[37] 続き、バルニパver.エピローグ |
- ビター - 2007年03月13日 (火) 21時14分
強い風が止む事無く吹き続けている。 長髪が激しく煽られ、時折、横に立つ自分の肌を掠める。 「予測通りだ。地理的条件も申し分ねーな」 弾き出された数値に満足し、笑みながら顔を上げた。 「ここにウィンドファームを造る」 白く鋭い羽を持つ風車が何十基も立ち並ぶ光景を想像した。 実験的に建設された何基かの風車は、いずれも期待に違わない成果を収めている。 利益追求の果てに一度は失われかけた技術だ。 不安要素が無いわけではない。 だが確かな手応えを感じていた。 「人が自然と共存するための第一歩だ」 それは託された課題への自分なりの答だった。 「禁断の聖地に替わる新たな…、」 呟きに誘われ、声の主を見上げる。 「風の楽園…」 急に風向きが変わり、向い風となってその長い髪を後ろへ吹き流した。 横顔があらわになる。 視線は遠く、広大な大地のその先へ向けられている。 その姿を目にし、不意に泣きたい衝動に駆られた。
顔の両脇に手を突き上から口付ける。 角度を変え何度も重ねる。 息を継ぐ間も惜しんで舌を交える。 「ちょ、隊長、」 照れと焦りが入り交じった声が合間に漏れた。 軽く顔を振ることで唇を解かれる。 「どうしたんすか隊長、今日なんか変 」 言葉が止まった。 呼吸も止まった、ように見えた。 その瞳に映る自分はどんな顔をしていたのか。 確かめる間もなく手が伸びてきて、口を塞がれる。 「言わないで下さい」 切羽詰まった口調だった。 口を塞がれたまま見下ろす。 「ってナニ自惚れてんだオレ…」 もう片方の手を己の額に当てている。 指の隙間から見える目は、薄く天井を仰いでいる。 「けど万が一それ言われたら、オレ…隊長が亡くなった時もなかったすけど、」 手が動き、目元を完全に覆い隠す。 「オレそれ言われたら多分、幸せすぎてにたくなる」 口を塞ぐ手を除ける。 表情を隠す手も除ける。 眉間に皺を寄せ、頑なに目を閉ざしている。 それを見て、笑いたいような、泣きたいような気持ちになった。
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