[29] バルニパな会話 |
- ほのぼの - 2007年03月05日 (月) 00時00分
体を泡立てる手を止め、まじまじと見つめる。 「髪…伸びたな」 「え?」 わざわざシャワーを停止させて聞き返してきた。 「髪、随分伸びたな」 水の流れが無くなったせいで、髪は背中や尻に張り付いている。 「あぁ、そうっすねぇ」 首から差し込まれた手により一度は離れるが、水をたっぷり含んだ髪はまた形を変え体に纏わりつく。 急に意味有りげな笑顔がこちらを向いた。 「女とシャワー浴びてる気分になりました?」 こいつは、と内心苦笑する。 表情には出さず、澄ました笑みを返す。 「そうだな…」 「へ?」 呆気にとられているところへ、さらに。 「ベッドで乱れる茶髪を思い浮かべた」 途端に顔を赤らめ、視線を逸らしている。 再び勢い良く流れ出した水の音に紛れて、すんません、と聞こえた。 人生経験の差は容易には縮まらない事を、こいつは時々忘れる。
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