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GoGo!小説

小説を完成させる自信の無い方、または小説を書く練習をしたい方、そしていつも作品が完成しない無責任なしんかー進化(笑)、等々気軽にこの板で小説をどうぞ!

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[3] ドラゴンクエストモンスターズΩ(オメガ)   
じゅう - 2007年01月17日 (水) 23時05分

ごめん、完成させる自信はないけど、描写の練習がてらに書かせてもらおうと思ってる。(ぁ
正直、DQM+(ドラゴンクエストモンスターズ プラス)にインスパイヤされて書こうと思ったんだ。
少なくとも3話以上は書くよ!(ぁ


もし完成できなければ、コレ(DQMオメガ)は俺の小説の練習場と化してしまう(ぁ


え、連載掲示板の『アレ』?

アレは絶対に完結させる。心配せんでもええでー(心配するわ
エピローグだけだしねw


あー、不安。(何

[4] プロローグ 『Ω』
じゅう - 2007年01月17日 (水) 23時18分


小鳥がさえずり、風は葉を舞わせる。

静かな村、名も亡き村。ゆっくりと馬蹄が地を踏みしめる音が響き渡る。

そこから殆ど離れていない森の中には、少なからずモンスターがいた。

とはいえ、出るのは低級魔物のポピュラーなスライム、鳥型のドラキーのみ。


そして、こんなお世辞にも冒険心が溢れる様な場所ではない此処から、一刻も早く飛び出したい少年も少なからずいたのだ。

強い風が吹き、葉が盛大に宙を舞う。

その渦は、新しい世界への扉にも見えた。






ドラゴンクエスト モンスターズ 『Ω』





※もちろんドラゴンクエスト、もしくはそれらに搭乗するモンスターなどの著作権はスクウェア・エニックス等にあります(笑

物語自体はオリジナルだけどね。(ぁ

いわゆる二次創作って奴ですよw

[5] 1!
じゅう - 2007年01月18日 (木) 22時32分


砂が低空を這う。

それは誰とも知れぬ人に当たってサラサラと地面へ還った。

動きを止めたその砂が、僅かに動いたのに気づいた人は誰もいない。

第1夜 「異世界、っていうのかな」


少年少女達のはしゃぐ声が、静かな村だけに余計大きく聞こえてくる。
足が地面を蹴る音も同時に耳へとはいった。

ある家の屋根からブツブツと聞こえる声は、全くといっていいほどかき消されていく。

「退屈すぎる」

その少年がため息混じりに吐いた言葉は、空に吸い込まれるように消える。


「ちくしょー、森に行ってもスライムとかドラキーとか…あんなのばっかりだしなぁ」

そもそも、スライムやドラキーと戦っても、弱いものいじめしているようにしか思えない。
冒険に憧れる少年の心に響くものが何もないのだ。

「しゃーない、アイツら連れてって森にでも行くか」


そのアイツらに含まれる一人の少女、二人の少年達を加え、森の入り口を掻い潜った。

「スライム見つけて捕まえるか…いや、捕まえてもなんにもなんねー」

「捕まえるってあんた…」

「どうせなら仲間にしたいんだよなー」

ぼやきながら草むらをがさがさと木の棒であさる。

途端飛び出してきた黒い影とぷにぷにの物体。

「うお、出た!」

紛れもなく、それはドラキーとスライム。
ドラキーは間もなく空へ飛び去ったが、スライムはぴょんぴょんと跳ねながら茂みに逃げ込んでいく。

「逃がすか〜ッ!」

足をしっかりと力の限り踏ん張って加速する。茂みにそのままダイブ。

プニッとした触感があったが、『それ』はするりと抜け、さらに奥へと逃げる。

「待てこのッ…?」

目の前には、何か違和感を感じさせる風景があった。

「森が…歪んでる…?」

木々がぐにゃぐにゃに曲がっているようだ。まるで案内し終えたかのように、スライムは消えていた。

「うわッ…」

試しに手を前に出してみる。すると出した右手は木々には届かず、途中で消える。
そこから先は、明らかに違う空間だと、本能が捉える。
だが、それは逆に少年の心を躍らせるものだ。
仲間達にも知らせず、ただ目の前に広がる異次元へと体を任せた。

「あれ…?」

その少年を追ってきた仲間は、ただ戸惑うばかりだった。忽然と少年の姿が消えたのだから無理もない。

異次元への扉は、スッと消えていた。


「あ、そういえば…」

扉をくぐる途中で気づいた。そうだ、アイツらがいた、家族もいた。
相談もなしで潜って良かったのだろうか。

だが、少年にはその扉が、少しでもそこから離れれば消えてしまうような気がしていた。

頭に直接『扉』が話しかけてくるような、そんな感じで。



意識が一瞬飛ぶ。そして次に目を覚ました時には―

「ここ、どこだ?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまった、周りに人がいなかったのが幸いか。

辺りはまるで枯れた木の中である。殺風景の極みともいえるその様子を、まじまじと見詰めていた。

「外出るか!」

光が差し込む階段。それを一歩一歩、心臓の音とシンクロしながら登っていく。

出た先に待っていたのは、巨大な枯れ枝。

そして、自分が巨大な枯れ木の上にいるということに気づくことに数秒かかった。

この枯れ木に築かれた町は、いかにも寂れた雰囲気で、酒によった中年の男がすぐそこに眠り込んでいた。


「ここ…異世界、っていうのかな」

そう呟いた矢先、多数の腕を持ったモンスター、そしてスコップを持つモンスター、渦を纏ったモンスターを連れた少年が通り過ぎる。

一寸の間、硬直したままそのモンスターたちを見ていた。

「す…げぇ!」

声が出たのは、そのモンスターたちが姿を消してからだった。

「これ、お前さん」

唐突に横からかけられた声にびくりと肩を震わせる。

「名はなんというのじゃ?」

タマゴが上に乗った杖を持つ年寄りの女性が問う。
慌てふためきながらも、口を必死に動かして応えた。

「あ…レ、レヴィ…」

舌足らずに答えたが、年寄りはちゃんと理解できたようで、頷くと自分の口を開いた。

「ワシは配合おばあ様じゃ、覚えておくと良いぞ」

「へ…?って、ちょっとまった!」

レヴィいわく、配合オババが視線をこちらへ向ける。

「なんじゃ?」

「あー、いや、ここどこ?」

言葉が通じるだけありがたい。そう思った。

「お前さんはこのカレキの国の救世主となるべく連れてこられた、こういえば十分かな?」


「……は?」

目を点にしたまま、レヴィの動きが止まる。それとは裏腹に心臓はまさに1秒に2回ペース。鼓動と汗が全身を伝う。

「配合オババ、来たのか?」

先ほど見たモンスターと少年が、配合オババに話しかける。
…その問いに答える前に、杖の上のタマゴが少年の顔を直撃した。

「うおおッ!」

「…おばあ様、じゃ」

「っつう…そ、それより、来たのか、新しいモンスターマスター」

聞きなれぬ単語が飛んでくる。避ける事が出来るなら避けたい。話がややこしい方向へ向かっている。


「レヴィ、だったな。俺はディノ」

一つそこで言葉を区切ると、ディノは顔を上げて言い放つ。

「二人でこの国を復活させるんだ」

「…よ、よっしゃ!やってやろーじゃん!」

モンスターマスター、それは恐らくモンスターを仲間にして…、そこから先は複数の予想がある。
戦わせるのか、育てるのか、ペットか…どれにしても、レヴィには興味をそそられる話だ。

さらに国を救えば、英雄扱いは間違いない。憧れていた英雄の存在に近づけるかもしれない。そう思ったとき、すでに口から声が漏れていた。

配合オババが、モンスターマスターの説明を始める。

簡単に言えば、モンスターを仲間にし、育て、戦わせる。それがモンスターマスター。
ペットとする人もいれば、趣味で育てる人もいる。レヴィの予想は意外と的を得ていた。

「じゃあ…モンスターどうやって仲間にすれば…」

「コレを使え」

ポイッと渡された骨付き肉。そしてディノが肩に手をかける。

「俺が手伝うから、なんか一匹仲間にして来い、こっちだ」

「え?え?」

ズリズリと引きずりまわされるレヴィ。着いた先はあの時見た此処への『扉』に似ていた。


「ほら、飛び込め」

「ちょ、ま」

言い切る前にディノに突き落とされる。体が異世界へと飛ぶ。ディノも続いて異世界へと旅立った。



また、森の中。
しかし違った所は、豊富なモンスターが生息していたということだ。

遅れてディノが来る。

ディノのメンバーはキラースコップ、キングレオ、かまいたち。
この世界は低級モンスターが多いので、ディノに任せておけばまず問題はないだろう…と、ディノ自身が言っていた。


