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第二掲示板@うらたにんわあるど

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[261] 題名:馬と蜘蛛と犀と水溜り 名前:電波時計 MAIL URL 投稿日:2006年01月20日 (金) 22時42分

ここは・・・

見覚えのない場所・・・

見たことない機械がいっぱい・・・

体を動かそうと思っても・・・

動かすことが・・・

できない・・・

ボカァァァァン!!

どこかで爆発がおきた・・・

『この基地は敵の襲撃により放棄します。戦闘員及び研究員は直ちに避難してください。繰り返します・・・・』

敵・・・

敵が来る・・・

敵って・・・

誰・・・

「早く『S』を運び出すぞ!」

「ですが『S』はまだ改造手術の途中です!」

「脳改造は別の支部で施す!早く運び出すんだ!!」

「は、はい!」

『S』・・・

『S』って・・・


ドカァァァァン!!

「うわぁ!!」

カシャ! カシャ! カシャ! カシャ!

体が動くようになった・・・

「し、しまった!今の爆発で固定機具が・・・」

周りを見ると数人の白衣を着た男がいた・・・

「お、大人しくしろ!!」

一人が注射器のような物を取り出して私の腕を押さえつけた・・・

私は反射的に振り解こうとした・・・

ドコォ!!

「ゴォフッ!!」

吹っ飛ばされた男は壁に叩き付けられ動かなくなった・・・

そんな・・・

軽く動かしただけなのに・・・

「ひ、ひぃぃぃぃ!!」

残りの男たちは全員逃げだした・・・

どうして・・・

私は一体・・・

その時ガラスに映った私の姿が目に入った・・・

私は自分の目を疑った・・・

映っていたのは異形の姿をした怪物だった・・・

な、なんで・・・

これが・・・

私・・・

ガシャァァァン!!

私は思わずガラスを手で壊した・・・

ガラスを素手で壊したのに・・・

ガラスの破片が手に刺さっているのに・・・

少しも痛くない・・・

そんなのおかしい・・・

もっと痛いはず・・・

なんで・・・なんで・・・なんで・・・

私は混乱してそこから飛び出した・・・

通路はメチャメチャになっていた・・・

所々から火が出ていた・・・

所々に死体が転がっていた・・・

こんな所は嫌だ・・・

早くここを出よう・・・

私が角を曲がろうとしたとき・・・

そこにいたのは・・・

私の今の姿に似た異形の怪物・・・

「お前、ジョーカーの改造人間か!?」

怪物は言葉を話した・・・

ジョーカー・・・

改造人間・・・

何の話をしているの・・・

「・・・・?様子が変だな・・・お前は一体・・・」

怪物がこちらに歩いてきた・・・

「・・・・や・・・」

死の恐怖が私の心を支配した・・・

「えっ?」

死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない・・・

「い・・・や・・・」

「お前一体なにを・・・」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

私は恐怖から怪物に飛びかかった・・・

ザシュゥゥッ!!


目の前が血で染まっていった・・・





「はっ!!」
明日香は飛び起きた。
「はあ、はあ、はあ、今のは・・・夢か・・・」
周りを見まわした。
女性らしくない散らかった部屋、女らしいものと言えばヌイグルミと使いもしない鏡台だけ・・・・・
いつもの自分の部屋だった。
どうやら転寝してしまったらしい。
「はぁ、疲れてるのか?あんな夢見るなんて・・・・」
今見ていた夢を思い返す。
「そういえば、あの時に護と初めて会ったんだったな・・・・」
こんな形で思い出すとは、明日香自身思ってもみなかった。
「ふぅ・・・」
明日香はため息をついた。
護がネオジョーカーの改造人間と戦ってから四日が過ぎていた。
護は完全に回復していないのに何度も何度も抜け出そうとしたので今は茜と蔵之介が付きっきりで見ている。
明日香は療養中の護に代わってネオジョーカーの事を調べていたが、何一つ手掛りは無かった。
「くそっ!」
明日香は護の手助けもできない自分自身に苛立っていた。
明日香は少しでも気分を変えようとベランダに出た。
表は既に日が沈み暗くなっていた。
遠くの方に高層ビルの明かりが見えた。
「あれから奴らは何の動きも見せていない・・・」
明日香は夜空を見ながら言った。
最初は護と自分を倒す為にすぐに新しい改造人間が送りこまれて来ると明日香は予想していた。
だが、しばらくしても敵がし掛けてくる様子は無かった。
それどころか、それっきり何も起きていないのだ。
奴らは今もこの風景の何処かで暗躍しているのだろうか・・・
そう考えると明日香は余計に苛立った。
「はぁ・・・・」
明日香は再びため息をつくと部屋の中に戻ろうとした。
その時・・・
キィィィィィン
「!!」
明日香はベランダの手摺から身を乗り出して表を見た。
「今のは確かに・・・」
明日香には自分以外の改造人間を探知する能力があった。
そして今の感覚は間違いなく、改造人間だった。
「かなりのスピードで移動している・・・・何かを追っているのか?」
明日香の探知能力は高速で移動する改造人間を捕らえていた。
「・・・・行って見れば解るか。」
明日香は手摺を踏み台に空高くジャンプした。
「変身!!」
明日香が叫ぶと腰に青い石が埋めこまれたベルトが出現した。
そして明日香の体は赤色の体に黒いラインが入った4枚の羽を持つ蜻蛉の改造人間。
『S』こと仮面ライダーソニックに変身した。
変身が完了するとソニックはそのまま怪人の元へと飛び去った。



ここで少し時をさかのぼる

都内某所
メテオ・インパクトによって起きた大災害で東京は現在居住している人間も少なく、廃墟同然のエリアが多い。
ここもその一つであった。
その廃墟となった街中を一台のトレーラーが走っていた。
ほんの数十分前に謎の敵を撃破した彰と理恵たちが乗ったトレーラーだった。
戦いが終わった後に乗るように言われて乗りこんだのだが・・・・
「なあ、もう教えてくれても良いんじゃないか?この車は何処に向かってるんだ?」
彰は先ほどから同じ質問を繰り返していた。
だが、返ってくる答えは決まって
「お答えできません。機密事項です。」
という夏海の返事だけだった。
「なあ、坂本。一体何処に行くんだ?」
と理恵に聞いても
「お答えできません。機密事項です。」
やはり返ってくるのは夏海の返事だけだった。
こんなやり取りが先ほどから延々と続いていた。
それに疲れた彰はもう聞くのを諦めていた。

「なあ、坂本・・・・って寝てるのか・・・」
理恵はいつの間にか椅子に座ったまま眠っていた。
「くぅー、くぅー、くぅー・・・・・」
気持ちよさそうに寝息を立てている。
「こんな時によく寝られるな。」
彰は半ば呆れた様に言った。
「寝こみを襲うつもりですか?最低ですね。」
突然、夏海が彰に話しかけた。
「なななな、何言って・・・俺はそんなつもりは・・・」
彰は心の底から否定した。
その時、
「う、うーん・・・」
彰が大声を出したので理恵が起きそうになった。
「静かにしないと理恵さんが起きてしまいますよ。」
「・・・・・・」
彰は口をパクパクさせて何か言おうとしたが言わない事にした。
(この子と話してると凄く疲れるなぁ・・・)
彰は心の中で密かにそう思った。
その時だった。
ビービービービー!!
突然警報が鳴り出した。
「これは・・・・」
夏海はレーダーを見るとすぐにトレーラーの後部の小窓から外を見た。
「すみません、理恵さんを起こしてください。非常事態です。」
夏海はそう言うと無線を取った。
「中嶋さん、非常事態です。正体不明の怪人がこちらに向かって来ます。相手のスピードから計算しても逃げ切れる可能性は低いです、この先に今は無人のエリアがありますから何とかそこまで逃げ切ってください。」
『何だって!わかった!スピード出すからしっかり掴まってろよ!!』
ブゥゥゥゥゥン!!
トレーラーのスピードが一気に上がった。
「うわわわわ・・・」
バタンッ!!
彰は準備が遅れた為、バランスを崩して床に倒れた。
「いってー。そんな急に・・・」
彰が起きあがろうとした次の瞬間。
「うーん・・・」
寝ていた理恵もバランスを崩して椅子から彰の上に倒れこんできた。
「えっ・・・」
バタンッ!!
「ぐっ!」
彰は理恵ごと再び床に倒れた。
「う――ん・・・・あれ?」
ついに理恵も目を覚ましたが、
気が付くと自分が彰を押し倒している。
「えーっと・・・・この状況って、まさか・・・」
理恵は彰を見て照れながら言った。
「彰君・・・・大胆だよ・・・・私達まだ高校生だし・・・・夏海ちゃんだって居るんだし・・・・」
何をどう勘違いしているのか、真っ赤になって照れている。
「違うだろ!早く退いてくれ!」
「理恵さん、そんな青春の甘酸っぱい1ページやってる場合ではありません。」
「えっ?」
(青春の甘酸っぱい1ページって・・・・)
彰は心の中でツッコミをいれた。
「敵です。現在このトレーラーの後方およそ50m。おそらく改造人間ではないかと。」
夏海が冷静に現状を報告した。
「本当に?」
理恵の表情が真剣そのものになった。
「まもなく無人のエリアに到着します。そこで・・・」
バコッ!!
夏海が作戦の説明をしていた時に突然手のようなの物が天井を突き破った。
バキキッ!!
天井の手が開けた穴を広げようとしている。
「お、おい!やばいぞ!!」
慌てる彰を尻目に、理恵は冷静に携帯電話『コスモフォン』を取り出した。
「私が表に出て戦う。」
理恵はコスモフォンに変身コードを入力した。
『6・0・3・0』
「超光転身」
理恵の体が光に包まれ、光の中から桃色の戦士が姿を現した。
「風の戦士!コスモピンク!!」
変身を終えたコスモピンクが表に出ようとした時、
「待てよ!俺も行く。」
彰が名乗り出た。
「でも・・・確かに彰君は変身できるけど、戦士じゃないし、戦う事なんか・・・」
「一人より二人の方がいい。それに・・・」
「それに?」
「いや、なんでもない・・・」
「?」
理恵は彰が言いかけた言葉も気になったが、やはり彰を戦いに巻き込みたくなかった。
「やっぱりダ・・・」
「では、お願いしてもよろしいですか?」
夏海が会話に割り込んできた。
「夏海ちゃん!!」
「今は緊急時です。確かに一般の方を戦闘に巻き込むのは危険です。ですが、敵の力が解らない現状ではこちらも少しでも戦力があった方がいいです。」
「でも・・・」
「こちらでも可能な限りバックアップします。」
「決まりだ。」
彰はコスモフォンに変身コードを入力した。
『6・0・3・0』
「超光転身」
彰の体が光に包まれ、赤い戦士が姿を見せた。
「炎の戦士!コスモレッド!!」
彰がコスモレッドに変身を終えると、無線が鳴った。
『もうすぐ指定されたエリアだ!』
「わかりました。」
夏海は無線にでるとすぐに、
「では、お二人ともお願いします。」
ギィィィィィ!!
トレーラーは急ブレーキで止まり、天井の怪人は勢いで吹き飛ばされた。
「じゃあ、行って来る。」
「行って来ます。」
二人はトレーラーが完全に止まると同時に表に飛び出した。

表に出た二人の目に映ったのは、
馬のような頭部をした怪人だった。
「おのれぇ・・・・大人しくしていれば良いものを・・・・」
怪人が毒づいた。
「お前・・・一体何者だ!」
コスモレッドが叫んだ。
「ふん、冥土の土産に教えてやろう。俺の名前は『M』。ネオジョーカー破壊部隊の一人だ!」
「ジョーカー?ジョーカーは壊滅したはずだぞ!」
「『ネオ』ジョーカーだ!それに我が組織は不滅だ!世界征服の野望を達成するその日まで滅びる事はないのだ!!」
『M』は誇らしげに言った。
それを聞いたコスモレッドは
「悪は絶えないって奴か。」
と呆れながら言った。
「ホント。なんか凄いね。」
ピンクも同意した。
「「だけど・・・・」」
二人は『M』に向かって言った。
「悪人はやっつけなきゃな!!」
「悪者はやっつけないとね!!」
二人はほぼ同時に叫んだ。
それを聞いた『M』は
「小賢しい!お前等の相手などしている暇はないのだ!アリシタッパーども!こいつらを倒せ!!」
アリシタッパーと呼ばれた黒ずくめの集団が現われた。
『イー』
「やれ!!」
その声に、全アリシタッパーが襲い掛かってきた。
「よし!行くぞ!!」
「うん!!」
レッドとピンクがアリシタッパーと戦い始めようとした瞬間、
「待て待て待てー!!」
何処からか声が・・・・
「ど、何処だ!姿を見せろ!!」
『M』やアリシタッパー達が辺りを見回した。
「あっー!!上!上!」
一番初めに気が付いたのはピンクだった。
その声に全員が上を見た。
何かが空からこちらに向かってきた。
「とうっ!!」
スタッ
「仮面ライダーソニック、参上!!」
ソニックが意気揚揚と名乗る・・・・が、
シ―――ン
突然の来訪者にその場にいた全員が呆然となる。
「んっ?何だその反応は!正義の味方の登場だぞ!!」
ソニックが場の空気の悪さに気づいた。
「ま、まあいい・・・・それよりもネオジョーカー!!一体何を企んでいる!!」
『M』はハッと我に返り、
「裏切り者の『S』か、これは好都合だ。任務を遂行しお前を倒せば、幹部への昇進も有り得る。アリシタッパーども、赤いのと桃色の相手をしろ。」
『イー』
アリシタッパーが再び戦闘態勢に入った。
「よし、行くぞ!!遅れるんじゃないぞ、そこの赤と桃!!」
ソニックが叫んだ。
「俺達の事か?」
レッドが首を傾げた。
「多分・・・・」
ピンクも首を傾げている。
『大丈夫です。少なくとも現段階ではその人は味方です。』
そこに夏海から通信が入った。
『何とか協力してこの場を切り抜けてください。』
「わかったわ。」
ピンクはそれに答えた。
「じゃあ決まりだな。フレイムソード!!」
レッドの掛け声と共に真紅の剣が現われた。
「うん、ウインドアロー!!」
ピンクの掛け声と共に桃色の弓が現われた。
「よし、行くぞ!!ネオジョーカー!!」
ソニックの掛け声と共に3人はアリシタッパーの群れの中に飛び込んだ。



ソニック達が戦闘を始めたのと同じ頃・・・・

護の部屋にて・・・・

「じゃあ、護さん。ちゃんと寝ていてくださいね。」
そう言うと茜は部屋の電気を消して部屋を出た。
「はぁー退屈だ。このままじゃ体が鈍っちまうよ。」
護が『J』と戦ってから四日間。
それから護は一歩も家から出ていなかった。
いや正確に言えば出ていないのではなく、出してもらえないのである。
茜や明日香、蔵之介が護を絶対に出そうとしなかった。
何度も抜け出そうとしたが、その度に阻止された。
「くそっ!俺がじっとしてる間にネオジョーカーが活動を始めたら・・・・・」
「遅いな・・・・・・・活動を始めたぞ。」
「!!」
ガバッ!!
突然の声に護は飛び起きた。
「誰だ!!」
護は部屋を見回した。
声の主らしき者はいない。
「どこを見ている。ここだ。」
天井から声がしたので護が見上げると・・・・
紫に光る四つの目が護を見ていた。
「ふんっ」
スタッ・・・
声の主が部屋の中心に降りた。
「初めまして・・・・・ではないな。」
護は声の主の姿を見た。
まるで蜘蛛のような容姿をした怪人だった。
「貴様・・・・ネオジョーカーの改造人間か!?」
「残念ながらハズレだ。俺は我らの主に仕える『物見の使徒』・・・・」
蜘蛛怪人はそう語った。
「『物見の使徒』だと?いや、そんな事よりネオジョーカーが活動を始めただと!?」
「ああ、お前の仲間、確か・・・・ソニックと言ったかな?戦いを始めているぞ。」
「なっ!?」
護は絶句した。
明日香の奴・・・・何で一人で勝手に・・・・
それにこいつ・・・・嘘を言っている様には見えない。
「早く行かなくて良いのか?」
蜘蛛怪人が尋ねた。
「その前に聞かせろ。それに何故俺にそんな事を教える?」
逆に護が尋ねた。
「俺は物見の使徒・・・・お前達の戦いを見たいからだ。その為にネオジョーカーを動かしたのだからな・・・・・」
蜘蛛怪人こと物見の使徒はそう答えた。
その答えに護は驚愕した。
「ネオジョーカーを動かしただと!?一体どうやって!?」
「知る必要はない・・・・」
物見の使徒はどうでもいいというような答え方をした。
「っ!!・・・・最後にもう一つ聞かせろ。お前は俺の味方か?それとも敵か?」
護が再び尋ねた。
「今はどちらでもない。だが・・・・・」
「・・・・・・だが?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
突然、物見の使徒は黙り込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
長い沈黙の後、ようやく物見の使徒が口を開いた。
「さて・・・・・どうなる事やら・・・・・すべてはあのお方のご意志により決まる。」
「あのお方?何者だ?」
「それは言えない。」
そう言うと、物見の使徒の姿が段々薄くなってきた。
「お、おい!ちょっと待て!」
護は徐々に消えていく物見の使徒に呼びかけた。
『ふふふ・・・・・早く戦場に行け・・・・仲間が死ぬ前に・・・・・・』
そう言い残すと、物見の使徒の姿は完全に消滅した。
「くそっ!!考えてる時間はない!!」
護は窓から表に飛び出し叫んだ。
「変身!!」
護の姿は人間から飛蝗の改造人間、『A』こと仮面ライダーエースとなった。
「ストームホッパー!!」
エースは自分の愛車にして相棒のマシーン『ストームホッパー』を呼び寄せた。
ブロロロロロロ・・・・・・・!!
走ってくるストームホッパーにそのまま飛び乗ると、ストームホッパーに内蔵されているレーダーのスイッチを押した。
ピッ・・ピッ・・ピッ・・
「明日香の奴は・・・・結構遠いな・・・・急ぐぞ!ストームホッパー!!」
ブロロロロロロ・・・・・・・・!!
ストームホッパーはスピードを増し、戦場へ急いだ。



「でやっ!!」
ザシュッ!!
コスモレッドが最後のアリシタッパーを切り倒した。
「残るはお前一人だ!」
コスモレッドは『M』に向かって叫んだ。
アリシタッパーはコスモレッド、コスモピンク、仮面ライダーソニックによって全員倒されていた。
「ちっ、役立たずめ。」
『M』は倒されたアリシタッパー達を見て言った。
「こうなれば、俺が直々に相手になってやる。いくぞ!!」
『M』が三人に向かって突進してきた。
「悪いが早々と決着をつけさせてもらう!!はあっ!」
ソニックが空高く飛び上がった。
そして空中で一回転して『M』に向かって必殺キックを放った。
「ソニックキィィ―――ック!!」
ソニックは一直線に『M』に向かっていった。
だが・・・・・
ヒュン・・・・・・
何かが風を切る音がした次の瞬間・・・・
ギィィン!!
「ぐあっ!!」
ソニックに何かが命中し、空中でバランスを崩したソニックは地面に叩き付けられた。
「何!?」
突然の攻撃に『M』も足を止める。
「仮面ライダーさん!」
ピンクが倒れたソニックの側に駆け寄る。
「くっ・・・・一体何が・・・・・」
ソニックが体勢を立て直そうとした時だった。
ガコッ・・・・
近くの廃ビルから物音がした。
「誰だ!!出て来い!!」
レッドが廃ビルに向かって叫んだ。
すると姿を現したのは・・・・・
まるで犀のような容姿をした怪人だった。
「くそっ!仲間がいたのか!」
レッドが身構えるが、
「な、なんだお前は!!お前のような奴は知らんぞ!?」
『M』自身も突然の乱入者に困惑していた。
(どういう事だ?ネオジョーカーの改造人間じゃないのか?)
レッドは疑問を感じたが、そんな考えはすぐに吹き飛んだ。
「叩き潰せ『メタハンマー』!!」
犀怪人が叫ぶと巨大な鉄球が出現した。
「いくぜぇぇぇ!!」
ブゥンブゥンブゥン・・・・・・
犀怪人は鉄球を頭上で振りまわし始めた。
「一球入魂!!ハンマァァァァプレスッ!!」
ゴォォォォォ!!
回転により勢い付けられた鉄球がレッドに向けて放たれた。
「くっ!」
レッドは鉄球をギリギリでかわすが、
ドコォォォォォォン!!!
「うわぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁ!!」
「くっ!!」
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
鉄球が地面を直撃した際に生じた衝撃波でその場にいた全員が吹き飛ばされた。
「くっ・・・・坂本・・・・無事か?」
衝撃で吹き飛ばされたレッドは剣を杖代わりに立ち上がっていた。
「うん・・・・何とか・・・・・仮面ライダーさんも・・・・・」
ピンクはソニックに肩を貸しながら立ち上がった。
二人はハンマーが直撃した場所より離れていたのでダメージは少なそうだった。
「ちっ!敵のようだな。ならば排除するまで!!」
『M』が犀怪人に飛び掛ろうとした瞬間、
ヒュンッ・・・・・
再び何かが風を切る音がした。
ギィィィン!!
「ぐあっ!!」
『M』に何かが命中した。
「何だ、あの攻撃は・・・・・」
ソニックが思わず口に出した疑問。
それは全員の疑問だった。
ソニックと『M』を襲った攻撃。
どう見ても犀怪人の攻撃ではなかった。
ソニックの時はともかく、
『M』が攻撃を受けた際、犀怪人は何もしていなかった。
ピンクがトレーラーに通信を入れた。
「夏海ちゃん。今の攻撃を解析できる?」

