たった二人だ。どうということはない」
 トカゲロイドがそう言った。
「そうだな、確かに」
 それにジゴクロイドも同調する。
「ならばさっきと大して変わらん。二手に別れてやるぞ」
「うむ」
 怪人達はその言葉通り二手に別れようとする。だがここで]ライダーが言った。
「誰が俺一人だけだと言った!?」
「何!?」
 その時だった。怪人達の周りに雷が落ちてきた。
「ムッ!」
「これはまさか!」
 その雷の主が誰か、わからないものはいなかった。
「その通りだ!」
 そこにまた一人ライダーが姿を現わした。彼は雷を全身に纏っていた。
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ!仮面ライダーストロンガー見参!」
「クッ、ストロンガーもか!」
「俺だけではないぞ!」
 ストロンガーが叫ぶ。すると林の中からもう一人姿を現わした。
「ケケーーーーーーーッ!」
 それはアマゾンであった。彼は天高く跳躍しゼクロス達のところに来た。
「ゼクロス、もう大丈夫!」
 ゼクロスの前に来てそう言った。
「アマゾンが来たから何も心配いらない!ここは任せる!」
 そして怪人達を睨みつける。その背鰭が激しく動いた。
「おのれ、四人もライダーが」
 ヤマアラシロイドはそれを見て歯噛みした。だがそこでまた声がした。
「ハリケーーーーーン!」
 青いマシンがこちらにやって来る。そしてそこから何者かが跳んだ。
「トォッ!」
 空中で一回転する。そしてストロンガーの横に着地した。
「仮面ライダーX3、貴様等に引導を渡す為に来たぞ!」
「X3もか!」
「そうだ、そして俺もいる!」
 そこでX3に目掛けて放たれたクモロイドの糸を炎が焼き尽くした。
「スーパー1か!」
「その通り!」
 銀のライダーがそこに姿を現わしてきた。
「どうやら間に合ったな」
 そしてまた一人声がした。
「俺も忘れてもらっては困るな」 
 ライダーマンであった。彼はゆっくりとこちらにやって来てスーパー1の横に来た。
「空には俺がいるぞ!」
 怪人達は空を見た。するとそこにはスカイライダーがいた。
「バダン、空は押さえたぞ!」
「おのれ!」
 怪人達は逆に取り囲まれる形となってきた。そしてあの二人が姿を現わした。
「これで全員揃ったな」
「ああ、やっとな」
 二人のライダーが銀のマシンに乗ってこちらにやって来る。彼等はマシンから飛び降りた。
「トゥッ!」
 そしてストロンガー達とは逆の位置に着地する。そして怪人達と対峙した。
「ダブルライダー」
 怪人達の誰かが彼等の名を呼んだ。
「そうだ」
 そして彼等はそれに答えた。
「ゼクロスと合流する為にここへ来たのだがな。だが貴様等までいるとは思わなかった」
「戦いは先になると思っていたが遭ったからには仕方がない。ここで決着をつけさせてもらうか」
 ライダー達はその言葉を合図にするかのように構えをとった。そして怪人達に向かい合う。
「フフフ、面白い」
 だがヤマアラシロイドはここで余裕の笑みを浮かべた。
「我々にとっても好都合ですね、ここで貴方達と戦えるとは」
「どういう意味だ」
 X3がそれに問うた。
「貴方達の首級を挙げることができるからですよ。そしてそれを偉大なる我等が首領に献上する」
「あの首領にか」
「ええ。それでバダンの世界征服は成ったも同然です。貴方達は我等が理想世界の為に礎となるのです。感謝しなさい」
「戯れ言を」
 ゼクロスがそれを聞いて言った。
「我々は貴様等に倒される為に生きているわけではない」
「その通り、むしろその逆だ」
 二号が言った。
「貴様等を倒すことこそ我等が使命、それは決して変わることがない」
「確かに」
 ヤマアラシロイドはそれでもなお笑っていた。
「しかしそれは我々にとっても同じことなのです」
「所詮戦うしかないということか」
「まあそういうことになるでしょう」
 スーパー1に言葉を返した。
「そして我々はこれ以上貴方達とお話するつもりはありません」
「やるということか」
「ええ」
 ]ライダーの問いに答えた。
「今更言う必要も無いでしょう、それは」
「確かにな」
