[6] バル(小)→ニパ→バル(大) (棚から転載) |
- 鬱 - 2007年02月08日 (木) 00時32分
くるくるとよく変わる表情から、感情が抜け落ちている瞬間があることに気付いた。 視線は意識ごとどこか遠くへ飛んでいる。 その目が自分に向けられた時、焦点は自分を通り過ぎたその先に合っている気がした。
夜中に目が覚め、すぐにその原因を悟る。 真上から自分を覗き込む人影があった。 髪のせいで周囲より濃い影に覆われている顔、辛うじて見える目は、また 焦点が合っていない。 「どうした?眠れないのか?」 掛けた声はどことなく頼りないものになった。 湧き上がる不安感を自覚する。 「本当に、隊長…なんすよね」 顔が近付き、髪が頬を撫でる。 唇が触れ合う。 "この手"で突き飛ばさないよう堪えるまでもなく、それはすぐに離れた。 無意識に唾を飲み下せば、その音がやけに大きく体内に響いた。
再び向けられた自分を通り越す視線が、瞼に隠れる。 耳元に顔を伏す気配。 それでも体は腕で支えているのか、体重は殆どかかってこない。 不規則な呼吸がすぐ傍から聞こえる。 「…隊長…」 搾り出したような、掠れた声だった。
僅かな間の後、体を起こし離れていった。 何か言ってやらなくてはと思いながら、結局、掛けるべき言葉が見付からなかった。
|
|