「・・・・・もうやってます。」
トレーラーの中で夏海は『M』が攻撃を受けた時の映像を解析していた
すると、ある事に夏海は気付いた。
『M』が攻撃をくらう直前、
一瞬何かの影のような物が映った。
「これは一体・・・・・」
夏海はこの影を解析した。
ピピピピ・・・・・・
画像解析の結果が出た。
「これは・・・・」
夏海はすぐさまピンクに通信をいれた。
「理恵さん、解りました。」
『どうだったの?』
「あの未確認生物の後方の建物から・・・・」
ポチャン・・・・
「!」
水面に水の落ちる音・・・・・
夏海は慌てて後ろを振り返る。
すると床に何時の間にか大きな水溜りが出来ていた。
「こ、これは・・・・・」
ポチャン・・・・
天井から滴が落ちてきた。
天井を見てみると、『M』があけた穴から水が滴り落ちていた。
そして・・・・・

最後の一滴が・・・・・

水面に・・・・・

落ちた・・・・・

・・・・ポチャン・・・・



「夏海ちゃん?どうしたの、夏海ちゃん?」
突然応答の無くなった夏海にピンクが呼びかけていた。
そのとき、
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!』
「「「!!」」」
夏海の悲鳴。
それを通信機越しにレッドとピンクは聞いた。
また、改造され身体能力が飛躍的に上がったソニックの耳にもその声は届いた。
「夏海ちゃん!!」
「おい、一体どうしたんだ!?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
ピンクとレッドが呼びかけても応答がない。
どうやら通信機が切られたらしい。
「はっ、そうだ。中嶋さん!!中嶋さん!!」
ピンクはトレーラーの運転手の中嶋に通信をいれた
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
返事はない。
こちらも通信機が切られているらしい。
「どうしよう・・・何かあったんだ・・・・・」
突然の事態に混乱するピンク。
「落ち着け、坂本。お前はトレーラーに行け。こっちは俺で何とかする。」
レッド自身もやや混乱気味だったのか、声が震えていた。
「で、でも・・・・・」
「いいから行け!!」
レッドが声を張り上げた。
「余所見とは余裕だな。」
犀怪人が呟いた。
「一球入魂!!ハンマァァァァプレス!!」
再び鉄球が三人に襲いかかった。
ドカァァァァァン!!
「くっ、早く行け!!」
「う、うん・・・・・」
ピンクもそれに従い、トレーラーに向かおうとするが、
「おっと、俺もあの車に・・・・いや、車の積荷に用があってな!!」
ピンクの前に『M』が立ちはだかった。
「何があったかは知らんが、このチャンスは逃さん。」
「待て!!お前の相手は私だ!!」
『M』とピンクの間にソニックが割って入った。
「ちぃぃぃぃぃ!裏切り者がぁ!」
「ここは任せろ!お前は早く!」
「邪魔だぁぁ!!」
『M』はソニックにパンチを放つ。
だが『M』の拳をソニックは素早くかわし、逆に蹴りをお見舞いした。
「ゲフッ!!」
『M』は数メートル吹っ飛ばされた。
「さあっ、早く!!」
「ありがとうございます。仮面ライダーさん。」
ピンクはソニックにお礼を言うとトレーラーへと急いだ。


つづく



次回予告

謎の怪人のパワーに圧倒されるコスモレッドとコスモピンク

『M』と『J』に続く新たな幹部怪人に苦戦するソニック

はたしてエースは仲間の危機に間に合うのか・・・

そして事件の裏で暗躍するのは何者か・・・

次回、スーパーヒーロー作戦OG

第5話 「暗躍」


後書き・・・っていうより楽屋裏トーク?

どうも、電波時計です。
突然後書きを始めました。
記念すべき第1回目のゲストは
彰「どうも、高山彰です」
理恵「坂本理恵です」
護「よっ、高坂護だ」
明日香「寺井明日香だ。よろしくな」
現在登場済みのヒーロー4人に来て頂きました。
どうも、ありがとうございます。
4人「「「「書くの遅すぎ」」」」
い、いきなりですか
彰「遅い、遅すぎる!」
護「短い、誤字脱字が多い!」
明日香「キャラ紹介はまだか!」
ま、まって・・・・
理恵「はい、皆さん待ちましょう」
ほっ・・・書くのが遅いのは重々承知しています。
キャラ紹介はやろうと思えば出来ますが、まだ人様にお見せできる程ではないので・・・
理恵「じゃあ、どうするんですか?」
一応、コンセプト的には
彰→真面目だけど優等生タイプではない。女性恐怖症。理恵と幼馴染。
理恵→天真爛漫だけど芯はしっかりしている。彰と幼馴染。
護→頭も使う熱血系。よくいるヒーロー。
明日香→男勝りで言葉使いも男っぽい。時々女らしい。
こんな所です。
護「よくいるヒーローって、随分投げやりだな」
すみません。
明日香「男っぽいって・・・なんだこの設定は!!」
いいんですよ、明日香さん。これはこれで。
明日香「何!?」
ストーリーに厚みを持たせる為です。
明日香「そう・・・なのか?」
はい。
明日香「・・・・ふんっ!」
護「拗ねるなって」
因みに、彰君と理恵さんには上には書いていない設定があります。
彰「そうなのか?」
理恵「どんな設定ですか?」
彰君は器用で、理恵さんは大食いです。
彰「俺の器用っていう設定はどうしてなんだ?」
手先は器用ですけど、人間関係が少し不器用って事で。
彰「そうなのか・・・・」
理恵「私は大食いなんですか?確かにすぐお腹が空いちゃいますけど」
はい、そうなんです。
理恵さんが大食いなのかは次回明らかになる予定。
これ以外にも書いていない設定が4人ともありますが、それは後々。
ではまた。


[259] 題名:再会 名前:電波時計 MAIL URL 投稿日:2005年08月22日 (月) 21時46分

東京某所高山 彰宅
いつもと変わらない朝・・・
いつもと同じように制服に着替え・・・
いつもと同じように朝食を食べた・・・
いつもと違うこと?
ああ、今日から2年生になるんだった・・・
こうして今日も学校へ行く。
今日もいつもと同じになる・・・・はずだった。

都内某所
いつもと同じ道、通い慣れた道。
この道を歩いているといつも必ず声がかかる。
「おはよー、彰。元気?」
ほら来た。
「元気だと思うけど、そういうお前は、裕二?」
俺が聞くと満面の笑みで裕二は
「元気、元気、超元気だよ。」
と返した。
「今日から2年生だね。クラスとかどうなるかなー?」
「さあな、でも、お前と総一郎とは同じクラスになる気がする。」
「あ、やっぱり?僕もそう思うよ。」
と裕二と話をしていると、前の方に総一郎を見つけた。
「あ、総一郎だ。おーい、総一郎!!」
と裕二が総一郎の所まで走って行った。
「・・・おはよう・・・。」
総一郎はそっけなく挨拶した。
「ははは、相変わらずだね。総一郎。」
そう、総一郎は出会った時からずっとこんな感じだった。
この3人、高山 彰(たかやま あきら)と鈴村 裕二(すずむら ゆうじ)と川上 総一郎(かわかみ そういちろう)は中学校からの腐れ縁だった。
なぜか同じクラスになる。

私立八ノ手高校2年5組
そして、予想通り3人は同じクラスになった。
「腐れ縁は続くな。」
総一郎が皮肉交じりに言った。
「でも、僕は嬉しいよ。また3人同じだね。」
裕二がまた満面の笑みで言った。
「始業式が始まるから、早く行こうぜ。」
クラスメートの一人が言ったので、彰たちは校庭に出た。

始業式が終わって、クラスに戻るとHRが始まったが、
そこで担任が
「えー、突然だが、転校生の紹介をする。」
と言った。
一気にクラス(の男子)がざわめいた。
「どんな子かなー?」
「可愛い子だといいなー。」
などとクラスの男子が話し始めた。
彰は特に意味も無く窓の外を見ていた。
「一体どんな子だろうね。楽しみだね。」
不意に裕二が話し掛けてきた。
「興味無い。」
彰は簡潔に答えた。
「ごめん、彰は女の子が苦手だったよね。」
「別に謝らなくてもいい。それにまだ女子と決まった訳じゃないだろ。」
などと、裕二とやり取りをしていると、転校生が入って来た。
「おおーー。」
彰と同じく興味の無さそうな総一郎以外の男子生徒が思わず声を上げた。
入ってきたのは、多くの男子の期待通り女子だった。
だが、転校生は男子の想像を遥かに上回る美少女だった。
「まずは自己紹介を。」
と、担任が言うと、
「はい。初めまして、私は坂本 理恵(さかもと りえ)と言います。皆様、これからよろしくお願いします。」
「よろしくお願いしまーーす!!」
と、男子が声をそろえて返事をした。
何処かで見たような、と彰は転校生を見て思った。
「席はとりあえず・・・高山の隣に座ってくれ。」
と、担任が言った。
彰が考えている間に転校生が隣に座った。
「よろしくお願いします、彰君。」
「!なんで俺の名前を知ってるんだ。」
「えっ、憶えてないですか・・・・そうですよね、もう12年も会ってないですし・・・・。」
と、理恵は少し暗い顔をした。
彰はその時、理恵の横顔に見覚えがある気がした。
その後、色々な説明が担任からされた後、学校は終わった。

教室から理恵が出ようとした時、
「坂本。」
と理恵を呼ぶ声がした。
理恵が振り返って見ると声の主は彰だった。
「話があるから一緒に帰ろうぜ。」
と言うので、理恵は少し戸惑ったが、
「はい。」
と言って、一緒に帰ることにした。
2人のやり取りに驚いたのはクラスメート達だった。
「おい、高山って女が苦手じゃなかったっけ?」
「そうだよな、なんでだ?」
「なによ!!あの転校生!!いきなり高山君と仲良くしちゃって!!」
「本当よね、一体何様のつもりかしら!!」
とクラス中からボソボソと話し声が聞こえてきたが、2人は無視してそのまま教室を後にした。

「・・・・・。」
教室を出てから校門まで2人とも無言だった。
理恵はチラチラと彰の顔を見ていた。
「・・・・いつ日本に帰って来たんだ。」
沈黙を破ったのは彰だった。
「・・・・今年の初めくらいに。」
「お前のこと覚えてなかった俺の言える事じゃないけど、なんで知らせてくれなかったんだ。」
「・・・・ごめんなさい。」
理恵は申し訳なさそうに言った。
「お爺様の研究の都合で知らせられなかったの。」
「お前のお爺さん、アメリカで科学者やってるんだっけ。」
「はい。」
「なんの研究してるんだ?」
「それは・・・・言えません。」
「?そうか。」
彰は少しその事が気になったが聞かないほうが良いと判断した。
「でも、よく思い出せましたね。私のこと。」
「・・・・お前の悲しそうな顔を見てたらあの日のこと思い出してな。」
彰のいう『あの日』とは。
12年前のこと・・・・・


その日は朝から雨が降っていた。
俺は母親に連れられて理恵の家に来ていた。
理恵の家には、俺や母親を含め、黒服の人が大勢居た。
5歳の俺が理恵の両親の葬式だと知ったのはもっと後のことだった。
そこに理恵の姿はなかった。
俺は理恵を探した。
一緒に遊んだ公園。
一緒に通った幼稚園。
一緒に走った道。
何処にも理恵はいなかった。
そして最後に行った場所。
俺と理恵しか知らない場所。
大きな木の下に
理恵はいた。
「理恵ちゃん。」
俺は理恵に呼びかけた。
理恵は泣いていた。
「彰君、理恵のお父さんとお母さん、遠くに行っちゃった・・・・。」
「・・・・・・。」
俺は何も言えなかった。
「お父さんとお母さんにもう会えないって・・・・。」
俺はもう何て言えばいいのかわからなかった。
「うっ、うっ・・・・・。」
俺は咄嗟に理恵の手を握った。
「あ、彰君?」
「大丈夫。僕が一緒にいてあげるから、だから大丈夫。」
なんの根拠もなかったが、理恵を落ち着けばと思い言った言葉。
「ありがとう・・・・。彰君・・・・。」


その後理恵はアメリカに住んでいる祖父の元に引き取られて日本を離れた。
しかし、我ながらよくあんなこと言えたな、恥ずかしいなと彰は思った。
理恵を見てみると理恵は顔を赤くしていた。
同じ事を考えていたらしい。
「・・・・・・・・・・・・・・」
お互いに黙りこんでしまったので、再び長い沈黙が訪れた。
ピピピピピ・・・・・
沈黙を破ったのは理恵の携帯だった。
「あ、ごめんね。」
と言うと、理恵は鞄から携帯を取り出した。
見たことの無い携帯電話だった。
「それ、新型?」
「え、えっと、これは特別なの。」
その時、彰は理恵の携帯から不思議な力を感じた。
「はい・・・・はい・・・・わかりました、すぐに向かいます。」
ピッ
理恵は携帯を切ると、
「ごめんなさい、急に用事ができちゃって。」
「いいよ、急いでるんだろ、こっちこそ呼び止めて悪かったな。」
「本当にごめんなさい、でも彰君とお話できて嬉しかった。」
「じゃあな。」
「さよなら。」
と言って彰と理恵は別れた。
彰は走っていく理恵の背を見送っていた。
ドクンッ!
「!!」
彰は急に奇妙な感覚に襲われた。
ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!
何だ・・・・この感覚は・・・・一体何が・・・・
「くっ・・・」
彰はフラフラとした足取りで、何処かに歩いて行った。


都内某所
一台のトラックの周りを5台のパトカーが囲みながら走行していた。
一番先頭を走っているパトカーには2人の警官が乗っていた。
「一体何を乗せてるんでしょう?あのトラック。」
1人がもう1人の警官に聞いた。
「さあな、何か重要な物らしいな。」
「もしかして特事課の例の新装備関係ですかね?」
「ああ、噂の強化スーツか・・・。」
「装着員って、もう決まったんでしたっけ?」
「そろそろ決まるんじゃ・・・・」
などと話していると、
突然道路上に黒装束の男が現れた。
「!!」
キィィィィィィィ
警官はパトカーを急停車させた。
「何をしてるんだ!危ないじゃないか!」
2人はパトカーを降りて、男に駆け寄った。
「危ない?ああ、僕ですか?僕は大丈夫ですよ。」
黒装束の男は淡々と警官に言った。
黒いフードを深々と被っていて顔がよく見えない。
一つ目が描かれた黒いフードに黒マントと黒スーツ姿、黒い手袋に靴。
上から下まで真っ黒である。
「大丈夫じゃないだろう!早く退きなさい。」
「そんなことより、僕と取引しません?」
「取引?何を言ってるんだ。」
警官が尋ねるが男は無視して話を続けた。
「そう、貴方達がトラックの中身を僕に渡す、僕は貴方達のことを助ける。どうです?お互いに利益があって損がない。悪くない話でしょ。」
「助ける?一体何から助けてくれると言うんだ?」
警官は再び尋ねた。
「それは・・・・貴方達を待つ、死の運命からですよ。」
「・・・・・・・・」
警官2人は黙ってしまった。
この男、頭がおかしいのでは?と本気で考えてしまう。
「どうですか?交渉成立ですか?」
「・・・いや、大事な輸送品を渡す訳にはいかない。さあ、早く退きなさい。」
「あーっと、それでいいんですか?もっとみんなで考えるべきじゃないですか?」
「なんと言われても我々の答えは同じだ!早く退け!!」
他のパトカーの警官たちも集まって来た。
男は残念そうに、
「そうですか・・・。残念だなぁー。」
バッ
男は黒マントを翻して背を向けた。
するとそこに突然黒ずんだ銀色をした鉄くずが人型になったような集団が姿を現した。
「な、なんだ!こいつら!」
警官たちは慌てて拳銃を構える。
「もう遅い。ジャンクロイド・・・・やれ!!」
男の指令と共にジャンクロイドが警官たちに襲いかかった。
「う、うわぁぁ!!」
「う、撃て撃て!!」
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
警官たちは拳銃で必死に応戦したが、警官たちの運命は男の申し出を断った時に既に決まっていた・・・・・


