……ッ全く歯が立たねェ。 「闘う」以前に、動きが見えない。 辛うじて反射的に防禦してはいるものの、この儘では時間の問題だ。 こうなったら……俺は口を開いた。 ‘Please, Forgive My Running Away.’ 「うっ……あ、あいきゃんと、すぴーくいんぐりっしゅ、う、うぇる」 黒川がたどたどしくジャパニーズイングリッシュで答える。 その隙に、身体を反転させてトンネルへ駆け込む。 「あ、くそっ、待てッ!」 三十六計、逃げるに如かず! 英語で話しかけられると緊張してしまう日本人の特性を利用した、我ながら見事な策だ。 幾ら奴が俊敏でも、この狭いトンネルでは、そうそう追いつけまい。 …… 黒川から逃げて無茶苦茶に走っていたら、迷ってしまった……。 大体、このトンネルは何なんだ? この儘盲滅法に走っては更に迷うだけだ。 しかし、止まったら黒川に追いつかれてしまう……。
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