From:じゅりんた8期 [関東/51歳から60歳]
文芸春秋 2006年刊
私の学生時代の時のことです。外国語の試験でカンニングが見つかり学校の教務課に連れて行かれた同級生の子がいました。その科目の単位は失い、さらに他の科目も単位が認められずその年度は落第になりました。つまり卒業ができなかった。
厳しい処置だと思いましたが、その出来事を目の当たりにして自らの身が引き締まったような覚えがあります。 落第したその学生はもちろんがっかりしたでしょうが、学校から連絡を受けた郷里の親御さんもさぞや無念であったろうと思います。
その記憶があるからと言うわけではありませんが、カンニングには良いイメージを一つも持ってはいません。
この作品を読み終わって感じたのはどうしようもなくダメな作品だなぁと思ったことです。救いがたい。 なぜならこの作品はカンニングを肯定している作品だからです。
どれほどユーモラスな記述があろうと、どれほど友情の温かさや青春の心のときめきを伝えていようと、感動的な真相を知らされたとしても、無意味です。
いっそどろどろとした光なき暗黒の世界を描くならわかりますが、カンニングを使って爽やか青春ストーリーはありえないと思います。
助手の鈴村恭子だけが一条の灯りです。黒田さんの作家としての見事な手腕をふるって是非カンニングをしない少女を描いて欲しいと思います。
2011年03月04日 (金) 17時57分
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