無残に転がる警官たちの死体。
トラックやパトカーの周りは血の海となっていた。
ギ、ギィィィィィ
ジャンクロイド達がトラックの荷台の扉をこじ開けようとしていた。
黒装束の男はそれを一台のパトカーの上に座って眺めていた。
「早く開けろよー。じゃないと・・・・」
『ギィー』
バキッ! ドカッ! バキッ!
ジャンクロイド達は慌ててトラックの扉を壊し始めた。
「そうそう、がんばってねー。」
ギギギギギィィィィィ・・・・・バタンッ!!
ジャンクロイド達がついに扉を破った。
『ギギィー』
ジャンクロイド一体がトラックの荷台の中に入り、中身を運び出した。
荷物は小さなケースが一つだけだった。
『ギー』
ジャンクロイドはそれを男の所に持って来た。
「あれ?こんなに小さかったかな?」
男は首をかしげた。
「開けてみよう。」
ガチャ
男はケースを開けた。
中には4つの携帯電話のような物が入っていた。
「はぁー、目的の物じゃないのか。とんだ無駄足だ。」
男はガックリと肩を落とした。
「もういい、アレじゃないならこんな物に用はない。撤退するよ。」
男はその場を去ろうとした。
その時、
ブルルルルルルル・・・・・・
そこにトレーラーが突っ込んできた。
「なんだ!?」
男はトレーラーをかわしてヒラリとかわして、言った。
キィィィィィィ・・・・・・・!!
トレーラーはかなり無茶な止まり方をした。
ガチャ!
すると、トレーラーの後部から桃色の戦士が降りてきた。
「何者だ?あんた?」
男が尋ねた。
「風の戦士!コスモピンク!!」
桃色の戦士コスモピンクは男とジャンクロイド達に名乗った。
「これ以上の悪行は許しません!!」
コスモピンクは男たちを指差して高らかに叫んだ。
「はぁ、今日は厄日だ。目的の物はない、邪魔者はやって来る、本当にろくなことがない。」
男は呆れながらそう言った。
「スチルロイド。」
男がそう言うと、男の背後から湧いて出たように銀色の体で赤い一つ目の怪人が姿を現した。
ジャンクロイドに似ているが、こちらの方が断然強そうである。
『お呼びでしょうか』
「戦闘指揮を任せる。邪魔者を排除しろ。」
『承知』
「じゃ、後は任せたから、じゃあね、綺麗な声の人。」
「待ちなさい!あなたは一体・・・。」
「僕の名前はイズマエル。じゃ、また会えたら。」
イズマエルは、フッ・・、と姿を消した。
『ジャックロイド!!』
『ギギー』
ジャンクロイド達は戦闘態勢に入った。
「あなた達の相手は私です。」
『やれ!!』
『ギギー』
スチルロイドの指示と共にジャンクロイドがコスモピンクに襲いかかった。
「はあっ!」
バキッ!バキッ!
ジャンクロイドを一体また一体とパンチやキックで蹴散らしていく。
「コスモスナイパー!!」
コスモピンクは右腰にさげていた銃を取った。
ババババババ・・・・・・
コスモスナイパーから放たれた光線がジャンクロイド達を次々と撃ち倒していった。
そして残りはスチルロイド只1人となった。
「さあ、残っているのはあなた1人です。」
コスモピンクが叫ぶが、スチルロイドは冷静に
『戦闘能力・・・分析完了・・・現時点での勝率・・・・97.84%』
と、計算した。
スチルロイドはコスモピンクがジャンクロイドと戦っている間に、その能力を分析していたのだ。
『戦闘開始』
バッ・・・・・・ドカッ!!
スチルロイドは一瞬で間合いを詰めて、コスモピンクに強烈なパンチを食らわせた。
「・・・・っ!!」
コスモピンクはなんとかパンチを受け止めたが、すぐに次の一撃がきた。
ドカッ!!
これもギリギリで受け止めたが、敵のスピードが速すぎて反撃の隙がない。
(なんとかしないと、このままじゃ・・・・。)
コスモピンクはなんとか攻撃のチャンスを掴もうとした。
しかし、敵はこちらの動きを計算しているのでどうしても行動が読まれてしまう。
「コスモスナイパー!!」
コスモピンクがコスモスナイパーを取ろうとしたが、
『そうはさせん』
スチルロイドも銃を取りだした。
バシュッ!
スチルロイドの一撃がコスモスナイパーを弾き飛ばした。
「・・・くっ!」
コスモピンクに隙ができてしまった。
『終わりだ』
バンッ!!
スチルロイドの銃が火を吹いた。
(・・・・もう駄目・・・・)
そんな考えが頭を過った。
が、その時。
キンッ!!
刀が弾丸を弾き飛ばした。
「!」
『!!』
そこには赤い色の戦士が立っていた。
『貴様・・・何者だ!!』
スチルロイドが叫んだ。
「俺は・・・俺は炎の戦士!!コスモレッド!!」
『炎の・・・戦士・・・』
「コスモ・・・レッド・・・・。」
そう名乗ると、コスモレッドは踵を返して倒れこんでいたコスモピンクに手を差し出した。
「大丈夫か?坂本。」
コスモレッドのこの声は・・・・
「えっ!もしかして彰君!?」
コスモピンクは驚いた。
この声は確かに高山 彰の声だった。
「ああ、そうだけど・・・」
「な、なんで彰君がコスモスーツを!?」
「理由は俺にもよくわからないけど・・・・」
あれこれ問い詰めてくるピンクにレッドは
「とりあえず、今はあいつを早くやっつけないと。」
と、急かした。
「ええ、そうみたいですね。」
コスモピンクはレッドの手を取った。
『ギギギ・・・新たなる敵・・・データ無し・・・』
スチルロイドは突然現れたコスモレッドに動揺していた。
1人はデータ解析済み、1人はデータ無し。
『戦闘続行・・・・可能・・・・』
ジャキッ
スチルロイドは銃の代わりに剣を出した。
それを見てコスモレッドは
「向こうも剣か・・・。」
と、言うと
チャキッ
レッドは自分の剣、『フレイムソード』を構えた。
タッ!!
コスモレッドとスチルロイド。
2人は、ほぼ同時に走り始めた。
ギィン
2人の剣が激突した。
ギリギリ
「くううう・・・・」
『ギギギ・・・・』
お互い一歩も引かない。
「はあっ!!」
ギィン
レッドのフレイムソードがスチルロイドの剣を弾き飛ばした。
『!!』
スチルロイドの注意がそちらに向いた。
「隙あり!!」
フレイムソードの刃に一気に炎の力が宿る。
「フレイムスラッシュ!!」
ズガシャァァァァーーン
『ギ・・・ギギギギギギギギギギ・・・・・』
スチルロイドは一撃で縦に真っ二つになった。
タッ
レッドは地面を蹴って、スチルロイドから離れた。
ドカァァァァァーーン
スチルロイドは粉々に爆散した。
「ふぅ・・・・。」
彰は変身を解除し、元の姿に戻った。
タッタッタッタッタッ
「すごーい、すごいよ、彰君!」
理恵が彰に駆け寄ってきた。
「いや、あいつが場慣れしてる奴だったら多分勝てなかった。」
彰は冷静に言った。
「どうして敵が場慣れしてないって分かったの?」
と、理恵は尋ねた。
彰は
「俺が現れた時に、あいつは動揺してたから、後は勘。」
と、普通に答えた。
「勘って、ふふふ・・・、なんかすごいね。」
理恵は少し微笑んだ。
「でも、一体どうして?なんで彰君が?」
理恵は先ほどと同じ質問を彰に尋ねた。
「そんなの・・・俺が聞きたいよ。」
彰は困惑した表情で答えた。
そこに
「あの、お取り込み中に失礼します。」
と、声がした。
見ると、そこには1人の少女がいた。
少女を見て、彰は一歩引いた。
この男、年下だろうが年上だろうが、とにかく女性が苦手だった(理恵には少し慣れている)。
「理恵さん、お疲れ様です。司令部より帰還命令が出ています。それと、後30分ほどで回収班と警察が到着しますので、後のことはそちらに任せましょう。」
少女は表情も変えず、淡々と内容を伝えた。
何となく冷たい印象を与える少女だ。
「了解。夏海ちゃん、ご苦労様。」
理恵は少女を夏海と呼んだ。
少女は夏海というらしい。
夏海は彰の方を見ると、
「それと、あなたにも来て頂きます。」
「へっ?俺も?」
「はい、なお拒否された場合、強制的に連行しますので、ご注意を。」
強制的に連行・・・・
そう聞いてしまったら、拒否など出来る筈も無い。
「わかった。一緒に行くよ。」
彰は承諾した。
「ご協力に感謝します。ではこちらに。」
彰は夏海に指示に従い、理恵と共にトレーラーに乗り込んだ。
トレーラーの中は何やら色々な機械でいっぱいだった。
夏海は機械の前に座り、銀色の2つの破片を機械に入れ、なにやら作業を始め、
「では、私はデータの整理と回収した敵のサンプルの解析をしますので、静かにしていて下さい。」
と言った。
そんな夏海を見て、彰は
「なあ、あの子っていつもあんな感じなのか?」
と、理恵に尋ねた。
理恵は苦笑いしながら、
「うん・・・私もよく知らないけど、あの子には色々事情があるみたいだから・・・・。」
それを聞いて、彰はこれ以上聞かないほうが良いと思った。
と、そこに通信が入った。
『夏海ちゃん、そろそろ出発するよ。』
「はい、了解しました、中嶋さん。」
そのやり取りを聞いていた彰は理恵に再び尋ねた。
「なあ、中嶋さんって、誰?」
「中嶋さんはこの車の運転手さん。」
理恵はそう教えてくれた。
「それでは出発します。」
ブルルルルルル・・・・・・
トレーラーが動き出した。
彰たちを乗せ、トレーラーが出発する。

しかし、この後に更なる戦いが待ち受けているとは、
誰も知る由も無かった。


つづく


[258] 題名:登場組織 名前:電波時計 MAIL URL 投稿日:2005年05月16日 (月) 12時49分

登場味方組織


W.R.G
World Royal Guardianの略。
世界規模で発生するようになった様々な事件に対して、国境を超えての捜査・研究等を目的に国連内に結成された世界規模の組織。本部は日本の東京湾に浮かぶ人工島アースアイランドで、世界各地に支部を持っている。独自の戦力を保有しており、そのため防衛軍と対立することも多い。

防衛軍
2012年に頻繁に出現するようになった怪獣に対処する為に自衛隊を再編成した組織。怪獣の脅威から国民の生命・財産を守るのが目的でW.R.G結成以前は怪獣に対抗できる唯一の組織だったが、近年怪獣の出現が減少し、もはや不要の物として解体の危機にあったが、新たな脅威の出現で再び注目を集めた。現在は新たに開発された人型機動兵器を戦力として導入中。

警察(特殊事件捜査課)
日本に混乱をもたらした秘密結社ジョーカーを仮面ライダーと共に壊滅させた後、新たな悪の組織に備えて設立された新たな部署。改造人間や犯罪ロボットが起こす事件などを専門に捜査するのが目的。現在は生身の人間でも改造人間に匹敵する戦闘力を持てる強化スーツの開発と装着員の選抜テストを行っている。

クロガネ重工
業務用のネジから土木工事用のロボットまで作ってしまう有名会社。
2012年にクロガネ重工オリジナルのロボットを製造し、注目を集めたが、機動実験は失敗し、ロボットは大爆発、信用を失ってしまう。そして信用を取り戻す為、パーツの組み替えで機能を変化させる『チェンジ・ブロック・システム』を使用したロボット『バルキリオン』で一発逆転を狙っている。

セントラル・コーポレーション
本社を東京の新宿に置く大企業。防衛軍の新型兵器開発等あらゆる産業に進出している一方で、クロガネ重工の『バルキリオン』開発に資金援助や技術提供、社員の派遣まで行っているが、設計図にないパーツを無断で『バルキリオン』に搭載したりと、謎の多い会社。

たんぽぽ荘
東京都内にある2階建てのアパート。キッチン・トイレ・風呂付きで家賃は5万円。大家さんは春野 舞 12歳。元々は彼女の両親が大家だったが、3年前に交通事故で両親は他界(実はジョーカーの仕業だったが)そのまま彼女が大家を続けている。どういう訳かヒーローが集まってきて、悪の組織に狙われる。

花咲家
長女の椿、次女の紅葉、三女の桜の三姉妹が暮らす家。母親は病死し、父親は現在行方不明。何処にでもいそうな(?)普通の家族だが、実は代々続く魔法使いの家系で、黒魔法組織『ブラックマジック』と人知れず戦うという使命を持っている。(と言っても、3人は最近まで自分達が魔法使いだと知らなかったが。)
花咲家以外にも魔法使いの家系は存在するが、年々人口が減ってきている。

銀河平和連合
様々な星の人々が平和のために結成した組織で本部はピーススターという人工惑星にある。宇宙の平和を乱す悪を倒す為の宇宙警察が存在し、数々の星に派遣されている。なお、地球は地球固有の科学力や悪の組織の存在から危険視されており、連合加盟星とは認められておらず、立ち入り禁止区域となっている。

敵組織


秘密結社ジョーカー
世界征服を狙う謎の組織。優秀な人材を誘拐し、改造手術を施した改造人間を使用する。改造人間は全てコードネーム(例:A、R−01など)で呼ばれる。3年前に仮面ライダーエースとその仲間によって壊滅したが・・・・。

ネオジョーカー
新たに出現したジョーカーを再編成した組織。目的は変わらず世界征服。デビル・ジョーカーを首領に『K』、『Q』、『J』、『R−02』の4人を幹部としている。改造人間以外にもジョーカー時代には破棄したバイオ技術により複数の生物を合成した「合成獣人」、ロボット工学を使用した「メカノイド」も戦力として取りこんでおり、ジョーカーを上回る戦力を有している。

新世界党
今の世界を破壊し、選ばれた人間だけが生きる新世界を創造することを目的とする組織。表向きはセントラル・コーポレーションと並ぶ大企業、ニューワールド社。社長の天本 潤は同時に新世界王でもある。さらにその下に七大使徒(月・火・水・木・金・土・太陽)が存在する。戦力は怪獣型ロボット。

犯罪組織クライム団
数年前まではただの犯罪者の集まりだったが、ネオジョーカーからもたらされたロボット工学を使って、犯罪ロボットを製造、犯罪を犯している。組織としての統率がなく、団員が好き勝手に犯行を行うので、警察も手を焼いている。犯罪ロボットは犯罪モードと戦闘モードの2種類に変形する。

新世人
超能力者だけの世界を目指している謎の超能力集団。首領はサイコソードと呼ばれているが実態は不明。超能力者のみで構成されており、自分達と同じ超能力を持つ人間を誘拐して仲間に引き入れている。秘密裏にネオジョーカーや新世界党と接触し、自分達は表舞台には出ずに行動している。

黒魔法組織ブラックマジック
人類の歴史の裏に常に存在する黒魔法を使う一族。カオス家を宗家としており、現在は日本を中心に暗躍している。戦力は精神寄生体『スペクター』を人間に取り憑かせた『デビル・モンスター』、人間の欲望を具現化した怪物で魔法の力でなければ倒すことができない。現在の目的は魔法使いとその他、邪魔になる存在の排除。

ドーマ一族
銀河を荒らしまわる一族で、全員が道具に似た姿をしている。一族内で4つに分かれており、銀河海賊・銀河山賊・銀河空賊・銀河盗賊がそれぞれ猛威をふるっている。また、様々な星の住人(主に赤ん坊や子供)を誘拐し、鍛え上げて自分たちの部下として使っている。地球に物凄いお宝が眠っているという情報を元に地球へやって来た。目的はそのお宝を見つけて、自分たちの物にすること。それ以外には興味はない。

ギガロ星侵略軍
数万年前に消滅してしまったギガロ星人の侵略派が組織した軍隊。自分たちの気に入った星があれば、武力で制圧、支配するという恐ろしい集団。しかもその星に飽きると、その星を破壊して、次の星を探しに行き、同じ事を繰り返す。破壊した星の住人や技術も軍事力として取りこむ。戦力は宇宙怪獣を改造したギガロ改獣。

ダークマター
すべてが謎。宇宙の何処かに存在する暗黒空間『ダーク・ゾーン』を根城にしていると言われているが、真偽は不明。銀河平和連合では、空想の産物として存在を否定しているが・・・・。


[256] 題名:蘇る悪魔 名前:電波時計 MAIL URL 投稿日:2005年04月02日 (土) 16時12分

「エースねぇ。まっ、なんでもいいや。早く戦おうぜ。」
「待て。ここじゃ戦えない。場所を変えよう。」
「周りの人間の心配か?ずいぶん余裕だな。」
「・・・・・」
エースは黙ってジャックを睨みつけた。
「いいぜ、俺もお前が本気じゃないとおもしろくないからな。この先にスクラップ置き場がある。そこで勝負だ。」
そう言うとジャックは姿を消した。
後を追ってエースも表に出ると、そこには一台のバイクがあった。
「行くぞ、ストーム。」
ブロロロロロ・・・・・
ストームと呼ばれたバイクはエースに返事をするように動き出した。
「今日も調子が良いみたいだな。よし行くぜ!!」
エースはストームに乗ると指定されたスクラップ置き場へと向かった。

都内の一角にあるスクラップ置き場
ここは近くに住んでいる住民からは「文明の墓場」と呼ばれている。
捨てられた大量の電化製品に廃車、それ以外にも様々な廃棄物がここにはある。
まさにここは文明の墓場であった。
捨ててあるゴミを目当てにこの中に入って生きて返った奴はいないという噂まである。
そんな墓場の中にぽつんと廃ビルが建っている。
なんの目的で建てられたのか知るものはだれもいない。
その廃ビルの屋上から墓場を見下ろしている男がいた。
黒い髪に鋭い目つき、右頬についた傷痕が目立つ男だ。
男がしばらく墓場を見ていると、背後から別の男と少女が現れた。
「ロウガ、遊びに来たよ。」
そう言うと、少女はロウガと呼ばれた男に駆け寄った。
「どうだ、ロウガ。何か掴めたか?」
緑の髪に紫色の瞳の男がロウガに尋ねた。
「ネット、一体何の目的でここに来た。」
「情報交換だ。それ以外の目的はない。」
ネットと呼ばれた青年は簡潔にそう答えた。
「俺の方は何も掴めていない。」
「そうか・・・。」
ロウガとネットが話をしていると少女が割り込んできた。
「ねえねえ、ロウガ。小雪ね、あやとりができるようになったんだよ。見ててね。」
小雪はあやとりを始めたが、ロウガは気にも止めていなかった。
「ほら、さかずきが出来た。」
しかし小雪はロウガが見ていないことに気づいて怒り出した。
「もう、しっかり見ててよ。見てくれないと嫌いになっちゃうぞ。」
「そうしてくれ、お前に付きまとわれると俺は迷惑だ。」
「も〜〜、ロウガなんて知らない!!」
「姫はご機嫌斜めだな。」
ネットが小雪をからかっていると、小雪の様子が変わった。
「・・・・誰かここに来る・・・・二人・・・・普通の地球人じゃない・・・・」
「普通の地球人じゃない?どういう事だ、小雪?」
ネットがそう聞くと、
「・・・・改造・・・・人間・・・・」
と言って小雪は倒れた。
ネットは倒れた小雪を受け止めると墓場を見た。
「来た。」
ちょうどストームに乗ったエースが墓場に入って来た所だった。

エースはストームを止めて降りると、周りを見渡した。
「どこだジャック!姿を見せろ!」
ジャックは姿を見せずに話し掛けてきた。
(ククク、やっと来たな、待ちくたびれたぜ。)
「まず聞きたいことがある、銀行を襲ったのはジョーカーか?」
(はぁ!?銀行だと?・・・・ああ、あれね、いいや、あれは俺たちじゃないぜ。って言うより、そのジョーカーっていう古臭い名前やめてもらえる?今はネオジョーカーって言うんだよ。)
「何!ネオジョーカーだと!?」
(そうさ、ジョーカーは壊滅後、ネオジョーカーとして再興されたんだよ。もちろん、我らが首領の手によって。)
首領。その言葉にエースはショックを受けた。
3年前、ジョーカーの首領は自分のこの手で倒したはずだった。
そいつがまだ生きている。
「そんなはずあるか!!首領はあの時俺がこの手で!!」
(はぁ?寝ぼけんじゃねーよ、俺がここにいるのが何よりの証拠だろ。)
確かにジャックの言う通りだった。
奴がいるのが何よりの証拠。
「・・・・だったら・・・・」
エースは拳を握った。
「だったら!!お前を倒して、首領の居場所を聞き出す!!」
(へっ!そんな事、出来るわけねーだろ!!)
突然エースの頭上からロットがエース目掛けて伸びてきた。
「くっ」
ギリギリでかわせた。
が、次は背後からの攻撃がエースを襲う。
ドス!!
「ぐっ」
この攻撃はかわしきれず、背中を直撃した。
「くそっ、卑怯だぞ!!姿を見せろ!!」
(卑怯で結構だ!俺はこういうやり方が好きでね。ジワジワ痛めつけながら殺してやる。)
今度は正面からの攻撃が。
ドス!!ドス!!ドス!!
エースに次々と攻撃が命中する。
反撃することもできず防戦一方となる。
「はぁ、はぁ、はぁ、くっ!」
また一撃、また一撃と攻撃を受ける。
「く・・・・そっ・・・・」
バタッ!!
エースはついに倒れてしまう。
(へっ!死んだか。)
倒れたエースの前にジャックが現れる。
「なんだよ、ぜんぜん強くないじゃん。っていうか、俺が強すぎ?」
1歩、1歩とエースに近づく。
「じゃ、あばよ、仮面ライダー。」
ジャックがエースの頭めがけ、ロットを突き刺そうとしたその時、
「チャージ!!」
突然エースが叫んだ。
するとエースの右腕が赤く輝いた。
「何!!」
一瞬のことでジャックの反応が遅れた。
「くらえ!!エースナックル!!!!!!!!!」
バコォォォォォォン
エースの渾身の一撃はジャックの胸部を直撃した。
「ぐああああああああっっっ!!」
ジャックは吹き飛ばされ、廃車の山に突っ込んだ。
「はぁ、はぁ、チャージ!!」
今度は右足が光輝く。
スタッ
エースは空高くジャンプする。
ドガシャァァァァァン
廃車の山の中からジャックが出てきた。
「くそぉぉぉぉぉ。」
反撃に出ようとするがダメージが大きく反応が追いつかない。
「俺が負けるはずがね――――!!」
「これで終わりだ!!エース!!シューーーート!!!!」
これで終わり。
エースも、ジャックですらそう思った。
その時、
ゾクッ
「「!!」」
すさまじい殺気が襲った。
ドコォォォォォォォン
エースシュートが命中した。
煙が晴れると、そこには護の姿しかなかった。
「ジャックは逃げたか、くそ、一瞬、気を取られたせいで直撃しなかったか。」
護は周りを見渡した。
「さっきのは、一体。」
護はその場を去ろうとするが、
ズキッ
「くっ、ちょっとダメージ受けすぎ・・・た・・・・か・・な・・・」
護はその場で意識を失った。

「戦闘終了・・・データ収集終了・・・・」
戦いを静観していた者。
殺気を放った人物。
「・・・・改造人間・・・・仮面ライダー・・・・ネオジョーカー・・・・」
あの蜘蛛怪人だった。
「面白い星だ、ここは。」

