鳥飼賢(けん)はマンションンの一室でノートパソコンを開いていた。賢はブラインドタッチで検索エンジンのサイトを開くと『鳥飼優(ゆう) 殺人事件 2009』と入力した。検索結果の一番上には2009年の記事が表示された。 『東京で兄弟が襲われる 7月5日東京で兄弟が住むアパートに不審者が侵入し、そこに住む兄弟二人が襲われた。うち兄・鳥飼賢さんは重症、妹・優さんが死亡した。』 賢が記事を読んでいるとマンションの外でパトカーのサイレンがした。それと同時に賢のスマートフォンに着信音が鳴った。賢はディスプレイを見ると通話をタップした。電話の相手は真っ先に賢に言ってきた。 「すぐに降りてきてくれ。事件だ。」 賢は素早く出かける準備を整えると部屋の鍵を確認してマンションの外に出た。外では制服を着た警官とスーツ姿の警部が立っていた。 「こんばんは。江戸川警部。」 賢はそういいながらパトカーに乗り込んだ。 賢が連れて行かれたのはとある豪邸だった。江戸川警部に付き添われていると賢は一般市民にも関わらずにすぐに中に通された。 「現場はその部屋だ。」 江戸川警部の指さす部屋に賢が立つと、江戸川警部はコンビニで買ったコーヒー牛乳を賢に差し出しながら言った。 「これで犯人が捕まるなら安いものだ。」 賢はコーヒー牛乳のパックにストローを指すと一口飲んで部屋の中へと入った。 部屋の中では鑑識があちこちを調べていた。部屋の真ん中には肥満気味の老人が頭から血を流して倒れていた。賢は鑑識の中に知り合いを見つけるとコーヒー牛乳のストローをくわえながら声をかけた。 「こんばんは。米村さん。」 米村はこの部屋でただ一人の女性の鑑識だが、この中では一番優秀な鑑識だった。米村は賢の姿を見るとほかの鑑識を一時的に部屋から出した。そして、賢を死体のもとへと案内した。 「関係者は全員引き留めてくれていますよね。」 「それは江戸川警部の仕事。ちゃんと引き留めているから安心して。それよりも仏はここよ。」 米村に言われるまでもなかったが賢は死体の前に立つと目をつむった。 賢が目をつむるとある光景が浮かび上がってきた。今、死体となっている老人が自分の机に上のブランデーをコップに注いでいた。そこに背後から何者かが忍び寄っていた。どうやら女性、それも家政婦のようなエプロンをしていた。侵入者は入り口でスリッパを脱ぐと老人に忍び寄って近くの灰皿をハンカチでつかむと老人をそのまま殴り倒した。老人は即死のようだったが、飛び散った血の一滴が侵入者の足の甲に落ちた。 賢は目を開けると江戸川警部を呼んだ。 「江戸川警部、この屋敷に家政婦はいますか。」 「三人ほど雇っているそうだ。今日は全員そろっていたようなので見張り付きで引き留めてある。」 「家政婦を全員呼んでください。」 江戸川警部は歓喜の声を上げた。 「今回は早かったな。」 「はい、今回の事件は突発的な物です。この事件、とてもよく見えました。」 江戸川警部は部下に指示をするとすぐに家政婦三人は部屋へとやってきた。すると賢は一人の家政婦を指さして言った。 「犯人はあなたですね。」 賢に指を指された家政婦は動揺しながら即座に反論してきた。 「どうして、私が犯人扱いされなくちゃいけないんですか。刑事さん、この子は誰ですか。」 江戸川警部は頭をかきながら答えた。 「私は刑事ではなく、警部です。それに彼は捜査協力者です。最後まで話を聞いて納得していただけなければ彼にはおかえり願いますよ。」 賢は簡単な推理を始めた。 「被害者を殴ったのはあなたですよね。はっきりと見えましたよ。動機はおそらく突発的なものでしょ。」 犯人扱いされた家政婦は反論した。 「見えたって何のことよ。それに証拠がないわ。」 「証拠ならあります。