From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]
「北村薫の創作表現講義―あなたを読む、わたしを書く」 (新潮選書)
2008年5月 新潮社刊
3年前、北村薫さんが早稲田大学で講座を持つことになったと聞いた時、どれほどその授業を受けてみたいと思ったことか。おそらく同じ思いを抱いた人は沢山いただろう。
その講義が実はテープに録音されており、こうして編集されて一冊の本になった。小説を読んだり、書いたりするための授業が教室には行けなかったけれどもこうして体験出来る。
それを考えるだけでも至福のひととき。本を読んでいないのにもう、喜んでいる。
私にはそういう本。そしてその期待を上回る面白さがこの本にはあった。作家ではなく、北村先生との出会いであった。
学生が遅刻せずに授業に出席して、せっせとノートを取る。同じように私もこの本を読みながらノートを取りたい。そんな気持ちで読んだ。
講義を授けると言うことは大変な労力が伴うことだと思う。大学だから、1回90分の授業だろう。この90分の講義のために北村先生はおそらくその倍以上の時間をかけて準備をしているはずだ。
2年間教壇に上がられたと言うことはいったいどれほど下調べや準備のために時間を費やしたのだろうかと考える。そう考えながら読むと一層深い。
先生だけがしゃべる単なる講義で終わらず、ゲストの人選も魅力的。天野慶さんは注目したいと思う。新潮社と講談社の編集者の方も面白い。
しかし、私としては里見ク(さとみとん)の「椿」、そして塚本邦雄の「晝戀(ひるのこい)」を北村先生や教室の学生たちと一緒に、あたかも教室にいて読んで聴いて語り合えたかのように思えたことが何よりもうれしい。
北村先生はこう言っています。「読むことも重要な表現です。」
これは私には励ましのようなひと言に思えます。 「いかに読むか。そこから、喜びをすくい取ってこられるか。」なるほど。合点承知の助。
2009年03月17日 (火) 17時42分
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