先日、父が亡くなりました。 私が嫁ぐまで養い育ててくれた父。 でも、何故でしょう、悲しみを露ほども感じないのです。 母の涙に誘われて、私も泣きました。――それでも。 お葬式に来てくださっている方々は 娘の私よりも悲しんでいる様に思えます。 平凡な父の知人は、やはり平凡で 静かに父を悼み、私達を慰めて帰られます。 訪れる方も少なくなった頃、一人の男の方が参られました。 母が何事か言いかけようとするのを遮って 「義姉さん、最後くらい……最後くらいは会わせて下さい」 と言って、仏前に向かいました。 後から母に尋ねると、父の弟さん、つまり私の叔父なのだそうです。 或る事情の為に義絶していたので、私とは面識が無かったのです。 しかし、私は―― ……その人の透き通った目を、ずっと見つめていました。
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