スリッパを脱いでもらえますか。」 家政婦は動揺してスリッパを脱ごうとはしなかった。仕方なく、賢は話を続けた。 「あなたが被害者を殴ったとき、一つミスを犯しました。血痕が足の甲に飛んできてしまったのです。あなたは靴下をはいている。被害者の血痕が靴下についていれば決定的な証拠です。」 それでもスリッパを脱ごうとしない家政婦に向けて今度は江戸川警部が追い打ちをかけた。 「どうなのですか。拒否されるようでしたら認めたと判断させてもらいますよ。」 家政婦はそのまま崩れ落ちた。脱げたスリッパの下には賢の言うとおり血痕がついていた。 家政婦は犯行をすぐに自供した。江戸川警部は部下に連行を命じると賢に言った。 「今回もお手柄だったな。」 「ところで江戸川警部。優の事件の事は何かわかりましたか。」 「お前もしつこいな。何かわかればすぐに連絡する。約束だ。今日はもう帰れ。」 江戸川警部は部下に賢を送るように指示した。賢はパトカーに乗ると現場を後にした。 賢を見送る江戸川警部のもとに新米の警官がやってきていった。 「江戸川警部、一般市民を捜査中の現場に入れるなんてご法度ですよ。」 江戸川警部は笑いながら言った。 「お前は知らないんだよ。あいつの能力を。」 「能力?」 「あいつは『殺された瞬間が見える』んだ。それも突発できてあればあるほど明確にな。もし、『見えなかった』としてもあいつの推理力はたいしたものだ。証拠を集めて『瞬間を明確にしていく』ことができるんだ。」 新米警官は江戸川警部にたてついた。 「信じられません。そんなの。」 「俺も最初は信じなかった。あの事件まではな。」 2009年8月、鳥飼賢はある病院に入院していた。一か月の懸命な治療で賢の怪我も回復に向かっていた。賢は一か月前、自宅に何者かに押し入られた。そして、侵入者は妹の優の命を奪っていった。ちょうど帰宅した賢も襲われて重傷を負った。しかし、警察の捜査では犯人はおろか容疑者すら浮かび上がらずに捜査は難航していた。賢は数日の昏睡状態に陥った。そして、妹の死を知らされた時にはショックを受けて今でも病院専属のカウンセラーにかかっていた。もともと、賢の両親は賢が幼いころに他界していた。そのため、妹の優だけが唯一の家族だった。賢は今でも犯人を憎んでいた。 賢が自販機でコーヒー牛乳を買っていた時である。突然、パトカーがサイレンを鳴らしながら病院にやってきた。賢をはじめとした患者や看護師も何事かと外を見始めていた。 江戸川警部は通報を受けて病院にやってきていた。病院の院長室で院長が首つり自殺を図ったというのである。江戸川警部たちは副院長の案内で院長室の扉を開いた。そこには通報通り院長が首をつっていた。どうやら、机に備え付けられている椅子を踏み台にしたようだった。 賢はコーヒー牛乳を飲みながら今日のカウンセリングに向かっていた。賢はカウンセラーの部屋の前に来ると扉をノックした。明るい声で返事があると賢はコーヒー牛乳を加えたまま部屋へと入っていった。中では女性のカウンセラー片岡が待っていた。片岡は賢のコーヒー牛乳を見るとまた注意を始めた。 「賢君、病院内で飲み歩きしないの。これで何度目の注意になるかわからないわ。」 賢はそういわれると残ったコーヒー牛乳を一気に飲んだ。 「これで飲み歩きになりませんよ。」 賢はそういうとコーヒー牛乳のパックをゴミ箱に捨てた。賢は好奇心で片岡に尋ねてみた。 「パトカーが来ているみたいですけど何かあったんですか。」 「あなたはそんな事気にしなくていいの。」 片岡にそういわれると賢はおとなしく今日のカウンセリングを受け始めた。 カウンセリングが終わるころには時計はお昼を指していた。賢は病室の病院食よりも食堂の方がましと考えていた。そのため、食堂に向かった。