「長寿の秘訣」~「いまを喜びなさい、いまを感謝しなさい」 (413) |
- 日時:2014年09月16日 (火) 04時47分
名前:伝統
*月刊誌「『致知』2014年9月号 」より
国土は狭いといえども、 日本には、年を取っても心は若く、 イキイキと生活されている方が数多くいらっしゃいます。
107歳の声楽家・嘉納愛子さんと93歳の淨信寺副住職・西端春枝さんも そのうちの1人でしょう。
いまも現役で日々忙しくされているお2人の活力の源泉はどこにあるのか。
合わせて200歳、その「長寿の秘訣」に迫ります――。
《対談~「いまを喜びなさい、いまを感謝しなさい」》
嘉納愛子(声楽家) 西端春枝(真宗大谷派淨信寺副住職)
嘉納 私の人生もいろんな節目がありました。
音楽学校を出て演奏活動をして、 山田耕筰先生の媒酌で結婚をして、 息子を亡くした後に音楽教育に携わって、 それがずっといまも続いています。
だから100歳の時に NHKの「百歳バンザイ!」っていう番組に出てほしいって言われたけれど、
「えっ、私が100歳?」
って不思議だったんです(笑)。 自分がそんなになるって思ってないもの。
西端 ホント、年が重なるのが分かりませんね。 私も気がついたら93歳。
嘉納 とにかく1年が早いのね。
だけどまだまだ美味しいものをたくさんいただいて、 こんな歌をつくって頑張っています。
「老人太り三途の川は乗船拒否」
西端 まぁ素晴らしい(笑)。 どこからそんな元気が出てくるのかしら。
嘉納 やっぱり音楽の力です。
音楽の訓練は苦しいけれども楽しい。 人間、やっぱり楽しくなくちゃ続きません。
人様のことは分かりませんが、続けられるということは、それが好きだから。
私には音楽という、好きで続けられるものがあったから いまもこうして元気に過ごしていられるんだと思います。
ですからいまはただ感謝のひと言。
NHKに出た時に色紙を渡されたんですけど、 私がその時に書いたのも「感謝」のひと言でした。
神社に行くと願い事の書かれた絵馬が たくさん掲げてありますけど、 あれじゃ神様もきっと大変(笑)。
だから私は願い事はしないで、ありがとうございますって感謝だけ。
西端 私も本当に同感です。
自分1人では何もできなくて、いろんな人に大事にしていただいていますから、 もう本当に感謝しかありません。
佐藤義詮先生もよくおっしゃっていました。
済んだ過去に拘らず、これからの未来に対してどうこうじゃなく、 もっといまを感謝しなさい。
いま喜ぶことがいっぱいあるだろうと。
でも、いくらお金があって家族に恵まれていても、 不幸せと感じている人もいます。
篤志面接官のお仕事で刑務所に入っている人に面会すると、最初はみんな
「おまえ、何しに来たの」
みたいな感じでブスッとしているから、 いろいろ笑わせて心をほぐしながらお話を聞くんです。
でも話を聞いてみると、罪を犯した原因を自分以外のところに求めているんですね。
以前の私はただ相槌を打つだけでしたが、 この頃は「あんたも悪い」って、はっきり言うようにしているんです。
こちらが真剣になって本当のことを伝えてあげると、 気持ちが楽になって、素直に頷いてくれるんですよ。
嘉納 親身に相手を思うから、耳を傾けてくださるんでしょうね。
西端 昔の人の言葉に「喜ぶ人には勝てない」というのがあります。
他人が辛かろう、寂しかろうといっても、 いや自分は幸せですという人には誰も勝てないんですね。
きょうのテーマは「万事入精」と伺いました。
この言葉を聞いて頭に浮かんだのは、仏教の諸行無常という教えです。
先ほど嘉納先生もおっしゃったように、人生この先何が起こるか分かりませんが、 だからこそ一日一日を大切に、感謝の心で生きていきたいですね。
嘉納 それは真心を込めて生きるということね。 私も毎日一所懸命、真心を込めて生きています。
まだ満足してないの。 私の歌はもっと上手になるはずだし、私にできることもまだあるだろうにって。
どなたがおっしゃったのか知りませんが、
「50、60、花ならつぼみ、七十、八十花盛り、 90なってお迎えが来たら100まで待てと追い返せ」
という言葉があります。
私はもう100歳を超えましたが、 まだ見たい、食べたい、聞きたい、歌いたい。
欲張りな人間なんです(笑)。
西端 私が尊敬している平澤興先生(京都大学元総長)という方も こんなことを書かれています。
「60歳で一応、還暦という人生の関所を過ぎ、 70歳で新しい人生を開き、 80歳でまた第3の人生が始まり、 90歳まで生きないと本当に人生は分からない」
こういう言葉に触れると、心の底から元気が湧いてきますね。
嘉納 お互いに毎日一所懸命できることをやり尽くしたいですね。
そうして満足した時にさよならできたら、一番幸せでしょうよ(笑)。
<感謝合掌 平成26年9月16日 頓首再拝>
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