山姥の二面性
オノケンさんの山姥はたぶん石燕の「百鬼夜行図」だろうと思います。ちーママさんのは知りませんが、いずれも山姥を妖怪としてとらえている絵です。
山姥のイメージはたいていこんな風に鬼女、山の中の妖怪として描かれているんですけど、もう一つイメージがあって、山の幸、豊穣の象徴となっています。山に入った者に福をさずける神です。
上路の山姥はこちらのイメージです。
山姥の踊り岩などあって、月夜に上路の山姥はその岩に登って舞を舞ったという伝説が残っています。
そして世阿弥はこの伝説をもとにして、能「山姥」を創作したわけです。
オノケンさんがこれでは「乳母」だと思うのも無理はなく、山姥は金時を育てたという伝説がありますからね。
足柄山だけでなく、全国に山姥に育てられた金時がいます。
上路の山姥にも、金時がお手玉にしてあそんだ岩とか、ぶらんこにしてあそんだ藤づるなどの言い伝えが残っています。
でも上路の山姥伝説の要は、山姥さまが銭くれるとか、山姥に供物を捧げる祭りが残っている点で、金時を育てた云々はあとから付け加わった伝説のようです。
そして、石塚裕康は上路の山姥にオリジナルの解釈を加え、異国の漂流者とみて、この山姥像を刻んだのですって。これはちょっとおどろきでした。
なるほどよく見ると、日本人の顔ではないのですよ。でも小学生の時はそんなことにはまったく気がつきませんでした。
私はこの山姥の足が好きなの。大地を踏みしめている堂々とした足が。