「よし、出たぞ!」

わらわらと出てきたのは、スライム3匹。

レヴィの目には、一瞬風が目に見えたかと思ったが、それはキラースコップだった。

「キーラ、スライム叩き!」

バチンッ、と凄まじく乾いた音の後、スライムは青い光になって消えた。

「…こ、殺した…?」

「大丈夫、この世界じゃモンスターは死なない。上に行くだけだ」

「上…?」

ディノのいう上は、天界をさしている。野生のモンスターは、死んでも生まれ変わったりして、永遠の輪廻を築く。

マスターの持っているモンスターが死んだ時は、魂のみが天界へ行き、冒険の世界から帰ると自動で生き返ってくる。

…らしい。

あっという間に1匹だけになったスライムは逃げ出そうとするが、目の前に立ちはだかるキングレオ。

「今だ、レヴィ、肉投げろ」

言うが早いか、肉を放り投げる。その肉にスライムはかぶりつき、モグモグと食べ始めた。

「レオ、みねうちでな」

バシーンッ、と、スライムが宙を飛ぶ。そのスライムはレヴィのもとへ跳ね飛ばされた。


「な、仲間になってくれ」

何故かストレートに自分の気持ちを声に出すレヴィ。
だが、スライムは

「いいぜー」

「うわぁッ!モンスターの言葉が分かる!」

「…お前がいた世界とは違うからな。今日からお前もマスターだ」

マスター。

その言葉が心に響いてくる。嬉しい、と言う気持ちと、ワクワクした気持ちが混じり合わさる。

「…というか、気変わりしやすいのな、お前」

「余計なお世話だ!」

「んじゃ、一回戻るか」

ディノがキメラの翼を放り投げると、あっという間にカレキの国へと戻った。


モンスターが仲間になってくれるのにはもう一つ理由があった。
マスターについていくことで、更なる強さを求める。そんな本能がモンスターにはある。

「じゃあ、お前の名前は…スラまるで」

「安直だなー、もっといい名前思いつかないのかよー」

「黙れぃ」

スラまるの愚痴を受け流す。



「レヴィ、か。クリオやテリーを越えられるかな…?」


そう小声で呟いたディノ。


精霊の消えた国―カレキ。

この国に、一陣の風が吹いた。


[6] 完全にDQM+とクロス。(ぁ
じゅう - 2007年01月19日 (金) 22時57分

最初に仲間にしたモンスターがスライム。

ショックと言うか、なんというか。
その当のスラまるは足に噛み付いてくるのでなんとなく蹴っ飛ばすと、サッカーボールのように転々と転がっていく。

「やっぱお前弱…」

「う、うるさい!」

第2夜「そんなのぶっ飛ばしてやるさ」


否定するが、その弱さが露呈されているスラまる。
口をびろんと引っ張られて何も出来ない状態だ。

「…まともに戦闘できるかどうか」

「ひ、ひへぇ!」

口を引っ張られているせいでしゃべれないスラまるが哀れに思え、地面に落とす。

柔らかい体だけあって、それほど大きい音を立てることもなく静かに着地した。

「さて、一番弱い所から行ってみよー!」

「お、おー」


『旅の扉』へと向かう。階段を一気に飛び降りると、そのままの勢いで旅の扉へ―

「ちょっと待て」

その声の主はディノであった。
振り返ると、道具が数個投げ渡された。レヴィは落としそうになりながらもそれを受け取る。

「初心者がなんも道具持たずに行くなんて、自殺行為だぜ?」

薬草が4個、キメラの翼が1個、燻製肉が2個…

冒険に必要な最低限の物が寄せ集められていた。

「…まぁ、ここの旅の扉ならお前らでもいけるな」

最後にそう呟くと、ディノはさらに奥の旅の扉へ飛び込んだ。
旅の扉が繋げる世界はそれぞれ違うらしく、ディノの行った世界は、おそらく高ランクモンスターが出る世界なのだろう。


「じゃ、こっちも行くか」

ひょいっと扉をくぐり、先ほど行ったばかりの世界にまた飛び込んだ。


一瞬の間の後、世界は変わっていた。
今度は平地だ、向こう側には森が見えた。どうやら世界は同じでも、召還される細かい場所は毎回違うらしい。

「お」

視界に入り込むモンスター。…コドラだ。
現在のメンバーではつらいかもしれないが、むしろ相手から突っ込んできたのでやるしかない。

「よっし、スラまる、攻撃!」

言われるより早く攻撃。だが、予想通り弾き飛ばされ、平地をコロコロと転がっていく。

「ほら、燻製肉」

コドラに燻製肉をやり、手なづける。ここからが問題であった。
一部変わり者を除いた大体のモンスターは、自分より強いもの、つまり自分に勝ったものしか仲間になろうとしない。

弱いものに自分を強くする事は無理だろうと判断するのだ。

「えーっと…お、木の棒!」

そこいらに転がっていた木の棒を握ってコドラにたたきつける。

折れた。

「うわっ、ちょっ、やめ」

コドラがの頭突きが腹を抉る。流石に人とモンスターでは力の差があった。
吹っ飛ばされたレヴィと、再度攻撃を仕掛けるスラまるがすれ違う。

スラまるの攻撃が直撃し、ぐらつくコドラに、レヴィが折れて曲がった木の棒をブーメランのように投げつける。

ガツンッ、と鈍い音がなった後、スラまるが連続で攻撃を叩き込み、コドラは倒れこんだ。

だが、すぐにコドラは起き上がる。

(来た…!)

コドラは仲間になりたそうな目でこちらを見ている

…何故かそんなナレーションが頭を駆け巡った。

「な、仲間になる?」

どういっていいのか分からないので、やっぱりストレートに行く。

「頼む」

そういったのはコドラのほうだった。



「じゃあ、名前はドラスでいいか」

「お前がマスターだろう、お前が決めたならそれでいい」

妙に物分りがいい。クールと言うべきなのか。
正直気味が悪い。モンスターの言葉が分かるとこんな気持ちになるのか。

と言うわけで、早速2匹目のモンスターを仲間にしたレヴィは、何故か穴を見つけていた。

「なんだこれ」

「こっから飛び降りるんだよ、次の階にいけるぜ」

スラまるが答えた。それを聞くと、少しためらいながらも穴に飛び込んだ。

そして、また世界が変わり、次は森。
凄まじい勢いで変わっていく世界に翻弄されながらも、森を歩き、次の世界への『扉』を見つけようとする。
今の主力は、言わずもがなドラスである、スラまるは能力がイマイチであり、力がない。

「そういえば…」

ディノから貰った道具の中には、ノートが入っていた。
開くと、モンスターマスターの心得という大きな文字と、知っておくべきことなどが書かれていた。いわゆるモンスターマスターのマニュアルと言う奴だ。

「……ふーん」

一通り読み終え、心にその知識を刻むとまた歩き出す。

その歩みを止めるのは、繚乱と舞い散る葉。そして羽ばたきの音だった。

ドラキーが二匹、そして――



ずしおうまるが、キーラの爆裂拳を喰らって倒れる。

ディノは、順調にダンジョンを進み、18階に来ていた。
そんな時、空中から飛んできた火球を放った主と戦闘を繰り広げていた。

「……ジャミラスか」

鳥と獣の合体したような姿。『それ』は連続で火球を放つと、畳み掛けるように連続攻撃を仕掛ける。

「かまちー、マヒャド!」

かまいたちのかまちー(二世)が巨大な氷柱を放つ。
ジャミラスは空中へ浮かびそれを回避すると、巨大な爆発を起こした。

「イオナズンか……こいつ、まさか……」

一つのいやな予感がある。ジャミラスは確かに強力なモンスター。後に明らかになる『配合』と言う手段を使っても、茨の道を歩いてようやく生まれるのだ。

だが、このジャミラスから感じられるまがまがしい気。


そうだ
それしかない。

「邪配合……ったく、テリーも余計なもの作ってくれたぜ」

呆れた息を吐きながら、頭を抑えた。


そして、それと同じ種類に属するものに、レヴィは遭遇していたのだった。

「こ、このドラキーでけぇーッ!」

でかい。普通のドラキーの4倍はある。

次の瞬間、森を背景にレヴィの意識はブラックアウト。
何とか気を取り直すが、スラまるが木に叩きつけられて気絶する。

ドラスは持ちこたえるが、明らかにダメージが大きすぎる。
寸前で回避したので耐えたようだが、周りの木々は焦げ、吹っ飛んでいた。

「この呪文…メラゾーマってやつか!?」

本に載っていた。少々分かりにくいが、巨大な火球と言うところが一致しているので間違いない。…と思った。

それより、まだ誰も死んでいないのが幸いだ。というか、マスターが死んだ生き返れるのか?そう疑問が浮かん途端に、不安が増す。

「やっべ!逃げるぞ!」

スラまるを抱えて逃げ出す。だが、図体の割りに素早い大ドラキーは、あっという間に回り込む。

「うわ…」

『バギクロス』

そう、大ドラキーが呟いた気がした。


巨大な竜巻がまるで咲き散る桜のように木々を宙へ飛ばし、切り刻んでいった。


その後に残ったのは、ただ、切り刻まれた草木だけだった。


「な、何とか助かったな…」

寸前でキメラの翼を投げて異世界から脱出し事なきを得たレヴィ。
しかし、ショックも大きかった。

「低級の奴しかいないんじゃなかったのかよ…」


ディノも、続けてカレキに帰ってくる。出発前と変わっていた事は、レオ、かまちーがいないこと。

そして、ディノの服装がボロボロになっていた事だ。

ディノを追いかけるように、天空を切り裂くようにレオとかまちーが地上に降りてきた。

「すいません、ディノ様。あんなところで…」

「いや、相手が悪かったんだ。仕方ねぇさ」

「ど、どうしたんだよ…二匹やられたのか?」

その質問を聞くなり、不機嫌な顔になるディノ。妙にそういうことに敏感なレヴィは、慌てて前言撤回しようとする。

「あ、いや、別にお前が弱いとかそういう意味じゃ…」

「邪配合、っていうのがあるんだ」

レヴィの言葉をさえぎって、邪配合の説明を始めるディノ。
 いつになく深刻な顔つきで、こちらから口を開く事が出来なかった。
威圧感さえ感じたほどだ。
 
「まず、配合から説明するぜ」

配合。
二つの♂、♀のモンスターを掛け合わせることで、新たなモンスターのタマゴが生まれる。それを孵化させる事によって新たなモンスターを作り出す。それが本来の配合なのだ。