「ま・・・・・ん・・・・・・」
「ま・・・る・・さ・・ん」
誰かが何か言ってる・・・・
ここはどこだ・・・・
俺、死んだのかな・・・・
眠い・・・・
このまま寝てたい・・・・
そう思っていると、
「護!!起きろ!!!」
「うわ!!」
慌てて起きると、
ガンッ
明日香と頭がぶつかった。
「いてっ」
「いたたた、なにするんだこのバカ!!」
明日香がでこを押さえながら怒鳴った。
「良かったー、目を覚ましたよ。」
蔵之介が床に座り込んでいる。どうやら腰が抜けたらしい。
「うっ、うっ、護さ〜ん」
茜ちゃんはもう泣きっぱなしだ。
「まったく、人に注意しろとか言っておいて、自分が注意しろ。」
明日香も泣いているが、うれし泣きか、でこが痛いのか・・・・
「ここは・・・俺の部屋?」
「うん、君をここまで連れてきてくれた人がいるんだ。」
「えっ?誰が?」
「さっきまでいたけど・・・・あれ?」
蔵之介が部屋を見るがいないらしい。
「あの男ならさっき帰った。急用とかで。」
明日香が答えた。
「お名前は・・・ネット・ウェブフィールドさんって言うんですよ。」
茜ちゃんが泣くのをやっとやめて答えた。
「ネット?変な名前だな。」
「まっ、良かった。じゃ、僕、夕食つくるね。」
「護さん、今日はゆっくり休んでくださいね。」
蔵之介と茜は部屋を出た。
「・・・で?その怪我はどうしたんだ、やはりジョーカーか?」
一人残った明日香が尋ねた。
「ああ、あいつら、ネオジョーカーに再編されたらしい、おまけに首領まで生きてやがった・・・・くそ!!」
「やはり・・・・首領も生きていたか・・・・。」
明日香もショックを隠しきれない。
「まあ、今は傷を早く治せ、それから・・・今度は私も一緒に戦うから無茶はするな。」
明日香は照れながらそう言うと、足早に部屋を出ていった。
「はぁ。」
ため息をつきながら、横になる。
あの時の殺気は一体・・・・・・
そう考えながら、護は眠りに就いた。


つづく


[255] 題名:抹消された戦士 名前:電波時計 MAIL URL 投稿日:2005年03月26日 (土) 17時44分

東京都内の高層ビルの屋上
ここから一人の男が東京の夜景を見ていた。
明々と光るネオン、行き交う車、ビルの明かり。
夜でも空は明るく見える。
しかし、明るいのはビル街だけであり、他の地域は殆ど暗闇に閉ざされていた。
10年前の隕石落下事件「メテオ・インパクト」と呼ばれる災害により、世界各国は壊滅の危機に陥った。
日本も例外ではなく、東京だけでも全体の30%ほどの地域しか復興が進んでおらず、残された地域は未だにそのままとなっている。
そんな東京を見つめる男、いや、つい先ほどまで男だった。
今東京の夜景を見ているのは異形の姿をした蜘蛛の怪人だった。
紫に光る四つの目、背中から伸びる四本の蜘蛛の手足、右手には無数の小蜘蛛がうごめいている。
「行け」
蜘蛛怪人がそう言うと、子蜘蛛は四方八方へと散っていった。
それを見届け、その場を去ろうとしたその時、
『破壊セヨ』
「!」
どこから聞こえてくる声。
『破壊セヨ、破壊セヨ、忌マワシキ封印ヲ破壊セヨ』
「ご心配なさらずとも、全ては計画通りです。今しばらくのお待ちを。」
そう言うと、声は闇の中に消えていった。
蜘蛛怪人も男の姿に戻り、音もなく消えた。
やがて夜が明けて・・・・。

ピピピピピピ・・・・・
目覚まし時計が鳴っている。
・・・もう7時か・・・
・・・眠い。あと5分寝よ・・・
そう思っているとドアをノックする音が。
「護さん、朝ですよ。起きて下さい。」
「茜ちゃんか、あと5分寝かせて。」
「ダメですよ。いつもそんなこと言って起きないじゃないですか。」
「頼む、見逃して。」
「ダメです。」
ダメだ。見逃してもらえない。こうなったらもう起きるしかない。
「ふぁぁぁぁ。」
大きな欠伸をしながら起きて、着替え始めた。

俺の名前は高坂 護(こうさか まもる)
両親は赤ん坊の時に交通事故で他界。それから親戚の家を転々として、今は父の学生時代の後輩だったおやっさんの家で暮らしてる。
実は俺の体には他人には言えない秘密がある。

着替え終わってドアを開けるとそこには女性がいた。
「おはよう、茜ちゃん。」
「やっと起きましたね。おはようございます、護さん。」

この女性は江戸川 茜(えどがわ あかね)
おやっさんの姪で、東京の大学に通うためにおやっさんの家で暮らしている。世話好きで毎朝、俺のことを起こしに来る。

挨拶をして二人で1階のリビングに行くと、別の女性がいた。
「おはよう、明日香。」
「おはようございます、明日香さん。」
「なんだ、やっと起きたか、護。今日は・・7時16分、記録更新ならずか。」
「うるさいな、勝手に記録なんか作るな。」
俺が文句を言うと明日香は俺を指差して
「お前がそれだけ起床が遅いという事だ。」
と無茶苦茶を言って来た。

こいつは寺井 明日香(てらい あすか)
俺と同じように身寄りがなく、この家に居候している。実は明日香も俺と同じ秘密を持っている。家事が殆どダメで、いつも変な記録を作る。

「理由になってないだろ、な、茜ちゃんもそう思うだろ。」
「え!え、えっとその・・。」
「いや!!理由としては十分だ!茜もそう思うだろう!」
「え、えっと、いやその・・・。」
茜は二人に同意を求められる。
そこに助け舟を出したのは、キッチンから出てきた男性だった。
「どっちでもいいよ、早くご飯食べようよ。」
いることにぜんぜん気が付かなかったが、彼もここの住人である。

こいつは如月 蔵之介(きさらぎ くらのすけ)
ジャーナリストで、俺と明日香の秘密を知って、取材のためにこの家に
来たが、お人よしな性格のせいか、君たちの手助けをしたいと言って、そのままこの家の居候に。

「なんだ蔵之介。いつからそこにいた?」
「最初からいたよ、酷いなーもう。」
「ところで、おやっさんは?」
「江戸川さんなら、今日からお店が休みだから出かけたよ。」
そういえば今日からしばらく店の方を休むと言っていたのを思い出した。
「早くご飯にしよう。今日は少し早く出るから。」
「なにかあったんですか?蔵之介さん。」
茜が蔵之介に聞いた。
「うん。こないだのロボットの事件ことで取材にいくんだ。」
「ロボットって、あの銀行を襲った?」
「そうだよ。」
と言って蔵之介はテレビをつけた。
ちょうど、今話していた事件について放送していた。
『昨日都内の銀行が謎のロボットの襲撃をうけ、現金およそ30億円が奪われるという事件が起こりました。警察では犯行に使われたロボットは犯罪組織によって製造された非合法なものとして捜査を続けています。』
犯罪組織・・・まさかジョーカーか?
いや、ジョーカーは3年前に壊滅した。じゃあ・・・
護は明日香を見た。
明日香も同じ事を考えていたらしく、護を見て頷いた。
「なあ、蔵之介。その取材、私もついて行っていいか?」
明日香が蔵之介に訪ねた。
「うん、いいけど。やっぱり犯罪組織ってジョーカーかな?」
「まだわからないけど、二人とも気をつけろよ。」
護が注意すると蔵之介と明日香は頷いた。
「それじゃあ、朝食にしましょう。」
茜に言われて、全員で朝食を食べ始めた。
しかし、その光景を見ている者がいることに4人とも気が付かなかった。
「クックック、見つけたぜ。『A』と『S』」

「いってくるから。」
「ああ、ほんとに気をつけろよ。」
朝食も終わり、茜は大学に、明日香と蔵之介は取材に出かけて行った。
「さてと、俺は俺で調べてみようかな。」
(調べるって、ジョーカーの事をか?)
「!!。誰だ!!」
周りを見るが誰もいない。
だが、どこからか気配がする。
(どこ見てんだよ、俺はここだぜ。)
すると目の前に声の主が現れた。
「お前は、何者だ。」
「俺は『J』。お前や『S』みたいに言うなら・・、仮面ライダージャックって所かな。カメレオンの能力を持ってんのさ。」
「という事は、お前ジョーカーの改造人間か!」
「そういう事、でもただの改造人間じゃない。お前と同じように神の石を持ってるんだよ。」
と言って、ジャックはベルトの緑色の石から棒状の武器を取り出した。
「まだ指令は出てないが、早くお前の実力ってやつを見てみたいんだよ。早く変身しろよ!!」
ジャックは本気だ。
やらなければこっちがやられる。
「いいだろう、相手をしてやるぜ!!」
シュゥゥゥウ
護が構えると腰にベルトが現れた。
「・・・変身!!!!!」
護が叫ぶと、護の体は徐々に変化していった。
赤い目、緑の体、黒い拳。
「へえー、それがお前の姿か、『A』!!」
「違う!!『A』ではない!!俺は、仮面ライダーエースだ!!」

つづく


[254] 題名:プロローグ 名前:電波時計 MAIL URL 投稿日:2005年03月11日 (金) 16時13分

スーパーヒーロー作戦OG プロローグ
2010年 一つの隕石が地球に落下した。
隕石の影響で世界各地に異常気象や天変地異が起こり、その結果、地中で眠っていた怪獣たちが目を覚ました。
後に「混乱の時代」と呼ばれる時代が始まる。
2012年 頻繁に出現する様になった怪獣に対処するため、自衛隊は防衛軍に再編成され、世界各国でも同じような改革が進んだ。
2017年 日本にて謎の秘密結社ジョーカーが出現。
改造人間を使って日本全土を混乱をもたらすが、警察と「仮面ライダー」によって、ジョーカーは壊滅する。しかし、仮面ライダーに関する全ての記録は抹消された。
2020年 世界規模の防衛組織としてワールドロイヤルガーディアンが結成される。
誰もが「混乱の時代」の終わりを予感した。
しかし、新たな脅威はすぐ目の前まで来ていた・・・・。


[253] 題名:勇者再び 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 23時31分

               勇者再び
「ねえ比瑪姉ちゃん」
 日本狭山市のある孤児院である。ここで一人のツインテールの幼い女の子が側にいる赤く長い髪の少女に声をかけた。
「どうしたの、アカリ」
 ヒメと呼ばれた赤い髪の少女は彼女に顔を向けて問うた。
「あそこ見て」
「あそこ?」
 ヒメはそちらに顔を向けた。そこには光があった。
「あれ何だろ」
「わからないから聞いてるの」
 アカリはそう答えた。そしてヒメの手を取った。
「行こう、ねえ」
 だがここで大地が揺れた。
「きゃっ!?」
「何だも!?」
 周りにいる男の子達も声をあげた。ヒメは咄嗟に彼等に対して言った。
「ユキオ、クマゾー、気をつけて。余震だよ」
「う、うん」
 三人はヒメの言葉に頷いた。そしてヒメの側に身を寄せた。
「うん、大丈夫だからね」
 ヒメは彼等を宥める様に優しい声でそう語り掛けた。
「ただの余震だから安心していいからね」
「うん」
 三人はそれに頷いた。そしてそれが終わると顔を上げた。
「終わったね」
「うん」
 ヒメは三人に答えた。そして先程光があった方にまた顔を向けた。
「まだ光ってるかな」
 見れば光はもうなかった。だが何かが見えた。
「あれ何だろ」
「気になるも」
 ユキオとクマゾーがそれぞれ言う。そしてそこに駆けて行った。
「あ、待ってよ二人共」
「危ないよ」
 アカリもヒメもそれに続く。そして彼等はその何かが見えたところにやって来た。そこには一体の何かロボットに似たものがあった。
「これ何だろ」
 ユキオがそれを見て不思議そうに首を傾げる。
「ロボットかなあ」
「きっとそうだも」
 アカリとクマゾーも首を傾げながら考えている。だがヒメはその間にそのロボットらしきものに近寄った。
「あ、ヒメ姉ちゃん」
「危ないよ」
「大丈夫だよ」
 だがヒメはそう言ってかえって子供達を安心させた。
「ほら見て」
 そして彼等に対して言う。
「この子優しい目をしてるお。大丈夫だよ」
 そしてまた言った。
「この子生まれたばかりの赤ちゃんなのよ」
「赤ちゃん!?」
「うん」
 ヒメは答えた。
「温かい。それにすべすべしてる」
 そのロボットを撫でながら言葉を続ける。
「ねえ君」
 声をかけた。
「貴女は何がしたいの?生まれたのなら貴女何かしたいんでしょう?」
 そう声をかけ続ける。ロボットはそれに答えるでもなく目をただ光らせているだけである。だがここで遠くから何かがやって来た。
「姉ちゃん、あれ」
 子供達がヒメに声をかける。見ればこのロボットによく似たロボット達が近付いてきていた。

 狭山でこうしたことが起こっていた丁度その頃大空魔竜隊はチバシティに向かっていた。
「おいおい、やったぜ」
 甲児がテレビを観ながらはしゃいでいた。サンシロー達も一緒である。
「すげえな、こいつ。やっぱり日本人はこうでなくちゃな」
「フン、甘いな」
 だが一緒に見ているリーが不敵に笑った。
「マスターアジアに勝てるかな」
「勝つに決まってるだろ」
「そうだわさ、ドモンこそ最強のガンダムファイターだわさ」
 彼等ははしゃぎながらテレビを観ている。観れば何やらガンダム同士が互いに格闘戦を繰り広げていた。白いガンダムと鎧を着たガンダムであった。
「よし行け!」 
 甲児が叫ぶ。
「そこだわさ!」
 ボスもである。白いガンダムが優勢であった。勢いに乗ったか蹴りを出した。
「よし!」
 だがリーが言った。
「甘い!」
 すると鎧のガンダムはすぐに身を捻った。そして大きく跳躍した。
「ムッ!」
 そこから攻撃に入る。だがそれは白いガンダムにことごとく防がれてしまった。
 戦いはそこから膠着状態に入った。そして最後には引き分けとなった。
「引き分けか」
「けれどこれでも充分だわさ」
 甲児とボスは少し残念そうであったが満足もしていた。
「もう一勝負残っているからな。それに勝てばいいからな」
 サンシローがそう言った。
「ドモンは今まで全勝しているんだ。負けたわけじゃない」
「そうだな」
「ドモンは後何勝負残っていたかな」
 忍が周りに問うた。
「二つだ」
 隼人が答えた。
「今のクーロンガンダムにもう一回、そしてガンダムシュピーゲルにもう一回だ」
「よりによって厄介なのばかりかよ」
「確かシュピーゲルとも引き分けていたのねん」
「確かそうだったな」
 隼人は記憶を探りながらそれに答えた。
「あのガンダムシュピーゲルに乗るシュヴァルツ=ブルーダーというのもかなりの強さだが」
「そうだな」
 竜馬が頷く。
「何でもドイツ忍者だそうだが」
「ドイツ忍者・・・・・・ああ、あれですね」
 ブンタがそれを聞いて頷いた。
「何でもかって日本の忍者がドイツに渡ったものだとか」
「そんなことが有り得るのかよ」
 甲児がそれを聞いて首を傾げた。
「あいつのファイトも見てきたが滅茶苦茶じゃねえか。何なんだよあれは」
「甲児君の言う通りだな。俺もあれは訳がわからない」
 鉄也も首を傾げている。
「畳返しに相手の拳の上に立ったり。ガンダムであんな動きができるとは思わなかったぞ」
「クーロンガンダムもかなりのものだがな」
 亮がここでクーロンガンダムについて言及した。
「あれもかなりのものだが」
「まあな」
 皆それに同意した。
「あれも普通じゃないな。中に乗っている人間もそうらしいが」
「東方不敗マスターアジア。只者じゃないのは確かだ」
「ああ」
「皆やっぱりここにいたのね」
 ミドリが一同に声をかけた。
「丁度いいわ。いいニュースよ」
「いいニュース!?」
「ええ。スペインに行っていた大介さんだけれど」
「何かあったのか!?」
「あそこでの仕事が終わったらしいわ。それで日本に帰ってくるって」
「おお、やっとかよ」
「これでマジンガーチームの再結成だな、甲児君」
 甲児と鉄也がそれを聞いて喜びの声をあげる。
「そうよね。大介さんが入ると何かと心強いわね」
「甲児君もそうでしょ」
 ジュンとさやかも嬉しそうであった。
「まあな。やっぱり大介さんはしっかりしているからな」
「腕も確かだしな。あの人がいるといないとではやっぱり違う」
 甲児と鉄也は同じマジンガーチームだけあってとりわけ嬉しそうであった。彼等は今から大介との再会を楽しみにしているようであった。ここで大文字から放送があった。
「諸君、チバシティに到着したぞ」
「おっ」
 それを聞いて声をあげる。
「いよいよか」
「そのままムートロン研究所に向かう。予定だ」
 また大文字の放送が入った。
「何かすぐだったな。しかしあいつ等元気にしてるかな」
「元気らしいわよ。さっきマリちゃんからメールがあって」
 さやかが甲児に自分の携帯電話を見せた。
「ほらね、会うのを楽しみにしてるって」
「そりゃいい。洸もミスターも入ると頼りになるぜ」
「甲児さっきから同じこと言ってるね」
 雅人がそれに突っ込みを入れる。彼等はそんな話をしながらムートロン研究所に向かっていた。
 
