[628] 「ただ神を憶ひ出すのだ」 と聲は宣ふ |
- 童子 - 2015年04月22日 (水) 18時28分
『生長の家』誌 昭和31年9月号 「明窓浄机」より
或る日、ダナ・ギャトリン女史は打ち続く病気や色々の複雑な出来事の頻発で、全く力を失って打ち挫かれたような気持になっていた。
彼女はユニティ協会の信者であり講師でもあったので、神の無限の愛を智慧を恵みを心に描いて、その実現を希う祈りの神想観を試みたが、心は事件や病気の方に吸い寄せられて、少しも神の方へ心が統一できないのである。
自分自身の失敗、悲しみ、恐怖不安、それから、彼の人がどうしたとか斯うしたとか思うまい思うまいと努力すればするほど、雑念妄想雲の如く湧き起って来るので収拾がつかないのであった。
その時、誰かが彼女に対して 『心が低い、高く掲げよ!』 と厳かな声で命ずるようにきこえたのである。 それは神の声だ!
ダナは驚いて、顔を赤くした。 厳かな声を前にして、自分自身の低さが羞かしくなったのである。 そんな現象界のことで思いまどうて、色を失っている自分自身が神の前に恥かしくなったである。 声は続けて言った。 『汝自身にかえれ。 強くあれ! わたしはお前に恐怖や不安や杜惑いの魂を与えた覚えはないぞ!! 私ははお前に対して勇気の魂を与えた。 愛の魂を与えた。 沈着の魂を与えたはずだ。』
ダナはその声に対して言い訳をしようとした。 『神様、私は私の実相の完全さを想念しようと努力しました。 併しその努力も無駄なのです。 何も彼も滅茶滅茶です。 すべての事物が私をドン底へドン底へと引摺り落して行くのです。』
すると神は厳かに言った ――
『それらの出来事が私 〈神〉 よりも強いとお前は考えるのか。』
『時々、私はあなたの存在が感じられなくなることがあるのです。』 とダナは言った。 『私の周囲を取巻いている不調和はあまりにも強烈なのです。 私の最大の強敵が私の潜在意識の中にある消極的な想念感情であると云うことを私は知っています。 蝟集してくる色々な問題、それに伴って来る悲観的な想念、それらが群り襲って来るときには、私は、もうどうしたら好いかわからなくなるのです。』
『お前はお前自身でその問題を処理しなければならぬことはない。』 と神の声は言った。
『そんな問題は忘れて了へ。 私を憶い出すのだ!』
(つづく)
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