「ふたり」は、

幼なじみの「ふたり」が繰り広げる恋愛ｽﾄｰﾘｰです。

どきどきしながら、読んでください。


<作品、人物紹介>

主人公§　小村さえ
　　…おてんばで優しい。恋愛は不器用。

幼なじみ§　原　啓斗
　　…口は悪いけど本当は優しい。頼れる男の子。

友だち、その他§

　鈴木　蘭
…さえの友だち。大人っぽくて、恋愛経験豊富。

　坂田　剛
…啓斗の友だち。楽しい人気者。蘭が好き。

　小村　智美
…さえのお母さん。

　原　幸枝
…啓斗のお母さん。

...ﾌﾟﾛﾛｰｸﾞ


―ふたりは、いつも一緒だった。

学校の日も、夏休みも。



いつから、こんなに離れてしまったんだろう。

...「あの頃」


あの頃…。

そう、まだ私たちが幼い時。
確か、２歳ぐらいだったって、お母さんに聞いた事がある。



「さえ。初めてのお友達ができて、良かったね。」

かすかに記憶に残る、お母さんの言葉。


あの頃から、私の恋は始まっていたんだ。

...「思い出」

小6の冬。

まだ、私と啓斗は仲が良かった。
いつも一緒で、私は啓斗にほのかな恋心を抱いていた。

「さえー！帰るぞー。」
「うんっ！ちょっと待っててー」

家の近かった私たちは、いつも一緒に帰っていた。

「蘭ごめん！相談、また今度でいい？」
「うん。平気〜☆またねっ」

私がこんな事言ったのは、
今日蘭に(相談乗ってもらってもいい？)って言われていたからだ。

「ごめんね、またね〜！」

私はそう言って、啓斗の元へ走った。

「よかったのか？」
「うん。平気だって。」
「そっか。なぁ、鈴木って今好きな奴とかいるのかな？」
「…えっ？」

突然の、啓斗の言葉にドキっとした。
―もしかして、啓斗は蘭の事…？

「いや、剛がさ。鈴木の事好きらしくて。」
「あっ、そーゆー事！今はたぶんいないと思うよ。」
「いないか〜。明日剛に言ったら大喜びするぞ(笑)」
「(笑)だね☆」


―いつもと変わらない日。
思えば、これが啓斗と普通に話した最後の日だった。

...「疑問」

次の日、いつも迎えに来てくれるはずの啓斗が家に来なかった。
ときどき、寝坊して来ない時があったけど、その日は少し変だった。

(どうしたんだろ？)

そう思い、啓斗の家へ向かった。
ｲﾝﾀｰﾎﾝを押すと、啓斗のお母さんがでてきた。

「さえちゃんじゃない！どうしたの〜？」
「あの…啓斗は？」
「啓斗なら学校に行ったわよ？さえちゃん家、迎えに行かなかったの？」
「はい…。でもすれ違ったかもしれません。家、行ってみます。」

作り笑いをして自分の家へ向かった。
嫌な予感がする。

―その嫌な予感は、見事的中。

「啓斗〜♪おはよっ★」
「おはよ！蘭！」

…蘭？どうして蘭がいるの？

「それで、相談って何？」
「実はさ…」

遠くなる声を聞きながら、私はただ呆然をするしかなかった。


(どうして？)

...「悲しみから」


その日からずっと、啓斗とは話してない。

話しかけても無視されて。

いつも一緒の登下校も、
いつも一緒だった夏休みも。

何もかもなくなった。
悲しくて、泣く毎日。

「どうして無視するの？」
って聞いても何も言わない。

啓斗が蘭と付き合い始めたのも、私を避けるようになってからだった。
(啓斗は初めから、蘭が好きで、それで私を利用したんだ)
なんて事も、思うようになっていた。



あれから、もう3年。
私も、啓斗も中3になった。

部活も引退。受験勉強の日々。

―ある日。
誰かの、こんな話を聞いた。

「原くんって、好きな人いるんだってー。」
「え？だって原くん、鈴木さんと付き合ってるじゃーん！」
「そうなんだけど、他に好きな人がいるらしーよ。」

(……そんな事、ある訳ないよ。)
と、最初は信じていなかった。

あの時、啓斗と再び話すまでは。