コレもまた一部の変わり者を除いて、両親は野生へ帰って二度と会うことはなくなる。

しかし、邪配合は似て非なるもの。
卵を生まれさせるのではない。

『吸収』、『同化』、『融合』に近い。
配合では、元となるモンスターを『血統』というが、こちらでは『本体(ベース)』となる。
本体を元に、モンスターを同化させ、全く異型のモンスターを作り出すのだ。

しかも、モンスターの意思を無視してでも出来、通常の配合よりも大きな力を手に入れることが出来る反面、致命傷を負えば跡形もなく消え去ってしまい、生き返ることはない。

魔物界においての自然の摂理を壊す行為である。


「そんなヤバイもん…誰がやってんだよ。首謀者とかいるんじゃねぇの?」

やっと口を開けた。
開口一番、ディノはすぐに言葉を切り返す。

「いるぜ、テリーって奴が」

長ったらしい説明はいやだという意図を察したか、簡潔に説明を済ませてくれた。

『元』タイジュの国出身モンスターマスター。『星降りの大会』で優勝し、何の因果か失踪。

そして、いまでは悪の親玉というわけだ。

「詳しい事は、タイジュに行かなきゃ聞けねぇ。俺も詳しくは聞いた事がないからな」

「タイジュか…」

青々とした、まさに大樹の国。それは大きな枯れ枝の隙間から見えていた。

「だけど、今は…」

「モンスターを鍛え、仲間にする、だろ?」

「へへっ」

ニカッと笑うと、拳を突き出して親指を立てた。

「さぁて!もう一回旅に行くか」

「もうあーゆーのはいやだけどな」

そして、2人の少年は、再び歩み始めた。






「あ、そうだ、キメラの翼消費しちゃったからくれ」

「買えよ」



おまけ

ウィル「あれ、なんで俺がこんな所に…」
アーク「やたらと作者が起用したがるな。流石お子さまだ」

作者「(´・ω・`)」

(しばらくお待ちください)

レヴィ「さーて、おまけの時間だ!」

ディノ「ストレートすぎんぞ!?」

簡単なキャラ紹介。本当に簡単なのでおさらい程度に。

スラまる

極普通のスライム。マジで普通。普通のきわみ。

だが、潜在能力はあるのかもしれない。


ドラス
コドラの群れのエースをやったこともある。ただ、種族差と言うものが大きいので、邪配合モンスターにはかなわない。

レヴィ 
何もない平凡な村で育った一少年。ひょんなことから冒険に出かけることになるというある意味セオリーどおりの主人公(ぁ

ディノ
DQM+から登場。少し角が取れて丸くなった感じがある。
詳しくは『ケロロ軍曹』の吉崎観音先生の描く「ドラゴンクエストモンスターズ+」を参照。(宣伝かよ

クリオ
DQM+を(ry

テリー
GBゲーム「DQM テリーのワンダーランド」、DQM+から登場。
+ですっかり人柄が変わっちまいました。


レヴィ「…こんぐらいでいいか」

ディノ「適当オブTHEイヤー受賞だな」

ウィル「それ以前に完結するかどうかのほうが問題だ」

ディノ&レヴィ「「言うな」」


つづく!






[7] やっと3話だ(ぁ
じゅう - 2007年01月21日 (日) 00時13分

結局、キメラの翼を貰ったレヴィは、いつの間にか回復していたスラまる達と再び旅の扉を訪れた。

前回は邪配合で『作られた』モンスターによって、有耶無耶の内に終わってしまったが、今回ばかりは会わないように願うだけだ。

「よーし、2個薬草買ったし、行ってみよーッ」

走り幅跳び宜しく、旅の扉に飛び込む。

「次あんなのに会ったら、真っ先に逃げる事、以上!」

「作戦はそれだけかよ!」


すとんと、森の中に降り立った一人と二匹。
降り立ってすぐに気づいた。自分の腕に黒い何かが引っ付いていた。

「………」

その黒い物体が「ドラキー」と分かった瞬間、反射的に燻製肉の骨で力の限り殴りつけた。

「勝負ありー」

スラまるが気の抜けた声で宣言した。
白目で地面に転がっているドラキーを見ていると、なんだか罪悪感が湧いてきて、居た堪れない気持ちになる。

「い、行くか……」

若干重い足取りでその場を後にする。ドラキーは未だその場で地面に身を任せているだけであった。

第3夜「なんだってんだ!」



「お、居た!」

木々の陰からなにやら鬣(たてがみ)を持った小さい虎の姿をしているモンスターを見つける。

「ベビーパンサー、キラーパンサーの子供。となると、近くに親がいる可能性もあるな」

ドラスが頼んでもいないのに解説を始める。初心者のレヴィにとって一匹は賢いモンスターがいたほうが頼りになるものだ。

「親、って…強いのか?」

「スラまる程度なら一撃だな」

「な、なんだと…むぐっ」

スラまるが大声を出そうとするが、急いでレヴィが口を塞ぐ。
それに気づいたのか、ベビーパンサーはこちらへ振り向いた。

その場を、一瞬の静寂と、風が通り過ぎる音が包み込む。

その静寂を破ったのは、新たに出てきた3匹のベビーパンサーと、一匹のキラーパンサーの草を分けて進む足音。

明らかにこちらへ向かってきている。鼻が利くのだろう。

(一か八か…だな)

ごそごそとバッグをあさると、燻製肉を取り出し

「ギガスローッ!」

某勇者の特技の如く、手をブンブン振り回して宙に放り投げる。
落下してきた肉を、キラーパンサーがパクッと咥えた。
その肉を引きちぎると、子に分け与え始める。

(おい、早く逃げるぞ!)

(言われなくてもスタコラサッサだぜー)

(うわ、もうあんな所に!)

いつの間にか遠くまで行っていたスラまるを追いかける。
キラーパンサーには何とか見つからずに済んだが、進路が限定されてくる。

「んー、あっちにゃキラーパンサーだから、次こっちだな」

コンパスの指す南の方向へ歩き出す。途中、ドラキーとであったが、ドラスが牙で噛みついて難なく倒した。


「おー、大穴見っけ!」

次の階に繋がる穴を見つけるなり、飛び込んだ。
スラまるが少し遅れて飛び込む。
旅の扉に飛び込んだときのような感覚に襲われる、そして、やはり一瞬の間をおいた次の瞬間には、世界が変わった。


「……?」

だが、何かしら、世界が変わる前に違和感を覚えた。

(そうだ…あの魔物から感じた波動と同じような…)

そうだ、とばかりに思い出す。大ドラキーとであったときに感じたあの禍々しさ。
体を起こそうとした瞬間、全ての背景がねじれ、さらに変わっていく。

「な、なんだ…!?」

瞬間、危うく嘔吐しそうになった。気持悪い感覚が頭に直接入り込む。
当然某リアルロボットアニメの特別な人間ではないレヴィにも感じ取れる。

いや、寧ろ意思を無視して入り込んでくるといった感じだ。

運命ごと、世界が捻じ曲げられていた。


それと同じ頃、カレキの国は大騒ぎとなっていた。
タダでさえボロボロになった枯れ枝が、バキバキと音を立てて崩れ落ちる。
さらに、静かなカレキの国にそぐわない燃え盛る炎が、コトの異端さを示していた。

「これは……」

ディノが立ち尽くす。逃げ惑う人々の様子にただただ圧倒される。

そこらで数少ないモンスターマスターが奮闘しているが、あっという間にモンスターを吹き飛ばされたり、ズタズタにされたりと、残酷な光景が広がる。

ここはカレキの国なのでややこしいものだが、枯れ木も山の賑わいという言葉がある。

だがこれは余計な賑わいだ。こんな賑わいならいっそ消えてもらいたい。

「邪配合のモンスターか!なんだってこんなときにーッ!」

今までレヴィは気づいていなかったが、ディノには邪配合モンスターに呪いをかけられている。
おかげで、頭に猫のような耳が生え、しっぽまで付けられた。

邪配合モンスター、そしてテリーは、憎んでも憎み足りない相手と言うわけでもある。

「数が多いな…避けを前提にして戦うぞ!」

邪配合モンスターの強さは計り知れない。この前のジャミラスはベースが凄かったのか、流石に度が過ぎた強さであった。
その証拠に、実際はトドメをさせずに、途中で逃げる羽目になっていた。

