From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]
2004年 講談社刊
「ぼんくら」のおしまいに幽霊が登場します。なんとお徳はその幽霊を飴湯をかけて追い払ってしまうんです。白足袋を履いていたし、逃げていってしまったのだから幽霊でも何でもない、その正体は明らか…。
この幽霊が「ぼんくら」の続編である「日暮らし」では重要な役割を担っていました。
宮部作品ではたびたびこういう幽霊のようなミステリアスな要素をとても上手に扱っています。読みながら思うのですが、電気も電話もテレビもラジオも何にもない時代なんだなぁと思い新たにさせられるようです。そう、幽霊と言うだけで、灯りといえばロウソクしかないようなほのくらい夜の闇が頭の中に浮かんでくるのです。
そして幽霊とはまったく対照的な昼間の人々の生活が描かれています。作品のほとんどが、一日一日を積み上げていくような日暮らしの生活をしている者達の話です。 佐吉とお恵のなれそめから暮らしぶりが初々しい。お六の明るさ、けなげさ。お徳のおかずが美味しそう。弓之助の従姉(いとこ)のおとよの天然ぶり。まだまだあります。
弓之助にだいぶ助けられているとはいえ、井筒平四郎をもはや誰もぼんくらなどとは思わないでしょう。言動に風格も感じられます。
この「ぼんくら」「日暮らし」の作品の味わいはとても心地よかった。出来れば4冊一息に読むのが一番気持ちよい読書法だと思います。是非お勧め。
2008年12月27日 (土) 10時31分
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