 スカイライダーが着地してきた。
「ではここで決着をつけようか」
「グルル」
 一号とアマゾンが再び構えをとる。他のライダー達もだ。
「それは我等とて望むところ」
 怪人達も構えに入った。そして両者は睨み合いをはじめた。その時であった。
「同志達よ」
 そこでしわがれた低い声がした。
「その声は」
 ダブルライダーがまず反応した。そして他のライダー達も続いた。怪人達もである。
「フフフ、やはり貴様等がまず振り向いたか」
 暗闇大使はそれを見て満足したように笑った。
「どうやらわしはダモンとは声まで似ているようだな従兄弟だから当然か」
「何をしに来た」
 ゼクロスが彼に問うた。
「まさか貴様も戦うつもりか」
「そうして欲しいか?」
 彼は不敵な様子でそれにこたえた。
「ならばそうしてもよいがな」
「ムッ」
 ゼクロスは彼と向かい合った。だが彼は攻撃を仕掛けては来なかった。構えもとってはいない。
「どういうつもりだ」
「これでわかるだろう」
 暗闇大使は構えをとっていないことでそれを示した。
「今は貴様等と戦うつもりはないということだ」
「どういうことだ」
「まあそうつっかかるな。わしとて戦いは心得ている」
 そう言いながら怪人達に顔を向けた。
「今は下がるがいい。よいな」
「しかし」
 だが彼等はそれに抵抗を示す。大使はそんな彼等に対して言った。
「同志達よ」
 その時目が怪しく光った。
「偉大なる我等が首領の御命令である。それ以上は言わぬぞ」
「首領の」
「そうだ。わかったな」
「はい」
 彼等は頭を下げた。そして変身を解いた。
「先に行くがいい。ここはわしに任せよ」
「ハッ」
 怪人達は姿を消した。そして大使と戦闘員だけが残った。その戦闘員達も暗闇大使の側に来た。
「さてライダー達よ」
 彼はライダー達と正対した。
「よくぞここまで来た。この伊勢までな」
「伊勢か」
「そうだ。ここに我等の本拠地があることは既に知っているな」
「無論、だからこそ来たのだ」
「貴様等を倒す為にな」
「威勢がいい。やはりこうではなくてはな」
 暗闇大使は余裕に満ちた笑いを発した。
「面白くとも何ともないわ」
「戯れ言はいい。どういうつもりだ」
「どういうつもりか?」
 大使はライダー達のその言葉にもまだ笑っていた。
「それは貴様等が一番わかっていることであろう」
「我々をからかうのもそれまでにしておけ。貴様が腹に一物あるのはもうわかっている」
「買い被ってくれるな、また」
「バダンの大幹部、それがどういったものか俺達がわからないとでも思うか」
 ライダー達はそう反論した。
「ましてや貴様はあの地獄大使の従兄弟、そう簡単に言葉を信じられはせん」
「ダモンのか。かってはそれが怒りの源であったな」
 彼はその名を聞き目を細めた。
「だが今では懐かしい。我が半身であった」
 そしてライダー達を睨みつけた。その目はもう笑っていなかった。
「半身の仇はとらねばならぬな。だがそれは今ではない」
「まだ言うか」
「フン」
 大使はここで彼等を鼻で笑った。
「機が来ておらぬからな。ライダー達よ、松坂に来い」
「松坂」
「そうだ、わしはそこで待っている。バダンの同志達と共にな」
 これは事実上の宣戦布告であった。
「そこで貴様等を倒してくれよう。さあ、来るのか来ないのか」
「言うまでもない」
 ライダー達の返答は決まっていた。
「言われずとも来てやる。暗闇大使」
 ここで彼の名を呼んだ。
「松坂が貴様の最後の地になる。覚悟していろ」
「その言葉、貴様等に返らねばよいがな」
 だが彼の余裕は変わることがなかった。
「バダンの力、見せてやろうぞ」
「望むところだ」
 ライダー達もその宣戦布告を受け取った。こうして両者の最後の戦いが決まった。
「では松坂で会おうぞ」
 そう言うと身体をマントで覆った。そしてその中に消えた。戦闘員達も姿を消した。
「消えたか」
 ライダー達はそれを見送った。後には青山の緑の山々だけが見えている。
「行くか」
「おう」
 ライダー達は口々に言い合った。
「最後の戦いだ」
「これで全てが決まるぞ」
「うむ」
 彼等は頷き合う。そして最終決戦に思いを馳せるのであった。