今、目の前にいるのは、シルバーデビル≒が20匹。
シルバーデビルは中級悪魔であり、なかなかのベースであるといえる。

その強さを誇示するのは、飛び交う火球と爆発。凄まじい風。

モンスターの死体をむさぼり食う姿は、まさに悪魔といえるものだ。

「キーラは悪魔切り!かまちーはいつもどおりにな!」

かまちーがバイキルトをキーラに唱える。
キーラの力が二倍となり、向かってくるシルバーデビル≒一匹を斬り捨てた。
十字架の形を描きつつ、四つに分けられるシルバーデビル≒の体。
そのまま地面に落ち、蒸発した。


ディノだけではなく、まだ遮二無二攻撃を繰り返すマスターもいた。しかし、やはり敵わないのが現実であった。

「世話焼かせんなッ!」

レオが、他のマスターに近寄るシルバーデビル≒を牽制し、逃げる時間稼ぎをする。

その間にも着々と、カレキの国の破壊とシルバーデビル≒の退治が同時進行していた。



そして、舞台はまた異世界に戻る。

「…なんだろうか」

違和感だけが残る。さっきまでの世界とは違う。それもまったく。

巨大な闇と山が違和感を誇示し、レヴィを不思議な気持ちにさせる。

「す、進むか…」

その足が、ドズン、という重量感溢れる音によって断ち切られる。

横を振り向いた時、少年は戦慄した。


「機械の…ドラゴン?」

機械音と足音が、心臓の鼓動を波打っているようだ。
雄たけびを上げるなり、こちらに突っ込んできた。


スラまるが、その鉄光する爪によって引き裂かれる。

「に、逃げるぞ!」

相手は足が遅めのモンスターのようで、逃げに徹する小柄なレヴィのチームを捉える事は出来ない。
スラまるが攻撃を受けたのは、不意を突かれたという理由もある。


―――走れ

――走れ

―走れ

それだけが脳を支配して、それだけが体を動かした。
強さが違いすぎる、それは明確なことだ。

スラまるは何とか生きている。荒い息しか自分の耳には聞こえない。


「くそッ!なんだってんだ!」

なりふりかまわず走るレヴィが、思わす口から出した言葉がそれだった。

目の前をさえぎる物体に気づかず、激突する。

返り血を浴びたような、翼が生えた猿。 シルバーデビルの上位種族、バズズだ。

その手から氷柱が放たれた瞬間、死を覚悟せざる得ないだろう。

「うぁっ……」

氷が視界を覆い、そのままレヴィの体に突き刺さらんとした時だった。


ドンッ、と、バズズの頭蓋が砕け散った。
そのまま崩れ落ちるバズズの背には、紫色のローブを纏い、竜のフォルムを纏う杖を持つ青年。


レヴィは、ポーッとしたまま、自分が生きている事を確認する。
抱えていたスラまるが、淡い光に包まれて回復した。

すると、唐突に少年と少女、そして騎士を乗せたスライムがメタルドラゴンを滅多切り、または氷柱をぶつけた。

次は自分が不意を突かれたメタルドラゴンは、反撃の余地もないまま絶命した。


「君の名前は?」





つづく




おまけ

≒←邪配合モンスターにつける記号。

ディノ「なんだ上の…こう、どうでもいいような説明は」

レヴィ「さて、新展開だなー」

ディノ「無視か」

レヴィ「バズズとメタルドラゴン・・・こいつらだけでどこの世界に飛んだか分かった君は凄いぞ!」

ディノ「何を言っとるんだ己は」




[8] ふぃー
じゅう - 2007年01月21日 (日) 14時23分

「お、俺、レヴィっていいます!」

どういっていいのか分からないので、お得意のストレート。

どうも初対面の人が相手だと調子が出ない。多少どころかかなり心臓の鼓動が早くなっている。
先ほどのこともあるだろうが、性格の割にはプレッシャーに弱かった。

ただ、いまプレッシャーがかかっているのかどうかは別として。

「君もモンスターを……」

「へ?あ、ああ」

さっきまで傷だらけだったスラまるが、ぴょんぴょんと跳ね回っていた。

「僕もモンスターは連れてるよ」

そう言われ、視線を青年の後ろへ移す。

ゴーレム、キラーパンサー、そして先ほどのスライムナイト。
どう観ても自分のパーティより格上のモンスターばかりである。

しかし、驚いたのは、人間自身が戦っているという事にある。
少ししか観ていないが、自分より年下の少年と少女があのメタルドラゴンを破壊した。

やっぱり、根本から世界が違っている。

実感過ぎるのが遅すぎたのだろうか。周りの異様な雰囲気に飲まれそうになる。

「僕はアベル。こっちがレックスとタバサ」

青年はアベル、少年のほうがレックス、そして少女はタバサ。

レヴィは、とりあえずそのことを脳裏に焼き付ける。

「で…アベルさんもモンスターマスターなんですか?」

「モンスターマスター…聞いた事ない職業だね」

――違うの!?
モンスター連れてるじゃないか。とレヴィは心の奥で突っ込むが、嘘つくような人にも見えない。

一応、M.M(モンスターマスター)の説明をする。

「うーん、ちょっと違うね。だけど役割的にはそうといってもおかしくないのかな?」

アベルが苦笑する。彼いわく、アベルの職業は「勇者の父親」といったものようだ。

だが、自分でもその力を自覚してはいるらしく、自分はモンスターマスターにもなれるかな、とも言っていた。

「勇者の父親って…」

その一言だけでも、あの少年、もしくは少女が勇者だという事は理解できた。

とはいえ、相手は年下なので実感は湧かない。

「あ、そうだ、ちょっと着いてきてくれるかい?」

「あ、はい」

その思考を途切れさせたのは、町へ向かう合図の声。
馬車につながれた、パトリシアという馬の馬蹄は、ゆっくりと町へ向かっていた。

第4夜「聞いた事あるか?」


「スゲェ……」

巨大な町が、岩塊の上に作られていた。見上げるだけで首が痛い。

長い長いはしごを、スラまるを抱えたまま登る。

「ほら、いけ」

「うわ、投げるな!」

スラまるを町の上まで放り投げ、自分たちも遅れて町の地面を踏んだ。

目の前には、今まで見たことのない光景が広がっていた。
楽園と言うといいすぎかもしれないが、どこか神秘的な雰囲気が漂っている。
繚乱と咲き散る花は、この世界と不似合いとも思いながらも、レヴィをホッとさせる。

「ここはジャハンナ。この魔界唯一の町さ」

「魔界……あー」

言われてしまうと、もはや魔界にしか見えない。いや、魔界に見えない人物がいるのかどうかは定かではないほどの暗い景色なのだが。

「僕達は母さんを探してここまで来たんだが…急に魔物が凶暴化してきてるんだ」

「それって、邪の波動って奴の影響かもしれません」

「邪の…波動?」

ディノから聞いた。

邪の宝玉と呼ばれるものから発せられている。その力は魔物を凶暴化、野生化させたり、タイジュの国や、他の国々の生命力、そして宿っている精霊を減衰させるという極めて迷惑な代物である。


