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[508] 三田 完 「俳風三麗花」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2007年 文藝春秋刊

本作品は平成19年度前期直木賞の候補作となり、「吉原手引草」「玻璃の天」「赤朽葉家の伝説」「夜は短し歩けよ乙女」「まんまこと」「鹿男あをによし」と言ったそうそうたる作品と堂々と肩を並べ、受賞レースを競った。結局本作は賞には漏れたが、大いに世間の耳目を集めることになった。

と、言いたいのだが、それほど評判にはなっていないような気がする。この「俳風三麗花」というタイトルがどうも地味だ。そしてレビューでどなたかも書いていたが、カバーのデザインが「なんだこりゃ」である。

しかし読んでみて驚愕した。驚いたのである。

わが敬愛する北村薫さんの描く小説の世界に別の入り口から足を踏み入れたような感覚だった。途中で私は実際に声を出して驚いた。もちろん嬉しい驚きだった。

時は昭和7年。あの「街の灯」の導入と同じ。そして謎解きこそ無いが、主人公が若き女性で俳句に精進し、その指導をするのが数学者でもある孤高の俳人。これも「円紫さんと私」の構図を思い出してしまう。
但し本作では若き女性が3人登場するので、そっくりひそみに倣うというわけではない。

そして句会の描写が本当に素晴らしい。俳句をひねり出し、そして互選する。これが実にスリリングでときめきの時間になる。「ふらここ」が出てくるし「山眠る」も出てくる。こんなところで待ち伏せされるとは。

正岡子規も高浜虚子もシェークスピアも顔を出す。なんと浅草の料亭「草津亭」も「都鳥」も実名で登場する。

作品の舞台である昭和8年の暮れには明仁殿下がお誕生になり、7万の東京市民が提灯行列をしてお祝いをするという描写があるが、私の頭の中ではただひたすらその頃の東京の町並みが鳥瞰図のように広がっていく。

もうここまで北村薫さんの作品をなぞるようにしてレビューを書いてしまったのだから、開き直ろう。

この時代にベッキーさんも英子も同じ空気を吸って生きていたのだ。そしてこの物語の主人公たちが句会で静かな火花を散らせている時、ベッキーさんや英子たちは軽井沢にいたのであろうと想像する。

ノスタルジックな雰囲気はもちろんある。女性の言葉遣いが違うのだ。手紙の文章が歴史的仮名遣いだ。読んでいる内にどんどんセピアカラーに染められていく。

しかしいつまでも穏やかな時代の雰囲気を楽しんでばかりはいられない。着実にこの国は戦争へと向かっている。暗い影が少しずつ広がってゆく。

歴史を知り得ているだけにこの物語がどういう展開をしていくのかが本当に気になってしょうがない。作品としてはまとめられて完結しているが、この物語の続編、いや後日談でも良い、何とか読みたい。そんな気持ちになっている。

2008年03月09日 (日) 09時34分


[507] ヴィカス・スワラップ 子安亜弥訳「ぼくと1ルピーの神様 」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2006年 ランダムハウス講談社刊

ネット上で、本好きさんたちにとても評判がよい作品です。作者はインド人で本職は外交官だと言うことですが、なかなか優れた作品を書いてくれました。

私の住む台東区には御徒町というJRの駅があります。その周辺は実はジュエリータウンになっています。宝石や貴金属を扱う店が密集しているんです。アメ横のそばです。その周辺ではとても多くのインド人を見かけます。インドからやってきてそこで宝石の商売をして家族と共に日本で暮らしている人が沢山いるのです。

彫りの深い顔立ち、そして浅黒い肌。女性はサリーを着ている人も見かけます。皆なかなかの美人さんです。沢山ダイヤモンドが取れる国なのかなぁと思い、それならばインドの人はお金持ちの人が多いのかしらと思ったこともありました。