賢はおススメ定食を注文すると席に着いた。すると、賢の後ろにスーツ姿の男が二人で座るのが見えた。どう見ても病院の関係者には見えなかった。賢はさりげなく聞き耳を立てながら定食を食べていた。 「それにしてもどう見ても自殺ですよあれは。院長ともなれば、悩みも多かったんでしょ。」 もう片方のスーツ姿の男が言った。 「お前、捜査中の極秘情報をペラペラしゃべるんじゃない。」 「すみません。江戸川警部。」 そこまで二人は話すとそれからはずっと無言だった。 賢は夜になっても眠れなかった。どうやら、警察は昼間のうちに現場検証を済ませて撤退したようだった。それでも賢が引っかかっていたのは院長が自殺したことだった。賢が知る限りでは院長には自殺する理由は見当たらなかった。しかし、食堂で盗み聞きした通りに悩みを抱えていたのかもしれない。それでも、賢には院長が自殺するほど追い込まれているようには見えなかった。院長は賢の手術をしてくれた命の恩人であった。賢の退院を楽しみにしていた院長がそれを待たずに自殺はしないというのが賢の考えだった。賢は決意するとベッドを抜け出した。 賢は夜勤の看護師の目を盗んで院長室に忍び込んだ。電気を付けなければ真っ暗だったが、電気をつける訳にはいかなかった。賢は手探りで院長の机までたどり着くとそこに手を突いた。その時だった。頭の中に何かのイメージがわいてきた。賢は試しに目をつむってみると院長が首を吊っている光景が見えた。しかし、正確には首にロープをかけて椅子に座っている光景だった。キャスターのついた椅子の下からは何かが煙を立てていた。賢は目を開けるとつぶやいた。 「どうなっているんだ。どうして院長の最期が見えるんだ。」 次の日、カウンセリングで院長室での経験、見た光景を片岡に話した。片岡はすっかり言葉を失ったようだった。どうやら賢のような例は一度もなかったようだ。呆然としている片岡に賢は尋ねた。 「もし、院長が自殺でないとしたら誰かに殺されたことになります。心当たりありませんか。」 片岡は我に返ると賢の質問を一蹴して今日はベッドに戻るように言った。 賢は担当の看護師にもさりげなく情報収集をすることにした。担当の看護師が来ると賢は真っ先に聞いた。 「院長先生、亡くなったそうですね。」 「賢君、耳が早いわね。でもなるべく秘密にしてね。騒ぎが大きくなると収拾がつかなくなっちゃうから。」 「わかりました。その代り、院長先生を恨んでいた人に心当たりはありますか。」 看護師は動揺した顔で賢を見た。賢はここぞとばかりに攻めた。 「内緒にする代わりに教えてもらえませんか。」 すると看護師は声を潜めて賢の質問に答えた。 看護師の話をまとめるとこういうことだった。院長は他人に恨まれるような人柄ではなく、トラブルはなかった。しかし、家庭内では例外だった。この病院には三人の院長の子供が務めていた。長男翔太と次男翼はドクターとして。そして、長女美穂は婦長として病院に勤務していた。三人の子供たちは遺産相続で院長ともめていた。三人の金遣いの荒さに院長が腹を立てて財産を残さないように遺言を書き換えると宣言したからである。そうなってしまっては遺産目当ての三人にとっては十分な動機になった。 賢は三人のアリバイも知っておきたかったがこればかりは警察でなくてはどうしようもなかった。賢は仕方なく病院の公衆電話から警察署に電話をかけた。相手が出ると賢は真っ先に言った。 「江戸川警部をお願いできますか。院長の自殺の件でお話があります。」 しばらく、電話に出た警官は渋っていたが、賢が重要な情報があるというとようやく江戸川警部につないでくれた。江戸川警部に電話をしたのは、何も知り合いでも何でものなくほかの刑事の名前を知らなかったからである。