それは異世界にも影響を与えていると聞いたが、もしかすると、この世界にまで行き届いている可能性があったのだ。

「それはまた余計な副産物だね…」

アベルの表情が、どことなく険しくなる。

「そういえば、君はどこから来たんだい?」

「カレキの国ってとこからです、正確には旅の扉って言うもので旅に出たんですけど、いきなりここに飛ばされたみたいで」

「旅の扉?それならこっちの世界にもあるよ」

「へー、ってうおわ」

急に袖を引っ張られる。ちょこんとそこにいたのは、アベルの息子、レックスだった。

「レヴィさんって違う世界から来たんでしょ?話聞かせてよ!」

「ちょ、一寸待った、俺もまだあの世界の事はよくしらな…」

子供の体に似合わない力でズリズリと引きずられていくレヴィ…14歳。
そしてそれを引っ張るレックス…8歳。

「…道具でも買うか」

アベルは一言呟いた。




「い、今からですか……?」

「エビルマウンテン、そこに母がいるはずだ…」

魔王の巣窟。それがエビルマウンテン。同時に、出てくるモンスターの強さも計り知れない。
まずレヴィのパーティでは太刀打ちできないのだ。それはアベルも分かっていた。

「君は町で待ってるんだ、全てが終わったとき、迎えに来る」

アベルにとって、異世界に迷い込んだ少年を放って置けるわけがなかった。
どうしても、数奇な運命をたどってきた自分と重ねてしまう。



それから程なくして、アベルたちは旅立った。
が、こちらとてただ黙っているなんて退屈すぎる。

「…着いていくか?」

考えるよりも先に行動していた。すでに足はモンスターガ出現する地域に入り込んでいた。


不意に、後ろからバシュン、という音がした。

人間としての本能が、レヴィの顔を後ろへ向けた。
そこにあったのは、一人のモンスターマスター、そして3匹のモンスター。

「いてて……」

「あ……」

自分と同じようにここへ飛んできたのかと、勘を働かせる。
 

「ん?お前誰?」

妙になれなれしい口調だが、苛立つ気分でもなかったので、普通に返答する。

「レヴィ、カレキの国のモンスターマスターだ」

「へぇ、カレキ…って、お前、ディノって奴知ってるか!?」

「ああ、知ってるけど…知り合いか?」

そこまで言いかけて、なんとなく分かった。この人物が誰か。


「俺、クリオ。ディノから聞いた事あるか?」




おまけ

クリオ「やっと登場やーッ!」

ディノ「ええい、黙れ!」

レヴィ「あれ、クロスしすぎじゃね?」












[10] ぬわーっ(何
じゅう - 2007年01月22日 (月) 22時39分


「バギクロス」

その一言の後、巨大な竜巻がシュプリンガーたちを切り刻む。
血霧が風を赤く染め、空中から一気に降り注いだ。

「……ふぅ」

その様子に不似合いな青年、アベルがため息をついた。凶暴化した魔物たちには手を焼かされている。
強さそのものが上がっている気がする。そして死ぬのもいとわない、まさに鉄砲玉となって襲い掛かってくる。

死ぬ気になって襲い掛かる者の恐ろしさは並ではない。
何せ相討ち覚悟なのだから、相手を倒しても刺し違える可能性も大いにある。

「流石に…楽にとは行かないな」


第5夜「良く来ましたね…」


「あー、聞いた聞いた」

クリオ。そう名乗る少年の問いを、思い出したように返す。

「やっぱ、ね……で、ここはどこだろーなー。あのときみたいに変な所に飛ばされたのかなぁ」

やはり、クリオもこの世界に飛ばされてきたらしい。
この世界の事情を説明すると、クリオは案外あっさりと納得する。

同年齢ほどの二人だが、経験が違う。クリオはすっかりとこういう境遇に慣れてしまっていたのだ。

「で、俺もアベルさんについて行こうと思うんだけど」

「そりゃ俺も賛成。 ……ただ、お前のモンスターだときついな」

痛いところを突かれるが、相手が強いぶん、修行にもなるだろう。

そう、脳内補完した。

「クリオのモンスターが頼りだな、手伝いはさせてもらうぜ」

「りょーかい、じゃ、行くか!」

クリオがここに飛ばされてからアベルを追い始めるまで僅か10分。
神速の如き行動力で、早速エビルマウンテンを目指していく。


「出た、メタルドラゴン……3匹か」

クリオはスライムのスラお、エンゼルスライムのエルゼ、ゴールデンスライムのゴルド、と、一見ゴルドが主戦力に見えるが、実質、エースは『特別な純正スライム』…スラお。

「おっしゃ!ガンガンいけぇーッ!」

命令を下すと、スラおがまず突っ込んだ。

「うおおおりゃああッ!」

叫びながら特攻。凄まじい鈍い音と共に、メタルドラゴンが揺らめく。

「エルゼ、岩石落とし!」

「はい!」

地面が盛り上がり、空中から落下。小さい岩塊が次々と降り注ぐ。
メタルドラゴンは首で薙ぎ払うと、後ろに居た2匹のメタルドラゴンがゴルドに向かう。

避け切れないのは十分承知の上だ。

「ギリギリまで引きつけてイオナズンだ!」

瞬間、目の前に巨大な光。そして耳を劈く爆音が、メタルドラゴンたちを巻き込んだ。

「スラおでトドメ!」

横に薙ぐようにスラおがメタルドラゴンを一掃する。その隅でドラスとスラまるが仕留め損ねたメタルドラゴンに止めを刺した。

「うおおお!強くなった気がする!」

「バカ騒ぎするな、どうみてもほとんどクリオの功績だ」

スラまるとドラスのミニ漫才。レヴィは呆れ顔でその様子を見ていた。

実際、二人がレベルアップしているのは秘密として。



その後のことは、ギガンテスが8匹も集団で襲い掛かってきて全滅寸前になり、エルゼのべホマで回復したり、スラまるが一回死んだりと前途多難。(ちなみにエルゼのザオリクで復活)


何とか難関を乗り越え、エビルマウンテンに到着する。
正直、早めにアベルたちと合流しなければきつい。
スラまるたちも、かなりレベルアップ。だがMPの問題などもあった。

「走るぞ!こっちももたねぇ!」

まるで門番の如く現れたエビルスピリッツ×3、シュプリンガー×2に足止めを喰らう。

逃げようとした瞬間、スラおにシュプリンガーがルカニの呪文を唱える。
守備力が下がり、致命傷を受けやすくなってしまう。

「ゴルド!イオナズン!」

巨大な爆発で撹乱、その隙に石像の後ろに隠れ、そこから岩石落としでちまちまと攻撃していく。
そのうち、シュプリンガーとエビルスピリッツたちが崩れ落ちた。

「案外、道はすっきりしてるな……」

人の手を加えられたかのような道を進む。だが、途中でその足は止まった。
モンスターの死体が散乱していたのだ。

「アベルさんたちが倒したのかな…」

ここが、ただモンスターと仲間になるべき場所ではない事を実感させられた。

戦う所なのだ。ここは。



「次に行く階段がないな…」

多数の落とし穴がある階。ここには次へと進む階段がなかった。
非常に分かりやすい落とし穴だが、落ちればどこへ行くのかわからない。

そのまま閉じ込められる可能性だってなくはないのだ。

「……降りてみるか?」

「は?」

レヴィが発した言葉に、クリオが首を傾ける。

「だから、下に道があるかも、って言ってん、の!」

クリオが静止する間もなく、下へ落ちるレヴィ。下は闇に包まれて見えない。
どこまで落ちるのか、そうおもったが、次の瞬間にはすでに着地していた。

「階段めっけ!クリオも来いよ!結構浅いぜ!」


そして、さらに階段を登る。足が疲れてくると共に、もつれ始める。

危なっかしい走りで階段を登ると、そこに青年はいた。


「アベルさんッ!」

「レヴィ君!?それに…君は?」

「クリオです!」

アベル達は、壊れた橋の前にいた。橋は使えないので、上の道を行こうとしていたようだ。
途中にあったモンスターの死体は、やはりアベルたちが倒したものだった。

「しかし……この感じ、どこかで…」

アベルの呟きが、闇の空へ消える。

山を登りきり、頂上に着いた刹那――


「母さん…」

一同が、歩みを進める。

アベルの母親―マーサの前に、両手が蛇のモンスターが現れた。

「邪魔はさせんぞ…!」

そのモンスター、ダークシャーマンは2匹。そして二人そろってベギラゴンを唱えた。

「エルゼェ!マホターンッ!」

エルゼが前に飛び出て、マホターンでベギラゴンを跳ね返す。
だが、ダークシャーマンはものともせず、エルゼの右羽を噛み千切る。
めげずに回復し、岩石落としをしながら距離をとる。

「そうだ、バギクロス!」

岩石を巻き込んでのバギクロス。竜巻の中に岩が混ざり、ソの破壊力を高めていく。

ダークシャーマンは勢いづいたその岩石と言う名の鈍器で体を殴られていく。

「ギガデイン!」

レックスの指から、激しい稲妻が上空に上がり、そのまま膨大に膨れ上がり、落下する。

孤高の雷は、ダークシャーマンの体を切り裂き、地を焦がした。


「まだまだだぁぁッ!」

煙から伸びる大蛇―否、手。
レックスの腕を掴むと、そのままギリギリと手の牙をめり込ませる。

「つ…このッ!」

その手に直接ギガデインを放った。手が叩き潰され、断末魔の叫びと共にダークシャーマンは全滅した。

腕から血がにじむが、痛みを忘れるほど嬉しかった。
目の前に居る。捜し求めてきた人が。

「良く来ましたね…私の息子…」

マーサの声が心に響く。今にも吸い込まれそうな瞳が、こちらをじっと見つめていた。


「魔王ミルドラースの力は強大です…私があなた達と一緒に元の世界に帰るならば、力を封じねばなりません。息子達、下がっていなさい」

そう言って、天に祈り始める。手伝える事といったら、静かに見守る事だけだ。


それから、10秒ほどたっただろうか。


空から降り注ぐ大火球が、マーサの体を直撃する。

「ホッホッホ、いけませんね」

「ゲマ…!」

不気味な高笑いと共に、ゲマと呼ばれた人物が姿を現した。

「さて、ここであなた達は終わりです、ミルドラース様の手を煩わせるほどでもない…」

手を怪しげに動かす。
火球が作り出され、そのままはじき出されてこちらへ向かう。

「アベルさん!」

ゴルドがアベルの身代わりになる。目の前で広がる火柱。

だが、ゴルドには少しのダメージもない。

「へっへー!ゴルドに魔法はきかねーぜ!」

「よーっし!スラまる、いっけーッ!」

スラおとスラまるが、同時に突進。顔面に双方が一撃を食らわせる。

スラまるの一撃も、まあまあ効いたようだった。成長している事が、ここから伺える。

ゲマが、後に飛んだスラおの背を鎌で引き裂いた。
一瞬の隙を突き、レックスがゲマの腹を切り裂かんとする、だが、バックステップにより交わされ、逆にメラゾーマを受けてしまう。
直撃こそないが、火柱に巻き込まれたレックスは宙に浮き、地面へ激突した。