しかし、10億の人口を抱えるインドは大変な貧富の差があり、激しい格差社会であり、かつての身分制度の影響も消えずに残っているなど多くの問題を抱えている国です。

さらには宗教上の対立や国境紛争による隣国パキスタンなどとの戦争もあり、まさに内憂外患の状況となってます。悲しいかな、当然の如く多くの都市にはストリートチルドレンと呼ばれる恵まれない子供達も沢山います。そのひとりがこの物語の主人公です。

しかし面白い物語です。構成も素晴らしいです。最後まで読むとあっと驚きます。そして途中に挟まれている話は悲惨で辛くなる話も出てきますが、印象に残るのはカラリとした主人公の持つ明るさでした。

とにかく物語として大変に面白い。インドがどうのとか格差社会がどうのとかそういう理屈抜きで本当に楽しめます。
是非、お薦めの作品。インドが愛おしい国の一つになると思います。

2008年03月05日 (水) 09時31分


[506] 高野 和明「6時間後に君は死ぬ 」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2007年 講談社刊

登場する女性の名前を順番に書いてみます。
「6時間後に君は死ぬ」原田美緒(みお)
「時の魔法使い」浅岡未来(みく)
「恋をしてはいけない日」  美亜(みあ)
「ドールハウスのダンサー」香坂美帆(みほ)
「3時間後に僕は死ぬ」????
「エピローグ 未来の日記帳」登場人物不明

ヒロインの名前が「美」で始まってるのがわかります。短編集ですがつながりがありますので短編連作集と言うことになります。このヒロインのネーミングを見ていてすぐに思い出した作家がいます。北村薫さんです。

「スキップ」、「ターン」、「リセット」に登場するヒロインが真理子、真希、真澄。どことなく似てます。そしてしかも北村薫さんの作品も不思議な時の流れの中で、もまれながらも懸命にヒロインたちが生きていくというストーリー。これらの北村作品も未読の方には是非お薦めします。

高野和明さんは「13階段」で2001年に江戸川乱歩賞を受賞しています。その作品が出版された時に、江戸川乱歩賞の選考委員で帯に推薦文を書いた作家が5人います。赤川次郎さん、逢坂剛さん、北方謙三さん、宮部みゆきさんそして北村薫さんです。この時は選考委員が満場一致で選んだので、賞賛する選考委員の作家はまだ他にもいたのだと思いますが、北村さんもべた褒めしています。

さて、本作は読後感が実に良かったです。特に「時の魔法使い」「恋をしてはいけない日」「ドールハウスのダンサー」の三作は私にはこの上なく心地よかったです。感動的でした。とにかくひたむきな姿勢と前を向いてしっかり歩いていこうとする女性のきりりとした美しさが良く書かれてます。

時を忘れて本を読むことに没頭してしまいました。

2008年02月29日 (金) 23時11分


[505] 佐藤 多佳子「一瞬の風になれ 第三部 -ドン-」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2007年 講談社刊

やっと(2007年10月)「ドン」を読みました。「イチニツイテ」を読んだのが2007年6月の始め、「ヨウイ」を読んだのが、2007年8月の中頃です。でも第一巻を読み始めてからの数ヶ月間は「一瞬の風になれ」を待ち続けて、とても幸福な数ヶ月間だったと思います。

この作品はとにかく、色々な効能があります。

まず、肩凝り腰痛。これに効きます。私の場合ですが。読んでいる間は調子がよいです。

そして、精神的なストレス。これにもよく効きます。私の場合ですが。読んでいる間はもちろん、読み終わった後も、仕事の納期で焦っている心がグリグリグリっと癒されます。(仕事せっせと片づけてから読めば、さらにリラクゼーションが深まります。)

そして生きる希望をなくしている人には飛び抜けて高い効能を示します。だって、まだまだ希望を持って生きている私でさえ、さらにワクワクと希望が湧いてくるのですから。

これほど体に良い小説はなかなかありません。一家に全三巻揃えて、常備薬代わりに是非置いておくべきだと思います。

おっと、こぼれてくる涙を拭くハンカチか人によってはバスタオルも必要です。

2008年02月24日 (日) 10時43分


[504] 桜庭 一樹「赤朽葉家の伝説」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2007年 東京創元社刊