 その時ムートロン研究所でも皆大空魔竜隊との合流の準備を進めていた。
「おい、猿丸先生」 
 黒い髪を後ろに撫で付けた若者が眼鏡の男に声をかけた。この若者が神宮寺力である。ブルーガーのメインパイロットの一人でありコープランダー隊のまとめ役でもある。
「ブルーガーの改造はどうなったんだい」
「あ、それですか」
 猿丸と呼ばれた眼鏡の白衣の男はそれに応えた。
「もう既に終わっていますよ。ミスターのお話通り四人乗りにね」
「よし、ならいいんだ」
 神宮寺はそれを聞いて満足そうに頷いた。
「そっちの方が何かと便利だからな」
「どうしてなんですか。前から気になっていたんですが」
「ああ、その四人目の席はな」
「はい」
「猿丸先生用なんだ」
「えっ!?」
 猿丸はそれを聞いて思わず声をあげた。
「ミスター、今なんて」
「だからブルーガーには先生も乗ってもらうんだよ」
「あの、私戦いは」
「そんな悠長なことも言ってられなくてな。まあ安心してくれ。操縦や攻撃は俺と麗、マリでやるからな」
「はあ」
「といっても先生元々乗り込んでいたじゃないか」
「それはそうですが」
 実は彼は探査要員としてかってはブルーがーに乗り込んでいたのである。わけあって降りていたのだ。
 だが猿丸はそれを聞いて肩を落とすばかりであった。そしてその側では茶色の長い髪の少女が黒髪の少年と話をしていた。
「ねえ洸」
 この茶色の髪の少女が先程さやかにメールを送ったマリである。桜野マリという。
「また甲児さんや竜馬さんと一緒になるのよね」
「ああ」
 その黒髪の少年ひびき洸はそれに応えた。彼もまた何やら思うところがあるようだ。
「甲児さん達元気かなあ。まああの人のことだから大丈夫だろうけれど」
「案外落ち込んだりなんかしちゃっていたりして」
「ははは、それはあの人に限って有り得ないよな」
 そんな話をして和気藹々とした雰囲気であった。そして大空魔竜が姿を現わしてきた。
「お、来たな」
「あれが噂の大空魔竜ですね」
 赤っぽい髪の少女もいた。ブルーガーのサブパイロット明日香麗である。
「話に聞いていたよりずっと大きいですね」
「ああ」 
 神宮寺達がそれに頷く。皆上を見上げていた。
「洸」
 神宮寺が声をかけた。
「俺は一足先に麗達と一緒にブルーガーであがるぜ。こういった時に敵が来ることが多いからな」
「ああ、頼む。俺も何かったらすぐ出る」
 洸もそのつもりであった。そして人面岩を見た。
「行くぜ、ライディーン。また戦いにな」
 そう言った時であった。不意に基地のサイレンが鳴った。
「ほら、おいでなすったぜ!」
 神宮寺が待ってましたとばかりに声をあげる。
「麗、マリ、先生、行くぞ!」
「はい!」
「わかったわ、ミスター!」
 麗達もそれについていく。そして洸も人面岩に顔を向けた。
「ライディーン、行くぞ!」
 傍らにあるバイクに目をやる。そしてそれに乗り込みエンジンをかけた。
 そのまま走る。人面岩に向かって一直線に進む。人面岩が開き中からライディーンが姿を現わした。
「ライディーーーーーーン、フェェェェェェェェェェドイイィィィィィィィィィンンンッ!」
 バイクをハイジャンプさせる。そしてそのままライディーンの中に入る。ライディーンの目に光が宿った。そして動きはじめた。
「行くぞ、ライディーン!」
 空を飛ぶ。そして迫り来る敵に正対した。見れば邪魔大王国の者達であった。
「遅いぞ」
 マガルガに乗るククルは後ろにいる者達を叱責していた。
「ハッ、申し訳ありません。何分陛下の御真意に気付きませんで」
 アマソ達がそれに頭を垂れる。
「まさかムー帝国の力を手に入れようとは。お流石です」
「ふふふ」
 ククルはそれを聞いて笑っていた。
「ムー帝国の力は絶大じゃ。それを我等がものとしたならばどうなる」
「言うまでもないことでありますな」
「そういうことじゃ。ミケーネの者達の世話になることもない。それに」
「それに?」
「あの謎の敵にも対抗できる。あの者達何者かはわからぬが」
 ククルはミケーネの基地を襲ったあの謎の敵に対して考えを巡らせていた。
「かなりの力を持っておるようじゃからな。それに対抗せねばならん。よいな」
「はっ」
 アマソ達が頷いた。彼等はそれぞれヤマタノオロチに乗り込んでいる。
「さて」
 ククルは顔をムートロン研究所に移した。
「行くぞ。丁度出て来ておるわ」
 ライディーンと大空魔竜隊がそこにいた。既に全機出撃し戦闘態勢に入っていた。
「行くぞ、全軍総攻撃じゃ!」
「ハッ!」
 邪魔大王国の者達はククルの号令一下攻撃を開始した。大空魔竜隊とコープランダー隊はそれを迎え撃つ。ライディーンもその中にいた。
「行くぜ皆!」
「おう!」
 洸の言葉に皆応える。そして戦いを開始する。
「フン、ライディーンがどうしたというのだ」
 イキマは目の前に来たライディーンを見て嘲笑の笑みを浮かべていた。
「所詮は張り子の虎よ。我等の手にかかれば」
 そう言いながら攻撃の指示を下す。八つの頭から炎を放つ。
「おっと!」
 だがライディーンはそれを何なくかわした。そして反撃を繰り出す。
「ゴーガンソォォォォォォォォォォドッ!」
 剣を取り出しそれで斬りつける。それによりヤマタノオロチはかなりのダメージを受けた。
「グワァッ!」
 イキマはそれを受けて思わず声をあげた。だがそれでもオロチは墜ちはしなかった。
「この程度でっ!」
「無事かっ!」
 だがここでククルがフォローに入って来た。
「ククル様!」
「イキマ、無理はするでないぞ!」
「大丈夫です。御心配なされますな」
 だが彼は笑ってそれに返した。
「ククル様の手をわずらわせることもありません。どうかお気になされませぬよう」
「そうか」
「それよりもククル様」
「何だ」
 イキマの言葉に顔を向ける。
「是非ともムーの力を手にお入れ下さい。あの力があれば我等は」
「わかっておる」
 彼女はそれに答えた。
「あの人面岩が怪しい。待っておれ」
「はい」
 ククルは人面岩に向かう。だがここでグルンガストが前に出て来た。
「また主か!」
「ここは通さん!」
 ゼンガーはククルを前にして叫んだ。
「貴様等にムーの力を渡すわけにはいかぬ」
「ならば力づくで奪い取るのみ」
 ククルはゼンガーの乗るグルンガストを見据えてこう言った。
「主ごときに我等が悲願、邪魔されるわけにはいかぬからのう」
「悲願か」
「そうよ。我が邪魔大王国がこの国を手中に収めるという悲願。それを果たすのよ」
 ククルはその目を赤く光らせながらそう語った。
「その為にムーの力貰い受けてつかわす」
「それならばライディーンを手に入れるがいい」
「何」
「ライディーンこそムーの力の具現。それを手に入れずして何がムーの力だ」
「そうであったのか」
「そして俺は貴様等にその力を渡すつもりはない」
 イキマのヤマタノオロチを倒したライディーンがここに来た。見ればイキマは既に脱出し戦場を離脱している。
「来い、今ここで貴様を倒してやる」
「ぬうう」
 ククルはそれを聞いて怒りの声をあげた。
「ならば言われる通りにしてやろう。ライディーン」
 彼に正対した。
「ぬしの力、貰い受けてつかわす。覚悟せよ!」
「望むところ!」
 彼等は激しくぶつかり合った。そして互いに攻撃を繰り出し合う。死闘が幕を開けた。
「ゴォォォォォォォォッドアルファァァァァァァァッ!」
 ライディーンが念動波を放つ。それによりマガルガを撃たんとする。しかしマガルガはその念動波を翼で弾き返した。
「何のっ!」
「クッ!」
 洸はそれを見て苦渋の声をあげた。そこにゼンガーのグルンガストが来る。
「助太刀するぞ!」
「いや、いい」
 だが洸はそれを断った。
「こいつは今は俺がやる。貴方は他を頼む」
「いいのか」
「ああ」
 洸は頷いた。
「こちはムーの力を狙っている。ならば」
 言葉を続ける。
「それは決して手に入らないということを教えてやる。この俺の手でな」
「そうか」
 ゼンガーはそれを聞いて動きを止めた。
「ならば任せる。いいな」
「ああ」
 洸は答えた。そしてあらためてマガルガに正対する。
「行くぞ」
「来るがいい。屠ってくれる」
 ククルも引く気なぞ毛頭もなかった。ライディーンと正対しても臆するところがなかった。
「ひびき洸」
 ゼンガーがそんな彼に対して言った。
「何でしょうか」
「武運長久を祈る。勝てよ」
「はい」
 彼はそれに答えた。これを受けて彼はマガルガに再び攻撃を仕掛けた。
「行くぞっ!」
 背中から弓を取り出した。そしてそれで狙いを定める。
「ゴォォォォォォォォッドゴォォォォォォォォオガンッ!」
 弓を放った。それでマガルガを射る。だがマガルガはそれもかわした。
「他の者ならいざ知らず」
 ククルはライディーンの弓を舞を舞うようにかわしながら言う。
「わらわにこの程度の攻撃が通用すると思うてか」
「それはわかっている」
 だが洸の声は冷静であった。
「これはほんの陽動だ」
「何!?」
「本当の攻撃はこれだ。行くぞ」
 ライディーンが動いた。そして態勢を変えた。
「ゴッドバーーートチェェェーーーーンジッ!」
 ライディーンが変形した。鳥の形に変わった。そして洸はさらに言う。
「照準セェェェェェェーーーーーット!」
 マガルガに狙いを定める。そしてそのまま突撃した。
「何とっ!」
 ククルはそれをかわそうとする。だが先程のゴッドゴーガンをかわしたそれで態勢が整っていない。かわしきれなかった。
「ヌウッ!」
 急所はかわした。だが攻撃を全て避けることはできなかった。右腕を吹き飛ばされてしまった。
「おのれ・・・・・・」
「見たかライディーンの力を」
 洸はライディーンを元の形に戻してククルに対して再び正対した。
「貴様ごときに扱えるものじゃないぜ」
「わらわを愚弄するか」
 その言葉に顔を紅潮させた。整った白い顔がみるみる醜く歪んでいく。まるで般若の様であった。
「愚弄なんかしないさ」
 だが洸はそれに対してすぐにそう返した。
「ただ貴様の様な奴にこの力は手に入らない、それを言っただけさ」
「おのれ」
 しかしそれはククルにとってはさらに怒りを湧き起こらせるだけであった。再び攻撃に入ろうとする。だがここで何者かがやって来た。
「ククル殿、ここにおられたか」
 逆になった髑髏の頭を持つ巨人が空中に姿を現わした。
「ムッ、悪霊将軍ハーディアスか」
 鉄也がその巨人の姿を見て言った。ミケーネ帝国の暗黒大将軍の下には七人の将軍がいる。彼はその中の一人なのである。
「ここは下がられよ。迎えに参りましたぞ」
「どういうことじゃ」
「我等が闇の帝王が御呼びです。恐竜帝国とのことで是非ともお話したいとのことです」
「さよか。ならば仕方がないの」
 ここでライディーンに顔を戻した。
「この勝負預けておく。さらばじゃ」
 こう言って撤退した。他の残った者もそれに続く。こうしてムートロン研究所での戦いは終わった。この時黒い鷲が姿を現わした。
「あれ」
「アランじゃねえか」
 沙羅と忍がそれを見て言った。
「厚木にいたんじゃねえのか。どうしたんだよ」
「ちょっと事情が変わってな」
 アランはダンクーガに通信を入れた。モニターに彼の顔が映る。
「大空魔竜隊に入ることになった。宜しくな」
「おお、そりゃいい。歓迎するぞ」
「また三輪長官と喧嘩したのか」
 竜馬と隼人が彼にそう声をかけた。
「それもある」
 彼はそれを認めた。
「親父は庇ってくれるがな。やっぱりあのおっさんとは合いそうにもない」
「まあそうだろうな」
「あの人に合う人なんて滅多にいないわよ」
 甲児とさやかもそれに納得した。
「けれどそれだけじゃねえだよ。それだけであんたが動くとは思えねえぜ」
 忍はさらに突っ込みを入れた。
「何があったか詳しく教えてくれよ」
「ああ」
 アランはそれに頷いた。そしてまずは大空魔竜隊は大空魔竜の中に入りアランの話を聞いた。皆艦橋に集まっている。
「実は狭山で事件があってな」
「狭山」
「日本の埼玉県にある都市だ」
 ピートにサコンが答える。
「あまりいい話でもないことで有名にもなっているがな」
「そうか」
 サコンは詳しいことは話さなかったがピートには何となくわかった。人間の社会は日のあたる場所だけではないのである。陰もあるのだ。
「そこで少し事件があってな」
「事件」
「そうだ。ヒメ、来てくれ」
「うん」
 ここで艦橋に一人の少女が現われた。赤い髪の少女である。
「彼女は」
「宇都宮比瑪っていいます。どうぞよろしく」
 彼女はそう名乗って頭を下げた。
「へえ、ヒメっていうんだ。いい名だな」
「惚れたか、サンシロー」
「な、何言ってるんだよ」
「HAHAHA,サンシローは純情ボーイね」
「また兄さんたら」
 隼人はからかいジャックが茶化す。メリーはそんな兄を嗜める。いつものことであった。
「まあそれはいい。ところで」
「はい」
 大文字の言葉に応える。
「君はどうしてここに来たんだね」
「はい」
 ヒメはそれを受けて答えた。
「ブレンパワードに誘われて」
「ブレンパワード!?」
 皆それを聞いて不思議そうな声をあげた。
「それは一体」
「何のことなんだ」
「博士、知っていますか」
 ミドリが大文字に尋ねた。だが彼も首を捻っていた。
「申し訳ないが」
「そうですか」
「私もはじめて聞く。それは一体何なんだ」
「詳しいことは私も知らないですけれど」
「えっ、そうなの!?」
「だったら俺達にもわかる筈もない」
 ジュンと鉄也がヒメの言葉を受けてそう言った。
「けれど大変なんです。オルファンが」
「オルファン!?」
 それを聞くと全ての者の顔色が一変した。
「今オルファンって」
「はい」
 ヒメは頷いた。
「それが動くと」
「わかっている」
 大文字がそれに答えた。
「宇都宮君といったね。君の言いたいことはわかっているよ」
「本当ですか!?」
 大文字の優しい言葉を受けヒメは顔を上げた。ここで大空魔竜に通信が入った。
「む!?」
 通信を開いた。するとそこに二人の男が出て来た。一人はドレッドの黒人、そしてもう一人は金髪の白人であった。
「ナンガ=シルバレーだ」
「ラッセ=ルンベルグだ」
 黒人と白人はそれぞれ名乗った。そして大空魔竜隊に対して言った。
「ここにブレンパワードのパイロットがいると聞いたが」
「はい」 
 ヒメはここで名乗った。
「それは私ですけど」
「そうか、君か」
 二人はそれを聞いて少し意表を衝かれたような顔になった。
「まさかこんな可愛らしいお嬢さんだったとはな」
「だがブレンパワードは容姿で選ばれるわけじゃないからな」
 二人はそう言い合った後でまたヒメに対して言った。
「俺達はノヴィス=ノアから来た」
「ノヴィス=ノア!?」
「連邦軍の戦艦の一つだ」
 大文字がそう皆に説明した。
「特殊な任務に就いているので詳しいことは私も知らないが」
「博士の言う通りだ」
 ナンガがそう言った。
「ちょっと変わった戦艦でね。俺達の乗っているのもすした関係でモビルスーツとかとは違うんだ」
「じゃあ何なんだ?」
「アンチボディっていうのさ」
「アンチボディ・・・・・・。さっきはブレンパワードと言っていなかったか」
「おっと、悪い。俺達が乗っている方をブレンパワードという」
「ふむ」
 ここでラッセが大文字の問いに答えた。大文字はそれを聞いて納得したように頷いた。
「そうだったのか」
「ああ。それで敵さんの方をリクレイマーと呼ぶ」
「リクレイマー」
「詳しいことは中で話す。着艦していいか」
「うむ。ピート君」
 大文字はそれを受けてピートに声をかけた。
「着艦用意を」
「はい」
 こうして二機のブレンパワードが着艦した。彼等もまた長い戦いに入ることをこの時は誰も予想していなかった。しかし時の歯車は彼等を確実に巻き込んでいた。