「くっ!タバサ、イオナズン!ピエールは打撃で!」

スライムナイトのピエールが、爆発に続いて剣を振り下ろす。
受け止められるが、素早く離れ、イオラを放つ。

牽制で気を取られたゲマの後から、またスラまるとスラおが攻撃を仕掛けるが、素早く二回切り付けられ、スラおの体力はどんどん減っていく。

スラまるも瀕死の状態。それを観たエルゼがベホマを二人に唱えようとした瞬間、火球が飛んだ。

「まずい…マホターン!」

間に合わない。そのまま火球が直撃、エルゼは地面に倒れたまま動かなくなった。

「ちくしょう…ゴルド、打撃!」

バインッ、と、ゴルドが地面を跳ね、勢い良くその巨体をゲマにぶつける。

ゲマはすかさず至近距離で鎌の一撃をお見舞いするが、硬い体には阻まれ、あまりダメージはないようだった。

「この野郎ぉっ!」

スラおが十分な反動をつけてゲマの後頭部に一撃。
すると、天から5匹の魔物が召還される。

「さすがに分が悪いですね…魔物を呼ばせてもらいましたよ」

キラーマシンが5匹。その4本の足で素早く近づくと、アベルの懐に剣を突きたてた。

そのまま連撃。アベルの体があっと言うまに切り刻まれる。

「「ツインベギラマーッ!」」

スラおとスラまるが、同時にべギラマを放つ。スラまるもベギラマを覚えていたのだった。

激しい音を立てて、一匹のキラーマシンが数メートル吹っ飛ばされる。

機械音を響かせるキラーマシンのモノアイに、レックスが剣を突き刺した。
そのまま下へ振り下ろすと、キラーマシンが真っ二つになり、その場に崩れ落ちた。

「父さんッ!」

タバサが賢者の石、レックスがべホマラーを唱えて全体を回復させる。

続けて、タバサがレックスにバイキルト。

「サンキュ!」

剣を持ち直し、ゲマに切りかかる。

鎌で受け止められそうになるが、バイキルトで力が倍増しているため、なんとか拮抗している。

むしろ、少し押している感じだ。

「ドラスーッ!砂煙!」

まるで水でもかけるかのように、砂塵が巻き上がった。
それはゲマの視界を一瞬だけ奪う。

「叩き込めーッ!」

レヴィの号令と共に、仲間のモンスターが一斉に飛び掛った。

「小賢しい!」

鎌の煌きが、風を切り、仲間達を斬った。鋭い衝撃波が起き、吹き飛ばされる。

ピエールをアベルが受け止める。そこに一瞬で移動したゲマ。




その手には、火球があった。












おまけ

クリオ&レヴィ&ディノ「orz」


続く!(ぇ

[11] ヽ( ・∀・)ノ 書ケネー  
じゅう - 2007年01月25日 (木) 23時10分

その火球が、ゲマの手から離れた。

0距離でのメラゾーマ。直撃してただで済むわけがない。恐らく即死だろう。
ゲマはアベルの頭を狙っている。そして、アベルに接触せんとしたときだった。

第6夜「やれると思うぜ」


「くそ……ッ!」

クリオが、タイジュの国の爆発親父特性、竜王の杖を持って、ゲマとアベルの間に割り込もうとする。
地面を蹴ると同時に、小さな砂塵が舞い上がる。

(あの時出来たんなら、今だって…!)

ある賢者の少女との激闘の際、偶然発動した呪文。
今の状況と少し似ていると思う。なら出来るはずと、タカを括った。

地面を削りながら、一身にメラゾーマを受ける。
そのままなら、確実に自分は死ぬ。

「うおおぉッ!」

叫びに呼応する竜王の杖。光がクリオを包み、メラゾーマが反射される。

ゲマに直撃する火の玉。焦げ付き、燃えるゲマの体に、アベルがすかさずドラゴンの杖を叩き込んだ。

凄まじい打撃音が響き、ゲマが吹っ飛ぶ。
命令される前に、レックスがゲマに飛び掛った。
今にも突き刺さらんとする天空の剣を、鎌で思い切り弾き返す。

真っ向から弾くのではなく、横から弾く事によってバイキルト状態のレックスに対応した。

「ッ! ギガデイン!」

一条の光が、ゲマに鉄槌を下す。轟音が闇の空に木霊し、耳を劈いた。
クレーターのように地面が凹んだ。だが、ゲマはまだ生きている。

「父さんの仇だ…」

アベルが静かに呪文を唱えた。竜巻で浮き上がったゲマの体に、もう一回ドラゴンの杖が食い込んだ。
ゲマの骨が砕かれる。地面へ叩きつけられた体は最早、言うことを聞かなくなっていた。