とても楽しめた作品でした。物語の非日常性に楽しめたと言い換えてもいいです。特に感動に心を揺さぶられるという訳ではないのですが、とにかく先を読みたくなります。そして期待を裏切らない、かつ予測を裏切る展開に、ニヤニヤしてしまいます。

物語の背景となる時代は1953年から始まり、2000年を超え現在まで続きます。一族の伝説を描いているというので、さぞ過去をひもとく話から語られるのかと思っていたら、比較的最近の話です。つまり現代史の範囲です。

作品の中には現代史上の出来事が沢山ちりばめられています。どちらかというと歴史の教科書と言うよりも、新聞の社会面のスクラップ記事を作者の興味の赴くままに取り入れたという感じ。

これはこれで上手く小説の装飾として有効に働いています。逆にこういった装飾をもし使っていなかったとしたら、この作品はまとまりがつかない物になっていたでしょう。

振り返ってみると、私の学生時代。歴史の授業は沢山受けてきましたが、意外と現代史はきちんと教えられてはいません。いずれも教師が3学期の末になると現代史をはしょってしまいました。

日本のことも、アジアのことも、中近東のことも、欧米のことも、戦後の現代史は教わっていません。学校では体系づけて教えられないのかなぁ。とにかく戦後の世界の歴史はもの凄い大量の情報によって形作られています。情報の洪水に巻き込まれて流されないように、その流れの方向を正しく把握してゆきたいものです。

あれれ、感想文というよりも雑感になってしまった。では最後に感想文らしいことをもう一言。この小説を忘れても「万葉」「毛鞠」というヒロインたちの名前は忘れないかも知れない。

2008年02月23日 (土) 09時34分


[503] 原 寮「愚か者死すべし 」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2004年 早川書房刊

早とちりしていたようだ。本作品が沢崎シリーズの最終作かと思いこんでいた。しばらくの間辛い思いをしていた。ところが本作品はシリーズ第2期の第一作だという。あぁ、よかった。

沢崎の虜になってしまっているので、私は偏りのない感想を書くことはもやは出来ない。
それ故もちろんこの感想に対する批判は受け付けない。 (^_^;)

やっぱり面白かった。作者の構想が固くまとまっているので、つまり作品の背骨がしっかりとして通っているので、小説としての出来不出来を超越している。

だから、やっぱり面白い。もう私はこのシリーズの虜になっている。これ以上感想を書き続けても、無条件「幸福」状態のでれでれ感想文になってしまう。

だがなんとしても最後に力を振り絞って一つだけ書き記しておきたいことがある。

探偵事務所の女性事務員が沢崎の一言で泣き出すシーンがある。私ももらい泣きしてしまった。
私にとってはこの作品のこのシーンを読んだだけでも価値があった。

2008年02月22日 (金) 09時08分


[502] 春江 一也「プラハの春」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2000年 集英社刊

春江一也さんの「上海クライシス」が大変面白かったので、ぜひ彼のデビュー作品も読みたいと思ってました。

この作品はチェコの「プラハの春」へのソビエトの軍事介入を臨場感あふれた描写で表現したもので、読み応えのある小説です。臨場感溢れた表現が出来るのは、その事件が発生した当時、日本国大使館員としてプラハから日本へ電信を送ったのが、著者である春江氏本人なのだからです。

ブレジネフを始め、当時のヨーロッパ共産主義国の首脳たちが実名で登場し憎憎しいほど独裁者振りを振りまきます。権力にしがみついてゆがんでしまっている共産党独裁体制。その冷酷な体制へヒロインが噛みつきます。