第十一話    完



                                      2005・3・3



[252] 題名:悪友との再会2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 23時21分

「来るぞ、皆」
 彼はマサキやトッド達に声をかけた。
「あいつが・・・・・・ゲア=ガリングが」
「そうか、いよいよか」
「あの王様と会うのも久し振りだな」
 マサキとトッドがそれに応える。そして彼等はビルバインと共に新たな敵に顔を向けた。
 そこに巨大な黄色い影が姿を現わした。無数のオーラバトラーを周りに従えたそれはまるで蝶の様な形をしていた。だが全体から巻き起こる威圧感がそれが決して蝶ではないことを教えていた。
「ゲア=ガリング!」
 ショウはその巨大なオーラシップを見てその名を呼んだ。
「暫くぶりに見たが相変わらずとんでもねえ大きさだな」
 マサキがそれに続いた。彼等は一斉にそちらに顔を向ける。ここでカークスから通信が入った。
「わかってるな」
「勿論」
 彼等はそれに答えた。
「彼等の足止めを頼む。我々はその間にシュテドニアス軍を退ける」
「了解。どれだけかかる?」
「そうだな」
 カークスは戦局を見ながら答えた。
「あと数分だ。それまで時間を稼いでくれ。いいな」
「よし、わかった」
「何なら俺だけで連中全部倒してやるぜ」
「トッド、それはあたしの言う台詞だよ」
 聖戦士達がそれに応える。マサキとリューネもであった。
 彼等はゲア=ガリングとそのオーラバトラー達に向かっていった。その間にカークスは残りの部隊に指示を下した。
「全軍総攻撃だ!この移動要塞も前に出せ!」
 その声が一気に強くなった。
「一気に退ける!そしてゲア=ガリングに向かう。よいな!」
「ハッ!」
 全軍それに従い動いた。そしてシュテドニアス軍に対して攻勢に出た。
 それを見たノボトニーの動きも速かった。すにやかに全軍に指示を下した。
「撤退せよ!ダメージの多いものから退け!」
「ハッ!」
 それに従い退く。後詰はロドニー達が受け持っていた。
「お、撤退かよ」
 オザワはそれを見てタダナオから離れた。
「おい、何処へ行くんだよ」
「悪いがこれも命令でな。縁があったらまた会おうぜ」
「会おうぜ、ってどうせ敵味方だからまた戦場だろうが」
「まあ固いことは言いっこなしだ。お互い死なねえように気をつけてな」
「ああ、またな」
 こうしてオザワは戦線を離脱した。追撃しようとしてもそれより早くカークスからの指示が来た。
「深追いはするな、すぐにゲア=ガリングに向かえ」
「やっぱりな」
 彼はそれを聞いて納得した。
「小沢、また会おうぜ」
 最早姿が見えなくなった悪友にそう言葉を贈った。そして彼はゲア=ガリングに向かうのであった。
 ゲア=ガリングとその下にいるオーラバトラー達は既に戦闘に入っていた。既にビルバイン達と剣を構えている。
「必殺の、オーラ斬りだああっ!」
 チャムがショウの横で叫ぶ。ショウがそれに合わせるかのように剣を振り下ろす。
「はああああああっ!」
 それで敵のビアレスが撃墜された。だがそこに三機の赤いビアレスがやって来た。
「ショウ、あれ」
「わかってる」
 彼は答えた。そしてその三機の赤いビアレスに正対した。
「やっぱり出て来たか」
「どうするの?やっぱり戦うの?」
「決まってるだろ」
 ショウはチャムに顔を向けてそう言った。
「やってやるさ」
「無理はしないでね」
 こうしてショウのビルバインはその三機の赤いビアレスに向かった。三機のビアレスはそれを見て互いに顔を見合わせた。
「ダー、ニェット、来たぞ」
 髭面の男が他の二人に声をかけた。ガラミティという。
「おう」
「わかってるぜ」
 いかつい顔の大男と隻眼の男がそれに頷く。ダーとニェットである。
「ショウ=ザマ、やはりここにもいるとはな」
「どうやら俺達はあいつとは腐れ縁にあるらしいな」
 彼等はビルバインを前にしても余裕のある態度を崩してはいなかった。歴戦の勇者由縁だろうか。
「だが油断はするな。今まで何度も痛い目にあってきたからな」
 ガラミティが他の二人にそう言う。彼がリーダー格のようである。
「わかってるぜ」
「じゃああれをやるか」
「うむ」
 三人は互いに頷き合った。そしてサッと動いた。ショウを取り囲んだ。
「行くぞ・・・・・・」
 三人は同時に攻撃を開始した。
「トリプラーーーーッ!」
 それでショウのビルバインを討とうとする。だがビルバインはそれよりも早く上に飛んだ。
「ムッ!?」
「トリプラーを!」
 彼等は一斉に顔を上げた。そこではショウが既に攻撃態勢に入っていた。
「そう何度も!」
「いっちゃえええええっ!」
 チャムも同じになって叫ぶ。そしてビルバインはオーラビームソードを三機に向けて放った。
「ウワッ!」
 彼等はそれをよけそこねた。急所こそ外したものの大きなダメージを受けた。それぞれ腕や脚、頭部を吹き飛ばされてしまった。
「クッ、これ以上の戦闘は無理か」
「兄弟、退くぞ」
「ああ、残念だがな」
 こうして赤い三騎士は退いた。だがショウの戦いはまだ終わってはいなかった。
「チャム、今度はあいつだ」
 ショウはゲア=ガリングに顔を向けていた。
「うん」
 チャムもそれに頷く。彼女も敵が何であるかわかっているのだ。
「行くぞ、あいつを倒す!」
「ショウ、待って!」
 だがここで後ろから声がした。そこには一機のビアレスがいた。
「リムル」
「あそこにはお母様がいるわ」
 彼女はビショットと母ルーザの関係を知っていたのである。
「だから私が」
 彼女は前に出ようとする。だがそこに同じ小隊のニー達が来た。
「待て、リムル」
 ニーが彼女に声をかける。
「それだけは止めろ」
「けれど」
「いいから。子が母に剣を向けるようなことがあってはならないんだ」
「これは戦争なのよ、ニー」
 しかしリムルも引き下がらなかった。
「バイストンウェルの戦いの元凶がお母様なのだから」
 彼女はゲア=ガリングを見据えた。
「せめて私の手で」
「おいおい、お嬢様は何思い詰めてるんだよ」
 だがここでトッドのダンバインがやって来た。
「戦争だってんなら他にもあるだろうが」
「トッドさん」
「御前さんにはあのデカブツは荷が重過ぎるぜ。幾らビアレスでも一機でどうにかなるもんか。なあショウ」
「ああ」
 トッドはリムルに言うのと同時にショウに対しても言っていたのだ。一機のオーラバトラーで戦争が決まるわけではないのだと。これはショウがかってエイブに言われたことであった。アメリカ空軍のパイロット、すなわち士官としての教育を受けてきたトッドにはこのことがよくわかっていたのだ。
「今丁度シュテドニアスの連中も退けて魔装機も来たところだ」
 見れば魔装機達もゲア=ガリングのオーラバトラー達と戦いをはじめていた。既に何機かのオーラバトラーを撃墜している。
「あのデカブツを倒すのは皆でやりゃあいい。わかったな、姫さん」
「え、ええ」
「じゃあ行くぜ。こっちのオーラバトラーはあらかた退けたし」
「ああ」
 ショウはトッドの言葉に頷いた。
「一斉攻撃だ。ゲア=ガリングを落とせたら大金星だぜ!」
「よし!」
 ショウ達だけでなく魔装機のパイロット達もそれに乗った。そしてゲア=ガリングに向けて一斉に攻撃を開始した。
 それを見てビショットは一瞬顔を青くした。だがここで隣にいるルーザが言った。
「ビショット様、恐れることはありません」
「そうなのか」
 だが彼はいささか怯えていた。家臣達の手前それはかろうじて表には出さないようにはしていたが。
「まだ敵は遠いです。時間があります」
「時間といいますと」
「こちらが退く時間です。既に我等の目的は果たされました」
「ふむ」
 ビショットはそれを聞いて顎に手を当てて考えた。
「つまり戦いに参加したという証拠を作ったということですな」
「はい」
 ルーザはそれに頷いた。
「目的が果たされればもう用はありません。退いてもよろしいかと」
「確かに。それではそう致しましょう」
「はい。すぐにでも」
「わかりました。よし」
 彼はここで家臣達に声をかけた。
「これ以上の戦いは無意味だ。撤退するぞ」
「わかりました」
「シュテドニアス軍の撤退を援護するという我等の目的は果たした。ならば我等もこれ以上戦線に留まる意味はない。よいな」
「ハッ」
 ここで彼は言葉巧みに家臣達に自分達の作戦が成功したということを信じ込ませた。彼とて伊達に一国の王を務めているわけではないのだ。
「オーラバトラー隊にも伝えよ。すみやかに戦線を離脱せよと。ゲア=ガリングを守りながら後退せよとな」
「了解」
 こうしてゲア=ガリングは撤退した。オーラバトラー達もこの巨艦を守りながら随時戦線を離脱した。こうして戦いは終わった。シュテドニアス軍もビショット軍も夕刻には完全に姿を消していた。
「戦いはとりあえずは俺達の勝利だな」
「ああ」
 休息の為に着陸したマサキにファングが声をかけた。
「あのゲア=ガリングを見た時は正直驚いたが」
「そんなに凄かったか?」
「あんな形をしていたからな。あれで空を飛ぶとは信じられん」
「そんあこと言ったらグランガランだって相当なもんだろうが」
「それはそうだがな。あれは何というか」
 ファングは少し言葉に詰まった。
「お城みたいだって言いたいの?ファングさん」
「そう、その通りだ」
 彼はプレシアの言葉にそう応えた。
「あれは将に城だ。何であんな形をしているのか最初はよくわからなかった」
「オーラバトラーは空から来るからな。それを考えてああした形にしたらしいぜ」
「そうらしいな。それを聞いた時には納得したが」
「まあ俺達の魔装機も空を飛ぶしな。それを考えたらよくわかるな」
「ああ」
 ここで彼等の側にやって来る二人のフェラリオがいた。
「ねえ」
 見れば赤い髪のフェラリオとまだ赤ん坊のフェラリオであった。
「ん、シーラ女王の御付きのフェラリオか」
 ファングは二人の姿を認めて言った。エレ=フィノとベル=アールである。
「そうだよ。覚えてくれてたのね」
「嬉しいなあ」
「まあな。ところでどうしたんだ」
「ええ、実は」
「ちょっと珍しいもの見つけたんだ」
「珍しいもの」
 ファングだけでなくマサキもそれを聞いて顔を向けた。
「それは一体何だ」
「ちょっと来て」
「絶対あたし達の役に立つから」
「?」
 マサキ達は首を傾げながらも彼女達に従った。そして二人の導くところにやって来た。マサキ達はそれを見て思わず声をあげた。
「おい、こりゃすげえなあ」
「ああ、大した戦利品だ」
 ファングもマサキの同意する。
「おい、二人共」
 そしてエレとベルに声をかけた。
「すぐにショウ達を呼んでくれ。いいな」
「わかったわ」
 ショウ達がすぐに現場に呼ばれた。彼等はそこにあったものを見て思わず驚きの声をあげた。
「ゲア=ガリングが落としたものか!?」
「どうやらそうみたいね」
 驚くショウに対してマーベルは冷静に返した。
「ライネックにレプラカーンか。またえらいもん見つけたな、二人共」
 トッドがエレとベルにそう声をかけた。
「えへへ」
「どう、凄いでしょ」
「ああ、全くだ」
 ニーが二人を褒めた。そしてそのバッタに似た緑のオーラバトラーと赤いオーラバトラーを見上げた。
「ここでこの二機が入ったのは有り難いな」
「ボチューンも悪くないけれどね」
 キーンも言った。
「で、誰が乗るの」
 マーベルが一同を見渡した後で言った。
「私はダンバインがあるからいいけれど」
「俺はビルバインのままでいい」
 まずショウが抜けた。
「私は今のビアレスが一番合ってると思うから。別にいいわ」
 リムルも抜けた。
「ガラリアは」
 マーベルはガラリアに話を振った。
「バストールでいい。あたしはあれで満足してるよ」
「そう」
「じゃあ俺達三人だな」
「ああ」
「そうね」
 ニーの言葉にトッドとキーンが頷いた。
「まず俺だが」
 トッドがまず口火を切った。
「ダンバインがあるからな。最初はあれも複雑な思いがあったが今ではわりかし気に入ってる。ライネックに乗っていたこともあったがな」
「じゃあダンバインでいいのか」
「今はそう思ってるぜ。レプラカーンには最初から興味はねえ。どうも俺には合いそうもねえからな」
「じゃあ御前はいいんだな」
「ああ。ニー、キーン」
 そして二人に顔を向けた。
「後は御前さん達で決めな。どうするのかな」
「そうだな」
 ニーはそれを受けて考え込んだ。
「俺としてはライネックがいいな」
「あたしは・・・・・・レプラカーンかなあ。支援に回ることが多いから。レプラカーンは武装が多いし」
「じゃあそれで決まりだな。ニーがライネック、キーンがレプラカーンだ」
「ああ、それでいい」
「あたしも。けれどボチューンは一応とっておきましょ。何かあった時の為に」
「よし、これで決まりだ」
 こうしてライネックとレプラカーンがニーとキーンのものとなった。こうして彼等は新たなオーラバトラーを手に入れたのであった。
「しかし」
 ここでトッドが言った。
「何だ」
 ショウがそれに顔を向けた。
「いやな、ズワースもあればよかったな、って思ってな。バーンの旦那の」
「不吉なこと言わないでよ」
 キーンがそれを聞いて嫌な顔をした。
「そんなこと言ってるとまた来るわよ。変な仮面被って」
「おっと、そうだったな。ははは」
 こうした軽い話もしながら彼等は戦後処理に入った。それが終わるとそれぞれグランガランとゴラオンに戻った。その中にはタダナオもいた。
「やれやれ。今日の戦いは疲れたぜ」
 彼はグランガランに戻るとそう言ってフェイファーから降りた。
「今日はあんたあのジンオウとずっと戦ってたからね」
 横にいるベッキーがそれに合わせて言った。
「どうだい、ジンオウは。わりかし手強いだろう」
「機体の性能は確かに他のシュテドニアスのやつとは違うな。それに」
「それに?」
「中に乗っている奴もな。また腕を上げていやがったぜ」
 タダナオはそう言って不敵に笑った。
「知り合いだったね、そういや」
「ああ」
「地上からか。また何かあるようだね」
 ベッキーはそう言うと少し暗い顔になった。
「あいつ、生きているってだけでもあれなのにまた何か企んでいるようだね」
「あいつ?」
 タダナオはそれに反応して顔を上げた。
「ベッキーさん、誰か知っているのかい?」
「まあね」
 彼女は暗い顔のままそれに答えた。
「色々あってね」
「ふうん」
「あんたもそのうちわかるよ。ラングランにも事情ってのがあるんだ」
「だろうな。俺とあいつもそれに巻き込まれちまってるようだし」
 彼はそれを聞いて深く尋ねようとはしなかったが納得するものがあった。
「まあ乗りかかった船だ。付き合わせてもらうぜ」
「いつも思うけれどあんたって強いね」
「そうか?」
「いや、よく違う世界に連れて来られたら騒いだりするじゃない」
「まあな」
「あたし達は元々地上には未練がないしだからここに呼ばれたんだけど。あんたもそうなのかい?」
「未練があるっていえばあるぜ」
 タダナオはそう答えた。
「軍人だったからな、俺もあいつも。仕事があるから」
「だろうね」
「それにアイドルも見なくちゃいけねえ。折角リン=ミンメイのコンサートのチケットが手に入ったってのに急にこっちに呼ばれた
んだからな」
 そう言って口を尖らせた。
「あいつもミレーヌ=ジーナスのアルバム買うとか言ってたしな。それを思うと無念だぜ」
「・・・・・・あんたってわりかしミーハーなんだね」
「ミーハー!?違うね」
 彼はそれに反論した。
「芸術のセンスがあるのさ。音楽は芸術だぜ」
「ふうん、そんなもんかね」
「おや、あんた芸術にも五月蝿いのかい?」
 シモーヌがやって来た。
「嬉しいねえ。あたしこう見えても実はバレリーナだったんだよ」
「そうだったんだ」
 タダナオもこれには驚いた。
「そうさ。元々はパリで不良やってたんだけれどね。ひょんなことからなったのさ」
「へえ」
「得意なのはロシアバレエだよ。白鳥の湖も踊ったことがあるよ」
「チャイコフスキーか」
「うむ。あれはいいものだ」
 ここでゲンナジーもやって来た。
「あ、ゲンちゃん」
「・・・・・・その呼び方は止めてくれ」
 ゲンナジーはそれを聞いて少しムッとしたような顔をしたらしいが元々そうした顔なので外見上は区別がつかなかった。
「恥ずかしい」
「いやあ、ミオが呼んでるんでな。けれどわりかしいい呼び方だと思うけれどな」
「俺はそうは思わないが」
「そうかなあ。まあ暫くしたら慣れると思うぜ」
「慣れたくはないがな」
「まあまあ。ゲンナジーはこう見えても繊細なんだから」
 ベッキーが笑いながらそう言った。
「そうそう、こう見えても意外と芸術にも造詣が深くてねえ」
「へ、そうなんだ」
 タダナオはそれを聞いて意外そうな顔をした。
「読書家なんだよ。それに音楽も好きだし」
「クラシックが好きだ。勿論他のも聴くが」
「それでチャイコフスキーも聴くってことか」
「そうだ。あれは本来のロシアの音楽とはかなり違うがな。いいだろう」
「う〜〜ん、俺実はクラシックは聴かねえからな」
「そうだったんだ」
「ああ。聴きたいとは思うけれどな。ただ」
「ただ。何だ?」
「好みの女がいないから。どうしても」
「結局それかい」
「あんたも本当に好きだねえ」
 ベッキーとシモーヌはそれを聴いて呆れた声を出した。
「ミンメイもそれなんだね」
「・・・・・・否定はしねえ」
 彼は渋々ながらそれを認めた。
「あいつともそれが元で喧嘩になったしな」
「やっぱりね。けれどその彼はどうやらロリコンみたいだね」
「それ言ったら喧嘩になったんだ」
 シモーヌにそう答えた。ミレーヌ=ジーナスは十四歳のロック歌手なのである。
「向こうも言ってくれてな。ミンメイはもうおばさんだろうが、ってな。俺はそれで切れた」
「ふんふん」
 三人はそれを面白そうに聞いている。
「それで喧嘩になったんだ。奴をノックアウトしてやった。だが奴もそれでへこたれるような奴じゃない。後日再戦となったわけなんだが」
「そこでここに来たというわけなんだね」
「ああ。その通りだ」
 彼はそれに答えた。
「不思議なもんだよな、まさか地球にこんなところがあるなんてな」
「人間の知っているものは世界のほんの些細なことに過ぎないものだ」
 ヤンロンがここで姿を現わした。
「僕もここに来た時には驚いたものだ」
「へえ、あんたもかい。それは意外だな」
「意外か」
「ああ。何事にも動じないように見えるからな」
「ちょっと、それは買い被り過ぎよ」
「確かにヤンロンは落ち着いてるけれどね」
 ベッキーとシモーヌが言った。
「けれどこれで結構熱いところがあるんだから」
「そうなのか」
「はい」
 ヤンロンの影から一匹の黒豹に似た獣が姿を現わした。ランシャオである。
「御主人様は内に激しい心を持っておられますから」
「あんたが言うと本当なんだろうな」
 タダナオもランシャオのことは知っていた。だから納得したのだ。
「まあその赤い服を見ていれば納得できるな」
「この服か」
「そうさ。それは五行思想の火を表しているんだろ。グランヴェールの」
「その通りだが」
「心にそれがあるから出るんだろうな、服にも。俺はそう思うぜ」
「よくわかっているな」
 ヤンロンはそれを聞いてスッと笑った。
「どうやら精霊等にも詳しいようだ」
「それなりにな。イギリスにいたこともあるし」
「イギリスに」
「任地でな。日本に帰るまではポーツマスにいたんだ」
 ポーツマスはかってイギリス軍の軍港があった場所である。今そこには連邦軍の基地が置かれている。イギリスは妖精の話が多いことでも知られている。
「そうだったのか。道理で」
「ああ」
「あたしもそうしたことにはわりかし詳しいつもりだけれどね」
 ベッキーがここで言った。
「あんたもか」
「あたしはネィティブ=アメリカンだからね。インディアンなのさ」
「それでか」
「ああ。だからそうしたことがわかるんだよ。もっとも魔装機に乗っていれば自然とわかるようになるさ」
「そうなのか」
「あたしもね。最初は何がなんだかわからなかったけれど」
 シモーヌも言う。
「今じゃ精霊の名前使った技も使えるしね。ファタ=モルガーナっていうんだ」
「ファタ=モルガーナ」
「今じゃアルカンシエルさ。虹の精霊だよ」
 ファタ=モルガーナはプロコフィエフのオペラ『三つのオレンジの恋』にも出てくる妖精の魔女のことである。
「面白い技の名前だな」
「まあね」
「あたしもトーテムコールって技が使えるんだけれどね」
「それも精霊だな」
「そうさ。魔装機ってのは精霊をどうやって使うかが肝心なのさ」
「そうだったのか」
 タダナオはそれを聞いて大きく頷いた。
「じゃあ俺もこれからジェイファーを乗りこなそうと思ったら」
「精霊の力を使うことだな」
「そうか」
 彼はヤンロンの言葉を聞いて頷いた。そしてシュテドニアスの方へ顔を向けた。
「オザワ」
 友の名を呼んだ。
「今度も俺が勝つぜ。楽しみにしてな」
 そう言ってニヤリと笑った。そして彼等は戦場に向かうのであった。

「そうか」
 ゾラウシャルドは自身の執務室で電話を受けていた。そして答えた。
「やはりな。所詮あてにはしておらぬさ」
 どうやら戦局についての電話のようである。彼は目の前の壁にかけてある地図を見ながら電話の向こうの者に答える。
「そしてノボトニーは軍を無事に退却させたのだな」
 彼はここで問うた。
「そうか。ふむ」
 返答を聞くと今度は考える顔をした。
「ではそろそろいいな」
 そして笑った。何かを企む顔であった。
「その時は頼むぞ。その為に貴官にあれを渡したのだからな」
 電話を切った。それから再び地図に顔を向けた。そして呟いた。
「議会もある。ことは慎重にいかなければならない。しかし」
 言葉を続ける。
「あの男はもう邪魔だな。退場してもらうか」
 そう呟いた。そして一人地図を見て考えに耽るのであった。