ドラゴンの杖が、ゲマの喉に添えられる。尖った部分で喉が少し切れた。

「これで…」

「終わりと思いますか?ホッホッホ」

ザシュッ、という鋭い刃物の音が、アベルの体を刻んだ。
血が辺りを真っ赤に染める。
膝から崩れ落ちるアベルの体を掴み、放り投げる。

まだ腕ぐらいなら動いたのだ。

「せめて貴方だけは地獄に送ってあげましょう」

銀色の凶器が、血の花を咲かせた。続けて放たれたメラゾーマが、アベルの体を焼き尽くす。

「がッ……」

アベルは思わず血反吐を吐いた。鎌が自分の体を貫いていると直感で分かった。

「ベ、ベホマラー…」

そこまで言ったレックスの言葉が途切れた。ゲマが地面を滑るように目の前に現れた。
浮いてしまえば、体は動かさなくていい。近づいて切り殺すだけだった。

地面に平伏すレックスの体に、もう一撃。

「らあぁぁぁぁッ!!」

スラおが、鎌に体当たりを食らわせる。
何とかレックスに鎌は当たらなかったが、素早く翻された鎌にスラおの体が斬り付けられる。

だが、すれ違いざまゴルドが体当たりし、ゲマとレックスの距離を開かせる。

「くっ……」

レヴィとドラス、スラまるは比較的それほど役に立ててはいない。
ツインベギラマなど、スラおとの連携はあるが、遠距離からちまちまと攻める他なかったのだ。

クリオたちやアベルたちとの力の差を、嫌でも実感させられていた。

しかし、無力さをかみ締めながらも自分に出来ることをやっていた。
何もやらないのは自分じゃない。

「よし!」

自分の拳と拳をがっちりあわせる。

「ドラスは砂煙!スラまるはベギラマ連発!」

「もうMPねぇ」

「何ィッ!?じゃ、じゃあ体当たり!」

「りょーかいぃッ!」

ゲマのメラゾーマを避けながら地面を跳ね、腹に一撃。
すぐさま離れて、全てのMPを使い切る。

「ギラならできる!」

小さな閃光が直撃するが、たいしたダメージにはなっていないようだ。

その隙にむくりとレックスが起き上がり、剣を振るうが、ゲマに跳ね返される。

「子供は寝てなさい。ホッホッホ」

「あ……」

爆炎がレックスの体を包み込む。巨大な火柱が止んだ頃には、甚大なダメージを負っていた。

黒焦げになった衣服。天空の剣は綺麗なままだ。
とっさに天空の盾を構えていたが、0距離でのメラゾーマを腹に喰らった為、立ち上がれるわけがなかった。

「そうはいかないぞ?」

ドラスがゲマの懐から砂煙を巻き起こす。ついでに尻尾で殴打。
浮力を一瞬失ったゲマの体が、がくんと動く。

「小癪な!」

メラゾーマが2回続けて放たれる。天空へ伸びる火柱が禍々しい。
ドラスは直撃。レックスは寸での所で回避するが、爆風でバランスを崩す。

「ドラス、こっち戻れ!」

レヴィが飛び出す。ドラスを掴むと、ゲマから離れようとした。

鎌が、自分の背を切り裂く。血飛沫が上がると同時に、激痛を感じた。

「……ッ!」

足から途端に力が抜けた。

「うりゃああぁぁーッ!」

飛び込む影。それは剣を鮮やかに使いこなし、ゲマの攻撃を防ぎきるばかりか、一太刀食らわせる。

スライムナイト。ピエールだった。

「こんなところで!」

アベルが、腕を無理やり横に振る。ギシギシと体が悲鳴を上げているのが分かる。

鎌の貫いた場所が心臓でないことが不幸中の幸いであった。
しかし、出血がひどく、眩暈がアベルを襲っていた。

ドラゴンの杖は今だ鋭角なフォルムを保ち、アベルに力を与えるように佇む。

ゲマの体をジャストミート。力を込めるが、感覚がおかしい事に気づく。
鎌が、杖を受け止めている。かと思えば、次に目に入ったのは闇だった。

跳ね飛ばされた体が宙を舞っていたのだ。

回復呪文を唱えようとするが、詠唱さえ出来ない。もはや気力もボロボロとなっていた。

とにかく、荒い息と共に出るのは、血反吐ばかり。
どんどん地面が赤くなっていく。

クリオが、直感的にその状況の危険さを感じ取った。

それが、足を勝手に動かした。



「行っけぇぇぇぇーッ!!スラおおぉぉ!」


手に持ったスラおを力の限り投げつけた。

スラお自身も勢いをつけ、弾丸の如く凄まじい勢いで風を切り、ゲマに必殺の攻撃を与えた。

アベル、レックスを除き、攻撃の態勢が整っていた。
絶好のチャンス他ならない今を、逃すわけがない。

「やれると思うぜ、今なら」


ピエール、ゴーレムのゴレムス、レヴィやクリオのモンスターたちが総攻撃を仕掛けた。
閃光と共に放たれた爆炎に続けざま、剣の煌きがどす黒い血の中にあった。


「…ま、まだまだですよ…」

「悪いが…これで…終わり、だ」

ドラゴンの杖の取っ手のとがった部分を先にして、ゲマに投げつける。

心臓を貫いたドラゴンの杖が、血を浴びて怪しげにキラリと光っていた。


ゲマが断末魔一つ上げずに絶命する。それと同時に、アベルも地面に突っ伏した。


おまけ

レヴィ「中途半端に終わった」

ディノ「ゲーム通りのストーリーじゃないらしいな。オリジナルがはいるっぽい」

レヴィ「二次創作だしねぇ」






[12] ぐふっ
じゅう - 2007年01月29日 (月) 22時12分

ゲマは倒した。未だにどす黒い血がそこらに撒き散らせれている。


アベルは賢者の石による回復を行なった。しゃべることすら間々ならなかった体が、見る見る内に回復する。

「う……」

アベルが回復すると同時に、マーサが目を覚ました。メラゾーマを喰らったにもかかわらずだ。
精神力の高さが幸いしたのだろうか。

「もう一度……」

マーサが、再び天に向かい祈りをささげ始める。か細い声が、ひどく胸を締め付ける。

「神よ……どうか、もう一度……我に力……を……」

そこまで言って崩れ落ちるマーサ。
一瞬の静寂と、早くなっていく心臓の鼓動が伝わってくる。

「母さん!」

一言叫んで、マーサに急いで駆け寄るアベル。
その時、天空から聞き覚えのある声が響く。
感慨のようなものを感じると同時に、涙が一つ、地面をぬらした。

『もうよい、マーサ、お前は良くやった』

アベルの父―パパスの声が、マーサを導き、魂を天界へと迎えていく。
マーサ自身の体も、もう限界だったのであろう。

最後にいつでも見守っている事だけを告げ、二人は天界へと去った。
その声はクリオやレヴィたちには聞こえなかったのだが、じんと心に響くものがあったことだけは、少年達も感じた。

「……行こう。ミルドラースはもうすぐだ」

闇に包まれたこの場所で光る、頬を伝うしずく。
目つきは、先ほどは打って変わって引き締まっていた。


「あ、しまった。エルゼ……」

忘れ去られて地面に横たわっているエルゼに大急ぎで世界中の葉を与え、掴んで強引に連れて行く。
まだ気絶しているようだった。

第7夜「聞く耳もたねぇぜ」


薄暗い洞窟。何故光は殆ど差し込まないのに周りが目視できるのだろうか。
その光景に、禍々しささえ感じさせられる。

進んで行くうちに、段々と威圧にも似た気のようなものが強くなってくる。
自分の思惟を見透かされるような感覚もある、とにかく不気味だ。

ふと、視界に入る宝箱があった。…同時に、ヘルバトラーと呼ばれる半獣人も襲い掛かってきたのだが。

2匹のヘルバトラーにより唱えられたイオナズンにより、周りが少々吹き飛んだ。
だが、いくらなんでも大振りなモーションから放った為、かわすのは容易だった。

アベルが跳躍し、そのまま風を切りながらヘルバトラーの頭を砕く。破砕音が死を示す音色だった。

さらにレックスが天空の剣を横薙ぎ。バイキルトをかけられていたために、大ダメージだ。
吹き出す赤い液体を掻い潜って、タバサは至近距離でマヒャドを放つ。

すると、後からのスラまるによる体当たりも合わさり、2匹のヘルバトラーをあっと言う間に倒した。

「案外あっさりだな……」
そういい残して、アベルは宝箱を開ける。そこにはキラキラと光る超硬度の金属、オリハルコンで作られた牙があった。

言うまでもなく、キラーパンサーのプックルに装備させた。
なんとなく嬉しそうにも見えるが、それを気にかけていられるほど気楽な状況ではない。

「ここか」

ヘルバトラーを倒すと同時に開いた扉。それを潜ると、一気に威圧感が強くなる。

その先にいた緑色の肌をした、老人の如き魔王――ミルドラース。

自然と力が入る。レヴィはまさに手に汗を握っていた。
目の前にいるのは魔王なのだ。まさかこんなことになるなんて思っても見なかった。

退屈だったあの日々が自然と思い出された。
今のような状況を、自分は待ち望んでいたのかもしれない。


「前口上は聞く耳もたねぇぜーッ!」

いてもたってもいられずに。少しだけ慌てるミルドラースをよそ目に。

勝手に戦闘開始。ほぼ奇襲だ。

と思えば、スラまるがあっという間に吹っ飛ばされてこちらに戻ってくる。
種族差は圧倒的だ。

しかし、スラおはほぼ互角といってもいいほどの戦いぶりだ。
特別なモンスターたる所以なのだろうか。

アベルは、呪文を詠唱し、大竜巻を引き起こす。
この程度で大きなダメージを与えられるとは微塵も思っていない。牽制程度にはなる。


数人+数匹の戦闘が同時進行していくために、一瞬の油断が仲間の死にも繋がる事を実感させられる。
それほどの強さを持っていた。魔王は。

輝く息。まるで北極にでも来たかのような寒さが身を削る。
氷の塊さえも乱れ飛ぶ。当たったらレヴィやクリオは即死かもしれない。

カチーン、といった効果音が似合うだろうか。スラまるの体が即座に凍る。

「あちゃー、仕方ねー」

レヴィが力の限りカチンコチンのスラまるをシュートした。
足がジンジンと響くが、別に気にしない。

その傍から観ればただの氷塊がミルドラースに直撃し、氷が砕けた。
スラまるはガチガチと寒さで歯を鳴らしている。
元々スライムは水中で住んでいて、地上に出ると蒸発する、まさに最弱のモンスターだった。今もその看板は外せない。
そのうち、進化を続け地上でも生き延びる事が可能になり、多種のスライムが生まれた。