戦士達の集結   完


                               2004・12・5


[222] 題名:戦士達の集結2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2004年12月16日 (木) 22時00分

 岩場に彼等はいた。そこから上陸していた。
「足下に気をつけなさい」
 ジェラインド=ブリックことヤマアラシロイドは他の者に対して言った。
「ここで怪我をしては何もなりませんからね」
「ハッ」
 戦闘員達がそれに頷く。他の改造人間達もそこにいた。
「同志ヤマアラシロイドよ」
 タカロイドが彼に声をかけた。今は人間の姿であった。
「はい」
 ヤマアラシロイドはそれを受けて彼に顔を向けた。
「今この基地に暗闇大使がおられぬというのは本当か?」
「そのようですね」
 彼はそれに答えた。
「どうやら松坂におられるようです」
「そうか」
 彼はそれを聞いた後で頷いた。
「あの地に防衛線でも築いておられるのかな」
「詳しいことはわかりませんが」
 彼もまだそこまでは聞いてはいなかった。
「おそらくそうではないでしょうか」
 だがそれ位の予想はつけることはできる。そしてそれは当たっていた。
「ならば我等もそこに行くことにるかもな」
 アメンバロイドがここで入って来た。
「そこでライダー達を食い止めるということも可能だからな」
「そうですね。伊勢に入る前に彼等を倒せることができればそれでよし。ただ」
「ただ、どうした?ドクガロイド」
「いえ」
 彼はジゴクロイドの問いに言葉を濁した。
「そうそう楽観はできないだろうな、と思いまして」
「確かにな」
 ここで前から声がした。
「今は決戦の時だ。ほんの少しの油断が命取りとなるだろう」
 そこには三影がいた。彼は基地の入口の前で立っていた。
「ライダー達は手強い。奴等に勝つ為には少しでも力が必要だというのが首領の御考えだ」
 彼は同志達に対して言った。
「そして今貴様等の力が必要なのだ。いいわ」
「無論」
 ヤマアラシロイドだけではない。他の者達もそれに答えた。
 ニヤリと笑う。三影もそれに対して不敵な笑みで返す。
「わかっているな。ならばいい」
 そして同志達に対してまた言った。
「入ろう。首領がお待ちだ」
「うむ」
 そして彼等は中に入った。そして首領への謁見を行うのであった。
 謁見を終えた彼等はある部屋に入った。そこは奈落であった。
 暗闇が底まで続いている。そしてその果ては見えない。ただ闇があるばかりであった。
 そこから円柱がそびえ立っている。それはそれぞれの長さで段のようになっていた。
「でははじめましょうか」
 ヤマアラシロイドが他の者に声をかける。
「ああ」
 彼等はそれを了承する。そして彼等は跳びそれぞれの席にそれぞれの姿勢で位置した。
「三影、いやタイガーロイドは」
 カニロイドが辺りを見回して問うた。
「仕事だ。この基地の防衛を備えているらしい。今は来れないとのことだ」
「そうか」
 彼はクモロイドの言葉に頷いた。
「ならばよい。だがあの男はどうも我等とは少し違うな」
「それは当然よ」
 バラロイドがそれに答えた。
「彼は元々私達とは違うから。生粋のバダンの者なのよ」
「確かに」
 カメレオロイドが闇の中からスッと姿を現わした。
「彼は私達の様に選ばれたのとはまた違う。バダンを選んだのだからな」
「そしてバダンはそれを認めた」
 カマキロイドがそれを聞いて呟いた。
「彼自身を」
「そういうことですね」
 ヤマアラシロイドがそれを総括するようにして言葉を発した。
「私達はバダンに選ばれた。だが彼は選んだ。違うのは当然でしょう」
「だが我等があの男より劣っているわけではないがな」
 アメンバロイドがそこで言った。
「それは言うまでもない」
 トカゲロイドもそれに同意する。
「しかしあの男の気は我等とはまた違う。何かが違うのだ」
「邪悪さがないといいまようかね」
 ヤマアラシロイドの言葉が本質を衝いていた。
「純粋なものを感じます、今も。そしてその向けられる先は」
「あの男か」
「はい、彼です」
 彼は同志達に答えた。
「彼の目はあの時から変わってはいませんよ」
「確かにな」
 それは彼等にもよくわかっていた。
「では今ここにいるのは何かと不満かもな。すぐにでて出向きたいだろうから」
「それはどうでしょうか」
 しかしヤマアラシロイドはそれには賛同しなかった。
「どういうことだ」
 彼等はそれに対して問わずにはいられなかった。そして問うた。
「牙も爪も時には研ぐ必要があるということです」
 彼は怪しい笑みを浮かべてそれに答えた。
「ましてや彼は虎なのですから。全ての獣の頂点に立つ王者なのですよ」
「ううむ」
 実際に虎の力はかなり大きい。よく獅子と比較されるがその身体は虎の方が遙かに大きい。そしてその力もだ。虎の強さはそれだけのものがあるのだ。
「そして虎は誇り高い。時も知っています」
「時もか」
「そうです。今は戦いの時ではありません。ですが時が来たならば」
「狩る」
「はい」
 彼は同志達の言葉に頷いた。
「それで全てが終わるでしょう。ふふふ」
 彼は再び怪しい笑みを発した。それは闇の中に響いていた。
 彼等はそのまま闇の中に消えた。そして哄笑だけがそこに響いていた。

 ライダー達はこの時静岡を過ぎ愛知に入っていた。
 九台のバイクが進む。その先頭には本郷がいる。
 その横には一文字がいる。そして彼等に導かれるようにして他のライダー達が続く。
 風見と神、アマゾンと城、筑波と沖。結城は最後尾にいた。
 豊橋に着いた。彼等はそこで一旦止まった。ドライブインに入った。
「ふう」
 バイクから降りヘルメットを外す。そして中に入った。
 大きなテーブルに着く。そしてようやく一息ついた。
「どうやら奴等はもう伊勢に入ったようだな」
 まずは一文字が口を開いた。
「そうみたいですね。ここか渥美から海で行ったようです」
 神が答えた。
「だろうな。一番近いからな」
 本郷がそれを聞いて言った。その顔はやはり真剣なものであった。
「じゃあこっちも急がないとな。おやっさん達は今どの辺りだ?」
「静岡を出たところだ。そんなに離れてはいない」
 結城が風見の問いに答えた。
「じゃあ問題はありませんね。問題があるとしたら」
 沖が言った。
「良の奴だな。何処にいるか、だ」
 城がそこで口を入れてきた。皆それに頷いた。
「多分もう津にはいないでしょうね」
 筑波が考えながら自分の考えを述べる。
「だろうな。そのまま留まるには危険だ。バダンの奴等と挟み撃ちに遭う可能性があったからな」
「だとすれば何処だ」
 ダブルライダーはそう言いながら考え込む。ここでアマゾンが口を開いた。
「これアマゾンの予想」
「おお」
 一同は彼に目を向けた。
「良は多分山の方にいる。そういう予感する」
「山か」
 彼等はそれを聞き顔を見合わせた。
「だとしたら大体予想はつくな」
「ええ。三重で山と言えば」
 西の方しかない。そしておそらく伊勢より北だ。ならば大体彼がいそうな場所が絞れてくる。
 地図を取り出した。そしてそれを見ながら色々と話をする。そして遂に結論が出た。
「ここだ」
 彼等は一斉にある場所を指差した。
「そこ以外には考えられないな」
「ああ」
 皆同じ考えであった。そして彼等は食事を終えた後一斉に席を立った。
「行くか」
「うむ」
「まずは合流だ」
 そして彼等は戦場に向かうのであった。爆音が道に轟いた。
 
