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まだ、途中

[395]ねこ三四郎


月と闇の出逢い

キミの大切な玄奘三蔵は、月と闇の関わりを知っているだろうか。
多分知らない筈だ、僕の知っている光明は無駄口をたたかない人だったからね。
そう、あれは確かまだ僕が健邑と名乗っていた頃────。

禅奥寺。境内で健邑は光明三蔵が来ていることを兄弟子が騒いでることで知った。聞けばフツウのおじさんだと言うのに、最高位である三蔵を最年少で継承したと聞きけば、健邑が光明三蔵に興味が沸いてくるのに時間はかからなかった。
最高位である三蔵を継承できれば、きっと望むものが手に入ると思っていた健邑には、最高位など興味などないのかもしれなかった。だが、数多い弟子たちの中で体術も法力もトップクラスを維持することが最高位を得られると思い込んでいたのである。

庭の掃除も修行の一つだ。舞い落ちてくる落ち葉に呆れながら健邑は庭掃除をしていた。気がつけば噂の光明三蔵が庭に出ていて、健邑に話しかけていた。
金山寺に美少年の愛弟子が一人いると兄弟子が言っていたことを思い出し、目の前の光明三蔵をふと見上げた。冷たく淀んだ目と暖かな眼差しが絡み合い交差していく。
 枯葉を見たら焼き芋をするという発想が何処から沸いて出るのだろう。まだ年若い愛弟子と一緒に遊んでいるつもりなのだろうか?それとも…………。
ふと気がついたように光明三蔵が愛弟子である江流のことを健邑に話しはじめた。本当にまだ、年端も行かない子どものようで、光明三蔵は我が子のように嬉しそうな顔をして話していた。

「なんでまた、そんな子どもを最高位であるアンタが育てているんでしょう」

 禅奥寺の勝手場から貰ってきた芋を枯葉の中に丁寧に入れている光明三蔵に、健邑が訪ねた。

「ナンデでしょうね?……そうですね。聞こえたんですよ、あの子の泣き声が」

「泣き声?」

 煙草用に持ち歩いている火つけを使って、枯葉に火を点けた光明三蔵は焼き芋が焼きあがるまでのんびりとそこで煙草を吸っているつもりだったようである。

「えぇ、タライみたいなモノに乗せられて川に流れていたんですよ、江流は…それはもう五月蠅いくらいの大きな泣き声をあげながら」

「そんなに五月蠅いのならもっと前に見つけられるだろうに」

「そうなんですよね、でも…拾って抱き上げたらそんなに大きな声で泣いてたんじゃなくって、多分……ココに響いてきたんでしょうね」

 光明三蔵が自分の胸元に手を当て、その時のことを思い出したように小さな吐息をついた。

「きっと私のこと呼んでたのだと思うんです…そんなことってあるんですね」

 まるで他人事のように言い、にっこりと微笑みながら健邑を見つめた光明三蔵の視線を健邑は眩しく感じ、慌てて逸らしていく。自分には持ち合わせていないモノだったから。

「俺の声も聞こえてたらいいのに……」

ボソリと聞こえないような声を洩らした健邑が見事な青空を仰ぎ見ながら大きく伸びをして、再び舞い落ちてくる枯葉を集めだした。

焼きあがった芋は甘くホクホクと歯ごたえもよく、久しぶりに童心に戻ったような穏やかな表情をしながら二人は並んで食べた。

メール HOME 2004年04月15日 (木) 09時51分


[396]ねこ三四郎
そして、続き…これで終わり


 師匠である剛内三蔵の異変に気がついたのは少し前だった。もうすぐ後継者選びが始まるんだと楽しみにしていた矢先に現れたのは貴方、光明三蔵だった。

 選ばれる自信があったのに、その先を見透かされて後継者として選ばれなかった健邑。
選ばれぬ理由を問いながら師である剛内三蔵に反発するように手を伸ばして────。

 鷲掴みにされた手首にはクッキリ痕が残っていた。止めたのは光明三蔵。
反省しろと懲罰房に入れられていた健邑の様子を見に来ていた光明三蔵に気がつき声をかけた。

「そんな柔な顔して、こんな力…出せたんだ、アンタ」

 手首の痕を撫でながら、健邑は戸板を挟んで向こう側にいる気配に呟いた。

「手加減したんですけどね…ぁ、大丈夫ですか?」

 本当に心配そうに、それでいて健邑の力量に気付きながら柔らかな声が響いた。

「もう少しで…届いたのにさ…」

「ぁ、恨まれちゃいますか私?いいですよ、坊さんですから恨まれることには慣れてますし…ぁでも…そんなに簡単に届いちゃつまらないでしょ?」

「つまらない?」

 健邑の問いかけに応える訳でもなく、開いている小窓から紫煙が流れてきたことで、光明三蔵が煙草を吸っていることに気がついた。

「あ、煙草吸います?」

「いらない。」

 即答するとクスクスと笑う声が聞こえてきた。

「アンタって面白いね」

「それはお互い様でしょ」

 流れる時の速さが止まったように思えた瞬間。
 話題を変えるように健邑が尋ねた。

「アンタのその髪型、自分でやるの?」

「え?」

 ふわりと揺れた垂れ下がったポニーテール。

「えぇ、これは自分で…でも、三つ網は自分では出来ないので江流に手伝ってもらってますけどね…それが何か?」

「ふぅ〜ん、その髪を解いた姿…知ってるのはその子だけ?」

 しばらく途絶えた光明三蔵の声に、健邑の心が揺れた。

「……ぁ…」

 小さく何かを思い出したように光明三蔵が声をあげた。その声に、やっぱりほかに誰かいるのだろうと思わず小窓を見つめてしまった健邑。

「…いました、もう一人……」

「そっ、やっぱりね……その子だけじゃなかったんだ」

 再び途切れた光明三蔵の声が、小さく吐息をついたのがわかった。

「……私が……」

 その応えに戸板の向こうで健邑がぷっと吹き出して笑い声をあげた。

「アンタってさァ、やっぱ天然?」

 よくもまぁ、こんなのが最高僧になれたものだと健邑の楽しそうな声につられて光明三蔵が頷いた。

「それは……私と付きあってみないとわからないことですね」

 返事に詰まったような顔をした健邑が、小さく舌打ちをしてから息を吐いた。

「参ったなぁ、毒気にあてるつもりだったのに」

 逆に当てられたとは口が裂けても言えやしない。


その夜、密かに呼ばれた健邑が向かえと言われた場所に、髪を解いた光明三蔵がいた。

「江流がいない時は、一つ結びなんですけどね。貴方が見たそうだったから」

 そう言いながら健邑に向かって後ろを向いてみせた。懲罰房に入っていた健邑を剛内三蔵に頼んで出させ、無防備に向けた背中に垂れる光明三蔵の髪を、触れていいものなのかと櫛も持たずに触れようとする健邑の姿を照らしている灯籠の火。

「ほら、そうやってまたアンタは誘ってくるんだから」

「いぇ、誘ったんじゃなくて……」

 そんなことなど関係ないと振った首から覗く光明三蔵の白い項────。

「踏み込んできたんですよ、貴方もココに…」

 柔らかな笑みを零し自分の胸に手を当てる真似をしてみせた光明三蔵に、健邑の目が少しだけ嬉しそうに笑っていた。ただそれだけの出逢いからはじまったことだとは本当に誰も知らなかった。
                                             END

メール HOME 2004年04月16日 (金) 23時16分




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