そのため、スライムの元はほぼ水。それが凍らされる。すなわち体自身が氷と化す。

恐らく後5秒ほど凍っていたら、氷ごと自分の体も吹っ飛んでいたのではないだろうか。

「テ、テメー、俺を殺す気か…!」

「無事だったからイイだろ」

その間にも戦闘は続く。時は待たない。
ドラスは牽制担当。こうしている間にも砂煙が宙に舞う。

豪腕が唸り、力を前面に押し出すように拳を振う。
ゴレムスの攻撃は、確かにミルドラースの右頬を捉えた。
この一撃で顔が歪む。

アベルの走る音が聞こえるが、それに対応することは出来ない。

すれ違い様にドラゴンの杖をミルドラースの顔面に直撃させた。
助走も加わり、すでに聞き慣れた凄まじい打撃音が響く。


しかし、のけぞった体勢を立て直し様、輝く息を放った。

それも2連続。一瞬で周りが凍てつく。

「ゴルドッ!ベギラゴン!」

それに拮抗するかのように爆炎が広がっていく。槍の如き鋭さを保ちながら、閃光が絶対零度の世界を燃やし尽くしていった。

「おーし、スラお!打撃で行け!」

「言われなくったってなーッ!」

並外れた力を発揮し、自分の体を広げ、拳の形に変形する。

スラお必殺ジャスティスアッパー。そう呼んでいるのは当人(?)だけで、目にした者は必ず『ただの体当たり』と呼んでいる。

懐から一気に上へ『それ』を放つ。あごを捉えたようで、宙に寝る形になった。

「天空真剣奥義!爆裂空転!」

そう叫ぶのはレックス。これまたただの剣による一撃。
某剣狼の人がかわいそうである。

しかし、その一撃はミルドラースの腹部を捉えた。
強引に縦一閃。上半身と下半身を一太刀でちぎり飛ばされたミルドラースだが、タダで終わると思うほうが間違いだ。


闇が、濃くなっていった。



おまけ

レヴィ「いやいやいや、剣狼の人とか何わけのわかんない事言っちゃってんの駄目作者」

クリオ「分からない人にはクスリとも笑えない上に笑いが主体じゃないんだけどなコレ」

ディノ「つーか…描写…」


果たして、次回に続くことが出来るのだろうか!!(何




[21] 祁轡ゥ幻献ゥ(ry
じゅう - 2007年02月05日 (月) 23時05分

ミルドラースの体に闇が集まっていく。すでにミルドラースは闇の向こうだ。
密集する闇。背筋に悪寒が走った。

「不幸だな……貴様らは……」

ミルドラースの声。だが、すこし濁ったような声だ。
異変が起きているのは誰が見ても明らか。警戒態勢を緩めない。
キッ、とミルドラースを睨みつけたまま、動かない。


「なまじ強いばかりに、我の本当の姿を見ることになろうとは…」

直後、赤い巨体となったミルドラースから、4本の腕、2枚の翼、1本の尻尾が生えてくる。

その凶悪な様に、タバサが少しおびえていた。

「今度こそ終わりだ…ミルドラース」

アベルがドラゴンの杖を振りかぶり、ミルドラースの胴体に打ち降ろす。
しかし、案外硬い外皮、内部は衝撃を吸収する柔らかい体。
総合的な守備力は高いようだ。

「バギクロス!」

竜巻。だが、それは跳ね返ってアベルの体を切り刻む。
ミルドラースにはマホカンタが施されている。それの所為だ。

レックスは天空の剣を掲げる。剣から青い波動が放たれ、マホカンタを消え去らせた。
続け様、剣を振り下ろす。右上の腕に直撃。

さらに剣にギガデインを宿らせ、稲妻斬りの如く横へ引き裂く。
焦げ目がミルドラースの体に刻み込まれるが、瞑想するとたちまち傷は閉じてしまった。

「流石に化け物だな、こいつッ!」

クリオの指示により、エルゼが岩石落とし、ゴルドはベギラゴン、イオナズンを連発、スラおは打撃、そしてレヴィのチームがドラスの砂煙に紛れてスラまるの打撃、と言うローテーション攻撃を仕掛ける。

確実、確実にミルドラースへダメージを与えて行き、瞑想する暇を与えさせないようにしようと言うのがモンスターマスターチームの作戦。

決定打、補助をアベルのチームがやる。

タバサはバイキルトを連続で唱え、エルゼ、ゴルド以外の攻撃力を2倍にする。
攻撃力は基本だ。上げて置いて損はない。

レックスはスクルト。エルゼがピオリムを唱えておく。
コンディションは万全、そう思ったのもつかの間。

「無駄だ!」

凍てつく波動が飛んできた。たちまち奇妙な脱力感と共にせっかく強化した能力が下がっていく。

「そう簡単にはいかない、ってこったな」

総員で打撃を加える。だが、ミルドラースは4本の手を駆使して全てをなぎ払う。
だが、当たり前のように隙が出来る。そこを突いてゴルドがイオナズンを唱える。それもミルドラースの頭上に。

爆炎でミルドラースの頭が拉げる。そこへすかさず岩石落としを喰らわせる。
とにかく、頭、心臓をやられると、たいていの生き物は死んでしまうものだ。

心臓は皮膚が厚く貫きにくい。ならばむき出しの頭を狙う。
残酷かもしれないが、命、そしてこの世界の平和がかかっている。

相手は魔王なのだ。わざわざ皮膚が厚いところばかりを攻めて負ければ笑い話にもならないだろう。


スラおの一撃がミルドラースの首を捉える。同時に、あごも捉えた。
しかし、ミルドラースが灼熱の炎を吐き出した。

「いっ!?」

レヴィが狼狽した頃にはもう遅かった。M・Mのレヴィ、クリオは後方で自分のパーティに指示をしていたので難は免れたが、前で戦っていた者は全て炎に飲み込まれた。

「スラまるッ……ドラス!」

スラまるは何とか耐え切った。黒こげだが、息はある。
だが、ドラスは砂煙のために接近した直後の灼熱だったので、容赦なく戦闘不能となった。

他のものも大きな損害を被っているが、ゴルドには全く効いていなかった。彼曰く「暖房?」だそうだ。
彼の種族「ゴールデンスライム」は呪文、特技に滅法強い種族ゆえだろう。

ゴルドはお構いなしに呪文を連発する。MPは無尽蔵だ。
巨大な閃光、爆炎。コレが繰り返されている様は、凄まじいものだ。

しかし、瞑想し、また傷を塞いでいく。

「埒が明かないッ!一気に仕留めるぞ!」

アベルの号令で、タバサが全員にバイキルト。コレで完全にMPが尽きる。
攻撃呪文と併用していると、案外早く切れるものだ。

「凍てつく波動の前に、行くぞぉッ!!」

駆ける。速攻で勝負をつけなければこちらが危うい。持久戦では瞑想でかなり回復できるミルドラースと比べると、多少こちらが不利だ。
行動に移すまでの速度が速いのもある。こちらの回復が追いつかない。

「うおおおおぉぉぉぉッ!!!」

連続で聞こえる打撃音。それ全てが頭蓋を捉えた。
恐らく、異世界から来たモンスターマスターのパーティたちがいなければ、この一斉攻撃で相手を沈める事は出来なかったであろう。

今は、仲間が増えている。

『今だけ』は。


グラリと揺らめくミルドラースの顔面に、アベルの杖による一撃がめり込んだ。
精一杯。力の限り叩き込んだ。腕も、杖も、体も、全てが悲鳴を上げる。

灼熱が、目の前で炸裂している。だが、強引にその一撃を、顔面へと運んだ。

ローブが黒く燃え尽き、そのまま、アベルは倒れこむ。もはや虫の息だ。

その代わり、ミルドラースは光に包まれ、消滅した。



その光の先にあるもの。それにレヴィたちは吸い込まれていった。


「これは……旅の扉?」

一瞬の光の後、意識がブラックアウト。そして、自分の体は『元の世界』に戻されていた。


スラまる、ドラスはいない。周りを見渡すが、それはあの『村』そのものだ。


「あ……」

あの時、置いていった友。少年少女が、目の前にいる。
不思議と、懐かしい感じはしなかった。






おまけ

レヴィ「短編だったなんて初耳だ」
ディノ「なんだこの打ち切りっぽいシメ」

レヴィ「次はエピローグか…なんつー作品だ」








[22] えぴろぐ
じゅう - 2007年02月05日 (月) 23時22分

エピローグ

何故、自分はここにいるのだろう。
ディノはどうなったのだろう。疑問だらけだ。

だけれども、また旅の扉を探している自分がいた。

また行きたい。あの世界へ。


「そうだ……俺、カレキを救わなきゃなんねぇだった」

ふと思い出したように、呟いた。葉が頬を叩く。


目の前にある渦。


それを見つけた瞬間、いてもたってもいられずに、飛び込んだ。

そして、広がった光景――見たくなかった。こんな光景。


「ディノ……起きろよ!」

「んぁ……」

タダでさえボロボロのカレキの国が、これ以上ないほどにボロボロになっていた。

周りは殺風景が広がり、んだモンスターも散乱している。
邪配合モンスターが溶けた様な跡もあった。

「すまねぇ…無理だ、ありゃ数が多すぎたぜ」

「おい、オババはどこ行った!オババのザオリクでモンスターを…」

「オババも怪我しやがった。今は無理だな」

モンスター襲撃の際、巻き込まれて大怪我を負ったらしい。
命には別状ないが、とても魔法を唱えられるような状況ではない。ディノ自身も怪我を負っている。

「おーい、レヴィー!」

「あ、スラまる?」

ボロボロのドラス、そしてスラまる。ミルドラース戦からの傷が完全には癒えていないらしい。

「すんげぇ有様だな……こりゃ」

「精霊がいないからな…傷ついたらそのままさ」

「人を集めれば、いいんだったっけな?」

そうだ。ディノが言っていた。

モンスターマスターが強くなれば、それに勝とうとマスターが増える。
当然、モンスターも増える。
命宿る場所には精霊が宿る。

なら、冒険に。


「よっし!いくぜ!!回復は異世界で!」



いつか。

少年が、最高のM・Mになれるとき。


青々と茂るカレキの国が、そこにあるかもしれない。


だから、今はただ、冒険へ


ドラゴンクエストモンスターズΩ




おまけ

レヴィ「もう作者!」
ディノ「おし、手首もってこい、カッターで切る」
クリオ「ゴルド、イオナズンイオナズン」

ってーなわけで、打ち切りみたいな最後でしたが、一応完結です。(してねぇよ
いや、その後は読者さん(ほとんどいないけど)の想像にお任せ。

もう、中学生なんですよね・・・

出来るだけ、まだ暇があるうちに、小説書きたいなぁ。

一応、新しい小説のアイディアがどんどん出るんですが、そのあとが大変だ(ぁ
宿題も多くなってきたし。

・・・


が、頑張ります!(`・ω・´)(何



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