食堂で唯一名前を聞いた江戸川警部が院長の事件の担当であることし分からなかったのである。しばらくすると電話の相手の声が変わった。どうやら江戸川警部が電話に出たようだった。賢は江戸川警部に院長が自殺するはずないことと、三人の子供たちの動機について話した。 「鳥飼賢君といったね。賢君の言うとおり他殺などではなく院長は間違いなく自殺だ。これで報告書も完成している。」 賢は切り札を出すことにした。 「院長は机の椅子を踏み台にして首を吊ったと警察は考えているんですよね。」 江戸川警部は突然泡を食ったようだった。警察内部の者と病院の関係者の一部しか知らない情報だったからだ。 「どうしてそれを知っているんだ。誰かに聞いたのか。」 「いいえ。信じてもらえないかもしれませんが、見えたんです。院長室で。その時、正確には院長は椅子に座って首にロープをかけられた状態でした。犯人が何かトリックを仕掛けたのだとしたら。どうですか、警部。」 江戸川警部は迷った挙句に病院で直接会うように提案してきた。 江戸川警部とは食堂であった。こちらは初めてではないが江戸川警部は初めて賢の顔を見た。そのため、自己紹介から入ることにした。 「警視庁捜査一課の江戸川警部です。君が鳥飼賢君だね。」 賢はうなずきながら答えた。 「鳥飼です。よろしくお願いします。」 「早速だが、君の言うトリックを聞かせてもらえないかな。」 しかし、賢にはトリックなど皆目見当もつかなかった。賢はとっさに話をすり替えた。 「その前に警部。電話でお話しした三人のアリバイはどうなっていますか。」 「それなら、言われた通りに調べた。死亡推定時刻に長男翔太は会議中、次男翼は手術中、長女美穂は常に誰かの看護師が見ていたことが分かった。」 賢は頭を抱えた。自殺に見せかけるなら犯人はアリバイにも気をつかっただろうという予想は当たった。しかし、肝心のトリックが分からなかった。その時、賢は院長室で見た光景を思い出した。床から何かが煙を立てていた。そこで賢は江戸川警部に聞いてみた。 「院長室の床ですが、何か見つかりましたか。」 「いや、そもそも床なんてあまり丹念に調べなかったからな。」 「それなら、遺体が吊るされていた下あたりの床を調べてください。」 警部はスマートフォンを出しながら尋ねた。 「トリックに関係があるのか。」 賢は自信な下げに答えた。 「おそらく。」 江戸川警部は鑑識の米村を呼び出した。三人で院長室に入り、米村は床を慎重に調べ始めた。しばらくすると米村は立ち上がって手袋を外しながら言った。 「警部、その子の言うような何かがあった痕跡はありませんでした。」 江戸川警部はうなずきながら言った。 「ご苦労だったな、米村。もう帰っていいぞ。」 その時、再びイメージが湧いてきた。賢は目をつむると前よりもイメージが明確になっていた。院長の椅子の下に何かの個体が煙を立てていた。そして、それは跡形もなく消えて言った。 「ドライアイス!」 賢の叫びに二人は振り向いた。賢は再び言った。 「ドライアイスなら痕跡は残りませんよね。」 米村はうなずきながら答えた。 「確かに、ドライアイスは今調べても発見するはできないわ。」 江戸川警部が続いた。 「しかし、ドライアイスがあったとして、誰がどうやってが問題なんだよ。」 賢はにやけながら江戸川警部に一つ頼みごとをした。 院長室には賢と江戸川警部、米村さんに院長の子ども三人がそろっていた。江戸川警部は賢にうなずいた。すると賢は推理を始めた。 「この院長室で院長が首を吊っているのが発見されました。」 美穂が言った。 「でもそれは自殺でしょ。」 「いいえ、違います。院長は殺されたんです。犯人はあなたたちの中にいます。」 三人は少し動揺したようだった。