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[784]

Dr.安藝

投稿者:あーもんど

2003.07.01更新 暮らしと生活のトップへ
Dr.安芸 by Almond

私は1965年頃に17歳(高校3年)で発病した。
足が前に出にくくなり、歩くと脚の前の 筋肉が痛くなり疲れた。校庭でしゃがむと踵が地面についたままなので変だなと思っ たのを覚えている。
大学に入学し通ってはいた。
朝起きてしばらくは普通に動けるが、うちを出る頃には もう歩きにくくなっていた。
中央線、地下鉄を乗り継ぎ、駅で降りる頃はとっても不安だった。歩いて5分ぐらいの 学校にたどり着けるだろうか?
クリニックや病院の整形外科に いくつも行ったけれど、何ともないと言われるか、偏平 足のせいと言われたことも。
脊椎が癒着していると言われたこともある。
それでたくさ んのお薬を処方され、偏平足用の中敷を作ったことも、ただ入院していたこともある。
徐々に字も書きにくくなっていた。
4年になって、体育の授業を免除してもらおうと 大学の診療所に行った。診療所の医師 は、私の歩き方を見るなり「すぐに神経内科で診てもらうように」と言った。
そのとき 初めて、神経内科の存在を知った。1969年のことだ。
その医師が書いてくれた紹介状を持って虎ノ門病院に行った。21歳になったばかりだ った。
入院して脳血管造影(首の血管に造影剤をいれた)などの検査をした。CTやMRIのな かったころだ。
診察室でも狭い中では普通に歩けたし、症状も出揃ってはいなかった。
安芸先生は当時、神経内科の部長で 私に検査結果について説明なさった。「今回(私の 病気は)検査の網に引っかからず、何の病気か分からなかった。引き続き観察しま す。」とおっしゃった。
それまでの医者とは全く違い、“分からなかった”ということを 正直に認められたのだっ た。
そのときから私は安芸先生に大きな信頼を寄せることになる。

それでもこの時期、原因が分からないまま、歩行困難を抱えて通学し生活するのはと ても辛かった。
25歳のとき(その2年前に大学の同級生だった夫と結婚していた)やっと診断がつ き、お薬を飲み動けるようになって、夫も私もすごく喜んだ。L-ドーパが単剤だったの で1日3グラムものんでいた。
診断がついたときも安芸先生は私に「あなたには長い間ご苦労をかけて」と謝られた。
先生にはじめて会ってから4年後だった。
私は絶望的になって、定期的には通院してい なかったので「私が病院に来なかったから」と返事したのを思い出す。
それから長い間にいろんなことがあった。
ノイローゼになったことも、スペインに初め て海外旅行に行ったことも 夫が敦賀に単身赴任していたこともある。
スペインに行くと話したときに 先生はこうおっしゃった。「スペインというとセルバン テスの国です。私の恩師が医者になろうと思うものは医学の勉強の前に人間としての勉 強が必要だと言われた。『ドンキホーテ』を読むようにと。それで私は読みました。」
私はいまだに読んでいない。はずかしい。
夫の単身赴任のときは、先生の前でワーワー泣いた。
先生は一生懸命に慰めてくださっ た。
「手紙が書けるじゃありませんか」とか、「日本海側を通って旅行が出来ます よ」とか。
それでも私が泣き止まないので「戦争が終わってシベリアから帰ってき たら私の婚約者は亡くなっていたのですよ」と。
私に呆れてショック療法を試みられ たのだと思う。
それでもそのあとでお会いした時、先生は「いまどきこんなに純情な奥様がいるとは感 動しました。ご主人が羨ましい」と言ってくださった。やさしい先生だと思う。
私が「時々口が回らない」と訴えた時には、私をちょっと見て「よく回っています」 とおっしゃった。
思い出しては笑ってしまう。
先生が私の主治医だった30年(時々中断はあったけれど)、先生は、いつも私を支えてく ださったと思う。先生にお会いすると、不安はいつも安心に代わった。
先生は神経内科の草分けとも言える方で、医学以外の著書もたくさん出版された。クリスチャンで平和思想家でもある。

10代で発病し暗い気持で絶望しきっていた私は、医師が患者を対等な人間として待遇す ることが、患者にとってどんなに大切なことか、プライドを取り戻して生きるためのど んなに大きな力になるかを安芸先生から学んだと思う。


原稿 2001/5/8作成 2003.06.01介護・福祉から移行
http://parkinson.moo.jp/dokusha/16dr_aki.html 2018/01/18 11:14 3 / 4ページ


http://parkinson.moo.jp/dokusha/16dr_aki.html 2018/01/18 11:14 2 / 4ページ



http://parkinson.moo.jp/dokusha/16dr_aki.html 2018/01/18 11:14 1 / 4ページ

(2018年01月19日 (金) 12時34分)

[785] 「Dr.安藝」について

投稿者:あーもんど
この文章は私が書いた手紙以外の殆ど初めてのものだ。
今読み返し手を入れたくなったが、句読点と改行するに止めた。

(2018年01月19日 (金) 20時05分)

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