第十話    完


                                 2005・2・27


[251] 題名:悪友との再会1 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 23時17分

             悪友との再会
「そうか、ショットも退いたか」
 シュテドニアスの軍事基地にウィル=ウィプスは停泊していた。そこで彼は先の戦いの情報を集めていたのだ。
「突如現われた謎のマシンの攻撃を受けまして」
 部下の一人がそう報告する。
「それでか。そしてその謎のマシンは何処に行ったのだ」
「ラングラン軍と合流するかと思われましたが何処かへ去ったようです。緑の光に包まれたと報告があります」
「そうか。だがまた急に出て来るかも知れぬな」
「はい」
「それは我々の前にもだ。油断してはならんぞ」
「わかっております」
 その部下はそう応えた。
「ところで戦局ですが」
「うむ」
「シュテドニアス軍はさらに後退を続けております」
「トロイアから撤退したのだな」
「はい。そして国境に向かっておりますが」
「それを援護して欲しいという要請があったのであろう、シュテドニアス政府から」
「はい」
 部下はそれに答えた。
「すぐにオーラシップを一隻送って欲しいということですが」
「ふむ」
 ドレイクはそれを受けて考え込んだ。
「だが今このウィル=ウィプスは動けぬ」
「はい」
「ショウ=ザマ達に受けたダメージが大き過ぎた。そういうことになる」
「はい」
 彼は今度の戦いに参加するつもりはなかった。それよりも様子を見たかったのだ。
「今は動くことができない。これはショットも同じだろう」
「そのようです。ショット様の部隊もかなりのダメージを受けられたようですから」
「それにあの男は今は動かぬだろう。何を言っても白々しい答えが返ってくるだけだ」
「はい」
 ドレイクはショットを全く信用してはいなかった。同盟を結んではいるがそれはあくまで表面的なものに過ぎないのである。
「となると一人しかおらぬな」
「ビショット様ですか」
「あの御仁にも働いてもらわねばな」
 彼は思うところを含みながらそう言った。
「すぐに連絡をとれ」
「ハッ」
 部下はそれに応えて敬礼した。こうしてビショットの出撃が決定した。だが当の本人はその命令に甚だ不満であった。
「おのれ、私を楯にするつもりか」
 蝶に似た巨大なシルエットの艦の艦橋にその男はいた。小ずるそうな外見の男である。その細面は思慮深そうに見える。彼がビショット=ハッタである。バイストンウェルのクの国の国王である。ドレイクの同盟者ということになっているがその実は彼を隙あらば追い落とそうと画策している策士である。
「何が悲しくてこのような異郷の地で戦わなければならんのだ」
 彼は不満を爆発させていた。どうやらラ=ギアスに来たのが大いに不満であるらしい。
「地上ならばともかくだ。ドレイクに伝えよ」
 家臣に言う。
「私は動けぬと。どうやらゲア=ガリングの調整不足のようだ」
「お待ち下さい」
 だがここで彼を止める声がした。見れば厚化粧の年増の女である。
「ルーザ殿」
 ビショットは彼女を見てふと感情を制した。
「ここは動くべきかと思いますが」
 ルーザはそう提案した。彼女は実はドレイクの妻である。だが地上に出た時にこの艦にいたことからビショットと通じ今では愛人関係にもあるのである。名をルーザ=ルフトという。言うまでもなくリムルの母でもある。
「動くべきですかな」
「はい」
 彼女はビショットにそう答えた。
「ドレイクに恩を売っておくのもよろしいかと」
「そういう考えもありますかな」
 彼はそれを聞いて考えをいささか改めたようであった。
「ですがラングラン軍はかなりの強さと聞いております。しかもグランガランやゴラオンまでおります」
「はい」
「一度戦うとなるとこちらもかなりのダメージを負いますが」
「それならばシュテドニアス軍を楯をすればよいでしょう」
「ほう」
 ルーザの言葉に眉を動かした。
「それならば我等の損害も最小限に抑えられます。要は戦いに参加したという事実があればよいのです」
「そういうものですかな」
「ええ。ですから今回はラングラン軍の前に姿を現わしたという事実さえあればよいのです。後はどうとでも言い繕えます」
「わかりました。それでは」
 彼はそれを受けて家臣達に対して言った。
「出撃だ。よいな」
「ハッ」
 家臣達はそれを受けて敬礼した。
「攻撃目標はラングラン軍。だが決して無理はするな」
 彼は家臣達にそう命令した。
「そして赤い三騎士達も呼べ」
「はい」
「あの者達にも働いてもらう。よいな」
「ハッ」
 こうして指示が次々と下る。そしてゲア=ガリング戦力を整え出撃した。目標は表向きはラングラン軍となっていた。そしてそれはすぐにラングランにも伝わった。
「やっぱりというか何というかだな」
 マサキはそれを聞いて呟いた。
「あのおっさんが出て来る番だと思っていたよ」
「よくそれがわかったな」
 ヤンロンが彼に対して言った。
「いや、実はあの連中同盟を結んでいてもやたら仲が悪くてな。しょっちゅう足の引っ張り合いをしていやがるんだ」
「利害だけで結びついているということか」
「ああ。だから大抵戦場でも自分の利益を優先させるんだ。三隻揃って出て来たことなんか滅多にねえんだな、これが」
「何か歴史書を見ているみたいだ」
 それがヤンロンの率直な感想であった。
「だとすると今後も彼等との戦いはそうしたことを見極めていく必要があるな」
「まあな」
 マサキはそれに答えた。
「けれど手強いのはウィル=ウィプスだな。後の二つは正直大したことはねえ。特に今度出て来るゲア=ガリングは戦闘力
自体はあまりねえんだ」
「元々空母として設計されていたからな」
 ここでショウが出て来た。
「ショウ」
「あの艦はオーラバトラーの搭載に重点を置いている。だから艦自体の戦闘力は大したことがないんだ」
「そうなのか」
「だがオーラバトラーの塔裁量はかなり多い。それは注意してくれ」
「しかも手強い奴等もいやがるしな」
 トッドも話に入って来た。
「赤いビアレスには注意しろよ。あの連中は他の奴等とは違う」
「ああ、あれか」
 マサキがそれに応えた。
「奴等のことは覚えているよ。確かに手強い」
「俺もクの国にいたことがあるからな。連中のことはよく知っているつもりだ。ドレイクの旦那のところのアレンやフェイみたいに
強いオーラ力はねえけれどな。その分技量が高い」
「トッドが言うんだから本当なんだろうな。俺は何回か見ただけだからよくわからねえが」
「マサキも戦ったことがあったな、そういえば」
「ああ。けれど剣を交えたことはなかった」
 ショウにそう答えた。
「まあ連中が来たら任せてくれ。俺達で何とかする」
「頼むぜ、聖戦士」
 こうした話をしながら彼等は出撃準備に入った。そしてグランガランに集結した。
「今回はゲア=ガリングか。となると数でくるな」
 ニーが言った。彼もゲア=ガリングやビショットのことはよく知っていた。そして彼のやり方もわかっていた。
「また何か策を用意しているだろうか」
「今の時点ではそれはないと思う。むしろ保身に走るな」
 ガラリアがそれを受けて応えた。彼女はドレイクの下にいたがビショットのことも知らないわけではないのだ。
「でしょうね。結局今回も何だかんだと言ってすぐに帰ると思うわ」
 キーンにもおおよそのことは読めていた。やはり何度も戦ってきているだけのことはあった。
「だとするとそのゲア=ガリングは今回の主な敵はないということになるな」
 カークスは彼等の話を聞きながら総括的にそう述べた。
「では敵はシュテドニアス軍ということになるな、今回も」
「私もそう思います」
 シーラが彼の意見に同意した。
「ビショット=ハッタは今回は積極的には動かないでしょう。むしろシュテドニアス軍の戦意の高まりを感じます」
「戦意ですか」
「はい」
 シーラは答えた。
「彼等は今故郷に帰ろうと命懸けです。その戦意には只ならぬものを感じます」
「というか生き残ろうと必死なんだな」
 タダナオがそれを受けて言った。
「そうかも知れません。ですが問題はそれだけではないでしょう」
「というと」
「ノボトニー元帥が戦線に到着したらしいのよ、これが」
 セニアが皆に対してそう言った。
「今指揮権を掌握したらしいわ。シュテドニアス軍は彼の指揮下に入ったみたいね」
「ノボトニー元帥がか」
 カークスはそれを受けて呟いた。
「強敵現わるといったところだな」
「なあ」
 タダナオはそれを聞いて隣の席にいるシモーヌに声をかけてきた。
「そのノボトニー元帥ってのはそんなにできるのか?」
「シュテドニアス軍の重鎮って呼ばれてるね」
 シモーヌは彼にそう答えた。
「若い時からシュテドニアス軍で活躍していてね。あの国の宿将なのよ」
「宿将か」
「ああ。だから実戦経験も豊富でね。その采配には定評があるんだよ」
「所謂百戦錬磨の将ってわけか」
「そうなるね。バゴニアとあの国がやりあった時もあの人のおかげで勝てたしね。手強いよ」
「そうなのか。まあシュテドニアスは作戦指揮自体は前から悪くなかった気がするがな。こっちの戦力が高いだけで」
「魔装機神だけでなくヴァルシオーネやオーラバトラーまでいるからな。だが油断はできないぞ」
 アハマドが真剣な声でそう語った。
「油断する者にアッラーは恩恵を与えられない」
「厳しいね」
「人の世とはそういうものだ」
 アハマドはタダナオにもそう語った。
「油断する者には死あるのみ、それだけは覚えておけ」
「わかってるさ」
 タダナオはニヤリと笑ってそれに応えた。
「だから今こうしてここにいるんだ。さて」
 そして一同に顔を戻した。
「大体話は出たんじゃねえか?今回の敵はシュテドニアスだ」
「シュテドニアスか」
「ああ。そのビショットはあまり戦う気がないっていうのならな。もっともオーラバトラーには気をつけなくちゃいけないのは変わらないにしろ」
「ふむ」
 皆彼の言葉を聞いて考え込んだ。単純で口も悪いがそれだけに率直であった。
「全軍でシュテドニアスを討てばいい。そしてゲア=ガリングが来たら」
「そこで兵を分けてもいいか」
「精鋭だけな。主力はシュテドニアスに攻撃を続けてそれを退けた後で全軍でゲア=ガリングに向かう」
「精鋭は足止めか」
「そう考えてもらっていいぜ」
「わかった」
 一同タダナオの言葉に頷いた。
「では作戦を決定するとしよう」
「はい」
 カークスの言葉に注目した。
「まずは全軍でシュテドニアス軍への攻撃を開始する。だがこの際ショウ、トッド、ガラリアの小隊及びマサキ、リューネの小隊は左翼に位置すること」
「左翼に」
「そうだ。ゲア=ガリングのいた基地は我等から見てそちらにある。だからそこに配置する」
「わかりました」
 カークスの読みであった。
「そして彼等が来た場合は足止めを頼む。その間に主力はシュテドニアスを撃つ」
「了解」
 皆カークスの言葉に頷く。
「そしてシュテドニアス軍を退けた後我が軍はゲア=ガリングに向かう。そrねいより戦いを終わらす。よいな」
「ハッ!」
 こうして作戦が決定した。ラングラン軍は戦いに向けて出陣したのであった。
 既にシュテドニアス軍は迎撃態勢を整えていた。ロボトニーは移動要塞に乗り彼等を待ち受けていた。
「来たな」
「予想通りですわな」 
 隣にいるロドニーがそれに合わせるようにして言った。
「じゃあわいも出ますわ」
「いいのかね、君も前線に出て」
「何を仰いますやら。それが軍人ですがな。今更後方でコソコソやる気はおまへん」
「ふむ」
 ロボトニーはだからといって彼を引き留めるつもりはなかった。
「君も昔から変わらないな。やはり前線で戦いたいのか」
「そうでなくては何もおもろないですから。それに」
「それに?」
「下のモンに任せて自分は安全な場所におるっちゅうのはどうも。閣下もそれは同じですやろ」
「確かにな」
 彼はそれを認めた。
「私も最後尾で指揮を執る。そして兵士達を一人でも多くシュテドニアスに撤退させるぞ」
「そうこなあきませんな」
「それでだ。君が前線に出て魔装機に乗るのなら積極的に援護を頼むぞ」
「はい」
「私は援護射撃を行う。その間に兵を退ける」
「わかりました」
「正直あのオーラバトラーとやらは信用しておらん」
 彼はここで目を細めて光らせた。
「ドレイクという男、何やらよからぬものを感じる。決して信用はできぬぞ」
「そうでっしゃろな」
 それはロドニーも同じであった。
「あの男だけやおまへんしな。あのビショットにしろショットにしろ腹に一物ありまっせ」
「大統領は彼等を利用するつもりのようだがな」
「それは向こうもでっしゃろ。何のことはおまへん、同じ穴の狢ですわ」
 そこにはゾラウシャルドに対する明白な嫌悪があった。
「どっちにしろあんな連中は数には入れんとこですな」
「うむ」 
 ロボトニーはそれを受けて頷いた。
「我々だけでやるぞ。よいな」
「最初からそのつもりですわ」
 ロドニーは強い声でそう答えた。
「そうか。ならば」
 ここで精霊レーダーに反応があった。
「言っている側からだ。来たぞ」
「はいな」
 ロドニーはそれを受けて立ち上がった。
「じゃあわいは魔装機に乗りますさかい」
「うむ」
「閣下はここで全軍の指揮をお願いしますわ」
「任せておけ。そして」
「はい」
「シュテドニアスに戻るぞ。いいな」
「勿論」
 こうして戦いがはじまった。まずはラングランの攻撃からはじまった。
「いっけええええ!」
 ミオが叫ぶ。そしてザムジードがレゾナンスクエイクを放った。
 これを受けて忽ち数機の魔装機が破壊された。そしてその隙間にラングラン軍が切り込もうとする。いつもの戦法であった。だがそれが今崩れた。
「そうはさせるかい!」
 シュテドニアスの新鋭機ジンオウによりそれが防がれた。切り込もうとしたジャオームとソルガディの前に立ちはだかってきたのだ。
「ヌッ!」
「ジンオウか!」
「おお、そのジンオウや」
 それに乗るロドニーが二人に応えた。
「ここは通さへんで。わいがおる限りな」
「へえ、そう上手くいくのかい?」
 シモーヌがそれを聞いて笑みを浮かべた。そしてザインの姿を消した。
「このザインを止めることはできないだろう」
「それはどうかな」
 だがそこで攻撃が放たれた。ザインはそれを何とかかわしたが姿を現わしてしまった。
「クッ、誰だい!」
「地上からの使者、と言えば格好がつくかな」
 そこで一機の魔装機が姿を現わした。それはロドニーが乗っているのと同じジンオウであった。
「地球連邦軍少尉小沢等、訳あってシュテドニアス軍に在籍している。以後覚えていてくれ」
「小沢!?」
 それを聞いたタダナオが声をあげた。
「おい、御前小沢か!?」
 そしてそのジンオウに声をかけた。
「その声は」
 それに向こうも反応してきた。
「おい、御前栗林か」
「おう、そうだ。御前もここにいたのかよ!」
 タダナオはその声を聞いて彼であると確信した。そしてさらに声をかけた。
「何でこんなところにいるんだよ!」
「それはこっちの台詞だ」
 オザワの方も負けじとそう返した。
「何でラングラン軍にいるんだよ」
「こっちに召還されたんだよ」
 タダナオはそう答えた。
「気付いたらな、ここにいた」
「何だ。じゃあ僕と同じか」
 タダナオはそれを聞いて納得したように言った。
「えっ、御前も召還されたのか!?」
「ああ」
 彼は答えた。
「気付いたらここにいた。御前と喧嘩した後にな」
「じゃあ同時刻にか。ううむ」
 タダナオはそれを聞いて考え込んだ。
「不思議なこともあるもんだな」
「ああ。しかもまさか敵味方とはな。一体何でこんなことになったやら」
「しかし妙だね」
 ベッキーはそれを聞きながら考えていた。
「何がだい?」
 シモーヌがそこに突っ込みを入れる。
「いや、シュテドニアスに地上人を召還できることなんかできたのかなあ、って」
「そういえばそうだね」
 シモーヌもそこに気付いた。
「一体何でだろうね。あの国にそんな魔力の強い奴なんていない筈だけれど」
 それを受けてタダナオが彼に問うた。
「で、御前は誰にここに召還されたんだ?」
「ああ、紫の髪の人にな」
「紫の髪」
 それを聞いた魔装機のパイロット達が一斉に顔色を変えた。タダナオ以外は。
「紫の髪の人?」
「ああ。そしてシュテドニアス軍に入るように薦めてくれたんだ。手続きは全部済ませてあるからってな」
「そうなのか。やけに親切な人だな」
「ああ。かなりキザっぽかったけれどいい人だったよ。おかげで今こうしてここにいるんだ」
「また妙な因縁だな」 
 だがタダナオとオザワ以外の者にとってはそれでは済まなかった。皆頭の中にある疑念が浮かんでいた。
(まさか・・・・・・)
(生きているのか)
 彼等はそう考えていた。だが今はそれについて深く考えている余裕はなかった。
 敵の反撃が強まった。それを受けて彼等もそれに対処するしかなかったのだ。
「クッ!」
 そして攻撃を加えるシュテドニアス軍の中にはオザワもいた。
「御前もかよ!」
「悪いが今はシュテドニアスにいるんでね!悪く思うな!」
 彼はそう言いながらタダナオに攻撃を仕掛けてきた。
「それに前の決着をつけるいい機会じゃないか」
「それもそうだな」
 タダナオはそれを聞いて笑った。
「じゃあケリをつけるとするか」
「そうこなくちゃな」
 二人は互いに笑った。そして戦いをはじめた。二機の魔装機が互いにぶつかり合った。
 戦いは互角のまま進んでいた。シュテドニアスは戦力差をノボトニーの指揮によりカバーしていた。そして前線で戦う兵士達の士気も高かった。
「ドアホウ、死にさらせっ!」
 ロドニーが叫ぶ。そして攻撃を放つ。
「うわっ!」
 魔装機達はそれをかわす。そして何とか態勢を建て直し攻撃に移ろうとする。だがそれを彼の側にいる魔装機が阻む。
「将軍はやらせないっ!」
 シュテドニアスの魔装機ギルドーラがロドニーのジンオウのカバーを務めていた。そこに乗るのはエリスであった。
「ここは通さないよ!」
「エリス、悪いな」
「いえ」
 エリスはロドニーの礼を受けながら敵を見ていた。そしてさらに攻撃を続けた。
「とっととやられちまいな!」
 そしてビームキャノンを放つ。それでラングランの魔装機を寄せ付けなかった。
 戦いは膠着状態に入るかに見えた。だがここでカークスが指示を下した。
「グランガランとゴラオンを前に出せ」
「オーラシップをですか」
「そうだ」
 カークスは参謀に対して応えた。
「魔装機及びオーラバトラーの援護を強める。そして」
「はい」
「各魔装機に伝えよ。それぞれの属性に合わせて戦うようにとな」
「属性に」
「水の魔装機は火に」
 彼は語りはじめた。
「火は風に、風は土に、土は水にだ。それぞれの属性を思い出せとな」
「わかりました」
 参謀は彼が何を言いたいのか即座に理解した。
「それでは各機にそう伝えます」
「うむ」
 彼は頷くとシーラとエレに通信を入れた。彼も移動要塞で前線にいるのである。そしてそこから指揮を執っていた。
「シーラ王女、エレ王女」
「はい」
 二人がモニターに出た。
「申し訳ありませんが宜しいですな」
「勿論です」
 二人は微笑んでそれに答えた。
「ショウやマサキ殿達が戦っているというのにどうして私達だけが逃れられましょう」
「私達とて一国の主、その心構えはあります」
「左様ですか」
 カークスはそれを聞いて内心感銘を受けていた。二人のその言葉には高貴なる者の義務があったからである。それは彼がよく知る一人の若き君主のそれと同じであった。
(殿下もそうだな)
 彼はここで自らの主君のことを思い浮かべた。だがそれは口には出さなかった。
「それではお願いします」
「はい」
 それだけであった。そして二人もそれに頷きカークスに言われるまま前線に出た。二隻のオーラシップの攻撃により戦局は変わった。
「前面に火力を集中させよ」
「ハッ」
 シーラの指示にカワッセが頷く。そして攻撃を仕掛ける。それによりシュテドニアス軍の陣に穴が開く。ゴラオンも攻撃を仕掛ける。
「あれがオーラシップか」
 ノボトニーは二隻の戦艦の攻撃を見ながら一言口にした。
「変わった形だがかなりの強さだな」
「ええ。しかし今はこちらにも二隻おります」
「彼等か」
 彼はそう答えた参謀の一人に顔を向けた。
「はい」
 彼は何の疑念もなくそれに応えた。ノボトニーの真意はわかってはいない。
「スプリガンも入れると三隻です。数では我等の方が有利です」
「数ではな」
 だが彼は首を縦には振らなかった。
「数だけだ」
 そして感情を込めずにそう呟いた。
「?何かあるのですか」
「いや」
 あえてそれには答えなかった。
「それだけだ。ところでゲア=ガリングはまだか」
「もう少し時間がかかるようです。オーラコンバーターの調子が思わしくないとか」
「そうだろうな」
 これは容易に想像ができたことであった。ノボトニーにとっては。
「戦局は厳しくなってきたな」
 彼はオーラシップの話から戦局に話を移した。
「そうですね、確かに」
 参謀もそれに同意した。
「ラングラン軍は戦法を変えてきましたね。どうやら精霊の属性を考慮した攻撃に変えてきました」
「うむ」
「元々我が軍の魔装機はあまり高位の精霊を使ってはおりません。不利な属性相手ですとそれが特に出ますね」
「その通りだ」
 ノボトニーは低い声でそれに応えた。
「このままではいかんな。我々も戦法を変えるぞ」
「ハッ」
「彼等に習う。属性を考慮して攻撃せよ。よいな」
「わかりました」
「そしてジェスハ准将に伝えよ」
 今度はロドニーに指示を下した。
「魔装機神に注意せよとな。そして」
 彼はモニターに映る戦場から片時も目を離さない。そして指示を下し続ける。
「徐々に退け。無駄な損害は控えるようにとな」
「了解」
 こうしてノボトニーは戦いながら退却に移ろうとしていた。ロドニーもそれに従い前線の指揮を執っていた。
「流石は閣下やな」
 ノボトニーの命令を聞いた時彼はそう言った。
「そうでないとあんな連中には勝てへんわ」
 見ればラングラン軍の魔装機はシュテドニアス軍の魔装機を押していた。やはり属性がものを言っていた。
「おい、御前等」
 彼はすぐに自軍に指示を下した。
「こっちも頭使うんや。属性考えて攻撃せい。わかったな」
「属性ですか」
 傍らにいるエリスがそれに尋ねた。
「そうや。御前のやったら水やな」
「はい」
「火の魔装機狙うんや。グランヴェールとかな」
「わかりました」
「わしやったら風やな。サイバスターといきたいところやが」
 見ればサイバスターは少し離れた場所にいる。出向いては前線指揮に影響が出かねなかった。
「仕方あらへんわ。手頃なの相手にするかい」
 そして彼のジンオウも剣を抜いた。そして敵に斬り込んだ。その状況はカークスも冷静に見ていた。
「敵は我等の戦法を真似てきましたね」
「うむ」
 彼にとってそれは予想されたことであった。さして驚いてはいなかった。
「それではこちらも次の戦法に移ろう」
「次の」
「そうだ。オーラバトラーに伝えよ。遊撃戦を展開せよと」
 今度はオーラバトラーに指示を下した。
「彼等は精霊属性はない。その分自由に動ける」
「成程」
「よいか。敵に有利な状況にするな。そして確実に追い詰めていけ」
「わかりました」
 こうしてカークスの次の指示が下った。それに従いマーベル達が動く。そしてシュテドニアス軍に次々と攻撃を仕掛ける。特にマーベルの攻撃が激しかった。
「これなら」
 落ち着いた様子でシュテドニアス軍の魔装機に剣を振り下ろす。そして袈裟懸けに斬る。
「う、うわああああっ!」
 攻撃を受けた魔装機が両断される。パイロットは慌てて脱出ポッドで逃げ出した。
「よかった、逃げたようね」
 マーベルはそれを見て少し胸を撫で下ろした。そして次に敵に向かいオーラショットを放ちまた一機撃墜した。
 ニー達はマーベルに続く形で攻撃に参加する。二機のボチューンとビアレスが敵に切り込む。
「これならどうだっ!」
「私だって!」
 マーベル程ではないが彼等の技量もかなりのものであった。次々にシュテドニアス軍の魔装機を撃墜し彼等に有利な態勢はとらせない。その間にラングランの魔装機は態勢を整え攻撃に移る。戦局はさらにラングランに有利となっていた。その間ショウやマサキは自軍の最右翼にいた。攻撃には参加しているが積極的なものではなかった。
「ショウ」
 ビルバインのコクピットの中にいるチャムがショウに声をかけた。
「わかってる」
 ショウは彼女が何を言いたいのかわかっていた。即座に頷く。