 その頃伊勢では謎のテロが起こっていた。伊勢のとあるテーマパークが謎の爆発を起こしたのだ。
 建物は全壊した。幸い客は全く入っておらず犠牲者は少なかった。だがここで経営している者達の不正や利権が露になり、このことで大量の逮捕者が出た。
「わしは悪くない!悪いのはあいつ等だ!」
 その総責任者であるとある大企業の社長がテレビの前に醜く叫ぶ。彼は多くの社員をリストラし、関連企業を次々と潰してこのテーマパークに巨大な利権を置いていたのだ。そしてそれを貪り続けていた。
 この男は会社にどれだけの損害を与えても平然と居座っていた。そして私腹を肥やし続けていたのだ。
 彼とその一味に対する批判は頂点に達していた。とりわけ彼にリストラされた者や関連会社を潰された者達の怒りは凄まじかった。そして遂に正義の裁きが下された。
 彼はある日世論の追求を逃れて一人愛人のマンションで酒を飲んでいた。
「わしの何が悪いんじゃ」
 古い歴史ある街に彼はいた。この様な愚劣な男には相応しくはない街である。
「私腹を肥やして何が悪い。わしの様に偉い人間は何をしても許されるんじゃ」
 彼はそうした考えの人間であった。経営者というよりは**(確認後掲載)者といった方がいい顔立ちをしている。醜く、下衆な顔をしていた。
「おい」
 彼は酒を飲みながら愛人を呼んだ。
「ツマミを持って来い」
 しかし返事はなかった。そのかわりに何かが彼のところに投げ込まれた。
「ん!?」
 泥酔しきった目でその投げ込まれたものを見る。それは床にゴロゴロと転がっていた。
「う・・・・・・」
 それは首であった。美しい黒髪の女の首である。言うまでもなく彼の愛人の首であった。
「ひ・・・・・・!」
 彼はそれを見て失禁した。小だけでなく大の方もである。忽ち部屋の中に悪臭が漂う。
 立ち上がった。そして部屋の中を見回す。
「誰じゃ!」
 だが返答はない。次には部屋の灯りが消えた。
 その中で何かが動いた。そしてこの男はその醜い生涯を終えた。
 翌日彼が行方不明になったと新聞で報道があった。そして数日後この愛人のマンションでバラバラ死体となって発見された。世の人々はそれを聞いて喝采を叫んだ。彼の無能で卑劣な部下達は刑務所に入ることになった。そしてそこで徹底的な虐待を受けたという。
「自業自得だな」
 立花はその記事をライトバンの中で読みながら言った。
「悪人の末路なんてこんなもんだ」
「そうでしょうね」
 隣で車を運転している滝がそれに応えた。
「けれどこのテーマパークのテロって臭くないですか?」
「確かにな」
 立花にもそれはわかっていた。
「バダンの仕業だろうな、間違いなく」
「でしょうね。おそらくこれは警告ですよ」
「わし等へのか」
「ええ、他には考えられません」
「だとしたらかなり手荒な警告でんな」
 後ろの席からがんがんじいが顔を出してきた。
「連中らしいと言えばそうでっけど」
「まあな。ただ爆弾を使っただけなのか、記事だとそう書いてあるが」
「まさか」
 ここで一同は顔を暗くさせた。
「ああ、あれを使ってたんじゃないか」
「時空破断システム」
 竜がここで言った。
「あれを使った、と仰りたいのですね」
「テストも兼ねてな。ほら人の全くいない場所だっただろ、テーマパークなのに」
「ええ」
「実験にはもって来いだろ。それに経営している奴等もろくでもない連中だったからそっちに目がいく。実際このテロよりも奴等の悪事の方に目がいってるしな」
「そういえば犯人も捕まっていないですしね」
「犯人は多分バダンじゃないだろうがな」
 立花はそう見ていた。
「これは奴等に恨みを持つ連中だろう。相当汚いことや悪いことをやって私腹を肥やしていたからな。会社の経営まで出鱈目にして」
「とんでもない奴ですね」
「そんな奴はどうなっても自業自得だがな。ただそれでバダンの影が隠れちまうのはな」
「俺達だけしか気付かない、ってことですね」
 ここでチョロも話に入って来た。
「ああ、もっともそれが目的かも知れんがな」
「警告、ですか」
 佐久間がそこで呟いた。
「ああ。バダンの力を見せ付けるって意味でもな。多分使ったのは爆弾じゃない」
「ですね」
 他の者もそれに賛同した。
「ただダミー工作はしているかも知れんがな、テロの現場は」
「他の者が見てもわからないように、ですか」
「奴等ならその程度はやれる」
「確かに」
「だとするとやっぱり伊勢での戦いは決戦になるだろうな」
「ええ」
「気合入れて行くぞ、そして勝つぞ」
「当然ですよ」
 彼等もそれは同じ考えであった。
「バダンをぶっ潰しましょう」
「そして世界に平和を」
「よし」
 立花は彼等の言葉に対して頷いた。
「ライダー達に遅れるなよ。いいな」
「はい!」
 彼等は力強く答えた。戦いの前から士気は既に高かった。
 それはその後ろの車でも同じであった。そこには谷と三人の博士達が乗っていた。
「前の車は元気ですね」
 助手席に座っている志度がそれを見て微笑んでいた。
「でしょうね。あっちには戦闘要員が集まっていますから」
 車を運転する谷がそれを受けて言った。
「血気も盛んですよ」
「立花さんもいますし」
 後ろにいる海堂が言った。
「ははは、確かに」
 伊藤がそれを聞いて笑った。
「あの人は元気ですからね、何時でも。最初御会いした時は驚きましたよ」
「私もですよ」
 志度もそれに同意した。
「谷さんみたいな方ももう一人おられたのですから」
「おいおい、そりゃどういう意味ですか」
 谷がその言葉に口を尖らせた。
「私はそんなに変わってますかね」
「御存知ない」
 三人は呆れた素振りでそう言った。
「またそんなことを仰る」
 谷は口を尖らせた。
「自分ではそうは思ってはいないですけれどね」
「いやいや、御気を悪くされたのでしたら申し訳ない」
「けれど我々にとっては谷さんも立花さんも非常に頼りになる存在なのですよ」
「そうなのですか」
 彼はそれを聞いていささか機嫌を直した。
「だったらいいですけれどね、私みたいなおっちゃこちょいが」
「いえいえ」
 三人は謙遜する谷に対して言った。
「頼りにしてますよ、本当に」
「今回も頼みますから」
 彼等はやはり科学者である。戦闘員達は何とか相手できるにしろ戦いは苦手である。だからこそ谷の様な存在は有り難いのである。
 谷もそれは同じであった。やはり彼等の存在は有り難い。彼等は互いに仲間であるからこそ信頼し合い、助け合っているのである。
 二台の車もまた伊勢に向かっていた。そして戦場に向けて進むのであった。

