[32] ヒゲ |
- ウホッ!いいユンボル - 2007年03月08日 (木) 12時37分
補給のため立ち寄った大型ドラッグストアの中に設置されている、パーティーグッズコーナーで バル・クロウ(身体年齢約10歳)はしばし葛藤していた。 目の前にあるのは所謂「付け髭」。この種の商品の常で造りは安っぽくチャチなものだが 彼の目を引いたのはそのデザインだ。 (似てるなー。色といい形といい) 生前(?)の本人が蓄えていた口髭と、よく似た試着用のそれを前に、数秒逡巡すると彼は周囲を見回し ひと気の無いことを確認して手に取る。 「……ふむ」 悪くないかもな、などと呟きつつ、嬉しそうに鏡の前でマンダムなポーズを取ってみたりするバル・クロウ (精神年齢推定40代)。
「あー!いたいた隊長。何やってたんすか?……アレ?」 タイミング悪くバルを見つけたニッパが、理不尽にも文字通りの鉄拳を食らったのは、その直後だった。
「アハハ、んな事気にしてたんすか?かわいーなぁもう。心配しなくても後何年かすりゃ生えてきますって」 「うるせー笑うな、かわいーとか言うな!てか何生意気に顎ヒゲなんか生やしてんだてめー!! ジョリるぞコラ!!」 「ギャー!!やめてー!!今運転中、運転中!」
奇しくも時を前後して、ファクトリア某所にあるユンボル開発研究所の私室では、姿見に向かい 長い付け髭を顎に蓄えたドリルが、サムアップをキメているところであった。 「どうだ、似合うかクレンよ……」 「いいえ、全然」
「……」 「……」
「……そうか」 身もフタも情け容赦も無い一言に、クールに答えつつも内心がっくり肩を落とす博士番長(精神年齢約120歳)。 (あのバカ早く帰ってこんかなー……) 窓から空を見上げ、遥か旧ドヴォークの地に思いを馳せるドリルだった。
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