弱い立場であるのにもかかわらず、ヒロインの辛辣なせりふと鋭い指摘が一段と強調されて胸がすく思いがします。

このヒロイン、カテリーナに思いを寄せる主人公の堀江亮介は若き大使館員。大使館員としての立場上どこまでカテリーナを助けることが出来るのでしょうか。

40年前の出来事を私は歴史上の知識として知っていましたから、結末をある程度想像しながら読み進めました。がしかし、想像を超える激しい結末になってます。

作品中にも登場するクラッシックの名曲、スメタナの「モルダウ」は中学生の頃から耳にしていた曲ですが、是非聞き直したくなりました。
美しいプラハの街を流れるブルタバ川をドイツ語ではモルダウ川といいます。チェコ人であるスメタナは自分の曲にドイツ語の名前を付けています。

強国に周りを囲まれた小国の立場からなのでしょうか。チェコ語の呼び名を曲名にはしてません。

思い立って組曲「わが祖国」のCDを図書館で借りてきました。この組曲の中の一曲が「モルダウ」です。何とも言えない悲しみを感じる出だしから、力強さ、かわいらしさ、そして微笑んでしまうような旋律。何とも大きな流れを感じさせてくれます。

この川の名称一つとっても複雑で悲劇的な国の歴史を歩んできたチェコスロバキアですが、この作品を読んでチェコの人々の勇敢でそしてユーモアのある国民性にとても興味を抱きました。

2008年02月21日 (木) 08時45分


[500] ご意見をお聞かせください
From:ダイヤモンド2期 [関東/秘密]

各位
先日学士会館で故森先生の献杯時に今後のOB会開催について提案がありました。
「各地にOBがおり、そのOB主催・後援で旅行をすることを企画したらよいのでは」
というものです。
同様な意見は、横浜分会でもでており、更にグルメの会もあっても良いのではないか、というものです。

このようなご意見がほかにもありましたら、ご提案ください。
また、これらの音頭をとりたいとか、どこにいる誰さんは、お願いできそうなどご教示ください。

今後森ゼミをさらに盛隆するために、貴重なご意見をお待ちしています。

2008年02月12日 (火) 00時24分


[501]
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

学士会館はとても素敵な雰囲気のレストランでしたのでそれぞれのテーブルで色々なお話が出たことだと思います。

私は「送る会」でのご子息のお話に聞き入ってしまいました。もし、本年年末のOB会でご子息もしくはご家族のどなたかがご列席いただけるのでしたら、これほど森先生を偲ぶにあたり心強いことはないだろうと思いました。

ご子息が「送る会」でお話になった森先生の若き日のエピソードが余りにも強烈でした。すぐに思い出したのは「人生の忘れ物」を読んだ時の強い衝撃です。

それ以来妄想しております。いざ、ご家族のもとにはせ参じれば、これまで私の知り得なかった森先生のお話を聞けるのではないかという妄想です。

で、結論です。

もし諸条件が許容範囲で、ご家族がご参加いただけるのであれば、その節はご家族にOB会にご出席していただき、森先生の思い出話をそれこそたっぷりとお聞かせ願いたいものだと望んでおります。

ただし、無理にご参加していただく訳にはまいりません。ですからいつの日にか叶えば、と言うことであります。

2008年02月13日 (水) 23時48分


[499] 有川 浩「海の底」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2005年 メディアワークス刊

小学生の時、ドキドキしながら見ていた実写ドラマがありました。当時最先端の特撮技術を駆使して作られていた「ウルトラQ」と言う空想科学ドラマでした。

例えば南極基地に巨大なペンギンとアザラシが一緒になったような生物が出現したり、大都会にとてつもなく大きな植物が生えてきてビルまでも崩壊させるほど成長してしまったり、お金が大好きな少年がいつしか、がまぐちのような怪物に変身してしまったりと、奇想天外な物語が毎週放映されていました。

ありえない話ばかりでしたが、物語を語る上でそれなりにつじつまが合うような理屈が示され、子供心にはそれなりに感心して、納得までしていたような気がします。

本作品に登場するのは巨大化したザリガニのような生物です。これがわんさかわんさか登場します。
どうしてこんな設定なんだろうと、それほど深く悩まなかったのは子供の頃に「ウルトラQ」を初めとする特撮怪獣番組を沢山見ていたからでしょうか。なんだか懐かしいような気持ちになって読み進めていました。