 その頃村雨と役は青山町にいた。
 ここは木津川が流れる緑の山地である。見渡す限り山が続き緑の木々が生い茂っている。
 二人はその中に潜んでいた。そして時が来るのを待っていた。
「それでもこんな家があるとは思いませんでしたね」
 役は山の中の家のリビングで呟いた。
「ええ」
 その隣の台所から村雨が出て来た。
「どうやら廃家みたいですけれどね。それでも生活するには支障はありませんよ」
 誰かの別荘であったのだろうか。傷んではいるがかなりいい造りの家である。
「確かに。少なくとも雨露はしのげますし」
「それだけでも大きいですね」
 二人はそう話しながら食事の用意をしていた。見ればカレーである。
「それにわりかし近くに店もありますし」
「ええ」
 道に出ればコンビニもある。二人はそこで色々と買い物もしているのだ。
「姿を隠すのにも苦労しませんね」
「ただ用心は必要ですけれどね」
 ハンバーグカレーであった。ハンバーグはレトルトのものである。二人はそのハンバーグを切ってカレーと共に口に入れる。
「美味い」
 村雨はそれを一口食べてそう言った。
「いいですね。実はハンバーグカレーは食べるのははじめてですが」
「そうなんですか」
「はい。ハンバーグ自体あまり食べたことがありませんので」
「へえ」
 これは少し意外であった。
「タルタルステーキの方が多いですかね、食べてきたのは」
「タルタルステーキですか」
 馬の生肉を細かく刻んで卵や玉葱の細かく切ったものと混ぜて食べる料理である。元々モンゴルで食べられていた料理がもととなっている。
「あれも美味しいですよ。馬の肉は癖もありませんし」
「そうですね」
 馬肉は村雨も食べたことがある。
「俺は馬刺しが好きですね」
「あれもいいですね。大蒜醤油で」
「はい。一度食べたら病みつきになりますよね」
 村雨の顔がほころんでいた。
「あれが好きでして」
「私もですよ。日本ではあれが好きなだけ食べられるのですから:
「そういえば他の国ではあまり食べないですね」
「ええ、生肉自体が」
「確かに。東南アジアで生の魚食べて驚かれた日本人がいたそうですね。それも鯛を」
「そうらしいですね。まあそうでしょう」
 役は首を縦に振りながらそう言った。
「生の肉や魚をあれだけ食べるのは日本だけですから」
「俺も外国でそれ見てびっくりしましたね。生で食べるのを凄く嫌がるんで」
「大昔はそうも言っていられなかったのですけれどね」
 役はここで微かに微笑みながら言った。
「人も豊かになったものですよ、本当に」
 その眼は不自然な程温かかった。まるで親が子を見るようであった。
(・・・・・・・・・)
 村雨はそれをやはり違和感を覚えながら見た。彼には何かあるのだろうと思えてならなかった。
「さて」
 一足先に食べ終えた役は彼に声をかけた。
「食べ終わったら行きますか」
「はい」
 ここで丁度彼も食べ終えた。
「食器を洗ってから」
「おっと、そうでした」
 そして二人は食器を洗った。これも見れば何処かで買った安いものである。中には紙のものもある。
 洗いを終えると彼等は家を出た。そして山の中に入って行った。
 その山の中で蠢く影がいた。


[221] 題名:戦士達の集結1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2004年12月16日 (木) 21時57分

