課題 折句 「ひやけ」 選句の略字は鑑賞文の俳名を参考にしてください。
ひと言は鏃となりぬ毛虫焼く カツ 8 天や 天し 地な
●やんま>げに人の言葉はヤジリかもしれぬ。しかして己の中にも残忍な心が潜む。●シナモン>胸を刺す一言。知らぬ間に自分も人を刺しているかも。●なを>天のお句と似ていますが、「毛虫焼く」で、戦っていく気概のようなものを感じました。強いですね。
一言がやけに身に染む螻蛄の夜 やんま. 6 天な 天ま
●なを>昼間何気なく云われた言葉が、夜になって突然思い出されまるでボディブロウのように効いてくる…そんな夜の忸怩たる心持が「螻蛄の夜」と響き合ってお上手だと思いました。●萬坊>昼の出来事の一言が、暗く深く重く夏の夜にのしかかる。平易な言葉だからこそ螻蛄の夜が怖い。
一人旅山で奏でるケーナかな ひつじ 5 地カ 地ど 人や
●カツ>「山で」を「山に」に置き換えたとしたら。さらに音楽を捧げられる山の神秘性と、旅人の孤独感(人には捧げず、自然に音楽を捧げる)が表現されたのではないでしょうか。ケーナを持ってきたのも、手柄ですね。●どれみ>季語が入っていないがケーナから「アンデスのコンドル」が飛んでいる夏の景が見えました。●やんま.>遠い旅の地で見つけた縦笛を、新しい旅の山で一人吹いている。
光射す安アパートの罌粟坊主 影虎 5 天ど 地ぐ
●どれみ>アパートの狭いベランダのケシの枯れた丸い坊主に、真夏の残照が当たっている。二階建て、西日、植木鉢、共同便所、外階段、ぼくにも通り過ぎた風景がある。●ぐみ>狭い僅かな花壇、花も散ってしまった。「神田川」の歌詞の世界。けし坊主を昔の子供のヘアスタイルと取れば幼児と若い夫婦のつつましい暮らしも見えてくる。
一重帯約束ひとつ今朝の空 萬坊 5 人ひ 人し 人カ 人ぐ 人な
●ひつじ>しつかり帯締めて 遅刻しないように約束に決意。●シナモン>期待感●カツ>句が三つに切れていて意味がとりにくいのですが。帯を締めて、何かの約束を果たしに行く夏の朝の情景は浮かびます。決して軽くない約束…帯を締めるという行為はすなわち「決意」。●ぐみ>青く晴れた空、心楽しい約束なのであろう。和服の似合うおとなの女性がきりりと帯を締め上げて。●なを>ちょっとイロッポイですね。逢引(古いですね…笑)のお約束かしらん??夜のお出かけに締める帯を、あれこれ選んでいるなんてのがいいな♪
ひからかさ破けぬままの懸想文 なを 4 地ま 人せ 人ど
●萬坊>「ひからかさ」をパラソルではなく、ここは紙貼りの日傘としたい。懸想文は、「ひからかさ」のひらがな書きから、筆文字のラブレターとイメージした。この手紙は出そうか、やぶり捨てようか、日傘の小さな破れも気になる。●泉瑛>忘られぬ恋の思い出。●どれみ>折句とは思えない出来です。
火のつきし焼けぼっくひや芥子のはな シナモン 4 地ど 地ま
●どれみ>「ひやけ」の「ひや」のおさまりにおそれいりました。●萬坊>元にもどった男女の関係。真夏のケシの花と危うげに対峙している。
人の世の闇は湿りて芥子の花 カツ 4 地せ 人ど 人ま
●泉瑛>ハードボイルド調、リズム感が宜しい。●どれみ>人の世の表と裏と感じました。●萬坊>世の闇が人それぞれの生活歴史とすれば、芥子の花の危うさが感応してくる。「闇は湿りて」は「闇深々と」くらいではどうでしょう。
向日葵と矢印の立つ県境 ぐみ 4 地ひ 人や 人カ
●ひつじ>いいですね。この雰囲気。●やんま.>県境には様々なものが「立つ」。馬頭観音なんぞも。●カツ>県境に沿って向日葵が植えられている…そんな光景を勝手に浮かべて、タノシ。
密やかに谷で育む芥子白し 泉瑛 4 天ぐ 人ど
●ぐみ>芥子の栽培は日本ではアヘン法により禁止されている。密やかという漢字に加え、場所は暗い谷、白い芥子群隠れ里的雰囲気はより濃厚に。折句を超えた完成度。●どれみ>芥子(ポピー)の派手な色の割には谷底の村にさびしさが漂う。