賢は続けた。 「犯人はまず、院長に睡眠薬を盛ることから始めました。そして、院長が眠った後に椅子に座らせてロープを首にかけます。」 今度は翔太が反論した。 「しかし、死亡推定時刻には全員アリバイがある。」 賢はすぐさま反論した。 「死亡推定時刻のアリバイは関係ないんです。だって、これだけで院長は自然と首を吊るのですから。」 今度は翼が言った。 「どういうことだ。」 「まず、数十センチの長さの長方形型のドライアイスを四つ用意します。椅子を支えても倒れない程度の太さのです。次に、すべてのドライアイスに椅子のキャスターが乗るように凹みを作ります。あとは、ドライアイスを立ててその上に椅子を置く。そして、院長をその上に座らせて首にロープを巻けば完成です。実際の現場では椅子は倒れていたそうです。おそらくドライアイスが解ける途中でバランスが崩れたのでしょう。いずれにしてもこれで院長は首を吊った形になる。その場にいなくてもね。」 三人はそわそわし始めた。 「そうですよね。犯人はあなただ。」 賢が指さしたのは翔太だった。翔太はすぐに反論した。 「ちょっと待て。俺は朝からずっと会議をしていたんだぞ。睡眠薬が効くまで待っているだけの時間はない。」 「その通り。長男のあなたは睡眠薬を盛っただけだ。おそらくコーヒーか何かに混ぜたんでしょ。しかし、睡眠薬が効くまで待っている時間はなかった。それは確認済みです。」 賢は美穂を見ながら続けた。 「ちなみに、長女のあなたは常に誰かの目があった。睡眠薬ならまだしも、ドライアイスなんか運んでいたらいやでも目についてしまう。」 賢は目をつむった。今度ははっきりとイメージが見えた。まずは、翔太が院長のコーヒーに睡眠薬を混入した。そして翔太が部屋を去ると今度は二人目の犯人がドライアイスの細工を作り始めた。賢は目を開けて言った。 「この事件、よく見えました。犯人はもう一人いるんですよ。それが誰か、みなさんもうお分かりですよね。」 翼はこぶしを握り締めていた。そして叫んだ。 「証拠はあるのか。全部お前の想像だろ。」 今度は江戸川警部の番だった。 「証拠ならある。翔太さんが薬品保管庫から睡眠薬を盗む姿が監視カメラに残っていた。さらに翼さんが大きな保冷バックをもって院長室に向かう姿を目撃したものもいた。二人とも、これで満足かな。」 翼はとうとう観念した。 「兄貴がこれならばれないって言ったのに。」 「おい、馬鹿。」 翔太がとっさに翼の口をふさいだがすでに遅かった。 二人は江戸川警部が逮捕して署まで連行していった。後日、賢は江戸川警部と再び食堂で会っていた。 「それにしてもお手柄だったな。どうしてわかったんだ。」 賢は一瞬迷ったが真実を伝えた。 「イメージが見えたんです。院長先生の最期の。証拠や証言が出てくるたびにイメージがはっきりしてきて最後には犯人の顔も見えてくる。でも、本当なんです。」 江戸川刑事もうろたえていたがどうやら今回のお手柄を見ると嘘ではないと感じていた。江戸川警部は賢に言った。 「にわかには信じがたいが、面白い能力だな。今後、協力してくれれば信用してやるかもしれん。それよりも、今回のお礼は昼食でもおごればいいかな。」 賢はしばらくの沈黙の後に言った。 「いいえ、僕が欲しいのは真実です。妹を殺した犯人が知りたいんです。」 「あの事件か。わかった。できるだけのことはしよう。」 それから五年が過ぎた。江戸川警部と鑑識の米村は賢の能力を信じてくれるようになった。しかし、妹を殺した犯人の手掛かりは依然としてつかめなかった。賢は決意していた。必ず犯人を見つけ出して見せると。
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