            戦士達の集結
「じゃあ先に行っています」
「ああ」
 朝になった。ライダー達はまず自分達のマシンに乗っていた。
 そして立花達の見送りを受けアミーゴを後にする。行く先は決まっていた。
 すぐにその姿は見えなくなった。ただ爆音だけが朝の人気のない道に轟いていた。
「おい」
 立花は彼等の爆音が聴こえなくなったのを見計らって皆に声をかけた。
「滝にケン、モグラにがんがんじい、チョロ、そして竜はわしと一緒に行くぞ」
「はい」
 名を呼ばれた者達はそれに答えた。
「谷さんは博士達と合流して。車は裏に用意してありますんで」
「わかりました」
 谷はそれに対して頷いた。
「史郎と純子達はここに残ってくれ。そして後方支援を頼む」
「ええ」
「わかりました」
 彼等もそれに頷いた。こうして一同の行動が決まった。
 立花はトラックにメンバーを乗せ出て行く。谷は後ろからライトバンを持って来た。そして城南大学に向かった。
 史郎達はアミーゴの中に入った。こうして最後の戦いの前の最後の挨拶と出陣が終わったのであった。

「ライダー達が動いたようだな」
 首領は伊勢の地下深くにある基地の底で暗闇大使に対して語り掛けていた。
「ハッ、どうやらこちらに向かっているようであります」
 彼はバダンの紋章の前に跪き答えていた。
「おそらく我々の所在を掴んだものと思われます」
「そうか、三影は失敗したようだな」
「いえ、それは違います」
 彼はここで三影を庇った。
「今回は基地の警戒を怠った私の不始末でございます。あの者は的確に動いておりました」
「そうなのか」
「はい、私の責任であります。どの様な処罰も受けましょう」
「・・・・・・・・・」
 首領はそれに対して沈黙していた。大使はその前で跪いたままである。
「よい」
 首領は沈黙の後で彼に対して言った。
「どのみちわかるものであった。ゼクロスの力をもってすればな」
 彼は大使を不問にすることにした。
「それに今はそうこう言っている場合ではない。ライダー達を倒すには少しでも戦力が必要だ。貴様のその力は貴重なものだ」
「有り難き幸せ」
「責任は戦いでとるがよい。見事ライダー達の首を挙げるのだ」
「ハッ」
 暗闇大使はそれに謹んで言葉を述べた。
「必ずやライダー達の首級を首領の御前に持って来ましょうぞ」
「うむ、楽しみにしているぞ」
 首領は笑いを含みつつそれに応えた。そしてすぐに次の指令を発した。
「そして関東にいる者達を急ぎ招集せよ」
「ハッ」
「今回は間違いなく決戦になるからな。あの者達が戻って来るまではここの防御に徹することとする」
「わかりました」
「その防衛は貴様に任せる。あと時空破断システムも用意しておけ」
「それは既に出来ております」
 大使は顔を上げて言った。
「何時でも出せる状況であります」
「ほう、そうだったのか」
 それを聞いた首領の声が上機嫌なものとなった。
「それでは今関東にいる者達が戻って来たならばすぐに出すがよい」
「わかりました」
 彼はそれに応えた。
「そして三影にも伝えよ」
 首領の指示は続く。
「すぐにここに戻るようにな」
「わかりました。ではその様に言っておきます」
「頼むぞ」
 首領は厳粛な声で言った。
「そしてだ」
「はい」
 話はこれで終わりではなかった。
「今村雨は何処にいるのだ」
「ハッ、それですが」
 彼はそれを受けて答えた。
「今は津の方にいるようです」
「あの街にか」
「はい、そこでこちらを探っておるようです。どうやら我等が動くものと思っているようです」
「そうか、ここのすぐ側にはいないのだな」
「はい」
 彼は答えた。
「如何致しましょうか」
「放っておけ。だがあの場所にいるとなると少し厄介だな。戻って来る者への障壁となる」
「陽動の兵を送りましょうか」
「そうだな。だがそれは僅かでよいぞ。今は少しでも多くの兵が欲しい」
「ハッ」
 大使はその言葉に頷いた。
「ではそのように致します」
「うむ。松坂にはまだ何人かいたな。そこの者を使え」
「松坂の」
「そうだ。あそこは津に近い。どうだろうか」
「それでしたら私に考えがあります」
 大使はそれを受けて上奏した。顔を上げる。
「どのような考えだ」
「はい、あの地に我等の防衛線を築いておくのです。如何でしょうか」
「松坂にか」
「そうです、あの地は交通の要衝。必ずやライダー達も通りましょう。悪くはないかと」
「ううむ」 
 首領はそれを聞いて考える言葉を漏らした。それから大使に対して言った。
「よし、やってみるがいい。確かにあの地は重要だ」
「ハッ」
「だが急ぐようにな。既に他のライダー達がこの地に迫って来ているということを忘れるな」
「それは承知しております」
「ならばよい。ではすぐに取り掛かれ。だがこの地の防衛も忘れてはならんぞ」
「それは三影に任せましょう。私は松坂を担当します」
「そうか。では松坂は貴様に任せよう」
「有り難き幸せ」
「それではすぐに取り掛かるがよい。そしてライダーを倒すのだ」
「ハッ」
 大使はそこで立ち上がった。
「この暗闇大使、必ずやバダンの理想世界を築き上げて御覧に入れましょう」
「期待しているぞ、フフフ」
 首領は笑った。その声が部屋の中に木霊する。
「全てはこの地からはじまるのだ」
「はい、バダンの世界が」
「ショッカーよりの夢が遂に叶うのだ。私が神となる日がな。フフフフフ」
 首領の無気味な声が部屋の中に響き続けた。暗闇大使はそれを聞きながら凄みのある笑みを浮かべていた。