一人酒焼茄子あり消せぬ過去 影虎 4 地ぐ 人な 人ひ
●ぐみ>なすびは「成す」に通じ、成功を意味することがある。どんな過去で手にした成功を棒に振ったのだろうか。「独り酒」と書いては演歌になってしまうとも思えないが。●なを>「焼茄子つつき」「焼茄子つまみ」とかなら、もっと良かった気がします。所詮、過去は消せぬものね。●ひつじ>まあ飲んで懺悔か 何でしょうか?明るく前向きにいきましょう。
緋鯉に麩夜勤の疲れ消し去りぬ ぐみ 4 天せ 人し
●泉瑛>帰路の公園の池で一休み。●シナモン>安堵感。
引越しに守宮の見送る気配して ぐみ 3 地や 人せ
●やんま.>古く住んだ家を後にする。残された守宮だけが棲み続ける。●泉瑛>守宮の見送りで引越しの寂しさが薄れる。
ひつじ草山寺の池に今朝開く ぐみ 3 天ひ
●ひつじ>ひつじ草に1票です。
単衣脱ぐ夜光時計の優しだつ 萬坊 3 天カ
●カツ>夜光時計がほの光っている暗闇で単衣を脱いでいるのは、当然、愛を交わすためでしょう。緑の光は決して裸体を浮かび上がらせるほどでは無いけれども、多分、肌は不思議に柔らかな薄緑に浮かび上がってくる…官能のときめきをキッチリ描いていると思います。
日傘置く野菜畑の傾斜地に 萬坊 3 地や 人ぐ
●やんま.>農作業のつもりはなかったが、夕飯のナスを摘みにちょいと立ち寄る。●ぐみ>お昼どき、お弁当を開くのに、日傘で影を作る心遣い。平地ではない所に苦心しての野菜作り、大豊作かも。
冷やし瓜山笠踊り稽古終え ぐみ 2 人し 人ま
●シナモン>達成感●萬坊>奉納行事の山笠踊りの練習である。汗をかいた後の、山清水で冷やした瓜の差し入れがおいしい。
広島忌やけに騒がし警報器 萬坊 2 人や 人カ
●やんま.>常ならぬ気配にその時が甦る。●カツ>警報機を世に蔓延するアラーム類と解釈すると、はたとひざ打ちます。真の災を覆い隠すかのような、微細な注意に満ちている現代…を切り取ったのですね。
冷汁や焼鳥売り込む県の顔 泉瑛 2 地ひ
●ひつじ>宮崎を思い出しました。
ひとめ惚れ矢車草咲く今朝の駅 ぐみ 2 地せ
●泉瑛>胸のときめき幾つになってもいいですね。
冷や酒のやけのやんぱち競馬場 どれみ 2 地し
●シナモン>くちをしさ・・・
冷し酒ヤフーグーグルケセラセラ 萬坊 2 地な
●なを>思わず笑ってしまいました。そんなことってありますね。夜中に検索なんぞしながら、ほんの少しの冷酒を酌んで…あとはケセラセラ。人生なんてそんなもの。
品のない奴といはれて毛虫踏む シナモン 2 人ひ 人な
●ひつじ>怒りたくなりますが、がまんがまん。●なを>12のお句と、同じ作者さまかしらん? なんて思いました。「品格〜」なんて本が売れているようですが、そんなもの読んだって身に付いたものは変えられないんちゃいますか??
向日葵と焼肉が好きケーキもね ぐみ 2 地し
●シナモン>微笑ましさ
百日草やさしげに見ゆ化粧せし なを 2 地カ
●カツ>優しげに見えない化粧もある…女性には当たり前のことなのかしら。まず、なるほど!この女性は百日草のように、長い日々の殆どを「優しげな化粧」で過ごされているのですね。でも、その毎日の裏には「優しげでない」自分が隠されている。女性のいじわるさが描かれていて面白い。
日の出待つ山の男や今朝の秋 シナモン 1 人ぐ
●ぐみ>句として成功しているが、初秋の時期での選句なら上位になっていたのでは。
光り満ち山若葉影渓流に ぐみ 1 人ま
●萬坊>折句として、すんなりよくまとまっている。
ひまわりの弥の明後日も気高けり カツ 1 人せ
●泉瑛>ひまわりの存在感が上手に表現されています。
得点句 以上28句。 総得点順 ぐみ/21 萬坊/15 カツ/13 影虎/ 9 シナモン/7 やんま./6 泉瑛/6 なを/ 6 ひつじ/5 どれみ/2 .
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