しかしこの作品はその巨大生物との戦いの物語とはべつにもう一つの物語も同時進行で語られています。ザリガニのおかげで潜水艦に閉じこめられてしまった人たちがいるのです。こちらの物語もなかなか巧に作られています。

むしろこちらのお話が本筋です。作者のみずみずしい感性が上手く筆に乗って大変興味深いお話になっています。

読み始めると止まらなくなる話。そういう面白い話は沢山読んできましたが、この作品もその中の一つになりました。

2008年02月10日 (日) 09時54分


[498] 松井 今朝子「吉原手引草」
From:じゅりんた(8) [関東/51歳から60歳]

2007年 幻冬舎刊

2007年前期直木賞受賞作であること。そして遊郭吉原を描いた小説であること。

この2点を理由として私個人的に引っかかる物がある。のどの奥に刺さった小骨のようにもどかしい。簡単に小骨が外れない。そのうち私の心が湾曲してひねくれだすのだ。つまり、なかなか行儀良くレビューを書こうという気にさせてくれない。

松井さんには縁も恨みもないが、直木賞の選考委員には言いたいことがある。何を言いたいかはここでは書かない。ただ一言だけ言っておく。私は17年近く北村薫さんの作品に心惹かれて北村ファンになり、今後も期待し応援し続けていこうという気持ちを持っている。これだけ。
わかってもらえる人にだけわかってもらえればよい。

もう一つ、この話は吉原遊郭の物語だ。松井さんの絶妙な筆致で吉原の様子がつまびらかにされる。十数人の登場人物が江戸の時代から蘇って、彼らの語る言葉がそのまま文章に起こされているような錯覚を覚える。

これは一人の素晴らしい書き手がひとりで書き上げた文章なのだ。小説家とはそんな風に素晴らしい文章を書いて多くの読者に感銘を与える。

大変興味を引かれる作品であった。
作者の巧みな技だが、主人公だけがただひとり登場しないのだ。
葛城花魁(かつらぎおいらん)と呼ばれるとても魅力的な女性こそが主人公なのだが、彼女にまつわる人たちが彼女を語るのみで、主人公の彼女が登場しないのだ。

読後この手法は極めて正しい手法だと改めて思った。なぜならば、主人公が自らの言葉で、嘘や偽りを述べなくてすむのだと言うことに気が付いた。

この作品は吉原を舞台とした作品だ。つまりどんなに魅力的な花魁が登場して、その花魁を主人公に仕立てたとしても、そもそも遊郭という舞台が悲惨なのだから、その呪縛から逃れられない。

吉原で働く女性のほとんどが、幼い頃に家族と別れている。わずかな金で身を売られた少女たちなのだ。作り話でもなんでもない。実際の話だ。

想像出来るだろうか?自分の姉が、妹が金で売られて吉原へ連れて行かれる。自分の娘を女衒に売り飛ばす。花魁はみんなそうやって売られてきた娘たちの変化した姿だ。こんな事が当たり前だったのだろうし、実際にあったこと。

吉原という遊郭は実在していたし、今でこそ町名を変更してはいるが、未だに風俗が売り物の街として残っている。

悲しい話よりも、面白おかしい話の方が誰もが好むことは知っている。なおかつ、吉原遊郭で生きていた人々が強くたくましく生きていたことも見聞きしてきた。

でも私はある先輩のどうしても忘れられない記憶がある。その先輩は私とは父親ほど年が離れていたが、吉原がどれほど悲惨な街であったかを若き日の私に語ってくれたのだ。
言葉数は少なかったが、逆に悲しい話が却って強く印象に残った。

その先輩は「浅草文庫」と呼ばれる資料館の館長をしていた人だった。すでに亡くなって月日が経っているが、忘れることの出来ない尊敬すべき先輩だった。

作品自体は多くの方から賞賛を受けているとおり、私も素直に拍手を送りたい。送りたいのだが、でも私はどうしても、こだわる気持ちをまだぬぐい去れずにいる。

2008年02月09日 (土) 09時36分







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