[13] キミガイタコロハ |
- ha-na - 2007年02月01日 (木) 05時02分
本当につまらない式だ。
去年初めて気がついた。
今日から彼らは心機一転の新しい生活が始まる。
これから3年間、どんな生活が彼らを待ち受けているのだろうか。
という僕はいよいよその最後の3年目を迎える。
2年前のこの日。
僕は極度の緊張をしながら同じ入学式を迎えた。
しかし何故僕はあんなにも緊張をしていたのだろう。
代表者として舞台に上がって言葉をのべるみたいなことをするならまだしも
ただただ座っているだけのあんな入学式に。
さて もう2年か。
この2年間、充実していたかと言うと
そうでも無い2年間だった気がする。
せめて高校生活のラスト年くらいはなんとか充実させたいものである。
・・・。
もう金曜日か。
なんだ・・・。充実した3年目を送るとか言ってたくせに
もう1週間目が終わりじゃないか。
放心していたわけでもないんだけどな・・・。
せめて来週は何かしなきゃな・・・。
と、思ってもう1ヶ月。
黒板の横の日付を見ながらため息をついた。
「おい、秋田。どうしたんだ〜」
ため息をついてる元気の無い僕に
単発で学生服を脱いで半そで姿の体育家の夏見が
暇つぶしに話をかけにきた。
「あ、夏見。別になにもしてない。」
「そう?今、肩を落としてなかったか?」
「え?いや、別に・・・。朝だから。」
「ふーん。・・・寝不足っていうヤツか。」
「・・・まぁね」
あんまりかっこ悪いことは言いたくなかった。
しかしそこへ長い綺麗な髪と美形の顔が特徴の冬樹が
寄ってきた。
「どうしたんだい?秋田。元気無いじゃないか。」
「いや、別に、大丈夫さw」
「そうかい?」
「寝不足なんだってよ、秋田のヤツ。」
「そうなのか。」
「ああ、まぁね。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「うそだろ。」
「え?」
「いや、なんかそう思ったんだよw」
「・・・。」
・・・出会った頃から思っていたが
この冬樹は勘の鋭い男だ。
それだけに僕のよき相談者になってくれたりもする。
「・・・実はさ」
「うんうん」
「・・・僕、何にも無い2年間だったなぁーって、思って。」
「・・・そうかなあ?w」
「そうだよ。夏見はサッカー部で国体に出たし、冬樹は優秀学生賞をもらってウチの高校代表で全国高校生スピーチ大会に出て銀賞だったし。・・・それに比べて僕は特に目立ったことやってないからさ。」
「君だって絵のコンクールに入賞したじゃないか。」
「佳作の予選選考にかすっただけだよ。」
「じゃあ今年は夏の絵のコンクール目指して絵を描けばいいじゃないか。去年予選選考にかすったんだから今年はいけるかも知れないぞ。」
「・・・そうは思わないな。」
「いや、お前の絵はウマイと思うぞ。やってみる価値はあると思うんだけどな。」
「それは絵は好きだけどさ。無理だろ。」
「そうだよ。やってみればいいじゃないか。」
「夏見・・・。あのさ、そんな簡単な話じゃないんだって。」
「とりあえず、何もしないよりはマシだろ。やってみろやってみろ。」
「えー・・・。」
「テツ、また絵やるんだって!?」
「あ、春香…。」
お昼、食堂でご飯を食べてた僕の元に
仲の良い女子生徒、春香がうれしそうに寄ってきた。
テツというのは僕のしたの名前だ。
「夏見くんと冬樹さんに聞いたよー!」
「・・・ああ、あの二人か・・・余計なことお・・・」
「え?違うの?」
「うん。そんなこと、まだ決まってないよ。」
「でも・・・やればいいじゃん!テツの腕は私ら美術部員でも驚愕するくらいのセンスを持ってるし!」
ああ。そういえば春香は美術部の部長になったんだったな。
「描く所が無い。」
「美術部使えばいいじゃん!庄田先生も絶対あなたなら許すと思うよ!」
・・・。場所が無いと言って諦めようとしたのに・・・。
そういえ美術部の庄田先生は一時期僕を美術部にしつこく勧誘してたな。
あの鬱陶しさなら歓迎するだろうな・・・。
「ねぇねぇ、やろうよ!」
ぎゅうう
「!」
春香は僕の腕を取って抱きしめた。
彼女は気がついていないがそれは胸に思いっきり接触した。
温かい弾力感を感じた。
「わ、わかったから!やるよ!やる!」
「本当!?やったー!」
春香が万歳してるうちに腕を戻した。
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