 村雨はバダンの情報通り津市にいた。そしてその街中を歩き回っていた。
「参ったな、ここで落ち合う約束だったのに」
 彼は誰かを探していた。その眉に不安の色がよぎる。
 商店街に入った。すると後ろから気配がした。
「ムッ」
 それを感じてすぐに振り向く。するとそこに彼がいた。
「やあ」
 それは役であった。彼は村雨の肩を叩いて微笑んだ。
「探されたようですね」
「ええ」
 彼は苦笑いしてそれに答えた。
「今まで何処に行ってたんですか」
「ちょっとね」
 彼はそれに対しては答えをはぐらかせた。そして自分の話に持って行った。
「ところでバダンがこの津に来ているのは御存知ですか?」
「本当ですか、それは」
 彼はそれを聞いて顔色を変えた。
「ええ。ほら、見て下さい」
 彼はそこで親指で後ろを指し示した。
「妙な行動をとっている人が何人かいるでしょう」
「確かに」
 どうやら彼等をつけているようである。外見は普通の者と変わりはないが気配が明らかに違っていた。
「場所を変えますか」
 村雨はそれを見て役に対して囁いた。
「そうするべきかと」
 彼もそれに賛成した。そして二人はそこから立ち去った。脇道に入り込みそこから追っ手をまく。そして別の道に出た。そこで歩きながら話をした。当然周囲への警戒は怠ってはいない。
「そして松坂には暗闇大使が来ているようです」
「あの男がですか」
「はい。どうやらあの街に防衛拠点を置くようですね」
「そうですか。あの街は交通の要衝ですからね」
 松坂は伊勢と奈良、そして愛知を結ぶ場所にある。古来より交通の要地であった。
「おそらく彼はそこで最初の決戦を挑むものと思われます」
「伊勢に通すことは許さない、と」
「そうでしょうね。ただ伊勢もかなりの防衛が施されているでしょうが」
「では海から攻めるのも難しいでしょうか」
「残念ながら。おそらく彼等の守りはかなり堅いでしょう。海から攻めるのは危険です」
「そうですか」
「これは既に他のライダーの皆さんにも伝えておきました。彼等は陸路でこちらに来られることになりました」
「陸からですか」
「はい。何処かで落ち合うべきでしょうね」
「それならこの津は少し危険でしょうか」
「多分。北の方が宜しいかと」
「北ですか」
 村雨はそれを受けて少し考え込んだ。
「それでしたら」
 そして口を再び開いた。
「四日市辺りはどうですかね。あそこからですと攻撃にも移り易い距離にありますし」
「ええ、それでいいと思います」
 役はそれに対して頷いた。
「ただ関東にいるバダンの動きが気になりますね」
「ええ」
 それは村雨も気にしていた。
「彼等が陸路で来るとなると厄介ですね。俺達は挟み撃ちに遭う危険性があります」
「はい、それを避ける為にもこの津にいるのは危ないでしょうね」
「やはりここを移りますか」
「そうするべきかと。幸いこの三重県には隠れる場所も多いですし」
 三重県は東には海を持つが西には山が多い。かなり地形が複雑なのである。
「隠れるとしたら何処がいいですかね」
「そうですね」
 これは役も一緒になって考えた。
「青山峠にでも行きますか」
「青山峠」
「はい、あそこは山に覆われていますから。隠れるにはもってこいです」
「ふむ」
 村雨はそれを聞いてまた考えに入った。
「四日市にも近いですか?そこは」
「ええ、マシンだとすぐですよ」
「そうですか。それなら問題はありませんね」
「はい」
「ではそこにしましょう」
「わかりました」
 こうして二人は青山峠に向かった。そしてそこで他のライダー達を待つと共に身を隠すことにしたのであった。バダンは彼等の姿が消えたのを見てすぐに津市の追っ手を他に向けた。だが彼等を見つけることはできなかった。
「何処に消えたか」
 本部で防衛の指揮にあたっている三影にもそのことは耳に入っていた。
「ハッ、その件に関しては既に津に向かった者に捜索を命じておりますが」
「消息は掴めていないのだな」
「はい」
 報告をした戦闘員は答えた。
「残念ながら今のところは」
「そうか」
 三影はそれを受けて頷いた。
「こちらに奇襲を仕掛けるようなことはないでしょうか」
 ここで別の戦闘員が尋ねてきた。だが三影はそれには首を横に振った。
「それはないだろう」
「そうですか」
「今ここには関東に向けた者が戻ってきつつある。それに海と松坂を押さえてある。そうそう奇襲を仕掛けてはこれない」
 彼は言った。
「ここの防御もかなり堅くなっている。そして警備もな。これで襲撃を仕掛けるのはゼクロスですら不可能だ。そのうえ」
「そのうえ?」
「他のライダー達も来ているのだろう。おそらく奴等との合流を優先させる筈だ。今ここへの奇襲は有り得ない」
「わかりました」
 その戦闘員はそれを聞いて納得した。
「しかし所在が掴めないのではやはり危惧は拭えません。何としても探し出しておかなくては」
「いざという時にも危険です」
「そうだな。ゼクロスの能力を考えると」
 村雨はそれに納得した。ここで他の戦闘員に問うた。
「今他の九人のライダー達は何処にいる」
「ハッ」
 それに対して彼の後ろにいる戦闘員が敬礼をして答えた。
「今彼等は静岡におります。まずはライダー達が先行しています」
「ライダー達がか」
「はい、そしてその後ろに立花藤兵衛や谷源次郎達が続いております。戦える者は全て来ているようです」
「ふむ」
 三影はそれを聞いて思索に入った。
「そして同志達は今何処だ」
「はい、それですが」
 彼は言おうとした。その時指令室に音が鳴った。
「ムッ」
 警戒警報の音ではなかった。それとは別の音であった。
「何だ!?」
「落ち着け、敵ではない」
 三影は身構えた部下達に対して言った。
「戻って来たようだな」
「関東の同志達がですか」
「うむ。それ以外にはない」
 彼はそれに答えた。
「思ったより早かったな」
「はい」
「ライダー達の動きに気をとられるのではないかと思っていたが」
「それは杞憂だったようですね」
「うむ。では彼等を迎えよう」
「ハッ」
 三影は戦闘員達の一部を引き連れ指令室を後にした。そして基地の入口に向かった。