[250] 題名:宇宙からの来訪者2 名前:坂田火魯志 MAIL URL 投稿日:2005年03月03日 (木) 23時12分

「これは・・・・・・」
 そして言う。
「バルマーのものです」
「何だと!」
 ブライトはそれを聞いて思わず叫んだ。そして戦場の左方に謎の敵が姿を現わした。
 そこには数十機の人型のマシンが姿を現わした。見たところそれはバルマーのものではなかった。
「また被占領地の星からのものか!?」
「どうやらそのようですね。キャンベル星やボアダン星のものではないようですが」
「では一体」
 ブライトは首を傾げた。ここでラー=カイラムに通信が入った。
「こちらエルガイムマークU、通信は届いているか」
「エルガイム!?」
 皆それを聞いて首を傾げた。
「新型のモビルスーツか!?」
「聞いたことないぞ」
「ではメタルアーマーか」
「まだ三機しか製造していないのにか。テストタイプを」
 皆口々にそう言い合った。ここでモニターに映像が入った。
「地球の船ですか!?」
 そこに黒い髪の青年が映った。見ればアジア系の顔に近い。
「地球の!?そうだが」
 ブライトはその問いにいささか戸惑ったが冷静にそう答えた。
「君は一体。地球の者ではないのか」
「はい、僕はダバ=マイロード。ペンタゴナの者です」
「ペンタゴナ!?」
「ここから遠くにある星です。実はゼ=バルマリィ帝国の侵略を受けまして」
「やはり」
 これはブライトにも容易に想像がつくことであった。
「今その軍が地球にも来たのです。僕達はここまで逃れてきました」
「君の他にもまだいるのか」
「はい」
 ここで二人の少女が姿を現わした。
「あたしファンネリア=アム。宜しくね」
「ガウ=ハ=レッシィ。宜しく」
 黒髪と赤髪の少女が出て来た。
「あたしはエルガイムに乗ってるの」
「あたしはヌーベルディザート。覚えてくれた?」
「あ、ああ」
 いきなり言われたがブライトはとりあえず彼女達の名と機体のことを頭に入れた。
「それで君達はこれからどうするつもりだい」
「今目の前に出て来た部隊がありますね」
「ああ」
 それこそ左手に現われたバルマーの部隊であった。
「彼等と戦います。それが僕達の仕事ですから」
「仕事か」
「ええ。とりあえず貴方達には危害を加えさせはしないので御安心下さい」
 そう言うと彼等は左手の敵に向かった。見れば銀色の鋭角的なマシンと丸みを帯びたマシン、そして赤いマシンの三体のマシンがいた。
「あれが彼等のマシンか」
「そのようですな」
 ダグラスがそれに応えた。46
「見たところ地球のマシンにも似ているが」
「それに彼等の姿形も。艦長、どうしますか?」
「何をだ」
「彼等をです。流石に三機では辛いでしょうから。援護しますか」
「そうだな」
 ブライトはメタルアーマー達との戦闘を見ながら考えた。
「あちらの状況は最早決定的だな。バルキリーとメタルアーマーの部隊を残して彼等の援護に向かえ。いいな」
「はい」
「モビルスーツはすぐにバルマーの部隊に向かえ。いいな」
「わかりました」
 こうして指示が下された。そしてモビルスーツ隊がバルマーに向かった。
「ムッ」
「何処へ行くつもりだ!」
 プラクティーズはそれを見てすぐに反応した。そして他の機に命令を出そうとする。
「逃がすな、追え!」
「待て」
 だがマイヨがフォッカーとの戦闘を続けながらそれを制止した。
「大尉」
「見たところあれは我々の敵でもあるようだ。バルマーの可能性もある」
「バルマーの」
「そうだ。見たこともないマシンばかりだ。ここは彼等を行かせろ。それに」
「それに」
「今の我々には戦力がない。ここは退く必要もある」
「退く」
「そうだ。周りを見ろ」
 見ればギガノスのメタルアーマーは大きく数を減らしていた。満足に戦える状況にあるのは最早マイヨとプラクティーズの機体だけであった。
「損害が大きい。遺憾だがこれ以上の損害が出た場合撤退するぞ」
「クッ」
「わかりました」
 彼等とて軍人、しかも将校である。引き際は心得ていた。
「よいな。あの三人は何時でも倒せる。退くことも戦いのうちだ」
「了解」
 彼等は次第に戦線を縮小させた。そしてマイヨを中心として一つにまとまりバルキリー及びドラグナーに対抗していた。
 その左手ではバルマーのマシンとダバ達のエルガイムが戦闘に入っていた。
「行けっ!」
 まずダバの乗るエルガイムマークUが巨大なライフルのような重火器を取り出す。そしてそれを敵に向けて放つ。
 巨大な光が彼等を襲った。それにより何機かが炎に包まれ散った。
「あたしも行くよ!」
「あたしもだよ!」
 アムとレッシィもそれぞれ攻撃を加える。右腕に装着したライフルに似たものからビームを放ち敵を撃つ。
 これを受けた敵はいささかビームを弾きながらも貫かれる。そして爆発して果てていく。
「ん、何かおかしいな」
 その様子を見たシーブックが呟いた。
「バルマーの奴等はTフィールドでも着けているのか」
「ビームコートを着けているんだよ」 
 それにダバが答えた。
「ビームコートを」
「そうさ、ヘビーメタルはね。ビームコートが標準装備なのさ。俺達のものにも着いているよ」
「そうなのか、成程」
 シーブックだけでなく他の者もそれを聞いて頷いた。
「そして君達の乗っているマシンはヘビーメタルというのか」
「ああ」
 今度はコウの問いに答えた。
「ペンタゴナで作られているマシンさ。そういうんだよ」
「また強そうな名前だな」
 ジュドーがそれを聞いて呟いた。
「強いか弱いかは戦ってみればわかるさ。だがビームに強いとなると」
「それはそれで戦い方があるよ」
「そういうこと」
 プルとプルツーはシーブックに応えるかのように前に出た。
「こうやってね!」
「行くよ!」
 そしてファンネルを放った。それで前にいたヘビーメタルを数機たちどころに撃墜した。
「バズーカもあるぜ!」
 ビーチャの百式改がバズーカを放つ。エマやフォウもそれに続く。これもかなりの効果がありヘビーメタルを次々と撃墜していく。
「何か地球のマシンもかなり強いね」
 アムがそれを見て言った。
「バルマーを一度は退けただけはあるよ」
 レッシィがそれに相槌を打つ。
「ダバ、こっちも負けちゃいられないぜ」
 ここでダバのエルガイムマークUのコクピットの後ろに乗る男がダバに囁いた。金髪をリーゼントにした若者である。
「キャオ、ダバを急かさないで」
 それを赤い髪の妖精が止めた。何処となくバイストンウェルのフェラリオに似ていた。
「焦ったら駄目だから」
「わかってるさ」
 ダバはその妖精に答えた。
「リリスもキャオもじっとしていてくれよ」
「わかってるわ」
「おう」
 リリスと呼ばれたその妖精は答えた。キャオと呼ばれた青年もである。彼等もまたペンタゴナから来ている。リリスはミラリーと呼ばれるペンタゴナにいる一族である。キャオは本名をミラウー=キャオという。ダバの親友でありメカニック担当でもあるのだ。
「じゃあ行くぞ。どうやら十三人衆はいないようだな」
「珍しいわね」
「あいつ等も何かと忙しいんだろ。まあどうせすぐにギャブレー辺りが出て来るだろうけれどな」
「だろうな」
「ちょっとキャオ」
 ここでアムから通信が入った。
「あの食い逃げ男の名を出すのは止めてよ」
「そうは言ってもどうせまたすぐに出て来るぜ、あいつは」
「だからといって出すのは止めてくれ」
 レッシィも話に参加してきた。
「あいつのことは思い出したくもない」
「そうかなあ。何か何時か一緒に戦うことになる気がするし。根っからの悪人じゃないだろ、あいつは」
「確かにそうかも知れないな」
 これにはダバが同意した。
「何処か抜けたところがあるし」
「あ、それ言えてる」
「いつもあたし達に負けているしな」
 アムとレッシィもそれに頷く。
「だが手強いことには変わりがない。ここにいないのは幸いだ」
「そういうもんか」
「ああ。だから今は目の前の敵を倒すことに専念しよう。アトールやそんなものしかないようだし援軍も来てくれている。ここは
一気にいこう」
「よしきた!」
「行くよ!」
 こうしてダバ達とラー=カイラムのモビルスーツ達の連合部隊とヘビーメタルの戦いがはじまった。戦い自体は呆気無く終わりヘビーメタル達はその数を大きく減らして何処かへ退却した。
「こっちはこれで終わりだな」
「はい、有り難うございます」
 ダバはバニング達に礼を述べた。
「おかげで助かりました」
「それは何よりだ」
 ここでフォッカー達も来た。ケーン達も一緒である。
「そっちも終わりましたか」
「ああ。ギガノスの連中は撤退した。中々骨のある奴等だったぜ」
 フォッカーはカミーユの問いに答えた。
「こっちはわりかし楽だったみたいだな」
「そういうわけでもありませんよ」
 だがカミーユはそれを否定した。
「敵はビームコートを標準装備にしていますから」
「ほお、それはちと厄介だな」
「まあそれでも勝てましたけれどね。実弾兵器やファンネルで」
「じゃあバルキリーだと問題ないようだな。しかしビームに強いとはオーラバトラーみてえだな」
「どちらかというとモビルスーツに近いみたいですけれどね」
「そうなのか。どちらにしろ新しい敵ってわけだな」
「はい」
「で、そちらさんは」
 フォッカーはここでダバ達に顔を向けた。
「見たところ見ない顔だが」
「はい」
 ダバはそれに答えた。
「僕はダバ=マイロード。ペンタゴナから来たバルマーへの反乱軍です。この地球まで彼等の戦艦を奪って逃げて来ました」
「ここまでか」
「ええ。そしてここで言います。彼等はまた地球に兵を向けてきています。今のポセイダル軍がそれです」
「ポセイダル」
「はい」
 ダバはそれに答えた。
「そいつ等が今度のバルマーの尖兵か。ところで」
 フォッカーは質問を続けた。
「詳しい話を聞きたい。来てもらえるか」
 こうしてダバ達はラー=カイラムに入った。まずは嘘発見器等によるチェックを受けた。
「すまないが決まりでな」
「わかっています」
 ブライトの言葉にも彼等は快く応えた。そして検査を受けた。綿密な検査のうえ出た結果はシロであった。
「嘘はついていませんね。彼等はバルマーに抵抗する組織の者です。そしてポセイダル人に他なりません」
 トーレスがブライトにそう報告する。
「体格は我々より少し大柄の傾向がありますがその他は全く変わるところがありません。血液型等も全く一緒です」
「それではバルマー星人達とも同じということだな」
「そうなりますね。他に何かお聞きしたいことはありますか」
「いや」
 ブライトは首を横に振った。
「彼等が信用できるのならそれでいい。それでは彼等の話を聞くとしよう」
「わかりました」
 こうしてブライトはブリーフィングルームに向かった。部屋に入ると既に主だった者達が集まっていた。その中には当然ダバ達もいた。
「それではダバ=マイロード君」
「はい」
 ダバはブライトの声に答えた。
「詳しい話を聞きたい。まず君のことだが」
「ペンタゴナから来ました」
「そのペンタゴナとは。さっきも聞いたが」
「ここから遠く離れた場所にある惑星です。バルマーの侵略を受けまして」
「やはり」
 それはブライトにも想像がついた。
「僕はその星の王家の者だったのですが。それが故に身を隠していました」
「へえ、あんた王子様だったのかよ」
「格好いい!」
 ジュドーとプルがそれを聞いて声をあげた。ブライトはそんな二人を嗜めた。
「静かにな」
「はいはい」
「ちぇっ」
「それで偶然が重なりまして。盗賊団に入ったりあちこちを転々としていたのですが何時しかポセイダル軍と対立するようになりまして」
「あたしも入ったのよ、盗賊から」
 アムがここで皆に対して言った。
「俺は田舎からずっとダバと一緒だったぜ」
「私も」 
 リリスとキャオもそう言った。
「あれ」
 リリスを見た多くの者がそれで声をあげた。
「あんたフェラリオに似てるな」
「フェラリオ?」
「ああ、バイストンウェルってところにいる種族なんだ。簡単に言うと妖精かな」
「そうなの」
「しかも声がチャムそっくりだな。偶然なんだろうけれど」
「そのチャムって人の声が私に似てるの」
「ああ、そっくり」
「性格は全く違うみたいだけれどね」
「それは面白いね」
 レッシィが声をあげた。
「あたしの声もリリスにそっくりだってよく言われるけれど」
「確かに」 
 それを聞いて皆納得したように頷いた。
「同じ人の声にしか思えないよな」
「ユングさんやベルトーチカさんともそっくりだし」
「いや、クェスにもそっくりだぞ。偶然にしては出来過ぎだよ」
「よく聞いていたらプルやプルツーの声もアムの声とそっくりだよなあ」
「タップ、御前の声あのキャオとそっくりだぞ」
「ケーン、そういう御前はイーノと同じじゃないのか?」
 彼等はヒソヒソとそんな話をしていた。ダバ達はそれを見て不思議そうな顔をしていた。
「いや、気にしないでくれ」
 ブライトはそんな彼等にそう言って落ち着かせた。
「どうも我々の中には声が似ている者が多くてな。こうした話をすることが多くなるんだ」
「そうなのですか」
「けれどあの双子の女の子達とあたしの声ってそっくりよね。不思議な位」
「まあそれは置いといて。あたしなんか何人同じ声の人がいるかわからなくなってきたよ」
「何はともあれ本題に戻ろうぜ」
「ああ」
 皆キャオの言葉で本題に戻った。
「それで戦っている間に戦局が悪化しまして」
「ふむ」
「彼等の戦艦を奪って戦力を拡充したり武器商人から調達したりしていました。そしてその間に彼等の主力がこの地球に向かうという話を聞きました」
「それがさっきの部隊だな」
「はい」
 ダバは答えた。
「彼等は戦力の殆どを地球に派遣することにしたらしいのです。そしてそれを率いるのはオルドナ=ポセイダル自身」
「オルドナ=ポセイダル」
「バルマーからペンタゴナの統治を任された人物です。詳しいことは謎に包まれています。男か女かすらわかってはいません」
「全てが謎に包まれた者ということか」
「噂ではバルマー星人だとも言われていますが。確かなことは何一つわかっていないのが現状です」
「バルマー星人かも知れないというのが引っ掛かるな」
 ブライトはそこまで聞いてそう呟いた。
「バルマー星人は本来は間接統治を行なう筈だからな」
「そうなのですか」
「少なくとも今まで地球に攻め込んできたバルマーの者達はそうだった」
 ブライトはそう答えた。
「もっともそのポセイダルが本当にバルマー星人かどうかはまだわからないが」
「はい」
「ただ一つ言えることはそのポセイダルがバルマーからの命令でこの地球に攻撃を開始したということだ。それは間違いないようだな」
「そうですね」
 バニングがそれを聞いて同意の言葉を出した。
「ただ気になることがある」
「それは」
「何故君達がいるのに母星を空けてまで彼等はこの地球に来たから」
「バルマーからの命令だからじゃないかな」
 バーニィが言った。
「本星からの命令は絶対らしいし」
 クリスもそれに続いた。
「確かにそれは事実だろう」
 バニングは彼等の意見をある程度まで正しいと認めた。
「だがそれでも星を空けるとは思えない。違うか」
「確かにな。大尉の言う通りだ」
 ブライトは彼の意見に同意した。
「君達はそれを聞いてどうしたんだい?」
 そしてあらためてダバ達に問うた。
「はい」
 彼等はそれを受けて答えた。
「ポセイダルも行くということを聞きまして。地球に向かいました」
「途中で逆に追撃させて戦艦を沈められちゃったけれど」
「それでもここまで何とか辿り着いたんだぜ」
 ダバだけでなくアムとキャオもそれに答えた。
「ふむ、成程な」
 ブライトはそこまで聞いて顎に手を当てて頷いた。
「ダバ君、君達はどうやら彼等に行動を読まれていたらしいな」
「というと」
「そのポセイダルはどうやら自分が動くことで君達も動くと考えていたようだ。そしてこの地球に来た」
「じゃあ俺達はあいつにここにおびき出されたってわけかよ」
「そうみたいね」
 キャオとレッシィが不満そうな声をあげた。
「地球共々一網打尽にするつもりか」
「おそらくなそれにここに向かっているバルマーの勢力は彼等だけではないだろうしな」
「他にもいると」
「ああ。君達もバルマーの事は知っていると思う」
「はい」
 彼等は頷いた。バルマーが広大な勢力圏を持つ銀河規模の帝国でありその支配下に多くの惑星とその星人達を従えていることは彼等も知っていた。
「おそらくこの地球にはポセイダル軍の他にもバルマーの勢力が向かってきている。その力も借りて君達を倒すつもりなのだ。我々と一緒にな」
「じゃあ僕達は」
「ダバ君」
 ここでブライトがダバ達に声をかけた。
「よかったら我々に協力してくれないか」
「いいんですか!?」
「ああ。我々はポセイダルについては全く知らない。それにバルマーのことについてもまだ知らない部分が多い」
「はい」
「そして共にバルマーと戦う立場にいる。協力させてくれないだろうか」
「お願いできますか」
 ダバはそう言って右手を差し出してきた。
「ポセイダルを、そしてバルマーを倒す為に」
「ああ」
 そしてブライトと手を握り合った。こうしてダバ達はロンド=ベルに客人として入ることとなった。彼等はまた新たな仲間を加えたのであった。
「艦長」
 ダバ達を迎え入れた彼等に新たな情報が入って来た。
「どうした」
 ブライトは艦橋に戻るとトーレスとサエグサに声をかけた。
「火星のことですが」
「会談のことか。どうなったのだ」
「それが」 
 だが彼等の顔は晴れなかった。
「会談は決裂しました」
「何故だ!?」
「バーム側の代表であるリオン大元帥が急に倒れられまして。毒殺だったようです」
「馬鹿な、そんなことが」
 ブライトはその話を信じることができなかった。
「竜崎博士はそのようなことをされる筈が。他にこちら側の代表はいなかったのか」
「リリーナ=ピースクラフト次官が」
「彼女までいたのか。それで何故」
「わかりません。問題はそれで終わりではありませんでした」
「他にもあるのか」
「はい。その席で竜崎博士は激昂したバーム側の代表であるリヒテル元帥に射殺されました!」
「何っ!」
 流石に声をあげずにはいられなかった。
「そうなってはもう取り返しがつかないぞ。そしてリリーナ次官は」
「ヒイロ達に救われかろうじてその場を逃れられました。火星への移住者達は彼等と竜崎博士が惑星開発用に開発されていたダイモスに護られかろうじて火星を脱出しました」
「そうか、不幸中の幸いだったな」
 それを聞いていささか胸を撫で下ろした。
「しかし火星は」
「わかっている。だが今は彼等の無事がわかっただけでもよしとしよう」
「はい」
 ここでモニターにスイッチが入った。
「何だ!?」
「本部からの通信です」
 サエグサがそれを開いた。すると金髪に細いきつい目をした端整な顔立ちの青年が姿を現わした。背中に翼を生やしてるのを見ると地球人ではなかった。
「あれは」
「愚かなる地球人共よ」
 ハリのある高い声が響いてきた。
「余はバームの元帥であるリヒテルである。この度の会談で貴様等に殺されたリオン大元帥の息子だ」
「何っ」
「よりによって息子かよ」
 それはブリーフィングルームのテレビにも入っていた。ジュドー達もそれを見ていた。
「何かまた派手な奴が出て来たなあ」
「ケーン、御前と一緒だな」
 だがこうした時でもドラグナーの面々はいつもの調子であった。
「我が父は平和的に会談を求めながらその席において貴様等の卑劣な謀略により命を落とした。余はこれを許すことはできない」
 強い声が続く。彼が正義感により怒りを抱いてるのは明らかであった。
「よって余は今ここにバーム十億の民の為に愚かなる地球人共に正義の鉄槌を下すことにする。只今よりそれを開始することを宣言する!」
「何!」
「宣戦布告かよ!」
「言うにことかいて!」
 カミーユ達も激昂した。コウもそうであった。
「地球人を一人残らず殲滅するまで我等の戦いは続く。我が正義の裁きを受けるがいい!」
 それで放送は終った。それを聞き終えたブライトはトーレスとサエグサに問うた。
「ロンド=ベルで今動ける艦はあるか」
「はい、シナプス大佐のアルビオンでしたら」
「よし、それでは大佐にすぐ連絡してくれ。火星に共に向かって欲しいと」
「何故ですか」
「リリーナ次官と難民達を救出する。ヒイロ達だけでも何かと苦しいだろう。ダイモスというマシンもあるようだが」
「今すぐ行かれますか」
「当然だ」
 彼は即答した。
「彼等を救わなくてはならない。行くぞ」
「わかりました」
 彼等はブライトの強い声に応えて頷いた。
「では進路変更ということで」
「うむ」
「総員に告ぐ」
 ここでトーレスは放送を艦内にかけた。
「我が艦はこれより火星に向かい難民達を保護する。そしてその途中でアルビオンと合流するものとする」
「よし!」
「そうこなくちゃな!」
 皆それに頷いた。誰もがそれに賛同した。
 こうしてラー=カイラムは火星に向かった。そしてそこでまた新たな戦いがはじまるのであった。


第九話    完



                                      2005・2・21




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