[220] 題名:戦士小話 ある日のルルイエ 名前:真理 MAIL URL 投稿日:2004年12月13日 (月) 17時25分

南太平洋上空を紫の鳥が飛ぶ。この鳥が向かう先にある聖地ルルイエ≠ノは、ある戦士≠ェ待っている。

紫の鳥はルルイエ≠ノ張られた結界を擦り抜け、ティガの姿になった。ティガは、ルルイエ¢S体が見渡せる高台に向かって歩く。
やがて高台に辿り着いた時、佇んでいた戦士≠ェ声をかけてきた。
「ティガ、来たのね」
高台に立っていたのは、カミーラだった。ティガは、カミーラの姿に微笑む。

3000万年という長い時の流れに渡り、封じられてきた聖地ルルイエ=cそのルルイエ≠ノTPCの調査隊が踏み込んだのは、戦士≠兵器として利用する人造戦士計画『F計画』の実行のためにティガに代わる戦士≠捜すという理由からだった。
そのTPCがルルイエ≠フ調査を隠れ蓑にしてカミーラ、ダーラム、ヒュドラをはじめルルイエ≠フ戦士≠、石化しているのに託けて利用しようとしたことを紆余曲折を経て知ったカミーラの怒りと嘆きはいかばかりだったか。
それを思うと、ティガの心は複雑だった。
「様子はどうだ?」
「大丈夫よ…とは言っても、結界を張っているから私たち戦士∴ネ外は入ってこれないし、飛んでいる鳥や飛行機とかはうまく上空を通過してくれるから安心だけどね」
ティガの問いに、カミーラは『それでも心配だ』と泣き笑いのように言った。
「カミーラ、君は強くなった。私と争った時の君の目は憎しみと悲しみの力を秘めていた。今の君は穏やかでいて意志が強い」
ティガは、カミーラの肩に手を添えた。
「私は、ティガほど『光』『闇』双方の力を上手に使いこなせていない」
カミーラは頭(かぶり)を横に振りながら言った。
今ではティガや他の戦士≠助けることもあるカミーラだが、『光』と『闇』2つの力を使いこなすには相当の技量が必要なのかと悩むこともしばしばだった。
そんなカミーラの手を、ティガはそっと握った。
「私に追いつきたいのはわかるが、無理に力を操ろうとしなくていいのだよ」
カミーラにはカミーラなりの戦い方がある、とティガは諭すように言った。
「そうだね…無理にやろうとしなくてもいいのよね。『女』だからと言われるのが怖かったのもあるけど、何よりもティガの力になりたかったし、役に立ちたかった。
守護者としてこのルルイエ≠ナ暮らすのも、戦いなのよね」
何かを思い出したカミーラの言葉に、ティガは頷いた。

TPCの調査隊に踏み込まれたのを教訓として、ティガとカミーラは戦士∴ネ外の者たちの目に触れるのを防ぐために結界を張った。それでも、心ない者たちによって結界が破られるかもしれないので、カミーラが守護戦士としてルルイエ≠ナ暮らし、ティガが時折様子を見に訪れているのである。

「『女』だからと言って卑下することはないぞ。
このルルイエ≠ナ暮らすのも戦いだ…ルルイエ≠ヘ私たち2人の故郷でもあり、戦士≠スちの憩いの場なのだ。この大事なルルイエ≠壊されないように、カミーラがしっかり守ってくれ。私や、ガイアたちが安らげるように」
「わかったわ」
ティガの言葉に、カミーラは頷いた。

カミーラは、ティガをルルイエ≠ニ外界の境界線まで送った。
「また、来てね」
「ああ…今度はガイアたちと一緒に来るよ」
カミーラの言葉にティガは頷き、紫の鳥になって飛び立っていった。

 〈完〉




Number
Pass

ThinkPadを買おう!
レンタカーの回送ドライバー
【広告】楽天市場にて 母の日向けギフト値引きクーポン配布中
無料で掲示板を作ろう   情報の外部送信について
このページを通報する 管理人へ連絡
SYSTEM BY せっかく掲示板